2019年07月22日

◆雀庵の「Anne G. of Red Gables」開店

“シーチン”修一 2.0


回からタイトルを「拉致:朝鮮半島の闇、日本の闇」から「雀庵の〇〇」
にします。

知性と感性の光輝くコラボ、モード・モンゴメリの名作「赤毛のアン」
(原題 Anne of Green Gables/緑の切妻屋根のアン)シリーズ、さらに自
叙伝的な「可愛いエミリー」シリーズも読了した。

小生の次女は小5の娘に「アン」を読ませたいようだが、高2レベル以上の
言語能力がないと難しいと思う。登場人物が多いし、名前が山田花子鈴木
中村とかで、山田が嫁ぎ先、鈴木が父方、中村が母方とすると、同じ花子
さんでも、呼び名が花子、通称は花ちゃん、花、ハナ、ミセス山田、ミセ
ス花子、山田花子鈴木とかあり、「山田花子鈴木さん、あんたは武門の中
村家の血筋を引いている山田花子鈴木中村なんやさかい、しゃきっとせな
あかんやろ!」なんて言われたりする。

この他に通称・略称でフレデリックが「テディ」、ウィリアムが「ビ
リー」とかで書かれ、日本でも歌舞伎や噺家は「三代目尾上松緑」とか
「四代目古今亭志ん朝」とかがあり、屋号も田舎ではまだ残っている。我
が家は生まれ故郷では「精米」と呼ばれていたし「バロン」(男爵)と呼
ばれている人もいた。分かっている人は分かるが、分からない人は理解す
るまで戸惑う。

モンゴメリの作品中でも同じ人がいろいろな名で呼ばれたりするから、
ボーっとしていると訳が分からなくなる。数ページ戻って読み直すことも
しばしばだ。小生は言語力はIQ130だから読解力はある方だろうが、それ
でもモンゴメリと訳者の村岡花子氏の表現に馴染むには時間がかかった。
慣れればほとんど気にならないが、それなりの高度な読書力は必要だと思う。

話は外れるが、専門分野では専門の言語や隠語、略語を使うから、分かる
人は分かるが、門外漢にはチンプンカンプンだろう。「五校とってようや
く責了、下版で2階のプレスのとこで写真と見出し載せて紙型とって、地
下の輪転機の刷り出しをチェックして、ようやく工場を出たら11時。毎日
午前様だよ。編集長に泣きついたら血尿が出たら一人前だってさあ」

古典落語の「金明竹(きんめいちく)」は上方の骨董屋業界の話。

「わては中橋の加賀屋佐吉方から使いに参じまして、先度、仲買の弥市が
取り次ぎました、道具七品(ななしな)のうち、祐乗(ゆうじょ)・光乗
(こうじょ)・宗乗(そうじょ)三作の三所物(みところもん)。なら
び、備前長船の則光(のりみつ)。四分一ごしらえ、横谷宗aの小柄(こ
づか)付きの脇差……柄前(つかまえ)な、旦那さんはタガヤサンや、と言
うとりましたが、埋もれ木やそうで、木ィが違うとりましたさかい、ちゃ
んとお断り申し上げます。

次はのんこの茶碗。黄檗山金明竹、遠州宗甫の銘がございます寸胴の花活
け。織部の香合。『古池や蛙飛びこむ水の音』言います風羅坊正筆の掛
物。沢庵・木庵・隠元禅師貼り混ぜの小屏風……この屏風なァ、わての旦那
の檀那寺が兵庫におまして、兵庫の坊(ぼん)さんのえろう好みます屏風
じゃによって、『表具にやって兵庫の坊主の屏風にいたします』と、こな
いお言づけを願いとう申します」(矢野誠一「落語歳時記」などから引用)

素人にはチンプンカンプン。分かる人には分かるが、漢字があるから何と
なく意味は分かるだけで、話(口語、会話)だけならお手上げだろう。読
書も日々訓練しないと読書力は伸びないどころか後退する。文字も書かな
いと漢字がどんどん書けなくなるのと同じだ(激しい劣化を痛感した小生
は最近では手紙を書くようにしている)。

才媛モード・モンゴメリは熱烈な作家で、手で下書きを書き、清書はタイ
プだった。同時に物凄い読書の人でもあった。モリー・ギレン著「運命の
紡ぎ車」から。

<当然のことながら、非常に多くの役割――母親であり、牧師の妻であり、
作家である――を果たさねばならない生活は・・・有能な家事手伝いがいな
かったならば、役割の一つや二つはおざなりになっていたであろう。

忙しさに煩わされ続けた年月を通じて、モードは何とか毎日二、三時間の
時間を工面して執筆時間を確保したのである。

「母は早朝に書き物をしていました」と息子のスチュアートは言っている。

「そして夜遅くに読書をしていました。わたしが覚えている限りでは、母
の睡眠時間は5時間、時には6時間でした。母は乱読家で・・・イギリス文
学の古典はすべて、何度も読み返していましたし、それに、信じられない
ほどの記憶力で、シェイクスピア、ワーズワース、バイロンばかりか、有
名なイギリス詩人の作品はすべて、大部分の個所を引き合いに出すことが
できました。

そればかりか、同時代の本、雑誌、新聞のすべてを読み、また、毎日一、
二冊の推理小説を読みこなしていたのです」>

大大好きな可愛い才媛、日本のモンゴメリ、曽野綾子先生みたい。小生も
脳ミソがストップするまで読み続け、書き続けたい、できるものなら「五
箇条の御誓文」をベースにした新憲法の成立を見たいものである。(これ
にてモード・モンゴメリの項は終わりにします。ああ面白かった!)

そうだ、わがペントハウスを「Anne G. of Red Gables」にしよう。発狂
亭“気分爽快”雀庵爺(G.)の病棟日記から。

【「措置入院」精神病棟の日々(120)】【2016/12/28】【産経】曽野綾
子(!偶然! 1969年横浜市大入学の小生は商学部で男ばっかり、で、文
学部のミスキャンパス廣瀬綾子ちゃんに懸想。「テニスコートの君は19、
ヘルメットの僕は18、ニッコリ笑って淋しく別れた、本当にはかない恋
だったねえ」。閑話休題)「南スーダンの新橋工事中断 安全優先と国際
貢献との葛藤」、途上国で仕事をすることの、日本人からすれば途方もな
い難しさ。

「JICAが日本人職員の安全を優先したのは当然だが、生き延びるだけで、
その人が生きたことにはならない時もある。安全第一の思想では人生は理
解できないのである」

カネない、モノない、ヤルキない、技能もないしモラルもない、治安もな
い、あるのは賄賂と汚職、私利私欲、おまけに邪教や部族対立・・・そう
いう国での国際貢献・・・「自己犠牲」とは言うものの「三十六計」逃げ
出したくなるわな。

竹内久美子「正論:勝利のキーワードは『赤』だった」。実力伯仲選手の
試合では赤福の勝率が目立って高い。「アカは強さや支配性を強めてい
る。トランプ氏が接戦を制したのは赤いネクタイが威力を発揮したからか
もしれない」

牛は赤に興奮し、女は赤い唇で誘惑し、共産主義者は赤旗を振る。勝負服
は赤に限る?! アカになったらアカンデ、塀の内側に落ちるさかいな。

小雲則夫「米を蝕む新手の合成薬物フェンタニル型 中国で製造→韓国
ネット 通販流入確認 車事故より多い死者数 次期政権課題」。「2015
年の合成薬物による死者数は前年より7割も多い9600人で、その大半が
フェンタニル型」。

支那による阿片戦争のリベンジのような・・・北京が製造販売を黙認して
いるのではないか。

藤本欣也「中朝国境で連行されて」。3時間拘束され、一部の写真を削除
されたという。「国境の警備強化を身をもって知った」、スパイだとして
刑務所送りになりかねないから取材は命懸けだ。北の飢えた兵士が越境し
て強盗するそうだから中共も必死なのだろう。

