2018年04月06日

◆考察 ― 憲法9条改正試案

          安保政策研究会理事長 浅野勝人
   

一般社団法人「安保政策研究会」を、アジア・太平洋地域の平和と繁栄を調査・分析するシンクタンクとして立ち上げたのは、平成23年6月2日のことです。ですから、7年が経過したことになり、この間、61回の研究会を重ねてまいりました。

研究会は、もっぱら自由闊達な討論を楽しむサロンとして運営され、なんらかのテーマについて見解を取りまとめてアピールするような 宣伝目的は持ち合わせておりません。

ただ、外交・安保政策を語り合っていますと、時に触れ、折に触れて、憲法9条と関連する言及が少なくありません。憲法9条は内外の政策と直接、間接に深く関わっていますから当然のことです。従って、そのあり様について議論することは極めて重要です。

自民党内の改憲論議もそれなりに進捗している模様なので、早晩、国会の舞台に登場することと思われます。
そこで、安保研としても「9条改正試案」をまとめてみたいと思い立ち、集中討議をしましたが、十人十色、まとまるどころか、バラバラでした。このテーマについてもメンバー各自の理念を尊重する安保研の良さが現れました。いつもの報告書(安保研リポート)通り、投稿をそのまま掲載いたしますので、楽しみに待ってください。


「9条改正―安保研理事長試案」

第2章 戦争の放棄

第9条1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
(現状のまま)

2項 前項の目的を達するため、国の交戦権はこれを認めない。
但し、わが国の存立を危うくする明白な事態に対処するため、必要最小限度の戦力は保持する。

<註>
☆平和主義の根幹は堅持する。そのため、後項優位の原則を踏まえて、2項に「国の交戦権は認めない」をことさら残す。
☆国家の存立を担保するため、必要最小限の戦力の保持(自衛隊)を明記する。
☆集団的自衛権の行使は、厳しく制限し、我が国領域の安全が脅かされる明白な緊急事態に限定する。従って、交戦権とは、他国への侵略等日本周辺以外への武力侵攻を意味する。
☆改正を機に「戦力不保持」を削除して、実存する自衛隊との整合性を担保する。

特に、憲法が実態を無視して、虚偽を表記していると児童、生徒に受け取られかねない表現を削除。―「陸海空軍、その他の戦力はこれを保持しない」といっても現実に保持している。義務教育で「自衛隊は戦力(軍隊)ではない」と詭弁を弄するのは好ましくない。

☆手直しは最小限に留め、自民党案のように理屈をこね回すのは感心しない。内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持つことは改めて憲法に書かなくても自衛隊法(第7条)で決まっている。妥当な憲法解釈と関連法案の補充で対応する方がいい。

☆素直に、国情および現下の国際情勢に合致する、わかり易い表現と組み立てが望ましい。

問題点:国民投票で否決された場合、自衛隊の存在をどのように
位置づけるか。集団的自衛権の行使を一部認めた安保法制をどう扱うかにつては、
☆憲法への明記が否定されるだけで、自衛隊は合憲と認めている現状を堅持する。従って、改正憲法が否決されても、法的存在に変わりはない。
☆現行安保法制該当部分は白紙とする。

以上(元内閣官房副長官、元NHK解説委員)
at 08:38 | Comment(0) | 浅野勝人

◆健康百話 「認知症」には「散歩」が効果

向市 眞知


以前、住友病院神経内科の宇高不可思先生の「認知症」の講演を聴きに行きました。その時、「こんな症状があったら要注意!」という話から始まり、次の11の質問がありました。

1、同じことを何度も言ったり聞いたりする
2、ものの名前が出てこない
3、置き忘れやしまい忘れが目立つ
4、時間、日付、場所の感覚が不確かになった
5、病院からもらった薬の管理ができなくなった
6、以前はあった関心や興味が失われた
7、水道の蛇口やガス栓の閉め忘れが目立つ
8、財布を盗まれたといって騒ぐ
9、複雑なテレビドラマの内容が理解できない
10、計算のまちがいが多くなった
11、ささいなことで怒りっぽくなった

「これらがいくつかあったり、半年以上続いている時は専門病院へ行きましょう」といわれました。

私自身、同じことを言ったり、物の名前が出てこなかったり、置き忘れやささいな事で怒りっぽくなったなあと思い当たるフシがいくつもありました。専門診療の対象といわれてしまうと本当にショックです。

認知症というと周りの人に迷惑をかけてしまう問題行動がクローズアップしてその印象が強いのですが、新しいことが覚えられない記憶障害もそうです。また、やる気がおこらない意欲の低下もそうですし、ものごとを考える思考力や判断する力、そして手順よくし処理する実行力の低下も認知症の症状です。

認知症高齢者のかた自身の不安は、時間や場所がわからなくなったり、体験そのものを忘れていく中で暮らしているのですから、自分以外の外界のすべてが不安要因になってしまうのです。

ご本人は真剣に外界を理解しようとしているのですが、家族は「ボケ」「痴呆」ということばの印象から「認知症だからわからないだろう、理解できないだろう」と思い込んでいる例が多くみられます。
 
診察室でなんとご本人を目の前にして認知症高齢者の失態を平気でドクターに訴えたり、「母さんがボケてしまって」とはばかりもなく言ってしまったりします。

その瞬間にご本人はその家族に対してまた不安をつのらせてしまいます。また話を向けられたドクターも、ご本人を前にしてウンウンとうなづくべきか、ほんとうは困っているのです。うなづけば家族は安心しますが、ご本人はドクターへの信頼感をなくしてしまいます。

