2016年12月11日

◆トランプ政権は北朝鮮の現実を直視せよ!

加瀬 英明



旧聞だが、北朝鮮が9月に核実験を行った日に、アントニオ猪木国会議員
と武貞秀士拓殖大学特任教授が訪朝していた。

労働党副委員長と会見したところ、ミサイル発射・核実験の狙いは、日本
が標的ではなく、アメリカを対話に引き出すことにあると、表明したという。

私は北朝鮮が最高指導者の父君の金正一総書記のもとで、核兵器開発を開
始した時から、北朝鮮が核開発を放棄することはありえないから、いくら
北朝鮮、中国、ロシア、アメリカ、韓国、日本による6ヶ国協議を行って
も、無駄だと論じてきた。

北朝鮮が核武装に固執するのは、それなしに金一族体制を守ることができ
ないと、確信しているからだ。

核兵器が無なければ、北朝鮮は経済が破綻した、誰も見向きもしない、み
すぼらしい小国でしかない。

リビアのカダフィ政権が、オバマ政権による軍事攻撃を蒙って崩壊したの
は、アメリカの甘言によって騙されて、核兵器開発を放棄したからだっ
た。もし、カダフィ政権のリビアと、サダム・フセイン政権のイラクが核
武装していたとしたら、今日でも両政権が在続していたはずだ。シリアの
アサド政権についても、同じことがいえる。

北朝鮮にとって、金一族体制を守ることこそが、唯一つ至上の国家目標で
ある。アメリカと戦ったり、日本を攻撃することではない。猪木議員が聞
きだしたことは、北朝鮮の本音である。

私は10月半ばにワシントンに5泊して、国防省を囲む専門家と、意見を交
換した。

 私は「オバマ政権は、どうかしている」と、いった。

 「北朝鮮が5回目の核実験を行い、6回目を準備しているというのに、
オバマ政権は北朝鮮を核保有国家として認めることを、拒んでいる。町の
なかで火事が始まっているというのに、火災ではないといっているのと、
変わりがないではないか」

「そのかたわら、国連というカフェで、北朝鮮の暴挙を許さないとか、北
朝鮮に対する経済制裁を強化するとか、無駄なお茶飲み話に耽っている」

 「北朝鮮に対する経済制裁を、いくら強化すると決議しても、中国がよ
そ見をしているから、意味がない。テレビの画像で、北朝鮮の人民軍がパ
レードするごとに、ミサイルを載せた百足(むかで)のような、巨大なトレ
イラーが映し出されるが、中国が2011年に制裁決議を破って、供給し た
ものだ」

 私は続けて、「今月、米韓軍が38度線にほぼ沿った軍事境界線の南
で、大規模な軍事演習を実施したが、北朝鮮が核兵器を保有していること
を前提として行った。それなのに、政権が北朝鮮を核保有国として認めな
いのは、夢遊病者ではないか」と、いった。

 「次期政権は北朝鮮が核保有国家であるという、現実を認めるべきだ。
そのうえで、北朝鮮が保有する核弾頭数と、ミサイルの飛翔距離に制限を
加えるべきである」

 「東京から北朝鮮の日本海岸までが1000キロメートル、九州から北
朝鮮の黄海岸までが500キロメートルだ。北朝鮮が射程500キロまで
のミサイルの保有することを認める」

 「北朝鮮がこれらの制約を受けいれれば、アメリカ、北朝鮮、中国、韓
国のあいだで平和条約を結ぶかたわら、日朝国交正常化を行って、日本は
日韓国交樹立時に今日の貨幣価値で、韓国に数兆円を供与したが、北朝鮮
に同様な経済協力を提供する」

 「そうすれば、拉致被害者が全員帰国することになり、朝鮮半島に平和
秩序が構築されることになる」

 このままでは、万一、日本が将来、北朝鮮から核攻撃を蒙ることがあっ
ても、アメリカが北に核報復攻撃を加えることはありえない。アメリカが
核武装国と、戦うはずがない。



◆キリル・バスも人民元崩落を予測

宮崎 正弘 


<平成28年(2016)12月10日(土曜日)弐 通算第5129 号>   

〜ウォール街の預言的中男、キリル・バスも人民元崩落を予測
  中国の外貨準備は1兆ドルが水増しされている〜


サブプライムローンに破綻を予想したファンドマネジャーは多いが、その
一人はジョン・タルボット(彼は中国の負債を3300兆円と推定。小誌でも
時折紹介済み)、もう1人がゼロファンドのマネジャーであるキリル・バ
スである。

バスは「中国の外貨準備は1兆ドルの水増しがある」と喝破したが、ゆえ
に人民元の崩落が続くとした。その通りになっていることは言うまでもない。

不良外人とかゴロツキ学者とか、中国経済のいたいところを衝かれると、
北京は罵倒を繰り返してきたのだが、昨今、おとなしくバスの予測に異常
な関心を示し始めたのだ。

アッと驚きは人民日報に国家中央統計局の寧吉吉局長が寄稿し、「中国の
経済統計は実情とかけ離れた数字が並んでいる」としたことだ。

これを伝える在米華字紙「博訊新聞」(12月9日)には、風船を膨らまし
ていたら、風前が空に浮かび、それに気がつかないで空に浮かんでも風船
を吹き続ける(これが中国の現実だが)構図の漫画を配した。
 どうやら気がついた人が増えたらしい。

前統計局長の王保安は16年1月に、「重大な規律違反」で拘束され、世界
が驚いた。

経済数字ばかりか、あらゆる統計が誤魔化されており、たとえば堕胎され
て女子は、3000万人から6000万人と、あまりにも幅の広い数字だけしか公
表されない。統計のとりようがないのだ。

  (註 寧吉吉の弐番目の『吉』は『吉吉』で人文字)
          

◆平原遺跡巡り(福岡県糸島市)

