2018年05月28日

◆毛馬を出奔した蕪村の理由

石岡 荘十


インフルエンザというか、「はやり風邪」の記述を歴史の中にたどると、今で言う「新型インフルエンザ」はじつは昔から繰り返し起きていたことがわかる。だからいまさら「新型」というネーミングは「いかがなものか」と首をかしげる感染症や公衆衛生の専門家が少なくない。

南北朝時代を描いた歴史物語、「増鏡」にこんな記述がある。

「ことしはいかなるにか 、しはぶきやみはやりて、ひとおおくうせたまふ」「しはぶき」は咳のことだから「咳をする病で多くの人が死んだ」ということだ。また、「大鏡」には、1006年前の寛弘8年(1011年)6月、一条法皇が「しはぶきやみ」のため死亡したと書かれている。

ずっと時代を下って享保18年(1733年)、大阪市中で33万人が流行性感冒にかかり、2,600人が死亡。

注(蕪村が庄屋を引き継げず、庄屋:問屋・宿屋を売却して、毛馬を出奔した。家族も
身内も、蕪村に家督を継ぐがさせようとしたが、父親が死んだ以上、絵だけに頼って
江戸へ下り、俳人巴人を訪ねて、弟子となった。インフルエンザが人生を変えたI

この流行は江戸へ蔓延し、人々は藁人形で疫病神を作り、鉦(かね)や太鼓を打ち鳴らし、はやし立てながら海辺で疫病神を送った、とある。

これらの出来事は、いずれも6月、7月の暑い季節に起きており、疫学的に証明されたわけではないが、どうも、寒い時期に起きるいわゆる季節性の風邪とは違うようだ。

さらに、江戸時代には天下の横綱・谷風がはやり風邪にかかり本場所を休んで、連勝記録が止まってしまった。世間では「谷風もかかったはやりかぜ」と怖れ、四股名にひっかけて、はやりかぜのことを「たにかぜ」と呼んだそうだ。

天保6年(1835年)の「医療生始」という書物には「印弗魯英撒(いんふりゅえんざ)」の言葉が早くも見える。

そして1918年春から翌年にかけて、第1次世界大戦の最中、海の向こうではアメリカに端を発した史上最悪のインフルエンザ「スペイン風邪」がヨーロッパに持ち込まれて猛威をふるい、やがて全地球に蔓延する。

感染者は当時の全地球人口の三分の一の6億人、いろいろな説があるが死者は5000万人に達したといわれる。日本では、大正7年のことだ。当時の人口5500万人に対し最新の研究では死者は48万人に達していたと推定する説もある。当時の新聞の見出しはこうだ。

「西班牙風邪遂に交通機関に影響(東京朝日新聞 大正7年10月31日)」。「電信事務も大故障(読売新聞 大正8年2月6日)」---。

スペイン風邪については↓。
http://www.melma.com/backnumber_108241_4570052/

これらは明らかに、季節性のインフルエンザとは違った。スペイン風邪の病原体が「新型インフルエンザ」と同じA型インフルエンザH1N1と分かったのは、1933年になってからのことである。

つまり、いま問題になっている新型インフルエンザはじつは「新型」でもなんでもなく、「旧型」のリバイバルなのである。その後1997年、アラスカの凍土の中から発見された4遺体から、肺組織の検体が採取され漸くスペイン風邪の病原体の正体が科学的に裏付けられた。

スペイン風邪だけでなく、6月や7月の湿気の多い梅雨のむし暑い季節に流行った「しはぶきやみ」もじつはいまの新型インフルエンザのご先祖様の仕業だったかもしれない。

「新型インフルエンザは時々現れる。1580年以来10〜13回パンデミック(世界規模の蔓延)が発生している」(国立感染症研究所の岡部信彦情報センター長)のである。

アジア風邪は1956年に中国南西部で発生し、翌年から世界的に流行した。ウイルスはA型のH2N2亜型である。H、Nの詳しい説明は素人には手に負えないのでここでは省くが、新型インフルエンザH1N1の親戚筋、「いとこ」か「はとこ」だ。死者はスペインかぜの1/10以下であったが、抗生物質の普及以降としては重大級の流行であった。

