2018年11月17日

◆中国の若者の起業を支援した私募債

宮崎 正弘


平成30年(2018年)11月15日(木曜日)通巻第5890号   

 中国の若者の起業を支援した私募債、ベンチャーキャピタルに冷風
   資金が集まりにくくなって前年比70%もの激減

和歌山県だったか、ウーバー型の相乗り自転車(シェアサイクル)。中国
資本がやってきて、客が殆ど付かず、すぐに倒産した。

中国でも競争が激しい上に主客のはずの大学生がモラルを守らず、乗り捨
て放題。なんと2500万台の自転車は焼却処分となった。

まったくビジネスにならず、そもそも日本ではウーバーなんて無理なの
だ。タクシーのウーバーは中国やアメリカなら、タクシーが少ないから成
功するだろう。日本は手を挙げればタクシーが停まる。地方都市へ行けば
駅にずらーっと空車が並んでいる。

運転手さんに聞くと、一ヶ月に7万円くらいの収入でもまぁまぁやってい
ける。定年組が、閑だから、家でぼぅっとしているよりはマシなのだという。

北京では朝夕、空車がいない。とくに夕方は一時間まっても空車がない。
付近で一台でもとまって客が降りると、支払いの前にさっさと助手席に乗
り込む。空車を拾うにも喧嘩腰、だからと言って地下鉄も乗り降りが命が
けである。

ドアが3秒くらいで開閉してしまうのだ。もし全員を始発駅からのせたら
 次の駅で一人も乗せられないからだ。

ベンチャービジネスで盛業中は出前ウーバー、貨物トラックなど。特に出
前ウーバーは独自の電話注文を受けて配達料金を取って代わりに配達する。

冒頭にのべたように、ウーバー型のシェアサイクルは中国でも駄目だっ
た。客が付かず、40社もあったウーバー自転車企業は、いま三社しか残っ
ていない。20億ドルのベンチャーキャピタルが回収不能となった。

これらのベンチャーは若者が起業し、地方政府は奨励金を払ったりオフィ
スのレンタルを無料にして支援し、また証券界、金融界は私募債を発行し
たり、ファンドがベンチャーキャピタルを組織した。

過去5年間のベンチャー、秋風から冷風にかわり、中国の私募債、ベン
チャーキャピタル業界は、冬の時代を迎えた。証券企業は政府の後押しも
あって積極的に私募債起債に協力し、また有望企業の上場にも積極的だっ
たが、年初来の上海株式の値崩れ(20%)、人民元の崩落予兆(すでに
10%の下落ぶり、中国人民銀行が1ドル=7元を突破されまいと連日為替
介入に貴重な外貨を投じている)

逼迫した市場の状況をみれば、ファンドが、以後も投資を続行するとは、
考えにくいだろう。

皆が第2のアリババを夢見た。

そしてアリババの再現はなかった。過去五年に投入された資金は1・2兆
ドルという。ブームだから、借り手の審査が緩く、とくに目論見書を巧み
に書いて(作文でありもしない市場をでっち上げる)、将来の薔薇色をか
たる才能がある、別な語彙でいうと詐欺師が、このブームを悪用しないは
ずがないだろう。

ことし9月までに600億ドルがあつまった。成功したベンチャーは殆どない。
       
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評BOOKREVIEW
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空の守りを引き受けて、F4ファントムは半世紀、日本防衛の最前線で戦った
愛着の深いパイロット、それを支えたメカニック集団のチームプレー

  ♪
小峯隆生著・柿谷哲也撮影『永遠の翼 F4ファントム』(並木書房)
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わが空自のエースだったF4ファントムは、あと二年で完全に引退する。
後継機はF35。日本の空を守り続けて半世紀。「有り難う! ファント
ム」の熱い思いを込めて、軍事ジャーナリストの小峯氏は、自衛隊基地を
訪ねて歩き、また製造元の取材を重ねた。

「F4は機械じゃない。生き物なのだ。格好良い猛獣なんだ」と喩えた猛
者もいた。

こうしたパイロットの経験談、指揮官の談話など防空の苦労もさりなが
ら、この人たちは本当にF4を愛したのだという切実な情感が湧いてくる。

若きパイロットの多くが、じつは『劇画ファントム無頼』を読んで、大空
の勇士にあこがれたのだという。だから小峯氏は原作者の史村翔氏のもと
にも駆けつけ、作家としての思いを聴くのだが、史村氏もまた航空自衛隊
出身者だった。

 彼は言う。

「百里でコクピットに座った時、やっぱりベトナムで戦い抜いた獰猛な生
き物だと実感した。ファントムに関わった人間にしかわからない愛着や魅
力を忘れることはない。そう、おまえは格好良い猛獣なんだ」。

 この名機はイスラエルでも空中戦で大活躍したが、欧州の空軍専門家ら
も、日本に見学に来てF4に感心し、写真を撮影して帰るという。

NATOの主力機はトーネードだが、やはり日本の、嘗てのゼロ戦フィア
ターが、いかにして操縦するのかを知りたがった。
 全盛期には六個飛行隊だったF4はいま2個。最後の飛行は301飛行
隊が行い、F35と交替する計画という。
 長いあいだ、お疲れ様!

◆韓国の左翼革命政権に、妥協は無用

櫻井よしこ


親しい韓国人の友人のひとり、洪熒氏が憤って言った。

「日本の人達は文在寅政権と韓国を同一視しています。保守勢力を中心
に、多くの韓国人が文政権のやり方に怒っていることを、日本のメディア
は伝えてくれません。我々は文政権の下で起きている異常事態に、日本人
と同じくらい怒っているのです」

洪氏は現在、日本で刊行されている新聞、「統一日報」の論説主幹を務め
ているが、かつて、在日韓国大使館の公使だった。日本との関わりはかれ
これ40年になる。

10月30日、韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に、「元
徴用工」4人への損害賠償金として4億ウォン(約4000万円)の支払いを命
じた判決、10月11日の国際観艦式に日本の海上自衛隊の旗を掲げないよう
に要求した一方で、豊臣秀吉軍を破った李舜臣(イスンシン)の旗(抗日
旗)を韓国軍艦に飾ったこと、2015年末に国際社会が注目する中で日韓両
外相が発表した、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決の蒸し返し
など、文政権の横紙破りは非常識極まる。

洪氏は、心ある韓国人は皆、文政権の暴挙を恥じている、日本の政府も国
民も、韓国国民と文政権を同一視しないで対韓政策を考えるべきで、そう
しなければ事態はますます悪い方向に進む、と懸念する。

