2017年06月08日

◆強まる「改憲・衆院ダブル投票」の公算

杉浦 正章
 


自衛隊の根拠規定を問う 
 

相乗効果で与党に有利か
 

長年にわたって神学論争を繰り返してきた国会の憲法審査会に、改憲問題を政局にすべきでないとする議論があるが、どうだろうか。筆者は改憲問題は政局そのものだと思う。長年の政党の主張がぶつかり合う戦後最大の政局マターだ。従って改憲の国民投票と総選挙を同日に実施して「改憲・衆院ダブル投票」を断行、国民の信を問うことは全く正しい。


9条への自衛隊根拠規定の追加など自衛隊を肯定する政府・与党と、否定する共産党との対決が最大の見物だが、流れは共産党の惨敗とみる。そして国民投票の実施時期が日程的に衆院議員の任期切れと接近するのであれば来年の同日投票は一段と現実味を帯びるのだ。
 

自民党の憲法改正推進本部の会合が6日開かれ、いよいよ本格的な改憲論議がスタートした。安倍の提示した「9条の平和主義の理念は未来に向けて堅持し、9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」構想の是非が課題となる。冒頭から予想通り、自民党が2012年に世に問うた9条1項、2項も改正して「国防軍」保持を明記する憲法改正草案を取り下げるのかどうかについて激突した。総裁選出馬を意識していいる元幹事長石破茂が「どうするのか」とクレームを付けたのだ。


しかし副総裁高村正彦は「12年草案をどうするかを決めないと新しい議論に入れないということはない。改正案を作ってから草案と比較すればいい」とぴしゃりと反論。結局大勢は草案にこだわらず、首相案について議論を進める方向が確認された。
 

まさに「党内政局化」が抑えられた瞬間であった。石破の主張は党内でも一定の理解はあるが、今回の改憲構想は従来の草案が開けられなかった改憲の岩盤をダイナマイトで崩そうとする政治的な意図がある。仏壇の奥からちりの付いた「歴史的文書」のような草案を持ち出しても政治的に動かせるものではない。石破はそこに気付いていないのだ。
 

もう一つ異論がある。「行政府の長である安倍が改憲を提示するのはおかしい」とする議論である。毎日も社説で「憲法改正案の発議権を持つ国会の頭越しで具体的な改憲方針を明示するのは異例だ」と安倍にかみついた。さらにその憲法発言で大局観のなさを露呈している衆院憲法審査会理事の自民党幹事船田元も「行政府の長や内閣に籍を置く者は改憲に抑制的であるべきだ」と苦言を呈している。


しかし、6月1日の衆院憲法審査会参考人として出席した東大教授の宍戸常寿と慶応大教授の小山剛は国会の発議権を安倍が害していることはないとの見解を表明した。宍戸は「議院内閣制では政党党首が同時に首相を務めることが想定されている。首相であるところの与党党首が、改憲をしかるべき場で、しかるべきやり方で発言することは、一般的に憲法尊重擁護義務に反しないと考えている」と発言、小山も同調した。どうも憲法調査会は、15年に集団的自衛権の行使を限定容認する安全保障法制を巡り大学教授らに「違憲」を言わせて、安倍の足を引っ張った“快感”が忘れられないとみえて、二度目の「参考人ショック」を狙ったようだ。しかし、柳の下にドジョウは2匹おらず、「逆ショック」を受けたのは審査会であった。
 

こうして反対論は勢いを得ない状況にあるが、まだ山あり谷ありとみなければなるまい。大きな流れは筆者が5月11日にあらゆるメディアに先だって「総選挙と国民投票のダブル選挙の可能性がある」と推測した方向に向いている。


朝日も7日「改憲発議現有勢力で狙う」と、与党が3分の2を維持している現体制での改憲を目指す方向を記事にしている。安倍も先月インタビューで憲法改正の是非を問う国民投票を国政選挙と同時に実施することの是非に関して「衆院選と参院選を国民投票と別途やるのが合理的かどうかということもある」と述べた。国政選挙との同時実施の可能性に言及した形だ。自身が憲法9条改正を提起した意図についても、「自衛隊論争に終止符を打つ」と強調した。
 

衆院議員の任期は残り約1年6か月で、安倍は国民投票で解散権を縛られないことを意図したものともみられる。官房長官・菅義偉も国民投票の実施が解散権を制約するかどうかについて「首相の衆院解散権への制約はないと思っている」と明言している。こうして改憲の日程は衆院議員の任期切れを意識して進展する方向が強まった。筆者は過去に2度実施された衆参ダブル選挙の場合、自民党が圧勝した原因は相乗効果にあると判断している。


衆院で自民党に投票した有権者は参院でも自民党に投票する傾向があるのだ。これは憲法改正とも共通する側面があるのではないか。自民党に投票する有権者は9条改憲を是とする傾向を必ず帯びると見る。従って相乗効果で自民党は負けないし、改憲は投票した国民の過半数を得られるだろう。具体的な日程としては、2020年に改正憲法を施行するとなると、早ければ2019年には憲法改正の国民投票に漕ぎ着ける必要が出てくる。急げば来年の通常国会末か遅れても秋の臨時国会で、3分の2以上の賛成で発議することとなろう。


その後最短60日で国民投票となる。従って国民投票は衆院議員の任期切れが来年末だから、総選挙とのダブル選挙になる公算がある。経費節約にもなる。参院選挙は2019年夏だが、事は憲法であり、参院ではなく政権の存否が問われる衆院選挙に合わせるべきだろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

◆子宮頸がんワクチン適齢期

石岡 荘十



欧米先進国では女の子どもが11歳になると親はまず、子宮頸がんから守るためのワクチン打つ。

11歳は、肉体的に成長の早い欧米ではセックスを始めて体験する“セックス・デビュー”の年齢だと考えられている。「うちの子に限って---」と考えたいところだが、現実は、そうはいかない。11歳は子宮頸がんワクチンを打つ“適齢期”であり、このタイミングでワクチンを打つのが、多くの先進国では常識となっている。

子宮頸がんはすべての女性の80パーセントが一生に一度は感染しているという。子宮の入り口である頸部に発生する上皮性の悪性腫瘍であり、世界では年間約50万人が子宮頸がんを発症し、約27万人が死亡していると推計されている。

2分間に1人が子宮頸がんで命を落としている計算になる。日本では毎年約1万5000人の女性が子宮頸がんを発症し、約3500人が死亡している。

原因は、ほぼ100パーセントが性交渉、つまり皮膚と皮膚の粘膜の接触でヒトパピローマウイルス(HPV)というありふれたウイルスの感染することによることが1983年、明らかになっている。パピローマウイルスを発見した独がん研究センターのハラルド・ツア・ハウゼン名誉教授には、2008年度ノーベル生理学医学賞が授与されている。この研究成果をもとに予防ワクチンが開発され、現在、世界100カ国以上で使われている。

子宮頸がんはいろいろながんの中でも例外的に原因が特定されているだけでなく、ワクチンによる予防法が確立されている。アメリカでは2006年ワクチンの使用を承認、昨年10月には日本でも使用が承認されたものだ。

成人になって、検診を受けずワクチンの接種もしない場合、がんは進行し、子宮をすべて摘出する手術が必要になることもある。

妊娠、出産の可能性を失い、女性だけでなく家族にとっても心身ともに大きな痛手となる。また、子宮のまわりの臓器にがんが広がっている場合には、卵巣やリンパ節などの臓器もいっしょに摘出しなければならなくなり、命にかかわる。


ワクチン普及のためのシンポジウムで、「子宮頸がんは予防ができるがんです。また、定期的に検診を受けることで、がんになる前に発見し、子宮を失わずに治療もできます。そのことを知らなかった私は、こどもを産むどころか妊娠することも出来ない体になってしまいました。死ぬではないかとこわかった。1人でも多く女性がワクチンを打ってください」と切々と訴えた。

