2017年05月11日

◆生きるよりも「活きる」を選ぶ

渡邊 好造




新聞の有名人の死亡記事をみると、死因とともについ目をひくのはその年齢である。わが身に比べて長生きされたかどうか気になるのは筆者だけだろうか。

最近、死を迎えるのは80%以上が病院だそうである。今では昔のように自宅であらゆる手を尽くした後残念な結果になることはまずないといってよい。それも数年前までは、患者が例え意識を失い眠った状態でも血管から点滴で栄養分を送り、かなりの期間生きながらえることができた。

しかし、これにも限界があり血管が詰まったり、どうしても栄養分が足りなくなりいつまでも生きながらえるという訳にはいかなかった。

そこに今度は「胃ろう(胃瘻)」という新しい治療法が開発された。この治療法は、小説家・渡辺淳一氏の週刊誌連載エッセイでも取上げておられたが、意識のなくなった患者の胃に栄養分タップリの流動食を直接送り込む。したがって、意識はなくとも患者は延々と長生きできることになる。筆者かかりつけの内科医によると、「やってみますか」と勧める病院も増えているという。

点滴だったら精々3〜4年が限界だったのが、それ以上に症状が変らないまま長生きできるらしい。医学上目覚ましい進歩には違いない。患者の家族にとって大喜びのこともあろうが、当然のことだが治療費は計り知れない。

かといって途中で「胃ろう」を打ち切ってくれとは言えない。それを言うと”もう殺してくれ”となり、殺人罪に問われかねない。これではもはや”生き”ているだけで、”活き”ているのでは決してない。筆者は「生きる」よりも「活きる」方を選びたい。

そこでこんな迷惑な結果にならないよう次のような遺言書を残すことにした。もちろん異論があることは覚悟の上だし、本人死後のことだから守られなくともやむを得ない。

1)病気・事故などにより脳死状態、認知症などで通常の判断ができない、その他回復不能の病気にかかった場合、余分な延命処置、治療は一切不要のこと。とくに「胃ろう」だけは絶対ご免である。
2)死体処理は、法律上必要なことのみに限る。
3)寺、僧侶に関わる費用は使わない。葬儀、読経、戒名、祭壇など不要。焼場直行の直葬も可。(戒名がないと「三途の川」を渡れないと真剣にいう人がいた、、)

念のために申し添えるが、金が惜しくて言うのではない。死者も含めて既に死んだも同然の人に金を使うべきではなく、金は”活きている人”にこそ使うべきなのである。        (完)

2017年05月10日

◆日米韓による北包囲網は弱体化

杉浦 正章
 


文の対北融和の早期実現は疑問
 

青年層の期待はやがて困難に直面
 

自らの国を「地獄」と呼び、「恋愛」「結婚」「出産」「マイホーム」「人間関係」「夢」「就職」の7つを諦めざるを得ない「 ヘル朝鮮七放世代」の投票行動が、革新系文在寅の当選に大きく影響した。これらの青年層は反朴槿恵闘争の中心になった世代であり、朴を退陣に追い込んだ余勢をそのまま駆って、文を圧勝、政権交代へと導いたのだ。北朝鮮に融和的な親北路線をとる文の登場は、北の金正恩にとってまさに思うつぼの大統領であり、日米韓による対北包囲網に打撃、弱体化となりかねない要素を帯びる。南北関係は改善へと動くが、これが北の核・ICBM開発断念につながる可能生は少なく、結局朝鮮半島の緊張緩和にはなりにくいだろう。米国による対韓圧力は厳しいものになることが予想され、文が公約通りに動けるかどうかは疑問だ。日米との関係を毀損してまで北との融和路線を推し進めるかどうかは微妙であり、急テンポでは進まない可能性がある。対日関係は昨日詳しく述べたとおり公約では反日を明確に打ち出しており、日韓慰安婦合意の継続が困難になる兆しも出てきた。
 

9年ぶりの革新政権の登場は、極東の勢力地図に大きな影響を与えるものとみられる。まず公約からみれば10日就任する文は早期に金正恩との会談の実現を唱えている。これまで南北首脳会談は、2000年に金大中が、また2007年に盧武鉉が行っている。いずれも金正日との会談だ。このうち盧武鉉には文が秘書室長(官房長官)として同行している。公約では「米国より先に北に行く」としているが、ワシントンポスト紙には、「私が大統領になれば、トランプ大統領に先に会って北朝鮮核問題について深く話し合って合意する。金正恩労働党委員長とは、核問題を解決するという前提があってこそ会える」と述べており、衝撃的な会談をすぐに実行するかどうかは疑問がある。10月には2回目の会談から10年の節目となり、この辺を狙う可能生もある。
 

しかし、もし文が対北独自路線を展開する場合は、米国が中国を通じて行っている秘密交渉にも影響が生ずる恐れがある。米国はこのほど秘密裏に北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄した場合に「4つのノー」を約束すると北に打診した。その内容は(1)北朝鮮の体制転換は求めない(2)金正恩政権の崩壊を目指さない(3)朝鮮半島を南北に分けている北緯38度線を越えて侵攻することはない(4)朝鮮半島の再統一を急がないである。トランプが「環境が適切なら(金氏と)会ってもいい」と将来の米朝首脳会談の可能生に言及した背景にはこの接触がある。いずれの提案も、中国が北を日米など海洋勢力が大陸進出を阻む橋頭堡と位置づけていることに配慮したものだろう。つまり中国にとっては悪くない提案だ。しかし金正恩が自らの命と同然と位置づける核兵器と引き換えに4項目をやすやすと受け入れる可能生は少ないとみなければなるまい。交渉は端緒に就いたままの微妙な段階にある。8日から始まったノルウェーでの米朝接触もある。従って文がこうした動きを無視して北との外交交渉を推し進めることは困難だろう。
 

しかし、金正恩は別だろう。冒頭述べたように文の登場は北にとって絶好のチャンスである。日米韓の結束への揺さぶりの好材料となるからだ。金正恩が日米韓連携に「隙」が生じたとばかりに、あの手この手の接近策をとることが予想される。いきなりトップ会談が困難なら北は政策面での改善を先行させる可能生がある。スポーツ交流、韓国による人道支援の再会、離散家族の再会などを経てケソン(開城)工業団地の再稼働などを促す。北は見返りに観光地金剛山をオープンにする。こうした動きはいったん始まったら急テンポで進展する可能性があろう。
 

金正恩にしてみれば対中関係は戦後最悪の状況に置かれていることでもあり、文の“活用”は願ってもないことなのだ。実際に最近の中国と北のやりとりはすさまじい。北が労働新聞で「中国は朝中関係のレッドラインを乱暴に越えて来た。中国はこれ以上我々の限界を試そうとするべきではない」と初めて中国を名指しで非難。これに対して中国は「北にレッドラインがどこにあるかを分からせる必要がある。もし核実験を強行すれば前例のない懲罰が下される」と、米軍の核実験場への限定爆撃も容認する可能性すら示唆している。中国には朝鮮戦争を通じて固められた「血の友誼(ゆうぎ)」の証である中朝友好協力相互援助条約の改定論まで台頭している。
 