まず、明確にしておくべき点は、今回の韓国人元労働者への補償に日本の
政府も企業も全く責任はないということだ。1965年の日韓請求権・経済協
力協定の第2条は、「国及びその国民(法人を含む)」の請求権問題は、
「完全かつ最終的に解決されたこと」を日韓両国が確認すると明記してい
る。賠償などの請求権問題は、個人のものも法人のものも全て解決済みだ
と両国政府が確認したのである。

日本政府は当時、念には念を入れて日韓間の議事録も交わした。その中
に、請求権に含まれるもの、つまり、全て解決済みとされるものは何かに
ついて八項目にわたる説明がある。戦時徴用労働者の未払い賃金と補償も
含まれており、解決済みであることを二重三重に明記している。

徴用工ではなかった

安倍晋三首相が、判決直後に間髪を入れず、「国際法に照らしてあり得な
い判断だ」と述べたのは当然なのである。一方で首相は重要なことを指摘
した。この裁判の原告4人は徴用工ではなく、「旧朝鮮半島出身の労働
者」だと語った。これこそ大事な点である。

これまで、韓国側は無論、私も含めた日本のメディアはみな、4人の原告
を「元徴用工」だとしてきた。日韓両政府もそのように呼んできた。司法
の場で徴用工と言われてきたことをそのまま信用してきたわけだ。

徴用とは「国家権力により国民を強制的に動員し、一定の業務に従事させ
ること」(広辞苑)だ。一旦発せられれば国民は拒否出来ない。

朝鮮半島での戦時労働動員には三つの形態があった。第一は1939〜41年に
企業の募集担当者が朝鮮に渡り実施した「募集」である。

第二が42年から44年9月までの期間、朝鮮総督府が各市・郡などに動員数
を割り当て、行政の責任で募集し民間企業に割り振った「官斡旋」であ
る。お役所が仲介した募集だが、職場や職種について納得いかなければ断
る自由があった。

第三が、44年9月から45年3月ごろまで発動した「徴用」である。

原告4人はいずれも募集に応じた労働者だった。4人の内の二人は43年9月
に平壌で日本製鉄(新日鉄住金の前身)の工員募集広告を見て応募し、面
接に合格して、募集担当者に引率されて渡日し、大阪製鉄所の訓練工と
なった。

もう一人は41年、大田(テジョン)市長の推薦で勤労奉仕の「報国隊」に入
り、日本製鉄の募集に応じ、担当者に引率されて渡日し、釜石製鉄所の工
員となった。

最後の一人は43年1月、群山府(現在の群山市)の指示で募集に応じ、日
本製鉄募集担当者の引率で渡日、八幡製鉄所工員となった。

つまり、4人とも徴用の始まる44年9月以前に、募集に応じて日本に働きに
来た労働者である。彼らは民間企業と契約を結んで渡日した。戦争が長引
くにつれて日本の男性の多くが徴兵され、国内産業を支える人手不足が顕
著になっていた状況の下、彼らに対する待遇は総じてよかった。

4人が徴用工ではなかったことをつきとめたのは、シンクタンク「国家基
本問題研究所」研究員で朝鮮問題の専門家、西岡力氏である。氏はこの事
実を韓国大法院の判決書で発見した。日本の常識で判断すれば、間違った
事実に基づく韓国大法院の判決は無効なはずだ。ただそう考えるのは日本
人だけで、韓国側は募集も官斡旋も全て強制的な徴用だと主張しているた
め、全く、話が通じない。

一切の妥協は不要

それでも、安倍首相が国会の場でこの事実を明らかにしたことは非常に重
要である。黒を白と言いくるめる韓国のやり方と、そのような手法を駆使
する文在寅政権のいかがわしさを、鋭く抉り出して見せたからだ。

文政権下の韓国で進行中の事態は教育、軍、司法、外交のいずれにおいて
も通常の法治国家では考えられない異常なものだ。一連の事柄は韓国がも
はや真っ当な民主主義の国などではなく、社会主義革命のまっ只中にある
と認識すれば納得がいく。

革命勢力は、秩序の全て、条約も契約も常識も紙クズのように破り捨て
る。現在、文政権が行っているのがまさしくそれだ。彼らは日本に不当な
判決をつきつけ巨額の資金をむしり取り、日本を貶めようとする。

洪氏は、革命政権の文氏が日本を不条理に責めたてるように、韓国の大半
の国民に対しても親北朝鮮社会主義革命を押しつけると指摘する。

このような文政権に対し、韓国内で反対の狼煙が上がり始めた。

「大将(ジェネラル)の会である星友会が、このままでは北朝鮮に韓国が席
巻されるとして、文政権の対北宥和策に警告を発しました。9月21日には
民間人3000人が文氏を与敵罪で告発しました。有罪になれば死刑しかない
重い告発です。元大使の外交官らが文政権は韓国の安保体制を蹂躙してい
るとして『弾劾』の声明文を発表しました。当初大使30人で始まった告発
ですが、参加希望の元大使らが次々に集まり、50人までふえました。いざ
となると弱腰の外交官でさえ、文政権に反対表明をするようになったので
す。日本のメディアはなぜこうした事を伝えないのでしょうか」

と洪氏は語る。

今回の「旧朝鮮半島出身労働者問題」は、このような全体像の中でとらえ
るべきで、革命志向の文政権に一切の妥協は不要なのだ。同時に日本は、
韓国が近未来には敵対する存在となることを肝に銘じ、憲法改正をはじ
め、日本の地力を強める施策を急ぐのがよい。

『週刊新潮』 2018年11月15日号 日本ルネッサンス 第827回


◆パイナップルも無かった

渡部 亮次郎


朝と昼の食事のあとは果物を必ず食べる。だから秋は楽しい。果物の種類
が豊富だからだ。冬が近付くとみかんに混じってときどき供されるのがパ
イナップルだ。

南国の果物だから生まれ育った秋田では子ども時代はお目にかからなかっ
た。敗戦後、缶詰を初めてたべて美味しかった。しかし生を食べたのは大
人になって上京後である。

アメリカから返還される前に特派員として渡った沖縄では畑に植わってい
るのを沢山見たが、なぜか食べなかった。今、東京のデパートで売られて
いるのは100%フィリピン産である。

「ウィキペディア」によれば、パイナップルの原産地はブラジル、パラナ
川とパラグアイ川の流域地方。この地でトゥピ語族のグアラニー語を用い
る先住民により、果物として栽培化されたものである。