「検証 文革半世紀 中国の未来は――専門家座談会 残る傷 居座る指導
部 共産党に国民不信も民主化遠く」。

産経の矢板明夫氏は1972年天津生まれ、15歳で日本人残留孤児2世として
千葉県に引き揚げた。その発言「文革により中国人は何も信じなくなっ
た。すべての宗教が否定され、毛沢東だけが神様になったが、文革後、毛
もトウ小平によって実質的に否定された。信じられるものがないから、
人々はとても現実的になった。お金や権力をとても重視している」。

「習氏が文革的運動をもう1回やろうとしても、50年前に毛沢東に騙され
た国民が信用することはないと思う。いま中国で起きていることは文革的
だと言われているが、毛沢東の真似ごとでしかない。そう長くは続かない
と思う」

金野純氏によるとキリスト教徒が急増し、共産党員(8500万)よりも多く
なっているという話もあるそうだ。

矢板氏の「連載を終えて」から。

「文革で得した人は誰もおらず、皆が被害者だった。個人崇拝など、様々
な文革的現象が中国に戻ってきたのは、共産党政権が自らの負の歴史を封
印し、文革を推進した毛沢東を否定しなかったことにあるのではないか。
それが私が辿り着いた結論だ。紅衛兵世代の習近平自身が毛沢東に憧れ、
毛のような指導者になりたいと考えていることも、大きな原因かもしれない」

今朝も産経は面白かった。

・・・

原野商法などを見ていると、詐欺に遭う人は何回も騙される。支那14億の
うち農民や出稼ぎ労働者など低所得層は7億人(50%)ほどらしい(デー
タがないが何清漣女史は68%=10億だという)が、彼らは低学歴で情報も
限られているために中共の岩盤的な支持層になっているようだ。

支那経済の実態は不明だが、「数字で出世する」国柄で、いい数字を出さ
なければ首が飛ぶから、官僚はいい数字を出して高度成長を囃し立ててい
たが、近年は北京の意向で少しずつ減らしている。それでもGDPは+6%台
で、14億の国が6%台なら世界経済をグングン牽引しているはずなのに、
そんな感じはしない。

プラス成長でもまず上流が美味しい思いをし、下流に届く頃には景気が減
速するというのが日本では当たり前になっているが、支那の低所得層は依
然として「飢えからは解放された」レベルでしかないようだ。エリート階
級も大卒の就職はずいぶんな狭き門らしい。

シンクタンクの東京財団によると「失業者が増え、物価は大きく上昇して
います。経済がスタグフレーションに陥る可能性が高まるなか、中国国内
ではナショナリズムが高まっています」という。

実際、支那の農村は発展どころか逆に疲弊が進んでいるらしい。もともと
生産性が低い「水呑み百姓」で、どうにか息子夫婦が出稼ぎに出てヂヂバ
バと孫で細々と営農していたが、出稼ぎ需要が減っているから帰村してき
た。ところが農地がない、代わりに「閑居して不善をなす」失業者やゴロ
ツキがゴロゴロしており、国破れて山河あり、されど耕す田畑なく、「中
国農村のヤクザ社会化、郷村文化のならず者化現象」(何清漣)は目を覆
うばかりのようだ。

「白樺 青空 南風 こぶし咲くあの丘 北国のああ北国の春」

出稼ぎ者は日本でも支那でもこの歌を歌って涙したものだったが、その故
郷自体がなくなりつつあるのだ。

<中国は、世界第2の経済大国と言いますが、中国の現代経済部門は、か
くも就業チャンスを欠いています。その原因を遡れば、2005年にはじまっ
た「農村消滅」運動(訳注;都市建設のために農地や農民の住居を取り壊
した)と「嘘っぱちの都市化」なのです。

中国共産主義青年団(共青団)が習近平主席の呼びかけに呼応し「農村振
興プロジェクト」として、2022年前に1000万人以上の青年を「上山下郷」
(下放)すると伝えました。海外の世論は騒然となり、これが毛沢東時代
の文革の「下放」と同様、一千万人の青年が「荒れ地を開墾するために」
農村地域に「下放」されたことになぞらえて伝えられました。o

しかし、調べてみると、この大騒ぎの元となったのは、共青団中央の「3
年で千万人の青年ボランティアを農村へ」という文章で、内容を見ると、
毛沢東時代の「下放」とは違っており、「延べ千万人の青年ボランティ
ア」は、文化、科学技術、衛生の三つの分野で農村へ一カ月前後の期間活
動するというもので、文革時代の「千万青年が農村に根を下ろす」話とは
大違いです>(何清漣)

今さら共産党から農地を借りて「食うだけで精一杯」の農村振興・・・カ
ラオケねえ、スナックねえ、電車もバスも見たことねえ、たまに来るのは
共産党員、オラそんなのはやだ・・・ってなるわな。

北京は時代錯誤的な「漢服ブーム」でナショナリズムを焚きつけている
が、小生の愛した深いスリットはご法度。やることがセコイね。「俺は大
国だ」とえばっていた北京は今や「発展途上国に対して特別な待遇を与え
ること。発展は国によって差があることを直視し、発展途上国の発展の権
利を守る必要がある」とWTOに訴えている。昨日はジャイアン、今日は泣
き虫パンダかよ。まったく天に代わってオシオキしないとね。

(つづく)2019/7/21

◆台湾独立色を鮮明に

宮崎 正弘


令和元年(2019)7月22日(月曜日)通巻第6151号  <前日発行>
 
 台湾独立色を鮮明に、新党「喜楽島連盟」が誕生
  羅仁貴(長老会牧師)を議長に立法委員選挙に大勢の候補者擁立を宣言

7月20日、台湾でまた新党が誕生した。台南を拠点に長老会(プレスビテ
リアン)がバネとなって「喜楽島連盟」が結成されたのだ。

初代党主席は台湾長老会派議長の羅仁貴が、200人の代議員の投票によっ
て選ばれた。

「来年の立法委員選挙に候補者を多数擁立する」と気勢を挙げた。ただし
蔡英文に挑戦する総統候補は立てない、とした。

台南はもともと台湾独立を鮮明にする本省人の根城のような地区で、台南
市長を務めた頼清徳は首相を辞任して総統候補をきめる党内選挙に臨ん
だ。同地のキリスト教会は長老派が圧倒的につよく、蒋介石独裁時代には
教会にあつまって独立派の秘密会合が開催されたという歴史がある。
 
長老会はカルビンの宗教改革を端緒にスイスで発祥し、フランスから英国
へ伝わりスコットランドで拡大定着した。米国にも伝播したのはピューリ
タンが持ち込んだからで、このカルビン派系プロテスタントは、ちなみに
ニュージーランドの主流キリスト教だ。

台湾へは1865年頃に淡水に上陸し、急速に拡大した。現在、台湾のキリス
ト教最大の勢力である。

さて新党「喜樂島連盟」は「反中国併呑」「正名台湾国」「制定新憲法」
「加盟連合国(国連加盟)」をスローガンとしているが、前回選挙で躍進
した「時代力量」や、かつての李登輝主導の「台湾団結連盟」に迫る政治
パワーとなるか、中華思想まるだしだった「新党」や宋楚諭率いる「親民
党」と同様な線香花火で終わるかは、現時点で不明である。
    
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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 日本は縄文時代の一万年、徳川時代の三百年、泰平だった
  幕末まで国家論も国防論も、日本人は考えなくても生きてこられた

