2018年04月14日

◆北の核廃棄を望まない中朝韓

櫻井よしこ


「習近平氏は1本2000万円のマオタイ酒を正恩に振る舞ったそうです。彼
を北京に呼びつけ、中国の持てる力を誇示して手なずけようとした。その
目論見が見てとれます」

こう語るのは統一日報論説主幹の洪熒(ホンヒョン)氏だ。金正恩朝鮮労
働党委員長は3月下旬の電撃的訪中以降、華々しい外交攻勢を展開中だ。
しかし日米両国が求める北朝鮮の非核化に向けた確約は見えてこない。こ
のままいけば、米朝首脳会談がスンナリと実現するとは限らないだろう。

米朝会談の最大の眼目である北朝鮮の非核化について、日米韓中朝の5か
国は明確に異なる立場に立っている。日米は、北朝鮮の核弾頭だけでな
く、全ての核物質、全ての核関連施設に加えて核開発計画自体を「完全
に、検証可能かつ不可逆的な方法で解体すること」(CVID)を求めて
いる。行動は明確に一括して行われなければならない。

他方、北朝鮮は勿論、中国も韓国も、そんなことは望んでいない。彼らは
日米の使う「北朝鮮の非核化」ではなく、「朝鮮半島の非核化」と言う。
北朝鮮の意図は、米国は米韓同盟に基づいて有事の際、核兵器で北朝鮮を
攻撃して韓国を防衛するかもしれない、米国の核の脅威を取り除くために
米韓同盟も解消すべきだ、そのとき初めて北朝鮮も核をなくす、というも
のである。

中国政府も北朝鮮から核を取り上げようなどとは考えてもいない。彼らの
意図が明確に表現されていたのが、3月18日の「環球時報」の社説であ
る。中国共産党機関紙「人民日報」の国際版である、「環球時報」が突
然、北朝鮮をほめそやし始めたのだ。

「中朝両国の試金石は、核問題で相互の立場に相違があるにもかかわら
ず、バランスを保つことだ。北京・平壌間の友好関係を維持し、韓国や日
本や西側メディアの影響を受けないことだ」として、核兵器に関する中朝
間の相違は両国関係のごく一部にすぎないと強調した。

「北朝鮮は尊敬すべき国である。北東アジアでは珍しく高度の独立を保っ
ている。経済規模は大きくないが、産業構造は完璧で、これは中々達成で
きないことだ」と噴飯物のお世辞も並べた。

北朝鮮の核開発を黙認

環球時報はさらに、中朝は対等で相互に尊敬しあっている、中朝友好関係
を通じて、中国は北東アジアにおける戦略性を高めることができる、北朝
鮮は、困難と危険が伴う日米韓3か国への対処を、中国の支えによって、
リスク回避をしながらこなすことができると、強調した。

社説は、如何なる勢力も中朝関係に割り込むことはできないと断じて結論
とした。ここから読みとれるのは、日米両国が主導した強い制裁で追い詰
められた正恩氏を何が何でも囲い込み、中国の影響力を強め、それを維持
しようという戦略だ。

そこには正恩氏から核を取り上げる意図は全く見られない。確かに中国は
言葉のうえで北朝鮮の核に反対する。他方、中国は金日成、金正日の時代
から北朝鮮の核開発を黙認してきた。

正恩氏についても同じ姿勢であろう。中国の言葉による北朝鮮の核への反
対論は、北朝鮮が核を保有したときに必ず日本も核武装すると考えている
ためだ。北朝鮮の核に反対するのは、日本の核武装に反対するための構え
だと見るべきだ。

文在寅韓国大統領も同じである。文氏は自殺した盧武鉉元大統領の秘書室
長(官房長官)として、2007年の金正日総書記との首脳会談を準備した。
その前年の06年に正日氏は初の核実験を行い、国際社会から厳しい非難を
浴びた。だが盧氏は首脳会談ではその件には一言も触れていない。

他方、国際社会に向けて盧氏は、「北朝鮮の核は自衛のための核だ」とし
て北朝鮮を擁護し続けた。

盧氏を師と崇める文氏は盧氏同様、「北朝鮮の非核化」とは言わない。常
に「朝鮮半島の非核化」である。

「このように中朝韓は日米とは考え方が違うのです。それを日本では日米
韓vs中朝の枠組みで論じています。文氏が日米の側に立つと考えるのは幻
想で、それでは戦略を誤ります」

と洪氏。

中朝韓が北朝鮮の核放棄を実現するとは思えないとき、トランプ米大統領
はどうするだろうか。氏は3月下旬、矢継ぎ早に対中強硬策を打ち出し
た。中国が「核心的利益」だとして第三国の介入を断固拒否する台湾に関
して、台湾旅行法に署名した。これで米国の閣僚も要人も含めて、台湾と
の交流を行い易くなった。

もうひとつの中国の核心的利益、南シナ海では中国の人工島の「領海」に
米艦船が入り、航行の自由作戦を実施した。中国による知的財産権の侵害
に関して、600億ドル(約6.3兆円)規模の中国製品に関税をかけるとも発
表した。

トランプ政権の後退を待つ

きつい要求を突きつけた米国に中国は4月2日報復関税を発動した。同時に
両国は水面下で交渉を進めている。仮に中国が大幅に譲歩すれば、トラン
プ氏は妥協するかもしれない。

過去には米国訪問でボーイングの航空機300機を買いつけ、米国の巨額貿
易赤字に関する不満を一挙に解消したこともある。その手の戦術に中国は
長けている。加えて、中国が責任をもって北朝鮮の核をコントロールす
る、北朝鮮に米国に届くミサイルは持たせないなどの条件を確約すれば、
トランプ氏が北朝鮮の核を認めてしまうこともあり得ると考えるべきだ。
日本にとっては本当の悪夢である。

だが、いまやトランプ氏の傍らには対北朝鮮強硬派のポンペオ国務長官と
ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官が控えている。彼らが、北朝
鮮の核放棄の曖昧さに憤るとき、北朝鮮はどう対応しようとするだろうか。