石田 岳彦



私の故郷である福岡市の周辺では、「桧原(ひばる)」、「屋形原(やかたばる)」、「前原(まえばる)」と、「原」を「はら」ではなく、「ばる」と呼ぶ地名が散在しており、上記の「平原」も「ひらはら」ではなく、「ひらばる」と読みます。

本日は福岡県糸島(いとしま)市にある平原遺跡について述べさせていただきます。

魏志倭人伝には邪馬台国を初め、多くの国名が記載されていますが、伊都(いと)国もその中の1つです。

現在の福岡市西区から糸島市にかけては、もともとは糸島郡であった地域ですが(平成の大合併で、前原市と志摩町、二丈町がまとまって糸島市が誕生し、糸島郡は最終的に消滅しました。)、この糸島郡自体、明治時代に怡土(いと)郡と志摩(しま)郡が合併して成立しました。

この怡土が伊都と通じること、佐賀県の旧松浦郡(現在の伊万里から唐津あたりにかけての地域)にあったとされる末廬国(まつら)国の南東に伊都国があったとの魏志倭人伝の記載から、伊都国は旧糸島郡にあったとされているそうです。

平原遺跡はこの伊都国の女王の墓とされています。 平原遺跡は糸島市の平原地区(遺跡の大半は発見された場所の地名で呼ばれます)にあり、周辺はのどかな農村地帯です。

そもそもこの遺跡が発見されたのも、昭和40年に地元の農家が蜜柑の木を植えようとして、銅鏡の欠片を発見したことがきっかけでした。

報告を受けた福岡県は、郷土史家の原田大六(大正6年の生まれということで、こう名付けられたそうです。)に発掘の指揮を依頼しました。

この原田大六は、糸島中学校(今の福岡県立糸島高校)を出たものの、大学では学ばず(歴史しか勉強しようとしなかったので、進学が無理だったとか)、太平洋戦争から復員した後、公職追放にあったのを契機に(軍隊において憲兵隊に入っていたのが祟ったといわれています)、中山平次郎博士に弟子入りし、博士から9年以上にわたり、1日6時間以上のマンツーマン指導を受け、考古学者になったという歴史小説の主人公にもなれそうなユニークな経歴と個性の持ち主です。


ちなみに中山博士は、現在でいうところの九州大学医学部の教授でありながら、寧ろ考古学者としての業績が有名という(九州考古学会の設立者だそうです)、これまた変わった経歴の持ち主で、この師匠にして、この弟子ありというところでしょうか。

この原田大六が、途中からは自費で発掘を継続し、遺跡からは墳墓の副葬品と見られる多くの出土品が発掘されました。

発掘品の中でも特に目立つのは39面又は40面(何分、破片で見つかったので、枚数について争いがあるようです。)発見された銅鏡で、うち4枚は直径46.5cmと、日本で発見された銅鏡として最大のものです。

他方で、剣等の武器はほとんど見つかっておらず、被葬者が女性であったことをうかがわせます。 副葬品の内容と豪華さから見て、時代は弥生時代。被葬者は王クラスの女性、つまり女王。遺跡(墳墓)のあった場所は伊都国があったとされるエリアということで、現在では、上記のように伊都国の女王の墓と推定されています。

弥生時代の女王といえば、邪馬台国の卑弥呼が有名ですが(実際には「日巫女」という太陽神を祀る神官女王の役職名だったのではないかとの説もあるそうですが)、それ以外にも女王がいたのですね。

ちなみに原田大六は玉依姫(たまよりひめ。神武天皇の母親とされる神話上の女神です。)の墓と主張していました。

平原遺跡の女王の墓は四角形(現在では少なからず形が崩れていますが)で、写真を見ればお分かりのように、その周囲には溝が掘られています。学問的には方形周溝墓(ほうけいしゅうこうぼ)と呼ばれるタイプの墓だそうで、上記の発掘品も近年になって「福岡県平原方形周溝墓出土品」という名称で一括して国宝に指定されています。

現在の平原遺跡は、墳墓の周りが低い柵で囲まれ、その周囲は横長のレリーフが建っているのを除けば何もない広場になっており、少し離れたところに古民家(遺跡とは全く関係ありませんが、保存のため移築されたようです)が1軒ぽつんという、よく言えば開放的、率直にいえばスペースが広々と余った歴史公園となっています。
個人的にはこういう長閑な雰囲気は好きですが。

平原遺跡から車で10分ほど走ると農村風景の中に4階建の立派な建物がそびえているのが見えてきます。伊都国歴史博物館です。もともとは伊都歴史資料館といったようですが、平成16年に新館が建てられて博物館に昇格したとのこと。

「福岡県平原方形周溝墓出土品」の一部は九州国立博物館の平常展示室で公開中ですが、大半の発掘品はこちらの新館に保管・展示されています。館内撮影禁止のために写真はありませんが、鈍く緑色に輝く大型の銅鏡がケースの中にずらっと並ぶ姿はさすがに壮観です。
 
展示ケースの前に、立てられた状態の銅鏡が1枚、機械仕掛けでゆっくりと回転しながら展示されていましたが、見学者が私と妻の他におらず(施設と所蔵品の豪華さを考えれば、もったいない限りです。)、静けさの中で、微妙なモーター音をあげながら回転する銅鏡の姿は率直にいって不気味でした。

この博物館の前身たる伊都歴史資料館の初代館長には、上でも述べた原田大六が予定されていたそうですが、大六が開館を待たずに死去したため、名誉館長の称号が追贈され、資料館の前に銅像が立てられました(銅像は現在も立っていますが、新館の入り口からだと目立たない場所になっています)。

自分の主導で遺跡を発掘し、国宝級の副葬品を発見して、それを納めた郷里の資料館の前に銅像を建ててもらう。郷土史家としては頂点を極めたという感じですね。大学の考古学の教授でもここまでの成功を得られる人は滅多にいないでしょう。
 