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渡部悦和 vs 江崎道朗『言ってはいけない!?国家論』(扶桑社)
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本書のカバーデザインをながめて、まことに地味。題名も小さい。著者ふ
たり渡部悦和・江崎道朗の名前はもっと小さい。「これでは書店で目立た
ないのでは?」と老婆心ながらの第一印象だったが、いや待てよ。これこ
そ著者と編集者とデザイナーが意図したものではないのか、と考え直した。

つまりプラトン流の「国家論」などと大上段に振りかぶった政治議論な
ど、日本人がもっとも不得手とするからであり、このため、安全保障論議
は論壇の隅っこ、地味なのである。

重要な議論を日本人が避けようとしてきたのではない。関心が薄いのだ。
 選挙で「あなたは何を基準に投票しましたか?」と世論調査をすれば
「社会保障」「年金」「保険」「福祉」「教育」、そして「消費税」であ
り、防衛とか改憲とかを判定基準とする人たちのあまりの少なさに呆然と
なる。

まるで中国とは正反対である。

CCTVも人民日報も環球時報も、朝から晩まで国家、愛国、国防、党の
団結であり、生活保護、保険、社会保障、環境などの議論は何ほども目立
たないではないか。

米国とて、ミンシュシュギとは言ってもWINNER TAKES 
ALLの世界、反対意見は切り捨てる。この点で、中国と似ている。

トランプは国防費を増やそうと言うだけで、国防予算は8兆円も増える
(日本の防衛費は5兆円)、「おれは国務省が嫌いだ」と言うだけで、国務
省予算はばっさりと削減された。もっとも国務省をヒラリー商会にしたの
はオバマ政権の責任だが。。。

日本は? WINNER TAKES SMALLである。

与党は野党の意見を多く取り入れる。これが日本型の和を以て尊しとな
す、まつりごとの基本である。

考えてみれば、日本は縄文時代の一万年、徳川時代の三百年、泰平だっ
た。幕末まで国家論も国防論も、日本人は考えなくても生きてこられた。
突如嵐に遭遇すると、日本人は大和魂を思い出し、国学の復興をみるが、
緊張緩和の時代がくると忽ち重要な課題を忘れるという特性がある。

だからトランプは日本の核武装を容認し、安保条約の廃棄を言い出したこ
とはペリー来航に匹敵する衝撃になる。だが、目の前の現象しか日本のメ
ディアは見ていない。危機と平和が表裏一体であることにまだ気がつかな
い。おそらくこのような民族の特質は未来永劫変わらないのではないか。

 前置きが長くなった。さて本書である。
 
アメリカは一枚岩ではないという現実をふたりはまず俎上にあげる。パン
ダハガーが進歩的でリベラルな学風を誇るハーバード大学に残存してお
り、そればかりか彼らがアメリカの一部の世論をリードしている。

渡部氏の2年の留学経験からハーバード大学の現実が具体的に描写されて
いて、そこまで酷いのかという感想とともにアメリカ人の中国観の根底に
流れる考え方がわかる。

世界のエリートがいかなる議論をしているか、国際関係論では親中路線を
突っ走るエズラ・ボーゲル教授らパンダハガー一派が議論をリードし、学
内政治も牛耳っているという実態。中国人留学生らは共産党統一戦線部の
指令にもとづいて、その周りを囲んでいるという怖ろしい現実がある。

ミアシャイマーは、いたたまれなくなったシカゴ大学へ移った。

パンダハガーと見られていたディビッド・シャンボーは親中路線を修正
し、パンダ批判組に合流した。

シャンボーが全体主義体制の続く限り、中国は後退し、萎縮、崩壊すると
したことは嘗て小覧でも紹介した。

 以下、アメリカ通のふたりは米国政治の内部分析を克明に続けるのだ
が、日本のメディアが伝えていない情報が夥しく、参考意見として傍線を
引き始めたら、本書は朱だらけになってしまった。

外交というのは、軍事力と情報力の両輪で成立する。核の傘に守護された
日本は、アメリカが中国を敵といえば、自動的にその国は日本の敵になる。

国際政治ではパワーというのは軍事力ではなく核兵器を意味する。残置諜
者をスリーピングエージェントなどというのは国際政治の常識だし、日本
の忍者には「草」がいた。じつに戦国時代のほうが、日本のインテリジャ
ンス感覚は鋭敏だった。

そして二人は合意するのだ。岸信介政権まで戦前の岩畔、藤原機関の生き
残り、中野学校の生き残りがいたのでアジア情勢は彼らのアンテナから精
度のよい情報がもたらされた。
 
渡部 「日本にもインテリジェンスのノウハウがありましたが、現在と終
戦以前との間に断絶があります。国防に関しては終戦以前のあらゆるもの
がタブー視されていますから」。
 

江崎 「戦前との断絶が本当に決定的になったのは後藤田正晴官房長官の
時代、つまり昭和50年代から」。

評者(宮崎)はいまから40年前に、日本でも国防論議を本格化させる必要
があるとする加瀬英明、三好修氏らの呼びかけに応じ、「日本安全保障研
究センター」のボランティア事務局長をつとめ、財団化に奔走した経験が
ある。米国のシンクタンクとの交流が深まり、何回か、日米セミナーを開
催したが、10年ほどで活動停止状態に追い込まれた。

第一に米国との税制が異なり、寄付が集まらないこと。ひとくち一万円て
いどの会費では、セミナーも開催できない状態だった。

第二に自民党の政治家で真剣に安保論議に呼応できる国際感覚の持ち主が
数名しかいないこと。この寂しき現実はいまもかわらず、「アメリカ通」
を自認する若手の議員でも、じつはアメリカ政治を理解していない。かれ
らは「エズラ・ボーゲルはこう言っていた」という口癖がある。

第三に日本の官僚制度では当時、防衛庁は二流官庁とみられており、協力
体制にないこと。とりわけ外務省の非協力的な態度には、エリート特有の
「上から目線」があり、ましてチャイナスクール全盛時代だったから、中
国の軍事的脅威を説くと、私たちの議論をはなから莫迦にしていた。

第四が財界の理解がほぼゼロ、金儲け、目先の決算しか思考範囲にないこ
と。かれらは天皇訪中を歓迎したし、工場の進出ばかりを考えて、国益と
か戦略とかを語ることはタブーに近かった。

第五にメディアの理解が、ほぼゼロだったことである。

したがって二人の議論のなかでも下記の箇所が妙に突き刺さるのだ。
 渡部 「安全保障に関する唯一の官のシンクタンクは防衛研究所です。
(中略)所員には優秀な人もいるのですが、結果を対外的に発表するのはか
なりハードルが高い。いちいち許可を得ないといけないのです。そうする
と本当にタイムリーな情報の発信はむずかしくなる」
 
江崎 「公表するまでに時間がかかってしまう。それと政府はある程度、
確実なことしか言えませんしね。(中略)これが民間だと政府ほどの制約は
ありません。『こういう可能性がある』『こう予想される』という段階で
も発表できる」

したがって二人は早めの情報分析と予測を立てる民間シンクタンクの必要
性があると力説される。評者も経験上、大いに賛成である。

レーガン政権時代、ヘリティジ財団の作成したペーパーが政策に反映され
るか、あるいは採用された。AEIの経済政策も有効だったし、当時、評
者はこれらのペーパーを集め、研究員と議論するために何回もワシントン
へ行ったものだ(いまではネットで読める)。

もう一つ、官ができない見解を民間シンクタンクがさきに警告的に発信で
きる利点がある。

CIAの金融予測は、公表するとまずいことがあるので、GFIなどの民
間にシンクタンクがさらりと発表している。だから中国の外貨準備や不正
資金の流失というリアルが、われわれでも掴めるのである。

