2018年09月23日

◆アリババ集団マー会長退任

櫻井よしこ


「アリババ集団マー会長退任の背後に金持ち排除を進める習近平主席の影」

中国電子商取引(EC)最大手、アリババ集団のジャック・マー会長が五
四歳の誕生日、9月10日を期し会長職を退くと米「ニューヨーク・タイム
ズ」紙が報じた。

3日後、アリババ集団は、退任は今年ではなく、来年の9月10日だと発表し
た。マー氏が株主に宛てて公開した書簡には「大好きな教育分野に戻りた
い。世界は大きく、私はまだ若く、新しいことに挑戦したい」と書かれて
おり、時期は1年ずれたが、会長退任は間違いなさそうだ。

そこで誰しも思うだろう。マー氏はアリババ集団を一代で時価総額約4000
億ドル(約44兆円)企業に育て上げた。スマホ決済で一気にキャッシュレ
ス社会を出現させ、昨年の決済総額1377兆円の約半分を自社のアリペイが
占めた程の成功もおさめた。その彼が何故、いま、退くのか、と。

中国共産党の下で人々はいかにして富と権力を得るのか、権力の一部とな
ればなったでどれ程の火傷を負い失脚するのかを思えば、マー氏退任の背
景に影を見るのは当然だ。「産経新聞」外信部次長の矢板明夫氏が語る。

「習近平国家主席の基本方針は毛沢東路線への回帰です。その特徴のひと
つが金持ち潰しです。毛沢東は全権力を中国共産党に集中させ、その上に
立つ自身の存在を核心と位置づけました。習氏も同じようにしたい。核心
はひとり、中心軸はひとつ。その一本軸の縦構造に並列して、兆円単位の
資産を動かす民間の大金持ちが生まれると、そこにも求心力が動く。核心
は2つは不要、そこで金持ち排除に走るのです」

習政権下で大富豪が次々に逮捕され、消されるケースが続いている。今年
5月にも中国保険業界の一角を占めていた安邦保険集団の元会長、呉小暉
氏が懲役18年の刑を科され失脚した。

呉氏はトランプ米大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナー氏と非常に近い
関係にあった。2016年の米大統領選挙でトランプ氏の勝利が確定した直
後、クシュナー氏が最初に会食した相手が呉氏だった。

呉氏は中国共産党とのコネをばねにのし上がった。若き日に浙江省杭州市
長の娘と結婚し、自動車販売の利権で財を成し、次に元上海市長の息子の
コネを活用して〓小平(とう・しょうへい)一家に接近、妻と離婚して〓
(とう)の孫娘と再婚した。より大きな共産党へのコネを手に、呉氏は保
険業界に進出、短期間に巨万の富を築いてニューヨークの名門ホテル
「ウォルドルフ・アストリア」を買収した。

だが、米政権に深く食い込み影響力を発揮するような存在を、共産党が許
容し続けることはないのである。当局の調査が始まり、保険監督局が安邦
保険集団を公的管理下に置いたのが今年2月、3月には裁判開始、5月10日
には先述の判決が下された。〓(とう)の孫娘の夫といえども冷酷に切り
捨てられた。

大富豪が得意の絶頂で逮捕、投獄され、あるいは自殺に追い込まれる事例
など掃いて捨てる程あるのが中国だ。矢板氏は中国人大富豪の「寿命」は
10年単位で見るのが妥当だと言う。

「中国共産党の権力にくっついて利権を手にする大富豪は権力者が交替し
て新しい権力層が生まれるときが危機なのです。前任者の人脈や利権はこ
とごとく剥奪されるからです。それが種々の逮捕や自殺事件につながります」

どれ程頑張っても中国人の個人的栄華は10年が目途、20年はもたないとい
うのだ。マー氏は通貨の意味を変える程の大変化を巻き起こし、資本主義
経済の新たな波を中国に起こしたかに見える。しかし、共産党支配の論理
の下では、長続きさせてもらえない。

マー氏はビル・ゲイツ氏のように社会貢献に力を注ぎたいと発言した。果
たして習氏がそれを諒とするのか、まだわからない。少なくとも、このま
ま「盛大な成功」を続ければ、己の命運が尽きるとの自覚が退任予告につ
ながったと見てよいだろう。
『週刊ダイヤモンド』2018年9月29日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1248

◆ハマナスはナシの訛り

渡部 亮次郎


「ハマナス」の名は、浜(海岸の砂地)に生え、果実がナシに似た形を
していることから「ハマナシ」という名が付けられ、それが訛ったもの
である。ナス(茄子)に由来するものではない。

ハマナス(浜茄子、浜梨、、学名:Rosa rugosa)は、バラ科バラ属の落
葉低木。夏に赤い花(まれに白花)を咲かせる。根は染料などに、花は
お茶などに、果実はローズヒップとして食用になる。皇太子妃雅子のお
印でもある。晩夏の季語。


東アジアの温帯から冷帯にかけて分布する。日本では北海道に多く、南
は茨城県、島根県まで分布する。主に海岸の砂地に自生する。

1-1.5mに成長する低木。5-8月に開花し、8-10月に結実する。

現在では浜に自生する野生のものは少なくなり、園芸用に品種改良され
たものが育てられている。

果実は、親指ほどの大きさで赤く、弱い甘みと酸味がある。芳香は乏し
い。ビタミンCが豊富に含まれることから、健康茶などの健康食品として
市販される。

のど飴など菓子に配合されることも多いが、どういう理由によるものかそ
の場合、緑色の色付けがされることが多い。中国茶には、花のつぼみを乾
燥させてお茶として飲む瑰茶もある。


バラの一種であり、多くの品種が存在する。北米では観賞用に栽培され
る他、ニューイングランド地方沿岸に帰化している。イザヨイと呼ばれ
る園芸品種は八重化(雄蕊、雌蕊ともに花弁化)したものである。

日本においては、ハマナスは北海道襟裳岬や東北地方の海岸部、天橋立
などが名所として知られる。

都道府県の花に指定 北海道

市町村の花に指定北海道 - 石狩市、紋別市、稚内市、浦幌町、江差町、
雄武町、奥尻町、興部町、寿都町、斜里町、標津町、天塩町

岩手県 - 野田村
青森県 - 青森市、鰺ヶ沢町、大間町、風間浦村、野辺地町
福島県 - 相馬市

茨城県 - 鹿嶋市
新潟県 - 村上市、聖籠町
石川県 - かほく市、内灘町
福井県 - 高浜町

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

<ハマナス(浜梨)、ナシが訛ってナスとなったとのことですが、よく見
ると実はトマトのようです。

トマトはナス科のナス属です。食べたら梨のようだから、「浜梨」と書
いてあるものが多いのですが、中国語ではトマトのことを「番茄」とい
い、意味は「外国のナス」、ですので「浜茄」で「ハマナス」と言うの
も、「ハマナシ」よりも洒落ているかもしれません。ちなみに、ハマナ
スはバラ科バラ属です。ハマナスの実を乾燥させたローズヒップティー
もなかなか美味しいですよ。>(唸声)2011・6・13