子宮頸がんは、初期には全く症状がないことがほとんどで、自分で気づくことはほとんどない。このため、不正出血やおりものの増加、性交のときの出血などに気がついたときには、がんが進行しているということも少なくない。

進行するにつれ性交時の出血などの異常がみられ、さらには悪臭を伴う膿血性の不正性器出血、下腹痛や発熱などが認められるようになるという。

子宮頸がんは遺伝などに関係なく、性交経験がある女性なら誰でもなる可能性のある病気である。近年では20代後半から30代に急増、若い女性の発症率が増加傾向にある。子宮頸がんは、がんによる死亡原因の第3位、女性特有のがんの中では乳がんに次いで第2位を占めており、特に20代から30代の女性では、発症するすべてのがんの中で第1位となっている。

一度ワクチンを接種しておけば、その効果が20年は持つといわれる。だから、11歳という“適齢期“にワクチンを打った上で、定期的に検診を受け、早期に発見・手術を受ければ、術後に妊娠・出産が可能だという。

85パーセントに女性がワクチンを打っていれば、95パーセントの女性が助かるという研究報告もある。

ワクチンは3回に分けて打つ。初回、2回目がその1ヶ月後、さらに6ヶ月後に3回目。問題は費用が高額なことだ。

セックス・デビュー前の“適齢期“の女の子(11〜14歳)全員に公費でワクチンを打っても、費用はわずか200億円ほどと計算されている。今のまま放置しておくと、いずれこれを上回る医療費がかかる計算もあり、充分に元は取れるという。

地方自治体では、「健康・医療・福祉都市構想」を掲げ、在住の小学校6年生〜中学校3年生(12〜15歳)を対象に5〜6万円を補助することを決めている所もある。このワクチン接種費用が高額なことを解消するために、地方自治体は急ぎ対応を期すべきだろう。

2017年06月07日

◆露、北朝鮮の「緩衝国化」を推進

杉浦 正章



北方領土も戦略的位置づけ重視


垣間見せたプーチンの本音
 

プーチンがサンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムの公開討論の中で語った極東戦略は、北朝鮮を米戦略に対する緩衝国とはっきり位置づけ、核保有を容認したものである。一方北方領土も緩衝地帯としての戦略的価値を鮮明にさせた。一連の発言は日本にとっては極めて利個主義的な国家エゴと受け取れるが、ロシアにとっては将来を見据えた冷徹なる世界観に基づく極東戦略であろう。


プーチンの本音を垣間見せたこの発言は北の金正恩を増長させ、極東の緊張を一段と高めることになり、北方領土交渉にも影響を与えることが避けられない。

 

プーチンによる2日の発言は、まず北方領土でのロシア軍の軍備増強などについて質問されたのに対し、「北東アジアでは、アメリカが北朝鮮情勢を口実に韓国などでミサイル防衛システムの配備を進めている」と答えた。米国による韓国への戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)配備などを指すものだ。そのうえで、「これはロシアにとって懸念で、対応しなければならない。脅威を抑えるためには、島々が便利だ。島々が日本の主権下に入れば、アメリカ軍が展開する可能性がある。島々に軍事基地やミサイル防衛システムが配備されることはロシアにとって全く受け入れられないことだ」と述べた。


北方領土でのロシアの軍備増強は、ミサイル防衛システムの配備によってロシアの核戦力を無力化しようとするアメリカへの対抗措置だと正当化したのだ。この論理は昨年暮れに国家安全保障局長谷内正太郎がロシアの安全保障会議書記パトルシェフに対し、引き渡し後の北方領土に米軍基地を設置する可能性を否定しなかったといわれる情報が流れて以来のプーチンの立場を繰り返したものである。

 

さらに北朝鮮に関する発言は、軍事的圧力を強める米国を批判する中で出た。プーチンは「小さな国々は自らの独立や安全と主権を守るためには、核兵器を持つ以外、他の手段がないと思っている」と言明したのだ。加えて「力の論理が幅をきかせ、暴力が支配する間は、北朝鮮で起きているような問題が生じるだろう」とも述べた。プーチンはこれまで北の核保有に関しては「核クラブの拡大につながり反対する」との立場を表明してきたが、今回の発言はこれを大きく転換させる意思があると受け取れるものだろう。金正恩路線の支持でもある。


明らかに米国を念頭に置いたもので、そこには米国が北大西洋条約機構(NATO)で西から、日米同盟と米韓同盟で東からロシアに対する圧力を掛けていることへの不満がある。

 

事はそう簡単ではない。「核兵器拡散防止条約」(NPT)は、米国、英国、フランス、ロシア、中国の核兵器保有を認め、その他の国々の核兵器保有を禁止する「不平等条約」として1968年に成立した。しかし現在では190ヵ国が加盟しており、核の均衡にとっては欠くことの出来ない条約である。この5か国に加えてインド、パキスタン、北朝鮮が保有。イスラエルも、「核兵器保有を肯定も否定もしない」形で保有している。


しかし、核保有9か国のうち8か国と北朝鮮とは決定的な違いがある。8か国は極めて常識的な指導者がおり、冷戦終了後に核でどう喝した話は聞かない。しかし北朝鮮だけは「狂気の独裁者」が存在して、日米韓をどう喝しながら、核実験とミサイル実験を繰り返しているのだ。北の核は「気違いに刃物」の構図だが、他国は概ね「床の間の日本刀」なのだ。

 

発言から見る限りプーチンの基本戦略はこの独裁者を“活用”しようとしている魂胆がありありと見える。ロシアからみれば北の核ミサイルのターゲットは日米韓3か国であり、ロシアには向けられていない。これは北が米国の軍事力に対する緩衝国として極めて有用であることを物語っているのだ。毒薬であるべき北の核はプーチンにとっては「毒薬変じて薬となる」のである。金正恩が日米韓を核の対象にしている限りは、ロシアにとっては、願ってもない「子分」ができたということになる。


要するにロシアは北をロシアの対米戦略に組み込もうとしているのだ。万景峰号による定期航路を開通させたのもその戦略の一環であることは言うまでもない。

 
朝露関係は、1961年に当時のソ連と北朝鮮との間で「ソ朝友好協力相互援助条約」を結んだ。この条約はどちらか一方の国家が第三国から攻撃を受けた場合に共に軍事行動を行うという軍事同盟の条約であった。しかしソ連の崩壊で条約は破棄、1999年に新たに「ロ朝友好善隣協力条約」を締結したが、軍事同盟の条項は削除された。これでロ朝関係は軍事同盟の関係から、親密な友好国家の関係に切り替わったが、プーチンの姿勢は今後陰に陽に北との軍事的関係を深め、国際社会の制裁に対しても“抜け道”的な役割を果たすことになろう。

 
もちろんロシアだけでなく、中国も似たり寄ったりの対応である。北は中国の紛れもない緩衝国であり、習近平にとって金正恩は気にくわないが、北の体制は何が何でも守らなければならないのが基本だ。こうした極東における対峙の構図に日本は否応なしに巻き込まれる。天から平和が降ってくる時代はとっくに終わり、天から降るのは北の核ミサイルであり、国の防衛は根本から見直さなければならない時期に来ているのだろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

◆「措置入院」精神病棟の日々(47)

“シーチン”修一 2.0



PCが突如として「ドライブ/ディスクをスキャンしてエラーを発見/修復し
ます」と勝手に作業を始め、ほぼ2日間、記事を書けなかった。画面には
「1時間以上かかる場合があります」と表示されていたが、20時間ほどか
かったのではないか。その間は使えない。