15世紀末、ヨーロッパ人が新大陸へ到達した時は、既に新世界の各地に伝
播、栽培されていた。 クリストファー・コロンブスの第2次探検隊が1493
年11月4日、西インド諸島のグアドループ島で発見してからは急速に他の
大陸に伝わった。

1513年には早くもスペインにもたらされ、次いで当時発見されたインド航
路に乗り、たちまちアフリカ、アジアの熱帯地方へ伝わった。

当時海外の布教に力を注いでいたイエズス会の修道士たちは、この新しい
果物を、時のインド皇帝アクバルへの貢物として贈ったと伝えられる。

次いでフィリピンへは1558年、ジャワでは1599年に伝わり広く普及して
行った。そして1605年にはマカオに伝わり、福建を経て、1650年ごろ台湾
に導入された。

日本には1830年東京の小笠原諸島・父島に初めて植えられたが、1845年に
オランダ船が長崎へもたらした記録もある。

パイナップル(レユニオン)は植付け後15〜18か月で収穫が始まる。自然
下の主収穫期は、たとえば沖縄では7〜9月と11〜翌年2月である。

1年を通した生産面の労働力の分配や缶詰工場の平準化を図り、植物ホル
モンであるエチレンやアセチレン(カーバイドに水を加えて発生させ
る)、エスレル(2-クロロエチルホスホン酸)、を植物成長調整剤として
利用し、計画的に花芽形成を促して収穫調節を施している。

栽培適地は年平均気温摂氏20度以上で年降水量1300mm内外の熱帯の平地か
ら海抜800mくらいまでの排水の良い肥沃な砂質土壌である。

世界生産量の約5割がアジア州で、残りの5割はアフリカ州、北アメリカ
州、南アメリカ州の間でほぼ均等に分かれている。

2002年時点のFAOの統計によると世界生産量は1485万トン。1985年時点に
比べて60%以上拡大している。主要生産国はタイ (13.3%)、フィリピン
(11.0%)、ブラジル (9.9%)、中国 (8.6%)、インド (7.4%)、コスタリカ、
ナイジェリア、ケニア、メキシコ、インドネシアである。

1985年の世界総生産は923万トンで、主産地はタイ、フィリピン、ブラジ
ル、インド、アメリカ、ベトナムなどである。日本では沖縄県が主産地で
2002年時点では1万トンである。

1985年から2002年までのシェアの推移をたどると、米国のシェアが6%から
2%までじりじり下がっていることが特徴である。既に米国は上位10カ国に
含まれていない。2012・11・06

◆著作物ってなに!?

川原 俊明


 著作物といって頭に浮かぶものは何でしょうか?

 おそらく、ゲームのプログラム、小説、漫画のキャラクター、歌詞とかいったものでしょう。

 著作物が一体何であるかを知らなければ、気づかないうちに著作権を侵害してしまい、著作権者から突然訴えられることにもなりかねません。

 そこで、あらかじめ著作物が何であるかを知っておくことは大切なことです。

 著作権法上、著作物として「言語」「音楽」「舞踏、無言劇」「美術」「建築」「地図、図形」「映画」「写真」「プログラム」の9種類が挙げられていますが、これは、あくまでも例示であって、これら以外にも、「思想または感情を」「創作的に」「表現したもので」「文芸、学術、美術または音楽の範囲に属する」と言えれば、著作物にあたり、法律上保護されることになります。

 この著作物にあたるかのポイントとは、「思想または感情を」「創作的に」といえるかどうかですが、「新聞」「写真」を例に挙げて著作物にあたるか検討してみましょう。

 まず、「新聞」について、「記事」は著作物にあたりますが、「見出し」は著作物にあたりません。なぜなら、「記事」は、記者が独自の取材をもとにして、思考をこらして作られるものであることから、まさしく「思想または感情を創作」しているからです。

これに対して、「見出し」は、とても短く、キーワードの羅列にすぎない場合も多く、誰もが考えつく表現が多く、思想が創作的に表現されたものとは言えません。
 
 次に、「写真」について、「スナップ写真」は著作物にあたりますが、「証明写真」は著作物にあたりません。なぜなら、「スナップ写真」は、撮影者のシャッターを押すタイミング、撮影のアングル、光のあて方によって、写真の出来がかわるものであり、撮影者による独自の撮影方法によるところが大きく創作的に表現されたものと言えるからです。

これに対して、「証明写真」は、単に機械的に撮影されるものであり、撮影者による「思想または感情」を表現したものとは言えないからです。
 
 最後に私が今書いているこの文章はどうでしょうか?

これが文芸と言えるかどうかについては、意見が分かれるところですが、私が「著作物」に関する文章を「思想を創作的に表現している」ことにはまちがいではないので、まさしく著作物にあたることになります。

ですので、私に無断でこの文章をコピーして販売することになれば、私に対する著作権を侵害することになりますので、みなさま、ご注意くださいね。(笑)

530-0047 大阪市北区西天満2丁目10番2号 幸田ビル8階  
弁護士法人 川原総合法律事務所      
弁護士 川 原 俊 明 

2018年11月16日

◆中国は前車ソ連の轍を踏むことになるのか

加瀬 英明


米中貿易戦争――あるいは関税戦争をめぐって世論がかまびすしいが、米中
関係のごく一部しか見ていない。

トランプ大統領は中国の共産体制を崩壊させることを決意して、中国と対
決してゆく方針を固めた。

習主席は面子にこだわって、関税戦争を受けて立っているが、中国経済が
アメリカ市場に依存しているために、すでに蹌踉(よろめ)いている。

いまではワシントンで、この間まで親中派だった国務省、主要シンクタン
クも、中国と対決することを支持している。アメリカの中国観の地殻変動だ。

トランプ大統領が中国という“悪の帝国”を倒す戦略の中核にあるのが、テ
クノロジーだ。同盟諸国とともに、先端技術の中国への流出を阻む、兵糧
攻めにするのだ。関税戦争や、軍拡競争は脇役になる。

かつてレーガン大統領が、“悪の帝国(イービル・エンパイア)”と極め付け
たソ連を追いつめたのも、アメリカを中心とする、自由世界のテクノロ
ジーの力によるものだった。

中国はテクノロジー後進国だ。宇宙ロケットを打ち上げられても、
ジェット機のエンジンをつくれないので、ロシアから買っている。

中国の指導部は何千年にもわたって、中華思想による知的障害を患って
きたために、弱い相手は呑み込むものの、まともな対外戦略をたてられな
い。力を持つようになると慢心して、外国を見下すために、傲慢に振る舞う。