40年ほど前、前回の「パンデミック」である香港風邪(H3N2)が1968年に発生。6月に香港で流行を始め、8月に台湾とシンガポールに、9月には日本に、12月にはアメリカに飛び火する。結局、日本では2,000人、世界では56,000人が死亡したと言われている。日本では3億円事件のあの年である。

10年前、1998年にも香港風邪が流行った。このときはH3N2ウイルスだったが、アジア風邪(H2N2)のフルチェンジだったといわれる。

一昨年2007年に流行ったAソ連型インフルエンザの先祖は、30年前の1977年のソ連風邪(H1N1)だ。因みに、ソ連と名前が付いているが、“原産地”、つまり発祥地は中国だといわれている。1977年5月に中国北西部で流行をはじめ、同年12月にシベリア、西部ロシア、日本へ、さらに翌年1978年6月にはアメリカへと飛び火。

ウイルスがスペイン風邪と同型だったということで、研究室に保存されていたスペイン風邪のウィルスが何かの理由で漏れ出したという憶測もあるくらいよく似ている。

これらスペイン、香港、ソ連の風邪は、いずれも近年も流行を繰り返しているA香港型インフルエンザのご祖先、鳥インフルエンザから変異した新種のウィルスによるものだといわれている。

「新型インフルエンザ」とは、人間はまだ感染したことがない新種のインフルエンザのことを言い、新種のウィルスであるため、人間にとっては免疫が働かないとされているが、じつは中にはリバイバル、ちょっと“化粧直し”をして姿を現すものもあることがわかる。

いま大騒ぎしている新型インフルエンザは英語では‘Swine Flu’という。

‘New Type Influenza’などとは言わない。「新型」とまったく別のインフルエンザのような印象を与えるネーミングをしているのは日本だけのようだ。いま流行っているのはブタ由来のインフルエンザなのだが、死亡率が高く本当に怖いのは鳥由来のインフルエンザ(’Avian Flu’ Bird Flu’)である。

過去にも何度か鳥インフルエンザの“震源地”となった中国大陸の関連情報について業界では、今ひとつマユツバだという見方もある。ことによったら香港風邪のリバイバル型が周辺国を窺っているかもしれない。

軍事的な脅威ばかりが声高に議論されているが、ウイルスに対する警戒を怠ってはならない。

2018年05月27日

◆北朝鮮が中国援助の下で

                         櫻井よしこ


「北朝鮮が中国援助の下で生き延びる最悪の事態もあり得ると認識すべきだ」

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は5月16日、部下の第一外務次官、金桂
冠氏に、「米国が圧力ばかりかけるのでは米朝首脳会談に応じるか否か、
再検討せざるを得ない」と発言させた。

桂冠氏はジョン・ボルトン米大統領補佐官が北朝鮮に「完全で、検証可能
で、不可逆的」を意味するリビア方式の非核化のみならず、ミサイル及び
生物・化学兵器の永久放棄も要求していること、制裁緩和や経済支援はこ
れらが完全に履行された後に初めて可能だと言明していることに関して、
個人名を挙げて激しく非難した。

ボルトン氏はトランプ政権内の最強硬論者として知られる。氏は核・ミサ
イル、化学兵器を全て廃棄しても、それらを作る人材が残っている限り、
真の非核化は不可能だとして、北朝鮮の技術者を数千人単位(6000人とす
る報道もある)で国外に移住させよとも主張しているといわれる。

拉致についても、米朝会談で取り上げると言い続けているのが氏である。

正恩氏にとって最も手強い相手がボルトン氏なのである。だから桂冠氏が
「我々はボルトン氏への嫌悪感を隠しはしない」と言ったのであろう。

それにしても米朝首脳会談中止を示唆する強い態度を、なぜ正恩氏はとれ
るのか。理由は中国の動きから簡単に割り出せる。桂冠発言と同じ日、中
国の習近平国家主席が北朝鮮の経済視察団員らと会談した。中国の国営通
信社、新華社によると、北朝鮮経済視察団は中国が招待したもので、北朝
鮮の全ての「道」(県)と市の代表が参加し、「中国の経済建設と改革開
放の経験に学び、経済発展に役立てたい」との談話を発表した。