よく「まだらボケ」とか言いますが、「正気の時もあるからやっかいだ」と表現されるご家族もあります。しかしそれは逆で、やっかいと考えるのではなく正気の部分があるのならその正気の部分を生かして日常生活を維持するようにしむけてみませんか。
 
認知症があってもくりかえし続けている一定の日常生活はできるはずです。老年期以前の過去の生活を思い出させてあげると、高齢者は自分の価値を再発見し、意欲も湧いてくるとききました。

高齢者にとって脳機能の低下だけではなく、視覚や聴覚、味覚や嗅覚などの感覚もおとろえてきていることを理解してあげてください。すべてを「認知症」の一言でかたづけてしまわないで下さい。見えやすくする、聞こえやすくするというような場面の工夫で問題行動が小さくなることもあります。
 
「認知症だからわからないだろう」と思い込むのは大まちがいです。「言ってもしかたない」と決めつけるのは悪循環です。認知症の方の感じる外界への不安を考えると、情報が遮断されると余計に不安が大きくなります。

どしどし情報を与えることが不安の軽減につながります。そのために外出しましょう。認知症には散歩の効果があります。外界の空気は聴覚、視覚、嗅覚への刺激になり、脳の活性化につながります。

                    医療ソーシャルワーカー

2018年04月05日

◆「米中貿易戦争」深刻化の様相

杉浦 正章


北の対日大接近もありうる 極東情勢一段と流動化

民放などで極東情勢からの「日本置き去り論」が目立つが、相変わらず浅
薄だ。トランプが韓国の特使の進言を受けて米朝会談に乗り気になった結
果がその理由のようだが、極東安保が日本抜きに語られることはあり得ない。

17日からの日米首脳会談で安倍が極東安保の実情を説明すればトランプに
は分かる事だ。それよりも極東における「米中貿易戦争」の様相がここに
きて一段と濃厚になってきたことを注視する必要がある。

かねてから首相安倍晋三は北朝鮮への対応について、「過去の教訓を踏ま
えると、対話のための対話では意味がない。北朝鮮に完全、検証可能かつ
不可逆的な方法で、核・ミサイルの廃棄にコミットさせ、それに向けた具
体的な行動を取らせるため最大限の圧力を維持していかなければならな
い」と述べている。

極東情勢をどこまで深く認識しているか疑わしいトランプも、この安倍理
論には同調するだろう。安倍は日本としては譲れないコアの部分をトラン
プに吹き込んでおく必要がある。なぜならトランプは金正恩が核弾頭搭載
のICBMを放棄するだけで「米国に届く核兵器はない」と納得する可能性が
あるからだ。

これは、日本にとっては最悪のシナリオである。なぜなら日本の米軍基地
や東京など大都会を狙う中距離核ミサイルがそのまま放置されれば、日本
は常時北のどう喝受け続けることになるからだ。

これは紛れもなく日本に核武装論を台頭させる要因である。日本が核武装
をすれば極東安全保障のバランスを一気に崩壊させ、情勢は今まで以上に
緊迫と流動性を帯びる。

その懸念は世界の常識になりつつあり韓国の中央日報紙などは社説で「日
本再武装論が台頭している」「中国が北を放置すれば重武装の日本が登場
し、中国が代償を払うことになる」と核武装の可能性を強調している。

米国のウォール・ストリート・ジャーナル紙は、既に北朝鮮が発射した中
距離弾道ミサイル「火星12」が北海道上空を通過した後の社説で「日本の
核武装に道開く北朝鮮の核容認」との題して「この中距離ミサイル発射実
験は、北東アジアの安全保障をめぐる政治を一段と混乱させるだろう。そ
して、日本に自前の核抑止力を持つことを改めて促すものだ」と分析して
いる。

要するに日本抜きの極東安保は成り立たないということなのである。米朝
や米中だけで極東安保を語るべきではないのだ。加えて北の核施設やミサ
イル発射の動きは低調にはなっているが、北が完全に核やミサイル放棄に
方針転換したとみるのは言うまでもなく早計である。

1980年代から北は核・ミサイルへの実験を繰り返してきており、完成がす
ぐそこにあるのに、放棄するわけがないのである。金正恩のレゾンデート
ルは核とミサイルしかないのであって、手放せばただの太った政治家にな
るだけだ。

今後、外交日程は極東情勢を軸に硬軟両様の展開を見せる。4月17日から
2日間はフロリダで日米首脳会談。同月27日に南北首脳会談。5月前半
に日中首脳会談、同月末までに米朝首脳会談という段取りだ。

日本の出番はありすぎるほどあるのだ。一連の会談を通じて安倍が果たす
役割は大きい。日米首脳会談ではその後の一連の首脳会談対策が話し合わ
れる。対北、対中戦略で重要な骨組みが打ち立てられるだろう。

その内容はおそらく@トランプはいかなる情勢下においても北朝鮮の核保
有を認めないA核・ミサイルで北の具体的行動がない限り制裁は維持するB
米国は最悪の場合の軍事オプションの可能性を維持するーなどとなるだろう。

こうした日米の動きに対して中国は極めて警戒を強めるだろう。中国の核
問題に対する主張はあくまで「朝鮮半島の非核化」である。単に北だけの
非核化ではなく、米軍も含めた非核化なのである。

中国の戦略にとって北は常に緩衝材なのであり、米軍と国境を接して対峙
することは望まないのだ。北と中国は朝鮮戦争を一緒に戦った血の盟約が
依然として根底に存在するのであり、地政学上も切っても切れない関係に
ある。