企業なら予備の機械があるだろうからいいが、それでも出張修理を頼むと
「派遣料1万円、技術料2万円、プラス部品代」などとなるから、わが社の
社員はデザイン用のマッキントッシュ(脆弱過ぎ!)を時間に余裕がある
ときはしょっちゅう再インストールとかしていたっけ。

今の小生は書くのは体力的に1日3時間が限界になってしまったが(腰
痛)、毎日書くことは習慣になっているから、書けないとなるとちょっと
困惑する。

バッテリーもかなり前から「劣化しているから早目に交換して」と警告が
出ているが、還暦祝いで家族からプレゼントされ、以来7年も経つので
バッテリーの在庫も品薄なのだろう、Y電機に発注したものの音沙汰がな
い。そろそろ替え時なのかもしれない。

新型を買うのはいいが、旧型から多くのデータを引越ししなければならな
い。これが超面倒だ。家族はスマホやタブレット端末を使っており、写真
の発注と保存だけは小生のPCを使うからメモリーが満タンで、遠慮がちに
苦情を言うと「そのうちディスクに移すから・・・」、「“そのうち”って
いつよ?」と嫌味を言いたくなるが、なにしろ「家庭内別居」を条件に家
族の同意を得て退院できた虜囚の身だから遠慮せにゃならぬ。男はつらい
よ、まったく。

心が不安な時は相変わらず「カフカ風迷路で困り抜く」夢を見るが、先日
の夢はすごかった。散歩先で迷子になって倒れてしまい、知能も大きく低
下して2歳児あたりになり、家族から(これ幸いと?)失踪届が出されて
いないから、施設に収容されたままで、情況が分かっていないのでいつも
ニコニコしている、というものだった。ニコニコしているのは救いだが、
そんな終末でもいいか・・・

PCが使えないときに「行路病人/死亡者」「行方不明者と自殺/他殺」「青
木ヶ原樹海」「幼児とリズム感」「ペットが愛される理由」などについて
考えていたから上記の夢になったのかもしれない。呆けるが勝ち、か。

失踪におすすめ、熊も出る緑豊かな丹沢山麓の病棟日記から。

【2016/12/4】*就寝前に眠剤「フルトラニゼパム(アメル)」を飲んで
いたが、先日から「グッドミン」が追加された。「グッドミン、グッドな
睡眠か、上手いネーミングだなあ」と感心していたら、オネショするよう
になった。相性が悪かったのだろう、小生にはバッドミンだった。

でナースに「グッドミンはやめたいとDr.に伝えてほしい」と頼んだら、
ナースも夜中に洗濯する小生の姿を見て「多分、グッドミンのせいだろ
う」と思っていたと言う。薬効があるのはいいが、小生には副作用が大き
すぎる。

*今朝の産経によると、オーストリアで“極右”自由党政権が生まれる可能
性があるという。党首のホーファーは45歳、対抗馬は「緑の党」のベレ
ン、72歳。移民、難民モドキの流入で失業率が特に高い若者は45歳を選ぶ
だろう。欧州リベラルの賞味期限はとっくに切れている。

そのリベラルの思想的底流には信者20億人と言われるカトリックがある。
神(製造業)→教会(総代理店、GSA)→信者(消費者)という昔からの思
想流通ルートが特徴だが、教会の第一線を担う司祭と修道女が激減してい
るという。

2002年からの10年間で司祭はイタリア8000人減、スペイン3000人減、修道
女はイタリア2万人減、スペイン1万人減。その上、西欧では自国生まれで
はない(多分アジア系、アフリカ系、中南米系などの)聖職者が増えてい
ると、これも産経が報じている。

冷静に考えれば信者も激減しているはずだ。「結婚(法律婚)すると離婚
が難しいから同棲(事実婚)でいい」「シングルマザーだと育児手当がも
らえるから子供3人なら男も養える、働かなくてもいい」という欧州人が
増えているから、これは事実上の棄教であり、実際の信者数は話半分の10
億人、コアの信者は多くて5億人ほどではないか。毎週の日曜礼拝に参加
する熱心な信者は1億人程度か。

宗教に帰依しているという熱心な人の多くは、相互扶助的な現世利益でつ
ながっているのだろう。また、昔と違って、少なくとも先進国では能力と
意欲さえあればどんな職業にも就けることになっている。坊さんや尼さん
も多くの選択肢の一つに過ぎない。

わが家の菩提寺は世襲制、あたかも利権、営利企業のようだ。現住職はサ
ラリーマンを辞めて父の仕事を引き継いだ。

住職は笑いながら「私は意志が堅いので禁煙しません」と言っていたが、
酒もいける口だろう。バチカンでは最近、ハンセン病の理解がようやく進
み始めたようだが、性犯罪というか少年愛的な男色は相変わらずだろう。

宗教の賞味期限も切れ始めたということだ。

企業経営に宗教、イデオロギーは不要で、政治=経国済民も同様であり、
リアルを見て、的確なソリューションを提案、実行し、皆をハッピーにす
ればいい。リアルを直視し、解を得るという能力はリベラル≒アカモドキ
にはない。

*11:20、CとJ来、S宛の「謝罪と誓い」について批評、苦情、注文など
などアドバイスを受ける。頭が痛い。「発狂事件で皆傷ついており、以
来、生理が止まった」という。

差し入れは広辞林、ニューコンサイス英和辞典、プルースト「失われた時
を求めて」、愛犬トトの写真付きカレンダー、髭剃り用の鏡、クリップ、
ハンガー、クリアファイル、お菓子など。ありがたい。

2人から「病院での出来事を公表すると、提携病院を含めて報復されるか
ら、ブログの名称もペンネームも変えるように」と言われた。どうしたら
いいのか・・・少なくとも病院名やスタッフ名は分からないようにした方
がいいかもしれない。

<東名高速秦野中井ICを降りて北へ1時間。国道246を越えるとゴルフ場の
大きな看板が目立つようになり、「大秦野CC」の看板もあった。小生が専
務に連れられてグリーンデビューしたゴルフ場だ。

やがて丹沢山系の威容が迫ってきた。その裾野にある建物の玄関口に警察
署から小生を運んできた白いハイエースは停まった。「秦野病院」の看板
が玄関と屋上に掲げられていた・・・>

新しいブログは、こんな書き出しで始めたらどうだろう。(つづく)2017/6/6



◆ドゥテルテ比大統領が

宮崎 正弘



<平成29年(2017)6月6日(火曜日)弐 通算第5317号 >

 〜ドゥテルテ比大統領が、テロリスト退治に大胆な二枚舌戦術
  中国にテロリスト殲滅作戦の支援を要請、中国海軍艦がダバオに寄港〜

 中国海軍の駆逐艦、フリゲート艦など三隻がフィリピン・ミンダナオ島
のダバオに寄港している。ダバオはドゥテルテ大統領の地盤である。

駆逐艦はPGM(精密誘導ミサイル)を多数搭載している最新鋭艦で、こ
の過程で明らかになった事実は、フィリピンが中国に対してPGM、高速
ボート、ドローンの供与を要請していることだ。

先月来、ミンダナオ島の中央部にあるマラウィ市に戒厳令が敷かれ、IS

の影響を受けた「マウテ集団」との戦闘が続いている。

すでに100人前後が戦死、そのなかにISに近いマレーシア、インドネシ
アからの応援武装戦闘員が含まれていることも判明した。

 同時にミンダナオ南西部にトビウオのように群島が南シナ海へむけて広
がっているが、バシラン島、スル島、タウィタウィ島をカバーする海域は
「アブサヤン」という過激な武装集団が抑え、付近の海域で海賊行為を展
開している。
この海域ではマレーシア、ベトナムの漁民が人質となっている。アブサヤ
ンとの戦闘は半永久的に継続されており、フィリピンの国内治安の頭痛の
種とされた。