中国が北朝鮮の後ろ盾となり、経済で梃子入れし、米国の軍事的脅威から
も守ってやるとの合意が中朝の2人の独裁者間で成立済みなのは明らかだ。

米国はどう反応したか。ホワイトハウス報道官のサラ・サンダース氏は、
北朝鮮の反応は「十分想定の範囲内」「トランプ大統領は首脳会談が行わ
れれば応ずるが、そうでなければ最大限の圧力をかけ続ける」と述べると
共に、非常に重要な別のことも語っている。

ボルトン氏のリビア方式による核放棄について、彼女はこう語ったのだ。

「自分はいかなる議論においてもその部分は見ていない、従ってそれ(リ
ビア方式)が我々の目指す解決のモデルだという認識はない」

同発言を米ニュース専門テレビ局「CNN」は「ホワイトハウスはボルト
ン発言を後退させた」と報じた。

トランプ大統領の北朝鮮外交を担うボルトン氏とポンペオ米国務長官の間
には微妙な相違がある。

正恩氏は、習氏と5月7、8の両日、大連で会談した直後の9日にポンペオ氏
を平壌に招き、3人の米国人を解放し、「満足な合意を得た」と述べた。

ポンペオ氏は米国に戻るや「金(正恩)氏が正しい道を選べば、繁栄を手
にするだろう」などと述べ、早くも米国が制裁を緩和し、正恩氏に見返り
を与えるのかと思わせる発言をした。

ボルトン氏は対照的に、核・ミサイル、日本人拉致被害者について強い発
言を変えてはいない。

国務長官と大統領補佐官の間のこの差を正恩氏は見逃さず、ボルトン氏排
除を狙ったのであろう。米国を首脳会談の席につかせ、段階的な核・ミサ
イル廃棄を認めさせ、中国の経済援助を得、中国の抑止力で米国の軍事行
動を封じ込める思惑が見てとれる。

「制裁解除のタイミングを誤れば対北朝鮮交渉は失敗する」と安倍晋三首
相は警告し続けている。トランプ氏がその警告をどこまで徹底して受け入
れるかが鍵だ。同時に認識すべきことは、北朝鮮が中国の援助の下、核・
ミサイルを所有し、拉致も解決せず、生き延びる最悪の事態もあり得る、
まさに日本の国難が眼前にあるということだ。
『週刊ダイヤモンド』 2018年5月26日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1232 

◆「黄砂アレルギー」に注意

毛馬 一三


花粉症歴の経験が全く無い筆者にとって、軽い風邪症状の一種かなと思って、余り気にも止めていなかった。

ところがとんでもない。咳も痰も出るようになった。

そこで、慌てて近くの内科診療所に飛び込んだ。内科医は喉の症状を見た途端、「炎症がひどいですね」という。「原因は?」と訊いたら、「飛来してくる黄砂の黴によるものと思われます。花粉症ではありません」と教えてくれた。

同医師によると、黄砂によるいろんな健康被害で訪れる患者が、急増しているという。同医院から、

・抗生物質―フロモックス錠100mg(毎食後1錠・3日間分)
・咳を鎮める薬―メジコン錠15mg(毎食後2錠・7日分)
・痰や膿を薄めて、痰や鼻汁を出しやすくする薬―ムコダイン錠500mg(毎食後1錠・7日分)
・胃薬―セルベックスカプセル50mg(毎食後1カプセル・7日分)薬を貰った。

だが、マスクを付けて外出を余儀なくさせられた1週間が過ぎても喉の炎症と咳、痰共に治まる気配が無い。再診の結果、まだ喉の炎症は完治してないと診断され、改めて下記の薬を貰った。

・咳を鎮める薬―メジコン錠15mg(毎食後2錠・7日分)
・痰や膿を薄めて、出しやすくする薬―クリアナール錠200mg(毎食後1錠・7日間分)
・炎症を抑えて腫れや痛みを和らげる薬―ダーゼン5mg錠(毎食後1錠・7日分)
・SPトローチ0.2mg(28錠・1日4回)
・アズノールうがい液4%(5ml・1日4回)