中国は朝鮮半島問題が米国主導で進む事には反対しなければならないと思
い込んでいるのだ。中国にとっては朝鮮半島が「不戦不乱」である状態が
一番居心地が良いのであって、北の政権を消滅させるような策動にはまず
乗らない。

また、米国の輸入制限に対して、中国が報復関税を発動したように、「米
中貿易戦争」の色彩が一段と濃くなった。中国は米国が鉄鋼、アルミニウ
ムに高関税を3月23日にかけたことへの対抗措置を2日発表した。ワイン
など120項目に15%、豚肉など8項目に25%を上乗せしたのだ。この米
中両大国の経済と外交・安保の両面での対立は歴史的必然とも言え、長期
化するだろう。

就任当初は金正恩に対する嫌がらせで、訪韓を断行したほどの習近平だ
が、金正恩が訪中して恭順の意を示したことから、相好をくづし方針を一
変させた。習近平の前で金正恩が習発言をノートに取るという、“すり寄
り”姿勢を取ったことが、大満足であったのだろう。

首脳会談は会談の中身もさることながら、相手の態度が決定的な役割を果
たす事もある。金正恩の“メモ作戦”は練りに練った作戦なのであろう。

こうした北の外交攻勢からみれば、今後北は閉ざされた独裁国家というイ
メージを払拭するため、主要国との外交チャンネルを活発化させるだろ
う。日本に対しても大規模な経済協力を期待して大接近してくる可能性が
強い。その場合、核放棄が前提になることは言うまでもない。

◆「あたる」前に必ず「かする」

石岡荘十


旧聞に属すが、ベテラン俳優若林豪さんが2008年3月5日、倒れた。若林さんは小林幸子特別公演「天勝物語」で小林扮する天勝の師匠松旭斎天一役で、名古屋市の御園座に出演していた。

しかし、若林さんの体調は思わしくなく、「セリフもよく入っていなかった」という。この日も昼の部に出演したが、本番を終了直後に病院に向かった。医師の診察を受けて手術が行われた。
 
病名「慢性硬膜下血腫」というのは、脳の血管が切れて脳を覆っている硬膜とその下の脳との隙間に血(血腫)が貯まる病気で、血腫が脳を圧迫する病気だ。

病名は違うが同じ脳疾患で、脳の血管がつまったり、破れたりして、その先の細胞に栄養が届かなくなる「脳卒中」で倒れることを、昔から業界では「あたる」といい、一過性の前ぶれを「かする」という。

つまり「あたる」前に必ず「かする」前兆がある。

したがってこの段階で、“適切な”治療を受けていれば、頭蓋骨を開くというような恐ろしい経験をしなくとも済むかもしれないのだ。

新聞やテレビの報道を総合すると、座長の小林幸子さんは、「2日ほど前、若林さんが小林の楽屋に顔を出し、セリフが引っかかっちゃってゴメンネと謝りに来た。その時は、『長いセリフで大変でしょう』ってお話しはしました。
それが、まさかこの前兆だったと思うと言葉もありません」と話したという。テレビの芸能ニュースでは「右肩がなんとなく下がっているような気がした」と語っている。

このやり取りから判断すると、当時68歳の本人も54歳の座長もいい年、つまり心臓疾患や脳疾患の“適齢期”だというのに、これが重大な病気の前ぶれだと判断する知識をまったく持ち合わせていなかったようだ。

したがって、舞台を降りてでも病院に行くという発想には行き着かなかった。

「舞台に穴を開けられないと頑張ったのでは」と有名な仲間の芸能人が若林さんの芸人根性を褒めたつもりで感想を洩らしていたが、バカ丸出しだ。

もし「あるいは---」と感じながら、無理を通そうとしていたのなら、この年代にとって残った人生で何が一番大切なことか、プライオリティー、つまり優先順位について発想の転換が出来ていなかったということだろう。

変な言い方だが、ポックリいければまだいい方で、160万人以上が半身マヒや言語障害という後遺症で苦しんでいる。

本人だけではない。家族が、大きな負担を強いられることを考えると、「自分に限って---」などという根拠のない楽観は捨て去った方がいい。

救いは、心臓も脳も「あたる」前に「かする」、つまり前兆があるということだ。

その脳疾患の前兆は、
・ 片方の手足がしびれる
・ 持っているものをポロリと落とす、
・ 思っていることが言葉に出てこない、
・ ろれつがまわらなくなる
などなどだ。

心臓の血管(冠動脈)が狭くなる狭心症、完全に塞がる心筋梗塞も高齢者に多い疾患だが、よくよく思い出すとほとんどの人にその前兆がある。

血圧が高い、胸が痛くなったり、なんとなく重苦しい感じがしたりするが15分かそこらで治まるので、「ああよかった」とやり過ごす。

人によっては左の奥歯が痛くなったりうずいたりすることもあるが、このように心臓から遠いところに違和感を覚える人もいる。

これを専門的には「放散痛」というが、大概の人はこれが心筋梗塞の前兆であることに気づかない。

こんなときには、バカにせず、24時間緊急対応をしてくれる専門の医師と検査体制の整った病院へ行って診察を受けることが大切だ。
 
私は、10数年前からかすった段階で診察を受け、診察券を確保して、これを外出のときも肌身はなさず携帯して歩いている。

そのくらいの心掛けがなければ、attackでよしんば一命をとりとめても、半身不随では快適な老後は過ごせない。

よくよく振りかえると、ほとんどの高齢にかすって経験があるはずだ。「ああ---」と思った以上に多くの高齢者が、膝を叩くに違いない。

2018年04月04日

◆人々の信仰と誠意を裏切るのか

宮崎 正弘


平成30年(2018年)3月31日(土曜日)通巻第5653号  

 「人々の信仰と誠意を裏切るのか、バチカンよ」と中国の地下信者ら
 バチカンと中国共産党の手打ちが近い、おそくともイースターまでに

交渉は大詰めにきた、と多くのカソリック関係者がみている。長年対立
してきたバチカンが、中国と外交関係を回復するというのだ。

過去数十年、中国では信仰の自由はなく、宗教活動は抑圧され、教会は
破壊され尽くし、信者は地下へ潜った。表向きあるキリスト教会は、すべ
ての礼拝参加者が記録されているが、他方では、「共産党の指導の下に」
宗教活動をしている偽信者だと、地下のカソリック信者、全世界の信者は
見ている。