国防方針はランド研究所をウォッチしていれば概要が掴めるし、アメリカ
のホットな議論が奈辺にあるかはCSISの報告などを注視していれば良い。

ともかく本書は全編これ最新情報の固まりであり、紙幅があればもっと紹
介したいところである。
  

◆1960年チリ地震津波

渡部 亮次郎

昭和35(1960)年5月24日未明、突然、契約タクシーにたたき起こされ
た。津波がきて大被害が出ている、至急、局へ」というNHKからの伝言。
地震も無いのに、津波とは、何事かい。

NHKに記者として採用され、仙台中央放送局に着任して間もなく1年。そろ
そろ東北管内のどこかのローカル局への転勤が噂に上っていた。局から歩
いても5分ぐらいの民家の6畳間に下宿していた。

5月24日未明に最大で6メートルの津波が三陸海岸沿岸を中心に襲来し、
142名が死亡したのだった。岩手県大船渡市では53人、宮城県では志津川
町(現・南三陸町)では41人が死んだが、それらがはっきりするのは数日
経ってからのこと。

私は単身、録音機を持って女川町(おながわまち)に派遣されることにな
り局の車で向かった。途中、国鉄塩釜駅の前を通りかかったら、跨線橋の
上に漁船が載っていた。津波はこんな高さにまで
達したのか。

後で聞けば、前夜、塩釜には同僚のカメラマンが別の取材に訪れて
1泊。だが、津波と聞いても暗くて何も分からず、全く撮影しなかった。
この男は、これが祟って出世できないまま、60前に死んだ。

女川に着いたが、時折、津波がまた、やってきたという声がして人々は海
を横目に高台に逃げる。

そのどよめきを録音しながら私も逃げる。その繰り返し。録音機は空回り
して、何も録音されてなかった。2,3日経って赤痢が集団発生。その原
稿を電話で送る私も発症していた。大館通信員時代についで半生、2度目
の赤痢だった。


チリ地震は表面波マグニチュード(Ms)8.5、モーメントマグニチュード
(Mw)9・5と有史以来観測された中で最大規模の巨大地震である。最大震
度は気象庁震度階級では震度6相当とされている。

1960年5月22日15時11分20秒(現地時間。日本時間では5月23日4時11分20
秒)、チリのヴァルディヴィア近海を震源として発生した地震である。地
震後、日本を含めた環太平洋全域に津波が襲来し、大きな被害をもたらした。

まず前震がM7.5で始まりM7クラスの地震が5〜6回続いた後、本震がMs8ク
ラスで発生した。また余震もM7クラスであったために首都のサンティアゴ
始め、全土が壊滅状態になった。

地震による直接的な犠牲者は1743名。負傷者は667名。

この地震によりアタカマ海溝が盛り上がり、海岸沿いの山脈が2・7m沈み込
むという大規模な地殻変動も確認された。また有感地震が半径約1,000km
という広範囲にわたって観測された。

史上初の地球自由振動の観測に成功し、アメリカでの観測で発生した地震
波は地球を3周した事が確認された。

尚、本震発生から15分後に約18mの津波がチリ沿岸部を襲い、約15時間後
にはハワイ諸島を襲った。ハワイ島のヒロ湾では10.5mの津波を観測し、
61名が死亡した。

各地の津波到達時間日本では地震による津波の被害が大きかった。地震発
生から約22時間半後の五月24日未明に最大で6メートルの津波が三陸海岸
沿岸を中心に襲来し、142名が死亡した。

津波による被害が大きかった岩手県大船渡市では53名、宮城県志津川町
(現・南三陸町)では41名、北海道浜中町霧多布では11名が死亡。

この浜中町では8年前の1952年の十勝沖地震でも津波被害を受けており、2
度目の市街地壊滅。街の中心でもある霧多布村がこのチリ地震津波により
土砂が流出し北海道本島より切り離され島と化した。

現在は陸継きだった所に2つ橋が架けられており、北海道本島と行き来が
出来る。1つは耐震橋、もう1つは予備橋で橋が津波で流出する恐れがある
ためと避難経路を2路確保するためである。

また、同じく度重なる津波被害を受けた田老町(現・宮古市)では高さ10
メートルの巨大防潮堤が功を奏して人的被害は皆無であった。

この田老町の防災の取り組みを取り入れ浜中町に防潮堤が建設される。北
海道の防潮堤については後の北海道南西沖地震でも津波による人的被害の
甚大な奥尻島などでも建設された。

地球の反対側から突然やってきた津波(遠隔地津波)に対する認識が甘
かった事が指摘され以後、気象庁は日本国外で発生した海洋型巨大地震に
対してもハワイの太平洋津波警報センターなどと連携を取るなどして津波
警報・注意報を出すようになった。

あれから丁度50年後、チリ中部沖で2010年2月27日3時34分(現地夏時間;
6時34分 UTC)に地震が発生した。1900年以降、チリでは1960年5月のチリ
地震に次ぐ規模、世界でも5番目の規模の地震となった。

日本では、2月28日午前8時30分に気象庁が会見を開き、かつてのチリ地震
で最大6mもの大津波を受けて甚大な被害を受けた歴史的経緯もあり、大津
波警報を三陸沖に発表するといった内容を伝えた。

時間は、「午前9時を過ぎればいつでも発表できるようにする」として、
当初の予定を大幅に前倒しすることも示唆した。しかし人的被害は全く無
かった。海苔ひびや牡蠣いかだの被害は大きかった。
気象庁は同日の会見で、津波の予測が過大であったとし、警報・注意報が
長引いたことを謝罪した。ただし最悪のケースを想定したもので、判断ミ
スはなかったとした。2010・5・24

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

◆選挙を前に激化する、朝日の安倍批判

櫻井よしこ


7月4日、参議院議員選挙が公示され、世の中は選挙一色だ。その中で「朝
日新聞」の反安倍報道が際立っている。7日の1面に政治部次長、松田京平
氏の署名入りの記事が載った。「『嘲笑する政治』続けるのか」と題して
安倍晋三首相を次のように批判した。

「(安倍晋三首相は)民主党政権の失敗と比較して野党を揶揄、こき下ろ
す。身内で固まってあざ笑う―。自分が相手より上位にあり、見下し、排
除する意識がにじむ」、「『嘲笑する政治』が6年半、まかり通ってき
た」、「このまま『嘲笑の政治』が続くなら、民主主義は機能しない」、
という内容だ。

安倍憎しの感情がメラメラと燃えているようだ。しかし現実を見れば、国
民の多くが民主党政権の3年余りを「悪夢」と感じているのではないか。
首相が「身内で固まってあざ笑」っているわけではない。その証拠に、政
権を失った後、民主党の支持率は下がる一方だった。だからこそ、2017年
10月の衆議院議員選挙を前に、遂に全員が小池百合子氏の下に逃げ込もう
とした。しかし排除されて、立憲民主党が生れ、紆余曲折を経て国民民主
党も生れた。

民主党政権時代の「悪夢」の再来は嫌だと、国民が骨身に沁みて感じてい
るからこそ、その後複数回の選挙で自民党が国民の支持を受け続けたので
ある。にも拘わらず、この6年半が安倍政権がただ民主党を「嘲笑する政
治」であったとすれば、国民が安倍氏を支持するはずもない。朝日の余り
に曲がった見方こそ国民の意思を「嘲笑」するもので、傲慢さを示している。

どんな時でも選挙は国政の行方を決める重要事だが、今月21日の参院選挙
には特別の重要さがつきまとう。結果によって、首相に期待されている憲
法改正が可能になるか、或いは先延ばしで事実上、改憲不能に陥るかが決
まるからだ。

憲法以外にも、経済、年金、北朝鮮と拉致、皇室など重要な問題が山積し
ている。これらの課題、とりわけ憲法改正に安倍首相が着手するのが朝日
新聞はいやなのであろう。それが常軌を逸した安倍首相批判につながって
いると見てよいだろう。7月3日の「天声人語」はその凄まじい一例だ。