2度目の薬を飲んだり、うがいを励行したところ、数日が経過してやっと喉の痛みや違和感がなくなり、咳と痰も出なくなった。

喉にこのような強度な症状が出たのは初めてのことだ。しかも気にはなっていた飛来の「黄砂」によるものだ。

今強烈になっている中国の大気汚染と原因が重なっているらしく、中国から飛来する「黄砂と大気汚染」が、日本に被害をなすりつけているのだ。気象庁も「中国で黄砂が急激に発生してる」と指摘している。日本が被害者になるのか。無性に腹が立つ。

話は後先になるが、<黄砂(こうさ)とは、中国を中心とした東アジア内陸部の砂漠または乾燥地域の砂塵が、強風を伴う砂嵐などによって上空に巻き上げられ、春を中心に東アジアなどの広範囲に飛来し、地上に降り注ぐ気象現象。あるいは、この現象を起こす砂自体のこと>である。

細かい砂の粒子や、粒子に付着した物質、黄砂とともに飛来する化学物質などにより、さまざまな健康被害が生じる。

即ち、咳、痰、喘息、鼻水、痒みといった呼吸器官への被害や、目や耳への被害が目立つ。黄砂が多い日には、花粉症、喘息、アトピーなどのアレルギー疾患の悪化が見られる。>という。 
参考―フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

花粉症で悩まされるだけでなく、黄砂アレルギーで健康被害を煩わされるのでは、堪ったものではない。

ところが肝腎の黄砂による呼吸器官への被害が、増えていることにはあまり知られていないようだ。

黄砂の飛来が顕著な九州や関西では、既にこの被害が出て問題化しているが、全国にも広がるだろう。

黄砂の飛来が予測される時は、TVの「天気予報」が早めに知らせてほしい。

しかも喉などに異常を感じたら、医療機関で診察を早めに受けられることをお勧めしたい。(了)     


2018年05月26日

◆北朝鮮の非核化に言及なし

加瀬 英明


北朝鮮の非核化に言及なし 米朝首脳会談で成果を掴めるか

4月27日に全世界が注目するなかで、文在寅(ムンジェイン)大統領と金正
恩(キムジョンウン)委員長による南北首脳会談が、板門店の韓国側にある
「平和の家(ピンファウィ・チプ)」で行われた。

李朝時代の王宮の衛兵(ウイビョン)の、ど派手な衣装をまとった儀仗兵が
堵列するなど、文、金の2人の大根役者(オルガソイ)が演じた、まさに3
流の“韓流ドラマ”だった。

私は20代から朝鮮語を学んだが、韓国人だったら、「インマンサルソ」
(口ばっかり)というところだ。「インマンサルソ・アンデ」になると、
「いい加減なことをいうな」と、叫ぶことになる。

文在寅大統領が、個人的な功名心から、オリンピックの政治利用が固く禁
じられているのにもかかわらず、平昌(ピョンチャン)冬季大会に北から高
位の代表団や、美女応援団・合唱団を招いて、空疎な“南北融和”を演出し
たのが、切掛けとなって、トランプ大統領が“勇み足癖”から、米朝首脳会
談に応じることになった。

文在寅――ムン・ジェイン大統領は、“従北(ジョンプク)”として知られ、韓
国の真当な国民から、「文災難(ムン・ジェアン)」と、呼ばれている。
もっとも、韓国のマスコミは政権を支持する国民を「市民(シミイン)」、
政権を批判する国民を「右翼(ウイク)」「保守派(ポスパ)」と、蔑んでいる。

それにしても、日本の大手テレビのキャスターたちが、今回の南北首脳会
談の映像を背景にして、「歴史的な会談」と声を潤(うる)ませて連発する
のに、きっと韓流ドラマの見過ぎなのだと、思った。