中国で地下に潜ったカソリック信者はおよそ1千万人。この人たちは中
国共産党が認めた地区の司祭を認めていない。ところが過去2年、新しい
法王になって以来だが、バチカンは中国が指名した偽司教を追認し、中国
共産党に阿ってきた。

 
深い失望、暗澹たる喪失感が宗教界に広がったのは台湾だけではない。
香港のキリスト教会はほぼ総立ちでフランセスコ法王の親中路線への傾斜
を「裏切り」と捉えている(『サウスチャイナ・モーニングポスト』、
2018年3月30日)。

バチカンと中国の関係回復はおそらくイースターの前後でしょう、と香港
の教会筋は予測する。そして、そのとき中国大陸の多くのカソリック信者
は、バチカンへの忠誠をやめ、信仰の熱心な司祭、司教は引退し、しずか
に去ることになるでしょうと香港の事情通は悲しみの表情で語ったと同紙
は伝えている。

教会の腐敗を糾弾したのはチェコのフス、そしてドイツのルターだった。
それからヨーロッパにおける宗教改革が開始され、19世紀にはニーチェが
でて、『神は死んだ』と言った。中国のカソリックも、まもなく「神は死
んだ」と言うのかも知れない。
       
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 B
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 「幕末」とはいったい何時始まって、何時終わったのか?
   歴史作家の冷徹な眼を通して激動の時代を客観的に振り返ると

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中村彰彦『幕末史 かく流れゆく』(中央公論新社)
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 幕末の激動期のことは多くの作家が書いた。主流は薩長の勝利史観を基
にしての西?、大久保、木戸という「維新の三傑」が主役だが、ときに脇
役の龍馬、晋作が大活劇を演じた小説もあり、あるいは先駆的役割を果た
した吉田松陰、武市瑞山、あるいは傍流でしかない新撰組やら田中新兵衛
らが主人公の短編小説も花盛りだった。


敗者となった徳川慶喜を持ち上げるhiもいれば、榎本武揚を、勝海舟を
過大評価する向きもあった。しかし個人をあまりに英雄視し、カリスマ扱
いすると、作り話が肥大化して、史実とは大きくかけ離れた噴飯ものの時
代小説に化けたものもあった。


史家はと言えば、明治維新を是としてフランス革命になぞらえる試みや
ら、講座派とか、マルクス主義歴史観で裁断する硬直的な明治維新論も一
時期は流行ったが、いまは顧みられない。

大政奉還、版籍奉還、地租改正、憲法制定、議会開催の決定を単に近代主
義の進歩過程だとイデオロギー的に説く所論も、出版動向をみると少なく
なった。

学閥の従来的解釈を離れて、最近の若い書き手の評価には異色のもの が
でてきた。つまり従来の特定史観による一方的で浅薄な解釈は、執筆者
の出身地、学閥、個人的好みによって多彩であってもまちまちであり、そ
れぞれは薩摩に過剰に肩入れしたり、長州がつねに主役の物語になった
り、司馬遼太郎に到っては龍馬が維新の立役者となった。

感情移入がはげしく、最近は逆に会津史観が登場し、西?をけちょんけ
ちょんにけなす作品から、あるいは皇国史観のイデオロギー色が濃すぎ
て、内訌で自滅した水戸藩の悲劇を物語る作家もある。

ときに史実をハナから無視した乱暴な論法も目立つようだ。

さて本書である。

どの藩にも人物にも肩入れせず、史実は史実として、客観的に通史を描く
と、全体の幕末像がみごとな輪郭を描く。

まさに、題名のように幕末の歴史は「かく流れた」のだ。

資料読みとして知られる中村彰彦氏はデビュー作が佐川官兵衛であり、そ
の後、新撰組もたくさん書いたことでしられるけれども、小説ではたしか
に会津贔屓だが、理論では徹底的に客観的、中立的である。
 
薩摩の暴走と陰謀、長州の短慮、冒険心、水戸の思想偏重などをさらりと
片付け、本書はその折々の事件を、その歴史的な意味を再評価し、大事件
と脇役とをみごとに振り分け、歴史の深淵をのぞかせてくれる。

立項目は多彩だが、その叙述はきれいに時系列となっており、歴史作家の
多くが見落としがちだった節目節目の人事交代、事件処理、欧米列強の動
きと要人のクライマックスにおける発言などのなかから「歴史を動かした
要素」を基軸に措えなおしてみせた。

 従来ありがちな「勤王」「佐幕」とか、『開国』か『攘夷』かという二
元論ではなく、すべてが政局の流動かとともに輻湊したのだ。

そして著者はいうのだ。

「幕末」というのなら「幕初」と「幕央」はなぜないのか。幕末は明治政
府の発足でおわるというのが通説だが、ではいつから始まったのか。

著者は幕政の衰えが顕著となった「天保12年の幕府命令撤回」という「事
件」から幕府の衰退が始まり、つまりは『幕末』がこのとき開始され「西
南戦争」の決着をみて、終わったという史観を披露する。

