2017年07月21日

◆ロシアからも資金流失が続いている

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月19日(水曜日)弐 通算第5362号> 

 〜ロシアからも資金流失が続いている
  中国に次いでロシア経済を絶望と判断したのか?〜

2017年3月から4ヶ月連続で、ロシアから資金流出がつづき16億ドルが逃
げた。原油価格の回復がままならない上、年初に希望された米露関係の改
善が遅れ、投資家が嫌気したと分析されている。

しかしBRICS諸国にあってはインドに26億ドル、ブラジルには10億ド
ルの資金が新たに流入しているのだ。BRICS全体の傾向と判断するに
は無理がある。中国と南アから資金流出が続いているのは個別原因である。

ところが奇妙なことにユーロ建てのロシア債は85%を外国人投資家が購入
した。

30年債に到っては95%がアメリカのファンド筋と判定され、首を傾げるア
ナリストが多い。なぜ、落ち目のロシア国債を買うのか? たぶんユーロ
建てであり、通貨価値が上がり、金利が上がると踏んでいるからだ。

ロシア通貨ルーブルは原油価格が上昇気味となり、ロシアへの直接投資が
増えると為替レートがあがり、反対のケースでは通貨価値が下がる。つま
り、投資家にとって、ルーブルもまた金融商品として扱われ西側の投資家
にとっては格好の投機材料化しているのである。

中国の通貨が管理相場制をとって人民元暴落を防止しているが、ロシアの
中央銀行は、そうした真似をせず自由市場に委ねた。

ということは金融市場に関して言えば、ロシアのほうが西側資本主義に中
国より近いという結論となるが、はたしてそうか?
         
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 ◆ 樋泉克夫のコラム  
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【知道中国 1601回】  
 ――「支那の官吏は賄賂を取る・・・金なくば訴訟するな」――(廣島3)
  廣島高等師範學校『滿韓修學旅行記念録』(非賣品 明治40年)

              ▽

道路に草が生えても、誰も抜かない。「汚穢堆積するも」放置したまま。
かくて道路は糞尿まみれで「不潔を極めざらん」。そのうえに「汚穢を極
めたる豚群に前後左右」を挟まれたら、目も当てられない。

「一般の農民は多く無智文盲」で「生計の程度極めて低く」、「日々の生
活の外何も知らざるものゝ如し」。「市街の人民に至りても蓄財利巳の念
に急にして文藝を尚び優雅を解するなきが如し」。かくして「滿洲に於て
は到底我國に於けるが如き高尚優雅精巧麗妙の趣味の痕跡だに認識するこ
と能はず」である。

アヘンは「貴賤を問うはず危險を冒して劇好する所にして市街村落を問は
ず煙舘あり」

次いで「多くは山東直隷より蓄財の目的を以て來れる出稼人」である「苦
力」につて、やや詳しく記している。

彼らの多くは独身者で妻帯のための資金稼ぎが目的か、あるいは家族を故
郷に残しての単身者で、「強健の體格を有し如何なる賤業も」、「如何な
る勞苦も辭せず」。「弊衣粗食に甘んじ拮据黽勉孜々として怠らず」

「一見して乞食の如く甚しきは野生の獸類に近きもの」さえ見受けられ
る。だがシッカリとカネを貯め込んでいる。「其勤儉貯蓄の美風は我等労
働者の企て及ばざる所」であり、やはり学ぶべきこところだ。だから、
「彼等の外貌を見て之を輕蔑するが如きは皮相の見と稱すべし」。彼らの
賃金は極めて低廉だが、生活をギリギリに切り詰め貯蓄に励む。雇用主と
しては至極便利であることが、「滿洲に於て苦力が一大勢力を存し年々數
萬の渡來者ある所以」だ。

ロシアによる満州侵食に伴って、彼らは大量に進出するようになった。日
露戦争においても両軍が使役したことで「不時の利得を占めたるは顯著な
る事實」だ。「戰後尚ほ我軍隊鐵道又は商人に使役せらるゝもの甚多
し」。やはり彼らの労働力は必要だった。

彼らの目的は唯に「勞役貯蓄」だから、「衣食は固より意とする所にあら
ず、入浴せず、洗濯せう、一枚の弊衣は塵垢に汚れ又自然に破損するに任
せて之を補綴することなし。故に之に近けば一種言ふ可からざる臭氣を放
つ」。だが不思議なもので「久しく我邦人に使役せらるゝものは漸く我俗
に化せられ、日本語を解するのみならず、自から不潔を厭ふべきことを悟
り、夏時水中に浴し又は衣服を洗濯すべきを知るに至れるものあり」である。

苦力の特徴、生活実態を細かに記した後、「彼等は吾人が容易に學び難き
克己主義を實行せるものなり」と綴るが、はたして彼らの生態が「克己主
義」といえるほどに自覚的であるのか。むしろ成り行き、出任せ、出たと
こ勝負といった方が実態に即しているように思えるのだが。

満州では仏教、ラマ教、道教、イスラム教、キリスト教などが見られる
が、「概して之を言へば、支那は宗?に冷淡なるものゝ如く、多くは迷信
の境を脱せざるものゝ如し」。だから「寺院廟觀多く頽廢に委し甚しきは
賤民苦力輩の午睡塲とな」っている。宗教施設というよりは「公共の用に
供せ」られているから、一面では社会的に役に立ってもいるようだ。

僧侶は布教に努めるわけでもなく賽銭頼みの生活を送る。我が国の寺院の
ように檀家がないので、「多く寺田又は附屬家屋の収入によりて僅に」生
活を維持している。また「微妙甚深の?理を渇仰して向上の一路を修業」
するような信者は見当たらず、とどのつまりは「唯葬祭に讀經を煩はすの
み」であった。

一般には迷信の類を信仰するが、それは病を治すやら金儲けを願うやらの
現世利益を得ようとするためのもの。つまりは彼らの信仰は徹頭徹尾に
「利己主義の發現に外ならず」であり、「故に宗?は既に生命を失へるも
のと謂ふも大過なかるべし」となる。
《QED》

◆官邸VS財務省 内閣支持率は危険水域

坂元 誠



官邸VS財務省 内閣支持率は危険水域 「ポスト安倍」は増税派ばか
り…財政再建に動く石破氏、岸田氏、進次郎氏

 安倍晋三内閣の支持率が下落するなか、自民党内やメディアなどで「ポ
スト安倍」が取り沙汰されている。政権批判のトーンを強めたり沈黙を貫
いたりとさまざまだが、財政再建や消費税率引き上げを主張するなど、い
わゆる「増税派」ばかりが目立つ。安倍政権は「消費増税の凍結」という
切り札を携え、最強官庁・財務省と対決姿勢も辞さない構えだが、増税派
が政権を握り、「霞が関主導」政治に逆戻りして、日本経済は大丈夫なのか。