ドゥテルテ大統領は、一方に於いて麻薬密売グループの一斉捜索、犯人を
射殺しても良いとして麻薬戦争を展開し、すでに800人ほどの密売人を刑
務所にぶち込んだ。

ゲリラ戦争が特異な「マウテ集団」との戦闘には正規軍を投入し、また戦
闘訓練の指導にはアメリカの特殊部隊が派遣されている。

このことはシンガポールの「シャングリラ対話」に出席したハリー・ハリ
ス太平洋司令官が示唆している(アジアタイムズ、6月6日)。

フィリピンは中国海軍との合同軍事訓練を催行するが、海賊退治に関して
は、すでにソマリア沖で豊富な実戦経験を積んできた中国海軍ゆえに、も
しフィリピンに協力するとなれば、アブサヤンの弱体化は必至の情勢だろう。

しかし、スカボロー礁をめぐってフィリピンは中国と対立しており、国際
仲裁裁判所はフィリピンの訴えを認め、中国が「あの判決は紙くず」と豪
語した。

この経緯を無視してリアリティを重視するドゥテルテ政権によって、不思
議な中比関係が露呈した。

矛盾をもろともしない複雑な環境下で、ドゥテルテ大統領は中国との領土
係争を棚上げし、「中国と戦争になれば、われわれは国をなくす」と釈明
しつつ、大胆に中国に近づき、ましてや軍事品の供給を要請し、あまつさ
え中国海軍とは共同軍事訓練と展開するという綱渡り。毒をもって毒を制
す、を地で往く。

「フィリピンのトランプ」という異名をとる老人、ドゥテルテ比大統領、
ただ者ではない。
       
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  ◆樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 1580回】      
――「正邪の標準なくして、利害の打算あり」――(徳富19)
   徳富猪一郎『七十八日遊記』(民友社 明治39年)

             ▽
 無頓着とは、また後先を考えないことでもあろうか。
 
たとえば1958年に始まった大躍進である。毛沢東がブチ上げた鉄鋼大増産
の掛け声に煽られて人々は狂喜乱舞の態。素人手作りの土法炉と呼ばれる
小型の溶鉱炉による製鉄に励んだ。鍋釜や農機具、果は窓枠まで――凡そ身
の回りの鉄という鉄を土法炉に放り込み、近在の山々の木々を切り倒して
燃料とした。

その結果、たしかに鍋釜が溶解し大量のインゴットが“生産”されはした
が、マトモな鉄鋼であるわけがない。たんなるクズ鉄の塊にすぎなかっ
た。かくして鉄鋼大増産運動の熱狂が冷めた後、鍋釜も農機具を失った人
民、窓枠さえ消えた家屋、それに広大な禿山が残されてしまう。家庭生活
は崩壊し、木々を失い貯水機能を失ったゆえに禿山に降った雨が洪水を引
き起したことは言うまでもない。

ひたすら毛沢東の歓心を求めて、後先考えずに鉄鋼大増産に邁進した挙
句の果てに待っていたのは、泣くに泣けず、笑うに笑えない悲惨な日々。
後先を考えないということは、今を刹那的に生きるということ。無頓着が
過ぎる。

だから、過ぎたるは及ばざるが如し。

いまではあまり聞かれなくなったが、かつて中国人は大原則に生きる民族
であると論じられたことがある。

思い起こせば文革時代、自他共に現代中国研究“大権威”と認める著名なセ
ンセイまでが盛んに口にしていた。当時は、その説を信じてはいた。だが
今となっては、それが根拠なき“戯言”に過ぎなかったと確信する。たしか
に彼らは大原則に生きているといえるが、それは無原則で無頓着という大
原則に過ぎないのだ。

以上は徳富の見解とはまったく無関係。再び徳富に戻る。

(26)【新屋と舊屋】=彼らは「舊屋」が不具合になったからといっ
て、それを修築することも解体することもせず、隣に「新屋」を建てる。
「故に支那に於ては、半死の舊屋と、全盛の新屋と、並立するは、通常の
事」である。「萬一舊物を破壞するか如きあらは、そは改善の爲」ではな
く、やはり「慾得の爲め」だ。

この項に関しては徳富が何をいわんとしているのか判然としないが、敢え
て“忖度”するなら、目先の利得に奔るばかりで物事の本質を弁えない、と
の主張のようにも思える。いいかえるなら何が大切で、何が不要か。何が
本質で、何が枝葉末節か。その辺りが判らないということだろうか。

そこで考える。社会主義を「舊屋」で市場経済を「新屋」と見做すなら、
たしかに現在は「半死の舊屋と、全盛の新屋と、並立」させているといえ
る。その間の矛盾を「中国の特色」という“万能の特効薬”で糊塗しなが
ら、なし崩し的に「舊物を破壞する」ことになるだろう。「そは改善の
爲」ではなく、やはり「慾得の爲め」ということになりますか。

(27)【大切なる結婚と葬式】=「支那人の最も大切とするは、結婚
と、葬式とにして、隨て墓所の撰擇は、申すに及はす」。だから「彼等は
飽迄も之を保護し、之を保存し、之を大切に奉持す可き筈」にもかかわら
ず、じつはそれほどまでに大切な「其の墳墓さへも。荒廢、零落に一任」
するがままに捨て置く。ここから徳富は、彼らの本質は「冷淡、無頓着」
であり、「彼等は保守的人種」ではない。「保守の精神なき保守は、無頓
着と云ふこそ、寧ろ適當なれ」と断じた。

 (28)【彼等は沙魚の如し】=「彼等は存外に保守的にあらす」し
て、「案外氣輕く他の物を借用もし、應用もし、採用もする」。そこで
「彼等に見出すことの能はさるは、創造の天才と、向上の精神とに候」。
とどのつまり彼らは「古昔の型を、其儘襲用する」だけということにな
る。そこで「彼等は只た沙魚の如く、鼻の先に餌を與れは、之を食ふ丈
の、自動力を有する迄」だ。彼らは付和雷同でご都合主義の権化にすぎな
い、ということか。
《QED》

◆せめぎ合う内科と外科

石岡 荘十

医療技術の賞味期限は5年、といわれる。心臓疾患治療の分野もその例外ではない。

心臓の筋肉にエネルギーを送り届ける冠動脈の血管が狭まって血液が流
れにくくなるのが狭心症、完全にふさがってしまうのを心筋梗塞という。
こんな病状の患者の治療法をめぐって、内科医と外科医の陣取り合戦が繰り広げられている。

とりわけ、心筋梗塞の治療法は、かつては心臓外科医の独壇場だった。
手術は胸の胸骨の真ん中を縦に真っ2つ切り離し、肋骨、つまり胸板を
持ち上げて心臓を露出し、人工心肺を取り付けて、全身への血液循環を
確保しながら、心臓に張り付いた冠動脈の詰まったところをまたぐよう
に別の血管を吻合(縫い合わせる)し、詰まった部分をまたいでバイパ
スを作る。

開心手術というが、医者にこんな説明を受けた患者は例外なく衝撃を受
ける。だけでなく、その後肉体的にも患者には大きなダメージとリスク
を強いる手術が待っている。

そこで、内科医は考える。

「心臓を露出しないで、詰まった血管を開通させる方法はないのか」と。

考え出された治療法が、細い管(カテーテル)を、血管を通して心臓ま
で挿入する。狭くなった部分にカテーテルが到達すると、そこで先端に
仕掛けられたフーセン(風船)をぷっと膨らませて狭くなったところを
広げる。

あるいは、先端に仕掛けられたドリルで血管にこびりついたコ
レステロールを削り取ったり、最近、脳梗塞治療薬として人気が高まっ
たt-PA で血栓を溶かしたりする方法だ。