 ひさしぶりに「読書をした」という感想である。

◆森友文書だけが日本の問題ではない

櫻井よしこ


「森友文書だけが日本の問題ではない 国の安全への責務を政治家は自
覚すべきだ 」

3月19日の参議院予算委員会で安倍晋三首相は、森友文書書き換え問題で
「行政全体に対する最終的な責任は首相である私にある」と陳謝した。

その上で、「私や妻が国有地払い下げや学校の認可に関与した事実はない
ことは明らかだ。書き換えを指示していないし、そもそも財務省理財局や
近畿財務局の決裁文書などの存在も知らない。指示のしようがない」と
語った。

財務省が発表した76ページの文書には首相夫妻関与の痕跡は全く無い。

省の中の省と言われる財務省が決裁文書を書き換えていたことは重大問題
であり、首相をはじめ政治による不当な真実隠しがあれば糾すべきなのは
当然だ。この二つの問題には粛々と取り組めばよい。だが、急展開する国
際情勢を見れば、国会が同問題だけにかまけていてよいはずはない。国会
は日本の命運を左右する大きな国際情勢問題に急ぎ取り組むべきだ。

ドナルド・トランプ米大統領は国務長官のレックス・ティラーソン氏を更
迭し、マイク・ポンペオ氏という元米中央情報局(CIA)長官で対北朝
鮮強硬派を後任に指名した。トランプ氏は国家安全保障問題担当補佐官、
ハーバート・マクマスター氏も解任する方針だと報じられている。後任と
して取り沙汰されるのがジョン・ボルトン元国連大使ら、対北朝鮮強硬派
である。

北朝鮮を巡っては、4月末に南北朝鮮首脳会談、5月には米朝首脳会談が予
定される。南北首脳会談の韓国側準備委員長は、北朝鮮の故金日成氏の主
体思想の信奉者で、朝鮮民族として正統性を有する国家は韓国ではなく北
朝鮮だとの考えを隠さない任鍾ル(イム・ジョンソク)氏だ。

同氏の下で首脳会談を調整するのは2000年の金大中・金正日首脳会談を設
定した責任者、林東源元統一相だ。大中氏は秘密資金4億5000万ドルを正
日氏に貢いでようやく会談してもらったのだが、そのお膳立てをしたのが
林氏だったとみてよいだろう。韓国が北朝鮮にのめり込むのが4月の南北
首脳会談だ。その後に誕生する韓国は今よりずっと親北だろう。

米国は5月の米朝首脳会談を目指して準備中だ。日本は4月中に日米首脳会
談を開く。米朝首脳会談が本当に実現するのか、実はまだわからないが、
実現すれば日本に重大な影響を及ぼすのは確かだ。わが国の準備は進んで
いるのか。

日本にとって最悪なのは、北朝鮮が米本土に届く大陸間弾道ミサイル
(ICBM)を放棄するだけで米国が納得することだ。北朝鮮は日本を十
分狙える核とミサイルを手にすることになり、到底日本は受け入れられな
い。日米の絆である日米安全保障条約の基盤は大きく揺らぎ、それは日本
の国益にも米国の国益にもならない。

安倍首相は4月の首脳会談でトランプ大統領にそのことをよく理解させな
ければならない。だが、強固な日米同盟が大事だとトランプ氏に納得させ
るには、同盟が米国にとっても代替不可能な必須の戦略基盤であることを
示さなければならない。そのために日本のなすべきことを国家戦略として
決めておくことが欠かせない。

折しもユーラシア大陸には中国の習近平政権とロシアのプーチン政権とい
う、事実上の終身皇帝を戴く専制独裁政権が誕生した。政権地盤を固めた
2人の専制者は、国内基盤強化のために厳しい対外戦略を打ちだすだろう。

かつてない厳しい国際情勢の中で日本が依って立つ基盤は日米同盟しかな
い。同盟を日本の国益を守る方向へと導くためになすべきことを決め、具
体的政策に移す局面だ。その作業を日米首脳会談前までに全力で行わなけ
れば日本は深刻な危機に直面する。森友文書だけが問題ではないのだ。日
米同盟に生じ得る根本的揺らぎを読み取り日本国の安全を確固たるものに
する責務を政治家は自覚すべきだろう。

『週刊ダイヤモンド』 2018年3月31日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1225 

◆思わぬキッカケで生まれた薬

大阪厚生年金病院 薬剤部

<血管の中に血の塊ができにくくする薬>

みなさんは風邪薬や鼻炎の薬を飲むと、眠たくなった経験がありませんか?
 
