2018年04月08日

◆リベラルが作る息苦しい社会

阿比留 瑠比


「腹黒くて、胡散(うさん)臭い」「抑圧的で、批判ばかりで、うっと
うしい」「自分たちだけが絶対的正義と考えていて傲慢」「口だけ達者な
連中で自分の非を認めない」「身勝手で利己的だから、自分の自由のため
なら他人の自由を平気で侵害する」「現実を無視してキレイごとばかりいう」

これらは常々、筆者が和式「リベラル」に対して痛感してきたことだっ
たが、米国でもそうなのかと目からうろこが落ちた。ギルバート氏はこう
も記す。

 「リベラルが『自由』とは真逆の、『全体主義的で息苦しい社会』を作
り出してしまったことについては、残念ながらアメリカは日本よりずっと
先に行っています」

 このまま日本も息苦しい社会になっていくのは、断固拒否したい。(産
経新聞論 説委員兼政治部編集委員)
【阿比留瑠比の極言御免】2018.4.5

◆ロシアはオバマ政策の失敗を奇貨として

宮崎 正弘


平成30年(2018年)4月5日(木曜日)参 通巻第5662号 

ロシアはオバマ政策の失敗を奇貨として、インドネシアに深く食い入った
  米国依存だったインドネシア空軍、いまやロシア戦闘機を大量配備

アジア諸国は、南シナ海へ中国海軍が進出している現実を目の前にし
て、さかんにバランス外交を展開している。

典型はフィリピンで、ドゥテルテ大統領はスカボロー礁を盗まれ、漁民が
悲鳴を挙げ、ハーグの國際仲裁裁判所に訴えて全面的に勝訴したにもかか
わらず、その判決を横に置いて俄に中国に近づき、経済的に裨益しようと
する道を選んだ。米国が不快感を示すのも当然だろう。

スタンス替えの代表例がインドネシアである。

歯車がずれたのは東チモール問題からだった。欧米と豪を加えての合唱
は、東チモールをインドネシアから引きちぎり、独立させることだった。
そのため独立運動の指導者らに唐突に「ノーベル平和賞」を授与し、国際
世論を盛り上げ、インドネシアを孤立させた。

東チモールはポルトガル、オランダが交互に占領して植民地化し、大東
亜戦争中は日本が一時占領した。第2次大戦後、ポルトガルとオランダが
植民地回復の動きを見せたが、インドネシア軍が作戦を敢行し、占領した。

スカルノ時代のインドネシアは容共路線でもあり、反共革命以前、つま
り1950年代、インドネシア軍はソ連の影響下にあって、戦闘機、戦車
の多くはソ連製だった。日本はガスと石油のためにスカルノを厚遇し、第
三夫人となったのは日本人女性だった。

1965年9月30日の「反共クーデター」とも言える政変のあと、ス ハルト
政権は32年間つづいた。

このスハルト時代、インドネシア空軍は米国一辺倒だった。戦闘機は全て
米国製でパイロットは米国で訓練を受け、アメリカ式の軍事訓練になれて
いた。練度も高く、士気は旺盛だった。

1991年、東チモールで暴動が発生し、当時インドネシア領だったの で、
軍が出動して武力鎮圧した。西側メディアはこれを「虐殺」とし、イ ン
ドネシア政府を激しく非難した。このため米国との関係が急激に冷却
し、以後、15年にわたって米国の兵器供与が途絶えた。

この状況をチャンスと捉えたのが、中国であり、ロシアである。

2005年、メガワティ政権になって米国はようやく軟化し、F16機 の供
与を再開したが、そのときまでにロシア製ミグ戦闘機が配備されてい
た。米露の戦闘機が共存したのだ。

戦闘機はシステムの整合性が重要であり、兵站、整備、部品調達とストッ
クなど時間との闘い。これが米国システムとロシア・システムの共存とな
ると、空軍の作戦に齟齬が生まれやすい。

 ▲ロシア戦闘機がインドネシア空軍の主力となるのか

しかるに、米国はインドネシアとの関係を円滑化できないうちに中国が
南シナ海を支配し、ベトナムにテコ入れして立て直しを図った。この間
に、するするとロシアがジャカルタとの関係を強化していた。

2018 年にロシアはスホイ35 を11機、従来のスホイ27,スホイ 30の列
に加えて供与することが決まり、合計11億ドルの支払いはイン ドネシ
ア産パームオイル、ゴムなど、つまりバーター貿易での決済とな る。決
済手段としてはロシアに不利なことは明らかだが、プーチンの狙い は稼
ぎではなく、影響力拡大に置かれている。

スホイはエンジンの耐久年度がF16の半分しかないけれども、インド
ネシアのような広い空域をカバ−するには航続距離の長さ(スホイは 1500
キロ。米国戦と機の三倍)で優位に立つとされる。

インドネシア海軍、海兵隊はこのほかにロシア製の機関砲、対鑑ミサイ
ルならびに地対空ミサイル、潜水艦攻撃用の魚雷などを購入した。

こうした急速なロシア兵器体系化を恐れる米国は、懸念を強めたが、すで
にロシア艦隊がインドネシアの港にも寄港している。バリ島へのロシア人
ツアーは年間7万人に達している。

インドネシア陸軍は米国製AH64E攻撃ヘリを保有するが、ロシアは
ミルハインド17の飛行小隊ならびにミルハインド35攻撃ヘリを供与す
る。長距離爆撃に加え、インドネシアの北側の島にロシア宇宙船打ち上げ
基地建設の打診も展開中だという(アジアタイムズ、3月31日)。
     
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
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 日本人はなぜ、一神教を信じなかったのか
  キリスト教の暗部を一条の光りが照らしだした

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奥山篤信「キリスト教というカルト」(春吉書房)
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副題が「信者になれない、これだけの理由」とあって、なぜこの宗教を
信じられないかをひらたく語る。

 信長がキリスト教の宣教師を保護し、布教を認めた背景を理解するに
は、当時の政治学的な状況を勘案しなければならない。信長の行く手を阻
んだのは比叡であり、雑賀であり、しかも寺社勢力は武装していた。
信長自身は法華経を信じていた。比叡の軍事力を殲滅するには新興宗教の
力が必要だったうえ、かれらがもたらした火縄銃という、新兵器の魅力も
大きかった。

秀吉が前期にキリスト教に寛大だったのは、信長の後継として、外国から
もたらされる文明の利器と、マニラを経由して入ってくる国際情勢の
ニュースだった。

しかし宣教師らを通じて得た情報とはキリスト教の布教 の裏で、日本の
美女を拉致し、売春婦として西欧に運んでいることであ り、また同時に
一神教の凶悪な侵略性だった。

切支丹伴天連の大名だった 高山右近は、領内の寺社仏閣を破壊する凶暴
性を示し、やがてキリスト教 徒が日本を侵略する牙を研いでいることを
しって追放に踏み切った。

家康はもともとが浄土宗の信者。一向一揆の反乱に手を焼いて、大樹寺に
助けられて以来、浄土真宗をいかに政治に取り入れるかに腐心し、同時に
家康はスペイン、ポルトガルとは異なった一派が勢力を拡げている事情を
ウィリアム・アダムスから知る。

キリスト教の布教を認めず、しかし貿易 のために英国には平戸を解放
し、オランダ人も通商だけに専念するとする 理由で長崎出島の活用を許
した。布教は御法度だったが、天草では反徳川 の不満分子が反乱を起こ
したため、これをようやくにして鎮圧し、以後は 「鎖国」として、キリ
ストを封じ込めたのである。

明治政府は、文明開化を鮮明にしてキリスト教の布教も許さざるを得なく
なったが、同時に防波堤が必要であり、国内のナショナリズムを高めるた
めに日本古来の神道の復活を奨励し、薩摩や水戸では過激な廃仏毀釈がお
きた。

かようにして宗教とは政治とが一体となれば、イランのような狂信的イス
ラム国家を産むように、政治と宗教は切り離すことが近代の政治のテーマ
となった。

本書は、キリスト教を研究するために還暦をすぎてから上智大学神学部に
学び、それでも飽きたらずにパリのカソリック学院に留学し、キリスト教
の原理を見極めようとした著者が、探求のはてに得た結論とは、この宗教
のもつ偽善と欺瞞、その残酷さという暗黒面だった。
           
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1712回】           
――「支那人の終局の目的は金をためることである」――廣島高師(1)
  『大陸修學旅行記』(廣島高等師範學校 大正3年)

         ▽
 内藤の『支那論』の刊行と同じ大正3(1914年)の7月19日に広島駅か
ら広島高等師範学校英語部生徒は大陸修学旅行に出発する。他学部生徒何
人かを加えた一行は、「上海・南京・滿洲・朝鮮の天地を突破すること3
千哩、8月8日、日獨の事漸く急を告げんとするに當りて無事歸校す」。

この『大陸修學旅行記』に「収むる所9篇、引率?官の書簡を除き、他は
悉く生徒の筆に成れるもの」である。

彼ら若者が中華民国建国当初の中国社会の姿をどのように捉えていた の
か。それを内藤などの見解と比較してみると、専門家と当時の国民の一
般的な考え方の違いが浮かび上がってくるようにも思える。

また既に読んだ『滿韓修學旅行記念録』(廣島高等師範學校 非賣品 明
治40年/【知道中国 1599回〜1608回】)と重ね合わせることで、同じ広
島高師生徒の目に映った中国社会の変化を知ることもできそうだ。なお、
後者の出発は8年前に当たる明治39(1906)年。日にちは偶然にも同じ7月
19日であった。