洪氏が語った。

「彼らはトランプ政権を恐れながらも、その足下を見ています。ロシア問
題で追い込まれ、秋の中間選挙で敗北しかねない。レームダック化すれば
強い政策は取れないと、正恩が考えていても不思議ではありません。正恩
は追い詰められて中国を頼った。彼にも余裕はない。時間を稼ぎながら、
トランプ政権の弱体化を待っている。そこまで走りきることを、今彼は考
えているのではないでしょうか」

「終身皇帝」への道筋をつけた習氏は時間をかけてトランプ政権の後退を
待つ可能性がある。

このような状況の中に、日本は置かれている。北朝鮮を追い詰め平和路線
に転換させたのは、安倍晋三首相が強く主張した「圧力路線」の結果であ
る。ここまではよいが、これから日本はどうするのか。

米国との協調関係を大事にしながらも地力をつけるしかない。世界情勢の
展開が見通せない今、日本が国として強くなることが何よりも大事だ。自
国を自力で守るという原点に戻る。その第一歩が、憲法改正である。

『週刊新潮』 2018年4月12日 日本ルネッサンス 第798回

◆人工関節手術で歩ける喜び

小池 達也


整形外科の分野ですばらしい発展を遂げていると考えられているのは、人工関節分野です。現在では、肩・肘・股・膝・足関節に人工関節手術が施されますし、手や足の指関節にも応用が始まっています。

特に、股関節と膝関節に関しては膨大な数の手術が毎年日本中で行われています。
成績も安定しており、それほど高度な手術でもなくなりつつあります。

しかし、本当に人工関節は進歩したのでしょうか。

1962年にチャンレイという先生が人工股関節手術を初めて実施されました。 今から振り返ってみても、良く考え抜かれたデザイン・材質・手術方法でした。やっぱりパイオニアと呼ばれる人たちには何か光るものがあります。

このチャンレイ型人工股関節は長期成績も良く、スタンダードとなりましたが、もちろん完璧ではないので、チャンレイ自身を含め様々な改良が加えられました。

ところが、それらの改良、良かれと思ったデザインや材質の変更は逆に長期成績を悪化させました。

そうすると、また改良が加えられ、猫の目のようにくるくるとデザインや果てはコンセプトまで変わっていきました。最近ようやく、コンセプトも成熟し成績も安定してきました。しかし、改良が加えられ続けていた時代に人工股関節手術を受けてしまった人は恩恵を受けることが出来なかったわけです。

最先端のものが最良とは限らない好例ではないでしょうか。これは人工関節の性格上、結果がすぐに出ないことが一番の理由です。そして、この危険性は今後も出てくる可能性はあります。

では、人工関節手術などすべきではないのでしょうか。

そうではありません。歩くことさえ大変な方が、人工関節手術を受けて痛みなく歩けるようになった時の喜びは、本人でない我々でさえ感じることの出来る大きなものです。

「人生が変わった」・「旅行に行けるようになった」・「歩くのって楽しい」など、多くの喜びの声を聴かせていただける、医者にとっては実にやりがいのある手術です。これを永続する喜びに変えるために、いくつかの合併症を克服してゆくのが、我々の今後の使命でしょう。

人工関節の合併症で厄介なのは感染とゆるみです。ゆるみの方は、多くの研究により克服されつつありますが、異物を体の中へ入れる手術であることから、感染の危険性はなかなか解決されそうにはありません。また、スポーツも可能になるような丈夫な人工関節もまだ存在しません。真の人工関節出現はもう少し先になりそうです。
 
ところで、最近ではナビゲーションといって、コンピュータが人工関節を入れる方向を指示するシステムやロボットが人工関節を入れる方法も実用化されています。

あなたは、ロボットと人とどちらに手術して欲しいですか?(再掲)
         (大阪市立大学大学院医学研究科リウマチ外科学 )

2018年04月13日

◆トランプ一触即発の状態でけん制

杉浦 正章


シリア攻撃の準備完了 米露対立危機的状況 

この国はの国会は一体どうなっているのか。シリアが一触即発で、場合に
よっては米露の大規模軍事衝突に発展しかねないというのに、野党はカケ
だのモリだの朝日新聞と民放受けする問題ににうつつをぬかし、世界情勢
などどこ吹く風だ。

何という世界観の欠如だろうか。戦争はいったん勃発すれば、連鎖を巻き
起こし、北朝鮮情勢の緊迫化につながりうる事態も想定される。米国はト
ランプの強硬路線に傾斜して、シリア攻撃の準備をほぼ完了させた。あと
は命令を待つばかりの状況に至っている。シリアをめぐる米露の対立は抜
き差しならぬ事態となりつつある。

トランプはまず「口撃」から物事を始めるから、分かりやすい。シリアの
アサド政権を「自らの国民の殺害を楽しむかのように毒ガスをまく獣(け
だもの)」と決めつけ、一方でこれを支援するロシアに対して「ロシアは
シリアに向けられたいかなるミサイルも打ち落とすと宣言している。プー
チンは準備に入るがいい。米国のミサイルが来るぞ、新しくスマートなミ
サイルだ」とどう喝した。

トランプの行動はまず同盟国固めから始まった。イギリスの首相テリー
ザ・メイとフランス大統領エマニュエル・マクロンと電話会談して、アサ
ドに断固とした対応で臨むことを確認した。

マクロンはテレビで「アサド政権が化学兵器を使った証拠を握っている」
と延べ、制裁を示唆。メイは英軍をシリア攻撃に参加させる方針を固めた
模様だ。米欧有志連合による攻撃態勢を整えたのだ。

しかし、ドイツは別だ。首相メルケルは12日の記者会見で、対シリア軍事
行動について「ドイツは参加しない」と明言した。

対シリア攻撃のシナリオは、東地中海に展開した米艦船や爆撃機によって
多数の巡航ミサイルを発射して、軍事施設を破壊する。

昨年4月には59発がシリアの空軍基地の目標を破壊している。今回はこれ
を上回る規模となる可能性が大きいようだ。これにロシアがどう対応する
かだが、トランプの予告発言はシリアの基地にいるロシア軍兵士に避難を
呼びかける性格もある。

最悪の場合はロシアが反撃して、衝突が拡大し米露直接戦争に発展するこ
とだ。ロシアはシリアの基地にミサイル迎撃システム「S400」を配備して
いるものとみられ、反撃を受ければ米軍は無傷ではあり得ない。