崖崩れでふさがったトンネルをあきらめてバイパスを作る外科心臓手術
か、土砂を取り除いてもともとのトンネルを開通させる内科治療か。

この判断は、まず、最初に患者の診断をする内科医が行なうが、内科医
によるトンネル再貫通(カテーテル)方式は、1度貫通しても、かなり
の患者の血管がまたふさがる(再狭窄)、何度も手術をしなくてはなら
ない。これが欠点だ。

一方、外科手術は患者に与える精神的な衝撃だけでなく、全身麻酔や人
工心肺がもたらす肉体的なダメージやリスクも大きいが、同じ部分が再
狭窄するリスクだけは避けられる。

一長一短だ。
そこへ登場したのが内科医によるカテーテル治療の新兵器「ステント」
である。

ステントは金網でできた筒。まず、風船で押し広げたところへ、これそ
っと挿し入れて置き去りにすると、そこは再び狭窄しなくなる。掘った
トンネルを中から強固な金属の管で補強するような治療法だ。

しかし、ステントの金属が血管を傷つけて炎症を起こし、2・3割がま
た再狭窄へ向かうという問題が起きる。

これを阻止できないか。

そこへ「薬剤溶出性ステント」が米国で03年4月に登場し、日本でも0
4年4月から使われるようになった。新型ステントは再狭窄を防ぐ効果
のある薬(シロムスリ)が塗ってある。

これが少しずつ溶け出して、再狭窄を防ぐ。再狭窄率は最大5%へと激
減した。ほとんどゼロだった。世界の内科医軍団は、もはや心筋梗塞治
療で外科医の手を借りることはなくなった、と胸を張った。

外科医によるバイパス手術と内科医によるカテーテルの割合は欧米で1
対1だった。日本では1対3から4だったが、それが1対7か8となり、
間もなく10人中9人がカテーテルという時代になるのではないか。

しかし、世の中そんないいことばかりあるわけない。問題が起きた。

血管内に異物であるステントを入れると、血栓ができやすくなり、かえっ
て心筋梗塞を起こすリスクが高まる。それを防ぐ薬を使うと、今度は重
い肝臓障害などの副作用が出て、死に至るというケースも報告された。
あちら立てればこちらが立たずというわけだ。

一方、外科医も指をくわえてこんな状況を見ていたわけではない。
外科手術の分野では、胸は開くが人工心肺も使わず、心臓を動かしたま
まバイパス手術を行なう手法(心拍動下CABG)や、胸も開かず、胸
を6〜7センチ切るだけで、そこから手術器具を挿入、バイパス手術を
行なうというすでに評価の定まった“名医”も登場している。

心筋梗塞治療をめぐる内科医と外科医の陣取り合戦はさらに熾烈なもの
となるだろう。

ちなみに、治療費である。
・人工心肺を使った冠動脈バイパス術 : 300万〜400万円
・使わないバイパス術: 200万円くらい
・カテーテル治療:技術料などを含めると100万円ほど。

額面の値段では内科方式に分がありそうだが、副作用の問題もある。治
療費用は一定額を超えるとほとんどが戻ってくる高額療養費制度もあるし、
致命を回避する費用としては、大差ない差額といえそうだ---。

さて、そうなったら、
♪あなたならどうする? (了)

◆プロバイダ責任法の目的とは

 川原 俊明(弁護士)



  プロバイダ責任法という法律をご存じでしょうか?

   正式名称は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び
  発信者情報の開示に関する法律」といいます。

 最近ではインターネットの利用が当たり前になってきており、
  特定電気 通信役務提供者(プロバイダ 等 の責任の明確化、
  また、損害賠償責任の範囲を制限することも必要となってきています。

   同法は、民法上は、名誉毀損や著作権侵害として、プロバイダ等が
  損害賠償責任を負うはずなのに、一定の要件を充足すれば、プロバイ
  ダ等は責任を負わないという法律である。

   なぜ、プロバイダこのような保護が必要なのか、疑問が生じるかもし
  れません。

   確かに、プロバイダに損害賠償責任を負わせることで、責任を問われ
  ないように行動するよう促すことができます。また、名誉や著作権等の
  侵害を防ぐことができる場合があります。

    しかしながら、プロバイダとしては、事前に、問題になりそうな投稿等を選別して
   掲載を拒否することになりますが、その処理の膨大さに加えて、名誉毀損や著作権侵害などに該当する
かの判断は必ずしも容易ではないことから、少しでもリスクのあるものは掲載しない、削除するといっ   た萎縮効果が発生し、過度な掲載拒否を招くおそれがあります。

    そこで、プロバイダ責任法によって責任の明確化を図り、表現の自由と名誉や著作権等の保護法益の   調和を図ることが、同法の意図すると
   ころといえるでしょう。

    もっとも、インターネットの分野が急速に発展し続けている中、同法も時代に合わせて改正されてい    くと思われます。

      530-0047 大阪市北区西天満2丁目10番2号 幸田ビル8階  
弁護士法人 川原総合法律事務所      
弁護士 川 原 俊 明 




2017年06月06日

◆宮里藍の引退宣言

馬場 伯明



今季限りでの引退を発表した宮里藍(31歳・以下「藍ちゃん」)が、6月
29日(月)都内のホテルで45分間の記者会見を行った。You Tubeで公開さ
れている。終始笑顔の会見だったが最後には涙ぐんだ。

2003年に高校3年でツアー初優勝。藍ちゃんフィーバーが起きた。近年の
女子ゴルフ界の第一人者でプロ転向以降女子ゴルフ人気を牽引した。国内
で14勝。2006年からのアメリカで9勝。2010年には世界ランク1位の金字塔
が残る。(詳細はWebやYou Tube等をご覧ください)。

国内外のツアーで精一杯戦った。立派である。お疲れ様と心からねぎらい
たい。引退会見などの情報に基づき私の感想を述べる。
 
引退理由がいい。率直で真っ正直である。「モチベーション
(motivation)の維持が難しくなったのが一番の決め手」だと。世界一に
なり通算9勝を挙げたがピーク時にメジャーで優勝できず道標を失った。
「自分の限界を感じてしまった上での決断」だったという。モチベーショ
ンとは「動機」。単なる「やる気」でもない。「行動を起こす直接の原因」
という意味。心理学では「その行動に持続性を与える内的原因」とも言わ
れる。

「世界で活躍できた要因」について明確に語った。「自分自身と向き合え
たこと。アメリカでは小柄でパワーもなかった。ショットの精度と小技、
メンタルトレーニングで戦った。そこがゴルフのいいところ。体格差が
あっても勝てる」と。

アメリカで藍ちゃんがなかなか優勝できなかった原因について、日本の野
次馬評論家らが、身長155cmの彼女の他の選手との体格差をことさら強調
し「帰国し日本ツアーに戻れ」とか「日本ならもっと稼げる」などと口う
るさく言い、書きたてた。

じつは、1998年サンジェゴの世界ジュニア選手権5位から帰国し「将来、
こんな環境でゴルフをしてみたい。世界で戦えるプレーヤーになり、人と
しても成長していきたいと思います」と、すでに、中学校の意見発表会で
「夢」を発している。他人のお節介は「大きなお世話」であった。

藍ちゃんは主戦場を日本に移さなかった。渡米4年目、エビアンマスター
ズで見事に初優勝し、野次馬評論家らを黙らせた。言い放しの彼らは何の
反省もせず、また(彼ら自身には)何の実害もない。無責任である。

彼らの言いなりになっていたら2010年の世界ランク1位もなかったのだ。
ところが、野次馬評論家らは賢い。「自分が厳しい指摘をしたから藍ちゃ
んが発奮して頑張ったのだ」と臆面もなく言う(怒+笑)