風邪薬や鼻炎の薬のなかには、ジフェンヒドラミンという成分が含まれていることがあります。

この成分は風邪症状のくしゃみや鼻水などのアレルギーを抑える目的で配合されているのですが、目的外の作用として、つまり副作用として眠気が出るという性質も併せ持っています。

一般に副作用は悪者扱いされますが、眠気という作用に着目し眠気を起こさせるくすり=睡眠改善薬として生まれたくすりがあるのです。
おもしろいですね。

このようにはじめの目的ではない作用がきっかけで生まれたくすりには、例えば頭痛や熱さましに使うアスピリンがあります。

この成分は量によっては血がかたまりにくくなる性質ももっており、その作用に着目して抗血小板剤(*注)が生まれたり、高血圧の薬の成分で毛生え薬、うつ病薬の成分からおねしょの薬などがあります。

これこそ、発想の転換、コロンブスの卵といったところでしょうか。

(*注血管の中に血の塊ができにくくする薬)

2018年04月03日

◆北の“非核化”にある「疑似餌」の側面

                   杉浦 正章


“核カード”は北の遺伝子 日本「置き去り」の指摘は荒唐無稽

金正恩の中国電撃訪問は、すべて5月に予定されるトランプとの米朝首脳
会談対策に集約される。世界の孤児のまま対米会談に臨むことのリスクを
やっと気がついたのだ。

逆に中国にしてみれば、極東における“蚊帳の外”の状況を改善するメリッ
トがある。金正恩は「後ろ盾」、中国は「存在感回復」を獲得することに
なった。双方にメリットがある会談だったし、中国が影響力を取り戻した
ことは事実だ。

これにより冷え込んでいた中朝関係は一気に改善し、“死に体”であった中
朝の血の同盟である中朝友好協力相互援助条約は再び息を吹き返しつつあ
る。ただし非核化と言っても様々だ。過去2度あった北の“疑似餌”に3度
ひっかかる馬鹿はいない。

中朝の首脳会談では、朝鮮半島の非核化については大まかなスケジュール
や考え方を確認したものとみられる。しかし、単に「非核化」といって
も、日米と中国のスタンスは大きく異なる。

日米は核の即時全面的放棄を求めるが、中国は時間をかけて解決しようと
する立場だ。金自身の発言を分析しても怪しげな空気を感ずる。北朝鮮は
日米の求める非核化対応をよしとしているようには見えない。

 非核化に対する金正恩の発言は「我が国の善意に応え、平和実現のため
段階的かつ同時に措置を講ずれば、朝鮮半島の非核化の問題は解決するこ
とが出来るだろう」というものだ。

この「段階的かつ同時に」の表現がくせ者なのだ。それは段階的手順を
追ってということであり、手放しでの非核化ではさらさらない。非核化と
言えば北朝鮮が一方的に核を放棄するような印象を受けるが、これまで北
が主張してきたことは「米国の行動あっての行動」なのであり、米軍の核
が朝鮮半島に存在すれば成り立たない論理なのである。

これは核兵器の「即時放棄」を唱える日米の要求ではなく、「時間をかけ
て解決」という中国の方針に添って金正恩が球を投げたと受け止めること
も可能だ。

北朝鮮はきょう南北閣僚級会談、来月には南北首脳会談、5月には米朝
首脳会談を控えているが、電撃訪問は金正恩が米朝首脳会談の“失敗”を極
度に恐れている可能性があることも露呈した。

トランプは「米朝会談は楽 しみだが、残念ながら最大限の制裁と圧力は
何があっても維持されなけれ ばならない」と述べるとともに、米朝協議
がうまくいかなかった場合につ いて「アメリカは全ての選択肢がテーブ
ルの上にある」とどう喝している のだ。

金正恩は常にリビヤのカダフィー暗殺未遂事件が脳裏をよぎってい ると
いわれている。アメリカは1986年にカダフィーの居宅を狙って空爆す る
強硬手段を取り、暗殺しようとした。カダフィーは外出しており危うく
難を逃れた。

この恐怖が金訪中の原動力となっているといってもよい。

トランプの言うように米朝首脳会談が破綻すれば、米国による軍事行動
の可能性が一気に高まる。米国を“けん制”するにも孤立状態では手も足も
出ない。そこで金正恩は習近平に泣きついて、関係を改善し“後ろ盾”の存
在を誇示する必要に駆られたのだ。

中国を通じて米国の軍事行動をけん制 してもらうしか方策は無いのだ。
中国は朝鮮戦争の休戦協定の当事者でも あり、金正恩は米朝関係改善が
出来なければ中国にすがりつくしか生きる 道はないと考えたに違いない。

中国にしてみれば、極東における日米韓の軍事協力の可能性をひしひし
と感じているのであり、朝鮮半島の非核化や平和の定着などを進めるため
にも、北の独走を防ぐ必要がある。そのための電撃訪問の受け入れである
が、これは父親の総書記金正日訪中と酷似している。

1992年の中韓国 交正常化により、中朝関係は極度に悪化したが、今回同
様に、金正日は 2000年5月29日の電撃訪中で世界をあっと言わせた。金
日成が死去 してから初の外国訪問であった。韓国大統領金大中との首脳
会談を直前に 控えていたことまで日程を模写したかのようにそっくりだ。

また北がロシ アと連携をする場合もあり得る。北がロシアと結べば、極
東に中露北と日 米韓の対峙の構図が出来る可能性がある。ロシアは欧米
から総スカンを受 けており、極東に突破口を求める可能性が大きい。


問題は北の非核化のプロパガンダを真に受けて、国際社会が性急な対応
をすることだ。非核化と言っても即時全面放棄を北がするわけがないから
だ。世界は核問題で金日成にだまされ、金正日にだまされてきた。金日成
は1980年代から核開発に着手したとみられる。

1994年の金日成死後に権力 の座を継いだ金正日は、「先軍政治」を掲げ
て核開発に専念した。北の政 権は経済的に困窮すると“核カード”を切
り、援助を達成するのが“遺伝子” に組み込まれているかのようである。
紛れもなく金正恩も“遺伝子”の指図 で動いている。

従って、北の核放棄の意図はうさんくさいのだ。実質的な 進展もないう
ちは「北の病気がまた始まった」くらいの対処が適切だ。日 本政府の置
き去りを指摘する浅薄な新聞もあるが、ここは慌てる必要はな い。