中華思想は、中禍思想と書くべきだ。ロシアは戦略が巧妙だが、中国は
中華主義の自家中毒によって、視野が狭窄している。

中国は今世紀に入ってから、かつてのソ連と同じように、自壊への道を
進むようになっている。ソ連は1991年に崩壊した。

効率が悪い計画経済によって病んでいたのに、無人のシベリア沿海州の
開発に国力を浪費し、東ヨーロッパの衛星諸国という重荷をかかえたうえ
に、第3世界に進出するのに力を注いだために、アメリカとの競争に耐え
られなくなって、倒壊した。

クレムリンの最高指導者は、非科学的なマルクス主義の予言に従って、
ソ連が世界を支配するという使命感にとらわれて世界制覇を急いだため
に、墓穴を掘った。

習主席も「偉大なる5000年の中華文明の復興」という、自らの掛け 声に
陶酔して、見せかけだけが壮大な「一帯一路」計画と、大海軍の建設 を
強行しているが、第2次大戦後にソ連が歩んだ道程によく似ている。

中国は分離独立闘争を恐れて、新疆ウィグル自治区や、チベットをはじ
めとする西域や、中部や、北部に過大な投資を行っている。

「一帯一路」計画は、アジアからヨーロッパまで70ヶ国近くを、“幻 (ま
ぼろし)の中華圏”に取り込もうとする杜撰(ずさん)きわまる大計画だ
が、マレーシア、ミャンマー、パキスタンなど多くの諸国で、すでに挫折
するようになっている。

ソ連は1950年代から60年代にかけて、日本についで経済成長率 が高かっ
た。私はソ連が1957年にアメリカに先駆けて、人工衛星『ス プートニ
ク』を軌道に乗せた時に20歳だったが、よく覚えている。その 4年後に
世界最初の有人衛星飛行を行って、アメリカの朝野を震駭させた もの
だった。

ソ連では1970年代に入ると、少子高齢化が進むようになって、旺盛 な高
度成長を支えた、豊富な安い労働力が失われるようになった。中国で も
同じことが、起っている。

私はかねてから、中国人は昔から「吃(ツー)(食事)」「喝(フー)(飲
酒)」「嫖(ピャオ)(淫らな遊女)」「賭(トウ)(博打(ばくち))」「大
聴戯(チーティンシ)(京劇)」の5つを、生き甲斐にしていると、説いて
きた。

清朝の歴代の皇帝も、毛沢東、周恩来、江青夫人も、江沢民元主席も、
みな京劇マニアだった。

京劇は甲高い声に、耳を聾するけたたましい音曲と、大袈裟な所作に
よって、誇大妄想を煽る舞台劇だ。

習主席が好む大規模な軍事パレードや、急拵(こしら)えの航空母艦を中
心とする大海軍や、絵に描いた餅のような「一帯一路」は、京劇の舞台装
置を思わせる。清朝を崩壊させた西太后も、京劇マニアだった。

現在、中国海軍は艦艇数が317隻で、アメリカ海軍の283隻を上回 る。
西太后が日清戦争前夜に、北京西郊の頤和園の湖岸に、巨額の国費を 投
じて建造した、大理石の巨船の“21世紀版”だ。


◆韓国の左翼革命政権に

櫻井よしこ


「韓国の左翼革命政権に、妥協は無用」

親しい韓国人の友人のひとり、洪熒氏が憤って言った。

「日本の人達は文在寅政権と韓国を同一視しています。保守勢力を中心
に、多くの韓国人が文政権のやり方に怒っていることを、日本のメディア
は伝えてくれません。我々は文政権の下で起きている異常事態に、日本人
と同じくらい怒っているのです」

洪氏は現在、日本で刊行されている新聞、「統一日報」の論説主幹を務め
ているが、かつて、在日韓国大使館の公使だった。日本との関わりはかれ
これ40年になる。

10月30日、韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に、「元
徴用工」4人への損害賠償金として4億ウォン(約4000万円)の支払いを命
じた判決、10月11日の国際観艦式に日本の海上自衛隊の旗を掲げないよう
に要求した一方で、豊臣秀吉軍を破った李舜臣(イスンシン)の旗(抗日
旗)を韓国軍艦に飾ったこと、2015年末に国際社会が注目する中で日韓両
外相が発表した、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決の蒸し返し
など、文政権の横紙破りは非常識極まる。

洪氏は、心ある韓国人は皆、文政権の暴挙を恥じている、日本の政府も国
民も、韓国国民と文政権を同一視しないで対韓政策を考えるべきで、そう
しなければ事態はますます悪い方向に進む、と懸念する。

まず、明確にしておくべき点は、今回の韓国人元労働者への補償に日本の
政府も企業も全く責任はないということだ。1965年の日韓請求権・経済協
力協定の第2条は、「国及びその国民(法人を含む)」の請求権問題は、
「完全かつ最終的に解決されたこと」を日韓両国が確認すると明記してい
る。賠償などの請求権問題は、個人のものも法人のものも全て解決済みだ
と両国政府が確認したのである。

日本政府は当時、念には念を入れて日韓間の議事録も交わした。その中
に、請求権に含まれるもの、つまり、全て解決済みとされるものは何かに
ついて八項目にわたる説明がある。戦時徴用労働者の未払い賃金と補償も
含まれており、解決済みであることを二重三重に明記している。

徴用工ではなかった

安倍晋三首相が、判決直後に間髪を入れず、「国際法に照らしてあり得な
い判断だ」と述べたのは当然なのである。一方で首相は重要なことを指摘
した。この裁判の原告4人は徴用工ではなく、「旧朝鮮半島出身の労働
者」だと語った。これこそ大事な点である。

これまで、韓国側は無論、私も含めた日本のメディアはみな、4人の原告
を「元徴用工」だとしてきた。日韓両政府もそのように呼んできた。司法
の場で徴用工と言われてきたことをそのまま信用してきたわけだ。

徴用とは「国家権力により国民を強制的に動員し、一定の業務に従事させ
ること」(広辞苑)だ。一旦発せられれば国民は拒否出来ない。

朝鮮半島での戦時労働動員には三つの形態があった。第一は1939〜41年に
企業の募集担当者が朝鮮に渡り実施した「募集」である。

第二が42年から44年9月までの期間、朝鮮総督府が各市・郡などに動員数
を割り当て、行政の責任で募集し民間企業に割り振った「官斡旋」であ
る。お役所が仲介した募集だが、職場や職種について納得いかなければ断
る自由があった。