首相を犬にたとえる

同欄で天声人語子は「あくびは伝染する」と書く。「米国が中国に仕掛け
た貿易戦争さながら、日本政府が韓国への輸出規制に乗り出した」とつな
げている。「韓国側にも問題がある」としながらも、安倍政権の措置は
「筋違い」だと切って捨て、次の下品な批判を展開する。

「ちなみに人のあくびは犬にも伝染するらしい。忠誠を尽くす飼い主から
とくに影響を受けやすいとの研究結果がある。日本政府の場合は、こちら
に近いか」

安倍政権、つまり安倍首相を犬にたとえるのか。こんな非礼は誰に対して
も許されない。だが、朝日は、首相にはどんな下品な批判でも許されると
思っているのであろう。この感覚こそ、「自分が相手より上位にあり、見
下」す視線ではないか。

右の非礼な天声人語と同じ日、朝日は「対韓輸出規制『報復』を即時撤回
せよ」という社説を掲げた。そこにはこう書かれている。

「近年の米国と中国が振りかざす愚行に、日本も加わるのか。自由貿易の
原則をねじ曲げる措置は即時撤回すべきである」

朝日社説子は、韓国への「輸出規制強化」をかつて中国が尖閣問題を巡っ
てレアアースの輸出を止めた事例や、トランプ政権が安全保障を理由に鉄
鋼などの関税を上げた事例と同列に置いて、安倍首相の措置を非難するの
である。

順序が後先になったが、経済産業省が「輸出管理を適切に実施する観点か
ら、大韓民国向けの輸出について厳格な制度の運用を行」うと発表したの
が7月1日だ。➀韓国をこれまで「ホワイト国」と見做してきたが、そのリ
ストから韓国を外す手続きを始める。➁4日からフッ化ポリイミド、レジ
スト、フッ化水素の3品目を包括輸出許可制度の対象外とし、個別の輸出
審査を行う、とした。

世耕弘成経済産業大臣は7月1日、右の措置の理由として「輸出管理で不適
切な事案が発生した」ことを挙げたが、「不適切な事案」の内容について
は「守秘義務」があるとし具体的説明を行わなかった。

経産省の発表は直ちに多方面から反応を引きおこした。その中のひとつに
中部大学特任教授細川昌彦氏(元経産省貿易管理部長)の解説がある。氏
はこれは「輸出規制発動」ではなく、04年から韓国を優遇して簡略化して
いた手続きを03年までの普通の手続きに戻すだけだと説明した。本来は契
約毎に個別の許可が必要だが、輸出管理の点で信頼できる国であると見做
されると「ホワイト国」に指定されて輸出手続きが簡略化される。その場
合、3年間有効な包括許可をとることが可能で、いつでも輸出できるとい
うものだ。

理不尽な政府批判

安倍首相も繰り返し述べている。

「輸出禁止ということではありません。徴用工(朝鮮人戦時労働者)問題
とも関係ありません。これまで韓国に認めていた優遇策を元にもどしただ
けです。EU諸国は元々韓国をホワイト国にはしておらず、わが国はEU
と同様の政策を韓国に対してとるということです」

こう強調した首相も、世耕氏が会見で語った「不適切な事案」について、
7日時点ではまだ説明していない。

他方細川氏は、韓国に輸出した先述の品目が北朝鮮に横流しされる事例が
頻繁に起きている、むしろ常態化していると明言する(7月7日「日曜報道
THE PRIME」)。

軍事目的にも転用される先述の物質が北朝鮮に横流しされているのであれ
ば、韓国をホワイト国リストから外すのは当然だ。また再度強調したいの
は、今回の措置が包括許可から個別許可に戻したにすぎないという点だ。
朝日は3日の社説で、中国のレアアース禁輸と較べたが、その比較自体が
的外れだ。

朝日の社説のもうひとつの間違いは、同措置を朝鮮人戦時労働者問題に対
する日本政府の報復だと見做していることだ。今回の措置はいわゆる徴用
工問題とは何ら関係がない。従って朝日が言う安倍政権が「政治の対立を
経済の交流にまで持ち込」んだという非難は当たらない。「外交当局の高
官協議で打開の模索を急ぐべきである」という主張も、的外れだ。第一、
日本側は徴用工問題で話し合いを呼びかけ続けたが、韓国側が応じないの
である。

朝日の理不尽な政府批判は、安倍自民党の勝利は改憲につながると見て阻
止する為であり、朝日の偏ったイデオロギーの産物にすぎないということ
だろう。

『週刊新潮』 2019年7月18日号 日本ルネッサンス 第860回


◆「あたる」前に必ず「かする」

石岡 荘十


旧聞に属すが、ベテラン俳優若林豪さんが2008年3月5日、倒れた。若林さんは小林幸子特別公演「天勝物語」で小林扮する天勝の師匠松旭斎天一役で、名古屋市の御園座に出演していた。

しかし、若林さんの体調は思わしくなく、「セリフもよく入っていなかった」という。この日も昼の部に出演したが、本番を終了直後に病院に向かった。医師の診察を受けて手術が行われた。
 
病名「慢性硬膜下血腫」というのは、脳の血管が切れて脳を覆っている硬膜とその下の脳との隙間に血(血腫)が貯まる病気で、血腫が脳を圧迫する病気だ。

病名は違うが同じ脳疾患で、脳の血管がつまったり、破れたりして、その先の細胞に栄養が届かなくなる「脳卒中」で倒れることを、昔から業界では「あたる」といい、一過性の前ぶれを「かする」という。

つまり「あたる」前に必ず「かする」前兆がある。

したがってこの段階で、“適切な”治療を受けていれば、頭蓋骨を開くというような恐ろしい経験をしなくとも済むかもしれないのだ。

新聞やテレビの報道を総合すると、座長の小林幸子さんは、「2日ほど前、若林さんが小林の楽屋に顔を出し、セリフが引っかかっちゃってゴメンネと謝りに来た。その時は、『長いセリフで大変でしょう』ってお話しはしました。
それが、まさかこの前兆だったと思うと言葉もありません」と話したという。テレビの芸能ニュースでは「右肩がなんとなく下がっているような気がした」と語っている。

このやり取りから判断すると、当時68歳の本人も54歳の座長もいい年、つまり心臓疾患や脳疾患の“適齢期”だというのに、これが重大な病気の前ぶれだと判断する知識をまったく持ち合わせていなかったようだ。

したがって、舞台を降りてでも病院に行くという発想には行き着かなかった。

「舞台に穴を開けられないと頑張ったのでは」と有名な仲間の芸能人が若林さんの芸人根性を褒めたつもりで感想を洩らしていたが、バカ丸出しだ。

もし「あるいは---」と感じながら、無理を通そうとしていたのなら、この年代にとって残った人生で何が一番大切なことか、プライオリティー、つまり優先順位について発想の転換が出来ていなかったということだろう。

変な言い方だが、ポックリいければまだいい方で、160万人以上が半身マヒや言語障害という後遺症で苦しんでいる。

本人だけではない。家族が、大きな負担を強いられることを考えると、「自分に限って---」などという根拠のない楽観は捨て去った方がいい。

救いは、心臓も脳も「あたる」前に「かする」、つまり前兆があるということだ。

その脳疾患の前兆は、
・ 片方の手足がしびれる
・ 持っているものをポロリと落とす、
・ 思っていることが言葉に出てこない、
・ ろれつがまわらなくなる
などなどだ。