米露が直説砲火を交える事態になれば、史上初めてであり、事態は1962年
のキューバ危機に勝るとも劣らない危機的状況である。

 この米国によるシリア攻撃は北朝鮮をも強く意識した地球規模の戦略で
あることは言うまでもない。シリア攻撃を目の当たりにした場合金正恩
が、どう反応するかをトランプは片目でにらんでいる。

おそらく「震え上がる」だろうとみている。トランプの狙いはシリア攻撃
によって、北朝鮮に力を見せつけ、核兵器放棄に向かわせたいのだろう。

一方でロシアは北朝鮮にも同型ミサイル迎撃システムを配備しており、北
はシリア軍の反撃能力を固唾をのんで見守るに違いない。米軍に対する迎
撃の「予行演習」の意味合いを持つからだ。

金正恩はシリアの紛争が拡大して、米軍が極東で作戦を展開することが困
難になることを期待しているに違いない。戦術上2正面作戦は最も愚かな
作戦と言われているが、米国が中東に専念すれば北に核・ミサイル開発の
余裕を与えることになる。シリアへの対応は米国の北との交渉に影響を及
ぼさざるを得ないのだ。

 こうした中で注視すべきはトランプ政権の中でブレーキ役が登場し始め
たことだ。これまではかつてイラク戦争を推進した大統領補佐官ジョン・
ボルトンのように「平和がほしければ戦争の準備をすべきだ」といった
“力の信奉者”が目立った。

これに対して、国防長官ジェームズ・マティスは「私の責任は必要ならば
軍事オプションを用意することだ。しかし米国は外交主導で努力する。外
交的手段によって外交的結果を得る」と慎重論だ。前国務長官ティラーソ
ンも「外交的解決はあきらめない」と述べている。

 しかしこうした慎重論もトランプ一流の“口撃”にかき消されがちだ。ト
ランプは11日「ロシア高官はシリアにミサイルが飛来しても迎撃すると
発言したが、そのミサイルが飛来するのだからロシアは準備せよ」と“最
後通牒”的な発言を繰り返している。これ以上言葉がないほど脅しまくっ
ているのだ。ロシア外務省報道官のザハロワは「ミサイルはテロリストに
向けられるべきで、国際テロリズムと戦っている合法的政権に向けられる
べきではない」と批判しているが、トランプ節にかき消されがちだ。
    

◆北の核廃棄を望まない中朝韓

櫻井よしこ


「習近平氏は1本2000万円のマオタイ酒を正恩に振る舞ったそうです。彼
を北京に呼びつけ、中国の持てる力を誇示して手なずけようとした。その
目論見が見てとれます」

こう語るのは統一日報論説主幹の洪熒(ホンヒョン)氏だ。金正恩朝鮮労
働党委員長は3月下旬の電撃的訪中以降、華々しい外交攻勢を展開中だ。
しかし日米両国が求める北朝鮮の非核化に向けた確約は見えてこない。こ
のままいけば、米朝首脳会談がスンナリと実現するとは限らないだろう。

米朝会談の最大の眼目である北朝鮮の非核化について、日米韓中朝の5か
国は明確に異なる立場に立っている。日米は、北朝鮮の核弾頭だけでな
く、全ての核物質、全ての核関連施設に加えて核開発計画自体を「完全
に、検証可能かつ不可逆的な方法で解体すること」(CVID)を求めて
いる。行動は明確に一括して行われなければならない。

他方、北朝鮮は勿論、中国も韓国も、そんなことは望んでいない。彼らは
日米の使う「北朝鮮の非核化」ではなく、「朝鮮半島の非核化」と言う。
北朝鮮の意図は、米国は米韓同盟に基づいて有事の際、核兵器で北朝鮮を
攻撃して韓国を防衛するかもしれない、米国の核の脅威を取り除くために
米韓同盟も解消すべきだ、そのとき初めて北朝鮮も核をなくす、というも
のである。

中国政府も北朝鮮から核を取り上げようなどとは考えてもいない。彼らの
意図が明確に表現されていたのが、3月18日の「環球時報」の社説であ
る。中国共産党機関紙「人民日報」の国際版である、「環球時報」が突
然、北朝鮮をほめそやし始めたのだ。

「中朝両国の試金石は、核問題で相互の立場に相違があるにもかかわら
ず、バランスを保つことだ。北京・平壌間の友好関係を維持し、韓国や日
本や西側メディアの影響を受けないことだ」として、核兵器に関する中朝
間の相違は両国関係のごく一部にすぎないと強調した。

「北朝鮮は尊敬すべき国である。北東アジアでは珍しく高度の独立を保っ
ている。経済規模は大きくないが、産業構造は完璧で、これは中々達成で
きないことだ」と噴飯物のお世辞も並べた。

北朝鮮の核開発を黙認

環球時報はさらに、中朝は対等で相互に尊敬しあっている、中朝友好関係
を通じて、中国は北東アジアにおける戦略性を高めることができる、北朝
鮮は、困難と危険が伴う日米韓3か国への対処を、中国の支えによって、
リスク回避をしながらこなすことができると、強調した。

社説は、如何なる勢力も中朝関係に割り込むことはできないと断じて結論
とした。ここから読みとれるのは、日米両国が主導した強い制裁で追い詰
められた正恩氏を何が何でも囲い込み、中国の影響力を強め、それを維持
しようという戦略だ。

そこには正恩氏から核を取り上げる意図は全く見られない。確かに中国は
言葉のうえで北朝鮮の核に反対する。他方、中国は金日成、金正日の時代
から北朝鮮の核開発を黙認してきた。正恩氏についても同じ姿勢であろ
う。中国の言葉による北朝鮮の核への反対論は、北朝鮮が核を保有したと
きに必ず日本も核武装すると考えているためだ。北朝鮮の核に反対するの
は、日本の核武装に反対するための構えだと見るべきだ。

文在寅韓国大統領も同じである。文氏は自殺した盧武鉉元大統領の秘書室
長(官房長官)として、2007年の金正日総書記との首脳会談を準備した。
その前年の06年に正日氏は初の核実験を行い、国際社会から厳しい非難を
浴びた。だが盧氏は首脳会談ではその件には一言も触れていない。