◆トランプ、中国に第3次制裁関税発動

宮崎 正弘


平成30年(2018年)9月19日(水曜日)通巻第5835号   

 トランプ、中国に第3次制裁関税発動。なのに株価は上昇した
  EU企業の5・4%が中国から撤退、若しくは撤退中

9月18日、トランプ政権は「2000億ドル分の中国からの輸入品に対して
10%の制裁関税をかける。24日から実施する」とした。7月の160億ド
ル、8月の340億ドル。そして9月の2000億ドル、合計2500億ドルの中国か
らの輸入品に高関税を課すことになる。

さぞや市場はおののくかと思いきや、不思議なことに株価は上昇に転じ
た。主な理由は予想されて25%ではなく、10%という税率だったからだ。

中国はただちに報復にでた。米国からの輸入品600億ドル分に関税をかけ
る、と。

しかし税率は明らかにされず、これから品目の選定がなされるようである。

「中国の経済政策のトップは完全に混沌状態」(NYタイムズ、9月18日)
だれが何をどう決めて良いのか、経済政策の実権を国務院から取り上げ
て、習近平の側近等に任せた結果が、これである。

在中国のアメリカ企業は「ここで生産して米国へ輸出している関係上、深
刻な悪影響が出るし、高関税を理由に米国へ工場を復帰するという考えは
ない」とアンケートに答えた企業が過半だという。

他方、在中EU商工会議所は「米中関税戦争に巻き込まれて、相当の影響
がでている。世界的なサプライチェーンが機能しなくなる」と事実を認め
つつ、「すでに5・4%の中国で生産、販売してきたEU企業が、中国か
ら撤退したか、撤退を準備中である」とした(サウスチャイナ・モーニン
グポスト、9月19日)。
     
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1791回】                    
 ――「支那人は不可解の謎題也」・・・徳富(16)
徳富蘇峰『支那漫遊記』(民友社 大正7年)

             △
 とはいえ「場所によりては隨分支那流の無頓着、不親切、抛擲主義を見
たることなきにあらず」。さはされど、「多少にても、改善の兆の認む可
きもの」がある。

かくして「予は支那の變化を見るにつけても、日本の進歩の、甚だ緩慢な
るを慚悔せざるを得ず」。

 ■「(六)日本?師の退去と日本語の驅逐」

じつは徳富は前回の旅行の際、北京のみならず地方都市でも教鞭を執って
いた「若干の日本人?師」の案内によって「有?にして、興味饒き觀察を
遂げ得たりしことを記憶せり」。だが今回は違った。

官吏、会社員、「支那の税關、若しくは鹽務所に奉職」する者はいるが、
「日本人の?師は、絶無にあらざるも殆ど之を見出すに苦まり」。

旅先で日本人教師を見掛けないということは、「支那人が日本人?師を
必要とせざるに到りた」からであり、それを「支那人の一の進歩と、見做
す」こともできる。

だが、もし「日本人?師の退去と同時に、日本語は、殆んど支那の?育
界より放逐せられつゝあ」るならば、やはり由々しき問題だ。日本人教師
の退去と日本語教育の退潮の間には必ずしも関係はなさそうだが、「事實
は事實也」。一般に「支那に於ては、英語、若しくは獨逸語は、必要語と
して、場所によりては、殆んど強制的に?授せられつゝあるに拘らず。

日本語に至りては、殆んど之を眼中に措かざるものに似たり。而して英米
人、獨逸人等は、自から率先して、支那人の?育事業に努力しつゝあるに
拘らず、我が官民を擧げて、唯滿鐵の滿洲に於ける施設を除けば、何人も
關心せざるものゝ如し」。将来を考えるなら憂慮せざるをえない。どうや
ら日本では官民ともに外国における日本語教育の持つ戦略性に昔も今も――
ということは将来に亘っても――余り関心がないようだ。

 ■「(七)同文書院の効果」

徳富が2回目の旅行をした大正6年は「如何なるめ運り合せの歳にや、日本
より支那へ巡禮したる者、近來未曾有とも云ふ可き數に上」たらしい。
多くの「支那漫遊客の最も愉快の一は」、「支那にある日本人中に、支那
語を解する者多きが如く、支那人中に、日本語を解する者少からざれば也」。

主な役所、主な官吏はもとより、徳富が面談を希望するような人物なら誰
でも、必ず身辺に「一名乃至數名の、日本語に堪能なる支那人なきはな
し」。僻遠の地にあっても、片言の日本語を話せる留学生上がりの官吏が
いる。

「日本人にしても、支那語に通ずる人士」は少なくない。その柱は荒尾精
が上海に創立した東亜同文書院卒業生であり、「同文書院が、如何に多大
の貢献をなし、且つ爲しつゝあるかを、特筆せざらん」。
であればこそ同文書院の拡大すべきだ。

「凡そ?育の上に於て、此の如き的面の効果を収め得るものは、他に比
類罕なる可し」と、ベタ誉めである。

 ■「(八)日本語の閑却乎日本の閑却乎」

これまで「支那の朝野を擧げて」「日本語を解する者多きは」、両国朝野
の長年の努力の結果だ。

だが、「日本?師の退去と日本語の驅逐」という「現時の趨勢にて推し行
かば、今より十年ならずして、支那人中に、日本語を解する者は、或は今
日の半數に減ずるやも、未だ知る可らず」。

それというのも「今や支那を擧げて留學をすれば、米國に赴き、外國語
を學べば、英語を學ぶの情態なれば也」。このまま手を拱いているならば
「支那に於ける日本語は、或は地を拂ふに到らんやも」知れない。

どうやら「支那人が、日本語を閑却しつゝあるは、日本語を閑却したりと
云はんよりも、寧ろ日本を閑却したるにあらざるなき乎」。
    

◆奈良木津川だより 壬申の乱@

白井繁夫


本誌読者の皆様は、日本の歴史上有名な「壬申の乱」のことは良くご存じのはずです。しかし、私が長く書き続けている本題「木津川だより」の流れの中で、この「壬申の乱」を避けて通る訳にはなれません。

長文になりますが、大海人皇子の侵略心理、巧妙な戦略、天運などにつて、思いのままに詳しく綴ってみようと思います。「壬申の乱」の歴史の流れは、これから追々。

さて、(672年)天武元年6月24日大海人皇子が東国を目指してひそかに吉野を脱出した時は、大海人に従った者は妃の鸕野皇女と草壁.忍壁両皇子、舎人20余人に女孺(にょじゅ:鸕野皇女などに仕えた女官)わずか10余人の人数でした。