福岡市やその近郊にお住まいの方は休日にでもドライブがてらにでも、平原古墳と伊都国歴史博物館を訪れてみてください。晴れた日には本当に気持ちの良い場所ですので。  <弁護士>

2016年12月10日

◆時代の趨勢も、その本質も見ないメディア

櫻井よしこ



11月23日、シンクタンク「国家基本問題研究所」のセミナーには約800人
の聴衆が参加した。「トランプ政権と日本の決断」と題して約3時間半、
活発な議論が続いた。会場後方には各テレビ局のカメラが並び、新聞社及
び雑誌社の記者も取材した。
 
マスコミ席の近くに座っていた一般会員の若い女性が、私に語った。

「セミナーの間も、その後の質疑応答のときも、記者の人たちのパソコン
を打つパシャパシャという音がずっと続いていました。それがあのときば
かりはピタッと止んだのです。誰もその一件はメモしなかった。とてもお
かしな気がしました」

「あのとき」とは、質疑応答で参加者の1人が日本のマスメディアの責任
について問うたときのことだ。安保法制、中国の脅威など、どの案件につ
いても問題の本質が国民に十分伝わらず、感情的世論が生まれがちなの
は、報道が偏向しているからではないかとの質問だった。私はそのとおり
だと思っているが、その場面でどの記者もパソコンを打つ手を止めたとい
うのには、思わず笑ってしまった。女性はさらに語った。

「ということは、マスコミの人たちの取材ノートには一般の人たちが感じ
ているメディアへの疑問や批判は記録されないということですね。私は仕
事で、お客様の批判には誠実に対応するよう心掛けていますが、マスコミ
の人たちの意識には、そういう考え方はないのでしょうか」
 
私はこの女性に感心した。そして国基研主催のセミナーについての今回
の報道を振りかえって、改めて痛感した。日本のマスメディアは自らへの
批判には応えず、本質から離れた低次元の報道に走りがちだということを。

「田舎のプロレス」発言
 
3時間余の議論の内容は極めて充実していたと、これは多くの参加者が評
価して下さった。内閣官房副長官の萩生田光一氏、国基研副理事長の田久
保忠衛氏、大和総研副理事長の川村雄介氏の3氏を論者として迎え、私が
総合司会を兼ねて登壇した。
 
主な論点として、◎アメリカは超大国ではあるが、普通の国になった、◎
国際社会の力学の変化と、避けられないアメリカの没落、◎トランプ型経
済は、はじめ好景気、後に大きく後退、◎日本は中国の脅威に自力で対処
するとき、◎尖閣諸島の海は非常に緊迫しており、事実を広く国民に公開
する必要があるなど、3時間半が短かく感じられた。
 
セミナーの終盤近くになって萩生田氏が質問に応えた。その中に国会での
野党の反対の仕方を「田舎のプロレス、茶番のようなもの」という表現が
あった。失礼ながら、野党にはそのように言われても仕方がない面がある
と、私は実感している。
 
だが、全国紙5紙、共同、時事、NHK、テレビ朝日、フジテレビなどは
一斉に、萩生田氏のその一言を中心に報道、批判した。新聞は一部デジタ
ル版でセミナーの内容に触れたところもあったが、大方のメディアはほと
んど無視だった。
 
あの長い時間取材して、なぜこんな内容の報道になるのだろうか。とりわ
け酷いのが「朝日新聞」だ。同紙は11月25日、「萩生田副長官 政権中枢
の発言に驚く」と題した社説を掲げ、「強行採決」「歴史認識」「首脳外
交」の3点に絞って萩生田批判を展開したが、いずれも、朝日にそんな批
判をする資格はあるのかと思う。
 
たとえば強行採決について社説子は、「国会で政府・与党が強引な態度を
とれば、数に劣る野党が、さまざまな抵抗をすることは当たり前だ。それ
を『邪魔』と切り捨て、数の力で押し切ることも野党との出来レースだと
言わんばかりの発言」だと論難した。
 
去年の安保法制のときのことを思い出してみよう。強引だったのは政
府・与党だけではなかったはずだ。民主党(現民進党)などの野党は国会
内での議論を置き去りにして、国会外でデモ隊と一緒になって、議員らし
からぬ行動をとった。
 
それを朝日は社説でこう述べた。

「衆参で200時間を超える審議で熟議はなされたか」、「(なされなかっ
た)その責任の多くは、政権の側にある」、「暴力的な行為は許されな
い。しかし、参院での採決をめぐる混乱の責任を、野党ばかりに押しつけ
るのはフェアでない」(15年9月19日)
 
翌日にはこう書いた。

「まさにいま安倍政権が見せつけているのは、日本が戦後70年をかけて積
み上げてきた理念も規範も脱ぎ捨て裸となった、むき出しの権力の姿である」
 
また18日にはこうも書いていた。

「国際社会における日本の貢献に対しても、軍事に偏った法案が障害にな
る恐れがある」
 
野党の反安保法制の姿勢に肩入れする余り、世界の実情を伝えるという
使命を朝日は忘れてしまうのだ。国際社会で、日本の安保法制が軍事に
偏っており障害だと批判する国は、中国や北朝鮮くらいのものだ。東南ア
ジア諸国を含めて多数の国が歓迎した事実を、朝日は無視して偏向報道に
のめり込んでいく。

政権憎しの感情論
 
民進党を見れば、集団的自衛権の行使に賛成する議員も少くない。彼ら
は自民党政策の詳細について異論を抱いてはいても、大筋で安保法制は必
要だと考えている。民進党現幹事長の野田佳彦氏も著書『民主の敵』(新
潮新書)で、「いざというときは集団的自衛権の行使に相当することもや
らざるを得ないことは、現実的に起こりうるわけです。ですから、原則と
しては、やはり認めるべきだと思います」(P134)と書いた。
 