報道各社の世論調査で、安倍内閣の支持率が30%未満の「危険水域」に突
入してきた。

時事通信が7〜10日に実施した調査では、安倍内閣の支持率は前月比15・
2ポイント減の29・9%となった。ANNが15、16日に行った調査でも、
先月から8・7ポイント下落し、29・2%になった。いずれも、2012年の
第2次政権発足以来、初の20%台となった。

今後、安倍首相が厳しい政権運営を強いられるのは必至で、「ポスト安
倍」候補らがうごめき始めている。

「加計学園」問題や、東京都議選での自民党惨敗などを受けて、メディア
に頻繁に登場しているのが石破茂元幹事長だ。ワイドショーでも「ポスト
安倍」の筆頭格として名前が出ている。

石破氏は6月中旬に開かれた、アベノミクスに否定的な自民党有志による
「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」(野田毅会長)の2回目の
会合にも出席した。記者団に「原油安と円安に頼る経済政策であってはな
らない」と述べた。

ブルームバーグが6月26日に行ったインタビューで、石破氏は、安倍政権
が2度にわたり消費増税を延期したことについて、「消費税をきちんと上
げるという意思が本当にあるのか」と疑問を呈し、次期衆院選で「また
『消費税を上げない』などと言えば、この国は本当にどうなるのか」と懸
念を示したという。

完全な「増税派」というしかない。

基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標維持を主張するな
ど、財政規律を重視する立場の石破氏だが、果たして「イシバノミクス」
は日本経済をよくできるのか。

経済政策に詳しい上武大教授の田中秀臣氏は「石破氏は以前から『金融緩
和でマネーを供給すると、ハイパーインフレになる』と主張している。消
費増税を前提とした経済政策という発想がうかがえる。『加計学園』問題
では、政権を批判するスタンスに立ち、(岩盤規制にドリルで穴を開ける
ような)規制緩和に積極的には見えない」と解説する。

さらに、「アベノミクスの『積極的な金融緩和』と『機動的な財政政策』
『規制緩和など成長戦略』という3本の矢といずれも逆向きで、そのまま
政策として実行すると日本は経済破綻してしまいかねない」と話す。

「ポスト安倍」の有力候補である岸田文雄外相も「格差に適切に対応する
ことが重要だ」といい、アベノミクスを修正すべきだとしている。

田中氏は「経済格差の原因は、高齢化や不況の長期化だが、相対的貧困率
も子供の貧困率も改善しているのが実情だ」と語る。

安倍首相が8月3日に断行する方針の内閣改造で、閣僚や官房副長官での
起用が取り沙汰され、「将来の首相候補」と目されている小泉進次郎衆院
議員についても、田中氏の評価は厳しい。

「進次郎氏は『こども保険』という名前の実質増税策を打ち出している。
石破氏よりも増税スタンスははっきりしている。日本経済にとってマイナ
スになるような政策を、いま実行しようとしている分、危険度が高いとも
いえる。善意で発想しているのだろうが、国民目線に立っているのか」

安倍政権では、経産官僚が力を持ち、かつて「最強官庁」と呼ばれた財務
省は冷遇されてきた。安倍首相や菅義偉官房長官は消費税増税に消極的だ
が、財務省は麻生太郎副総理兼財務相とともに抵抗してきた。現在の政治
状況は、財務省にとっては主導権奪還の好機なのだ。

こうしてみると、「ポスト安倍」の面々は「いずれも財務省を筆頭とする
官僚依存の傾向が強い。2度の増税延期で財務省と闘ってきた安倍首相と
の違いは大きい」(田中氏)というのだ。

安倍政権としては今後、支持率下落を受けて「経済重視に回帰する」とみ
られる。ただ、経済政策は今後の政治スケジュールとも密接にかかわって
くる。

 元内閣参事官で嘉悦大教授の高橋洋一氏は「秋の臨時国会では、経済政
策の強化のために補正予算が打ち出されるだろう」とみる。

有効求人倍率や失業率、企業業績は改善しているが、14年4月の消費税率
8%への引き上げ後の消費低迷の悪影響が尾を引き、デフレの完全脱却や
2%のインフレ目標実現にはほど遠い状況だ。日銀の量的緩和継続ととも
に、財政面での手当ても必要になる。

支持率の回復につなげるとの思惑に加え、18年政局に向けた環境整備の意
味合いもあるという。そこでは、消費増税に関する判断が極めて重大な案
件となってくる。

前出の高橋氏は次のように続ける。

「安倍政権の『20年の憲法改正』という目標から逆算すると、憲法改正
の是非を問う国民投票は、18年後半に衆院選とのダブルで実施される可
能性が高い。19年10月に予定されている消費税率10%へ増税の是非
も争点となり、安倍政権は『増税凍結』を仕掛けてくるのではないか」

 18年9月には自民党総裁の2度目の任期満了も迎える。

 高橋氏は「『反安倍勢力が総裁選で勝つ』『衆院選で与党が敗れる』
『国民投票で過半数に届かない』のいずれかになれば、10%への消費税増
税が実施されることになるだろう。これまで2度増税が延期されている財
務省側にとっては好都合ではないか」とみる。

「反アベノミクス」が実施された場合も、日本経済について高橋氏はこう
話している。

「再び深刻なデフレに転落し、『失われた20年』の再来となるだろう。歴
代政権でも最高レベルになっている雇用環境も次第に悪化していくと予想
される。失業率が上昇すれば、自殺率が上昇し、強盗などの犯罪も増える
という統計もあり、社会不安が高まるのは避けられない」

写真−財務省との距離感も注目される(右上から時計回りに)安倍首相、
岸田氏、小泉氏、石破氏(合成写真)
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170719/soc1707190012-p1.html?ownedref=article_not%20set_newsPhoto
【ZakZak】2017.7.19 〔情報収録 − 坂元 誠〕


◆世界の指導者になれない残酷な中国

櫻井よしこ




これまで多くの首脳会議の集合写真を見てきたが、アメリカの大統領が端
に立っている場面は思い出せない。その意味でドイツ・ハンブルクで7月7
日から開かれた主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)の集合写真は
印象的である。

前列ほぼ中央にアンゲラ・メルケル独首相が立ち、その左に中国の習近平
主席、さらに左にロシアのウラジーミル・プーチン大統領が立った。ドナ
ルド・トランプ米大統領は前列の端から2人目、中央から離れて立った。
自由主義陣営の旗手が片隅に立つ姿は現在の世界の実情を投影しているよ
うに私には思えた。