トランプ大統領は、1ヶ月以内に予定されている米朝首脳会談が、行われ
ない可能性もあると述べているが、そうなってほしいものだ。

金正恩がよほどの愚か者でないかぎり、北朝鮮が核兵器を手放すことは、
ありえない。

これまで、金正恩委員長は「朝鮮半島の非核化」を唱えても、「北朝鮮の
非核化」に言及したことがない。

北朝鮮に対しては、南北首脳会談も、米朝首脳会談も行なうことなく、米
日韓、中国を加えた国連による経済制裁を、粛々と強めてゆくべきだった。

トランプ大統領が金委員長の前に、米朝首脳会談というニンジンをぶら下
げなければ、金委員長が窮鳥を演じて、北京の習近平主席のもとに、走る
ことがなかった。

米朝首脳会談が「世紀のショー」として行われたとしても、ニュースを娯
楽だと勘違いしているテレビを喜ばせるだけで、空騒ぎに終わることとな
ろう。

トランプ大統領としては、米朝首脳会談に臨んで、何も成果がえられず、
手ぶらで帰ることになったら、「軽挙」だったということになって、沽券
(こけん)が大きく傷ついてしまう。

といって、北朝鮮に軍事攻撃を加える勇気はあるまい。

 そこで、北朝鮮が提案してきた「北朝鮮の非核化」ならぬ、「朝鮮半島
の段階的非核化」へ向けて、米朝交渉を続けてゆくことになるのではないか。

北と話し合っているあいだに、制裁を強めることは難しい。北朝鮮は中国
を後盾として時間を稼ぎ、ミサイル試射、核実験を行わなくても、性能を
向上させることができる。
 
だが、そのあいだ戦争は起らない。日本としては、“平和ボケ”から目を覚
まして、真剣に防衛力の強化に励むべきだ。「鬼のいぬ間に洗濯」だ。

◆日本よ自立せよ、米国は保護者ではない

櫻井よしこ


朝鮮半島を巡って尋常ならざる動きが続いている。金正恩朝鮮労働党委
員長は、3月26、27の両日、北京で習近平国家主席と初の首脳会談をし
た。5月7日と8日には、大連で再び習氏と会談した。5月14日には平壌から
重要人物が北京を訪れたとの情報が駆け巡った。

北朝鮮はいまや中国の助言と指示なくして動けない。正恩氏は中国に命乞
いをし、中国は巧みに窮鳥を懐に取り込んだ。

米国からは、3月末にマイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官が平壌
を訪れ、5月9日には国務長官として再び平壌に飛んだ。このときポンペオ
氏は、正恩氏から完全非核化の約束とそれまで拘束されていた3人の米国
人の身柄を受け取り、13時間の滞在を満面の笑みで締めくくった。

その前日にトランプ大統領はイランとの核合意離脱を発表した。14日には
在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移した。

一連の外交政策には国家安全保障問題担当大統領補佐官、ジョン・ボルト
ン氏の決意が反映されている。

中国はこの間、海軍力強化を誇示した。4月12日には中国史上最大規模の
観艦式を南シナ海で行い、習氏が「強大な海軍を建設する任務が今ほど差
し迫ったことはない。世界一流の海軍建設に努力せよ」と檄を飛ばした。
5月13日には中国初の国産空母の試験航海に踏み切り、当初2020年の就役
予定を来年にも早める方針を示した。

2月に米国が台湾旅行法を上院の全会一致で可決し、米国の要人も軍人も
自由に台湾を訪れることが出来るようになったが、中国はそうした米国の
意図を力で阻む姿勢を見せていると考えるべきだろう。

こうした状況の下、ボルトン氏は北朝鮮にこの上なく明確なメッセージを
発し続けた。

「リビアモデル」

4月29日、CBSニュースの「フェース・ザ・ネーション」で、5月6日、
FOXニュースで、北朝鮮には「リビアモデル」を適用すると明言した。
カダフィ大佐が全ての核関連施設を米英の情報機関に開放し、3か月で核
のみならず、ミサイル及び化学兵器の廃棄を成し遂げたやり方である。

正恩氏は3月の中朝会談や4月27日の南北首脳会談で非核化は「段階的」に
進め、各段階毎に経済的支援を取りつけたいとの主張を展開していたが、
ボルトン発言はそうした考えを明確に拒否するものだった。