第三が、44年9月から45年3月ごろまで発動した「徴用」である。

原告4人はいずれも募集に応じた労働者だった。4人の内の二人は43年9月
に平壌で日本製鉄(新日鉄住金の前身)の工員募集広告を見て応募し、面
接に合格して、募集担当者に引率されて渡日し、大阪製鉄所の訓練工と
なった。

もう一人は41年、大田(テジョン)市長の推薦で勤労奉仕の「報国隊」に入
り、日本製鉄の募集に応じ、担当者に引率されて渡日し、釜石製鉄所の工
員となった。

最後の一人は43年1月、群山府(現在の群山市)の指示で募集に応じ、日
本製鉄募集担当者の引率で渡日、八幡製鉄所工員となった。

つまり、4人とも徴用の始まる44年9月以前に、募集に応じて日本に働きに
来た労働者である。彼らは民間企業と契約を結んで渡日した。戦争が長引
くにつれて日本の男性の多くが徴兵され、国内産業を支える人手不足が顕
著になっていた状況の下、彼らに対する待遇は総じてよかった。

4人が徴用工ではなかったことをつきとめたのは、シンクタンク「国家基
本問題研究所」研究員で朝鮮問題の専門家、西岡力氏である。氏はこの事
実を韓国大法院の判決書で発見した。日本の常識で判断すれば、間違った
事実に基づく韓国大法院の判決は無効なはずだ。ただそう考えるのは日本
人だけで、韓国側は募集も官斡旋も全て強制的な徴用だと主張しているた
め、全く、話が通じない。

一切の妥協は不要

それでも、安倍首相が国会の場でこの事実を明らかにしたことは非常に重
要である。黒を白と言いくるめる韓国のやり方と、そのような手法を駆使
する文在寅政権のいかがわしさを、鋭く抉り出して見せたからだ。

文政権下の韓国で進行中の事態は教育、軍、司法、外交のいずれにおいて
も通常の法治国家では考えられない異常なものだ。一連の事柄は韓国がも
はや真っ当な民主主義の国などではなく、社会主義革命のまっ只中にある
と認識すれば納得がいく。

革命勢力は、秩序の全て、条約も契約も常識も紙クズのように破り捨て
る。現在、文政権が行っているのがまさしくそれだ。彼らは日本に不当な
判決をつきつけ巨額の資金をむしり取り、日本を貶めようとする。

洪氏は、革命政権の文氏が日本を不条理に責めたてるように、韓国の大半
の国民に対しても親北朝鮮社会主義革命を押しつけると指摘する。

このような文政権に対し、韓国内で反対の狼煙が上がり始めた。

「大将(ジェネラル)の会である星友会が、このままでは北朝鮮に韓国が席
巻されるとして、文政権の対北宥和策に警告を発しました。9月21日には
民間人3000人が文氏を与敵罪で告発しました。有罪になれば死刑しかない
重い告発です。元大使の外交官らが文政権は韓国の安保体制を蹂躙してい
るとして『弾劾』の声明文を発表しました。当初大使30人で始まった告発
ですが、参加希望の元大使らが次々に集まり、50人までふえました。いざ
となると弱腰の外交官でさえ、文政権に反対表明をするようになったので
す。日本のメディアはなぜこうした事を伝えないのでしょうか」

と洪氏は語る。

今回の「旧朝鮮半島出身労働者問題」は、このような全体像の中でとらえ
るべきで、革命志向の文政権に一切の妥協は不要なのだ。同時に日本は、
韓国が近未来には敵対する存在となることを肝に銘じ、憲法改正をはじ
め、日本の地力を強める施策を急ぐのがよい。

『週刊新潮』 2018年11月15日号 日本ルネッサンス 第827回

◆大阪にある「自然の滝」

毛馬 一三


大阪のまち中に、自然の「滝」があることを知ってる?と訊いても、多分大方の人は首を傾げるに違いない。ビルの屹立する大都会大阪のまち中で、そんな湧き水が集まり、「滝」となって流れ落ちる光景など想像出来ないからだろう。

紛れも無く私もその一人だった。が、つい先日知人が話の序でに教えてくれた上、そこに案内までしてくれたことがきっかけで、「大阪市内で唯一の滝」の在りかを知ることが出来た。

その「滝」は、大阪市市内の夕陽が丘近郊にあった。「玉出の滝」といった。聖徳太子が建立した四天王寺前の大阪市営地下鉄「夕陽ヶ丘駅」を出て谷町筋から西に向かうと、「天王寺七坂」や「安居神社」、「一心寺」など、寺社や名所が点在する上町台地の歴史のまち、伶人町の中にある。

その天王寺七坂のひとつ、清水坂を登り、細い道を行くと清水寺に着く。本堂の前を抜けて墓地に挟まれた石段にさしかかると、水音がかすかに耳朶を打った。足早にそちらに向かうと、目指す「玉出の滝」に着いた。

「玉出の滝」は、「那智の滝(和歌山)や不動の滝山(岩手)」のように山の頂上から滝壺めがけて怒涛のように流れ落ちる巨大な滝とはスケールが違う。

境内南側の崖から突き出した三つの石造樋から、水道水と同じ程度の量の水がまとまって流れ落ちる、こじまりとした滝だ。

しかし5メートル下の石畳を打つ三筋の水の音は、大きな響きを伴い、その響きは人の心の奥底の隅々にまで行き渡る、いかにも「行場の滝」という感じだ。

知人によると、この「滝」には、落水で修行する常連の人がいるが、新年には滝に打たれて、延命長寿などを祈願する人が訪れるという。

実は、この「玉出の滝」を見た瞬間、京都の清水寺にある「音羽の滝」と瓜二つだと感じた。私の亡くなった母親のいとこの嫁ぎ先が京都清水寺の皿坂にある清水焼の窯元だったので、そこに遊びに行った時見たのが、この「音羽の滝」だった。

案の定、この清水寺は京都の清水寺を、寛永17(1641)年に模して建立した寺で、かつては京の清水にあるような懸造りの舞台も存在していたらしい。

さて、大阪唯一のこの「玉出の滝」は、近くにある四天王寺の金堂の下の清竜池から湧き出る霊水が、ここまで流れてきて滝となっているという言い伝えもあるところから、大阪の歴史の香りと地形の面白さを感じさせてくれる。