引き際について・・。(全米トッププロの)ロレーナ(Lorena Ochoa
Reyes・メキシコ・現在35歳・2010引退)やアニカ(Annika Sörenstam・
スエーデン・現在46歳・2008引退)の引き際にも学んだようだ。「ロレー
ナの引退は衝撃だった。自分の気持ちを大事にしてシンプルだった。潔
かった。アニカもそうだ。私は、自分の人生なので自分で決めた」。引退
発表後ロレーナからメールが来たという。

結婚は・・。「今のところはないですね」。親しい彼がいるらしい。しか
し、それ以上記者たちは追及しなかった、いや、できなかった。藍ちゃん
の威厳と貫禄勝ちである。

思い出の試合・ショットは・・。国内では「(アマで勝った)2003ミヤギ
TV杯ダンロップレディスの優勝」、アメリカでは「2010エビアンマスター
ズでの初優勝。4年かかってたどり着いた優勝。プレーオフの18番ホール
の(会心の)ティーショット」。

藍ちゃんの18番のティーショットはすばらしかった。私も当時の画像を思
い出す。米ツアー全選手の上位ではないが約250ヤード、十分に戦える飛
距離である。(250ヤードは半端な距離ではない。200ヤードくらいしか飛
ばせない男性!が偉そうにケチを付けることに、私は一種の「滑稽さ」を
感じた)。

両親は・・・。「(引退を)驚きもなく温かく受け入れてくれた。『自分
が幸せだと思う道を行きなさい』と。兄二人も同じ・・」。「父に感謝す
る。『プロゴルファーである前に普通の人でありなさい』と言われてき
た。よかった」と。偉大な父母である。

今後藍ちゃんはどうするのか。「2017年内は1試合1試合丁寧にプレー
し、優勝したい。アメリカのメジャーには全部出たい、(初優勝した)エ
ビアンまで。後はゆっくり考えたい」。

そう、ふるさと沖縄でゆっくり休養し、じっくり考えてください。「やっ
ぱり、東村が最高に落ちつける場所」と藍ちゃんは以前から話していた。

藍ちゃんに憧れた(若い)選手がアメリカでやっていく上で必要なこと
は・・・。「難しいですね。選手によって変わってくると思いますが、私
でいうと自分のプレーの確立。たくさんあった。飛距離に惑わされること
なく、自分のベストのゴルフはどこにあるのか。人と比べないこと。自分
のゴルフがしっかりすればどこでも戦える。苦しい時も自分から逃げない
ことが大事になってくると思う」。自分の考えを持ち実行していたのだ。
あらためて尊敬する。

奈良県で開催中の国内女子ツアー「リゾートトラストレディス」会場で
も、5/26、選手の間に衝撃が広がった。藍ちゃんがどれほど好かれていた
か。女子プロゴルファーたちが語る。「ゴルフダイジェスト(2017/6/13
号)」から引用する。

森田理香子(2013年賞金女王):「いまの国内女子ツアーの発展があるの
も、藍さんや(横峰)さくらさんがいてくれたから。本当に悲しい」。

有村智恵(東北高校の後輩):「神様のような人でした。お疲れ様の気持
ちが大きいですが、寂しさがこみ上げてきます」。原江里菜(同後輩):
「私にとってはお手本であり、理想のプロゴルファーです。もう少し一緒
にやりたかった」。

イ・ボミ(韓国):「もう一回一緒に回りたい。サントリー(レディス)
が最後かもしれないので、お話がしたい」。畑岡奈紗(高校生プロ):
「幼い時にサインをもらった。ずっと私の目標の人。」。

舩橋園子(在米の著名なゴルフジャーナリスト):「十分に頑張った。あ
なたのおかげで日本中の人々の心が豊かになった。ありがとう。そして、
お疲れ様・・・」。

明るい引退会見の最後で藍ちゃんは涙ぐんだ。そして、言った。「これ以
上ないゴルフ人生でした」。

2017/6/8〜6/11に六甲国際ゴルフクラブで開催されるサントリーレディス
が日本でのラストゲームになる可能性が高いという。藍ちゃんスマイルで
明るく終わってほしい。できれば優勝で。(2017/6/4千葉市在住)

◆書 評 特 集

宮崎 正弘



<平成29年(2017)6月5日(月曜日)通算第5315号>   

 (( 書評特集 ))

中村彰彦『幕末遊撃隊長 人見勝太郎』(洋泉社)
渡部昇一『知の湧水』(ワック)
小峯隆生著、柿谷哲也撮影『蘇る翼 F2B ―津波被災からの復活』(並
木書房) 

       
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
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 緊張し、殺戮の巷を駆け抜けた剣士たちは、しかしどこか牧歌的なのだ
  西郷を刺しに薩摩に赴いたのに、この物語の主人公は逆に感化された

  ♪
中村彰彦『幕末遊撃隊長 人見勝太郎』(洋泉社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

人見勝太郎は「?川脱藩」組である。

写真を見ると爽やかな伊達男、政治哲学が身体から放出させているタイプ
ではなく、かと言って謀略を好む陰惨な策士という印象がない。

土佐脱藩の坂本龍馬、長州脱藩の吉田松陰など、脱藩者は数限りない
が、?川脱藩というのも珍しい。

人見勝太郎は豪快な剣士であった。幾多の戦闘に勝ち抜き、五稜郭の生き
証人となって、戦後は華麗な転身をとげた。

最初から奇々怪々、じつに不思議な人物で、幕府の遊撃隊に加わった剣士
が、官軍との戊辰戦争を戦いながら、甲府、箱根から江戸へ戻り、榎本武
楊らに合流して、奥州へ転戦し、「蝦夷共和国」宣言時には松前で守備に
就いた。

こうした過程で近藤勇はもちろん、幕府内で剣豪といわれた山岡鉄舟と互
角の勝負をした伊庭八郎らと人見は知り合い、共に死線をくぐりながら、
脱藩大名の林とも知り合う。

五稜郭で降伏後、剛毅にも西郷の暗殺を企て、薩摩入りするさいには奇兵
隊の残党が荒らし回る瀬戸内海の海賊と一戦を交え、かと思えば、つぎは
西郷、大久保と知遇を得て新政府に仕え、西南戦争では駿河藩から志願兵
を募集する役目を与えられた。

そういう風に矛盾を矛盾とせずに、勝海舟とも深く交わった。
 
ついには誰もが治められないと言われた茨城県県令(県知事)。そして80
歳、波瀾万丈の生涯を閉じた。

歴史に埋もれた人物を捜し当てて、闇の部分に光を当てる貴重な作品を連
綿と発表してきた中村彰彦は、幕末に藩主自らが脱藩するという林忠崇
(たったひとりだけの脱藩大名)。遊撃隊を率いて爽やかに豪快に闘って
果てた伊庭八郎を過去に書いたが、こんかいはノンフィクションとして、
人見勝太郎を世に問うのだ。

同時代を生きた人々に、ペリー来航以来の疾風怒濤、狂乱の政局は運命を
大きく変えさせた。

本書には印象的な場面がある。
 
明治3年5月、勝海舟が書いた村田新八への紹介状を懐に、人見勝太郎は
勇躍鹿児島へ向かった。ところが勝の書状には、「この男、足下を刺すら
しいが、ともかく会ってやってくれ」トとぼけた内容だった。(『氷川清
話』にその一節がある)

殺気を帯びた人見の鹿児島入りを、歴戦の強者が気付かないはずがないの
だが、薩摩隼人というのも変人そろい。村田新八、桐野利秋らは勝太郎を
歓待したのだ。

西郷暗殺を胸に秘めて、人見は実際に西郷邸を訪ねた。

「西郷はちょうど玄関で横臥していたが、その声(人見の来訪)を聞くと
ゆうゆう起き直って『わたしが吉之助だが、わたしは天下の大勢などとい
う難しいことは知らない。まあ、お聞きなさい。わたしは先日大隅へ旅行
した。その途中で腹が減ってたまらぬから、十六文で芋を買って食った
が、たかが十文文で腹を養うような吉之助に天下の形勢などわかるはずが
ないではないか』と言って大口をあけて笑った。血気の人見もこの出し抜
けのはなしに気を呑まれて、殺すどころの段ではなく、挨拶も録にせず
返ってきて、『西郷さんは、実に豪傑だ』と感服して話したことがあっ
た」(227p)
この逸話、おそらく本当だろう。