他方、国際社会に向けて盧氏は、「北朝鮮の核は自衛のための核だ」とし
て北朝鮮を擁護し続けた。

盧氏を師と崇める文氏は盧氏同様、「北朝鮮の非核化」とは言わない。常
に「朝鮮半島の非核化」である。

「このように中朝韓は日米とは考え方が違うのです。それを日本では日米
韓vs中朝の枠組みで論じています。文氏が日米の側に立つと考えるのは幻
想で、それでは戦略を誤ります」

と洪氏。

中朝韓が北朝鮮の核放棄を実現するとは思えないとき、トランプ米大統領
はどうするだろうか。氏は3月下旬、矢継ぎ早に対中強硬策を打ち出し
た。中国が「核心的利益」だとして第三国の介入を断固拒否する台湾に関
して、台湾旅行法に署名した。これで米国の閣僚も要人も含めて、台湾と
の交流を行い易くなった。

もうひとつの中国の核心的利益、南シナ海では中国の人工島の「領海」に
米艦船が入り、航行の自由作戦を実施した。中国による知的財産権の侵害
に関して、600億ドル(約6.3兆円)規模の中国製品に関税をかけるとも発
表した。

トランプ政権の後退を待つ

きつい要求を突きつけた米国に中国は4月2日報復関税を発動した。同時に
両国は水面下で交渉を進めている。仮に中国が大幅に譲歩すれば、トラン
プ氏は妥協するかもしれない。

過去には米国訪問でボーイングの航空機300機を買いつけ、米国の巨額貿
易赤字に関する不満を一挙に解消したこともある。その手の戦術に中国は
長けている。加えて、中国が責任をもって北朝鮮の核をコントロールす
る、北朝鮮に米国に届くミサイルは持たせないなどの条件を確約すれば、
トランプ氏が北朝鮮の核を認めてしまうこともあり得ると考えるべきだ。
日本にとっては本当の悪夢である。

だが、いまやトランプ氏の傍らには対北朝鮮強硬派のポンペオ国務長官と
ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官が控えている。彼らが、北朝
鮮の核放棄の曖昧さに憤るとき、北朝鮮はどう対応しようとするだろうか。

洪氏が語った。

「彼らはトランプ政権を恐れながらも、その足下を見ています。ロシア問
題で追い込まれ、秋の中間選挙で敗北しかねない。レームダック化すれば
強い政策は取れないと、正恩が考えていても不思議ではありません。正恩
は追い詰められて中国を頼った。彼にも余裕はない。時間を稼ぎながら、
トランプ政権の弱体化を待っている。そこまで走りきることを、今彼は考
えているのではないでしょうか」

「終身皇帝」への道筋をつけた習氏は時間をかけてトランプ政権の後退を
待つ可能性がある。

このような状況の中に、日本は置かれている。北朝鮮を追い詰め平和路線
に転換させたのは、安倍晋三首相が強く主張した「圧力路線」の結果であ
る。ここまではよいが、これから日本はどうするのか。

米国との協調関係を大事にしながらも地力をつけるしかない。世界情勢の
展開が見通せない今、日本が国として強くなることが何よりも大事だ。自
国を自力で守るという原点に戻る。その第一歩が、憲法改正である。
『週刊新潮』 2018年4月12日号 日本ルネッサンス 第798回


◆中国のビッグデータは反政府分子や

宮崎 正弘


平成30年(2018 年)4月12日(木曜日)
        通巻第5670号 

 中国のビッグデータは反政府分子やスパイの摘発ばかりではない
国内の金融取引の全てを掌握し、管理する邪悪ビッグブラザーの元締めだ

中国は従来の金融監督官庁を統合して「銀行保険監査管理委員会小組」を
立ち上げた。トップは劉?(副首相)である。中央銀行の従来の役目を取
り上げるのか、並立的な組織となるかは不明だが、その目的は単純明快である

2015 年の上海株式暴落を、中国政府は管理の不徹底によってシャドー・
バンキングならびに金融ユニット末端の新興組織(これも影の銀行の範疇
にはいる)が、高金利を謳って投資家から金をかき集め、それを信用取引
で4倍、10倍に梃子を効かせて株式市場に注入したからであるとした。

なぜなら株価が下落すれば投資家は証券会社から保証金の追い証を取られ
るが、おおくの投資家は借金して、ハイリターンを信じて投資したのであ
り、そのメカニズムさえ理解できずに、ひたすら株はあがるものという信
仰がもたらした熱狂的投機だった。

実態はと言えば、太子党や証券にすくう代理人等の空売り、それも巨額の
空売りがなされ市場の狼狽が次の下落を招いたからである。

上海株式市場から蒸発したカネは5兆ドル(当時のレートで500兆円)と
当局は算定している。株式は時価総額の合計から下落額を引けばそうなる
が、実際には、それだけの現金が消えたわけではない。5兆ドルというの
は時価総額のことである。

「けっきょく監督力が不足したのだ」というのが、中国政府の驚くべき安
易な総括で、再暴落を防ぐには、徹底した管理が必要という共産党独裁者
の狭窄な思考範囲が達した予防策である。

つまり最新のデータベースを使って、銀行間、銀行・証券間、銀行の地方
政府への融資ばかりか、証券と保険の迂回融資、影の銀行の実態を掌握す
るために個人の銀行口座の取引記録まで閲覧し、これらのデータから対策
を割り出すという、あくまでも共産党の人民管理方法の発送の延長線から
生まれてきた対策なのである。

「e租宝」とう新興のネット企業は、p2p(ネットでのカネの貸し借
り、当局には届け出だけで良かった)の大手である。[e租宝]に群がっ
た投資家がおよそ90万人もいて、ファンドライジングであつめたカネは
77億ドル。

魅力的な高利を謳って、多くのプロジェクトを提示し、薔薇色の将来の収
入を画面に分かりやすく描いて夢を売り、民衆のカネを集めたのだ。
ところが調査した結果、95 %のプロジェクトは胡散臭い、実態のないもの
だった(サウスチャイナモーニングポスト、4月11日)。