蛇足とは思うが、この8年の間に、我が国は明治から大正へ。一方の 中
国では清朝が崩壊し中華民国が建国され、さらに袁世凱打倒の第2革命
も瓦解している。第1次世界大戦は生徒らが広島駅を発って10日ほどが過
ぎ、上海から大連に向う洋上に在った7月28日に勃発している。

この戦争に連合国の一員として参戦した日本は、敵であるドイツが中国に
おいて権益拠点とした山東省(東洋艦隊基地)の攻略を果たす。やがて大
隈内閣による袁世凱政権への21カ条要求に繋がり、日中関係はいよいよ複
雑さを増すことになる。


さて肝腎の生徒による旅行日誌に移るが、先ずは「其の壹」から始めたい。

広島を発った船が下関、門司を経て上海に着いたのが22日午後。上海を
前にした洋上での第一声が、「?濁を流す揚子江の白波は早くから見えそ
めました、この美しき光景にこの豐かなる?の香に美しき國に、暴虐の手
を以て萬物を傷はんとする支那人は住んでゐるのである」である。
「暴虐 の手を以て萬物を傷はんとする支那人」とは、はたして教師を目
指した当 時の若者の一般的な認識だったのだろうか。激越な表現は、さ
らに続く。

「東亞の唯一の強大國である日本の後援を却けて無智傲慢にもこれを 悦
ばぬ、所詮彼が亡ぶべき國であると思はれた賤が伏屋も、宮殿も共に穢
はしいこの國の人は揚子江の濁水にいたまされて人とも思われぬその身
姿、浴せず梳らず、亡國の民はかくこそあるのである、崇高嘆美の自然の
中に生れたる憐れなる奴隷よ、かゝるいぶせき人のためにその麗し光を惜
しみ給はなかつた神こそ慈愛の限りではないか」というのだから、さすが
に言い過ぎではなかろうかとも思うが、これが当時の「東亞の唯一の強大
國である日本」の、しかも教師を目指す若者の見方だと、ひとまずは納得
しておきたい。

翌朝、ホテルの窓から街を眺め、「無數の支那人が徃來してゐる、4分の
3は裸體で、股引樣のものを腰につけてゐるばかりである」。

「果てしなく愚鈍にして汚はしい支那人は矢張日本人の比ではないのであ
る、この獨立自主の人にあらぬ、逸居の輩の國、家危くして兵なく、羊飼
は己の腕を以て羊を守らねばならぬ、遠かれ早かれ屬國の苦楚をなめなけ
ればならぬかと思われた」。

そして、「この怠惰なる國民の間を、英獨佛米の4國の人々の經營は着々
歩を状めて、上海の市街は全くこれら4國の人の勢力範囲圍にあるのだ」
と、上海の第一印象を綴る。

船中で一緒だった「支那人の一留學生」が口にした日本では万事に物 価
高だが「『女だけは安價い』と云った恥ずかしい言葉」を思いだし、そ
れが「上海でも遺憾なく實現せられてゐるそうで笑を賣り、またこれを買
う女を客とは日本人が一番多い」ことを知り、「支那人を放肆呼ばはりも
出來ないと思つた」とは、若者の掛け値なしの第一印象だろう。    
     
      
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読
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(読者の声1)下記のような重要論文があります。陣営に影響力の強い貴
誌でも是非紹介して下さい。

 「慰安婦問題に、日本政府が国連で徹底反論。朝日新聞の“捏造”など7
つの論点

【日刊SPA! 「江崎道朗のネットブリーフィング第34回」:2018年4月4日】
https://nikkan-spa.jp/1466361

◆杉田水脈衆院議員が3月28日、国会で画期的な質問

韓国やアメリカにおいて慰安婦像が次々と建立されるなど、外国問題化
している慰安婦問題だが、3月末、大きな進展があった。

もともとこの慰安婦問題は朝日新聞などが大々的に報じたことから韓国
との間で外交問題になり、平成5年8月4日、河野洋平官房長官(当時)が
いわゆる「河野談話」を発表した。この河野談話によって日本政府が朝日
新聞などの報道を追認した形になり、以後、日本の軍や官憲が戦前・戦
中、韓国・朝鮮の女性たちを「強制連行」し、慰安婦にしたと「拡大解
釈」されるようになった。

特に一部の英語メディアが、慰安婦を「性奴隷(sex slave)」と英訳 す
るようになったことから、日本は20万人以上の韓国・朝鮮の女性たちを
「強制連行」し、「性奴隷」にした人権侵害国家という汚名を着せられる
ようになった。

そうした内外の動向に危機感を抱いた多くの学者・ジャーナリストによっ
て、慰安婦問題の「真相」が次々に解明されてきた。こうした研究成果を
踏まえ、近年では、民間人有志が国連などに出かけ、汚名をそそごうとし
ている。

 こうした動きに呼応して安倍政権も平成28年2月16日、スイスのジュ
ネーブで開催された国連女子差別撤廃条約第7回及び第8回政府報告審査に
杉山晋輔外務審議官を派遣し、まとまった「見解」を公表したのだ。
 この見解は果たして日本政府の公式見解なのか。杉田水脈衆議院議員が
平成30年3月28日、衆議院外務委員会において質問したところ、政府(鯰
博行外務省大臣官房参事官)は「この発言は、日本政府の見解を述べたも
の」と答弁したのだ。

この答弁によって25年前の「河野談話」とその後の「解釈」は大きく見
直されることになった。

◆慰安婦問題に関する日本政府、7つの反論

「河野談話」とその「解釈」がどのように見直されるようになったの
か。杉山審議官の「見解」に沿って説明しよう。

第1に、日本政府としては懸命に調べたが、慰安婦の「強制連行」を立 証
する資料は見つかっていない。「強制連行があったとする証拠はない」
が、日本政府の正式な見解なのだ。

《日本政府は、日韓間で慰安婦問題が政治・外交問題化した1990年代初頭
以降、慰安婦問題に関する本格的な事実調査を行ったが、日本政府が発見
した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる「強制連行」を確認できるも
のはなかった。》

第2に、強制連行されたと言われるようになったのは、吉田清治氏の虚 偽
証言を朝日新聞が大々的に報じたことが影響しているが、その吉田証言
が捏造であったことは朝日新聞も認めている。

《「慰安婦が強制連行された」という見方が広く流布された原因は、1983
年、故人になった吉田清治氏が、「私の戦争犯罪」という本の中で、吉田
清治氏自らが、「日本軍の命令で、韓国の済州島において、大勢の女性狩
りをした」という虚偽の事実を捏造して発表したためである。

この本の内 容は、当時、大手の新聞社の一つである朝日新聞により、事
実であるかの ように大きく報道され、日本、韓国の世論のみならず、国
際社会にも、大 きな影響を与えた。

しかし、当該書物の内容は、後に、複数の研究者によ り、完全に想像の
産物であったことが既に証明されている。その証拠に朝 日新聞自身も、
2014年8月5日及び6日を含め、その後、9月にも、累次にわ たり記事を掲
載し、事実関係の誤りを認め、正式にこの点につき読者に謝 罪している。》

第3に、慰安婦は20万人と言われているが、その数字は「具体的な裏付 け
のない数字」である。

《また、「20万人」という数字も、具体的裏付けがない数字である。朝日
新聞は、2014年8月5日付けの記事で、「『女子挺身隊』とは戦時下の日本
内地や旧植民地の朝鮮・台湾で、女性を労働力として動員するために組織
された『女子勤労挺身隊』を指す。

(中略)目的は労働力の利用であり、 将兵の性の相手をさせられた慰安
婦とは別だ。」とした上で、「20万人」 との数字の基になったのは、通
常の戦時労働に動員された女子挺身隊と、 ここでいう慰安婦を誤って混
同したことにあると自ら認めている。》

第4に、「性奴隷」という表現は事実に反する。

《「性奴隷」という表現も事実に反するということをもう一度繰り返して
おきたい。書面の回答に添付した[平成28年12月28日の日韓]両外相の共
同発表の文書の中にも、「性奴隷」という言葉は1か所も見つからないの
も事実である。》

第5に、河野談話での「軍の関与」は、軍による強制連行という意味で は
ない。

《ここでいう「当時の軍の関与の下に」というのは、慰安所は当時の軍当
局の要請により設置されたものであること、慰安所の設置、管理及び慰安
婦の移送について日本軍の関与があったこと、慰安婦の募集については、
軍の要請を受けた業者がこれに当たったということは、従来から認めてい
ることである。》
 第6に、以上のような「見解」に基づいて平成28年12月28日、韓国政府
も日韓合意において慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決」されるこ
とを確認している。
《昨年12月28日、ソウルにて日韓外相会談が開催され、日韓外相間で本件
につき妥結に至り、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることが
確認された。同日後刻、日韓首脳電話会談が行われ、両首脳はこの合意に
至ったことを確認し、評価をした。》
 第7に、戦後補償について日本政府は賠償金を支払うなど誠実に対応し
てきており、国際条約などによって個人の請求権も含めすべて解決済みで
ある。
《先の大戦に関わる賠償並びに財産及び請求権の問題について(中略)誠
実に対応をしてきており、これらの条約等の当事国との間では、個人の請
求権の問題を含めて、法的に解決済みというのが、日本政府の一貫した立
場である。》
 25年前に発表された「河野談話」は朝日新聞を始めとするマスコミ、韓
国や中国、一部学者たちによって拡大解釈され、日本は「性奴隷国家」と
いうレッテルを貼られてきたわけだが、「それは間違いだ」と日本政府も
ようやく、まとまった形で反論したのだ。
 「河野談話」撤回まで踏み込まなかったことは不満だが、慰安婦強制連
行説や犠牲者20万人説、性奴隷説を全否定した「杉山審議官見解」こそ
「日本政府の公式見解だ」と大いに活用していきたいものである。
 杉田水脈衆院議員も指摘しているが、外務省はまずこの「見解」をもっ
と目立つように、外務省のホームページで紹介すべきだろう。また、歴史
教科書の記述なども、この「見解」に照らして吟味すべきだ。