その後、人見勝太郎は西郷ら薩摩隼人から大歓待を受けて百日も鹿児島に
留まり、教育の大切を身に染みて学ぶこととなった。

殺戮の戦場を生き抜いたあの時代の男たちは、どこか牧歌的なのである。

         
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 書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評  
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 日本が文化的先進国である一つの象徴は『神学大全』の翻訳である
   英国、仏蘭西、伊太利亜などでしか全訳は出版されていない現実

  ♪
渡部昇一『知の湧水』(ワック)
@@@@@@@@@@@@@@

 「稀代の碩学、珠玉のエッセイ」とあって「知の巨人、ラストメッセー
ジ」という文字が本書の帯を飾っている。

それにしても湧き水のごとく、次々と英知が現れてくるという碩学が世の
中にはいるのである。知の湧水とは、じつに適切なタイトルだと思った。
 先日、イグナチオ教会で行われた氏の追悼ミサの入り口に看板があっ
て、仏教でいう氏の戒名は「聖トーマス・アキナス」とあった。

本書を読んで、その聖名の理由がよくよく理解できた。

渡部氏は、このなかでドーマス・アキナスに幾多のページを割かれ、とり
わけ『神学大全』について詳述されているからである。
 
なにしろ、この世界一難解とまでいわれる書物の原書を氏は3回も精読さ
れた。「神学大全邦訳完成記念」セレモニーでは、氏がスピーチもされた。

さて本書を通読したあと、印象的な既述が2ケ所あった。これは個人的な
感想であるが、まずはアリストテレスとプラトンの差違である。
 
「この2人の大哲人の切り口は全く違った方向に向いていたと言える。つ
まりプラトンの切り口は『東』に開かれており、アリストテレスの切り口
は『西』に開かれていた。プラトンの思想は東洋にも偏在したいたが、ア
リストテレスは西欧の中世に花開き、実を結び、西洋と特徴付ける哲学と
なった」(162p)。

プラトンは「不滅の霊魂とその転生について語っている」のである。『プ
ラトン全集 第1巻』(岩波書店)には次の言葉がある。
 「たしかに、よみがえるという過程があることも、死んでいる者から生
きている者が生じるということも、そして死者たちの魂が存在すること
も、本当なのである」

なぜこの箇所に評者が惹かれたかといえば、生前の氏との会話(下段追悼
文『附録』を参照)に三島由紀夫の転生が話題となったことがあるから
だった。

もう一つは渡部昇一氏が子供3人、孫5人に囲まれた金婚式での感激をさ
らりと綴ったなかでの、次の文章である。
そのまま引用すると、

「子供を育てるということは大変なことである。しかしわれわれはそれ
をーー当時の大部分の日本人のようにーー当たり前のことと受け止めてい
た。しいて言えば子供で苦労することは当たり前の人間にとって『人生の
手ごたえ』と感じたとでも表現できようか。子供の教育費がなかったら
もっと贅沢な生活ができただろうになどとは考えなかったし、子どもがい
るので生きる張り合い、働く張り合いができたというべきであろう」(引
用止め) 
こんにちの少子高齢化社会への警告的な譬喩である。

 (附録)
「渡部昇一氏を悼む/宮崎正弘」(拙メルマガ4月19日号より再録)
(引用開始)
「渡部昇一氏が4月17日に亡くなった。振り返れば、氏との初対面は四半
世紀以上前、竹村健一氏のラジオ番組の控え室だった。文化放送で「竹村
健一『世相を斬る』ハロー」とかいう30分番組があって、竹村さんは一ヶ
月分まとめて収録するので、スタジオには30分ごとに4人のゲストが待機
するシステム、いかにも超多忙、「電波怪獣」といわれた竹村さんらしい
遣り方だった。

ある日、久しぶりに呼ばれて行くと、控え室で渡部氏と会った。何を喋っ
たか記憶はないが、英語の原書を読んでいた。僅か10分とかの待機時間
を、原書と向き合って過ごす人は、この人の他に村松剛氏しか知らない。
学問への取り組みが違うのである。

そういえば、氏のメインは英語学で、『諸君!』誌上で英語教育論争を展
開されていた頃だったか。

その後、いろいろな場所でお目にかかり、世間話をしたが、つねに鋭角的
な問題意識を携え、話題の広がりは世界的であり、歴史的であり現代から
中世に、あるいは古代に遡及する、その話術はしかも山形弁訛りなので愛
嬌を感じたものだった。

近年は桜チャンネルの渡部昇一コーナー「大道無門」という番組があっ
て、数回ゲスト出演したが、これも1日で2回分を収録する。休憩時に、
氏はネクタイを交換した。意外に、そういうことにも気を遣う人だった。
そして石平氏との結婚披露宴では、主賓挨拶、ゲストの祝辞の後、歌合戦
に移るや、渡部さんは自ら登壇すると言いだし、ドイツ語の歌を(きっと
お祝いの歌だったのだろう)を朗々と歌われた。芸達者という側面を知っ
た。情の深い人だった。

政治にも深い興味を抱かれて、稲田朋美さんを叱咤激励する「ともみ会」
の会長を務められ、ここでも毎年1回お目にかかった。稲田代議士がまだ
一年生議員のときからの会合で年々、参加人員が増えたことを喜んでいた。
最後にお目にかかったのは、ことしの山本七平授賞式のパーティだった
が、氏は審査委員長で、無理をおして車椅子での出席だった。「おや、具
体でも悪いのですか」と、愚かな質問を発してしまった。

訃報に接して、じつは最も印象的に思い出した氏との会話は、三島由紀夫
に関してなのである。

三島事件のとき、渡部さんはアメリカに滞在中だった。驚天動地の驚きと
ともに、三島さんがじつに偉大な日本人であったことを自覚した瞬間でも
あった、と語り出したのだった。渡部さんが三島に関しての文章を書かれ
たのを見たことがなかったので、意外な感想に、ちょっと驚いた記憶が
ふっと蘇った。

三島論に夢中となって、「憂国忌」への登壇を依頼することを忘れてい
た。合掌」(引用止め)。
          
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
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 あの巨大津波で松島基地に係留されていた戦闘機は塩漬けになった
  奇跡の修復プロジェクトによって13機が前線に復帰した

  ♪
小峯隆生著、柿谷哲也撮影『蘇る翼 F2B津波被災からの復活』(並木
書房)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

こういう物語があったこと、知らなかった。

東日本大震災直後の2011年4月、松島基地を取材で訪れた筆者は、津波で
大きく損傷したF2Bを見た。

塩漬けの無惨な姿で、最新鋭機が転がっていたのだ。

評者(宮崎)と言えば、あの日、福建省福州にいた。滞在したホテルで胸
騒ぎがして、東京に国際電話を申し込んだが1時間通じなかった。災害発
生を知り、部屋のテレビを入れると、生々しい被害状況が刻々と映し出さ
れて驚愕した。
東京も交通が痲痺しており、評者は上海で2日間待機し、帰国したことを
思い出した。

さて被災した戦闘機である。精密機器の塊である戦闘機を完全修復するこ
とは不可能だろうと予測された。世界中でも、そんな例はなかった。
航空自衛隊にとって複座型のF‐2Bは、戦闘機パイロット育成のため
に、なくてはならない機体だ。しかもF‐2の生産は終了しており、新た
に製造することはできない。このままでは日本の国防に大きな空白が生ま
れてしまう。

安全保障上、由々しき問題であり、かと言って制約された防衛予算をみれ
ば代替機の購入など夢の物語である。

塩漬けとなったF‐2Bを復活させることはできないだろうか?