かくして中国のビッグデータは反政府分子やスパイの摘発に向けられるば
かりではなかった。国内の金融取引の全てを掌握し、管理する巨大なビッ
グブラザーの元締めとなるのだ。 

◆加齢疾病連発に悩まされた夏

石岡 荘十


今日書こう、明日こそはと思いながら、胸や背中を孫の手で掻くのに忙し
くて今日に至ってしまった。何の話か。すでに畏友毛馬一三氏が本誌で報
告しているように帯状疱疹“事件”の経緯についてである。

夏は、典型的な加齢疾病といわれる病につぎつぎと襲われ、悪戦苦闘した
3ヶ月だった。この間、私を襲ったのは帯状疱疹。発症から3ヶ月、やっと
終息にこぎつけたと思ったら今度は、加齢黄班変性といわれる眼球の疾病
である。これについては今なお加療の真っ只中であり、別稿で報告したい。

帯状疱疹の兆しが現れたのは6月の末のことだった。「夏バテ」というの
は夏だけの症状だと思われがちだが、気候の変化が激しい梅雨時や初夏に
も起こりやすい。

気温の乱高下に老体がついていけず、何もする気がしない。全身がともか
くけだるい。にもかかわらず梅雨明けの7月、以前からの約束もあって、
猛暑の中、秩父盆地のど真ん中にあるゴルフ場に出陣。疲労困憊、這うよ
うにして帰宅した。完全に体力を消耗していた。これが祟った。

思い返すと、その数日前すでに左胸の皮膚に違和感があり肋骨のあたりに
ピリピリ感があった。間もなく胸から左肩甲骨下にかけて赤い斑点がぽつ
ぽつ。ゴルフの後から左側の神経に沿って激痛が走るようになった。

にもかかわらず、まだ帯状疱疹とは気がつかず、市販のかゆみ止め軟膏
(レスタミン)を塗ったり、サロンパスの湿布を患部に張ったりして凌ご
うと試みていた。無知は恐ろしい。

そうこうしているうちに、赤い斑点は水ぶくれとなり、夜はベッドの上で
転々。背中を孫の手で掻きまくったものだから水ぶくれが破れ、かさぶた
へと変わったがかゆみと痛みは治まらなかった。

遂にたまらず、行きつけの病院の皮膚科に駆け込んだのはゴルフから3週
間を過ぎていた。

「帯状疱疹です。ずいぶん我慢強い方ですねぇ。もうかさぶたになり始め
ていますから、ペインクリニックに行きなさい」という。

帯状疱疹は、幼児に経験した水ぼうそうのウイルスが原因だ。ウイルスは
長い間体内の神経節に潜んでいて、加齢(50歳代〜70歳代)やストレス、
過労などが引き金となってウイルスに対する免疫力が低下すると、潜んで
いたウイルスが再び活動を始める。ウイルスは神経を伝わって皮膚に達
し、帯状疱疹として発症するとされている。

東京女子医大の統計によると、発疹する部位は、一番多いのが私のケー
ス。上肢〜胸背部(31.2%)、次いで腹背部(19.6%)、そして怖いのは
頭部〜顔面(17.6%)などとなっており、高校の友人が右顔面に発症。何
年か前のことだが、今でも顔面の筋肉がこわばっている。

最悪、失明をしたケースも報告されている。頚部〜上肢にも発症する。い
ずれの場合も体の左右どちらか一方に現れるのが特徴だ。

発症してすぐ気づき、すぐ適切な治療を受けた場合でも3週間は皮膚の痛
みや痒みが続く。痛みがやや治まってからも神経の痛みは容易に治まらな
い。数年間、痛みが消えなかったと言う症例もある厄介な加齢疾病である。

まして、私のケースは、初期治療のタイミングを逸した。その祟りで、い
まだにときどき、肋間や背中にピリピリと痛みが走る。

さて治療法である。皮膚科では坑ヘルペスウイルス薬を処方する。ウイル
スの増殖を抑える飲み薬で初期の痛みや痒みを抑える効果があるが、私は
そのチャンスを逃し、我慢強く無為に苦しんだ。

ペインクリニックでは、飲み薬と塗り薬を処方される。

【飲み薬】、

・鎮痛剤リリカプセル:今年4月、保健が適用されることとなった帯状疱
疹の最新特効薬だ。

・セレコックス:リリカカプセルが効かない場合に飲む頓服錠剤。炎症に
よる腫れや痛みを和らげる。
・メチコバール:末梢神経のしびれ、麻痺、痛みを改善する。

【塗り薬】、

・強力レスタミンコーチゾンコーワ(軟膏)

ペインクリニックでの治療5週間。月初旬にくすりの処方が終わった。発
症から3ヶ月の闘病であった。この間体力をつけようと金に糸目をつけず
美食に走った結果、太ってしまった。

毛馬一三氏が先日レポートしたとおりで、初動がこの病気治療の決め手で
ある。他山の石とされたい。




2018年04月12日

◆マレーシアも「中国の罠」に陥落したのか?

宮崎 正弘


平成30年(2018年)4月11日(水曜日)
        通巻第5668号 

 マレーシアも「中国の罠」に陥落したのか?
  ナジブ首相が中国主導のプロジェクトにのめり込む面妖な背景

マレーシア総選挙は5月9日と決定した。

前回の選挙で大幅に得票を減らした与党連合「UMNO」はマレー人主体
だが、華僑の政党、インド系も加わっている。得票率は47%、しかし議席
は60%を確保した。

次の選挙では野党への期待が高まっており、事前の世論調査では与党敗北
の信号が灯っていた。

したがってラジブ首相率いる与党と野党連合の対決は大接戦なると見られ
ていたが、土壇場へ来て選挙区の区割り変更など、狡猾な手段でナジブ政
権は野党の票田を分裂させ、しかもマハティール元首相が主導する野党連
合「希望連合」からイスラム政党を離脱させるなどの分裂を策した上で、
活動停止処分とするなど悪質な妨害が目立つようになった。

ナジブは独立後2代目首相ラザクの息子であり、いってみればマレーシア
の「太子党」を代弁する利益集団のトップ、末端の国民からは好かれてい
ない。

マレーシア独立以後、はじめて政権交代、与党敗北色濃いという事前予測
が主流となった背景には「マレーシアも中国の経済植民地となるのか」と
いう未曾有の危機感があったからだ。