さらに文の政治姿勢は、朴政権の「財閥との癒着」否定に貫かれており、ただでさえ不況に見舞われている経済面での成長維持は財閥との連携なしでは容易ではあるまい。北との関係改善が北を潤すことはあっても、韓国経済に好影響をもたらす可能生は少ない。財閥否定を貫けば、早ければ半年を待たずに経済的に行き詰まる可能生も否定出来ない。従って「 ヘル朝鮮七放世代」の期待どおり就職難を改善し、豊かな生活を達成するのは容易ではあるまい。
 

こうして文の登場は、大国によるせめぎ合いの場となりがちな朝鮮半島の地政学的な状況を如実に反映して、極東情勢を激動含みにしている。日本としては首相・安倍晋三はまず文との個人的な関係を築く必要があろう。とりあえず早期に電話会談をするのはいいことだ。同時に、日本は日中韓首脳会談の議長国でもあり、同会談の東京での早期実現を促す必要があろう。しかし、日韓慰安婦合意など譲歩できない問題については、はっきりと釘を刺すべきであろう。文は8日の段階でも「日韓合意は間違っている。堂々と伝える」と演説しているが、堂々と伝えられても受け入れ可能なものでもあるまい。また1年ごとに延長されることになっている軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も、極東の安全保障上重要であり、維持継続をダメ押しする必要がある。

2017年05月09日

◆度しがたい反日大統領誕生をどうする

杉浦 正章



文は「慰安婦合意は間違っている」と明言
 

韓国大統領選挙の投票が9日開始されたが、今日明日の二回にわたって韓国の大統領選を取り上げる。今日は日韓関係、明日は結果が極東情勢に及ぼす影響がテーマとなる。まず選挙公約から見る限り日韓関係は共に民主党の文在寅、国民の党の安哲秀、自由韓国党(旧与党セヌリ党)の洪準杓のいずれが選出されても朴槿恵より悪化する。とりわけ革新系の文がなった場合は、15年の日韓慰安婦合意の継続は極めて困難となりそうだ。しかし日本政府は慰安婦支援の10億円をとっくに支払い済みであり、韓国側は大半を元慰安婦に配布済みだ。政府は国家間の合意、しかも「最終的かつ不可逆的解決を確認した」合意の破棄を簡単に認める必要は更々ない。未来永劫突っぱね続ければよい。一方的に破棄するなら、強い外交・経済的制裁措置も視野に入れるべきであろう。

 

3候補の主張は多かれ少なかれ「反日」である。それでなければ選挙にならない国民性がある。事前の世論調査の支持率では1日のリアルメータ調査が文42.2%、安18.6%、洪18.6%,3日のギャラップ調査が文30%,安20%,洪16%となっており、文が圧倒的に有利だ。しかし、首長選挙の調査に関しては日本のマスコミはまず間違えないが、韓国は87年から6回の選挙のうち4回を読み違えている。調査の精度が極めて悪いから要注意だが、流れを大局的に見れば、文は反朴槿恵闘争の象徴的存在であり、その勢いを背景にしているからリードはうなずける。期日前投票を見ても文支持の多い若者の投票が目立っている。

 

各候補の対日関係に対する公約は8日の段階でも文の強硬姿勢に変化はない。慰安婦合意について「合意は間違っている」と明言、再交渉を主張した。その理由は「朴槿恵前大統領の国政壟断(ろうだん)によて行われた」からだという。ただ対米、対北関係について文は「北朝鮮に米国より先に行く。米日に十分説明する」と述べているが、これがどうも疑わしい。なぜなら日本のメディアはどこも報じていないが、米紙ワシントンポストが2日に掲載したインタビューで文は「ワシントンより平壌(ピョンヤン)に先に行くという考えには変わりはないのか」という質問に、「私が大統領になれば、トランプ大統領に先に会って北朝鮮核問題について深く話し合って合意する。金正恩労働党委員長とは、核問題を解決するという前提があってこそ会える」との考えを示した。いくら選挙公約であるにせよまさに二枚舌を国内と米国に対して使っているのだ。また韓米同盟を再調整すべきと考えるかと問われ、文は「私の返事は『ノー』だ。韓米同盟は韓国の外交と国家安全保障の最も重要な土台だ。結果的に韓米同盟をさらに強化するだろう」と強調した。米韓関係に関しては極めて常識的な発言をしている。この“使い分け戦術”が対日関係についても同様かどうかは、正直言って未知数だろう。対日批判は一般民衆に一番訴えやすいテーマであり、波に乗ったポピュリズム政治家なら、この“何物にも代えがたい至宝”を簡単に手放すことはあるまい。陰に陽に使い続けるに違いない。

 

一方中道左派の安哲秀も日韓合意は破棄だ。慰安婦像撤去に関する部分はもともと韓国側の努力目標であった性格があるが、これを巧みに突いて「少女像の撤去に関する合意があったかどうかは真相究明が必要」と述べている。保守の洪準杓も破棄。「慰安婦問題はナチスのユダヤ人虐殺に並ぶ、反倫理的な犯罪であり、そのような犯罪は合意の対象にならない」と言いきっている。

 

こうして、どの候補も反日と反慰安婦合意を競っているが、今更ながらに朝日の慰安婦大誤報が残した傷跡は取り返しの付かないものとなっていることが分かる。しかし国家間の合意が黙ってほごにされるのを見過ごすわけにはいくまい。新大統領の対日政策を見極めた上で、米国をはじめ国際社会へのPR戦に打って出る必要がある。政府間合意を日本だけが忠実に履行したにもかかわらず、韓国が反故にすればこれは国際社会から当然批判の対象になり得る。国連など国際機関でも堂々と主張できるテーマである。

 

加えて経済的に効き目があるのが各国の中央銀行が互いに協定を結び、自国の通貨危機の際、自国通貨の預入れや債券の担保等と引き換えに一定のレートで協定相手国の通貨を融通しあう通貨スワップ協定の無期限中断の続行だ。既に韓国との間でスワップ協定をした国が次々に延長拒否をしている。THAAD配備で怒り心頭に発している中国も今年10月で期限が切れる協定の延長を拒否する公算が大きい。残るのは東アジア地域における、通貨スワップ取り決めであるチェンマイ・イニシアティブ (CMI)の384億ドルのみとなり得る。これでは通貨危機にとてもではないが対応しきれない。韓国は既に2008年から2009年にかけて通貨危機に遭遇しており、日本は米国、中国に次いで3番目に救いの手を差し伸べたが、韓国は「日本は出し惜しみをした」と感謝するどころか恨んでいる。度しがたい国だが、毎度のことで怒っても仕方がない。反日の新大統領が出るなら今度は地獄の底を見てもらうことになるかもしれないということだ。