しかも、初日は約70kmの山道を進む、(道中には大友皇子の生母の出身地があると云う)超ハードのスケジュールです。(出家して吉野を目指して早朝より大津宮を出た日の距離の飛鳥「島宮」までとほぼ同距離を進みますが、その日の道中「山城道」は全体的に平坦な平野でした。)

大海人皇子が約半年間推考して戦略を練り、吉野脱出を決断した「壬申の乱」の大きな要素ともみなされるのは、「親の子に対する愛」がそうさせたと 私は思うのです。

天智天皇の晩年、生母が「卑母」である大友皇子を「皇位継承者」にと願い今までのしきたりを無視する行為を取る、強い愛と同じで、大海人皇子の妃の鸕野皇女は天智天皇の皇女.むすめであり、夫は天智の実弟です。

だから大海人皇子は有力な「皇位継承者」でもありました。而も二人の間の子(草壁皇子)は由緒正しい皇孫です。親(鸕野)の愛も非常に強いものだったと思います。

吉野脱出に先立ち6月22日には、前回本誌に掲載した如く、東国(湯沐令 多品治)に向けて発進した3名の大海人の使者(村国男依ほか2名)が、吉野.大倭.伊賀.伊勢.美濃へ至る行軍ルートの総てにわたる計画が周知され、準備を整えられるように派遣されたのです。

脱出ルートは吉野へ来た泉津.乃楽山.飛鳥の平坦地を避けて、吉野から吉野川沿いに上流に向かい、矢治峠を越える山道から「菟田(ウダ)の吾城:奈良県宇陀市」を抜け、「名墾(名張市)の横河」(名張川と宇陀川の合流点:畿内と外国の境)を経て「伊賀の中山」(三重県上野市)へ出るという、険しいルートでした。

菟田の吾城で屯田司(ミタノツカサ:近江朝の食料供御を行う司)土師馬手が食事を奉る。
(先遣使者よりの言で舎人土師氏は大海人皇子の行幸?と思ったか、大海人一行は、初日70余kmの行軍中、この時食事したのが最初で、何と初日は宿泊地まで食事なしで進む。)

飛鳥京の留守司高坂王への使者は3名が当日(24日)に発遣され、「駅鈴:ウマヤノスズ」を乞わせました。(美濃までの「駅家:ウマヤ」において大海人一行の馬の確保依頼:実際は独自で手を打っていました。高坂王は大海人皇子に好意を持っており、快応していたかも?)

使者3名の役割です。

大分恵尺(オオキダノエサカ)は、近江へ急行して大津.高市両皇子に大海人皇子の吉野脱出報告とその後の合流(予定戦略)など、黄書大伴(キフミノオオトモ)は大倭の「百済の家」に結集して兄の大伴馬来田と共に菟田で合流、逢志摩(オオノシマ)は近江朝からの追手がすぐ来ぬように近江に伝わらぬよう留守司に頼みて帰還など。

また「菟田郡家」(現宇陀市榛原区萩原)で湯沐の米運搬の駄馬ニオイウマ50頭(湯沐令多品治オオノホンジの手配の馬)を大海人皇子が得る。吉野から32kmの大野(室生)で日没、これより夜間行軍で「隠駅家:なばりのうまや」に着き、その家を焼いて人夫を求めてみたが真夜中では烽火(のろし)の役目だけで終わる。

「伊賀の中山」は大友皇子の生母の出身氏族(竹原氏)の本拠地へ東北東約8kmの至近距離です。

ところが、そこへ着くと「郡司」が数百の兵を率いて一行に合流してきました。伊賀国の北部の阿閉氏と南部の伊賀氏がともに大海人軍の味方に付いてくれたのです。
(対新羅戦用に近江朝が徴発した徴兵が100余人大海人軍に加わったのです。)

東海道ルートを外れ美濃への最短ルートを採り、「伊賀駅家」:上野市を流れる木津川を挟む古郡フルゴオリ:から「莿萩野」(タラノ:伊賀市佐那具町)へ25日の夜明け前に着きました。

吉野を出て70余km、20時間の進軍を終えてやっと休息、2回目の食事を取ることが出来たのです。
(飛鳥から近江朝へは高坂王の情報統制が有り、まだ気づかれずに進みました。)

25日の未明に近江と伊勢の交通の要所「積殖(つむえ)の山口」:三重県伊賀町柘植(大和と東国を結ぶ道が合流)に大海人一行は到着し、そこへ高市皇子の騎馬隊が舎人達と「鹿深」(カフカ:滋賀県甲賀郡)を越えて合流して来ました。

大海人一行は、伊賀と伊勢の国境の「加太(かぶと)峠」を越えて「鈴鹿郡:すずかのこおり」に入り(東国に入り)脱出が、ひと先ず成功しました。(近江からの高市の舎人は民大火.赤染徳足.大蔵広隅.坂上国麻呂.古市黒麻呂.竹田大徳.胆香瓦安倍:イカゴノアヘです。)

伊勢の「鈴鹿郡家こおりのみや」(鈴鹿郡関町金場付近)では国宰の三宅石床(イワトコ:駄馬50頭送付者)と、三輪子首(コビト)、湯沐令(ユノウナガシ)の田中足麻呂(タリマロ)と高田新宅(ニイノミ:祖父の高田足人が、私馬を大海人に美濃.尾張まで提供)などが出迎え、大量軍が集結しました。

伊勢の国宰三宅連石床は大海人皇子の下で、伊勢軍の統率者となり500の兵を率いて「鈴鹿の山道」を25日中に塞ぎました。三輪子首の軍は後日大和(飛鳥)進攻軍に編入されました。

25日の夕方、「川曲(かわわ)の坂下」(鈴鹿市木田町)に着き、「三重郡家」(四日市市東坂町)には夜になって到着して休息しました。

6月26日早朝:大海人皇子や草壁.高市などの一行は「朝明郡(あさけのこほり)の迹太川(とほかわ)の辺」に到着して、天照大神を遥拝しました。(戦勝祈願)。

「朝明郡家」(四日市市大矢知町)の大海人軍の処に、高坂王の一行が「鈴鹿山道」に来たと連絡あり、路益人を派遣したら、大津皇子の一行と近江へ派遣した大分恵尺等が留められていました。

(大津皇子幼少のため、馬でなく加太峠越えを「輿」で越えたから遅れた。)
ようやく大津皇子の一行は両親に合流できたのです。(大津の舎人の中には後の瀬田橋の攻防で先鋒となった大分稚臣(オオキダノワカオミ)や舎人の戦死者も多数でました。)

他方では、22日に先遣していた舎人の村国男依(オヨリ)が「安八磨郡(あはちまのこほり)の兵」3000人を率いて、「不破道の閉塞」(岐阜県関ケ原町)に成功した、との吉報を得ました。

夕方吉野から145kmの「桑名郡家」に着き、大海人一行は留まりました。
(大海人皇子は東海軍(尾張.三河)、東山軍(信濃.甲斐)を徴発する使者を派遣する。)