心臓の血管(冠動脈)が狭くなる狭心症、完全に塞がる心筋梗塞も高齢者に多い疾患だが、よくよく思い出すとほとんどの人にその前兆がある。

血圧が高い、胸が痛くなったり、なんとなく重苦しい感じがしたりするが15分かそこらで治まるので、「ああよかった」とやり過ごす。

人によっては左の奥歯が痛くなったりうずいたりすることもあるが、このように心臓から遠いところに違和感を覚える人もいる。

これを専門的には「放散痛」というが、大概の人はこれが心筋梗塞の前兆であることに気づかない。

こんなときには、バカにせず、24時間緊急対応をしてくれる専門の医師と検査体制の整った病院へ行って診察を受けることが大切だ。
 
私は、10数年前からかすった段階で診察を受け、診察券を確保して、これを外出のときも肌身はなさず携帯して歩いている。

そのくらいの心掛けがなければ、attackでよしんば一命をとりとめても、半身不随では快適な老後は過ごせない。

よくよく振りかえると、ほとんどの高齢にかすって経験があるはずだ。「ああ---」と思った以上に多くの高齢者が、膝を叩くに違いない。

2019年07月21日

◆中国の金融危機が爆発する危険性大

宮崎 正弘


令和元年(2019)7月20日(土曜日)参 通巻第6149号  

 8月2日、中国の金融危機が爆発する危険性大
  中民投、5億ドル(540億円)の償還期限。手元現金ゼロ

中国民営投資集団(略称「中民投」)の債務危機については年初来、金融
界では常識となっていた。

いつデフォルトをやらかすか。債権者は固唾をのんで見守ってきた。実際
に2月初旬に返済期限のきた486億円の社債を償還出来ず、社債市場では
ジャンク債扱いだった。

中民投は2014年に中国の大手金融機関やファンドなど59社が出資し、不動
産投資、保険、ベンチャー、通信等「将来性のある」企業に投資してき
た。その資金は3%台の金利で、社債を発行してまかなった。しかし「社
債」とはすなわち借金である。

中民投資の社債残高は8634億円。このうちの540億円が8月2日に償還を
迎える。手元資金ゼロ、中国政府は、この金融投資集団を民間企業と見て
おり、救済義務はないとしているが、さて、もしデフォルトをやらかすと
社債市場にパニックが起こり、銀行に取り付け騒ぎが起こり、民衆に不安
心理が攪拌して行くだろう。

内蒙古省が拠点の「包商銀行」の事実上の倒産に対して中国政府は国家管
理として、事実上救済した。

もし同行を潰していれば、不良債権過多の銀行や信用組合が中国に400数
行あるため一気に金融危機の爆発を迎えるところだった。

これに関連するか、どうか。習近平は7月15日から2日間の日程で突如、
内蒙古視察に赴いた。劉?副首相、許基亮軍事副主席らが同席したが、北
戴河会議の直前でもあり、チベット、新彊ウィグル自治区の叛乱が続発す
る中、少数民族の弾圧がうまくいっているのか、反政府活動の芽があれ
ば、早急に摘めとする檄を飛ばしたとされる。
     
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読者の声  どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 
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   ♪
(読者の声1)貴誌6147号、ロシア製ミサイル迎撃システムS−300をト
ルコが導入したという記事ですが、文中ではS−400となっています。ど
ちらが正しいのでしょうか?(GH生、横須賀)

(宮崎正弘のコメント)うっかりでした。S−400です。S−300は旧型で
す。空輸していますね。おかしいです。

なぜなら中国向けのS−400は船舶で運送中に北極海あたりで嵐に遭遇し
て座礁、全部が破損したというニュースがありましたから、この空輸とい
う特別な輸送方法に、むしろ中国は不信感を抱いたと思います。


◆「風立ちぬ」の命日

渡部 亮次郎


5月28日。名作「風立ちぬ」の作者。20世紀の業病(号病)肺結核をモ
チーフにし、肺結核に倒れた堀辰雄の命日である。1953(昭和28)年のこ
とだった。

「風立ちぬ」という松田聖子のアルバムもあるが「立ちぬ」という感傷的
な語感を借りただけで、堀の作品とは無関係である。

堀 辰雄(ほり たつお)のことを知ったのは中学生の頃で、兄が読んでい
たのを勝手に読んだのかも知れない。死去した時は既に高校2年生。関心
は別のところに変わり、その死は知らなかった。

堀 辰雄は 明治37(1904)年12月28日、東京市麹町区平河町(現在は東京
都千代田区)で生まれた。 最終学歴は東京帝国大学国文科。

東京府立三中から第一高等学校へ入学。入学とともに神西清と知り合い、
終生の友人となる。

高校在学中に室生犀星や芥川龍之介とも知る。一方で、関東大震災の際に
母を失うという経験もあり、その後の彼の文学を形作ったのがこの期間で
あったといえる。

東京帝国大学文学部国文科入学後、中野重治や窪川鶴次郎たちと知り合う
かたわら、小林秀雄や永井龍男らの同人誌にも関係し、プロレタリア文学
派と芸術派という、昭和文学を代表する流れの両方とのつながりをもった。

1930(昭和5)年に『聖家族』で文壇デビュー。 このころから肺結核を
病み、軽井沢に療養することも多く、そこを舞台にした作品を多くのこし
たことにもつながっていく。

1934年、矢野綾子と婚約するが、彼女も肺を病んでいたために、翌年、
八ヶ岳山麓の富士見高原療養所にふたりで入院する。しかし、綾子はその
冬に死去。この体験が、堀の代表作として知られる『風立ちぬ』の題材と
なった。

この『風立ちぬ』では、ポール・ヴァレリーの『海辺の墓地』を引用して
いる。このころから折口信夫から日本の古典文学の手ほどきを受ける。

王朝文学に題材を得た『かげろふの日記』のような作品や、『大和路・信
濃路』(1943年)のような随想的文章を書き始める。また、現代の女性の
姿を描くことにも挑戦し、『菜穂子』(1941年)のような、既婚女性の家
庭の中での自立を描く作品にも才能を発揮した。

戦時下の不安な時代に、時流に安易に迎合しない堀の作風は、後進の世代
の中にも多くの支持を得た。また、堀自身も後進の面倒をよく見ており、
立原道造、中村真一郎、福永武彦らが弟子のような存在として知られている。

戦争末期からは症状も重くなり、戦後はほとんど作品の発表もできずに、
信濃追分で闘病生活を送った。

代表作「風立ちぬ」は1936(昭和11)年から執筆、『改造』などに分載さ
れたのち38年4月野田(のだ)書房より刊行。

「風立ちぬ、いざ生きめやも」とバレリーの詩句の引用をもって始め、リ
ルケの『鎮魂歌(レクイエム)』をエピローグに置く。

高原療養所とそこから山一つ隔てた「K村」とを舞台に、婚約者節子の病
床に寄り添い、やがて彼女に先だたれていく「私」が、死にさらされた自
分たちの生の意味と幸福の証(あかし)とを模索し、ついにそれらについ
ての確信を得ていく過程を描く。

婚約者矢野綾子の死という自らの痛切な体験を、詩情あふれることばのな
かで昇華し永遠の生の思想を訴えかけてくる点において、堀文学の代表的
名作となっている。
昭和28( 195年5月28日信濃追分(現・長野県北佐久郡軽井沢町)で死去
(満48歳没)2010・5・26
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


◆選挙を前に激化する、朝日の安倍批判 

   櫻井よしこ


7月4日、参議院議員選挙が公示され、世の中は選挙一色だ。その中で「朝
日新聞」の反安倍報道が際立っている。7日の1面に政治部次長、松田京平
氏の署名入りの記事が載った。「『嘲笑する政治』続けるのか」と題して
安倍晋三首相を次のように批判した。

「(安倍晋三首相は)民主党政権の失敗と比較して野党を揶揄、こき下ろ
す。身内で固まってあざ笑う―。自分が相手より上位にあり、見下し、排
除する意識がにじむ」、「『嘲笑する政治』が6年半、まかり通ってき
た」、「このまま『嘲笑の政治』が続くなら、民主主義は機能しない」、
という内容だ。