空幕内に「チーム松島」が結成され、前代未聞の「海水漬け」戦闘機の修
復プロジェクトがスタートした。

男たちの挑戦が始まった。ついに18機のF‐2Bのうち13機が修復され、
再建された松島基地に続々と帰還したのだ。

壮大な戦闘機修復プロジェクトは、いかに実行され、成功したのか?
筆者は数か月かけて、航空幕僚監部、松島基地、三菱重工業小牧南工場、
IHI瑞穂工場、国会議員など、多くの関係者にインタビューを重ね、こ
のプロジェクトが関係者の熱意や努力ばかりではなく、深い洞察力に裏付
けられた判断力と実行力によって成し遂げられたことを知った。

損傷した航空機や施設、すなわち戦力をどうやって回復させるか、そのた
めには何をなすべきかを計画・立案した空幕の強力なリーダーシップ、予
算措置など政治・財務面のサポート、そして何より損傷機の修復に取り組
んだメーカーの熱い「ものづくり魂」がひしひしと伝わる感動のドキュメ
ントが出現した。
 
         

◆宙に浮く野党の政権追及

杉浦 正章 
 



金銭疑惑ゼロの壁で「政局化」は無理



「黒い霧」と似た“ムード依存”
 

「国会が森友問題とか加計学園ばかり。モリだとかカケだとか私も麺類は好きだけど、こればっかりで国民はうんざりです!」と質問者である自民党参院議員山田宏が嘆いたが、全くその通りだ。もっとも5日の衆参決算委員会での質疑は、満を持したのか首相・安倍晋三以下政府側の反論が徹底していて、野党側の第2選級質問者はふんどし担ぎが横綱にかかるような体たらくであった。「総理のご意向」文書も政府側の全面否定で空振り。切り札とばかりに提示した「総理のご意向メール」も、ネットでは「第二の偽メール事件だ」と盛り上がっている。


野党と朝日、毎日、民放などが足並みをそろえてありもしない魔女狩りのごとき政権追及も、金銭疑惑に結びつけようがなく宙に浮いた形となった。相変わらずテレビやラジオのコメンテーターらがあることないことしゃべりまくっているが、しゃべればしゃべるほどその中身は良識ある国民ならあきれる「根拠レス」であることが次第に鮮明になっている。


もう、この問題での追及は勝負があったのであり、いいかげんにした方がよい。まるで佐藤内閣時代に「黒い霧」と称する追及を野党が展開したが、結局追及が行き詰まり政権側が勝ったのと似ている。佐藤栄作は「黒い霧解散」で沈静化したが、この場面では解散するまでもあるまい。
 

5日の質疑を通じて浮かび上がった問題はいかに野党側の追及が「印象操作」に満ちあふれていたかということであろう。まず前文科次官前川喜平が今治市への加計学園獣医学部設置について「首相の意向が働いた」とマスコミに証言し続けている問題については、次官でありながらなぜ首相に面と向かって反対の意向を伝えなかったかが問われた。安倍は「事務次官で私に『お言葉ですが』と持論を展開される方もいる。3回お見えになっているがこの問題については全く話をしなかったことは当惑せざるを得ない」と発言した。


さらに前川の「総理の意向発言」についても「国家戦略特区諮問会議できっちりと議論することになっており、私の意向というものは入りようがない。それありきではなく、公募で決めたという経緯がある。そうしたものに一切触れず、延々と議論されるのは極めて不適切で印象操作だ」と反論した。
 

一方、前川が出会い系バー通いを繰り返した問題について官房長官菅義偉は「常識的に、青少年の健全育成、教職員の監督に携わる事務方の最高責任者が、売春、援助交際の温床になりかねないと指摘されている店に頻繁に通って、女性を外に引き出してお小遣いまで渡していることに違和感を感じる」と厳しく断定した。さらに菅は、かつて前川について「地位に恋々としている」と発言した経緯に言及、「昨年12月末に官房副長官に天下り問題の説明に来た際に、みずからの進退については示さなかった。


さらに、『3月まで定年延長したい、事務次官として続けたい』と打診があった。天下り問題を考え、『そんなことはダメだ』と言った。天下り問題に対する世論が厳しい状況になって初めてみずから辞めた。だから、私は『恋々としている』と申し上げた」と説明した。ここまで前川の人間性が露呈されれば、軍配は政府側に上がらざるを得まい。そもそも前川には売春防止法というれっきとした法律があり、あらゆる法律順守は公務員としての第一の義務であるということが分かっていないように見える。一部マスコミに悪乗りして発言を繰り返し、買春疑惑をそっちのけにしようとしても、「引かれ者の小唄」で無理があることが分かっていない。
 

さらにもう一つの焦点は民主党政権が、自ら獣医学部の招致を今治市に決めておきながら、なぜ今になって反対するのかの問題だ。安倍は「鳩山政権は22年度を目途にに加計学園問題を速やかに検討することを決めた」 と指摘し、菅政権も野田政権もこれを受け継いだと強調した。たしかにこれほどつじつまが合わない問題はなく、なんでも「政局」に結びつけようとする意図が先行しているとしか言いようがない。政治に邪心が入るとブーメラン返しを受けるよい例だ。
 

国会論議ですら根拠レスだから民放にいたっては、事実誤認どころかねじ曲げもいいところの論評が続いている。5日には反安倍の論調を貫くTBSラジオの「デイ・キャッチ」で、ジャーナリスト青木理が読売の「前川氏が在職中に出会い系バー通いをしていた」という大スクープにいちゃもんをつけた。「何であの時期なのか。朝日、毎日が『総理の意向』を伝えている中での報道だ」と、あさっての方向に疑問を投げかけた。


時期もへったくれもない。新聞は確信を得れば記事にするのだ。加えて青木は「杉田副長官は公安警察出身。こんな情報を集められるのは警察以外にない。官僚のプライバシーの情報を集めている」と警察情報であると断定した。くだんの出会い系バーはマスコミでも有名になっており、記者でも通っている連中がいるという。


文部次官が足繁く通えば、注目の対象となり、噂は広がりうる。次官専用車の運転日誌はどうだったのだろうか。警察でなくても情報は広がり得たのが実情であった。さらに青木は「政府に異議をとなえた途端にこんなものを出されたら縮こまる。官邸の意向に逆らうとこんな情報が出る」とまるで日本が警察国家であるかのような“危機感”を強調した。悪いことをすれば誰でも縮こまるのだ。


この発言の問題は出会い系バーが菅の指定したように売春の温床になっていることへの視点が全く欠けていることだ。売春防止法というれっきとした法律があり、戦後法律が出来た当初は、警察が頻繁に手入れで踏み込み、売春業者や女性、買春の客などを検挙したのだ。当時はニュース映画で何度も報じられたものだ。その法律違反をしておいて「縮こまる」はないだろう。
 

このように前川問題は、事の本質をあえて見逃しているメディアと、正すべきは正すマスコミや政治との正邪の戦いのような気がする。


一方で、読売は6月4日に社会部長の署名入りで「次官時代の不適切な行動、報道すべき公共の関心事」と題する説明記事を掲載した。この中で@教育行政のトップという公人中の公人の行為として見過ごせないA売春の客となるのは違法行為であるB青少年の健全教育に携わる文科省の最高幹部が頻繁に出入りし女性に金銭を渡して連れ出していたことは不適切な行為であるC次官在任中の職務に関わる不適切な行為は公共の関心事であり、公益目的にもかなうーと、編集方針を改めて鮮明にさせた。胸のすくようなジャーナリズムのあるべき姿として賞賛を送りたい。

       <今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)