 

しかし韓国のネット掲示板で、韓国民は周辺国でどこが好きかのアンケート調査が実施されていたので紹介するとロシアの36%についで日本が29%となっており、中国は最近の事情を反映してか、たったの2%にとどまっている。日韓関係は政治となるといがみ合うが、民衆レベルでは銀座でも韓国語がよく聞かれるように、交流が先行している。基本はこの草の根の交流を推進して、長い目で韓国側の改善を待つしかない。

お知らせ

検査入院のため9日、10日は休刊します。
毛馬 一三

2017年05月08日

◆大英帝国の栄光と挫折

宮崎 正弘 



<平成29年(2017)5月6日(土曜日)通算第5280号>   

 〜大英帝国の栄光と挫折
  BREXITで景気停滞かと思いきや〜

 ロンドンのホテルでこの原稿を書いている。猫の目のように天気は氷雨
かと思えば雹(ひょう)に変わる。まるで英国の政局を彷彿とさせてくれる。

昨年のBREXIT(英国のEU離脱)という衝撃は世界の経済秩序への
挑戦となった。同時にグローバリズムに対する英国民衆の反撃でもあった。

この反グルーバリズムの動きが欧州全体に拡がり、フランスでオランダで
ナショナリズム勢力が強くなった。旧東欧諸国は軒並み保守系が政権を握
る政治状況となり、昨秋には「アメリカン・ファースト」を強く訴えたト
ランプが大統領選挙で勝った。
 
トランプをあれほど警戒したウォール街が株価高騰に転じたのは奇妙でも
あり、しかし皮肉にも米国経済の好況を示している。

グローバリズムを真っ先に言い出したのは英国である。
 
常に世界の規範モデルを提唱し、その先頭を走り、途中で不都合になると
止める。それが英国の歴史的な習性だ。日英同盟を強引に提唱し、日本を
巻き込んだかと思うと、不都合になれば、さっさと日英同盟を解消し、あ
げくに第2次大戦では日本に敵対した。

EUから真っ先に逃げ出すのも英国だ。
 
金本位体制を提唱し、やがて放棄したのも英国。その金融を支配するのが
ザ・シティだ。 世界金融はウォール街が支配しているように見えるが、
基本的な規範を策定しているのはいまもロンドンのシティである。この点
で英国と米国は深く繋がる。
 
日本の金融業界は銀行も証券も、シティに一大拠点を築いてきた。EUか
ら脱退となれば関税特典などのメリットが失われるからエクソダスが始ま
り、自動車など日本のメーカーも工場の分散を検討している。米国が
TPPからの離脱を表明し、メキシコ進出が無駄となりそうな日本企業の
戸惑いがある。

だとすれば、BREXITO以後の英国の現状を見ながら、次に何が起こ
るのかの予測のポイントを探ろうと筆者はリバプール、チェスターなど英
国各地を回った。

驚かされたのはビルの建設ラッシュだ。日本の報道とまったく違う風景で
ある。

産業革命の嚆矢となった蒸気機関の発明も元々は繊維産業の合理化が動機
でありEUへの加盟は農産品の輸出拡大が動機だった。

各地をまわって緑豊かな牧草地、隅々まで開梱された田畑を見ると、こん
にちの英国は農業大国でもある。

英国は新移民のポーランド系をはじめインド系とナイジェリアなど旧植民
地だったアフリカ諸国と香港からの大量移民で外国人労働者だらけであ
る。元気を失いつつあるジョンブル精神に代替するように活発な投資を敢
行しているのが中国勢である。

香港の李嘉誠グループも新都心開発、高級住宅地開発で大金を投じてい
る。ロンドンのチャイナタウンの活況と凄まじい投資ラッシュだ。
 嘗て七つの海を支配した大英帝国は政治軍事パワーこそ衰退したが、世
界の経済ルールを主導するという矜持を失ってはいないと思った。

     (この文章は北国新聞「北風抄」5月1日号の再録です)  
        
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◆書評 しょひょう BOOKREVIEW  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  

 キリスト教はイエスの教えをねじ曲げ、別の宗教になって堕落した
  イエス・キリストが光であるならパウロは闇である

  ♪
奥山篤信『キリスト教を問う!』(展転社)
@@@@@@@@@@@@@@@@

キリスト教を日本人は大いに誤解している。西洋の先進国が信じる宗教だ
から正統であり、正義であり、愛を尊ぶ宗教だと無邪気に考えている。

ニーチェは『神は死んだ』と言ったが、その意味するところを深く咀嚼出
来なかった。

カソリックの妖しげな「神学」とやらが、極左と同じ革命思想を礼讃して
も不思議に思わないばかりか、ローマ法王の政治的プリズムの強い、歪ん
だ発言もうっかりと受け入れる。

ローマ法王は「トランプ氏はキリスト教徒ではない」と放言し、ダライラ
マ法王とは面会を拒否した。

そうした鵺的な発言の軌跡を追うと、宗教者らしからぬ政治行動ではない
のか。

嘗て評者(宮崎)は木内信胤氏主宰の「経済計画会議」」の末席メンバー
として毎月一回、打合会に出ていたことがあるが、ある日、木内氏が雑談
のなかで印象的なことを言った。

「『聖書』のなかで、唯一まともな箇所は『山上の垂訓』だけだな」と。
 氏はご承知のように法華経への帰依熱く、しかし宗教書万巻を読みこな
されたが、最後には無宗教だった。

さて本書である。
 
奥山氏は還暦を過ぎてから上智大学の神学部に入学し直し、大学院に通
い、神学修士を得た。その上で、こんどはフランス神学の名門校「パリ・
カトリック大学院」に留学し、キリスト教の原理を見極めようとした稀有
の行動派である。

そして、パリでの驚きを奥山氏は言う。

「フランス人の神学生はほぼ皆無だった」、「結局フランス人で今や神父
や神学を極めようとする意欲のある人物がいないということである」

留学生は嘗てのフランス植民地からが多く「何の疑いもなく神を信じる純
粋は青年達」しか、パリ・カトリック大学院にはやってこないのだ。

米国とて「神の国」であったはずなのに大都会の教会のミサに来る人は稀
となった。ドイツでは若者達の教会離れが加速度的に進んでおり、「教会
税を支払うのが馬鹿馬鹿しい」という動機が蔓延っている。チェコでは国
民の八割近くが無神論である。