◆日本政府がアメリカの慰安婦像裁判に「意見書」

 なお、この慰安婦問題について、これまで外務省や海外の日本大使館は
消極的な対応に終始してきた。
 だが、アメリカ・カリフォルニア州グレンデール市に設置された慰安婦
像に関する訴訟がアメリカ連邦最高裁判所に上告されたことを受けて、平
成29年2月22日、日本政府は、この裁判についての意見書を提出した。
 この意見書についても「今の政府の正式見解として考えていいのか」
と、杉田水脈衆院議員が質問したところ、鯰外務審議官は「ご指摘の通
り」と答弁している。
 日本政府は、慰安婦問題について外国で裁判になった場合は、それが民
間人による裁判であっても日本政府として意見書を出すなど、積極的に対
応することを明らかにしたのだ。
 日本政府もようやく反日プロバガンダに対し反論するようになったとい
うことだ。長年にわたる民間の地道な活動が日本政府を動かしたと言えよう。
 民意と新たな研究成果を踏まえ、政府が政策・見解を変更する、これこ
そ健全な民主主義のあり方だ。

◆今、憲法改正を潰すメディアの無責任

櫻井よしこ


3月25日の自民党大会で安倍晋三総裁(首相)は「憲法にしっかりと自衛
隊を明記し、違憲論争に終止符を打つ」よう呼びかけた。

党大会の前、メディアは自民党内の不協和音を強調し、地方幹部から抗議
の声やヤジが飛べば安倍首相は危機に陥ると報道した。

しかし、実際には財務省の文書書き換え問題などをめぐって首相の責任を
問う声はほとんどなく、首相演説に賛同の声が上がった。森友問題をダシ
にして安倍首相攻撃が目的であるかのような言説が横行している。だが、
それが具体的根拠に基づく非難であるとは到底思えない。

共産党、民進党、立憲民主党、自由党、希望の党、さらに社民党などの野
党議員らがこのところ大阪拘置所に勾留中の籠池泰典森友学園前理事長と
接見し、安倍昭恵氏との関係などについて問い、首相夫人の証人喚問など
を要求している。政治家や政党がいまなすべきことは、そんなことではな
いだろう。

政治家には国を守り国民を守るという最も重要な責務がある。その責務を
果たすために、まず、日本を取り巻く国際環境の厳しさを見よ。危機に目
醒め、現実的に対処せよ。先の自民党大会を通して問われていたことの本
質は、わが国の政治家や政党に、この危機の中で国と国民を守る気概はあ
るのかということだった。あるのであれば、憲法改正にまじめに取り組め
ということだ。

25日の党大会では自民党の憲法改正への本気度を示すバロメーターとし
て、改正素案が注目された。素案では➀自衛隊の明記➁緊急事態条項の設置
➂参院選における「合区」の解消➃教育の充実─の4項目が提案された。焦点
の9条は、現行の1項と2項を維持して、「9条の2」を設ける。9条の2で
は、「(9条の規定は)我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を
保つために必要な自衛の措置をとることを妨げ」ないとし、「そのための
実力組織として」「自衛隊を保持する」とした。議論の段階で提言された
「必要最小限度の(実力組織)」という文言は削除された。が、自衛隊は
9条2項の禁ずる「戦力」ではなく「実力組織」とされてしまった。

永遠なるものは国益だけ

右の素案は目指すべき理想の憲法や安全保障の在り方としては不十分だ。
しかし、眼下の厳しい国際情勢の中で理想を求め続けて、憲法改正に向け
て1ミリも動かないとしたら、それもまた無責任の極みである。その意味
で公明党は与党の一翼を担う政党として責任を深く自覚すべきだ。

野党の多くは憲法改正よりも、森友学園への国有地払い下げ問題をめぐる
財務省の文書書き換えの責任追及が先だと主張する。そのため、前述した
ように彼らは籠池氏の話を聞いて、安倍昭恵氏の介入があったかのような
主張をし、証人喚問を求めている。

一体、籠池氏の発言はどこまで信じられるのか。このような手法で印象操
作に走り、憲法改正の論議にも応じないのは、無責任の極みだ。国の根本
である憲法より眼前の政局を優先することは断じて慎むべきだ。

日本国周辺で起こりつつあるパワーバランスの変化は、これまでにない本
質的なものだ。トランプ大統領は国務長官にマイク・ポンペオ中央情報局
(CIA)長官を、国家安全保障問題担当大統領補佐官にジョン・ボルト
ン元国連大使を起用した。

北朝鮮政策で強硬路線へと軌道修正が図られる可能性を、この人事は示し
ている。斬首作戦を最も恐れている金正恩氏にとって相当な圧力であろ
う。米軍は4月1日から米韓合同軍事演習に入るが、それに合わせて大規模
な国外退避訓練を行うと発表した。これもまた金正恩氏の恐怖心を増幅し
ている可能性はあるだろう。

トランプ政権は経済問題でも強硬だ。3月22日、知的財産権侵害に関して
米通商法301条で600億ドル(約6.3兆円)規模の中国製品に関税をかける
と発表、翌日には安全保障を理由に鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動
した。日本も中国と同様に扱われるという。

安全保障を米国に頼る日本だが、その頼みの米国は安倍政権を突き放すか
のように関税をかける構えを見せた。国際関係においては友好や同盟関係
でさえも永遠であるわけではなく、永遠なるものは国益だけだということ
である。

軍事、経済双方におけるトランプ政権の強硬策で、米中関係は軍事、経済
両分野で緊張が高まると予想される。ただ、両国は表で対立しても必ずと
いってよい程、裏で交渉する。つまり関係の緊迫化はあり得るにしても、
二つの大国の動きは複層的で、時に驚くような展開となる。

中国政府を代弁する「環球時報」は3月9日、朝鮮半島の非核化と平和につ
いて、以下のように書いた。

◎朝鮮半島の非核化と平和は中国にとって南北朝鮮との関係より重要だ

◎中国は北朝鮮への強い影響力をすでに失った

◎中朝関係はいまや普通の2国間関係だ

米中連携はいつでもあり得る

北朝鮮への特別扱いはもはやないと強調しているのだが、こうも書いてい
る─北朝鮮が米国寄りになる心配などない。中国周辺諸国にそんな国はな
い。中国の存在は矮小化されていない。

中国は米国に歩み寄ろうとしているのだろうか。朝鮮半島は中国の影響下
にとどまるとの見方を示しつつ、中国は北朝鮮をめぐってアメリカと同一
歩調を取ることもあると示唆しているのではないか。米中が朝鮮半島をめ
ぐって合意する可能性を改めて想起させるものだ。

トランプ大統領は中国に大統領権限に基づく強硬政策、通商法301条を突
きつけはしたが、両国間では水面下の話し合いが進んでいる。

ムニューシン米財務長官は3月24日、習近平主席の経済政策を取り仕切る
劉鶴副首相に電話をした。トランプ大統領は、中国は対米貿易黒字を1000
億ドル(約10.5兆円)分減らすべきで、その手段として米国の車と半導体
の対中輸出を増やすべきことを希望しており、このようなことは水面下で
具体的に話し合われていると見るべきだ。

米中連携はいつでもあり得る。そのとき日本はどうするのか。安全保障面
でいまのままでは、日本が自力で日本を守り通すことは不可能だ。国民を
守り日本国を守るのは、日本国でしかあり得ない。だからこそ日米安保体
制の強化も大事だが、日本の自力を強めることが求められる。そのための
憲法改正なのだ。

わが国は北朝鮮の危機、中国の膨張、米国の変化に直面しているのであ
る。わが国の安全を「平和を愛する」国際社会の「公正と信義」に縋(す
が)り続けて70年。一国平和主義の気概なき在り様を変える歴史的使命を
果たすのが、責任ある政治家、政党、メディアの役割だ。
『週刊新潮』 2018年4月5日号 日本ルネッサンス 第797回

◆古寺旧跡巡礼「当麻寺」 A

石田 岳彦


当麻寺は、境内の南側に2つの三重塔があり、その北側に金堂、更にその北側に講堂があるという、薬師寺と同じ伽藍の配置ですが、スペースが足りなかったのか、敷地の南側は丘になっていて、2つの塔は斜面を削り取って造成された高台に建てられています。

しかも、金堂と講堂の西側に本堂が東向きに建っていて(講堂と金堂は南向き)、大門(正門)が南ではなく、東側にあり(金堂ではなく、本堂に合わせているようです。)、更に金堂と東西の塔の間に2つのお坊が割り込み、西塔と東塔の間にもやはりお坊が建てられるなど、平地に整然と建物が並んでいる薬師寺に比べて、かなりのカオス状態です。