いかなる経緯があったか。

第一に中国の進める「一帯一路」プロジェクトにナジブ政権は或るスキャ
ンダルを境目に、突如、興奮するかのように乗り気となり、熱烈な協力者
となった。その理由は国家ファンド「1MDB」が抱えた巨額の不良債権
という闇のファクターが存在する。
 
2015年に発覚した1MDBの負債は1兆4000億円といわれ、しかも、その
うちの使途不明金850億円が、なんとナジブの個人口座に振り込まれて
いたという疑惑が取りざたされ、マレーシア政界を震撼させた。

この穴埋めにナジブ政権は中国の一帯一路に相乗りして、資金を穴埋めに
つかおうというのが中国への急傾斜の動機だとクアラランプールの情報筋
は言う。


▲なぜマレー半島の東海岸を縦断する鉄道が必要なのか

中国が提示するマレーシア関連のプロジェクトには東海岸の6600キロに敷
設する鉄道建設がある。しかもこの鉄道建設は中国企業が主導する。

長期的には雲南省昆明からラオス、カンボジア、タイを経てマレーシアを
通過し、シンガポールまでの長距離。

ところが東海岸鉄道は旅客が望み薄であり、既にバス路線が発達している
ため、マレーシアではなく、中国のための鉄道ではないかという不満が渦
巻く。
中国の軍事戦略では南シナ海のシーレーンが脅かされた場合のバックアッ
プ・ルートしてマラッカ海峡ルートを確保しておくという戦略があるからだ。

あたかも江戸幕府が東海道に対しての中仙道を重視したように、あるいは
日本軍参謀本部の東海道線の代替ルートとしての中央本線という位置づけ
と対比すれば理解できるだろう。

この鉄道に付随してクアンタン港の整備、マラッカ海峡の諸都市にある港
湾の整備、ボルネオ島北部の拠点=コタキナバルへの中国軍艦寄港など中
国の「海のシルクロート」に協力的なプロジェクトが並ぶ。

またマレーシアにおける中国企業の躍進も凄まじく、華為技術と中興通訊
(ZTE)の二社はマレーシア通信事業に大々的に参入した。

マレーシアの国民車として親しまれるプロトン社の49・9%の株式は中国
の吉利集団が購入した。

エドラ発電は中国廣核集団に売却し、バンダルマレー株の60%を中国中
鉄に売却するなど、旗艦産業も外国資本に売り渡すような政策は「売国
奴」だという野党側の批判に発展した。

しかし、中国の投資はますます巨大化し、民間でも巨大投資はジョホール
バルの四つの島を埋め立てて建設する「フォレストシティ」である。これ
は中国不動産企業のトップを走る「碧佳園」がゼネコン&デベロッパーと
なって完成間近だ。現場の労働者は80%が中国から、残りをパキスタンな
どから連れてきた。

中国から6割、4割は地元の雇用という約束は反故にされた。

ナジブ政権は、フォレストシティ建設プロジェクトの契約に際して、例外
的に外国人の土地所有を認めた。

ここには70万人の中国人が移住するために、マハティール元首相は「ナジ
ブは国土を中国に売り渡した」と激しく攻撃し、ひろく国民の間にも、
「反中ナショナリズム」が燃えあがっていたのである。


▲近年になかった保革逆転の予測が二転三転

こうした状況でマレーシアの政治は「ナジブ政権 vs マハティール元
首相」という対決構造となり、マハティールが野党を結成し、野党連合を
組織して、選挙に出馬すると声明を出して、準備に入った。

与党敗北予測がメディアに目立つようになると、狼狽したナジブは、この
マハティール野党に解散命令を出し、(書類不備の難癖)、さらに特急作
業で「反フェイクニュース法」を制定し、事実上、ナジブ政権批判を封じ
込めた。

そのうえで、222の小選挙区の区割りを与党有利に再編し直し、ナジブ首
相は、なりふり構わずに議会解散を強行した。マレーシアの選挙法では議
会解散から60日以内に総選挙がおこなわれるという規定があり、4月10
日になってマレーシア選挙管理委員会は5月9日を投票日と決めた。

この与党の電光石火の早業によって、イスラム政党が野党連合から離脱、
マハティールは無所属でも立候補すると記者会見した。

世論は圧倒的に反ナジブだが、政権批判のメディア二紙が休刊を命じら
れ、他方ではナジブ首相が選挙目当てのバラマキ、駆け込み施策をおこ
なって人気の回復を図った。大票田を固めるために公務員、年金受給者へ
の現金支給。最低賃金の上乗せ、燃料価格安定のための補助金支給、そし
て選挙公約では消費税廃止も謳っている。


マレーシアは伝統的な多民族国家であり、マレー系に華僑、インド系の3
大民族構成というのはあまりに単純な図式である。

「華僑」と一口にいっても、多くは福建省、広東省出身であり、ついで潮
州出身が多く、彼らには北京語は通じない。

マレーシア華僑を代表するのはシャングリラ・ホテルの経営者ロバート・
クォク(郭?年)が有名だろう。郭は香港の老舗「サウスチャイナ・モー
ニングポスト」を買収して論調を北京寄りとしてから、マードックに売り
抜け、さらにマードックはアリババの馬雲に譲渡した経緯がある。

この多重的な華僑の列に「海峡華僑」という「倭寇」の末裔とされる人々
がいて、英語しか喋れないため「英語系華僑」とも言われる。シンガポー
ルのリークアンユー前首相も、この海峡華僑の流れをくむ。(倭寇は前期
倭寇に日本人もいたが、後期倭寇はシナ人の海賊だった)。

インド系マレーシア人はタミル語族であり、インド・アーリア系列ではな
く、ベンガル流域から流れ込んだ。したがって言語もタミル語である。 
 ともかく上記のような複雑な、多民族国家の未来が次の選挙にかかって
いる。