余談ながら、この「玉出の滝」の側に、冒頭に記した「安居天神」がある。真田幸村の憤死の跡として知られている神社である。

大阪夏の陣で決戦を挑んだ西軍の真田幸村は、天王寺口(茶臼山付近)に布陣した。徳川方の主力が天王寺方面に進出してくることを予測してのことである。

真田幸村の狙いは、家康の首を取り豊臣家を再興させる戦略だった。真田隊は一丸となって突撃を開始、東軍の先鋒越前軍一万三千を撃破。ついに家康の本陣営に突入。この真田陣の猛攻で、家康の旗本は大混乱に陥り、ついに家康の馬印までが倒されたという。

馬印が倒されたのは、武田信玄に惨敗した三方ヶ原の戦い以来、2度目だった。家康も本気で腹を切ろうとしらしいが、側近に制止され思い止まる。家康が幾多の合戦で切腹の決断を迫られたのは、後にも先にも生涯でこれが2度目である。

だが、真田隊も猛反撃に遭って劣勢となり、今度は家康が、総攻撃を命じた。幸村の要請にも拘らず大阪城からの加勢は現れず、戦場で傷ついた幸村は、ここ「安居天神」の中の樹木に腰を下ろして手当てをしているところを、越前軍の兵に槍で刺され、落命した。

こんな大都会のまちのまん中で、行場ともいうべき市内で唯一の「玉出の滝」が、真田幸村の戦場の近くであったことなどと結びつけて思い馳せていくと、この小さい滝の周辺は見て回るだけでも楽しい歴史が蘇ってくる。(了 再掲)

2018年11月15日

◆危うい歯舞、色丹の「2島先行返還論」

杉浦 正章


プーチンは国後、択捉の現状固定狙う

日露首脳会談の焦点は言うまでもなく、北方領土問題であったが、首相・
安倍晋三の成果を急ぐ姿勢が目立ち、プーチンに「技あり」を取られかね
ない側面が生じた。なぜかと言えば日本が「四島返還」より「歯舞、色丹
の2島先行」に傾斜したと受け取れるからだ。

安倍は56年の日ソ共同宣言の「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行
い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す」に回帰し
て、とりあえずは二島返還で平和条約交渉を先行させる構えを垣間見せて
いる。しかし、したたかなプーチンが先行返還と言っても他の2島を返還
する可能性はゼロに近いと見るべきだろう。

問題は、56年共同宣言に盛られた北方領土は「歯舞群島と色丹島」だけで
あり、国後、択捉への言及がないことだ。ロシアの「二島での食い逃げ」
は当然予想できることである。にもかかわらず2党返還で平和条約を締結
することになれば、ロシア側は日本の譲歩と国内的に喧伝する意図があり
ありだからだ。なぜならプーチンはかねてから「国後、択捉は議論の対象
にならない」と主張してきており、それが実現したと受けとれるからだ。

あきれたことにプーチンは、歯舞群島と色丹島についても「日本に引き
渡された後の2島に日露どちらの主権が及ぶかは共同宣言に書かれていな
い。今後の交渉次第だ」と、引き渡した後もロシアの主権が及ぶという姿
勢を貫こうとしている。したたかにも交渉のハードルを上げてロシアの主
権を主張する意図がありありだ。クリミア併合で国内の評価が急上昇した
“甘い汁”を北方領土でもう一度という魂胆が垣間見える。

プーチンは国際的にウクライナの領土と見なされていたクリミア自治共和
国、セヴァストポリ特別市をロシア連邦の領土に加えることに成功した。
1991年にソビエト連邦が崩壊し、ロシア連邦が成立した後、ロシアにとっ
て本格的な領土拡大となった。北方領土で譲歩すればクリミアで得た国民
の評価を、一挙に灰燼に帰することになるのが構図だ。

さらに重要なのはロシアには北方領土を日本に渡せば、米軍が常駐しない
までも、一朝有事の際は島々が米軍の不沈空母となりかねないと言う危惧
がある。地政学的には極東における日米の安全保障上の立場を強化するこ
とになる。当然予想される事態だ。

 最近の対露交渉で懸念されるのは、プーチンの「食い逃げ」である。
プーチンの狙いは、日本の経済協力であり、その発言から見る限り領土問
題での譲歩は、そぶりすら見せていない。日本側には通算22回も会談する
のだから「めどくらい立つだろう」との期待が強いが、表だって目立つの
はプーチンのしたたかさだ。安倍の会談の目的は領土問題だが、プーチン
には会談すること自体を重視しているかに見える。

加えて、プーチンは10月に公的な会合で「日露間に領土問題は存在してい
ない」と言明、交渉姿勢を分析すれば「ゼロ回答」ばかりが透けて見え
る。今後安倍は、月末のブエノスアイレスでの主要20か国首脳会議でも首
脳会談を行うし、来年には早い時期に訪露する方針である。

ロシア経済は原油価格の低迷によって2015年、16年と2年連続で景気後退
に陥ったものの、価格の持ち直しで2017年の同国の実質国内総生産が前年
比で1.5%増え3年ぶりのプラス成長を達成。2018年も2年連続のプラス成長
が見込まれている。

したたかなプーチンは堅調なロシア経済を背景に強気の外交姿勢を維持す
るものとみられ、突き崩すのは容易ではあるまい。安倍としては、来年夏
には参院選があり、急進展があれば別だが、対露外交はよほどの進展がな
い限り選挙のプラス材料にはなりにくいのが実情だ。

◆こんどはマダガスカルが。。

宮崎 正弘


平成30年(2018年)11月14日(水曜日)弐 通巻第5889号   

こんどはマダガスカルが「あの国」に狙われた
 カヌー漁業へいきなり近代漁船330隻を投入、大統領のスキャンダルに発展

マダガスカル? 地球の何処にある?