そこに見えている2つの三重塔に境内案内図で通路を確認しながらでないと辿り着けないというのですから、何時か、何処かで、何かを間違えてしまったに違いありません。

 金堂とはその寺のご本尊となる仏像がまつられているお堂で、本堂とはその寺の中心的なお堂をいいます。講堂は仏法についての講話を聴くための場所となるお堂です。

 古代からの寺院の場合、法隆寺、東大寺、興福寺、薬師寺、唐招提寺等のように、金堂はあっても、本堂とはされていない(つまり、その寺院に「本堂」と呼ばれる建物がない)ことが多いようです。仏舎利をまつった塔が伽藍の中心という考えが強かったためでしょうか。

 他方、比較的新しい時代のお寺では、金堂=本堂で、単に「本堂」と呼ぶことが多く、いずれにしても、金堂とは別に本堂があるという当麻寺のようなお寺は珍しいです(ざっと調べた範囲では、有名な寺院だと、他に室生寺くらいです)。

 もともと当麻寺は、聖徳太子の異母弟の麻呂古王(日本書紀によると当麻氏の祖とされています)が開いた寺を、当麻国見(たいまのくにみ)が現在の地に移したとされる(あくまでも寺伝で、実際のところはよく分かっていないようです)、金堂を中心とするお寺でした。

 しかし、後世に中将姫伝説が有名になってしまい、もとから存在した金堂とは別に、中将姫お手製の曼荼羅をまつったお堂(曼荼羅堂)が「本堂」に昇格してしまったため、「金堂」と「本堂」が並存するという珍しい状態になったようです。

本堂にある受付にいって、本堂、金堂、講堂の拝観共通券を買います。国宝の本堂は瓦葺で、寄棟造(屋根の形状で、棟から4方向に傾斜する屋根面を持つもの)、平入り(床が長方形の建物で、広い辺の側に入り口があることをいいます)と、仏教寺院の本堂としては、オーソドックスな形をしています。

上記のように中将姫の織った曼荼羅をまつるお堂で、奈良時代末から平安時代初期に建てられたものが、平安時代末期に改造されて現在の姿になったということです。

 本堂の中央に立派な須弥檀(しゅみだん)があり、その上にやたらとでかい厨子が載っています。奈良時代末から平安時代の初期に作られたものといわれているそうです。

 厨子の中に飾られている曼荼羅(約4m×4mというでかさです。厨子がでかくなるのも当然です)は、まさしく中将姫により織られた伝説の曼荼羅・・・ではなく、残念ながら、室町時代に作られた複本ですが、それでもかなりの古さを感じさせます。というか、相当に傷んでいます。

ちなみにオリジナルは更に傷みが激しいらしく、原則として非公開になっていて、私もいまだに実物にお目にかかったことがありません。オリジナルの写真を見ましたが、思わず「傷み」を「悼み」と誤植したくなるくらい、相当に傷んでいます。

 阿弥陀様が中央に座っていて、その周囲を多くの菩薩が囲み、後方に描かれた横長の建物は平等院鳳凰堂のモデルになったということですが、退色に加え、曼荼羅の上に金網が張られているので、細かな部分までは分かりません。

ちなみに厨子の蓋(現在残っているのは鎌倉時代に作られた後補のものですが)は取り外されていて、時々、奈良国立博物館に展示されています。黒漆の地に金蒔絵というシンプルながら豪華な一品です。

 厨子の右側には中将姫の念持仏と言われる十一面観音像がまつられており、弘仁時代(平安前期。810年−823年)の作といわれています。

「奈良時代に亡くなったお姫様が、何故、平安時代に作られた観音様を拝めたのだろう?」という素朴な疑問は忘れて、素直な心でお参りしましょう。歴史考証というものは、少なからずロマンと対立するものです。(つづく)  <弁護士>                  

2018年04月07日

◆中国新国防相の魏鳳和が訪ロ

宮崎 正弘


平成30年(2018ん年)4月5日(木曜日)弐 通巻第5661号 

中国新国防相の魏鳳和が訪ロ 中露国防相会談をこなしていた
  バルト海共同軍事演習につづき、近く南シナ海でも中露合同演習か

「これは新冷戦なのか」と『フォーリン・アフェアーズ』(電子版、3月
27日)が問題の深刻さを指摘している。

4月3日、中国の新国防大臣に就任した魏鳳和は、初の外国訪問にモスク
ワを選んだ。アメリカへの当てつけである。

中国は、英国でのロシア二重スパイへの毒殺事件を端に、ロシア人外交官
がスパイ容疑だとして欧米諸国で150名も国外追放になったことに対し
「ロシア側の抗議はもっともであり、理解できる」と反欧米の立場を取る。

中国のリップサービスを受けて、ロシアは米中貿易摩擦で、米国の農作物
が中国へ輸出できなくなるという見通しのもと、「いつでもロシアの農作
物を中国に輸出する」と言い出した。

ロシアの言い分では、NATOの東欧への「進出」が嘗てのワルシャワ条
約機構加盟国への「侵略」であるとし、ロシアは、「NATOはレッドラ
インを超えた」とする。


穏やかな言い分ではないが、この程度ならまだ言葉の戦争、ところが、ス
パイ容疑で、欧州勢と米国が束になってロシア外交官を大量に国外追放す
るに及んで、言葉の戦争から、熱い戦争の一歩手前まで状況は悪化した。

西側はロシアの軍拡やクリミア併呑、ウクライナ内戦への介入に不快感を
露わにしてきた。とくにオバマ政権末期には「ロシアは軍事大国に復活し
ている」という認識に改め、反ロシア色と強めてきたため、ロシアとの宥
和を図るトランプに対して「ロシアゲート」というフェイク工作を仕掛けた。

この動きに対して、圧倒的得票で大統領三選を果たしたプーチンはロシア
の軍拡の合法性を訴えた。まさにNATO vs ロシアの対決は、予期
せぬ迅速さで険悪化した。

プーチンは「証拠も確定しないのにNATO諸国がロシア人外交官を大量
に追放したこと」を激しく非難した。

4月3日、アンカラへ飛んで式典に参加したプーチンはトルコへの原子力
発電所建設(総工費2兆1000億円)に協力するとし、NATO加盟国であ
るトルコとの親密さを見せつけた。

そればかりか、NATOがもっとも警戒してきたミサイルに関しても、西
側の懸念に挑発するかのように、ロシアはトルコへのS400ミサイル供
与を前倒しにするとした。

 
ソ連の崩壊以後、東側に所属してきた旧ワルシャワ条約加盟国のなかで、
まっさきにバルト三国が、そしてポーランド、チェコ、スロバキア、ハン
ガリーがNATOに加わり、ブルガリア、ルーマニアにはNATOの前線
部隊が配備されるという「逆ドミノ現象」を引き起こす。孤立無援だった
アルバニアは親中派のスタンスをかなぐり捨ててNATOに馳せ参じ、旧
ユーゴスラビアでもセルビア、ボスニア&ヘルツェゴビナ、マケドニアを
除き、NATOへと急傾斜した。

コソボ独立はロシアと中国が認めていない。しかしNATOはコソボの治
安回復の任についており、相当数が駐留している。事実上のNATO傘下
である(筆者がコソボを取材した折もイタリア兵士がNATO軍として世
界遺産の境界などに駐屯していた)。


 ▲流れは変わっている

このタイミングで米国のトランプ大統領はシリアからの撤退を宣言、つま
り今後のシリア統治はロシアにおまかせ、という立場へ後退した(もっと
もペンタゴンはすぐには撤退しないと言明している)。

 同じ日(4月3日)にバルト3国首脳とトランプ大統領はホワイトハウ
スで会合をもち、バルト3国との共同軍事演習を2018年度内におこなうこ
と、また一億ドル相当の弾薬をバルト3国に供与することなどを決めた。

年初にも米国はバルト3国へ4000名の増派をきめたばかりだった。ロシア
にとって、これほど不愉快な事態はなく、大国の矜持、ロシアの名誉を高
らかに回復するとナショナリズムに訴えてきたプーチンとしては、なにか
しら失地回復の機会を窺ってきた。
 
歴史のアイロニーとは一つの衝動的事件(たとえばソ連崩壊)が起きると
動きが逆へ方向転換し、こんどは、その反動が次のアクションを予期せぬ
方向へ導く。つまり旧東欧諸国が、ロシアの軍事力を恐れるために
NATOへ加わり、そのことを不愉快としたロシアが軍備を拡充し、また
その不安が旧東欧諸国に増大するので、NATOが軍備を強化する。欧米
は、NATOの性格変更が旧東欧諸国にひきづられて起きている経過を軽
視し、徒に反ロシアのスタンスへ舞い戻った。


▲冷戦崩壊から米国の一極支配、そしてまた新冷戦へ

こうした状況をさらに複雑にしたのが米中貿易戦争の開始だった。

中国はロシアに再度の急接近を試みて、国防大臣に就任したばかりの魏鳳
和をモスクワへ送り、中露蜜月のジェスチャーを演じさせた。

魏鳳和は軍人の多い山東省出身で、戦略ミサイル軍司令(旧「第2砲
兵」。軍事委員会直属の組織に改革された)だった。

このため現代のハイテク兵器に明るく、ミサイル開発でも貢献し、第18回
党大会から中央軍事委員会のメンバーとなった。

全人代で国務委員を兼務する。肩書きは上将(大将)。常万全前国防相も
国務委員を兼ねた。言うまでもなく中国における国務委員は閣僚級であ
り、外交畑では、楊潔チと王毅が国務委員。王は外相も兼ねる。