つまり先進国でキリスト教の衰退は顕著である。

奥山氏は、なにも、そのことを伝えたくて本書を書いたのではなかった。
キリスト教がもつ偽善、欺瞞、その教理の背後に隠された嘘について研究
の成果を世に問うのだ。

第1にキリスト教は戦争をもたらし、戦争で肥った宗教である。
だからジョン・レノンは「イマジン」を謳った。

♪「宗教もない、さぁ想像してご覧、みんながただ平和に生きているって」

この点に関して奥山氏は戦国時代の切支丹大名の暴走、宣教師等の裏に隠
されていた侵略の意図を白日の下に晒し、日本から南蛮船によって売られ
た日本人奴隷が夥しく、これに怒った秀吉がついに鎖国を選択した過程を
辿る。

第2に神が人間をつくったというのは誤りで、「実際には人間が神を造っ
たのだ」

「奇跡はでっち上げられ、反知性の世界での出来事」でしかない。
 奥山氏はこうも言う。

「奇跡や迷信、科学的にあり得ないことをいまだに信じる人々、これこそ
危険極まりないカルト思考である」(中略)「排他的非寛容に立つ傲慢な
自らの偶像が神だという発想こそが、古代より現代にいたるまで人間同士
の憎悪と殺戮の原因である」(146p)

だから最後の箇所で奥山誌はマザー・テレサのいかがわしさについて言及
している。

第3にキリスト教は詭弁で成り立つ。
 
スティーブン・ホーキング博士が言った。

「人類が科学というものを理解できる前に神が宇宙を創造したと信じるの
は自然なことだ。しかし今や科学が説得力のある説明をしている。人類が
神の心が分かるというのは、『神が存在すれば』という前提であって、神
が存在しない」

大哲学者のエマニエル・カントは「理論理性によっては神の存在を証明す
ることがいかなる方法でも出来ないと考えた」。

カントはリスボン大地震の直後に「神は不在である」と悟った。
 
 となると結局、いまのキリスト教をイエス・キリストの始源的教えから
ねじ曲げたのはパウロということになる。

かねてからの疑問だったパウロという存在。奥山氏はさらりと次のように
説明している。

「イエスの精神を無視して勝手な宗教を作り上げた。イエスの考えは人間
の倫理の規範である。ところがパウロは形而上学的に作り上げ、倫理行動
から信仰なることよりコンスタンチヌス帝の権力の手先としての宗教にし
てしまった」(47p)

「イエスは光であり、パウロは闇である。イエスは人々が生きるべき規
範、それを手本にしなければ人は生きることが出来ないのである。だから
『山上の垂訓』は偉大な人のあるべき道標なのである」。

かくも大胆に、しかし明らかだったが誰も語りたがらなかったキリスト教
の欺瞞を批判した書は得難いと言える。

          
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◆  樋泉克夫のコラム 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  
【知道中国 1566回】      
  ――「正邪の標準なくして、利害の打算あり」――(?富5)
   ?富猪一郎『七十八日遊記』(民友社 明治39年)

  ▽
 在満の日本官民が「營口對大連、若しくは大連對營口」といった目の前
の小さな縄張り争いに血道を挙げている間に、ウラジオストックからロシ
アの物資が続々と送り込まれ、日本の商圏が犯されているのだ。「我が當
局者に於ても、特に大連及ひ營口に於る當該官僚に於ても、既に氣附きた
る所ならむ」とは思うが、これからは日本官民を挙げて「大連營口對浦鹽
たる可き」姿勢で臨め。大局に目を向けるべし。これが徳富の主張だろう。

実は日露戦争の結果、満州には「金か落ちて居る筈也」。だが現実を見る
と「貨物は上海邊に堆積して、一向にさはけ」ない。「畢竟日本人か、其
利?を壟斷するによるとは、往々外人の口にする所」ではある。だが、そ
れは「買被り」というもの。たしかに「金は落ちたれとも、大抵は山東の
苦力、齎らし去れり。物價は騰貴したり。作物は荒らされたり」。そこで
「外から見たる程の購買力、急増せざるなり」との現地在住日本人銀行関
係者の見解を示している。
 
満州を日本人が押さえ、開発に乗り出すや、食いっぱぐれた農民が仕事を
求めて山東省から、いや山東省のみならず河南省などからも万里の長城を
越えて北上し、続々と乗り込んできた。「闖関東」と呼ぶ人の奔流だ。

「山東の苦力」は休みなく働き、稼いだカネを故郷に「齎らし去れり」。
その間、出先の満州で物価が高騰し、作物が荒らされようが――いいかえる
なら現地社会における社会生活上の生態系が変調を来そうが、全くお構い
なし。

ここにみる「山東の苦力」こそ、じつは華僑なのである。華僑は南部の
福建、広東のみにみられるわけではない。華僑という単語は決して名詞で
はなく、その振る舞いを仔細に観察するなら、寧ろ動詞と見做すべきだ。
つまり古来、漢族は新しい生存空間を求めて華僑し、やがて18世紀末前後
から清朝の版図の外に華僑し、中国という世界を拡大してきた。

1949年の建国と同時に毛沢東が定めた対外閉鎖路線は、?小平によって取
り払われた。党小平を引き継いだ江沢民は「走出去」というスローガンを
掲げ、人々と企業に海外への進出を呼び掛けた。現在のトップである習近
平は「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を錦の御旗に、一帯一路政策
を引っ提げて海外への進軍を妄想し、関係諸国を混乱させる。

今後の世界秩序を考えるなら、その成否は不明ではあるが、過去に見られ
た以上の量と速さと広がりも以て、合法非合法に拘わらず、「華僑する」
という現象が続くことを肝に銘じておくべきだ。いや、これまでとは大違
いで、過去の華僑の大部分がスッカラカンの貧乏人であったのとは違い、
これからは一定の資産を持つがゆえに大手を振って、海外に向って「華僑
する」ことになる。いやはや迷惑千万な話だ。

かりに共産党政権が崩壊したところで、この流れを押し止めることは至
難、いや不可能。共産党政権を倒して民主的な政権が生まれたとしても、
その政権が世界各地に飛び出して身勝手し放題の自国民を中国大陸に呼び
返すなどということをするわけがない。絶対に、断固として。やや大袈裟
にいうなら、世界に飛び出し自らの価値観で、自らの生き方を貫こうとす
る中国人こそ、世界の秩序にとっての超ド級の脅威である。彼らを前にし
たら、北朝鮮の若将軍ドノ(中国では「肥仔金」とも呼ぶらしい)の“火
遊び”なんぞたいしたことはない。中国人の奔流こそ国際社会にとって最
大の不安定要因ではないか。

徳富の旅に戻る。

やがて営口を離れ、「英人の經營にて、何事も秩序正しく、旅客の便宜と
愉快とに缺くる所、殆んと此れな」い関外鉄道に揺られ、万里の長城の最
も東に位置する関所である山海関へ。ここを越えれば中国本部。「此地日
本軍隊の駐留あり」。ここで関内鉄道に乗り換え一気に南下し天津へ。天
津での散策の数日を過ごした後、北京に向かうこととなる。
《QED》
    