物事の道理を弁えたまともな人物であり、党の重鎮でもある氏が、原
則、認めるべきだと言明した集団的自衛権の条件つき容認に対して、民進
党は廃案を掲げて選挙戦を戦い、敗れた。そしていま、思想信条で相容れ
ないはずの共産党との協力関係を進めることが論じられている。
 
朝日は自民党を「理念も規範も脱ぎ捨て裸となった」と批判したが、そ
れはむしろ民進党にあてはまる言葉であろう。朝日の社説は、政権憎しの
感情論で書かれているのか、批判の対象たる政党を間違えているのだ。
 
朝日社説子は歴史認識についても萩生田氏を批判した。噴飯物である。
如何なる人も、朝日にだけは歴史認識批判はされたくないだろう。慰安婦
問題で朝日がどれだけの許されざる過ちを犯したか。その結果、日本のみ
ならず、韓国、中国の世論がどれだけ負の影響を受け、日韓、日中関係が
どれだけ損われたか。事は慰安婦問題に限らない。歴史となればおよそ全
て、日本を悪と位置づけるかのような報道姿勢を、朝日は未だに反省して
いるとは思えない。
 
民主主義は健全なメディアによる情報伝達があって初めて成熟する。そ
のことを心すべきだ。

『週刊新潮』 2016年12月8日号 日本ルネッサンス 第732回

◆カジノを干しあげろ

宮崎 正弘
 

<平成28年(2016)12月9日(金曜日)弐 通算第5127号 > 
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 〜マカオとシンガポールのカジノを干しあげろ
  中国当局、銀聯のATMから現金が引き出せないという緊急措置〜

 資金の海外流失がとまらない。海外旅行の持ち出し制限、銀聯カードの
上限設定、海外への500万ドル以上の送金停止等々。様々な制約を設けて
も、中国から流れ出すカネの勢いは止まらない。

中国の外貨準備は急減し、ピークから2年間でおよそ1兆ドルが流失し
た。公式的にも、外貨準備が2兆ドルを割り込むのは時間の問題だ。
 
所詮、「上に政策あれば、下に対策あり」の国である。

抜け穴があった。マカオとシンガポールのカジノである。持ち出しの上限
をこえて、賭け事に興じる。それは表向きで、実質的にはカジノが「闇資
金」の決済に使われてきたのだ。

マカオに林立する26棟の豪華ホテル・カジノと、シンガポールの「マリ
ン・ベイ・サンズ」ホテルが抜け道。ホテルに設置されたATMである。

後者「マリン・ベイ・サンズ」は三棟の高層ホテルが最上階でつながり宏
大なプールがしつらえてあるため、日本人ツアーも多い。

このホテル、じつはカジノである。ATMから一日上限の1万パカタを引
き出し、賭け事に回すのは些少。のこりは闇ルートに流れる。

2年前まで、一日の上限は10万パカタだったから、銀聯カードの意味はな
くなる。

シンガポールでは巨額の引き出しが行われ、実質的な人民元相場はシンガ
ポールで決まるとまで言われた。マカオは故意にギャンブルに負けて共産
党幹部に合法的な「賄賂」を支払う場所でもあった。

12月8日、中国の通貨当局は緊急措置を講じた。

ATMから引き出せる額を一回につき、一万パカタ(1パカタは14円30
銭。マカオ通貨)から5000パカタに制限したうえ、一ヶ月の全体上限を
100億パカタとした。

すでに1ヶ月の合計を超えているためATMは機能停止となった。

悲鳴を挙げたギャンブラー、売り上げが激減のカジノホテル。闇資金の流
通が止まった地下銀行、そしてマフィア。

だが、闇の世界はまた次の手段を考案するだろう。

    

◆脳梗塞「2時間59分だとOK!」

安井敏裕 (脳外科医・産業医) 



脳卒中とは、脳に酸素やブドウ糖などの栄養を送る血管が「詰まったり、切れたり、破裂して」、にわかに倒れる病気の総称である。脳卒中には、脳梗塞(詰まる)、脳出血(切れる)、くも膜下出血(破裂)の三種類ある。

この病気の歴史は古く、「医学の父」と言われているヒポクラテスは既に今から2400年前の紀元前400年頃に、この脳卒中の存在を認識し「急に起こる麻痺」という表現で記載している。脳卒中による死亡率は日本では癌、心臓病に次ぎ、第三位で、毎年15万人程度の人が亡くなっている。

しかし、本当に問題となるのは、脳卒中が原因で障害を持ち入院あるいは通院している人たちが、その約10倍の150万人もいることである。現在、脳卒中の中では、脳梗塞の発生頻度が突出して多い。2分20秒に一人が脳梗塞になっていると言うデータもあり、全脳卒中の70%程度を占めている。

この最も多い脳卒中である「脳梗塞」について、大きな治療上の進歩があったので紹介する。

脳梗塞は、脳の動脈が血栓や塞栓という血の固まりのために詰まることで起こる。この血の固まりで閉塞さえた血管から血流を受けていた部分の脳は、いきなり脳梗塞という不可逆的な状態になってしまうのではなく、数時間の猶予があり、徐々に脳梗塞になる。

この数時間の間に血流を再開してやれば、再度、機能を回復できることになる。いわば、「眠れる森の美女」のような状態で、医学的には、このような状態の部分の脳を「ペナンブラ」と言う。見方を変えると、この部分は、血流が再開しないと数時間後には脳梗塞という不可逆的な状態となってしまう訳である。

このペナンブラの部分に血流を再開する方法として、古くは開頭手術をして、目的の血管を切開し、中に詰まっている血の固まりを取り除く方法を行っていたこともあるが、それでは、多くの場合に時間がかかりすぎ、再開通させた時には、ペナンブラの部分は既に脳梗塞になっている。また、間に合わないばかりか、出血性梗塞というさらに悪い状況になってしまうことさえある。