冷戦崩壊から米国の一極支配は短期に終わり、いままた新冷戦へ。この迅
速なる変化の流れにあって、基本的な構造が「欧米+中国 vs 旧ソ
連」から「欧米+旧東欧 vs ロシア+中国」と図式になったことである。
      
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
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 大東亜戦線は日本の自衛戦争だったことは明らか。だが
  占領ボケと平和のぬるま湯のなかで、日本は大事なことを喪失した

  ♪
落合道夫『黒幕はスターリン』(ハート出版)
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大東亜戦争がなぜ敗北に到ったのかを、本書ではスターリンの国際戦略か
ら分析し、日本の自衛戦争であったことを明らかにしている。

支那事変は独ソ戦を控えたスターリンが蒋介石を騙してやらせた対日代理
戦争であり、日米戦争はスターリンがルーズベルトの満洲進出欲を利用し
て、ハルノート原案を提供するなどして対日戦争をそそのかしたものだ。
 こう主張する落合氏は、本書の中で戦後史を、「起承転結」風に論を展
開して4期に分けた。

すなわち、「占領破壊期」、「被害抵抗期」、「冷戦講和期」、そして
「盗まれた独立と今」の四期だ。

日本は主権を破壊された。

「盗まれた独立」とは憲法をはじめ占領体制が居座っていることである。
今後の日本人の対応は民族の生態を支える国家基本政策を回復することで
ある。すなわち、天皇崇敬、先祖崇拝、国民国防、家制度、教育勅語であ
ると主張する。

本書には歴史文献からの豊富な引用がなされており、たとえば、戦後ラバ
ウルで処刑された岸良作軍曹の辞世と遺言が挿入されている。

「白壁(死刑房)の窓に眺むる大空に千切れ白雲北(日本)に流るる」私
としては最善を尽くしてきた心算でおります。何時の日か、裁判の真相が
世の人々に知られることを確信しております。どうか皆さまの減刑を祈り
ます。お世話になりました」

自動車修理工場の責任者は雇用していた印度人のマラリヤ病死を殺人とさ
れて死刑など、貴重な歴史資料の紹介が続いている。

 謀略に弱い日本人、これほど痛めつけられてもまだ自衛力を保持せず、
暴力に対抗できる自前の力がない。スターリンの亡霊による日本解体とい
う策略はいまも残存しているのである。

◆「拉致:朝鮮半島の闇、日本の闇」第15章

“シーチン”修一 2.0


【措置入院」精神病棟の日々(106)】3/22は雪、その後に雨が止んだの
で彼岸の墓参り。2週間ほど前に、新住職Nさんからわが街のことを教えて
欲しいと頼まれていたので、医学博士で郷土史家の沼尻幸吉先生の著作
「わが町周辺の伝説と史話を尋ねて」を貸しておいたのだが、Nさんから
とても喜ばれ、奥様も紹介してくれた。

Nさんは40歳前後、前住職と同様に企業勤めの経験があるのだろう、頭の
回転が速く言語障害の小生の話をすぐに理解してくれるので助かった。
ツーと言えばカーと返ってくるのでストレスにならないから大いに快適だ。

参拝の帰りにスーパーと銀行へも寄った。キャッシュで何億円もあったと
ころで物欲が無いから、明美ちゃん基金とか日本財団あたりへ寄付するの
が妥当だろう。相続で子孫がもめるのは嫌なものである。

そういう人に私はなりたい・・・なーんて思うようになったらいいなと思
うが、なまじ資産があるとずいぶんと悩ましいのではないか。街の金持ち
連中(年間の慶弔費500万円以上だと一人前なのだとか)を見ていると、
人が寄って来たら「金をせびられるのではないか」と不信感いっぱいで、
人間不信とか、その反作用として傲慢、尊大、横柄とかになりやすく、い
い人は余りいない感じがする。

これは、小生のただのヤッカミなのかどうか・・・小生はただの奇天烈
で、治療費はタダ同然の寄生虫、その上に精神科(印籠だね、これが見え
ぬか!)に通院(多分「自閉スペクトラム症」)しているから、罪を犯し
ても「心神耗弱/喪失で罪一等を減ずる」、さらに天国のような医療刑務
所行きだろうから、これは一種の特権階級だ。

(フランスで人肉を食べちゃった佐川君は無罪放免、座間の9人解体事件
も食べていれば死刑はまず免れるだろう。悪事にやさしいニッポン、チャ
チャチャ、アホ丸出しやで)

「罪一等を減ずる」、恥知らずでもさすがにこれは後ろめたい気分ではあ
る。だからいつも家族や国のために役立ちたいなあとは思っているが、も
う時間がないし・・・戒名は「只野吉甲斐」あたりか。

万年塀修理で36キロの板を持ち上げたら椎間板をかなり痛めたようで、大
人しく養生していればいいものを、多分「残り時間は少ないから、やり残
さんようにさっさと終活せいよ」という思い込みとか、あるいは電波が走
るのか、いささか狂気のごとく、多動児のごとく、片っ端から作業を進め
ていくようになってしまった。

まずは冬中、室内に取り込んだ50ほどの鉢植えを屋上に出して、素晴らし
い庭にした。鉢植え置き場は5メートル四方だから、大きな箱庭みたいな
感じ。室内にあるのは強い日射しを嫌う観葉植物だけで、部屋も模様替え
してすっかり、すっきり綺麗になった。

そうこうしているうちに桜が満開となり、子・孫と一緒に県立「東高根森
林公園」へ。家から徒歩で20分ほどなのだが、急勾配の坂があるので車で
連れて行ってもらった。10年ぶりかも知れず、よく手入れされており、以
前は鬱蒼とし、いささかジメジメしていた谷地は、まるで絵のような美し
さだった。

20〜30メートルのナラ、ケヤキ、クヌギ、ハンノキ、コブシ、ミズキ、サ
クラなどなど、新緑や花が陽光の中で春の訪れを喜んでいるようだった。

頂上の広くて平らな古代広場は弥生〜古墳時代にかけての竪穴住居跡で、
孫たちは子犬のようにはしゃぎ回り、♪「この木なんの木」のモンキー
ポッド(通称レインツリー。ワイキキのクイーンカピオラニ公園にもあ
る)のような、樹齢150〜200年の巨大なシラカシの木登りも楽しんでいた。

さらに歩を進めると市立「緑ヶ丘霊園」で、ここには樹齢100年ほどの桜
が300本ほどもあり、頂上からは横浜市も望める。昔は元旦に日の出をみ
んなで拝んだ場所だ。

森林公園もずーっと行きたいところだったので、娘たちには「もう思い残
すことはない」と言っておいた。4時間ほどの散策だったが、どうにか歩
けたのは良かった。

森林公園でGETした枯れ枝を持ち帰って屋上フェンスに取り付け、そこに
鉢植えを飾ったので、なんとなく英国風ガーデンになってきた感じがする。

屋上展望台の形は、元々が「1964東京五輪」の聖火台をイメージしていた
のだが、新しい材料があったので追加工事をしているうちに、円柱形に
なった。ここにプリズムみたいな分光反射板を取り付けたら「ゲージツ作
品」になり、街の人々が楽しんでくれるのじゃないかと思うのだが・・・

4歳女児の希望で小さな展望台も追加したが、彼女は冒険心が非常に旺盛
で、用水路に置かれた巨大な石をジャンプして渡るという、大人もしない
空恐ろしいことにチャレンジして、とりあえずは1トンの石にしがみつい
ていた。ヒヤヒヤもので、膝を怪我しても泣かなかったのは大したもので
ある。小生の突撃癖を引いているのではないか。将来はスキージャンプ、
スノボの選手にでもなりそうだ。翼をつけて空を滑空するウイングスーツ
に凝るかも知れない。
https://www.youtube.com/watch?v=SxjBTS5bf7Q

あれこれ作業療法に夢中になっていたものだから腰は悪くなる一方で、つ
いにベッドに寝るのも起きるのも激痛で難しくなってきた。腕力でどうに
か起きて床に立つまでに最低5分はかかり、晩年の母が這いつくばってト
イレへ必死で行っていたのもよく理解できた。

尿意から5分も我慢はできやしないから、先日は床にポタポタと粗相をし
てしまった。さすがにこれには「ちとまずいわな」と脳ミソをオンにして
「傾向と対策」を考え、ベッドをリクライニングにしたら、1分で立ち上
がれるようになった。

日々、「なるほど、老化とはこういうものか」と新たな発見があるが、発
見して納得したから、それで何かが前進するかというと、全然何も進まな
い。ただ笑うだけ。「この際は笑うしかねーよなー」てな感じ。「老兵は
死なず、ただ呼吸するだけ」なんて、どうも小生の性には合わんが、の
う、じゃあ、どう老いるのがいいかというと、何だか「それを考え続ける
のがあんたの道とか美学じゃないんかいな」と天の声が聞こえてくる感じ
がする。

さてさて、北朝鮮の金王朝(軍部+神輿の金北豚)は大スポンサーの上海
閥=江沢民派の復活に一縷の望みをかけていたが、「もう上海閥は潰滅
か、待っても期待できそうもない、この際だから習近平の軍門に下るしか
ない」と天の声が聞こえたのだろう、尻尾を巻き始めた。北の核は中共に
とっても邪魔だから、「北の非核化」で欧米、韓国、日本を納得させ、制
裁を緩める、ということになりそうではある。