公明 党の議員から参院予算委で「国民は日本だけ置いていかれると懸 念
して いる」との指摘があったが、国民とは誰だ。素人の見方であり、慌
てる 乞食はもらいが少ない。誰も日本を置いていこうなどとは思ってい
な い。

中国からも米国からもパイプを通じて連絡は来ている。北が厳しい経 済
事情を背景に、やがては日本にすり寄ることは目に見えている。ここ
は、北の非核化の本質をじっくり見極めてから対応しても遅くはない。



◆韓国「青瓦台」襲撃未遂事件

                  毛馬 一三


北朝鮮と韓問の間は融和維持のムードが漂う現状を考えていた時、ふと1968年に北朝鮮ゲリラが韓国大統領府「青瓦台」襲撃未遂事件のことを、思い出した。

私は当時NHK大阪局の府庁記者クラブのキャップをしていたが、同事件に深い関心を覚えたため、休暇をとって単独で渡韓し、既知の有力新聞社社長の紹介で政府公安機関の要人と面会し、事件の「詳細」を個人的に“取材”した。

その取材内容の詳細は、「公」には出来なかったが、思い出した序に、書斎に補完していた当時の「取材メモ」を探し出し、あらためて読み直してみた。

その韓国青瓦台奇襲は、1968年1月21日夜10時を期して決行する命令が、金日成首領から金正泰を通じて出された。青瓦台奇襲部隊は組長の金鐘雄大尉(事件後4日目に射殺)ら31名で、唯一生き残った金新朝も一員だった。

全員が機関短銃1丁(実弾300発)、TT拳銃1丁、対戦車手投げ弾1発、防御用手投げ弾8発と短刀で武装した。

奇襲部隊は、1組が青瓦台の2階を奇襲して朴正煕大統領と閣僚を暗殺、2組は1階を襲撃して勤務員全員を殺し、3組は警備員、4組は秘書室全員射殺というのが任務だったという。

16日の午後、黄街道延山基地を出発。途中軍事休戦ライン南方の非武装地帯を緊張しながら訓練通り過ぎ、ソウルに真っ直ぐのびる丘陵を辿った。歩哨所や検問に遭遇しなかったため。金組長は「南」の士気が乱れている所為だと勘違いした。このため、31人全員が隊列を組んで俄かに堂々と行軍するという行動に出た。

だが行軍しているうち、「戸迷い」にぶち当たった。所持した地図に従いソウルにいくら接近しても、「北」で教育されたような荒廃している筈のソウル市街は21日の夜になっても現れてこない。

南下すればするほど煌々とした市街地が現れてくるばかりだ。「これはソウルではない」。「じゃ、一体ここは何処なんだ」。「北」の教育が間違っているとは、一瞬たりとも気付かないミスを更に重ねた。

その上に韓国軍の服装、装備に身を固めている限り怪しまれることはないと思い上がった金組長が、敵地で初めて出会った韓国人2人に「訓練中に道に迷ったのだが、ソウルに行く道を教えてくれないか」と、さりげなく問うた。

奇襲隊に遭遇した2韓国人は、ソウルへの道筋を一応教えたものの、不審に思ったのだ。

<眼下に広がるソウルを韓国軍人が知らないなんておかしい。発音も韓国訛ではない。まして前年6月から「北」の武装スパイが上陸して韓国軍から射殺された事件も2人は知っていた>。2人は急ぎ山を降り、警察に通報した。

奇襲隊は21日夜9時、ソウル北方紫霞門の坂道を通過しようとして、警察の検問にひっかかった。尋問を受けた奇襲隊は慌てて機関短銃を乱射し、市バスと民家に見境なく手投げ弾を投げた。

奇襲隊は、青瓦台の800m手前まで迫りながら、韓国軍と警察の掃討作戦によりちりじり撃退された。2週間に及ぶ掃討作戦により、金新朝1名が逮捕され、他は全滅させられた。この銃撃戦で韓国側は、崔警察署長を含め68名が死亡している。

序でながら私の「メモ帳」を見ると、青瓦台襲撃に失敗した「北」は、10ヶ月後の11月2日、襲撃組長金鐘雄大尉ら31名の同期生120人のいわゆるゲリラ別斑が、韓国慶尚北道蔚珍郡と荏原道三に海上から「南」に進入している。

このゲリラ隊は、山岳地帯の小部落を武力で占領、赤化せよという工作命令を受けていた。部落民を集めて赤化を強要する「部落拉致事件」。事実従わない者は短剣で刺し、石で殴り殺すという虐殺を行っている。

「共産党は嫌い」と叫んだ李承福という10歳の少年の口を引き裂いて殺した。断崖絶壁をロープでよじ登り、部落を占領して住民を」拉致し、赤化地帯にするという想像を絶するこの「北」のゲリラ事件は、何故かわが国では余り知られていない。

「メモ帳」を見返しながら、これら青瓦台襲撃未遂事件、文世光事件がつながり、「北」による日本人大量拉致事件にも結びついていると、改めて考える。

「北」はこのような稚拙な急襲攻撃をすることは無いだろう。今後対韓にこれを背景に果たして今のどのような融和維持行事に生かして行くのだろうか。
  

2018年04月02日

◆人々の信仰と誠意を裏切るのか

宮崎 正弘


平成30年(2018年)3月31日(土曜日)通巻第5653号  

 「人々の信仰と誠意を裏切るのか、バチカンよ」と中国の地下信者ら
   バチカンと中国共産党の手打ちが近い、おそくともイースターまでに

 交渉は大詰めにきた、と多くのカソリック関係者がみている。長年対立
してきたバチカンが、中国と外交関係を回復するというのだ。

過去数十年、中国では信仰の自由はなく、宗教活動は抑圧され、教会は
破壊され尽くし、信者は地下へ潜った。表向きあるキリスト教会は、すべ
ての礼拝参加者が記録されているが、他方では、「共産党の指導の下に」
宗教活動をしている偽信者だと、地下のカソリック信者、全世界の信者は
見ている。