開頭術の次に登場した再開通法は、カテーテルという長い管を血管の中に通し、その先端を詰まった部分にまで誘導して、血栓を溶かす薬を注入する方法である。

この方法では開頭手術よりも早く、血管を再開通させることができるが、この方法であっても、血管が閉塞してから6時間以内に再開通させないとペナンブラが脳梗塞になってしまうことが防げないし、間に合わずに血流を再開させた場合には、やはり脳出血が起こってしまう。

このようなことから、一時、我々脳卒中に関わる医師は、口には出さないが、最も理屈にあった治療法である「急性期に閉塞血管を再開通させて脳梗塞になることを防ぐ」と言う治療を諦め、虚無的になっていた時期がある。再開通させることを諦め、梗塞に陥ってしまった脳自体の治療として、脳保護薬や低体温療法へと興味が移行していた時期もあった。

しかし、米国で1996年から特別な手技や道具が不要で、ただ静脈内注射するだけで詰まった血管の血栓を溶かしてくれるアルテプラーゼと言う薬の使用が始まり、2002年にはヨーロッパ連合(EU)でもこの薬剤による血栓溶解療法が認可された。

わが国でも日本脳卒中学会を中心にこの薬の早期承認を厚生労働省に求めたが、「日本人を対象とした治験で良い結果が出ない限り承認できない」という厚生労働省の方針に答える準備のために時間がかかり(drug lag)、米国から遅れること約10年の2005年10月11日に漸く承認された。

この薬は血管に詰まった血栓を溶かしてくれる血栓溶解剤で、発症後3時間以内に静脈内注射するだけで良好な予後が得られる。

しかし、この薬剤は両刃の剣で、39項目に渡る使用基準を尊守しないと、脳出血の危険性が著しく増大することが分かっている。従って、厚生労働省も非常に厳しく市販後調査(2.5年間に3000例以上の全例調査)を課している。現在は、言わば試運転ないしは仮免状態と心得て、慎重に使用する必要がある。

そして、この薬剤を用いるためには、一定の講習を受ける必要があり、全国で130回以上行われ、8000人以上が受講した。実際に、この薬剤を発症後3時間以内に注射するには、患者さんには、遅くとも発症後2時間以内に病院へ到着してもらう必要がある。

すなわち、病院へ到着しても、患者の診察、一般検査、脳のCT検査、家族への説明など、最低1時間は必要であるためである。そのために、最初にこの薬剤の使用を始めた米国では、脳梗塞を“ブレインアタック(brain attack)”と言い直し、社会全体に向かって、その緊急性を啓発した。

すなわち、“Time is brain. Time loss is brain loss.”などの標語で注意を喚起した。日本においても脳梗塞を“ブレインアタック”という緊急を要する疾患として一般の方々に認識していただくために、学会や医師会などの啓発運動も行なわれるようになっている。

さらに、平成9年3月に創設された日本脳卒中協会においても、毎年5月25日〜5月31日までの一週間を脳卒中週間と定め啓発運動に努めるようになっている。脳卒中週間をこの時期にしたのは、とかく脳卒中は冬に多いと思われがちであるが、脳卒中の中で最も多い脳梗塞は、最近の研究では6−8月に増えだすため、脳卒中予防は夏から気をつけなければならないことを啓発するためである。

この週間で使用される標語も、昨年(2006年)はアルテプラーゼの使用が認められたことを念頭において「一分が分ける運命、脳卒中」であった。2001年の日本での脳梗塞急性期来院時間調査の結果では36.8%の患者が3時間

以内に来院している。この中の一部の方がアルテプラーゼ治療を受けることになるが、この割合をさらに増やして、本薬剤の恩恵を受ける人を増やす必要がある。

この治療では10年の経験を持つ米国では、この治療を受けるためには、@患者の知識、A救急車要請、B救急隊システム、C救急外来、D脳卒中専門チーム、E脳卒中専門病棟、とういう六つの連鎖の充実と潤滑な流れを推奨している。
 
一般市民への啓発や行政への働きかけなどが必要である。一方で、来院から治療までの時間も1時間以内にする努力が病院側に求められている。いつでも、3人程度の医師が対応できなければならないし、他職種(レントゲン部門、検査部門、看護部門)の協力も不可欠である。(了) (再掲)

(元大阪市立総合医療センター・脳神経外科部長・現社会福祉法人「聖徳会」岩田記念診療所 勤務)


2016年12月09日

◆テリー・ブランスタッドは親中派

宮崎 正弘
 


<平成28年(2016)12月8日(木曜日)弐 通算第5125号>

 〜中国大使に内定のテリー・ブランスタッド(アイオア州知事)は親中派
  テリーは1985年から習近平と付き合いがある人物〜


アイオア州は農業国。農作物の輸出で州の経済がもっているところあり、
トランプが辛勝した。州知事はテリー・ブランスタッド。

農業ビジネスの交換など米中外交に一環としてアイオア州と中国の河北省
は姉妹州という友好関係がある。なぜなら1985年に、まだ河北省の幹部で
しかなかった習習近がアイオア州のムスカティルという村のサツマイモ栽
培農家にホームスティした経験があり、2012年2月に習近平が訪米した
折、わざわざこの農家を訪ねて親善ムードを盛り上げたものだった。

2011年に訪中したテリー・ブランスタッド知事は、当時「副主席」だった
習近平と会った。その席で翌年訪米の際にアイオア州の農家を訪問するス
ケジュールなど意見交換がされたという。

それだけの因縁だが、中国のメディアは「大歓迎」の論陣を張りだした。
旧知の友人が新中国大使に任命された。だから米中関係はうまくいく、ト
ランプは対中強硬派にみえて、じつは親中路線を踏襲するだろう、という
楽観論が紙面を蔽いだした。

じつは12月6日、ブランスタッド知事がトランプタワーによばれたおり、
中国はトランプ次期大統領が台湾の蔡英文総統の電話会談直後だったため
対米感情の悪化が伝えられていた。このタイミングで指名発表が報じられ
たため、台湾問題は、中国語のメディアから霞んでしまった。