27日は妃の鸕野と草壁.大津を桑名に残して、野上(美濃の野上郡:現関ケ原町野上)へ大海人は行き、高市は「和蹔:わざみ」(関ヶ原町関ヶ原)から出迎え。ここが吉野を出て4日間(186km)の行軍の終着地とし、「野上行宮かりみや」としました。

多品治と村国男依が塞いでいた「不破道」で、尾張国司守:小子部連鉏鉤(チイサコベノサイチ)が2万の兵を率いて配下に入りました。

こんな中で、同じ26日の夕方近江朝の東国への使者「書薬フミノクスリと忍坂大摩侶」が捕捉され、少し遅れて来た韋那磐鍬(イナノイワスキ)がこれを見て大津宮へ逃げ帰った結果、27日には近江朝が「事の重大性」に気づいたのです。

「不破道」の封鎖が1日遅れていたら、2万の兵は近江朝軍の支配下になり、尚且つ、東国へ近江の使者が入っていたことでしょう。天運は大海人皇子に味方した、と思います。

「和蹔」に大海人軍の主力部隊を集め、全軍の最高司令官として高市皇子を任命して、
6月28日には全軍を検軍し、高市の下で指揮命令するなどの軍事訓練を行いました。

近江朝は、罠に嵌ったのです。

遅れ馳せながら、やっと戦闘準備に入り、西国へも徴兵を急がす使者の派遣、近江路と大和飛鳥の2方面への戦闘軍の編成に入りました。

しかし、大友皇子は唐からの使者「郭務悰カクムソウ」の応対に忙殺されていたため、迂闊にもこの時点まで、大海人皇子の動静を把握していなかったのです。

だから、大海人皇子が既に東国に入り、対新羅戦用に徴兵した兵2万余が大海人軍に加わったと云う情報も得ていなかったのです。大友皇子は後手後手に回ったのです。

近江路と大和飛鳥で「壬申の乱」の戦闘の口火がいよいよ切られます。(次回につづけます。)

参考資料: 戦争の日本史2  壬申の乱  倉本一宏 著
      木津町史  本文篇   木津町 
      壬申の乱   中公新書    遠山美都男著 


2018年09月22日

◆トランプ、中国に第3次制裁関税発動

宮崎 正弘


平成30年(2018年)9月19日(水曜日)通巻第5835号   

 トランプ、中国に第3次制裁関税発動。なのに株価は上昇した
  EU企業の5・4%が中国から撤退、若しくは撤退中

9月18日、トランプ政権は「2000億ドル分の中国からの輸入品に対して
10%の制裁関税をかける。24日から実施する」とした。7月の160億ド
ル、8月の340億ドル。そして9月の2000億ドル、合計2500億ドルの中国か
らの輸入品に高関税を課すことになる。

さぞや市場はおののくかと思いきや、不思議なことに株価は上昇に転じ
た。主な理由は予想されて25%ではなく、10%という税率だったからだ。

中国はただちに報復にでた。米国からの輸入品600億ドル分に関税をかけ
る、と。

しかし税率は明らかにされず、これから品目の選定がなされるようである。

「中国の経済政策のトップは完全に混沌状態」(NYタイムズ、9月18日)
だれが何をどう決めて良いのか、経済政策の実権を国務院から取り上げ
て、習近平の側近等に任せた結果が、これである。

在中国のアメリカ企業は「ここで生産して米国へ輸出している関係上、深
刻な悪影響が出るし、高関税を理由に米国へ工場を復帰するという考えは
ない」とアンケートに答えた企業が過半だという。

他方、在中EU商工会議所は「米中関税戦争に巻き込まれて、相当の影響
がでている。世界的なサプライチェーンが機能しなくなる」と事実を認め
つつ、「すでに5・4%の中国で生産、販売してきたEU企業が、中国か
ら撤退したか、撤退を準備中である」とした(サウスチャイナ・モーニン
グポスト、9月19日)。
     
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【知道中国 1791回】                    
 ――「支那人は不可解の謎題也」・・・徳富(16)
徳富蘇峰『支那漫遊記』(民友社 大正7年)

             △

とはいえ「場所によりては隨分支那流の無頓着、不親切、抛擲主義を見た
ることなきにあらず」。さはされど、「多少にても、改善の兆の認む可き
もの」がある。

かくして「予は支那の變化を見るにつけても、日本の進歩の、甚だ緩慢な
るを慚悔せざるを得ず」。

 ■「(六)日本?師の退去と日本語の驅逐」

じつは徳富は前回の旅行の際、北京のみならず地方都市でも教鞭を執って
いた「若干の日本人?師」の案内によって「有益にして、興味饒き觀察を
遂げ得たりしことを記憶せり」。だが今回は違った。

官吏、会社員、「支那の税關、若しくは鹽務所に奉職」する者はいるが、
「日本人の?師は、絶無にあらざるも殆ど之を見出すに苦まり」。

旅先で日本人教師を見掛けないということは、「支那人が日本人?師を必
要とせざるに到りた」からであり、それを「支那人の一の進歩と、見做
す」こともできる。

だが、もし「日本人?師の退去と同時に、日本語は、殆んど支那の?育
界より放逐せられつゝあ」るならば、やはり由々しき問題だ。日本人教師
の退去と日本語教育の退潮の間には必ずしも関係はなさそうだが、「事實
は事實也」。一般に「支那に於ては、英語、若しくは獨逸語は、必要語と
して、場所によりては、殆んど強制的に?授せられつゝあるに拘らず。日
本語に至りては、殆んど之を眼中に措かざるものに似たり。

而して英米人、獨逸人等は、自から率先して、支那人の?育事業に努力し
つゝあるに拘らず、我が官民を擧げて、唯滿鐵の滿洲に於ける施設を除け
ば、何人も關心せざるものゝ如し」。将来を考えるなら憂慮せざるをえな
い。どうやら日本では官民ともに外国における日本語教育の持つ戦略性に
昔も今も――ということは将来に亘っても――余り関心がないようだ。

 ■「(七)同文書院の効果」

徳富が2回目の旅行をした大正6年は「如何なるめ運り合せの歳にや、日本
より支那へ巡禮したる者、近來未曾有とも云ふ可き數に上」たらしい。
多くの「支那漫遊客の最も愉快の一は」、「支那にある日本人中に、支那
語を解する者多きが如く、支那人中に、日本語を解する者少からざれば也」。

主な役所、主な官吏はもとより、徳富が面談を希望するような人物なら誰
でも、必ず身辺に「一名乃至數名の、日本語に堪能なる支那人なきはな
し」。僻遠の地にあっても、片言の日本語を話せる留学生上がりの官吏が
いる。

「日本人にしても、支那語に通ずる人士」は少なくない。その柱は荒尾精
が上海に創立した東亜同文書院卒業生であり、「同文書院が、如何に多大
の貢献をなし、且つ爲しつゝあるかを、特筆せざらん」。
であればこそ同文書院の拡大すべきだ。