◆ヒラリーの罪障意識

Andy Chang



トランプが就任して100日たった5月1日、ヒラリーがCNNのインタ
ビューで「もし投票日が10月27日だったら私が大統領になってい
た。落選したのは28日にFBI長官コーメイが(私の補佐官ウマ・ア
ベディンの夫)ウィーナー氏のパソコンにアベディンが私のメール
を保存していたこと発表したからだ。その上にウィキリークスも私
に不利な(例えばヒラリー陣営の総指揮ジョン・ポデスタのメール)
情報を発表したからだ」と述べた。

この談話は事実と違う。実情はFBI長官が、「機密ではない」ウィー
ナー氏のパソコンにヒラリーのメールが保存されていたことを発表
した。つまりFBIがヒラリーとアベディンの違法行為を発表したの
である。

正確に言えばFBI は新発見の事実を議会に通知し、それをメディア
が報道したのである。これが投票に影響を与えたかもしれないが、
それはヒラリーの責任であってコーメイ長官の責任ではない。ヒラ
リーの悪事が落選の一因となったのである。

コーメイ長官は選挙に影響を与える為に発見を公開したのではない。
投票日の後まで新事実を隠せばFBIがヒラリーのために事実を隠蔽
したことになる。しかしこれを発表すればヒラリーはコーメイ長官
が選挙に影響を与えたと非難する。FBIは政治に中立だからFBIの
責務と信用のために新事実を公開しなければならない。

選挙に影響があったのはFBIの所為ではなくヒラリーの罪が露見し
たからである。それなのに彼女は落選して半年以上経過してもFBI
が悪いと言う。ヒラリーには罪の意識がない、そればかりか彼女は
テレビで得々としてコーメィ長官を非難した。彼女はCNNのインタ
ビューのあとで「このあと私は民間活動家となって反抗勢力となる
(I will be an activist citizen and part of resistance)」と得意
げに語ったのである。

●コーメィ長官の国会喚問

「なんとも都合の良いこと」に翌日5月2日、国会の上院司法委員
会は早速コーメィFBI長官を喚問したのである。委員長グラスリー、
副委員長ファインスタインは共に民主党員、まさに「手ぐすね引い
て」あたかもコーメィ長官が初めから有罪でもあるような諮問会で
あった。尋問の要点は(1)FBI長官が投票に近い28日になぜ新事
実を公開したのか(2)ロシアが選挙においてトランプ有利な影響
を与えたか、ヒラリー陣営をサイバー攻撃したかなどの調査(長官
は調査中の機密であるとして返答を拒否)である。

●コーメィ長官の陳述

コーメィ長官は諮問に対し次のように陳述した:
投票日に近くなってからFBIの部下は別件で調査していたウマ・ア
ベディンの夫ウィーナー氏のパソコンに、アベディンがヒラリーか
ら受け取ったメールを保存していた事実を発見した。この発見で保
存されたメールに機密メールがあるかを知る必要がある。機密メー
ルが機密保持のないパソコンにあったから問題なのだ。

FBIは新事実の発見を国会に通知することで苦慮することになった。
国会に通知すればメディアに漏れる。漏れればFBIが選挙に干渉し
たと非難される。事実を公開しなかったらヒラリーを庇ったことに
なる。FBIは絶対中立の部署であり、FBIがどちらか一方を庇ったら
FBIが公明正大なアメリカの国家調査機関としての死を意味する。
だからたとえ非難されても28日に事実を発表したのである。

この説明のあと民主党議員は、それではどうして新事実を発表した
二日後にまたヒラリーを有罪とすることが出来なかったと発表した
のかと聞いた。

これについてコーメィ長官は、ウィーナーのパソコンから見つかっ
たヒラリーのメールは4500通以上あり調査すれば数か月はかかる
と思われたが、新しく出来たプログラムを使用した結果数日で数千
通のメールのうち機密性のありそうなメールは90通以上あり、この
うち機密メールは12通であった。しかし発見した12通のメールは
7月にすでに発見されたメールと同様だったため、新事実でヒラリ
ーを有罪とすることは出来ないと判断し、直ちにこれを発表したの
だと答えた。

●ヒラリーの罪障意識

このことからわかるように、ヒラリーと民主党陣営はヒラリーが落
選したことをFBI長官の所為にしたい、そうしてトランプ反対勢力
を作り上げ、二年後の中間選挙で復讐したいのである。ヒラリーは
4年後に再び大統領選挙に出馬するかもしれないと言う人も多い。
しかし民間の反応はイマイチ、4年後のヒラリーは73歳、出馬は難
しいだろう。

CNNインタビューのあとテキサスのクルース上院議員は「ヒラリー
に罪の意識はないのか。失敗をみんな他人のせいにするつもりか」
と述べた。多くの人はクルース議員のコメントに賛成だが、私には
異議がある。ヒラリーは知りながら罪を犯し、いくら罪を犯しても
罪に問われない自信を持っているのだ。アメリカは自由で公平な民
主国家と言うが巨悪の前には無力なのだ。


◆「措置入院」精神病棟の日々(34)

“シーチン”修一 2.0

「本(含新聞、除マンガ/雑誌)は読むけれどテレビはあまり見ないな
あ」を読書派、「テレビは見るけれど本はあまり読まないなあ」をテレビ
派とすれば、読書派とテレビ派は拮抗しているようだ。しかし読書派は
年々少なくなっており、47%ほどと半数を切っているようだ(参考:2014
年文化庁による16歳以上の3000人調査)。

読書派でも小生のように「テレビをほとんど見ない」(2011/3/11の大震
災以降、6年間で60分ほどだから「まったく見ない」と言っていい)とい
う極端な人は、全体の極一部、多分2、3%くらいかもしれず、一方で読書
をほとんどしない人もそれくらいいるのではないか。もっとも痴呆症の母
は本やテレビその他(季節にも!)にまったく関心がなくなったが、それ
は別の話。本稿では健常者について書く。

現役時代に接した人たちの多くはテレビを話題にしなかった。小生の皮膚
感覚で言えば、メインストリームの人々(全体の20%)はテレビはニュー
スとか論説は見ることはあっても、娯楽番組はまず見ない。

その代わりに日経を中心に内外の新聞から情報を得ることが多かったと思
う。テレビからまともな情報はまず得られず、「お前ビジネスマンだろ、
それなら最低でも日経ぐらいは読んでおけよな」という空気だった。

逆に言えば、80%の人々はテレビからメインの情報を得ているのだろう
が、「タケシが、サンマが、トコロがどーしたこーした」といったジャン
ク情報ばかりだから、おしゃべりのネタにはなっても仕事や生活にはおそ
らく何の効用もないのではないか。

《経済広報センター2013年8月調査:生活者が一般的な社会の動きを知ろう
とするときに利用する情報源としては、「テレビ」(84%)と「新聞」
(82%)がそれぞれ8割を超える。「インターネット」も79%に上り、こ
の3つが情報源の柱となっている》