ただ、非核化が完全に担保されるかどうかは怪しい、というか間違いなく
反故にされるだろう。

そうさせないためには、国連/日米韓豪印による信託統治で、10〜20年か
けて北を「普通の国」、すなわち資本主義市場経済の自由・民主・人権・
法治の国にしなければならない。その見本、(米国を核とする)連合国に
とっての成功例は日本なのだから、北の人民も軍部もエリート層も「Look
East、普通の国にしよう」と納得するのではないか。

北は噛みつき犬から、ミニ日本のような大人しい、軟弱な、新興国になる
かもしれない。

「日本はなくなり、その代わりに、無機質な、からっぽな、ニュートラル
な、中間色の、裕福な、抜け目のない、或る経済大国が極東の一角に残る
であろう・・・二十世紀は、勇敢な戦士だった日本人が卑屈な商人とな
り、卑屈なユダヤ人が勇敢な戦士になった世紀である」(三島由紀夫の最
後の言葉)

ミニ日本なら中共も西風の防風林として有効だと納得するだろう。韓国も
南北統一によるリスクを避けることができる。どうしても統一したいのな
ら20年後、30年後にすればいい。

日本にとってはまず拉致問題の解決が「北が取るべき始めの一歩」であ
る。前号に続き、ジャーナリスト・加藤昭氏「総連の責任を問う 金正日
の『日本人拉致指令書』全文公開!」から要約する。

<(北は拉致事件は「デッチアゲだ」などと否定してきたが)2002年9月
17日の日朝首脳会談を契機にその態度はガラリと変わる。金正日が初めて
日本人拉致と工作船の存在を認めたからだ。

(拉致は日本語教育とナリスマシのためだと金正日は言うが、金日成親子
は、米国のベトナム戦争敗退、韓国の朴正煕暗殺により)70年代半ばから
80年代前半にかけて「南を赤化統一するチャンス到来」と小躍りして本格
的な日本人拉致工作に着手した。拉致は重大な国家事業であった。元工作
員の証言によると朝鮮総連は相当数の拉致事件に関与した>(以上)

西郷翁曰く「外交に際しては『戦』の一字を忘れるな。この覚悟がなけれ
ば外交はただの商法会議所になってしまう」。毛沢東は「外交は血を流さ
ない戦争、戦争は血を流す外交だ」と言っていた。

そういう覚悟のある外交官や政治家は、残念ながら非常に少ない。日本の
外務省官僚は外交とは「高級ワインを飲んで楽しくおしゃべりするのがマ
ナー、国益なんて野暮なことは言いっこなし、対立とか戦争なんてとんで
もない」というのが戦後の伝統的な初期設定になっている。

小生は、それはわが国特有のものかと思っていたら、米国でも「国防総省
から見ると、国務省は軟弱なヘタレ」なのだそうだ。軍事部門はリアルを
常に見る、一方で国務省/外務省は相手の善意を見る、寄り添うから、毅
然とした交渉がなかなかできない、多くの先進国では宥和的、いわゆるリ
ベラル≒アカモドキ的である。戦争がなければすべてよし、という感じだ。

夏彦翁は「外交で話がつかなければ、昔は戦争で解決した。今は戦争がな
いから対立が長引く」と嘆息していた。

マキャベリは鴎外の紹介で日本でも名前は知られていたが、その内容とか
思想は「謀略的で珍奇、一種の奇妙奇天烈な奇書、悪書、まともなインテ
リが読むべき本ではない」と忌避されていたのだろう、一般的に普及し始
めたのは、クラウゼビッツの「戦争論」とか、地政学と同様にここ20、30
年ほど前からのような気がする。

マキャベリは14世紀に彼が身をもって知った政治、軍事の「リアル」を研
究し、君主=リーダーはいかにあるべきか、どう国家を動かすかなどにつ
いて、正・悪を越えて論じている。そのリアリズムは徹底しており、「兵
士の楽しみ、褒美として掠奪もさせていい」とか「時に悪事をせざるを得
なくなったときは電撃的にやるべきだ。あまりにも速いと人々の理解は追
いつかないで、成功を称賛する声に雷同するようになる」「評判の良い君
主より悪い君主の方が大事をなすことが多い」などなど。

リベラル≒アカモドキのようなインテリからすれば、直視できないような
生々しいリアルが書かれており、インテリからすれば自分自身が「脳内お
花畑のバカ」と存在、思想、価値観を全面否定されているようなものだか
ら、マキャベリを徹底的に無視するしかなかったのだろう。

北による拉致を多くの学者、政治家、マスコミは無視した。そこには共産
主義への親和性と、反日思想、国交正常化を優先すべきだという被害者へ
の冷淡=ご都合主義というリベラルの腐った悪習がうかがわれる。

小生はキチ〇イではあるけれど腐臭はしていないと自負している。発狂亭
“アイアンクロースープレックスホールド”雀庵の病棟日記から。

【2016/12/19】月曜、快晴。*(承前)自信喪失のリベラル≒アカモドキ
の逃避先は「自己批判=自虐=マゾ」なのだろう。「悪いのは日本だ、そ
れを正せない自分たち日本人は原罪を負っている、百万遍謝罪してもしき
れないほどの悪事をなしたのだから、血は血で償われるべきだ、もっと
もっと打って、殴って、蹴ってください」とばかりに地にひれ伏すのだ。

周囲の民族でタチが悪いのは半島人と支那人で、ほとんどがゴロツキ的な
サド。「よっしゃー! 恨み晴らさでおくものか」とマゾを叩きまくって
日々のうっぷん晴らし、ここに自虐妄想マゾと被害妄想サドの醜いコラボ
が成立し、束の間の心の安定を得るのだろう。いずれもリベラル発狂派、
病膏肓、「アンタがすっきりするんなら、うちは耐えて見せますぅ」。キ
モい、キモすぎるで。

しかし「バックミラーを見てばかりのながら運転」ではポケGOあるいはス
マホのように必ず事故る。彼らは邪教信者で、目が青く澄んじゃってい
る、信心に濁りはまったくない。関わるとろくなことにならないから、
A2/Ad(接近阻止/領域拒否)で対応するのが最善策だ。(つづく)2018/4/4


◆古寺旧跡巡礼 「当麻寺」 @

石田 岳彦



<私は大阪で弁護士をしています。大学生時代からの趣味で、社寺、名勝、旧跡から、明治以降のいわゆる近大遺産まで、九州から東北まで(そのうち北海道にも行きたいです)、「歴史的なもの」を見て回っています。今回「私の古寺旧跡巡礼」と題して綴ってみました>。
 
さて本題―。奈良県葛城市(旧当麻町)にある「当麻寺」というのは、不思議なお寺です。

国宝の仏像、曼荼羅、厨子、本堂、2基の三重塔、梵鐘、重要文化財多数を持っているという文化財の宝庫で、「古寺巡礼」、「日本の寺院100選」といった書籍、雑誌の特集があれば、必ず名前のあがるという古寺巡りや古文化財のファンの間では常識というか、知らない人はもぐり扱いされるという有名なお寺ですが、世間一般の知名度は高くないようです。

 おそらく、奈良、飛鳥、斑鳩という奈良県内のメジャーな観光地から離れたところにあるので、観光客が少ないことが原因でしょう。観光ガイドの扱いも微々たるものです。

もし、奈良市内にあれば、東大寺や興福寺は無理でも、薬師寺や唐招提寺なみにはメジャーになれたであろうという、ある意味とても不運なお寺といえます。

もっとも、奈良市内にあったならば、上記の文化財の少なからずが、戦火に巻き込まれて灰になった可能性もありますが。

ところで、当麻寺の最大の売り物(?)は、中将姫伝説です。

中将姫は、奈良時代の貴族のお姫様で、継母に度々、命を狙われるという苦難を乗り越え、阿弥陀如来の導きによって極楽浄土の光景を描いた曼荼羅を織り上げ、極楽浄土へ旅立ったとされる伝説上の人物です。

これが、「本当は怖いグリム童話」なら、シンデレラのように、継母の目を鳩がほじくったり、或いは、白雪姫のように、継母に焼けた鉄の靴を履かせたりといった感じのハッピーエンドになるところですが、そういう物騒な展開はありません。仏教説話ですから。

 継母がその後、地獄に落ちて、閻魔様に舌を抜かれるという因果応報的な後日談はあるかも知れません。仏教説話ですから。

近鉄南大阪線の当麻寺駅を出て、まっすぐ西を目指します。駅から出発してまも無く、右側路傍に当麻蹴速(たいまのけはや)の墓、とされる五輪塔があります。

 この蹴速は、垂仁天皇の時代の人で、天下最強を宣言して挑戦者を募っていたところ、垂仁天皇の命で、出雲からやってきた野見宿禰(のみのすくね)と相撲をとることになり、宿禰に蹴り殺された(当時の相撲は今よりもかなりバイオレンスなルールだったようですね。)という、色々な意味で「痛い」人です。

 もっとも、垂仁天皇(日本書紀等の記述によると紀元前1世紀から1世紀にかけて在位。卑弥呼よりも前です。)自体、実在が危ぶまれている状況ですので、この話も歴史というより、伝説の部類です。

 この蹴速と宿禰の対戦が、わが国の相撲の始まりとされているそうです。すぐ近くに相撲館という、相撲資料館まで建てられています。中将姫と当麻蹴速とおぼしき男女のかわいらしいキャラクターのイラストがポスターに載っていました。今、はやりのユルキャラというやつでしょうか。余計なお世話だと思いますが、かなり幸の薄そうなカップルです。

駅から歩いて15分ほどで大門に着きます。境内の東端に建っている楼門で、古寺にふさわしい風格です。大門を入ってすぐ、正面には鐘楼があります。国宝の梵鐘を「吊ってある」お堂です。