「凡そ教育の上に於て、此の如き的面の効果を収め得るものは、他に比
類罕なる可し」と、ベタ誉めである。

 ■「(八)日本語の閑却乎日本の閑却乎」

これまで「支那の朝野を擧げて」「日本語を解する者多きは」、両国朝野
の長年の努力の結果だ。

だが、「日本?師の退去と日本語の驅逐」という「現時の趨勢にて推し行
かば、今より十年ならずして、支那人中に、日本語を解する者は、或は今
日の半數に減ずるやも、未だ知る可らず」。

それというのも「今や支那を擧げて留學をすれば、米國に赴き、外國語
を學べば、英語を學ぶの情態なれば也」。このまま手を拱いているならば
「支那に於ける日本語は、或は地を拂ふに到らんやも」知れない。
どうやら「支那人が、日本語を閑却しつゝあるは、日本語を閑却したりと
云はんよりも、寧ろ日本を閑却したるにあらざるなき乎」。
     

◆インスリン注射不要の夢

渡部 亮次郎


2006年8月、京大の山中伸也教授が、人の皮膚から採った細胞に4つの遺伝
子を入れて培養したら、万能細胞ができた。iPS細胞=人工多能性幹細胞
と言うそうだ。

万能細胞から、神経細胞、心臓細胞、臓器細胞、血液細胞、軟骨などが作
られ糖尿病や心臓病に使えるとされている。

自分の皮膚から採った細胞だから、自分の体に入れても拒否反応がない。
ノーベル賞だという声が上がって本当に受賞した。細胞や臓器の再生へ、
万能細胞の研究競争が激化するだろう。

山中教授は、何年かしたら、人工細胞ができると言う。激しい競争がある
からだ。

しかし、4つの遺伝子は、癌細胞から採っているので、人に応用すると思
わぬ事故になる可能性があると言う。

山中氏は、神戸大→大阪市立大→カリフォルニア大と研究を続けて、世界初
の万能細胞を作った。

人工細胞は、糖尿病、心筋梗塞(しんきんこうそく)、脊髄損傷(せきず
いそんしょう)などの治療に使える。
http://www2.ocn.ne.jp/~norikazu/Epageh3.htm

このうち糖尿病治療への展望について専門家に聞いて見ると、うまくすれ
ばインスリン注射が要らなくなる可能性があるという明るい見通しがある
らしい。

糖尿病は、食べたものを血肉にするホルモン「インスリン」が膵臓から十
分に出てこないため、溢れた栄養(ブドウ糖)が血管を内部から攻撃した
末に小便に混じって出る病気である。小便が甘くなるから糖尿病。

糖尿病それ自体ではなかなか死なないが、内部から血管を糖分で攻撃され
ると、脳梗塞、心筋梗塞、盲目、足の切断、癌多発といった
「合併症」を招いて、寿命より10年は早く死ぬ。

栃木県にある自治医科大学内分泌代謝科の石橋俊教授によると、駄目に
なった膵臓や膵頭を何らかの方法で丈夫なものを移植すれば問題は一挙に
解決し、インスリン注射も要らなくなる。

しかし日本ではドナーが不足し、膵頭を調整する試薬の供給がストップし
たりして、こうした治療を受ける患者は2桁どまりだ。

そこで注目されたのが、インスリン「製造工場」ともいえる膵ベーター細
胞の再生治療だったがヒトの受精卵の仕様に付随する倫理的制約や拒否反
応が壁になって進んでいなかった。

そこへ登場したのが山中教授の万能細胞。ヒトES細胞から膵ベーター細胞
を作る研究は壁に突き当たったが、山中教授のiPS細胞なら、自分の皮膚
から出来た物だから拒否反応も倫理的な問題も起きない。

問題は今回できた4つの遺伝子が、がん細胞からとっているので、人に応
用すると思わぬ事故になる可能性があることだ。石橋教授は「この問題が
解消されれば、実用化は意外に早いかも知れない」と言っている。

資料:(社)日本糖尿病協会関東甲信越地方連絡協議会機関紙「糖友
ニュース」91号(2008・7・1)  執筆 08・06・28

◆全道停電は原子力規制委の知的怠惰が原因

櫻井よしこ


9月6日未明、北海道が最大震度7の地震に襲われた。9日現在で犠牲者は42
人、1人が行方不明だ。

地震の被害をさらに広げたのが、わが国初のブラックアウトの発生だ。電
力喪失でサーバーも工場のモーターも全て停止し、新千歳空港もJRも物
流も止まった。モーターで汲み上げる水道も止まった。

病院の生命維持装置、透析機器、保育器も動かない。病院などの非常用発
電機の燃料タンクは消防法で強度や素材が限定されており長時間は持たな
い。停電が長引けば命の危機に直結する。事実、非常に危険な事態が発生
していた。

6日午前5時頃、札幌市内の病院から、0歳女児の酸素吸入器が止まり、重
症に陥ったと消防署に連絡があった。札幌市は、女児は別の病院に運ばれ
処置中だと説明したが、9日現在、回復したとの明確な報道はないため、
赤ちゃんの健康が懸念される。

腎臓を患っている人たちは3日間透析できなければ深刻な影響を受ける。
停電は透析に必要な水と電気を奪い患者を命の危機に晒している。

こうした中、「北海道放送(HBC)」が7日19時27分に、「停電の影響
とみられる死者が出た」との情報を伝えた。「北海道文化放送
(UHB)」も同日21時45分に同様の情報を配信した。

それらによると「北海道東部の標津町に住む40代の会社員の男性と、上川
の上富良野町に住む70代の自営業の男性2人が、6日夜、ガソリン式の発電
機を使い、一酸化炭素中毒で死亡した」。男性2人の理不尽な死はまさし
く停電がもたらした。

電力喪失で危険に晒されるのは人間だけではない。北海道の基幹産業であ
る酪農においても同様だ。停電の解消は徐々に進んだが、その間に乳牛の
乳房炎防止のワクチンはほぼ全滅の可能性が高い。人間用も含めて多くの
ワクチンは、2度から8度の間で保管しなければ使えなくなるためだ。

菅直人政権とは違う

乳牛は、毎日、同じ時間に搾乳しなければ乳房が張り、痛みや熱が出て、
半数が1日で乳房炎になるといわれる。最悪の場合、そのまま廃用、つま
り殺処分にされる。ワクチン投与で乳房炎が治まったとしても、生乳の出
荷が禁止される休薬期間が1週間から10日間程度発生する。これだけでも
酪農家にとっては大変な被害だが、今回、乳房炎防止のワクチンがほぼ使
えなくなったということであり、被害の拡大が予想される。

停電によって社会全体のインフラが機能を停止し、トイレの蓋の開閉や水
洗のタイミングでさえも自動で行われる、高度な便利社会となった現代の
日本から、そうした機能を全て奪い取ってみせたブラックアウトが、どれ
程の真の被害をもたらしたかを見極めるには、今少し時間が必要だろう。