講談社の創業者である野間清治は「おもしろくて、ためになる」を社是
(キャッチフレーズ)にし、それはナント今でも引き継がれているが、テ
レビは基本的に「ただ面白いだけ」だろう。ためになるどころか「浮薄の
普及」(斎藤緑雨)「一億総白痴化」(大宅壮一)そのものだと小生は
思っている。

小生の尊敬する山本夏彦翁は幽冥界(さかい)を異にする病床にあって、
付き添いの娘さんに「テレビを消してくれ」と小さな声で言ったと、息子
の伊吾氏が書いていた。翁は「銭形平次」と「水戸黄門」がお気に入り
だったようだが、「結末がいつも同じだから心が休まる」のか、BGMとし
て流していたのかもしれない。

テレビの想定視聴者が中学2年生だということは何回も紹介しているが、
だからテレビをいくら見たところで中2以上にはならない、だから時間の
無駄。

そんなことを思うのは多くて20%の人々で、圧倒的大多数の80%の人々は
そんなことはまったく思わず、「面白ければそれでよし」と今夜もゲラゲ
ラ笑ったりするのだろう、「えーっ、ウソッ!オッカシイ!」と、時には
随喜の涙を流しながら。それとも腹をよじって痛くなったのか?

民のカマドから炊煙が上がり、ゲラゲラ笑い声が聞こえるのが「治まる御
代」ならば、「この世は生きるに値しない」などと世をはかなんで死ぬ人
がいるのは当然のことかもしれない。それは哲学的な選択なのだが、統計
上は「病気による自殺」になっているのだろう。ナンカナーという感じだ
が、所詮この世はこんなもの、と諦めないと精神を病む。

承前「心理検査報告書」から。【 】は小生の感想。

<実施した心理検査:2)WAIS-V>

*検査所見

2時間以上にわたる検査でしたが、どの問題にも時間をかけながら集中し
て取り組まれていました。

全体としてIQは120(平均は100)と、高い能力をもっていることが示され
ています。ただし、グラフ(略)を見てわかるとおり、能力間にバラつき
が見られ、得意不得意の差が激しいこともうかがえます。

言語表現力、理解力は突出しており、言葉を用いて自分の考えを伝えた
り、あるいは物事を理解するなども得意ですし、知識や常識も豊富です。
そうした知識、説明力の高さゆえに、言葉で説明を求める課題では、たび
たび話がスケールの大きいものに拡大する様子も見られました。

こうした言語理解と比較して、処理速度は50以上下回る不得意分野といえ
るでしょう。物事をスピーディーにこなす力は他の能力に比してかなり低
く、この点についてはアルコールや病状等による能力の低下が生じている
可能性も推察されます。

実際、処理速度以外の課題、たとえば積み木を用いて模様を作る課題で
も、時間が間に合わないことでの失点がほとんどでした。

このように、言語的には多くのことを理解し、また表現できる方であるも
のの、実際の作業においての処理速度は、本人の理解に追い付かないた
め、“頭ではわかっているのにスムーズにこなせない”という不全感につな
がりやすいことが予想されます。

時間をかければ理解できても、限られた時間の中で適切に理解、判断して
いく必要が出てくる現実状況では、能力が発揮されにくくなると思われます。

*今後のために
自分のペースで考えたり、判断することができる環境では、かなり高い能
力を発揮される方と考えられます。そのためにはあまり急かされたりする
ことのない環境が好ましいでしょう。

また、言語表現力は非常に高い方ですので、時には“端的にまとめて話す”
ということを意識すると、より相手に伝わりやすく、また相互にとってよ
いコミュニケーションができるかもしれません。

以上のとおりご報告致します。

【WAIS-Vは成人用のウェクスラー式知能検査(Wechsler Adult
Intelligence Scale、通称ウェイスの第3版)のこと。「言語性IQと動作
性IQといった測定概念を用いて、個人の得意不得意の測定を試みたという
点が大きな特徴」だそうだ。IQは100が並、120が秀才、150は天才か狂人
らしい。

小生の言語性IQは130でかなり上位だが、記者が仕事なのだから当たり前
である。動作性IQは103で、これは並。ところが処理速度は75とガクンと
落ちている。

これには思い当たるフシがある。小生が会話、話しが苦手なのは「長考」
する癖があるからで(囲碁では16時間、将棋では5時間という長考記録が
ある)、そこで会話はストップし、3時間、6時間は考えることはしばしば
だ(ちょっと考えて解が見つからないときは「そのうちいいアイディアが
浮かぶだろう」と思考停止にするのだが、脳の無意識層で勝手に考えてく
れるので長考はさほどというかまったく疲れない)。

結局、朝カミサンに訊かれたことを夕方になって「うん、やっぱりアレは
こうした方がいいんじゃないか」などと答えると、カミサンは「え、何の
こと?」と、彼女は質問したことも覚えていないということになる。これ
はしょっちゅうだ。

思考回路がそういう風になっているから処理速度はすこぶる遅く、当意即
妙とは全くいかないが、いいこともある。何しろ無意識層が処理してくれ
るから一度に3つ4つのテーマを与えることができ、3〜6時間後にはどうい
うわけか一挙に解が「はい、お待ちどおさま」と出てくるからとても便利
である。

記者は何本も原稿を抱えているからいろいろ考えなくてはならないのだ
が、締め切りに合わせて一本の記事に猛烈に集中するから、他の記事につ
いて考えるゆとりはない。それに代わって無意識層があれこれ考えて、顧
客が満足し、自分も納得し、一番楽な近道(小生はそれらを「ショート
カット」と呼んでいた)を示してくれるわけだ。

今は専業主夫だが、小さなこと、たとえば朝の炊事が終わった後、パイプ
煙草、コーヒー、キャラメル、ガム、トイレ、音楽、洗濯干し・・・自分
の現在位置、手間暇などを考えてどれからすべきかを決める。

これは無意識層を動かすほどの問題ではないけれど、「緊急性があるのは
トイレで、たばことコーヒーで一休みし、ガムと音楽を楽しみながら洗濯
物を干す、最後にキャラメルだな、などと決める。性格だから今さら変え
る気にはならない。

結局、即断即決とはいかず、処理速度は遅くなる、ために間に合わずに粗
相をしたりする。わが街の知能障害のお兄さんは歩行中に時々立ち止ま
り、両足をそろえて左足から歩き出す。多分そうしないと心が晴れないの
だろう。

「無くて七癖」、読者諸兄姉に問う、「♪あんたのお癖は何アンなん
の」、トニー谷、か・・・古い話だから今では話題にもならないが、先
日、カミサンはCD屋で上記のお兄さんから初めて声をかけられたそうだ、
「ジャズが好きなの?」と(小生へのお土産を探していた)。「あなた
は?」と聞けば「舟木一夫」。