安倍憎しの感情がメラメラと燃えているようだ。しかし現実を見れば、国
民の多くが民主党政権の3年余りを「悪夢」と感じているのではないか。
首相が「身内で固まってあざ笑」っているわけではない。その証拠に、政
権を失った後、民主党の支持率は下がる一方だった。だからこそ、2017年
10月の衆議院議員選挙を前に、遂に全員が小池百合子氏の下に逃げ込もう
とした。しかし排除されて、立憲民主党が生れ、紆余曲折を経て国民民主
党も生れた。

民主党政権時代の「悪夢」の再来は厭だと、国民が骨身に沁みて感じてい
るからこそ、その後複数回の選挙で自民党が国民の支持を受け続けたので
ある。にも拘わらず、この6年半が安倍政権がただ民主党を「嘲笑する政
治」であったとすれば、国民が安倍氏を支持するはずもない。朝日の余り
に曲がった見方こそ国民の意思を「嘲笑」するもので、傲慢さを示している。

どんな時でも選挙は国政の行方を決める重要事だが、今月21日の参院選挙
には特別の重要さがつきまとう。結果によって、首相に期待されている憲
法改正が可能になるか、或いは先延ばしで事実上、改憲不能に陥るかが決
まるからだ。

憲法以外にも、経済、年金、北朝鮮と拉致、皇室など重要な問題が山積し
ている。これらの課題、とりわけ憲法改正に安倍首相が着手するのが朝日
新聞はいやなのであろう。それが常軌を逸した安倍首相批判につながって
いると見てよいだろう。7月3日の「天声人語」はその凄まじい一例だ。

首相を犬にたとえる

同欄で天声人語子は「あくびは伝染する」と書く。「米国が中国に仕掛け
た貿易戦争さながら、日本政府が韓国への輸出規制に乗り出した」とつな
げている。「韓国側にも問題がある」としながらも、安倍政権の措置は
「筋違い」だと切って捨て、次の下品な批判を展開する。

「ちなみに人のあくびは犬にも伝染するらしい。忠誠を尽くす飼い主から
とくに影響を受けやすいとの研究結果がある。日本政府の場合は、こちら
に近いか」

安倍政権、つまり安倍首相を犬にたとえるのか。こんな非礼は誰に対して
も許されない。だが、朝日は、首相にはどんな下品な批判でも許されると
思っているのであろう。この感覚こそ、「自分が相手より上位にあり、見
下」す視線ではないか。

右の非礼な天声人語と同じ日、朝日は「対韓輸出規制『報復』を即時撤回
せよ」という社説を掲げた。そこにはこう書かれている。

「近年の米国と中国が振りかざす愚行に、日本も加わるのか。自由貿易の
原則をねじ曲げる措置は即時撤回すべきである」

朝日社説子は、韓国への「輸出規制強化」をかつて中国が尖閣問題を巡っ
てレアアースの輸出を止めた事例や、トランプ政権が安全保障を理由に鉄
鋼などの関税を上げた事例と同列に置いて、安倍首相の措置を非難するの
である。

順序が後先になったが、経済産業省が「輸出管理を適切に実施する観点か
ら、大韓民国向けの輸出について厳格な制度の運用を行」うと発表したの
が7月1日だ。➀韓国をこれまで「ホワイト国」と見做してきたが、そのリ
ストから韓国を外す手続きを始める。➁4日からフッ化ポリイミド、レジ
スト、フッ化水素の3品目を包括輸出許可制度の対象外とし、個別の輸出
審査を行う、とした。

世耕弘成経済産業大臣は7月1日、右の措置の理由として「輸出管理で不適
切な事案が発生した」ことを挙げたが、「不適切な事案」の内容について
は「守秘義務」があるとし具体的説明を行わなかった。

経産省の発表は直ちに多方面から反応を引きおこした。その中のひとつに
中部大学特任教授細川昌彦氏(元経産省貿易管理部長)の解説がある。氏
はこれは「輸出規制発動」ではなく、04年から韓国を優遇して簡略化して
いた手続きを03年までの普通の手続きに戻すだけだと説明した。本来は契
約毎に個別の許可が必要だが、輸出管理の点で信頼できる国であると見做
されると「ホワイト国」に指定されて輸出手続きが簡略化される。その場
合、3年間有効な包括許可をとることが可能で、いつでも輸出できるとい
うものだ。

理不尽な政府批判

安倍首相も繰り返し述べている。

「輸出禁止ということではありません。徴用工(朝鮮人戦時労働者)問題
とも関係ありません。これまで韓国に認めていた優遇策を元にもどしただ
けです。EU諸国は元々韓国をホワイト国にはしておらず、わが国はEU
と同様の政策を韓国に対してとるということです」

こう強調した首相も、世耕氏が会見で語った「不適切な事案」について、
7日時点ではまだ説明していない。

他方細川氏は、韓国に輸出した先述の品目が北朝鮮に横流しされる事例が
頻繁に起きている、むしろ常態化していると明言する(7月7日「日曜報道
THE PRIME」)。

軍事目的にも転用される先述の物質が北朝鮮に横流しされているのであれ
ば、韓国をホワイト国リストから外すのは当然だ。また再度強調したいの
は、今回の措置が包括許可から個別許可に戻したにすぎないという点だ。
朝日は3日の社説で、中国のレアアース禁輸と較べたが、その比較自体が
的外れだ。

朝日の社説のもうひとつの間違いは、同措置を朝鮮人戦時労働者問題に対
する日本政府の報復だと見做していることだ。今回の措置はいわゆる徴用
工問題とは何ら関係がない。従って朝日が言う安倍政権が「政治の対立を
経済の交流にまで持ち込」んだという非難は当たらない。「外交当局の高
官協議で打開の模索を急ぐべきである」という主張も、的外れだ。第一、
日本側は徴用工問題で話し合いを呼びかけ続けたが、韓国側が応じないの
である。

朝日の理不尽な政府批判は、安倍自民党の勝利は改憲につながると見て阻
止する為であり、朝日の偏ったイデオロギーの産物にすぎないということ
だろう。

『週刊新潮』 2019年7月18日号日本ルネッサンス 第860回

◆リハビリって、再び生きること

向市 眞知 (ソーシャルワーカー)


「リハビリ」という用語は訳さなくてもよいくらい、日本語になってしまいました。しかし、この用語がとてもくせものです。皆がこの用語の前向きなところにごまかされ、便利に安易に使ってしまいます。


医師は最後の医療としてリハビリにのぞみをつなげる言い方をします。家族は家にもどるためにはリハビリを頑張ってほしいと期待をかけます。患者様もリハビリを頑張れば元どおりになれると思います。リハビリとは「再び生きる」という用語と聞きました。この概念で考えるととても幅広い概念です。


病院にはリハビリテーション科があり、そのスタッフには理学療法士、作業療法士、言語聴覚訓練士という、国家資格をもった専門技師がそろっています。身体機能回復訓練に携わるスタッフです。医師が「リハビリ」という用語を使う場合にはこのようなリハビリテーション科のスタッフによる訓練をさすだけではなく、「再び生きる」心構えをもちましょう、という意味を含んでいる場合が多いのです。


しかし、患者様、家族様のほうは、リハビリは療法士がするものと思い込んでいるケースが多いように思います。よく言われるのに「リハビリが少ない」、「リハビリをしてもらえない」というクレームがあります。療法士がするものだけがリハビリなら、診療報酬上点数がとれるのは一日20分から180分です。