G20で改めて明らかになったのが、大国主義で傍若無人の中国の強気と、
中国に目立った抗議をしない各国の対応である。トランプ大統領はドイツ
入りする直前、ポーランドを訪れ、「ポーランド国民の自由、独立、権利
と国家の運命」について語り、固い絆で支援すると演説した。

G20を、自由主義陣営とそうでない中国・ロシア陣営との価値観のぶつか
り合いの場ととらえての演説だったのか。だがその言は果たしてどの程度
まで行動に反映されているのか。ノーベル平和賞受賞者で、服役中に肝臓
ガンにかかり、今や重体に陥った劉暁波氏の案件を、このG20でアメリカ
も欧州も取り上げてはいない。

中国が劉氏の病状を発表した6月26日、氏はすでに末期だった。たとえ助
からなくても、外国で治療を受けたいと氏は願ったが、中国政府が出国を
許さない。7月8日までに米独の専門家が劉氏を診察し、氏の容態の「急速
な悪化」が報じられた。化学療法も停止されたという。

欧米諸国、とりわけアメリカは人権問題に強い関心を持ち、中国にも厳し
く対処してきた歴史がある。それが世界の尊敬と信頼を集める理由でも
あった。しかし、トランプ政権からは、人権問題に真剣に取り組む姿勢は
見えない。欧州を牽引するドイツもまた、人権問題よりも中国との経済協
力に、強い関心を示している。ドイツが主催した今回のG20でも人権問題
は殆ど表面化せず、習主席はさぞ満足したことだろう。

知識人を拷問・殺害

中国歴代の政権が、最も恐れている民主化運動のリーダーが劉氏である。
「産経新聞」外信部次長の矢板明夫氏が語る。

「劉氏は自由のために戦い続けてきました。いまや、民主化勢力にとって
神のような精神的リーダーです。もう1人、習氏が恐れる政敵が薄熙来氏
です。彼は民衆のために戦った政治家として、いまも根強い支持がありま
す。両氏が中国の左派と右派、両陣営の精神的求心力になっているので
す。その2人が揃って肝臓ガンになった。尋常ならざる事情が裏にあると
思います」

ちなみに薄氏は酒、煙草は一切のまない。趣味はマラソンという健康人で
ある。酒も煙草も大いに好み、趣味はマッサージという習主席とは対照的
だ。にも拘らず、薄氏が肝臓ガンにかかったことに、中国の残忍さを知悉
する矢板氏は疑問を抱く。

劉氏に関して中国当局は病状を知っていながら必要な治療を施さなかった
のであろう。治療しても到底、助からないことを見越しての公表だったの
であろう。死亡後に釈放するより、末期の氏を手厚く治療する様子を発信
すれば、習体制の悪魔のような人権弾圧や拷問の印象が薄れると踏んだ可
能性もある。中国での人権弾圧の事例を矢板氏が説明した。

「2015年7月10日、『暗黒の金曜日』に人権派弁護士約200人が拘束されま
した。その中に李和平氏がいます。非常に優秀な勇気ある男で、彼は当局
が強要して認めさせようとした罪を一切認めなかった。

服役中に拷問され、血圧を急上昇させるような食事や薬剤を投与されて、
殆ど目が見えなくなった。逮捕から約2年間収監され、今年5月に釈放され
たときは、健康で頭脳明晰だったかつての姿ではなく、髪は真っ白、呆け
て別人になり果てていたのです」

中国で行われる拷問のひとつに、袋をかぶせて呼吸困難にする手法がある。

「頭部をビニール袋でスッポリ覆って暫く放置すると酸素が欠乏して脳に
影響が出ます。死ぬ直前で袋を開けて息をさせる。そしてまた、袋をかぶ
せる。これを繰り返すと、完全に廃人になります」と矢板氏。

カンボジアのポル・ポト政権が、毛沢東に倣って同じ方法で知識人を拷
問・殺害していたことが知られている。習政権はいまもそのようなことを
行っているわけだ。だが、習主席がこの件についてG20で注文をつけられ
たり論難されたりすることはなかった。自由を謳い上げたトランプ大統領
はどうしたのか。

無実の日本人を拘束

欧米諸国が中国に物を言わないのであれば、日本が自由や人権などの普遍
的価値観を掲げて発言すべきだ。今からでもよい、劉氏の治療を日本が引
き受けると表明すべきである。日本は中国と距離的に近い。欧州に移送す
るより日本に移送する方が、劉氏にとってずっと負担が少ない。

理由はもうひとつある。日本人12人が現在中国に「スパイ」として拘束さ
れているではないか。12人中6人は、千葉県船橋市の地質調査会社「日本
地下探査」の技術者4人と、彼らが中国で雇った日本人2人である。

社長の佐々木吾郎氏が、4人は「まじめで一生懸命な社員ばかり」だと
語っている。全員、中国語は全くわからない。そんな人たちが郊外で温泉
を掘ろうと地質調査をしていて、どんなスパイ活動ができるのか。完全な
冤罪であろう。即ち、これは中国が日本に仕掛けた外交戦だと、断定して
よいだろう。

無実の日本人をいきなり拘束してスパイ扱いし、対日交渉の材料にする中
国のやり口を、私たちは2010年に拘束されたフジタの社員4人の事件から
学んだ。あのときは中国漁船が尖閣諸島海域で海上保安庁の巡視船に体当
たりして、日中関係が非常に厳しくなっていた。中国はレアアースの対日
輸出を一時止めて世界貿易機関(WTO)のルールも踏みにじった。だ
が、結局日本は譲歩した。

今回、中国が勝ち取りたいのは日本の経済協力であろうし、南シナ海問題
に警戒感を強め、台湾の蔡英文政権について発言、接近する動きを見せる
安倍首相への牽制があるだろう。来年は習主席が訪日する。その前に安倍
首相が訪中する。中国にとって好ましい形で対日外交を乗り切り、大国と
しての地位を確立するために日本を従わせようとしているのではないか。

日本がAIIB(アジアインフラ投資銀行)に前向きな姿勢をとること
も、米国に頼り切れない現状では、戦術上、必要であろう。しかし局面は
いま、日本が人道の国として、普遍的価値観重視の姿勢を、国際社会に鮮
明に打ち出すときだ。そのために6人のみならず、12人の釈放を要求し、
劉氏受け入れも表明するのがよい。
『週刊新潮』 2017年7月20日号  日本ルネッサンス 第762回


◆鈴木善幸内閣誕生の経緯

渡部 亮次郎



2007年6月12日は総理在職中に急死した大平正芳さんの28回目の命日だっ
た。朝日新聞政治記者だった国正武重氏が最近著した「権力の病室 大平
総理最期の14日間」(文藝春秋)を読んで、その死を改めて回想すると共に
「後継総理 鈴木善幸」と叫んだ田中角栄氏の判断は瞬時だったなぁと思
い出した。