お兄さんは40歳ほどだから、ときどき見かける母親は僕ら夫婦より少し
上、つまり「高校三年生」の世代だ。お母さんの影響で彼も「♪クラス仲
間は いつまでも」と歌っているのだろう。彼は小学2年生、ボクは高校2
年生、「♪道はそれぞれ 別れても」知的障害という点では同じだな】
(つづく)2017/5/7



  

◆見逃してならない病気の「前兆」

毛馬 一三



畏友石岡荘十氏の<「あたる」前に必ず「かする」>の寄稿を本誌に掲載したが、まさにその内容が「脳卒中」や「心筋梗塞」に如何に重大なことであることを、改めて知らされた。実はそれに類する事態が私の周辺で起きたからだ。その件は追々。

石岡氏は、それら疾患にはいずれも「前兆」があり、それを見逃してはならないと、こう綴っている。

<心臓の血管(冠動脈)が狭くなる狭心症、完全に塞がる心筋梗塞も高齢者に多い疾患だが、よくよく思い出すとほとんどの人にその前兆がある。血圧が高い、胸が痛くなったり、なんとなく重苦しい感じがしたりするが15分かそこらで治まるので、「ああよかった」とやり過ごす。

これを専門的には「放散痛」というが、大概の人はこれが心筋梗塞の前兆であることに気づかない。こんなときには、バカにせず、24時間緊急対応をしてくれる専門の医師と検査体制の整った病院へ行って診察を受けることが大切だ。

「脳卒中」や「心筋梗塞」で倒れることを、昔から業界では「あたる」といい、一過性の前ぶれを「かする」という。つまり「あたる」前に必ず「かする」前兆がある。

私は、10数年前から「かすった」段階で診察を受け、診察券を確保して、これを外出のときも肌身はなさず携帯して歩いている。そのくらいの心掛けがなければ、attackでよしんば一命をとりとめても、半身不随では快適な老後は過ごせない>。

つまり、胸が痛くなり、15分そこらで治まってもやり過ごすな。専門の医師と検査体制の整った病院に駆け込めと指摘している。さもないと命を落とすか、半身不随となって快適な老後はないと示唆しているのだ。

さて本題。

私の高校同窓生の畏友で、高齢になっても毎朝約2時間掛けて「1万歩」歩きを励行、昼間は、クラブスイミング、日によっては心筋を駆使する「詩吟」を行っている。余りにも想像を絶する運動量に、仲間たちも一様に懸念し、諌めることもしていた。

ところが、ご当人はクラブスイミングの競泳大会に参加した。若者チームと競う「競泳」で、高齢者チーム4人メンバーの1員として出場。予選・決勝を合わせて2000bを、夜9時までかけて全力で泳いだ。

実は、この日朝もいつもの「1万歩」を歩いている。彼によるとこの日の「競泳」のためじっくり練習してきて体力維持には自信をもって臨んだらしいが、流石に夜になると疲れのためか、体はぐったりとしたという。「1万歩」の疲れも加わったようだ。

ところが、翌日朝になるとまた「1万歩」を歩いている。その際、途中で何度も頭や胸全体に気分の悪さを感じた。中断すればいいのに、それが治まるまで休憩し、落ち着くと再び歩きを継続し、何とかやり遂げたそうだ。

この気分の悪さを何かの「前兆」とは思わず、単なる疲れの所為だろうと考え、このあとスイミングクラブに出向いて何時もの通り泳ぎに挑んでいる。

この夜、急激な異変が起こり出した。

胸の痛みが激しくなり、奥さんの勧めで心臓の売薬を3回飲んだが効き目が出てこない。床に横になって安静にしても症状は治まらない。

時間が経過して午前4時になったが症状が変わらないので、奥さんが近くの救急病院に診察を依頼した。しかし当院は外科医しかいないので対応出来ないと断られた。結果的には、この「断り」が幸いだった。

この後、地元消防署に連絡し、医師と検査体制が整った近大医学部付属病院を紹介して貰い、奥さんが同病院に搬送した。診察の結果、心臓の動脈が血栓によりふさがり、血液が流れなくなって動脈の支配する細胞・組織が壊死につながる「心筋梗塞」と診断された。

直ちに手術が行われた。心臓の動脈3枝の内、真ん中の1枝の先端が塞がっており、右足からカテーテルを挿入して空気を送り込み、塞がった部位を押し出す手術だった。手術は4時間かかり、塞がった部位を除去することに成功した。

1枝だけの梗塞でラッキーだったが、そのまま放置したままだったら、一命を落とすことになったであろう。

そのあと無事退院出来た際主治医から、「1万歩」の歩き、水泳等心臓に負担をかける運動などは、絶対控えるよう厳しく注意を受けている。

彼は、学生時代は硬式野球部の選手で、これまで体力には自信があった。しかし日頃から「達成感を尊ぶ性格」の強さが裏目に出て、今度の騒動に結び付いたようだ。

そんな中、奥さんがいち早く検査体制が整った病院へ搬送してくれたことが、一命を救ったくれた最大幸運事であったことを、彼は忘れないと述懐している。

やはり歳に合わせて健康維持には気を配り、「心筋梗塞」や「脳梗塞」などの「前兆」には一層注意しなければならない教訓を、今度の友人の騒動は私たちに与えてくれた。

しかも、冒頭の石岡氏の指摘のように、専門の医師と検査体制が整った病院を事前に決めておき、そこの診察券を外出のときも肌身はなさず携帯して歩くこと。それが、一命をとりとめ、快適な老後を維持していく不可欠なことであることも教えられた。(了)
                                



2017年05月07日

◆最新運用実績に基づく太陽光発電償還年数

酒井 勝弘



3.11大震災翌年の2012年7月1日新エネルギー特措法が施工され、家庭用太
陽光発電余剰電力の売電価格はkWh当たり当初42円であったが、年々低下
し昨年は33円に落ち込み、それに伴い太陽光発電の新設数は近年顕著に減
少している。

こうした状況下、高校の同級生N氏(平塚市)は自宅新築に合わせて太陽光
発電設備を設置し、昨年1年間の運用実績に基づいて償還年数を予測評価
した。

設備の主要仕様や特徴として、@出力(公称値)4.8kW(京セラ製太陽電池モ
ジュール KHM220P-3MD6CG、パワーコンデショナー(PC) PVN-552)、A2
世帯住宅(1階はN氏夫婦、2階は娘さん)で太陽光設備を共用、B高効率
ヒートポンプ式給湯器(SRT-W37)を新設。

新築前の給湯器はガス燃焼式であったが、新築時にはエアコンと同じ原理
のヒートポンプ式給湯器を新設した。この場合、電力はコンプレッサーに
のみ使用し、外界空気が保有しているエネルギーを使用して昇温するので
エネルギー消費効率(生成熱量/消費電力)は1を超え5程度に達する。