このような被害をもたらしている全道停電が起きた要因は、電力供給を一
か所の火力発電所に大きく依存していたからだ。北海道の電力は今回の震
源地近くに立地する苫東厚真(とまとうあつま)発電所が約半分を供給して
いた。165万キロワットの発電能力を持つ道内最大のこの石炭火力発電所
が地震で緊急停止したため、需給バランスが一挙に崩れて全道停電となっ
たのである。東京工業大学特任教授の奈良林直氏が語った。

「電力は常に需要と供給が同量でなければ周波数が安定しません。周波数
が乱れると発電機や電気を使用する機器が壊れる可能性があり、最悪の場
合は大規模な停電になります」

今回、苫東厚真の停止で、電力の供給が一気に落ちた。突然、バランスが
崩れ始め、北海道電力は連鎖的に発電所を停止せざるを得なかったわけ
だ。では火力発電所はなぜ停止したのか。再び奈良林氏の説明だ。

「実は火力発電所は構造的に地震に弱いのです。鋼鉄製の分厚い原子炉圧
力容器に燃料集合体が収納され、耐震補強を徹底的に施した原子力発電と
の違いです。火力発電では、ボイラーで生み出された熱を伝える伝熱管群
と呼ばれる管を、熱膨張を避けるために数十・の長さにわたって上部から
垂直に吊り下げます。この構造は今回のような直下型の縦揺れに弱く、苫
東厚真では1,2号機のボイラーの伝熱管が縦揺れで損傷し、高温高圧の蒸
気が吹き出しました。4号機はタービンで火災が発生し、火柱が上がりま
した。復旧は当初予定の1週間より長くかかるでしょう」

にも拘わらず、政府の対応は速かった。3.11のときの菅直人政権とは明ら
かに違う。苫東厚真の機能停止を受けて、その他の使える水力発電所、火
力発電所を直ちに再稼働させ、民間企業の発電量も組み込んで、驚く程の
スピードでほぼ全世帯に電気を通した。9日現在、節電を呼びかけなけれ
ばならない状況ではあるが、安倍政権の危機対応は高く評価すべきだろう。

原発を活用しないのか

しかし最も重要な点が置き去りにされている。何故、北海道の電力供給の
もう一本の柱となり得る泊原発を活用しないのか。泊原発の発電容量は
207万キロワットで苫東厚真発電所よりも大きい。今回の地震で泊原発は
一時外部電源を喪失したものの、非常用発電が正常に起動した。泊原発を
稼働させていれば、全道停電は起きていなかったと思われる。バランスが
取れていて安定した電力供給の一端を泊原発に担わせることを、少なくと
も議論すべきである。

泊原発の稼働が許されていない現状は、原子力規制委員会(以下規制委)
の専門家集団らしからぬ知的怠惰ゆえではないか。泊原発は2011年の3.11
のときも正常に稼働していたが、2012年5月5日、定期検査のため、運転を
停止した。

同年、民主党政権下で規制委が設置され、田中俊一氏が初代委員長に就任
した。規制委は3.11を受けて新たな規制基準を設け、新基準に基づく安全
審査を始めた。当初審査に必要な期間は「半年程度」とされた。

だが、彼らは次々に新しい審査項目を追加し、基準とすべき数値をなかな
か決められず、迷走を続けた。加えて、安全審査終了後に一般から意見を
聴くパブリックコメントを実施した。「読売新聞」は2014年2月22日付の
社説で「不合理な手続きを取り入れることで、結論がさらに先送りになり
かねない」と批判した。

規制委への評価が厳しいのは、原子力に関する国際社会の権威、国際原子
力機関(IAEA)も同様だ。IAEAは、16年4月23日、次のように日
本に言い渡している。

「(日本の)原子力規制委員会は、その人的資源、マネージメントシステ
ム、及び特にその組織文化において、初期段階にある」と。
 全否定に等しい手厳しい指摘を受けた規制委はいまも、相変わらず
だ。泊原発の敷地内の断層の有無を巡って神学論争をしており、これがあ
と2年は続くといわれている。

知的怠惰、無能力と無責任によって再稼働を引き延ばす彼らにこそ、先述
した2人の男性の命を奪った直接の責任があると、私は考えている。
『週刊新潮』 2018年9月20日号 日本ルネッサンス 第819回


◆子宮頸がんワクチン適齢期

石岡 荘十


欧米先進国では女の子どもが11歳になると親はまず、子宮頸がんから守るためのワクチン打つ。

11歳は、肉体的に成長の早い欧米ではセックスを始めて体験する“セックス・デビュー”の年齢だと考えられている。「うちの子に限って---」と考えたいところだが、現実は、そうはいかない。11歳は子宮頸がんワクチンを打つ“適齢期”であり、このタイミングでワクチンを打つのが、多くの先進国では常識となっている。

子宮頸がんはすべての女性の80パーセントが一生に一度は感染しているという。子宮の入り口である頸部に発生する上皮性の悪性腫瘍であり、世界では年間約50万人が子宮頸がんを発症し、約27万人が死亡していると推計されている。

2分間に1人が子宮頸がんで命を落としている計算になる。日本では毎年約1万5000人の女性が子宮頸がんを発症し、約3500人が死亡している。

原因は、ほぼ100パーセントが性交渉、つまり皮膚と皮膚の粘膜の接触でヒトパピローマウイルス(HPV)というありふれたウイルスの感染することによることが1983年、明らかになっている。パピローマウイルスを発見した独がん研究センターのハラルド・ツア・ハウゼン名誉教授には、2008年度ノーベル生理学医学賞が授与されている。この研究成果をもとに予防ワクチンが開発され、現在、世界100カ国以上で使われている。

子宮頸がんはいろいろながんの中でも例外的に原因が特定されているだけでなく、ワクチンによる予防法が確立されている。アメリカでは2006年ワクチンの使用を承認、昨年10月には日本でも使用が承認されたものだ。

成人になって、検診を受けずワクチンの接種もしない場合、がんは進行し、子宮をすべて摘出する手術が必要になることもある。

妊娠、出産の可能性を失い、女性だけでなく家族にとっても心身ともに大きな痛手となる。また、子宮のまわりの臓器にがんが広がっている場合には、卵巣やリンパ節などの臓器もいっしょに摘出しなければならなくなり、命にかかわる。


ワクチン普及のためのシンポジウムで、「子宮頸がんは予防ができるがんです。また、定期的に検診を受けることで、がんになる前に発見し、子宮を失わずに治療もできます。そのことを知らなかった私は、こどもを産むどころか妊娠することも出来ない体になってしまいました。死ぬではないかとこわかった。1人でも多く女性がワクチンを打ってください」と切々と訴えた。