私は当時、既に大平内閣の外務大臣(園田直)の秘書官を退任(1979年11月8
日)、一代議士に戻った園田氏の私設秘書をしていた。1980年5月30日には
第12回の参院選挙が公示されたが、その初日に大平総理は倒れた。

入院先は国家公務員の指定病院としても名を知られた東京虎ノ門病院。発
表された病名は過労が引き金となったと考えられる「狭心症」だったが、
予ねて総理が自分と同じ糖尿病を持病としていることを知っている園田氏
は「いやぁ心筋梗塞の1回目の発作だよ」と主張して譲らなかった。

果たして死後、解剖の結果は当にその通りだったわけだが、心筋梗塞の発
作だとすると、近いうちに2回目の発作があるはずで、絶命するだろう、
と早くから言っていた。

園田氏は30歳代で2型糖尿病を発症している。糖尿病のDNAを遺伝により所
持しており、暴飲暴食、運動不足、肥満によって発症する。酒を嗜まな
かったが、豆大福や焼き芋が大好き。3番目の結婚となった天光光(てんこ
うこう)さんとの結婚直後から大肥満。多分、これが引き金となって発症
したはずだ。

糖尿病患者は最終的にはインスリンというホルモンを毎日、1回から3回、
注射で体内に補給する必要がある、口から入れても胃液(酸)で無効になる
からである。しかし、武道の大家も何が嫌いって注射ぐらい嫌いなものは
無いという人。

この後、生涯2度目の厚生大臣になり、患者が自分で注射できるよう、厚
生省令の改正を決断するが、その恩恵に浴する事は無かった。理由は後述。

問題の12日は、私は都合で都心のホテルに泊っていたが、午前2時ごろ、
園田さんから電話があり「ナベしゃん、総理が亡くなったらしいよ、調べ
てよ」という。なんでも信仰している新興宗教の教祖に霊感があったとい
うのだ。

古巣のNHK政治部に電話してみたが何も入っていない。結局は午前6時41分
になって「5時54分逝去」が発表されてわかったが、やはり大平さんは午
前2時25分に本当は絶命していた。後は蘇生が試みられたが空しかったと
いうことだったのだ。

5:54 総理死去。立ち会ったのは志げ子夫人、伊東官房長官、田中六助副
幹事長、森田一秘書官、次男裕氏夫人、三男明氏夫妻ら。

5:55 鈴木善幸党総務会長
6:15 田中角栄氏
6:35 西村副総裁。桜内幹事長。

園田氏も遺体に対面した。午前7時ごろだったろう。彼は私を伴って「こ
れから目白(田中角栄邸)へ行こう」と言った。予ての大福密約に従って、
首班指名では嘗ての親分福田赳夫氏に背いて大平さんに投票したために福
田派を除名されていた園田氏。政界「はぐれ鴉」なんて揶揄されていた。
目白に行くしかなかった。

しかも誰かに奨められて痩せるためと称して利尿剤を多用。急激に体重を
落としたため、人相が変わるほどやせて久しぶりTVの前に姿を現したた
め、マスコミは悪い噂を立てた。

田中氏とのサシの会談は1時間に及んだ。園田さんは明るい顔に変わって
出て来た。後継総理には大平派の番頭鈴木善幸氏を推進することで意見の
一致を見たと言うのである。

「政界闇将軍」と「政界はぐれ鴉」で一致した「鈴木善幸総理」案は政界
で誰一人予想しない奇想天外。もちろん鈴木さんご本人も岩手の漁師が総
理大臣になんて想像したこともなかった。衆議院議長は目指していたが。

しかし乃公出でずんば(だいこう いでずんば)=この俺様が出ないで、
他の者に何ができるもんか=と言ってきた福田氏も、今回は大平急死の下
手人呼ばわりされる中では、田中闇将軍の仕掛けに抗する術はなかった。
あれよあれよと言う中で鈴木内閣は平穏のうちに発足した。郵政、農林の
閣僚経験しかなく、長く自民党総務会長としての地味な活動しかして来な
かった政治家だけに、外国人記者は口をそろえて言った。Zenko Who?

園田氏は鈴木内閣には入閣しなかった。しかし3ヵ月後の9月に入って、女
性の子宮や卵巣の摘出手術を乱発していた埼玉県の富士見病院事件が起
き、ここから齋藤邦吉厚生大臣が千数百万円もの献金を受けていた事が発
覚して辞任。

むかし厚生大臣の経験があり、すぐにも国会答弁で野党に対処できるとの
鈴木派の栗原祐幸氏らの推薦で園田氏が後任に決まった。大平内閣の外務
大臣を退いてから10ヶ月ぶりだった。私はまた秘書官に引っ張り出された。

さらにその8ヵ月後、今度は伊東正義外務大臣が途中退任、後任に園田厚
生大臣が横滑りを命ぜられた。1981年5月18日、杉並区富士見が丘のNHKグ
ランドで記者クラブとソフトボールの親善試合をしている最中だった。

この頃から園田さんの身体に糖尿病の合併症が表れるようになった。
腎臓の機能が極端に弱り、浮腫みが酷くなりだした。終いには顔も浮腫む
ようになって閣議で驚かれたりした。

インスリンの患者自己注射を許可すれば、衛生材料メーカーは競って注射
器を携帯用に小さくしたり、針を細くして痛みが軽くなるように研究する。

実際、あれから30年、針の細さは0・2ミリと世界一。毛の細さだから殆ど
痛くない。だが許可が遅れたために大平さんも園田さんもその恩恵には浴
せ無いまま、共に70歳にして糖尿病のためこの世を去った。2007・06・17

◆超低空飛行のトランプ政権半年

杉浦 正章

 

極東“金縛りの構図”に打つ手なし
 

本人は4年後の再選へ資金集め
 

就任以来半年のトランプ政権における無策ぶりは極東情勢を見れば明白だ。オバマ政権のレガシー(政治的遺産)を次々と壊したトランプは、北朝鮮問題でもオバマ政権の「戦略的忍耐」と決別し、圧力強化にかじを切ったはずであった。しかし朝鮮半島を取り囲んでいた空母「カール・ビンソン」と「ロナルド・レーガン」はいつの間にか姿を消した。「もともと訓練のため」というのがその理由であるが、首をすくめていた金正恩は大喜びするかのように4日にICBM「火星14号」を発射した。そして「今後米国には大小の贈り物を贈り続ける」とトランプをなめきった方針を明らかにした。トランプは金にまるで猿の尻笑いをされているかのようである。