償還の対象としては、通常は太陽光パネルやPCなど太陽光発電設備一式
であるが、設置側からすれば、新設の給湯設備も含めて償還できることに
関心度が高い。一方運用実績データにおいて新設した給湯設備の高効率効
果は、自家消費電力に反映加味されてくるので、むしろ給湯器も償還の対
象に含めることに合理性があり、ここでは給湯設備も含めた新しい概念で
の償還年数を評価する。

この新概念の償還年数は、給湯設備も含めない場合より増加することは当
然であるが、上記のヒートポンプ方式のためさほど増加しないことが期待
され、果たして償還年数は10年を切るかどうか興味深いところである。

償還年数(S年とする)に関係する項目として、1)太陽光パネル設置費
A=1,722,500円、2)給湯設備費 B=450,000円、3)保守費
C=17,280×S円(3600円/kW・年:資源エネルギー庁資料)、4)設置前
(2015年)、N氏夫婦と娘さん2世帯の年間の電気、ガス、灯油代
D=223,200円、5)売電収入(150,612円)から自家消費分(買電消費
76,686円)を差し引いた実収入 E=73,926円。

太陽光設備設置後は、項目4)のD円は電力回避額で、見かけ上の収入と
なるので、償還年数Sは次式で決まる:S=(A+B+C)÷(D+E)。C
は償還年数S自身を含むので、Sに関する方程式を解いて、Sは次式で計算
される:S=(A+B)÷(D+E−17,280)=(1,722,500+450,000)÷
(223,200+73,926−17,280)=7年9ヶ月。因みに保守費を考慮しない場
合、上記最初のSの計算式でCを0とおいて、S=7年4ヶ月。

こうして給湯器を含めても7年9ヶ月で償還できることになり、これは発
電設備設置のモチベーションを誘うもので興味深い結果である。償還年数
が小さい理由として以下のことが考えられる。

@太陽光設備設置費単価は1,722,500円/4.8kW=358,854円/kWで、近年大き
く低下している。A売電価格は低下したとはいえ昨年33円/kWhで、東電
から購入する買電価格(平均的に約26円/kWh)より高い。加えて新エネ
ルギー特措法(FIT法)のおかげで売電価格は長期10年間、契約時の価格に
固定されている。

B新築前の燃焼式給湯器に変えてエネルギー生成効率の高いヒートポンプ
式給湯器を新設したこと。C太陽光設備を2世帯共用型としたこと。最もコ
ストのかかる太陽光パネルは基本的に世帯数に比例で、通常の1世帯より
大きい4.8kWであるが、その他PCなどは1世帯分で節約できる。

D出力4.8kWは所謂公称値であるが、夏日快晴時には6kWの時があり、
メーカーとしては公称値を保証するスタンスで設計しているようで、この
事が償還年数を下げる潜在力なっていることはユーザーにとって喜ばしい
ことである。

償還年数が10年を超えると、設置のモチベーションは低いであろうが、10
年以下、特に今回のように7年9ヶ月となると、モチベーションの向上が
期待される。例えば50歳代で設置する場合、定年を迎える60歳代以降は、
クリーン電気を自家生産し地球環境への付加価値を兼ねながら、生涯を終
えるまでの20年程度新たな収入源となる。

                   (大学名誉教授、本庄市)


◆我が国の企業社会は平等で機会均等である

前田 正晶



一寸微妙な話題になるかも知れないが、目下、ヤマトホールディングスが
諸般の事情に鑑みて、宅急便の運賃の今年9月からの値上げを慎重に検討
中と報じられている。

個人的には無理からぬ事態であると思って眺めている。その実務部門であ
るヤマト運輸の長尾社長がその考えをテレビで淡々と述べていた。

その画面には社長の出身大学が高崎経済大学と掲示され、入社後は現場を
経験された上で、そこから昇進されてきたことも知った。

ヤマトホールディングスは資本金が1,272億円で、16年度の売上高が1兆
4,000億円超の大企業である。その大企業の社長の山内氏は金沢大学の出
身とあった。

ここからが誤解を招くかと危惧する微妙なことになるかと危惧するが、こ
の人事を見ると我が国の企業社会の人材の活かし方が如何に平等で機会均
等であるかが解るのだ。

それは、アメリカのような資本主義社会におけるヤマトホールディングス
の規模の会社でCEO乃至はexecutiveまたはsenior vice president陣は、
ほとんどIvy leagueまたはそれに準じる私立大学のMBA等で固められてい
て、地方の州立大学出身者がそこまで上がってくることは極めて稀であ
る。即ち、ある程度以上の階層に属する良家(裕福なと言っても良いだろ
う)の子弟が圧倒的に多いのである。

この辺りを私は「良い家(アッパーミドル等)の子弟に生まれた時点で勝
負が付いてしまう傾向がある」と指摘したものだった。より具体的に言え
ば、嘗ては年間500万円、現在は600万円に近くなったと言われる私立大学
の授業料を含めた学費を難なく負担出来るような家庭に生まれた者が有利
だという意味だ。

一方の我が国では多くの上場企業やそれに準ずる会社を見ていても、昇進
して重要な地位にある方々にはアメリカのような学歴による差というか、
アメリカのような「スピードトラック」のようなシステムもなく、懸命に
努力され、よく勉強され実績を挙げられれば、それなりの報いがあると見
えるような、アメリカと対比すれば平等で機会均等な人事が行われている
と思って、アメリカ村から眺めてきたものだった。

アメリカにも言わば立志伝中の人物のような異例の出世を成し遂げた例を
みてきたが、全体に占める率は低かった。



私は日本とアメリカの何れの制度というか仕組みが良いかは断定する気も
ない。解りやすく大胆に言えば「向き・不向きの問題だ」と思うのだ。だ
が、出自や 学歴(≠出身大学)を問わずに本人の努力と研鑽次第で昇進し
ていける人事制度があ ればこそ、アメリカのような報われない中間層が
不満を抱えながらおざなりな仕事し かしないような弊害をもたらしてい
ないのではないのかと思うことすらあった。

私はアメリカのそのスピードトラックなどとは無縁の中年の事務職員がポ
ツンと言ったことが忘れられない。それは若くして事業本部長に昇進した
年下の者を 指して「彼奴は好き好んで、成りたくてあの地位に登たの
だ。俺はそんなことは望 んだこともない。

その職責と収入に見合う仕事をする為に朝は早くから出勤して動き 回
り、世界中を飛び回り、土日を犠牲にしてまで働きたいなどと考えたこと
もない。 自分の能力とそれに見合った収入が維持出来れば生活が成り立
つのだから、それで十 分」だったのだ。

トランプ大統領を支持する一票を投じたのは、彼のような階層に属する者
たち及びそれ以下の白人層があったと聞くが、何となく良く分かる話だっ
た。さて、 貴方は我が国の企業社会の在り方にご不満な点があるでしょ
うか、それともアメリカ 型を望まれますか。