子宮頸がんは、初期には全く症状がないことがほとんどで、自分で気づくことはほとんどない。このため、不正出血やおりものの増加、性交のときの出血などに気がついたときには、がんが進行しているということも少なくない。

進行するにつれ性交時の出血などの異常がみられ、さらには悪臭を伴う膿血性の不正性器出血、下腹痛や発熱などが認められるようになるという。

子宮頸がんは遺伝などに関係なく、性交経験がある女性なら誰でもなる可能性のある病気である。近年では20代後半から30代に急増、若い女性の発症率が増加傾向にある。子宮頸がんは、がんによる死亡原因の第3位、女性特有のがんの中では乳がんに次いで第2位を占めており、特に20代から30代の女性では、発症するすべてのがんの中で第1位となっている。

一度ワクチンを接種しておけば、その効果が20年は持つといわれる。だから、11歳という“適齢期“にワクチンを打った上で、定期的に検診を受け、早期に発見・手術を受ければ、術後に妊娠・出産が可能だという。

85パーセントに女性がワクチンを打っていれば、95パーセントの女性が助かるという研究報告もある。

ワクチンは3回に分けて打つ。初回、2回目がその1ヶ月後、さらに6ヶ月後に3回目。問題は費用が高額なことだ。

セックス・デビュー前の“適齢期“の女の子(11〜14歳)全員に公費でワクチンを打っても、費用はわずか200億円ほどと計算されている。今のまま放置しておくと、いずれこれを上回る医療費がかかる計算もあり、充分に元は取れるという。

地方自治体では、「健康・医療・福祉都市構想」を掲げ、在住の小学校6年生〜中学校3年生(12〜15歳)を対象に補助することを決めている所もある。このワクチン接種費用が高額なことを解消するために、地方自治体は急ぎ対応を期すべきだろう。

2018年09月21日

◆安倍はひしめく重要日程で成果を

                        杉浦 正章


任期内解散も視野に入れよ 改憲は合区、非常事態を突破口に

自民党総裁選は今は盛りの横綱に小結がかかったようなもので、勝負は初
めからついていた。総裁・安倍晋三が石破茂の倍以上553票を獲得し、議
員票では82%に達したたことは、今後の政権運営にとって紛れもない安
定材料であり、内政・外交に亘る安倍路線に何ら支障は生じない。

20日で2461日目を迎えた安倍は2021年9月までの3年の任期中に伊藤博文
の2720日、佐藤栄作の2798日、桂太郎の2880日を越え史上最長の政権とな
る。安倍を支持した政調会長・岸田文男がポスト安倍の最有力候補とな
り、たてつく石破は今回の254票は限界だろう。岸田が出馬したら安倍支
持票の大勢は岸田に向かうからだ。

総裁選は党員・党友による地方票と合わせて開票された結果、安倍が69%
にあたる553、石破は254票となった。安倍はほとんどの派閥の支持を集
め、国会議員票(402票)では8割を超える329票に達した。その一方、地
方票(405票)では224票と伸び悩みを見せた。事務総長甘利明が55%と予
想していたが、55.3%で辛うじてクリアした。

安倍の勝因は何と言っても国会議員の大半の支持を得る流れを5年半の
政権運営で定着させ、それによって党員票も掘り起こした結果であろう。
地方票は従来からポピュリズムに流れる傾向があり、石破の「善戦」は、
政治判断力が未熟な地方党員には石破の存在が大きく映った結果であろう。

常に反安倍傾向の強いテレビ朝日、TBSなど民放番組は、悔し紛れの論評
が多かった。コメンテーターが「終わりの決まったリーダーは求心力が弱
くなる」としたり顔で述べていたが、相変わらずの素人の淺読みだ。民間
会社でも3年もの任期がある社長が軽んじられることはない。

経営権と人事権を握っているから社員は従来同様に従うのだ。安倍も毎年
改造して引き締め、3年の任期中での解散を断行すべきだろう。勝てば中
曽根が党規約改正によって総裁任期を1年延長した例もあり、延長しても
おかしいことではあるまい。

しかし、今後の政治日程を見れば、政局にうつつを抜かしているときは
終わった。重要政治日程がひしめいている。まず来週には日米首脳会談が
あるし内閣改造も想定内だ。安倍は25日には国連総会出席を契機にトラン
プとの首脳会談を行う方向で日程を調整している。

欧州、中国に黒字削減で厳しい要求を繰り返しきたトランプが、安倍と仲
が良いからといって日本だけ例外にする可能性は少ない。経済再生担当相
茂木敏充が、米通商代表部(USTR)代表ライトハイザーとの21日の閣
僚協議でどこまで事前調整できるかがカギだ。安倍は国連総会から帰国後
10月にも、内閣改造に着手し、安倍改造内閣を発足させる方向だ。副総
理・麻生太郎、幹事長・二階俊博、官房長官・菅義偉は続投となりそうだ。

石破派からも人材を閣僚などに起用して党内融和を取り戻すことが必要だ
ろう。小泉進次郎は、安倍批判が目立ちすぎた。そろそろ入閣待機児童だ
が、閣内不一致を招く危険がある。

30日には沖縄県知事選がある。安倍としては与党候補を勝利に導き、普天
間基地の辺野古への移転を推進したい考えだろう。訪中も重要テーマだ。
安倍は12」日、訪問先のウラジオストクで、中国国家主席の習近平と会
談、10月の訪中に向けて調整することで一致した。

10月23日が平和友好条約発効40年となるため、これに合わせて訪中するこ
とになろう。安倍は来年6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議
に合わせた習の来日を想定しているようだ。

改憲問題も安倍政権の重要テーマだ。10月26日にも招集する臨時国会で論
戦の火ぶたが切られる。安倍は「いつまでも議論だけを続けるわけにはい
かない」と、秋の臨時国会への自民党改憲案提出を明言している。

今後、改憲論議を加速させる構えだ。しかし、各種世論調査では国民の間
に改憲志向が生じていない。共同の調査によると、秋の臨時国会に改憲案
を提出したいとする安倍の提案に「反対」が49%で、「賛成」の36.7%
を12.3ポイント上回った。

日経の調査はもっと厳しく、「反対」が73%で「賛成」の17%を大き
く上回っている。国民の間には改憲イコール9条という認識が強く、改憲
内容をどうするかによって変わってくる。改憲論議は、もともと安倍が昨
年5月、9条1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持)の規定を維持して自
衛隊を明記する案を提起したことから始まっている。改憲アレルギーを除
去するためには9条を後回しにして、石破の主張するように、参院選での
合区の解消や、大規模災害など非常事態の際に政府に権限を集中させ、国
民の権利を制限する緊急事態条項などを手始めに考えるのも良いかも知れ
ない。