金正恩は米国がICBMとならんでレッドラインとしてきた核実験の準備も着々と整えており、その傍若無人ぶりは佳境に達している。中国も北朝鮮を自らの「属国」で、対米防波堤であるかのような位置づけを鮮明化させ、金を野放しにしている。こうしてトランプの対北政策はデッドロックに乗り上げた形である。
 

トランプは金を「この男は他にやることがないのか」とお手上げのような状態だが、金にしてみればトランプの無策ぶりをあざ笑いたいところだろう。トランプはオバマの批判など出来ない状況であろう。


就任当初は勇ましかった。習近平との会談に合わせてシリアに巡航ミサイルを打ち込み、習の度肝を抜いた上で、対北制裁圧力を求めたのだ。トランプは「中国がやらなければ米国がやる」と勢いづいたものだ。習は最初のうちはトランプの強硬方針に屈するかのごとく、石炭の輸入を一年間凍結するなど対北制裁に乗り出すかに見えた。しかし、その後は逆に北を勢いづかせるかのような貿易量の増加である。


1-3月期の北からの対中貿易は37.4%も増加している。中国と北の貿易は“だだ漏れ”状態なのであり、平壌は好景気を満喫しているという。G20におけるトランプとの会談で習は「中国は対話と協議に基づく問題の解決を主張している」と言いきって、トランプの強硬姿勢を軽くいなしている。
 

要するに習も金もトランプの足元を見ているのである。その背景には極東に確立しつつある戦略的な構図がある。要するに金正恩が核ミサイルに磨きをかけ、東京とソウルを人質に取って、どう喝外交を繰り返し、中国はこれを陰に陽に助長するという構図である。これに対して米国連大使のヘイリーは、「やむを得なければ軍事力を行使する用意がある」としているが、米国防長官マティスは、北朝鮮が戦争を挑発する以外、「戦争はありえない」という立場である。


もちろんマティスは東京に核ミサイルが飛来して爆発すれば、北に壊滅的な報復をしても戦略的には敗北を意味することを知っているからだ。この動くに動けない「極東金縛りの構図」を、トランプは打開する策を持っていないかのようである。逆に言えば就任半年かけてオバマの「戦略的忍耐」の意味が分かったのだろう。
 

こうしてトランプの半年間は環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、パリ協定からの離脱だけは大統領令で実施に移したが、その他の公約は議会の反対にあって大きく頓挫している。オバマケアに代わるる新たな医療保険制度は挫折して内政上のつまずきをみせた。国境にメキシコの資金で壁を作る構想、法人税削減、シリア内戦の終結などは全くめどが立っていない。


対メディア関係も最悪の状況であり、トランプや長男はツイッターなどを通じてCNN戦闘機撃墜やCNNとの格闘など子供だましの映像を放出している。新たにロシア疑惑で登場した長男のジュニアは「ばかの見本」 と国民の間で評判が悪い。
 

政権の基盤になる議会承認人事も全く進展していない。高級官僚569ポストのうち埋まっているのはたったの48であり、如何にトランプ陣営の政権運営能力が欠落しているかの証拠となっている。こうした中で共和党内には来年の中間選挙を戦えるのかという危機感が生じている。政党支持率も民主党が上向きに転じており、共和党の苦戦は必至と予想されている。


4年後の大統領選挙に向けて米政界は動き始めているが、報道によると7月14日に開催された米国全国知事会で会議の議長を務めたバージニア州知事のテリー・マコーリフは「2020年の大統領選挙で誰が候補になるのか大きなトピックスだったが、民主党の知事からも、共和党の知事からもトランプ大統領の名前は一度も出てこなかった。誰一人、トランプ大統領について語ろうとしなかった」と、述べたという。
 

大統領に就任して半年で早くも無視されているような状況だが、本人は全く意に介していない。それどころか何と4年後の大統領選に向けて資金集めを開始しているのだ。就任後100日で数百万ドルを集め、4-6月には800万ドルを集めている。この男の権力欲は飽くことを知らぬものがある。


しかし、トランプとメディアの戦いはまだ端緒に就いたばかりだ。今後の焦点はロシアゲートを捜査している特別検察官ロバート・モラーが、どんな報告を公表するかにかかっている。場合によっては既に議会の一部で生じている弾劾の動きが大きなうねりとなる可能性もないとは言えまい。米政局から目が離せない状況が続く。

       <<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


◎俳談

【さりげない時事句】

◆冷房を贅沢として老いるかな  読売俳壇1席
 早くも冷房の季節が巡ってきた。最近は毎日冷房だ。年をとると暑さ寒さが体にこたえるので、冷暖房はきちんと入れている。これは去年節約論議が激しいので、作ってみたものだが、時期的に新聞の選者の感性と一致した。選者はさりげない時事句ととらえてくれたのだろう。
◆丈夫なり妻と昭和の扇風機  毎日年間俳壇賞
 これもさりげなく節電に触れている。時事句はニュース性を持たせてはならない。持たせた途端に軽くなる。

     <俳談>         (政治評論家)



◆会社の合併

川原 俊明(弁護士)

 
   
 旧商法の規定では、吸収合併消滅会社の株主に交付する対価は、
   存続会社の株式でなければならないとされていました。

    これに対して、会社法の規定では、吸収合併の場合において、
   消滅会社の株主に対して、存続会社等の株式を交付せず、金銭そ
   の他の財産を交付することを認めています。

    企業買収の容易化という観点からは、このような対価の柔軟化
   を認めることは必要不可欠でした。

    この対価の柔軟化により、いわゆる三角合併が可能となります。
    三角合併とは、存続会社が消滅会社の株主に対して、存続会社
   自身の株式ではなく、存続会社の親会社の株式を交付する合併を
   いいます。

    これにより、国内の会社同士はもちろん、クロスボーダーでの
   買収が可能になると言われています。

    この点、存続会社が親会社の株式を有していないような場合に
   は、親会社の株式を取得する必要が生じます。

    一般的に、小会社による親会社の株式の取得は禁止されていま
   すが、三角合併の対価として使用する場合には、その取得が認め
   られています。

    なお、三角合併と同様に、親会社株式を対価とする株式交換
   (いわゆる三角交換)も認められます。

    他方で、対価の柔軟化により、少数株主の締出しが容易になる
   という批判がなされ、また、対価が不十分とする少数株主の保護
   が必要になるとの指摘もあります。

    このあたりの調整が今後の課題になると考えられます。

    合併の他にも企業の組織再編の方法はありますので、最善の方
   法についてお悩みの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。