中国で地下に潜ったカソリック信者はおよそ1千万人。この人たちは中
国共産党が認めた地区の司祭を認めていない。ところが過去2年、新しい
法王になって以来だが、バチカンは中国が指名した偽司教を追認し、中国
共産党に阿ってきた。

 
深い失望、暗澹たる喪失感が宗教界に広がったのは台湾だけではない。
香港のキリスト教会はほぼ総立ちでフランセスコ法王の親中路線への傾斜
を「裏切り」と捉えている(『サウスチャイナ・モーニングポスト』、
2018年3月30日)。

バチカンと中国の関係回復はおそらくイースターの前後でしょう、と香港
の教会筋は予測する。そして、そのとき中国大陸の多くのカソリック信者
は、バチカンへの忠誠をやめ、信仰の熱心な司祭、司教は引退し、しずか
に去ることになるでしょうと香港の事情通は悲しみの表情で語ったと同紙
は伝えている。

教会の腐敗を糾弾したのはチェコのフス、そしてドイツのルターだった。
それからヨーロッパにおける宗教改革が開始され、19世紀にはニーチェが
でて、『神は死んだ』と言った。中国のカソリックも、まもなく「神は死
んだ」と言うのかも知れない。
       
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 B
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 「幕末」とはいったい何時始まって、何時終わったのか?
   歴史作家の冷徹な眼を通して激動の時代を客観的に振り返ると

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中村彰彦『幕末史 かく流れゆく』(中央公論新社)
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 幕末の激動期のことは多くの作家が書いた。主流は薩長の勝利史観を基
にしての西?、大久保、木戸という「維新の三傑」が主役だが、ときに脇
役の龍馬、晋作が大活劇を演じた小説もあり、あるいは先駆的役割を果た
した吉田松陰、武市瑞山、あるいは傍流でしかない新撰組やら田中新兵衛
らが主人公の短編小説も花盛りだった。


敗者となった徳川慶喜を持ち上げるひともいれば、榎本武揚を、勝海舟を
過大評価する向きもあった。しかし個人をあまりに英雄視し、カリスマ扱
いすると、作り話が肥大化して、史実とは大きくかけ離れた噴飯ものの時
代小説に化けたものもあった。


史家はと言えば、明治維新を是としてフランス革命になぞらえる試みや
ら、講座派とか、マルクス主義歴史観で裁断する硬直的な明治維新論も一
時期は流行ったが、いまは顧みられない。

大政奉還、版籍奉還、地租改正、憲法制定、議会開催の決定を単に近代主
義の進歩過程だとイデオロギー的に説く所論も、出版動向をみると少なく
なった。

学閥の従来的解釈を離れて、最近の若い書き手の評価には異色のもの が
でてきた。つまり従来の特定史観による一方的で浅薄な解釈は、執筆者
の出身地、学閥、個人的好みによって多彩であってもまちまちであり、そ
れぞれは薩摩に過剰に肩入れしたり、長州がつねに主役の物語になった
り、司馬遼太郎に到っては龍馬が維新の立役者となった。

感情移入がはげしく、最近は逆に会津史観が登場し、西?をけちょんけ
ちょんにけなす作品から、あるいは皇国史観のイデオロギー色が濃すぎ
て、内訌で自滅した水戸藩の悲劇を物語る作家もある。

ときに史実をハナから無視した乱暴な論法も目立つようだ。

さて本書である。

どの藩にも人物にも肩入れせず、史実は史実として、客観的に通史を描く
と、全体の幕末像がみごとな輪郭を描く。

まさに、題名のように幕末の歴史は「かく流れた」のだ。

資料読みとして知られる中村彰彦氏はデビュー作が佐川官兵衛であり、そ
の後、新撰組もたくさん書いたことでしられるけれども、小説ではたしか
に会津贔屓だが、理論では徹底的に客観的、中立的である。
 
薩摩の暴走と陰謀、長州の短慮、冒険心、水戸の思想偏重などをさらりと
片付け、本書はその折々の事件を、その歴史的な意味を再評価し、大事件
と脇役とをみごとに振り分け、歴史の深淵をのぞかせてくれる。

立項目は多彩だが、その叙述はきれいに時系列となっており、歴史作家の
多くが見落としがちだった節目節目の人事交代、事件処理、欧米列強の動
きと要人のクライマックスにおける発言などのなかから「歴史を動かした
要素」を基軸に措えなおしてみせた。

 従来ありがちな「勤王」「佐幕」とか、『開国』か『攘夷』かという二
元論ではなく、すべてが政局の流動かとともに輻湊したのだ。

そして著者はいうのだ。
「幕末」というのなら「幕初」と「幕央」はなぜないのか。幕末は明治政
府の発足でおわるというのが通説だが、ではいつから始まったのか。

著者は幕政の衰えが顕著となった「天保12年の幕府命令撤回」という「事
件」から幕府の衰退が始まり、つまりは『幕末』がこのとき開始され「西
南戦争」の決着をみて、終わったという史観を披露する。

 ひさしぶりに「読書をした」という感想である。