◆読み取りづらい朝鮮半島情勢の行方

櫻井よしこ


「読み取りづらい朝鮮半島情勢の行方 正恩氏は圧力で動くと忘れるべき
でない」

金正恩朝鮮労働党委員長の電撃訪中は、拉致問題の報道にどの社よりも熱
心に力を入れてきた「産経新聞」のスクープだった。

大きく動いた朝鮮半島情勢の展開は読み取りにくい面もあるが、こんな時
こそ基本構造をおさえておきたい。

第一は日米が連携して維持した圧力路線が、狙いどおりの結果を生み出し
た点だ。各テレビ局の報道番組では、従来の日本政府主導の「圧力」路線
を否定し、対話路線を取るべきだとの解説やコメントが少なからずあった。

「朝日新聞」も29日の社説で、各国は対北朝鮮制裁の足並みを乱してはな
らないと指摘する一方で、「日本政府の出遅れ感は否めない。圧力一辺倒
に固執した結果ではあるが」と書いた。

だが、正恩氏の訪中と対話路線は日本が主張し、国際社会を動かして決定
し実行した国連の制裁措置、即ち圧力路線の結果である。対話は、圧力が
生み出した成果なのだ。北朝鮮の非核化と拉致問題解決まで、圧力を基盤
にした現路線の堅持が重要である。

第二は北朝鮮が言う「非核化」の意味をはっきりさせることだ。中朝両国
の「朝鮮半島の非核化」は、私たちが考えるそれとは根本的に異なる。

日本や米国の考える朝鮮半島の非核化は北朝鮮の核兵器、貯蔵する核物
質、それらの製造施設のすべてを解体することだ。一方北朝鮮の主張は、
自分たちの核は米国の核に対する自衛だというものだ。現在、韓国には米
軍の核兵器は配備されていないが、米韓同盟の下、米国が北朝鮮を核攻撃
する可能性もある。従って北朝鮮の核解体前に、在韓米軍基地をなくせと
言う。さらに米韓同盟も解消すべきだと主張する。要は韓国からの米軍追
い出しを狙っているのである。これは中国にとって願ってもないことであ
ろう。

こちら側としては、「朝鮮半島の非核化」において、北朝鮮の核に焦点を
絞ることだ。焦点を絞りきれなければ、北朝鮮に時間稼ぎをさせることに
なりかねない。

第三に、日本が置き去りにされ、孤立しかかっているとの見方は、日本に
とって何の益もないことを認識すべきだ。拉致問題解決も北朝鮮の非核化
もこちら側の一致団結が大きな力となる。とりわけ拉致問題解決には日本
国民の団結が大事である。拉致問題解決に最も熱心に取り組んできたのが
安倍晋三首相だ。首相は北朝鮮の核と拉致の両問題の解決を目指して、対
北圧力政策をトランプ米大統領に説いてきた。

トランプ氏はその助言を大いに取り入れた。だからこそ、文在寅韓国大統
領の特使がホワイトハウスを訪れ、そこで記者会見し、トランプ大統領が
米朝首脳会談に応ずると発表したまさにその時間帯に、安倍首相に電話を
かけて逐一報告している。

安倍首相も日本も、置き去りにされていない。わが国は有力な当事国とし
て北朝鮮問題で重要な役割を果たし続ける立場にある。そのことを国民が
確信して政府を支えることが、日本国の外交力強化の基盤であり、拉致問
題解決に至る道だと自覚したい。

「産経」は「『千年の宿敵』に屈服した正恩氏」の見出しを立てて、正恩
氏の中国での姿勢を報じた。中国中央テレビは中朝首脳会談で、正恩氏が
熱心に習近平国家主席の発言をメモにとる姿を報じた。

正恩氏は自分が話しているときに「メモをとらない」「拍手がゆるい」
「メガネを拭いていた」などの理由で部下を処刑してきた。その同じ人物
が必死で習氏の言葉をメモにとったのである。中国への完全な屈服だ。正
恩氏が恐れるのは現体制が崩壊させられ、自分の命が奪われることだ。そ
うしたことを、いざとなると実行しかねない米国の力を恐れた。米国から
守ってもらうために中国の力に頼った。大事なのは正恩氏を動かすのは圧
力だという事実を忘れないことである。

『週刊ダイヤモンド』 2018年4月7日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1226
 

◆今日一日をプラス思考で生きる

 眞鍋 峰松


最近になって、情報化社会がいよいよここまで進展してきたのか、と強く感じさせられる社会現象が多く見受けられるようになった。  

何よりも情報化の進展は、個人レベルの社会生活の中では、その人のアイデンティティの組織離れということに大いに関係してきているような気がする。
   
かって、サラリーマンが企業戦士として高度成長を支えてきた時代には、個よりも役割を優先する日本的意識はそれなりに機能してきた。だが、こうした肩書き優先社会では、退職や失業などにより組織を失うと、個人のアイデンティティも失われ、ヘタをすると人間としての存在価値そのものが奪われる結果となる。

ここにきて、一挙に増加傾向を示しつつある中高年男性の自殺や熟年離婚のなども、役割と人格を混同し社会や配偶者などと個として向き合うことが少なかったことの裏返しの現象の一つ、ということだろう。
   
情報化の進展とともに、個々人が容易に色々な情報に接し得る機会が多くなり、各人のライフスタイルも多様化しつつある現在では、かっての組織優先の人間観・人生観は個人にも社会へも大きい軋轢と落差をもたらす。 

個人にとって、従来の日本型の自意識のままでは、情報化、多様化している社会を生き抜くのは非常に難しい時代に直面しているのは確かだ。
   
そこで求められる生き方は、ということになると、やはり肩書き抜き、組織とは距離を置いた自己意識を持ち、長寿社会を迎えて多趣味を生かしながら生き抜いていくことだろう。 

そのためには、好奇心をいつまでも強く持ち、新しいものをどんどん受け入れ、それらを積極的に活用していこうという気構えを常に忘れないこと、これはつまり、進取の気性を持つということだ。 

この進取の気性こそ生きがいを見つける最大の武器の一つでもある。 

もう一つは、徒に明日を思い煩うな、ということ。 明日のことは明日のことで、今日思い煩うことはない。いずれにしても、座して待つのでなく、これぞと思った時には、すぐさま行動に移すぐらいの勇気と機敏さをいつまでも忘れないことだろう。 