   530-0047 大阪市北区西天満2丁目10番2号 幸田ビル8階  
   弁護士法人 川原総合法律事務所      
   弁護士 川 原 俊 明 


2017年07月20日

◆間違いなく波紋呼ぶ韓国映画「軍艦島」

櫻井よしこ



闘い止めれば捏造された歴史が定着する 


6月15日、映画監督、柳昇完(リュ・スンワン)氏がソウルで記者会見を
開いて映画「軍艦島」の完成を報告した。7月26日封切りと伝えられる同
作品の内容は、かねて日本側が懸念していたように強い反日要素満載のよ
うだ。

韓国紙「中央日報」は、同映画は「軍艦島に強制徴用された朝鮮人たちが
命がけで脱出を図ろうとする過程を描い」たと伝えた。柳氏は強制徴用さ
れた多くの朝鮮人の苦しみを「映画的想像力を加味し」「現在の韓国映画
で作りえる極限ラインに挑戦し」たと語る。

韓国外務省は同作品を韓国の総人口、5000万人中少なくとも1000万人に加
えて、広く国際社会の人々が見ると予測する。配給会社側は2000万人以上
の観客動員を目指すとし、韓国では、日本糾弾のためにも映画は「絶対に
ヒットさせなければならない」という声が上がっている。

周知のように軍艦島は長崎市にあり、「明治日本の産業革命遺産」として
世界文化遺産に登録された。韓国側が主張するような「多くの朝鮮人が強
制徴用された」事実も、朝鮮人を奴隷扱いし虐待した事実もない。

にもかかわらず、韓国側は軍艦島は朝鮮人労働者に奴隷労働と苛酷な死を
強いた島だという捏造話を喧伝し、国際社会にも流布してきた。そうした
情報に基づいて書かれた記事のひとつが「南ドイツ新聞」の2015年7月6日
の電子版記事である。

同記事は、(1)端島(軍艦島)では強制労働者が苦しめられた、(2)大
戦中、日本人労働者は安全な場所に移され、中国と韓国の強制労働者が働
かされた、(3)中国と韓国の強制労働者1000人以上が島で死んだ、(4)
死体は海や廃坑に捨てられた、などと報じている。

この記事を掲載した南ドイツ新聞に対して、かつて軍艦島で暮し、働いて
いた島民が「真実の歴史を追求する端島島民の会」を設立し、抗議の声を
上げた。今年1月23日のことだ。

「島民の会」の皆さんは多くが高齢者だ。炭坑が閉鎖され島が無人島にな
る1974年までそこに住んでいた。この方たちは、自らの体験と今も大事に
保存している資料などに基づいて正確に、旧島民の実生活を発信して誤解
を解きたいと願っている。

南ドイツ新聞に彼らは次のように書き送った。端島では、「朝鮮人も日本
国民として」「家族連れも単身者も同じコミュニティで仲良く暮してい
た」、「朝鮮の女性たちはチマチョゴリを着て、楽しく民族舞踊を踊っ
た」、「朝鮮人の子供も日本人の子供も一緒に机を並べ、学校生活を送っ
た」、さらに「炭坑内に入るときは、日本人坑夫だけの組や、日本人と朝
鮮人坑夫の混成組があった」、「中国人は石炭の積み出しなど坑外作業に
従事していた」、と。

そのうえで断言している。「旧島民の誰も反人道的な行為を見聞していな
い。端島に住んでいる日本人の婦人や子供らに知られずにそのような反人
道的行為をすることは、端島の狭さや居住環境等から見て絶対に不可能だ」。

南ドイツ新聞が報じた(1)は事実と異なる。第一、出身民族にかかわら
ず、全員にきちんと賃金が払われていた。(2)は根拠のない出鱈目。
(3)が事実なら日本人を含む当時の端島の全人口の4分の1が死亡したこ
とになる。島では一人の死さえ皆で悼んだ。「強制労働者1000人以上の
死」の根拠は示されず、(4)は実に悪質な虚構だ。

彼らは1か月以内に訂正記事の掲載を求めたが、5月23日の抗議からやがて
ひと月になろうとする6月21日現在、全く反応がない。

韓国映画「軍艦島」は間違いなく大きな波紋を呼ぶ。日本にとってはまさ
に「濡れ衣の夏」「地獄の夏」になるだろう。私たちは事実を示しつつ、
果敢に闘い続けるしかない。その努力をやめた途端に、捏造された歴史が
定着するからだ。外務省に闘う気はあるか。

『週刊ダイヤモンド』 2017年7月1日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1188
 

◆『裏切られた自由』、ついに邦訳が刊行

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月17日(月曜日。祝日)通算第5358号>  

〜これは戦後出版界と歴史学界を画期する一大事件である
  フーバー大統領回想録『裏切られた自由』、ついに邦訳が刊行〜

待望のフーバー大統領回想録『裏切られた自由』(草思社)の邦訳板刊行
が始まった。
 
同時にこの本を詳細に解説する渡邊惣樹『誰が第2次世界大戦を起こした
のか』(同)も出版され、戦後の歴史解釈が根底的にひっくりかえる。

ガリレオが、コペルニクスが、あるいはダーウィンがそうであったよう
に、世の中の通説を転覆させ、真実をのべることは勇気を必要とする。
アメリカ人が単純に信じ込む「米国=正義」に対して、そのタブーに正面
から挑戦したのが、フーバー大統領の回想録だからである。

真珠湾攻撃は事前に暗合が解読されていて、むしろ日本をけしかけていた
ルーズベルト大統領の陰謀だったことは、いまや周知の事実である。しか
し、日本の攻撃で一気にアメリカの厭戦ムードは吹き飛んだ。ルーズベル
トの狙いは当たった。
 
アメリカは孤立主義から大きく逸脱し、まずはヨーロッパ戦線に大軍をさ
しむけ、ナチス・ドイツ、ムッソリーニのイタリアと戦闘。西側を勝利に
導いた。いや、勝った筈だった。

ところが敵であるはずのロシアを支援し、あろうことか、戦後秩序はソ連
のスターリンが最大の裨益者となった。死力を尽くしたポーランドが共産
化され、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアばかりか、バルカ
ン半島に到るまでソ連が手に入れた。

極東では南樺太、全千島を手に入れても足りず、アジアは中国共産党の手
に落ち、朝鮮半島は南北に分断され、とどのつまりルーズベルトはソ連の
領土拡大に協力したことになる。

結果論の皮肉は、近年でもたとえば米軍がイラクに介入した結果、ISと
いうテロリストを産み、イラクはイランの影響下に入り、アフガニスタン
はタリバニスタンに変貌しつつあり、朝鮮半島では南が自ら赤化を望み、
いそいそと中国圏に戻ろうとしている。

フーバー大統領(任期1929−1933)はルーズベルト大統領に騙されてい
た。何かを仕掛けたなとは本能的に直感したが、当時、すべての密約は密
封され、フーバーにさえ「ハルノート」という最後通牒を日本に突きつけ
ていたことは知らされていなかった。