ただし、アイオア州事務所は、この人事は正式なものでなく、確認が取れ
ていないとしている(サウスチャイナモーニングポスト、12月8日)。
 

◆時代の趨勢も、その本質も見ないメディア

櫻井よしこ



11月23日、シンクタンク「国家基本問題研究所」のセミナーには約800 人
の聴衆が参加した。「トランプ政権と日本の決断」と題して約3時間 半、
活発な議論が続いた。会場後方には各テレビ局のカメラが並び、新聞 社
及び雑誌社の記者も取材した。
 
マスコミ席の近くに座っていた一般会員の若い女性が、私に語った。

「セミナーの間も、その後の質疑応答のときも、記者の人たちのパソコン
を打つパシャパシャという音がずっと続いていました。それがあのときば
かりはピタッと止んだのです。誰もその一件はメモしなかった。とてもお
かしな気がしました」

「あのとき」とは、質疑応答で参加者の1人が日本のマスメディアの責任
について問うたときのことだ。安保法制、中国の脅威など、どの案件につ
いても問題の本質が国民に十分伝わらず、感情的世論が生まれがちなの
は、報道が偏向しているからではないかとの質問だった。私はそのとおり
だと思っているが、その場面でどの記者もパソコンを打つ手を止めたとい
うのには、思わず笑ってしまった。女性はさらに語った。

「ということは、マスコミの人たちの取材ノートには一般の人たちが感じ
ているメディアへの疑問や批判は記録されないということですね。私は仕
事で、お客様の批判には誠実に対応するよう心掛けていますが、マスコミ
の人たちの意識には、そういう考え方はないのでしょうか」
 
私はこの女性に感心した。そして国基研主催のセミナーについての今回
の報道を振りかえって、改めて痛感した。日本のマスメディアは自らへの
批判には応えず、本質から離れた低次元の報道に走りがちだということを。

「田舎のプロレス」発言
 
3時間余の議論の内容は極めて充実していたと、これは多くの参加者が評
価して下さった。内閣官房副長官の萩生田光一氏、国基研副理事長の田久
保忠衛氏、大和総研副理事長の川村雄介氏の3氏を論者として迎え、私が
総合司会を兼ねて登壇した。
 
主な論点として、◎アメリカは超大国ではあるが、普通の国になった、◎
国際社会の力学の変化と、避けられないアメリカの没落、◎トランプ型経
済は、はじめ好景気、後に大きく後退、◎日本は中国の脅威に自力で対処
するとき、◎尖閣諸島の海は非常に緊迫しており、事実を広く国民に公開
する必要があるなど、3時間半が短かく感じられた。
 
セミナーの終盤近くになって萩生田氏が質問に応えた。その中に国会での
野党の反対の仕方を「田舎のプロレス、茶番のようなもの」という表現が
あった。失礼ながら、野党にはそのように言われても仕方がない面がある
と、私は実感している。
 
だが、全国紙5紙、共同、時事、NHK、テレビ朝日、フジテレビなどは
一斉に、萩生田氏のその一言を中心に報道、批判した。新聞は一部デジタ
ル版でセミナーの内容に触れたところもあったが、大方のメディアはほと
んど無視だった。
 
あの長い時間取材して、なぜこんな内容の報道になるのだろうか。とりわ
け酷いのが「朝日新聞」だ。同紙は11月25日、「萩生田副長官 政権中枢
の発言に驚く」と題した社説を掲げ、「強行採決」「歴史認識」「首脳外
交」の3点に絞って萩生田批判を展開したが、いずれも、朝日にそんな批
判をする資格はあるのかと思う。
 
たとえば強行採決について社説子は、「国会で政府・与党が強引な態度を
とれば、数に劣る野党が、さまざまな抵抗をすることは当たり前だ。それ
を『邪魔』と切り捨て、数の力で押し切ることも野党との出来レースだと
言わんばかりの発言」だと論難した。
 
去年の安保法制のときのことを思い出してみよう。強引だったのは政
府・与党だけではなかったはずだ。民主党(現民進党)などの野党は国会
内での議論を置き去りにして、国会外でデモ隊と一緒になって、議員らし
からぬ行動をとった。
 
それを朝日は社説でこう述べた。

「衆参で200時間を超える審議で熟議はなされたか」、「(なされなかっ
た)その責任の多くは、政権の側にある」、「暴力的な行為は許されな
い。しかし、参院での採決をめぐる混乱の責任を、野党ばかりに押しつけ
るのはフェアでない」(15年9月19日)
 
翌日にはこう書いた。

「まさにいま安倍政権が見せつけているのは、日本が戦後70年をかけて積
み上げてきた理念も規範も脱ぎ捨て裸となった、むき出しの権力の姿である」
 
また18日にはこうも書いていた。

「国際社会における日本の貢献に対しても、軍事に偏った法案が障害にな
る恐れがある」
 
野党の反安保法制の姿勢に肩入れする余り、世界の実情を伝えるという
使命を朝日は忘れてしまうのだ。国際社会で、日本の安保法制が軍事に
偏っており障害だと批判する国は、中国や北朝鮮くらいのものだ。東南ア
ジア諸国を含めて多数の国が歓迎した事実を、朝日は無視して偏向報道に
のめり込んでいく。

政権憎しの感情論
 
民進党を見れば、集団的自衛権の行使に賛成する議員も少くない。彼ら
は自民党政策の詳細について異論を抱いてはいても、大筋で安保法制は必
要だと考えている。民進党現幹事長の野田佳彦氏も著書『民主の敵』(新
潮新書)で、「いざというときは集団的自衛権の行使に相当することもや
らざるを得ないことは、現実的に起こりうるわけです。ですから、原則と
しては、やはり認めるべきだと思います」(P134)と書いた。
 