 「吊ってある」というのは、一見、梵鐘が吊られているように見えますが、実は下に台が設けられていて、梵鐘はその上に置かれているからです。以前にお寺の方から聞いた話では、十数年前まで当麻寺には鐘楼は存在せず、梵鐘もいずれかのお堂に置かれていたそうです。

 その後、鐘楼が再興され、それに合わせて梵鐘を鐘楼に吊るすことになったものの、いざ、吊るそうという段になって、龍頭(梵鐘を吊るすための上部にある輪状の突起)にひびがあるのが発見され、吊るすことができなくなってしまいました。

 にもかかわらず、「せっかく再建したのだから鐘楼に梵鐘を飾りたい」ということで、こうなったようです。観光ガイドにも載っていない、思いっきりどうでもよいトリビアといえます。(つづく)

<福岡県福岡市出身、福岡県立修猷館高等学校、京都大学法学部卒業
大阪弁護士会・弁護士>

◆健康百話 「認知症」には「散歩」が効果

                   向市 眞知


以前、住友病院神経内科の宇高不可思先生の「認知症」の講演を聴きに行きました。その時、「こんな症状があったら要注意!」という話から始まり、次の11の質問がありました。

1、同じことを何度も言ったり聞いたりする
2、ものの名前が出てこない
3、置き忘れやしまい忘れが目立つ
4、時間、日付、場所の感覚が不確かになった
5、病院からもらった薬の管理ができなくなった
6、以前はあった関心や興味が失われた
7、水道の蛇口やガス栓の閉め忘れが目立つ
8、財布を盗まれたといって騒ぐ
9、複雑なテレビドラマの内容が理解できない
10、計算のまちがいが多くなった
11、ささいなことで怒りっぽくなった

「これらがいくつかあったり、半年以上続いている時は専門病院へ行きましょう」といわれました。

私自身、同じことを言ったり、物の名前が出てこなかったり、置き忘れやささいな事で怒りっぽくなったなあと思い当たるフシがいくつもありました。専門診療の対象といわれてしまうと本当にショックです。

認知症というと周りの人に迷惑をかけてしまう問題行動がクローズアップしてその印象が強いのですが、新しいことが覚えられない記憶障害もそうです。また、やる気がおこらない意欲の低下もそうですし、ものごとを考える思考力や判断する力、そして手順よくし処理する実行力の低下も認知症の症状です。

認知症高齢者のかた自身の不安は、時間や場所がわからなくなったり、体験そのものを忘れていく中で暮らしているのですから、自分以外の外界のすべてが不安要因になってしまうのです。

ご本人は真剣に外界を理解しようとしているのですが、家族は「ボケ」「痴呆」ということばの印象から「認知症だからわからないだろう、理解できないだろう」と思い込んでいる例が多くみられます。
 
診察室でなんとご本人を目の前にして認知症高齢者の失態を平気でドクターに訴えたり、「母さんがボケてしまって」とはばかりもなく言ってしまったりします。

その瞬間にご本人はその家族に対してまた不安をつのらせてしまいます。また話を向けられたドクターも、ご本人を前にしてウンウンとうなづくべきか、ほんとうは困っているのです。うなづけば家族は安心しますが、ご本人はドクターへの信頼感をなくしてしまいます。

よく「まだらボケ」とか言いますが、「正気の時もあるからやっかいだ」と表現されるご家族もあります。しかしそれは逆で、やっかいと考えるのではなく正気の部分があるのならその正気の部分を生かして日常生活を維持するようにしむけてみませんか。
 
認知症があってもくりかえし続けている一定の日常生活はできるはずです。老年期以前の過去の生活を思い出させてあげると、高齢者は自分の価値を再発見し、意欲も湧いてくるとききました。

高齢者にとって脳機能の低下だけではなく、視覚や聴覚、味覚や嗅覚などの感覚もおとろえてきていることを理解してあげてください。すべてを「認知症」の一言でかたづけてしまわないで下さい。見えやすくする、聞こえやすくするというような場面の工夫で問題行動が小さくなることもあります。
 
「認知症だからわからないだろう」と思い込むのは大まちがいです。「言ってもしかたない」と決めつけるのは悪循環です。認知症の方の感じる外界への不安を考えると、情報が遮断されると余計に不安が大きくなります。

どしどし情報を与えることが不安の軽減につながります。そのために外出しましょう。認知症には散歩の効果があります。外界の空気は聴覚、視覚、嗅覚への刺激になり、脳の活性化につながります。

                    医療ソーシャルワーカー

2018年04月06日

◆少子化によって国を滅してはならない

加瀬 英明


日本で少子化が進んでいる。この国が開闢して以来のことであろう。

私たちが直面する大きな国難の1つだと、呼ぶべきものだ。

今回は、最近、私が感動したことを取り上げたい。

少子化に歯止めをかけるために、2年前に警視庁、自衛隊、消防庁などの
幹部のOBたちが立ち上って、「一般社団法人日本官婚推進協会」を設立
して、男性公務員を対象として、身元が確かな女性との縁結びの場をつく
る活動に、全国で取り組んでいる。

代表理事の尾形明氏が神奈川県警察本部の元警部補、理事に自衛隊の元陸
将補、元空将補、東京消防庁の元消防司令長、大手百貨店の元外商部長な
どが並んでいる。私は求められて、会長をつとめている。

2月に、防衛省の福利厚生施設のグランドヒル市ヶ谷で、独身男女97人
が集まって、見合いの懇親パーティが催された。

 真のボランティア活動にふれて

私は70代の役員たちが、ボランティア活動として、無報酬で甲斐甲斐しく
その場を仕切ってゆくのを見て、感動した。

ボランティアを日本語でいえば、国家、社会や、人々のために自己を捨て
て、献身的に働く「奉仕」のことである。

日本で「奉仕」は、古い言葉だ。平安時代後期の説話集である『今昔物
語』が、「奉仕すること、片時(へんじ)も怠る事」があってはならない
と、諭している。

私は英語でボランティアvolunteerというと、「人が嫌がることを無報酬
で行う」という暗い意味があるから、好まない。だが、日本は常世の神信
仰から、海原の向こうから幸がもたらされることを、古来から尊んできた
から、日本語のなかに外国語が氾濫しているのに、目角(めくじら)を立て
るべきでないのだろう。ボランティアも、もとの言葉から離れて、「奉
仕」という意味で、使っているにちがいない。

ほぼ男女半数ずつだった。お洒落に装った若い女性たちが会場を満して、
私は花園に身を置いたようだった。まさに国の花だ。

 適齢期の男女の未婚は何が原因か

なぜ、今日の日本で適齢期の多くの男女が、伴侶を求めることができない
でいるのか。

やはり家族、一族の絆や、地域社会の繋がりが弱まって、自分しか頼れな
い個というか、孤の時代が到来したのだろう。孤独、孤立、孤食、孤独死
といった言葉が、頭を掠(かす)めた。

かつて日本は「家族国家」と呼ばれたが、今日の日本は私にとって異界に
生きているように、感じられる。

 家庭家族は社会の源

明治に入って、西洋から日本に存在しなかった事物や、観念が、巨大な津
波のように押し寄せて、先人たちが明治翻訳語と呼ばれる新語を大量に
造ったが、「個人」という言葉も、その1つだった。それまで日本には、
個人が存在しなかった。

今日の日本の若者たちは、不慣れな個人の役割を演じなければならない。

公務員といえば、民間より所得が高く、生活が安定している。少子化の原
因として、多くの若者が所得が低いために、結婚できないというが、にわ
かに信じられない。昔から結婚したかったら、手鍋提げても貧しさをいと
わないと、いったものだ。

フランスでは子育てを支援するために、出産奨励金や家族手当を給付する
ことによって、出生率が1・5%から1・92%(日本は1・45%)に増
え、スウェーデンでは不妊症の治療が、公費によって行えるといったよう
に、積極的な少子化対策が効果を上げているといわれる。

どうしたら少子化を阻止することが、できるものだろうか。日本列島を生
んだ伊弉諾命(いざなぎみこと)と伊邪那美命(いざなみみこと)は、出産奨
励金や、家族手当がなかったのに結ばれた。収入だけでは、所得が高い公
務員の結婚難を説明できまい。

現行憲法の第24条「【家族生活における個人の尊厳と両性の平等】」は、
第1項で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」(傍点筆者)と、規
定している。

これは、アメリカ占領軍が、家族制度が日本の危険な国家主義の基礎と
なっていると信じて、日本の伝統社会をつくり変えようとして、家族制度
を破壊するために、定めたものだった。

 ¥現行憲法は、原文が英語――外国語で書かれている、世界で唯一つの珍
しい憲法だ。

2月のパーティで、私は独身の男女を前にして、会長として短い挨拶をした。

 『君が代』は婚礼の祝い歌

「みなさんは、昨日、羽生結弦選手が金メダルを獲得して、表彰式で国歌
『君が代』が流れたのを、御覧になったことでしよう。

『君が代』の歌詞は、1000首以上を収録した、西暦905年の『古今和歌
集』に載っていますが、もとの歌は『わが君は千代に八千代に‥‥』と始
まっています。この和歌は庶民を含めて、婚礼をはじめとする祝賀の宴
で、祝われる者の長寿を願って、唄われてきました。