フーバーは書類、議会議事録、外交文書そのほかを緻密に検証し、20年の
歳月をかけて本書を書き残していた。

フーバーの言い分とは簡単に言えば「ルーズベルト外交は自由への裏切り
であった」ということである。

 
 ▲マルタで東西冷戦は終わった

東西冷戦は、ルーズベルトの失策がもたらした。そもそもルーズベルトの
失敗は、ソ連を国家承認した(1933年11月)ときから始まった。大統領就
任直後である。

それが世界に厄災を運び、ルーズベルト政権の周りはソ連のスパイと共産
主義者に囲まれて国策を次々とあやまった。

大胆にソ連に挑戦したのは1981年のレーガンの登場だった。

スターウォーズ計画、ミサイル防衛網を前面に出して、ソ連と対峙姿勢を
しめし、対抗策としてソ連は大軍拡にはしるのだが、経済力がついてこら
れず、あえなく頓挫。ペレストロイカ、グラスノスチを謳ったゴルバチョ
フが登場した。

1989年師走、ブッシュ大統領とゴルバショフはマルタの沖合のヨットで会
談し、東西冷戦が終結した。

共産主義者は思想的敗北から逃れるために環境保護、人権運動、フェミニ
ズム、少数性差別、反原発に流れ込み、日本でもその亜流がいまもメディ
アが牛耳っている。

さて、1938年3月8日に、フーバーはヒトラーと会見している。

「この会見でフーバーは、ヒトラーを狂信者であり、お飾りだけの愚か者
だとする欧米の報道が間違っていることを確信した。ヒトラーは自身の言
葉で国家社会主義思想に基づく経済再建を語った。情報の豊かさは彼の優
れた記憶力を感じさせるものだった」(渡邊解説本、64p)。

その前年、1937年にルーズベルト政権はシカゴで演説した。有名な『隔離
演説』である。しかも、この演説で、ルーズベルトは「国内の経済問題を
話題にしなかった。具体的な名指しは避けたものの、日独伊三国によって
世界の平和が乱されている、これを是正するためにはアメリカは積極的に
国際政治に関与しなけれはならないと訴えた」(同72p)。

1939年、ナチスはチェコに侵入した。
 
「少なくとも軍事侵攻ではない。ハーハ(チェコ)大統領との合意によるも
のだった。さらに、フーバーが考える独ソ戦では、ドイツはソビエト侵攻
のハイウエイとなるチェコスロバキアを通らざるを得ないことは自明であ
る」(同88p)。

次はポーランドだった。

ここで英国のチャンバレンはポーランドの独立を保障する宣言を行った。
英米は、ドイツはスターリンとの対決に向かうと考えていたから、ポーラ
ンド回廊を通過するのは自然であり、このポーランド独立を英国が保障す
るということは、フーバーからみれば愚かな選択であった。


▲ルーズベルトがスターリンに譲歩したのはアメリカを不幸にした

ヒトラーは独ソ不可侵条約を結び、しかもソ連もポーランド侵攻に踏み切る。

「犬猿の仲であった独ソ両国の唯一の共通点。それが第1次大戦期に失っ
た領土回復を希求する強い思いであった」(同99p)

舞台裏では何回も複雑に執拗に交渉が続いたが、ポーランドの誤断も手
伝って、ついにナチスはポーランドへ侵攻する。

「この戦いがなければ日米戦争がおこるはずもなかった」が、ポーランド
の稚拙な対独外交が原因で、戦線が広がり、日米開戦への道が準備される。

その後の戦争の展開は周知の事実とはいえ、問題は「カイロ宣言」、「テ
ヘラン会談」から「ヤルタ」会談の密約、そしてポツダムへと米英ソの
『密約』が次々と進み、アメリカ国民は何も知らされないままルーズベル
トとスターリンの謀議は進展し、途中からチャーチルはのけ者にされ、や
がて病魔に冒されたルーズベルトは正常な判断も出来なくなった。

トルーマンはルーズベルトから殆ど何も聞かされていなかった。原爆を保
有したことさえ、トルーマンは知らなかったのだ。
こうしてフーバー回想録は、アメリカの歴史学主流に投げつけられた爆弾
である。
かれらが『歴史修正主義』とレッテルを貼り付け非難してきたが、どちら
が正しいかは明らかであり、ルーズベルトの評価が地獄に堕ちているのだ
が、これを認めようとしない一群の学者とメディアが、真実をいまも覆い
隠しているのである。

渡邊氏は、解説書の最後を次のように結んでいる。

「中国と韓国は、日本を『極悪国』として捉え、歴史認識では日本の主
張を一切受け付けず、21世紀になっても非難を続けている。歴史の捏 造
が明らかな南京事件についても、いわゆる慰安婦問題についても、アメ
リカはプロパガンダであることを知っている。それにもかかわらず、アメ
リカが日本を擁護しようとしないのはなぜなのか。

それは、ルーズベルト とチャーチルの戦争指導があまりに愚かであった
からであり、その愚かさ は、日本が(そしてナチス・ドイツが)問答無
用に『悪の国』であったこ とにしないかぎり隠しようがないからである。

歴史修正主義は、戦後築きあげられた『偉大な政治家神話』に擁護され
ている二人の政治家(ルーズベルトとチャーチル)の外交に疑いの目を向け
る。ナチス・ドイツや戦前の日本が、胸を張れるほど素晴らしい国であっ
たと声高に主張しているのではない。

極悪国とされている国を『歪んだプ リズム』を通して見ることは止める
べきだと主張しているに過ぎない。そ れにもかかわらず、歴史修正主義
は枢軸国を擁護する歴史観だとのレッテ ルが貼られている。それは、
ルーズベルトとチャーチルが引き起こした戦 後世界の混乱の真因から目
を逸らさせたい歴史家や政治家がいるからであ る)(同220p)。

歴史の偽造やフェイクをまだ信じているガクシャは、本書を読むと顔が
引きつるだろうし、日本の論壇にまだ跋扈している左翼は卒倒するかも知
れない。

◆のど自慢に出場したのだ

渡部 亮次郎

1946(昭和21)年のこの日、NHKラジオで「のど自慢素人音楽会」が開始
され、それを記念してNHKが制定した。

第1回の応募者は900人で予選通過者は30人、実に競争率30倍の超難関
だった。
今でも12倍を超える人気長寿番組とか。1946(昭和21)年のこの日、NHK
ラジオで東京)「のど自慢素人音楽会」が開始され、それを記念してNHK
が制定しました。