ここで動いて明日はどうなるだろう、なんて思い悩んでしまったらどうだろう。 要は、明日を思い煩うことなく、今日一日をプラス思考でことに当たることが肝要、ということになろう。
 
もう一度少年のような冒険心と好奇心を持って、一日一日を過ごし、充電してゆくことが、花も実もある生き方につながるのではないか。 

シェークスピア風にいえば、退職後も自分に与えられた「劇場」の中で、しっかりと「主役」を演じることはとても楽しいことである。(完)

2018年04月11日

◆男らしさはどこへ行ったのか

加瀬 英明


夏季、冬季オリンピックが2年ごとに巡ってくるたびに、日の丸が何本あ
がるか、血涌き、肉躍る思いがする。

スポーツや、武道の領域で最高峰をきわめるためには、自分を相手に戦っ
て、努力しなければならないが、文弱の者には理解できないだろう。

韓国ピョンチャン大会で、日本が国として4つの金メダルを獲得した
が、3つが女性の活躍によるものだった。

個人では、5人の乙女に1人の男性によったから、5対1だった。

羽生結弦選手が金を勝ち取って、本当によかった! 羽生君、有難う!

女性ばかりが金を獲得して、もし男が1人もいなかったとしたら、女性
たちが大股で闊歩するのに出会うたびに、われわれ男は俯(うつむ)いて、
背中をまるめて、道を譲らねばならなかったところだ。

私はテレビで、5人の乙女の姿を見て、1300年の時空を超えて、大 伴旅
人(おおとものたびと)(665年〜731年)が『万葉集』のなかの 「松浦川
に遊ぶ」に、そこで会った乙女たちの「花の容双(かほなら)びな く、桃
の花を頬の上に発(ひら)く」と詠じているのを思った。

私は日本が天平時代に戻ったと、思った。

『万葉集』が編まれた天平の奈良時代には、日本は世界のなかで、男女
が対等だったか、女性が優っていた、唯一つの社会を形成していた。

『万葉集』のなかで、多くの男女が恋歌を交換しているが、男女が対等
でなければ、ありえないことだ。

平安時代でも、女性は男性に教養で劣らなかった。女性による平安時代
の文学作品は、多くが失われたにちがいないが、今日100点近くが存在 する。

同じ時代の世界をみれば、西洋、中東、中国、朝鮮とどこをとっても、
女性はほぼ全員が文盲で、男に従属していた。それに対して、日本の男は
やさしくて、繊細なのだ。

日本の最高神の天照大御神は、女神でいらっしゃる。西洋、中国、中東
の神話の最高神は、みな男性で絶対神だ。

 日本では祖国を母国といって、なぜか父国という表現がないが、英語で
はファーザーランド、ドイツ語ではファーターランドといい、フランス語
には父国(ラ・パトリ)しかない。
アメリカでは、昨年、高名なハリウッド映画界のプロデューサーのハー
ヴェイ・ワインスタイン氏が、多年にわたって多くの女優を弄(もてあそ)
んだことを、女性たちによって暴露されたことから始まって、与野党の連
邦議員にも及んで、全米にわたって女性による「ミー・ツウ」(私
も、#MeToo)運動となって、数千人、数万人による抗議デモが、毎日のよ
うに続いている。

西洋は、アメリカだけでなく、日本でひろく信じられているのと正反対
に、男尊女卑の社会だ。

とくに、アメリカは酷いものだ。2016年にハーバード大学では、報 告さ
れただけでも、27人の女子学生が男子学生によるレイプ被害にあ い、前
年卒業した女子学生の3人に1人の31%が、男子学生による性暴力を経験
している。

ヒラリー夫人が率いた民主党の選挙スローガンの1つが「女の戦い (ウォ
ア・オブ・ウィメン)」で、学園(キャンパス)をはじめとして、男性 の性
暴力を根滅しようというものだった。

西洋では女性に対するセクシャル・ハラスメント――性的な嫌がらせは、
日常茶飯事だ。ユダヤ・キリスト・イスラム教は同じ神を拝む宗教だが、
女性を蔑視している。

日本では、武士上位の江戸時代に入るまで、夫婦(めおと)は女男(めお
と)と書かれた。どうして、夫婦を「めおと」と発音することが、できる
ものか。

日本ではカーナビの指示の声も、交差点でスピーカーから流れる注意
も、女の声ときまっている。乳母車や、トラックのホロを「母衣(ほろ)」
と書くが、武士が首筋を守ってかけた鎖綱のことだ。女性への甘えが強い
のだ。日本では主な家屋は母屋、卒業校は母校だし、いまでも和船に女男
釘(めおとくぎ)が使われている。

私は安倍内閣の応援団だが、女性の“社会進出”を奨励する「一億総活躍
社会」に、首を傾げざるをえない。

専業主婦も家にあって、立派に活躍している。女性が家を守って、子育
てに当たることを、国が支援するべきである。少子化こそ、大きな国難だ。

北一輝といえば、青年将校が暴走した2・26事件に捲き込まれて処刑
された、政治思想家で、あの時代の傑出した申し子だった。 

『日本国家改造法案大綱』によって知られるが、次のように述べている。

「婦人は家庭の光にして人生の花なり。婦人が妻たり母たる労働のみと
ならば、夫たる労働者の品性を向上せしめ、次代の国民たる子女をますま
す優秀たらしめ、(略)特に社会的婦人の天地として、音楽美術文芸教育
学術等の広漠たる未墾地あり。(略)婦人が男子と等しき牛馬の労働に服
すべき者ならば天は彼(か)(女性)の心身を優美繊弱に作らず」

私は男性たちが牛馬のように、身を粉にして働いている会社労働に、女
性たちが競うようにして、加わるべきではないと思う。

それぞれの国の国民性は、2000年にわたって、雛型が変わらない。

日本は女性が強い国であってきた。男性が武に励むことによって、辛じ
て男女の均衡を保ってきた。もともと女性上位の社会であったために、男
たちは女性から男として認めてもらうために、凛々しく振る舞ってきた。
女が男に「男らしくしなさい」というのは、日本だけだ。

それなのに、アメリカが強要した憲法によって、武が否定されたため
に、男が腑抜けで、軟弱になってしまった。このままでは、国が滅びる。