物事の道理を弁えたまともな人物であり、党の重鎮でもある氏が、原
則、認めるべきだと言明した集団的自衛権の条件つき容認に対して、民進
党は廃案を掲げて選挙戦を戦い、敗れた。そしていま、思想信条で相容れ
ないはずの共産党との協力関係を進めることが論じられている。
 
朝日は自民党を「理念も規範も脱ぎ捨て裸となった」と批判したが、そ
れはむしろ民進党にあてはまる言葉であろう。朝日の社説は、政権憎しの
感情論で書かれているのか、批判の対象たる政党を間違えているのだ。
 
朝日社説子は歴史認識についても萩生田氏を批判した。噴飯物である。
如何なる人も、朝日にだけは歴史認識批判はされたくないだろう。慰安婦
問題で朝日がどれだけの許されざる過ちを犯したか。その結果、日本のみ
ならず、韓国、中国の世論がどれだけ負の影響を受け、日韓、日中関係が
どれだけ損われたか。事は慰安婦問題に限らない。歴史となればおよそ全
て、日本を悪と位置づけるかのような報道姿勢を、朝日は未だに反省して
いるとは思えない。
 
民主主義は健全なメディアによる情報伝達があって初めて成熟する。その
ことを心すべきだ。
『週刊新潮』 2016年12月8日号
日本ルネッサンス 第732回

          

◆小池にはオリンピックへの大局観がない

杉浦 正章



3会場変更挫折は当然の醜態だ
 

朝日川柳に「会場のための五輪のように見え」「醒(さ)めました五輪やめたい人多し」という川柳が入選していたが、どうも小池ポピュリズムが鼻につく。「会場変えろ」と騒ぎ立てたが、迷走の末3会場は原案通りとなった。まさに都庁詰めの記者が見事に指摘したとおり「大山鳴動ねずみ一匹」であった。


小池騒動に欠落しているのは、オリンピック選手らを、鼓舞激励するべき立場にありながら、選手の気持ちなど度外視で、ひたすら自らの人気取りに走っていることだ。まるでどこかの県にいた騒音ばあさんのようである。望みを抱いた宮城、神奈川などの県民は期待外れに終わり、怨嗟の声が小池に向き始めた。ようやく都知事選で立て続けに失敗して民度に懸念がある都民も、問題の所在に気付いてきたようだ。
 

小池は「大山鳴動」質問に、薄気味悪い笑顔で「失礼じゃないですか」と金切り声を上げた。薄気味悪いというのは目が笑っていないからだ。「知事として瑕疵(かし)になるのでは」との質問に「それは当たらない」と述べるとともに、問題をあらぬ方向にすり替えた。なんと「大きな黒いネズミがたくさんいる。これらの黒いネズミをどんどん探してゆきたい」と続けたのだ。


筆者はかつてロッキード事件で法相稲葉修が鮎釣をしながら「大物をどんどん釣り上げる」と発言したことを思い出した。検察当局に指揮権がある法相だからこの発言は可能であるが、都知事があたかも“オリンピック疑惑”を捜査するかのごとき発言をするのはお門違いである。


知事自らが証拠もなしに“風評源” となってはいけない。小池は都議会でこの発言について聞かれると「ご想像にお任せします」と答弁したが、これも都民のあらぬ想像をかきたてる“風評作戦”であり、まるで3流週刊誌のトップ屋のような表現で、聞くに堪えない。
 

小池はおそらく、近く3会場の変更が実現しなかったことを弁明して、建設経費削減効果があったことを指摘するだろう。しかし、都知事は家庭の主婦とは違う。家庭の主婦が家計簿を精査して無駄遣いを見つけることはきわめて尊い行為だが、都知事は少なくとも大局を見ることを最優先すべきであろう。


オリンピックには、ヒットラーが行った国威発揚とは別次元の国威発揚の意味が多かれ少なかれ濃厚である。最近では北京オリンピックがその成功例であり、オリンピックを成功裏に実現することは世界の見る目が変わるのである。青少年のスポーツ指向を進め、健全化の風潮を強めることができる。オリンピックとは国家健全化策の最たるものであろう。
 

加えて重要なのはオリンピックがもたらす経済効果である。小池は都庁や組織委を動かして3会場で412億の建設費を削減したことで、会場変更に失敗した問題を繕うだろう。しかしオリンピックのもたらす経済効果は桁違いのものがあるのだ。


日銀が発表した経済効果に関するリポートによると、関連施設の建設や外国人観光客が増えることから、14〜20年の7年間で国内総生産(GDP)を累計25兆〜30兆円押し上げる効果がある。訪日外国人の数が現在の約2000万人から、20年には約3300万人まで拡大し、五輪関連の建設投資総額は20年までに10兆円に達するという。15〜18年に実質GDPが年平均で0・2〜0・3%押し上げられ、18年には14年と比べて約1%の押し上げ効果があるとしている。
 

だからといって都民の血税を浪費してはならないが、簡単に言えば「収益」は、何十倍もプラスに作用するのだ。日本の評判が上がることの地球規模での副次効果も計り知れない。小池はパフォーマンスより、大きな視点を持つべき時なのだ。


これはないものねだりかもしれないから、首相・安倍晋三が先頭に立って選手の鼓舞激励策を次々に打ち出すべき時だろう。このままでは冒頭の川柳のような風潮が国をおおってしまう。オリンピックは既に盗作エンブレムの白紙撤回、国立競技場の設計変更と二度にわたる“ケチ”が付いている。今度で3度目であり、64年東京オリンピックが全国民の希望の対象であり、“ケチ”など付けるものは1人もいなかったのと対照的である。
 

小池は自民党の党則を無視して、都知事選で党則違反の小池を押した7人の区議をかばい続けた。しかし、自民党都連が除名処分にしたことは当然である。選挙に関する反党行為は厳しくしなければ組織として示しが付かない。7人は自民党幹事長・二階俊博との会合も拒否し、度重なる処分延期での都連会長下村博文の説得も無視し続けており、除名は当然のことである。党本部は驚いたふりをしているが、図りにはかった対応であろう。