第1回の応募者は900人で予選通過者は30人、実に競争率30倍の超難関で
した。

今でも12倍を超える人気長寿番組とか。

私も高校生のころ、秋田市での大会に出場、合格した。受験戦争ムードに
反発したもの。歌ったのは「チャペルの鐘」
   作詞:和田隆夫
   作曲:八州秀章
1)なつかしの アカシアの小径は
 白いチャペルに つづく径
 若き愁い 胸に秘めて
 アベ・マリア 夕陽に歌えば
 白いチャペルの ああ
 白いチャペルの 鐘が鳴る
2)嫁ぎゆく あのひとと眺めた
 白いチャペルの 丘の雲
 あわき想い 風に流れ
 アベ・マリア しずかに歌えば
 白いチャペルの ああ
 白いチャペルの 鐘が鳴る
3)忘られぬ 思い出の小径よ
 白いチャペルに つづく径
 若きなやみ 星に告げて
 アベ・マリア 涙に歌えば
 白いチャペルの ああ
 白いチャペルの 鐘が鳴る
この歌を聞くと、なぜか札幌の時計台を思い出す。理由は分からない。で
もあれは時計台であってチャペルではない・・・。では「チャペル」とは
何ぞや? Wikipediaによると、
「チャペル (Chapel) は、本来クリスチャンが礼拝する場所であるが、日
本では私邸、ホテル、学校、兵舎、客船、空港、病院などに設けられる、
教会の所有ではない礼拝堂を指している。」
とある。どうも教会の礼拝堂はチャペルとは言わないらしい。結婚式場が
チャペルだ。
でもこの歌詞は、何とも淡い恋でいいな〜。(オジサンには縁が無い
が・・・)
白いチャペルか・・・
フト、2年前の今頃、オーストリアに行って教会を見た事を思い出した。
ヨーロッパはどこに行っても教会だ。2年前は2週間掛けてオーストリアを
一周したが、オーストリアでも、どこに行っても尖塔の教会があった。中
でも有名で「これどこかで見た事がある・・」と思った教会が二つあっ
た。ハイリゲンブルートの教会とハルシュタットの教会である。この歌と
はあまり関係ないが、“絵になる”教会の写真を見ながら、岡本敦郎の歌を
聞くもの一興か?
大学を出てNHKできしゃになった。
政治部所属に成ってある夜、新宿のスナックでうたっていたら、見知らぬ
男に声をかけられてびっくりした。「うちへ入りませんか」という。名刺
には「ダニー飯田とパラダイスキング」とあった。「政治記者から歌手へ
転身」というのがおもしろいというのだ。

記者の仕事が面白くてたまらない時期だったこともあって断った。
あれから50年。まったく歌う機会が無いままにすごしたから今では歌は聴
くものと心得ている。2013・10・29




◆連日悩みの激腰痛

毛馬 一三



激腰痛等に悩まされ出して3年2か月が経つ。歩行が100b位しか出来ず道路で座り込んで仕舞う。バス・地下鉄には立ったまま乗車はできない。ましてや、地下鉄の階段は手すり棒にすがって上り降りをするが、激痛みに襲われている。

家でも、椅子に座ってパソコンに向かい合うのも、30分とはもたない。どうしてこんな腰痛に絡む激痛が起こったのだろうか。昼間、やむを得ない所要で外出先から帰宅すると、激痛のため、布団に寝転ぶしかない。

腰痛といえば、6年前に脊髄部の「すべり症」に見舞われ、下半身が痺れて倒れる症状が起き、大阪厚生年金病院で手術をした。手術は成功し、「すべり症」からは完全回復したので、以後腰痛には何の懸念も抱いていなかった。

ところが、冒頭記述のように、突然3年2か月前から、激腰痛が始まったのだ。そこで、今毎日、整形外科診療所に通って診察とリハビリを受けている。リハビリを受ければ次第に回復すると思っているが、中々痛みが減らない。

整形外科診療医院での診察で、まずレントゲンを撮影し、「すべり症手術の後遺症」の障害有無を調べてもらったが、それは無しとの診断だった。

しかし、痛みは、腰だけでなく、時間が経過するにつれて、右足の臀部、右下肢ふくらはぎに広がり、3か月前からは左右の腕筋肉にまで痛みが出だした。

腰痛だけでなく、右足・下肢の筋肉に痛みが広がり出したため、改めて診療所の院長に「病名」を質した。すると「仙腸関節炎」だと伝えられた。ではこの痛みの原因は何であるかを尋ねた処、「分からないです」との回答。

一体「仙腸関節炎」とは何か。日本仙腸関節研究会によると下記の様の記述されている。
<仙腸関節は、骨盤の骨である仙骨と腸骨の間にある関節であり、周囲の靭帯により強固に連結されている。仙腸関節は脊椎の根元に位置し、画像検査ではほとんど判らない程度の3〜5mmのわずかな動きを有している。
仙腸関節障害は決して稀ではない。仙腸関節障害で訴えられる“腰痛”の部位は、仙腸関節を中心とした痛みが一般的だが、臀部、鼠径部、下肢などにも痛みを生じることがある。
仙腸関節の捻じれが解除されないまま続くと慢性腰痛の原因にもなる。長い時間椅子に座れない、仰向けに寝れない、痛いほうを下にして寝れない、という症状が特徴的。
腰臀部、下肢の症状は、腰椎の病気(腰部脊柱管狭窄症・ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう や 腰椎椎間板ヘルニア・ようついついかんばん など)による神経症状と似ているので、注意が必要。
また、腰椎と仙腸関節は近くにあり、関連しているので、腰椎の病気に合併することもあり得る。>

上記説明で、筆者の「仙腸関節炎」の症状や痛み箇所が一致し、神経症状と似ているとの指摘があったことからも、院長の病名診断に納得出来た。

しかし肝腎の「仙腸関節炎」の原因が何処から発生しているのかが分からないのでは、不安が増幅する。

どうすればこの激腰痛から脱出できるのだろうか。整形外科の分野で、「腰痛」の原因は、総じて分からないことが多いという説もある。

当診療医院で、1週間に1度、痛み止め注射(トリガーポイント注射、ノイロトロピン注射、ジプカルソー注射)を打ってもらい、1日3回・薬剤ザルトプロフェン錠80mgを飲んでいる。痛みの各局部には湿布も貼る。

また頼らざるを得ないのは、毎日の主軸治療の「リハビリ」だ。柔道整復師による局部マッサージのあと、ホットパック(タオルによる温め)、干渉波(電気)、腰の牽引の物理療法の4リハビリを40分間行っている。しかし局部の痛み緩和には余り効果はない。

「仙腸関節炎」の原因が分からない以上、対象療法しかないのは事実だ。だとすれば、歩けない、立てない、座れないのが強度になっていくばかりなので、日常寝たきりしかない。

「入院して手術」を受けることしかないのだろう     (了)