アフリカ東海岸モザンビークの東沖合400キロに浮かぶ島。しかし「島」
とは言っても面積は日本の1・6倍、人口は2200万人強。大半の国民は一
日2ドルで暮らす最貧国。もとはフランス植民地だった。

突然、この国にスポットが当たったのは、テレビの旅行番組だった。

マダガスカルにしかいない「横っ飛びの猿」(ベローシファカ)、キツネ
ザルなど珍しい動物とキノコのお化けのような木々がジャングルに群生す
るという不思議。自然に興味の向き是非とも行ってみたいと思うかも知れ
ない。かくいう筆者、1985年に一度、行っている(といっても正確に言う
と、ヨハネスブルグの帰路、2時間ほどトランジットしただけですが)。

世界政治から、突然、マダガスカルが注目を浴びたのは「コバルト」だっ
た。世界のコバルト消費量の48%が中国、20%が日本。スマホの急発展に
よって、リチゥムイオン電池の需要が急伸し、その基幹のレアメタルがコ
バルトである。

日本の企業も、コバルト輸入には神経質となっており、げんにコバルト価
格は過去3年で4倍に膨れあがっている。世界一のコバルト生産はコンゴ
民主共和国(昔のザイール)。鉱山経営のアメリカ企業から、中国はぽん
と26億ドルのキャッシュを支払って筆頭株主となっている。

このコバルトがマダガスカルで生産されているのだ。日本企業もはやばや
と住友商事がコバルト鉱山開発に手を染めている。コバルトは銅、ニッケ
ル鉱に付随して産出されるので、精錬に高度の技術が必要とされる。

それまでは旧宗主国フランスも経済支援には投げやりで、なにしろ主要部
族だけで16。多くの部族語はボルネオあたりから漂着したマレー語が源流
とも言われる。統一言語がないため、フランス語と英語が公用語である。
ちなみ通貨単位は「アリアリ」。何もないのに在るとは、これ如何に?

政情不安、機能しない政府、憲法に基づかない政権交代など、要するに法
治主義とは何かが分かっていない人々が、この国を統治している。
地理学的には紀元前にアフリカ大陸から千切れ、インド亜大陸から、もぎ
取らてれ孤島となってしまい、世界との交流は少なかったため、独自の
動・植物が育った。沿岸部ではカヌーを改良したような小舟の原始的な漁
業が営まれている。


 ▼マダガスカルの基幹産業が壊れる

降って湧いてきた壮大無比のプロジェクトは、やっぱり「あの国」からで
ある。

近代的漁船330隻がマダガスカルに投入されるという。総額27億ドル
(マダガスカル史初の巨額)という漁業協定はマダガスカル政府ではな
く、民間企業と北京政府系の中国企業コンソシアムとの間に署名され、し
かもその企業は、当時のヘリー・ジャオナリマンビアニ大統領の息子が取
締役を務める会社である。

だれが考えても面妖な話、しかもこの協定にマダガスカル政府漁業省が一
切関知していない。民間企業は「マダガスカル経済発展推進社」とかの、
公的なニュアンスを匂わせる会社だが、実態は不明である。
 
署名式は9月5日、北京で行われた。しかも署名式の部屋の片隅にヘ
リー・ジャオナリマンビアニ大統領が映っている証拠写真がメディアに
よって報じられ、大統領は「私は知らない。なんの署名式だったのか、関
与していない」と誰もが嘘と分かる弁明。

同大統領はその2日後に辞任した。このため90日以内に大統領選挙が行わ
れるが、下馬評でトップを走るのが、やはり、このヘリー・ジャオナリマ
ンビアニ大統領なのである。

 中国が近代的漁船を大量に派遣して漁業を営めば、マダガスカルの漁業
資源はあらかたが取り尽くされる。なにしろ漁獲量の殆どは中国への輸出
に廻される契約となっているらしい(契約内容は公開されていない)。

地元漁民は小型ボート(エンジンもない)、沿海でしか操業できず、中国
の「漁業侵略」が始まったらひとたまりもなく失業するだろう。それでな
くとも北部に住み着いた華僑を通して、地元民はその阿漕な遣り方を知っ
ており、中国人が嫌いである。


 ▼中国の乱獲、独占は悪名高いゾ

『アジアタイムズ』(2018年11月12日)に拠れば、中国側の契約相手は七
つの民間の漁業、船舶、港湾開発など特定できない中国企業で、最初の三
年間に7億ドルを投じ、まず港湾と整備し、漁場を調査・観測し、保冷倉
庫や輸出設備を造成、地元漁民も一万人が雇用されるという薔薇色の青写
真が提示されている。

その後、14メートルの近代的な漁船には保冷設備を内蔵し、トロール方式
で漁獲効率をあげるというが、日本でも小笠原諸島近海で、赤珊瑚を根こ
そぎ盗んでいった実績を誇る中国の漁船団は、近年、アフリカの海も荒ら
し回っており、EU委員会の報告に寄れば、2017年度だけでも250万トン
の魚介類を水揚げした。

マダガスカルのEEZ(経済的排他海域は、宏大であり、合法的にも中国
の船団が入ってくれば、海の生態系も変わる。

マダガスカルにおいて欧米の自然環境保護団体が多数活躍しており、彼ら
が自然破壊に繋がると懸念を表明している。地元漁民の反対デモなどはま
だ確認されていないが、数日中に大統領選挙の投票時を迎える。
大統領選挙、どういう結果になるか?
      
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1819回】        
 ――「支那の國ほど近付いてあらの見ゆる國は無し」――關(3)
關和知『西隣游記』(非売品 日清印刷 大正7年)

               ▽
じつは清朝八大親王の1人である肅親王善耆は、「男装の麗人」「東洋の
マタハリ」と呼ばれた川島芳子こと金璧輝の父親である。母親は肅親王善
耆の第四側妃。芳子には2人の妹がいたが、下の妹の愛新覚羅顕?は『清
朝の王女に生まれて』(中公文庫 1990年)に金璧輝が川島芳子になった
理由を、「父が日本人を利用して清の復辟を祈願していたため、当時父に
取り入っていた川島浪速という日本人に、連れられて行きました」と記す。

川島「お雇い外人」として末期の清朝で警察官の養成に当たったが、その
際、肅親王善耆やその娘婿に当たる蒙古王公のカラチン王と親交を結んだ。

清朝崩壊後、北京を離れ旅順鎮遠町十番地に移り住んでいる。おそらく關
和知らは、この鎮遠町十番地に肅親王善耆を訪れたのだろう。

1912年、川島は肅親王善耆を擁して第1次満蒙独立運動を計画するが、日
本政府の命令で計画は頓挫する。その後、1916年(大正5)年に第2次大
隈内閣の進める「反袁政策」の下で第2次満蒙独立運動を画策するが、日
本政府の方針転換と袁世凱の死で失敗に終わった。

1922(大正11)年の肅親王善耆の死を『清朝の王女に生まれて』は、「父
は北京をでる時、(清朝崩壊と亡命の悲哀を綴った)詩を作って、それっ
きり北京の土は踏みませんでした。復辟(退位した皇帝を再び復位させる
事)運動にも失敗して、わずか享年57歳で、亡命の地旅順に在って最後の
息を引き取ったのです」と記す。