◆全道停電は原子力規制委の知的怠惰が原因

櫻井よしこ


9月6日未明、北海道が最大震度7の地震に襲われた。9日現在で犠牲者は42
人、1人が行方不明だ。

地震の被害をさらに広げたのが、わが国初のブラックアウトの発生だ。電
力喪失でサーバーも工場のモーターも全て停止し、新千歳空港もJRも物
流も止まった。モーターで汲み上げる水道も止まった。病院の生命維持装
置、透析機器、保育器も動かない。病院などの非常用発電機の燃料タンク
は消防法で強度や素材が限定されており長時間は持たない。停電が長引け
ば命の危機に直結する。事実、非常に危険な事態が発生していた。

6日午前5時頃、札幌市内の病院から、0歳女児の酸素吸入器が止まり、重
症に陥ったと消防署に連絡があった。札幌市は、女児は別の病院に運ばれ
処置中だと説明したが、9日現在、回復したとの明確な報道はないため、
赤ちゃんの健康が懸念される。

腎臓を患っている人たちは3日間透析できなければ深刻な影響を受ける。
停電は透析に必要な水と電気を奪い患者を命の危機に晒している。

こうした中、「北海道放送(HBC)」が7日19時27分に、「停電の影響
とみられる死者が出た」との情報を伝えた。「北海道文化放送
(UHB)」も同日21時45分に同様の情報を配信した。

それらによると「北海道東部の標津町に住む40代の会社員の男性と、上川
の上富良野町に住む70代の自営業の男性2人が、6日夜、ガソリン式の発電
機を使い、一酸化炭素中毒で死亡した」。男性2人の理不尽な死はまさし
く停電がもたらした。

電力喪失で危険に晒されるのは人間だけではない。北海道の基幹産業であ
る酪農においても同様だ。停電の解消は徐々に進んだが、その間に乳牛の
乳房炎防止のワクチンはほぼ全滅の可能性が高い。人間用も含めて多くの
ワクチンは、2度から8度の間で保管しなければ使えなくなるためだ。

菅直人政権とは違う

乳牛は、毎日、同じ時間に搾乳しなければ乳房が張り、痛みや熱が出て、
半数が1日で乳房炎になるといわれる。最悪の場合、そのまま廃用、つま
り殺処分にされる。ワクチン投与で乳房炎が治まったとしても、生乳の出
荷が禁止される休薬期間が1週間から10日間程度発生する。これだけでも
酪農家にとっては大変な被害だが、今回、乳房炎防止のワクチンがほぼ使
えなくなったということであり、被害の拡大が予想される。

停電によって社会全体のインフラが機能を停止し、トイレの蓋の開閉や水
洗のタイミングでさえも自動で行われる、高度な便利社会となった現代の
日本から、そうした機能を全て奪い取ってみせたブラックアウトが、どれ
程の真の被害をもたらしたかを見極めるには、今少し時間が必要だろう。

このような被害をもたらしている全道停電が起きた要因は、電力供給を一
か所の火力発電所に大きく依存していたからだ。北海道の電力は今回の震
源地近くに立地する苫東厚真(とまとうあつま)発電所が約半分を供給して
いた。165万キロワットの発電能力を持つ道内最大のこの石炭火力発電所
が地震で緊急停止したため、需給バランスが一挙に崩れて全道停電となっ
たのである。東京工業大学特任教授の奈良林直氏が語った。

「電力は常に需要と供給が同量でなければ周波数が安定しません。周波数
が乱れると発電機や電気を使用する機器が壊れる可能性があり、最悪の場
合は大規模な停電になります」

今回、苫東厚真の停止で、電力の供給が一気に落ちた。突然、バランスが
崩れ始め、北海道電力は連鎖的に発電所を停止せざるを得なかったわけ
だ。では火力発電所はなぜ停止したのか。再び奈良林氏の説明だ。

「実は火力発電所は構造的に地震に弱いのです。鋼鉄製の分厚い原子炉圧
力容器に燃料集合体が収納され、耐震補強を徹底的に施した原子力発電と
の違いです。火力発電では、ボイラーで生み出された熱を伝える伝熱管群
と呼ばれる管を、熱膨張を避けるために数十・の長さにわたって上部から
垂直に吊り下げます。この構造は今回のような直下型の縦揺れに弱く、苫
東厚真では1,2号機のボイラーの伝熱管が縦揺れで損傷し、高温高圧の蒸
気が吹き出しました。4号機はタービンで火災が発生し、火柱が上がりま
した。復旧は当初予定の1週間より長くかかるでしょう」

にも拘わらず、政府の対応は速かった。3.11のときの菅直人政権とは明ら
かに違う。苫東厚真の機能停止を受けて、その他の使える水力発電所、火
力発電所を直ちに再稼働させ、民間企業の発電量も組み込んで、驚く程の
スピードでほぼ全世帯に電気を通した。9日現在、節電を呼びかけなけれ
ばならない状況ではあるが、安倍政権の危機対応は高く評価すべきだろう。

原発を活用しないのか

しかし最も重要な点が置き去りにされている。何故、北海道の電力供給の
もう一本の柱となり得る泊原発を活用しないのか。泊原発の発電容量は
207万キロワットで苫東厚真発電所よりも大きい。今回の地震で泊原発は
一時外部電源を喪失したものの、非常用発電が正常に起動した。泊原発を
稼働させていれば、全道停電は起きていなかったと思われる。バランスが
取れていて安定した電力供給の一端を泊原発に担わせることを、少なくと
も議論すべきである。

泊原発の稼働が許されていない現状は、原子力規制委員会(以下規制委)
の専門家集団らしからぬ知的怠惰ゆえではないか。泊原発は2011年の3.11
のときも正常に稼働していたが、2012年5月5日、定期検査のため、運転を
停止した。

同年、民主党政権下で規制委が設置され、田中俊一氏が初代委員長に就任
した。規制委は3.11を受けて新たな規制基準を設け、新基準に基づく安全
審査を始めた。当初審査に必要な期間は「半年程度」とされた。

だが、彼らは次々に新しい審査項目を追加し、基準とすべき数値をなかな
か決められず、迷走を続けた。加えて、安全審査終了後に一般から意見を
聴くパブリックコメントを実施した。「読売新聞」は2014年2月22日付の
社説で「不合理な手続きを取り入れることで、結論がさらに先送りになり
かねない」と批判した。

規制委への評価が厳しいのは、原子力に関する国際社会の権威、国際原子
力機関(IAEA)も同様だ。IAEAは、16年4月23日、次のように日
本に言い渡している。

「(日本の)原子力規制委員会は、その人的資源、マネージメントシステ
ム、及び特にその組織文化において、初期段階にある」と。
 全否定に等しい手厳しい指摘を受けた規制委はいまも、相変わらず
だ。泊原発の敷地内の断層の有無を巡って神学論争をしており、これがあ
と2年は続くといわれている。

知的怠惰、無能力と無責任によって再稼働を引き延ばす彼らにこそ、先述
した2人の男性の命を奪った直接の責任があると、私は考えている。
『週刊新潮』 2018年9月20日号 日本ルネッサンス 第819回