「リハビリを受けさせたいから入院させてほしい」とよく言われますが、一日の何分の1かの時間のリハビリだけで「再び生きる」道のりを前に進むことはむずかしいものです。あとの時間をベッドに寝ているだけでは何の意味もありません。「リハビリのために入院している」というだけの安心感の意味しかありません。


いくら日本一の理学療法士の訓練をうけたといっても、患者本人が「リハビリをする(再び生きる)」心構えになっていなければ、空振りに終わってしまいます。マヒした身体に対して、拘縮してしまわないように理学療法士が外から力を加え訓練をすることはできます。でも、訓練が終わって身体を動かさなければもとのもくあみです。


しかし、言語訓練はそうはいきません。本人が声を出そう、話そうとしなければ訓練になりません。「絶対話すものか!」と口をつぐんでいる患者様に訓練は意味をなしません。まずは声を出してみよう、話してみようという気持ちになるように心理的にリラックスしてもらうことから訓練を始められると聞きました。


このことからわかるように、リハビリは本人次第なのです。そしてやはりリハビリも療法士と患者様の協同作業です。療法士さんの訓練の20分が終われば、患者様自らがもう一度リハビリのメニューをくりかえしてやってみることや、家族が面会時間に療法士に家族ができるリハビリを教えてもらい、リハビリの協力をしてみるなど、何倍にもふくらませていくことがリハビリの道のりなのです。


療法士さんまかせにしないこと、繰り返しやっていくこと、退院しても療法士さんがいなくてもリハビリ、再び生きる道のりは続いていること、それを実行するのは自分であることを忘れないでいてほしいと願っています。


2006年4月の診療報酬改定で更にこの認識が重要になってきています。療法士による機能回復訓練が継続してうけられる回数の上限が疾病により90日〜180日と定められました。これ以上の日数の訓練を続けても保険点数がつかないことになりました。医療機関は保険がきかなくなればリハビリを打ち切らざるをえません。

患者様も10割自費で料金を支払ってまでリハビリを続けることはできないでしょう。リハビリは入院の中でしかできないものではなく、退院しても自宅でもリハビリを続けていくいきごみが大切です。

2019年07月20日

◆「権現様はまだ生きていらっしゃるの?」

加瀬英明


令和の御代が明けた。

平成の最後の統一地方選挙中に広島に応援に行った帰りの航空便で、ス
チュワーデスに読むものを頼んだら、『週刊朝日』をくれた。

すると、新しい元号の『令和』は、命令、指令、令状の令であって、“安
倍一強”の傲りを示していると腐(くさ)していた。

私は令和から、令日、令人、令節とか、美徳や、善行を意味する令徳、ほ
まれの令聞、よい評判の令望などを連想していたので、きっと版元の新聞
社の雑誌担当者の令夫人が、夫を四六時中、小突き回すので、令の字に恨
みがあるのだろうと思って、身につまされた。

結婚は1国2制度だから、難しい。イギリスの大詩人のバイロンが、長編
風刺詩『ドン・ジュアン』のなかで、「人生という芝居の第1幕は恋愛と
いう喜劇、第2幕は結婚という悲劇」と指摘しているが、きっと人生は悲
喜劇なのだろう。だから人生は面白い。

機窓の外には、どこまでも青い空がひろがっていた。

私は鳥を飼ったことがないが、小鳥は美しくみえる黄金の籠のなかに住み
たいと願い、籠のなかに閉じ込められてしまった鳥は、大空をまた自由に
飛びまわりたいと、絶望に駆られるにちがいない。

フランスの諺に、「結婚の鎖は重い」というものがある。「だから3人で
運ばなければならない」と続いている。女房に秘密で恋人をもたねばなら
ないという、勧めだ。

平成が終わった。私は平成の30年間を、日本の周辺が風雲急を告げている
のに、アメリカによって押し付けられた欠陥憲法を、1行すら改められな
かったことによって、記憶しよう。

最高法規であるべき憲法の前文は、日本語として文法が目茶苦茶だ。どう
して国語審議会が目を瞑(つむ)ってきたのか。

この不真面目(ちゃらんぽらん)な憲法を真面目に解釈する法律学者たち
が、「専守防衛」とか、「必要最小限度の防衛力」とか、泥酔して錯乱し
たとしか思えないが、意味不明に解釈して国民の目を覆っている。

戦後の日本の金科玉条となっている「専守防衛」という言葉は、意味が
まったくないので、英語や、ヨーロッパ諸語に訳することができない。

そこで諸外国民を理解させるためには、来年、野球が東京オリンピックの
種目入りしたのを好機として、日本の選手がバッターボックスに立つ時に
は、バットを持たせないことにしよう。「専守」だから、日本チームに攻
撃となる打球を禁じる。

きっと、全世界が日本国憲法の崇高な精神に打たれて、感動しよう。

妻か夫が重い病いにかかったら、病院に「必要最小限度」の医療を施すよ
うに、頼もう。だが、いったい「必要最小限度」の医療なぞ、あるものだ
ろうか? それなら「必要最小限度」の国防も、あるはずがない。

妻か愛人に「これからは、必要最小限度の愛情を濯ごう」といったら、
「あほ! ふざけるな!」と一喝されて、たちまち張り飛ばされてしまおう。

こんなことを、毎日のように口角沫(あわ)を飛ばして議論している国会
は、精神科重症患者病棟という看板を掛けるべきだ。

日本国憲法の精神は、互いに「公正と信義」に委ねるべき夫婦のあいだ
か、愛人関係のなかに留めたい。

現行憲法は「平和憲法」の愛称によって罷り通っているが、「アメリカの
平和」のために強要したもので、占領軍総司令部が日本政府に「これを呑
まないと、天皇の一身の安全を保障できない」といって、英文の原案を手
渡してから、1年3ヶ月後に公布された。

大日本帝国憲法を全面的に書き改めたものだから、もし日本国民の手で改
正したのだったら、まさか、1年3ヶ月で公布できなかったろう。

アメリカ軍の施政下で現行憲法が施行されてから、今年で72年の歳月が流
れている。

いったい、どうして日本が独立国であることを頭から否定している、憲法
ととうてい呼べない憲法を、こんなに長いあいだ崇めてきたのだろうか。

占領軍が日本国民を洗脳して、東京裁判史観を植えつけたからだと説明さ
れるが、日本国民はそんなに愚かなのだろうか。

平成3年は、江戸開府400年に当たった。

日光東照宮が「江戸研究学会」を記念事業として立ちあげたが、私は江戸
時代は庶民が世界のなかでもっとも恵まれていた時代だったと書いたり、
講演してきたので、求められて会長を引き受けた。

江戸時代は平和がずっと続いて、庶民が豊かな生活を営み、絢爛たる文化
を創り出した。

だが、300年近く続いた平和は、明治以後の日本にとって呪いともなった。

徳川時代の日本は徳川家による支配を持続することが目的だったために、
新しい政治思想や、能力主義をいっさい斥けて、血筋と年功序列による硬
直した体制を墨守した。明治維新は徳川体制を根底からつくり直したか
ら、才気ある人々が国を導いたが、日清、日露戦争に勝つと、過剰な自信
の自家中毒を患うようになって、江戸時代へ戻ってしまった。

先の対米戦争で、日本はボロ負けした。政界から陸海軍まで、年功序列に
よった。帝国の興亡がかった真珠湾攻撃、ミッドウェー作戦の司令官は南
雲中将で、砲術の権威だったが、航空戦について無知だった。

江戸時代の武士は儒教漬けにされたのに、孫子の心髄の「兵は詭道也」
(敵を騙すこと)は、学ばなかった。武士道は精神修養の哲学に退化して
しまい、勝つことではなく、「死ぬ」ことに価値が与えられた。

高度経済成長による経済大国化は、日露戦争の勝利に似ていた。日本国憲
法がいつの間にか、権現様の祖法になってしまった。