關ら6人は1917(大正6)年10月から12月にかけて旅行しているところか
らみて、一行が面会し当時の肅親王善耆は、第2次満蒙独立運動失敗の失
意に落ち込んでいた頃と思われる。

「日本人を利用して清の復辟を祈願し」ていた肅親王善耆である。はたし
て清朝復辟のために日本人と見たら誰彼となく「人を動かす」ような言辞
を弄していたのだろうか。

肅親王善耆の次は反日運動を考えたい。

「支那人の日本人に對する惡感は依然として存在」するばかりか、最近
では盛んになってきて、「往々にして我が威令を輕じ、時に反抗的態度に
出づ」。たとえば「埠頭に於ける苦力のストライキ」であり、「荷馬車曳
のストライキ」であり、「日本婦人に對する支那車夫の侮辱」などだ。

その責任を考えると、やはり「日本に於ける我政府の對支方針が、單に支
那の歓心を買ふを以て能事とする、所謂親善主義なるもの」にある。それ
というのも、日本側の微温的な対応が相手側に「帝國の威信を輕ずるの弊
を誘致」してしまったからである。その一例として鄭家屯事件を挙げ、事
件を曖昧な形で収束させてしまったことが「帝國政府自ら輕ずるの甚だし
き一例」とする。

鄭家屯事件とは、1916(大正5)年8月に日本人売薬店員と中国兵のささい
な口喧嘩が発端となって遼寧省鄭家屯で起こった両国軍衝突事件。

日本軍が同地を占領した後、当時の大隈重信内閣は中国側の司令官の懲戒
に加え、南満洲・東部内蒙古の必要地点への警察官の駐在を要求した。じ
つは1900年の北京で起こった義和団事件(北清事変)を機に結ばれた北京
条約によって、日本は欧米諸国と同じように自国民保護のために軍を駐留
させる権利を得ていたのである。

当時の両国関係を簡単に振り返っておくと、1915(大正4)年1月、日本が
提出した対華21カ条要求をめぐる交渉がはじまったものの、日本はイギリ
スの抗議を受け、要求の一部を取り下げた。

この対応が、日本がイギリスの圧力に屈したことであり、延いては中国側
の日本に対する軽侮・蔑視的態度を誘発するとの考えが当時の陸軍から生
まれる。

その筆頭が、袁世凱に密着していた陸軍支那通の代表的存在の坂西利八郎
らしい。
  

◆これからの日中関係を決める首脳会談

櫻井よしこ


「これからの日中関係を決める首脳会談 騙され続けた長年の歴史から
脱せるか」

10月23日、私が理事長を務めるシンクタンク「国家基本問題研究所」は
「中国の人権侵害に、日本の沈黙は許されない」とする意見広告を、複数
の全国紙に掲載した。

中国政府は100万人を超えるイスラム教徒のウイグルの人々を収容所に押
し込め、絶え間ない洗脳を行っており、多くのウイグル人が弾圧され、拷
問を受け、死亡し、廃人にされ、或いは深刻な後遺症に苦しんでいる。

米議会はマルコ・ルビオ上院議員らが中心になって、民主、共和両党が結
束し、中国政府に問題をつきつけた。米議会は中国の凄まじい人権弾圧を
「人道に対する罪」と定義し、国際社会に告発した。

2022年の冬期五輪の 開催地に予定されている北京を他の都市に変更する
よう、国際オリンピッ ク委員会に要請し、中国で国家分裂罪で無期懲役
の判決を受けて獄中にあ るイリハム・トフティ氏を来年のノーベル平和
賞に推薦するという。

ルビオ氏らは同盟国にも、中国非難の同じ隊列に加わるよう求めている。
米中間で進行中の貿易戦争の背後には両国の価値観の相違がある。ウイグ
ル人に対する不条理な弾圧はそのひとつである。日米安保条約によって同
盟国として結ばれている日本にとって、価値観の闘いで、米国と共同歩調
をとらない理由はない。その意味で日本の政府も国会議員も、いま、ウイ
グル問題で声を上げるべきである。

トルコのサウジアラビア総領事館でジャーナリストのジャマル・カショギ
氏が殺害された。サウジ政府によるカショギ氏殺害の、人権無視の酷
いや り方はもはやどの世界にも受け入れられない。

一人のジャーナリストの殺 害事件が、サウジ皇太子のムハンマド・ビ
ン・サルマン氏の地位を危うく している。米国とサウジの関係に亀裂が
生じ、サウジの影響力が低下し、 イスラエルとの連携も弱まり、イラン
が得をし、結果として中東情勢が揺 らぐ深刻な展開になりかねない。

人権問題が世界情勢を大きく左右する要素になる中で、中国はサウジより
も遙かに残酷な拷問死の山を築いてきた人権弾圧国家である。日本の政治
家が中国に抗議の声を上げない方がおかしいのである。

たとえウイグル問題がなくとも、日本政府には中国の人権弾圧について発
言しなければならない事情がある。8人もの日本人が中国にスパイとして
囚われている。彼らがスパイであるなどとは信じ難い。中国側は容疑を裏
付ける詳しい情報を全く示していない。これまでにも中国が日本人をスパ
イ容疑で拘束した事例はあるが、いずれも濡れ衣と言ってよい事例だった。

26日(本稿執筆は23日)の、実に7年ぶりの日中首脳会談で安倍晋三首相
が何を語り、何を語らないかで、これからの日中関係が決まる。首相は日
中首脳会談を望みながらも中国が首脳会談実現の条件としてつきつけた要
求に屈しなかった。中国側が欲し、日本側も欲した首脳会談でも、同じよ
うに妥協しないことが日本の国益を守る道だ。

日本側が中国側に求めるべきことは、まず第一に日本国民の人権と命を守
るという意味で、前述の8人の日本人救出である。次に尖閣諸島海域に定
期的に侵入する中国の公船について1ミリも譲らずに抗議することだろ
う。そうしなければ尖閣海域における中国の行動を黙認し、中国が領土を
奪うことを認めることになる。第三に中国の知的財産の窃盗への抗議だ。
米中貿易戦争で米国の側につく意思を示し、同時に日本が被っている損害
について、これ以上許さないとの決意を示すためである。

最低限こうした点をおさえることができれば、首相の対中外交は成功だ。
それができて初めて中国に騙され続けるという長年の日中関係から脱する
ことも可能になる。

『週刊ダイヤモンド』 2018年11月3日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1254