問題は小池の一の子分の衆院議員若狭勝がかつて「区議が除名になれば自分も離党する」と離党を示唆してすごんでいたが、うんもすんもない。その発言通り男らしく離党届を出すべきだろう。都議会本会議で、自民党が慣習になっていた事前の調整なしに質問をしたことが、「大人げない」などとテレビメディアのやり玉に挙がっているが、責任は小池の側にある。小池が「なれ合いや根回しはいかがなものか」と調整拒否の発言したから、自民党が事前調整しなかっただけのことである。
 

このように自民党と小池がガチンコ勝負の様相を示しているが、「大山鳴動ばあさん」のポピュリズムはいずれ挫折するだろう。ポピュリズムのネタには限界もある。人気は下降傾向をたどり、「小池新党」などを作っても、大阪の維新とは異なり、12年に滋賀県知事の嘉田由紀子が立ち上げた、「脱原発」が旗印の新党「日本未来の党」と同様の運命をたどるだろう。維新はしっかりした座標軸があったが、小池は軽佻浮薄なる大衆迎合しかないからだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

◆日本語をなぜ“片仮名文字”にする

渡邊 好造



わが国には漢字という折角の表意文字があるのに、いつのまにか聞いたこともない英語、仏語などをもとにした片仮名文字に変えてしまう。

それで、意味不明にしたり、都合のよい解釈をする。いかにも目新しく、恰好よく見せかけているだけではないか。ちょっと拾ってみるだけでも腹がたつ。

 [片仮名文字=日本語なら⇒本当の裏の意味]

1)カジノ=博打場、とばく場⇒堂々とてら銭をとる公共の超法規的賭場施   設。もうすぐ日本にも。
2) シェフ=優秀調理士⇒板前、板長、料理人、包丁頭なら目の前で調理して くれる。シェフは命令するだけ。
3)タレント=芸人⇒ただのお笑い芸人なのになんでも完全にこなす能力が ありそうで、照れず厚かましい。
4)コンシェルジェ=ホテルの接客責任者⇒客がどんな悪辣なことを言った  り、したりしても我慢できる接客係。
5)ファイナンス=金貸し⇒利息も安く、簡単に貸してくれ、取立ても厳しく ない善意の金融業者。

6)コンプライアンス=規定・法律を遵守した行動⇒規定・法律の抜け道をど  こに見つけるかが秘訣。
7) マニフェスト=公約⇒公に約束はするが、後で訂正自由。最近の貼り薬”膏薬”は剥れないのに。
8)アジェンダ=政策課題⇒期限がなく実行希望の政策。後で間違いなく"唖  然とする"。
9)タトウ-=刺青⇒やくざのいれる全身のモンモンとは違い、体の一部に化  粧するような軽い感覚。
10)エッセイ=随筆⇒タレントが「エッセイ書きました」は、起承転結のな い日記、手紙、メモなどの駄文が多い。

11)コラボレ-シヨン=協同競演作業⇒過去の栄光をひきずる者同士の再生 競演策。
12)レシピ=調理法⇒美味そうに感じさせる秘密の調理法。美味くない時の  表現”この味は玄人好みですね”
13)パフォ-マンス=表現、才能、処理能力⇒派手な言動、ごまかし、でた らめ演技。
14)リベンジ=雪辱する⇒仇討ち、復讐、返り討ち、闇討ち、暗殺。
15)ホ-ムレス=住む家のない哀れな人⇒道路や公園を不法に占拠する同情   の余地のない浮浪者、乞食。

16)バッシング=たたく、攻撃⇒高収入、好待遇に見合う行動、成果をあげ  ないとやっかみで眼の敵にされる。
17)パテシエ=製菓技術者⇒砂糖とクリ-ムをたっぷり使い、高血圧や糖尿病  を忘れさせてくれる菓子職人。
18)ボランテイア=時間と能力の無償提供奉仕⇒作業量に見合った経費のい  らない、善意に期待した労働。
19)アドバイサ-=助言者⇒野球賭博や脱税など楽して儲かることを教えてく  れる人。
20)バックパッカ-=リュックサックを背負う旅人⇒金のない貧乏のふりを  して、安上がりの旅行をする人。

21)リーズナブル=価格が手ごろなさま⇒品質が良く、より安いのを手ごろ  というが、、。つい騙されやすい価格。
22)キャンペーン=企業・団体の目的をもった宣伝活動⇒消費者のためとみ  せかけて、自社の販売拡大が狙い。
23)アウトソ-シング=外部発注⇒下請け会社に無理やり安く発注し、資金  が少なくてすむ経営方法。
24)アシスタント=助手⇒安い給料で便利にこき使える我慢強い見習い人  で、「今にみておれ」と歯噛みしている。
25)エコカ-=燃料節約車⇒燃費が安いといわれる高級車で、税金で補填して  くれるのでよく売れる車。

26)コメンテ-タ-=解説者⇒聞かれたことの3倍以上にしゃべりまくること  の出来る人。「、、そうすね」は失格。
27)カリスマ=教祖⇒一見すると能力ある風で、他人と違うことをする目立  ちたがりの超変人。
28)コンテンツ=内容物、中味⇒内容のない、中味のないものでもなんとな  く見たくさせる。
29)セレブリテイ=話題の人 、有名人⇒親の莫大な遺産を相続しただけ   で、実力があるとは限らない。
30)モラトリアム=(融資金返済)一時停止⇒単なる一時停止なのに、「も  う取らぬ」と全額返済不要と錯覚させる。

ハングル文字に統一した韓国では、漢字の自分の名前が読めない人が現れたという。中国の物まね商品、商標権侵害を非難したら「日本は漢字を盗んだ」と開き直った。その大事な漢字を略字にしてしまう中国は変な国だ。

片仮名文字はこれからも増え続ける。以上、日本語で”ボヤキ”。(完)