明治に入って、西洋に倣って国歌が制定されると、「わが君」を「君が
代」に置き換えました。

 同じ寿歌(ほぎうた)が1100年以上にもわたって、唄い続けられてい
る国は、世界のなかで日本しかありません。古い伝統を大事にしてきた、
国柄を示しています。

 人類の祝い事の基は結婚そのもの

 おそらく人類の祝い事のなかで、世界のどこにおいても、結婚がもっと
も寿(ことほ)がれるものでしよう。結婚するから、家族(ファミリー)が絶
えることなく、人類が存続でき、未来を確かなものにすることができるこ
とを、理屈抜きで知っているからでしよう。

 日本最古の歴史書の『古事記(ふることふみ)』のなかに、そよ風――凪
(なぎ)を司る伊弉諾(いざなぎ)と、波の神の伊邪那美(いざなみ)の2人の
男女の神が出会って、戯れるうちに、恋に陥って2人が結ばれ、私たちの
美しい日本が生まれたという、麗(うるわ)しい神話が載っています。

 日本では、2人の男女が結ばれるたびに、新しい日本が生まれます。

 人生では値札がついていないものこそ、大切です。豪華なシャンデリア
の下で、1瓶数万円もするワインをあけて、高級な料理を食べて、『あ
あ、贅沢をしている』と思って満足するほど、寒々しいことはありません。

 夫と妻の2人が心を合わせるほど、贅沢なことはありません。

 よい伴侶を求めて、素晴しい新しい日本をつくって下さい」

 現行憲法によれば、親や兄弟や、一族は、2人の結婚とかかわりがな
く、2人の結婚に干渉してはならないことと、されている。

 今日では結婚は、男女2人の一過性の快楽のために行われる、軽い結び
つきに変わった。

 2人が人類を未来へ継いでゆくために、結ばれることがなくなってし
まった。

 結婚相手として、ふさわしい配偶者ではなく、自分本位に自由に相手を
選ぶことによって、結婚と家族(ファミリー)が切り離された。

 だが、世界のどこへ行っても、結婚は今日のように一時的な快楽ではな
く、家や、社会に対する務めであって、神聖な行為だった。

 結婚は人類存続の源

 結婚は責任をともない、自制と節度を必要とした。人類を存続させるた
めという、暗黙の了解があったにちがいない。

 結婚までが、刹那刹那の楽しみを求めるものとなった。

 国民が刹那的な消費文化によって、すっかり蝕まれてしまった。刹那と
いう言葉は、仏教の梵語からきているが、指で弾(はじ)くごく短い時間を
意味している。

 刹那的な物欲によって駆り立てられて、荒(すさ)んだ国をもたらした責
任は、国家の大本(たいほん)である国防を忘れて経済大国をつくってき
た、私たちの世代が負うべきものである。

 2月の市ヶ谷の催しに、私は暗黒のなかに燭光を見た思いがした。蟷螂
(とうろう)(かまきり)が斧をもって隆車(大きな車)に立ち向うような
ものかもしれない。だが、第一歩が大切だ。



◆反安倍の印象報道に既視感あり

櫻井よしこ


財務省が発表した「決裁文書の書き換えの状況」(以下報告書)を読ん
だ。78頁にわたる報告書から読み取るべき点は二つである。第一は決裁文
書の書き換えという許されないことを、誰が指示したのかだ。

次に、野党は安倍晋三首相夫妻の責任を問うが、果たして首相は森友学園
に関係する土地売却や財務省の決裁文書書き換えに関わっていたのかとい
う点である。政治への信頼がかかっているだけにはっきりさせなければな
らない。

そのようなことを念頭に報告書を精査したが、どう見ても、これは財務省
の問題である。報告書から、森友学園が近畿財務局に少なからぬ要求を出
していたことが伝わってくる。森友学園には近畿財務局が対処しており、
彼らは大事な局面で本省の理財局に報告している。本省と相談し、許可及
び指示を得て、森友側の要請に応えた構図が報告書では浮き彫りとなって
いる。そこに安倍首相や昭恵夫人が関わり得る余地はないと断じてよいだ
ろう。

にも拘わらず、主要メディアはすでにおどろおどろしい印象操作報道に
走っている。他方野党は同問題を安倍政権潰しの政局にしようとしてい
る。政治には権力闘争が付き物だとしても、去年、日本列島に吹き荒れた
根拠なき反安倍の嵐は、日本の政治をかつての旧い体制に引き戻そうとす
るものだった。野党も多くのメディアも、反安倍路線に走る余り、岩盤規
制を守る側に、事実上立ったではないか。

いま耳にする批判は、安倍首相の「一強体制」が悪い、それが官僚を萎縮
させ、忖度させているというものだ。だが、民主党も政権を取った時には
政治主導を主張したのではなかったか。事務次官も含めて官僚の意見をき
かず、大臣がおよそ全てを主導しようとしたのが民主党政権ではなかった
か。その彼らがいま、内閣人事局が官僚を萎縮させ、首相の言葉などを忖
度させると論難する。だが、そもそも内閣人事局の設置は、民主党政権で
も目指したものではないのか。

民主党も望んでいたこと

内閣人事局の権限は強大ではあるが制限もある。審議官級以上の人事の最
終決定権は内閣人事局にあるが、内閣人事局が次の局長や次の事務次官を
指名することはできない。人事構想はまず各省が決める。その案を内閣人
事局は拒否できるが、そうするには相当の理由を示さなければならない。

それでも各省人事の最終決定権を政治家が握ることで、国益よりも省益を
優先していた霞が関の官僚たちを、省益より国益重視へと変えさせる要素
になった。それは民主党も、望んでいたことだった。それをいま、非難す
るのは筋違いである。

いま、メディアは、報告書の内容を読者にきちんと伝える責任がある。報
告書から窺えるのは森友学園側の要請に抗いきれず、妥協する近畿財務局
の姿であり、それを承認していた本省理財局の姿でもある。たとえば、
「本地の地盤について」の項には当初次のような記述があった。

「(学園は)本地(森友学園が小学校を建設しようと考えた大阪府豊中市
の土地)は軟弱地盤であり貸付料に反映されるべきものと主張し、併せて
校舎建設の際に通常を上回る杭工事(建物基礎工事)が必要であるとし
て、国に工事費の負担を要請した」

森友学園側が近畿財務局に貸付料を安くせよと迫ったわけだ。対して近畿
財務局は地質調査会社に意見を求めたが、この社は、特別に軟弱であると
は思えないとした上で、「通常と比較して軟弱かどうかという問題は、通
常地盤の定義が困難であるため回答は難しい」と、あやふやな見解を示した。

困った近畿財務局は「当局及び本省で」相談した結果、杭工事費用等は負
担しないが、「貸付料及び将来の売払時の売却価格を評価する際には当該
調査結果等により地盤の状況を考慮する」と決めた。

近畿財務局が森友側の要求に困り果て、「本省」の了承を得て森友の要求
を受け容れたのだ。しかし右の記録は一部削除され、次のように書き換え
られた。

「ボーリング調査結果について、専門家に確認するとともに、不動産鑑定
評価を依頼した不動産鑑定士に意見を聴取したところ、新たな価格形成要
因であり、賃料に影響するとの見解があり、価格調査により、鑑定評価を
見直すこととした」

「軟弱であるとは思えない」、「軟弱」の定義も不明だとの分析を却下し
て、新たな価格形成(値引き)に応じたのが本省、即ち財務省だった。し
かし文書からは本省の関与も、地盤の軟弱さが否定されていた事実も削除
され、軟弱地盤故に価格調整は当然だという理屈が書かれていた。

官僚と政治家の闘い

もうひとつの事例である。森友学園は小学校開設予定地を国から借り受
け、8年以内に買い取りたいと要請した。だが、国有地に関する事業用定
期借地の設定期間は、「借地借家法第23条において、10年以上50年未満と
されて」いる。それでも森友側は諦めない。結果、近畿財務局は大阪航空
局、財務省理財局の承認を得て特例措置を取った。

建前上、10年間は借地だが、10年を待たずして売却する予定という「予約
契約書」をつくったのだ。この「特例的な内容」に至るまでに理財局長の
承認を得ているとの記述が、複数回登場する。

書き換え前の文書には右の「特例的な内容」、或いは「標準書式では対応
できない」などの表現が度々登場するが、書き換え後の文書ではそれらは
すべて削除されている。

森友側と交渉していたにも拘わらず、佐川宣寿前理財局長は、昨年3月、
衆議院財務金融委員会で「価格を提示したこともないし、先方からいくら
で買いたいと希望があったこともない」などと説明した。

一連の削除或いは書き換えはおよそすべて、佐川前理財局長の国会証言に
合わせたものだと言ってよい。佐川氏や財務省を守るためだったのであろう。

それでも立憲民主党の幹部らは、安倍首相が自身や夫人がかかわっていれ
ば政治家も首相もやめると発言したから、財務官僚たちが忖度して文書を
書き換えたのだと、論難する。

果たしてそうか。首相発言は昨年2月だ。財務省はその2年前、2015年6月
にも文書を書き換えている。ひょっとして財務省は恒常的に文書を書き換
えていたのではないか。そのことを麻生太郎財務相にも安倍首相にも、さ
らには他の政治家たちにも知らせずにきたのではないのか。だとすればこ
の問題の本質は官僚の暴走であり、官僚と政治家の闘いにあるといえる。
メディアはこうした点にこそメスを入れるべきだ。安倍憎しの印象操作に
終わることは、あらゆる意味で国益を損なうものだ。
『週刊新潮』 2018年3月29日号
日本ルネッサンス 第796回