それだけではない。ボルトン氏は日本人や韓国人の拉致被害者の解放と米
国人3人の人質解放を求めた。その要求に応える形で、正恩氏は前述のよ
うにポンペオ氏に3人の米国人を引き渡した。

ポンペオ氏の平壌行きに同行を許された記者の1人、「ワシントン・ポス
ト」のキャロル・モレロ氏が平壌行きの舞台裏について書いている。氏は
5月4日には新しいパスポートと出発の準備をするよう指示を受けた。3日
後、4時間後に出発との報せを受けた。アンドリューズ空軍基地の航空機
には、ホワイトハウス、国家安全保障会議、国務省のスタッフに加えて、
医師と心理療法士も乗り込んでいた。

ポンペオ氏の再度の平壌行きは正恩氏が完全な非核化を告げ人質解放を実
行するためだったわけだ。4月29日と5月6日のボルトン氏の厳しい要求を
聞いて正恩氏がふるえ上がり、対応策と支援を習氏に求めるために5月7~8
日に大連に行ったということであろう。

中朝会談について、5月14日の「読売新聞」朝刊が中川孝之、中島健太郎
両特派員の報告で報じている。それによると、大連会談では正恩氏が「非
核化の中間段階でも経済支援を受けることが可能かどうか」を習氏に打診
し、習氏が「米朝首脳会談で非核化合意が成立すれば」可能だと答えてい
たそうだ。

また、正恩氏が「米国は、非核化を終えれば経済支援すると言うが、米国
が約束を守るとは信じられない」と不満を表明したとも報じられた。

「読売」の報道は、大連会談で中国の支援を得た正恩氏が、中国の事実上
の指示に従ってその直後のポンペオ氏との会談に臨んだことを示唆してい
る。正恩氏が米国の要求を受け入れたことで、米国側はいま、どのように
考えているかを示すのが、5月13日の「FOXニュース」でのポンペオ発
言だ。氏は次のように質問された。

「金氏が正しい道を選べば、繁栄を手にするだろうと、あなたは11日に発
言しています。どういう意味ですか」

ポンペオ氏は、米国民の税金が注ぎこまれるのではなく、米企業が事業展
開することで北朝鮮に繁栄がもたらされるという意味だとして、語った。

「北朝鮮には電力やインフラ整備で非常に大きな需要がある。米国の農業
も北朝鮮国民が十分に肉を食べ、健康な生活を営めるよう手伝える」

天国と地獄ほどの相違

同日、ボルトン氏もCNNの「ステート・オブ・ザ・ユニオン」で語って
いる。

「もし、彼らが非核化をコミットするなら、北朝鮮の展望は信じられない
程、強固なもの(strong)になる」「北朝鮮は正常な国となり、韓国のよ
うに世界と普通に交流することで未来が開ける」

ボルトン氏は、米国が求めているのは「完全で、検証可能で、不可逆的な
核の解体」(CVID)であると述べることも忘れはしなかった。「イラ
ンと同様、核の運搬手段としての弾道ミサイルも、生物化学兵器も手放さ
なければならない。大統領はその他の問題、日本人の拉致被害者と韓国の
拉致された市民の件も取り上げるだろう」と明言した。

ボルトン氏とポンペオ氏の表現には多少の濃淡の差があるが、米中北の三
か国で進行していることの大筋が見えてくる。完全な非核化を北朝鮮が米
国と約束し、中国がその後ろ盾となる。米国はリビアモデルの厳しい行程
を主張しながらも、中国の事実上の介入もしくは仲介ゆえに、北朝鮮が引
き延ばしをしたとしても軍事オプションは取りにくくなる。中国の対北朝
鮮支援が国連決議に違反しないかどうかを、米国も国際社会も厳しく監視
するのは当然だが、中国は陰に陽に、北朝鮮の側に立つ。

これまではここで妥協がはかられてきた。今回はどうか。米国と中国の、
国家としての形や方向性はおよそ正反対だ。両国の国際社会に対するアプ
ローチには天国と地獄ほどの相違がある。台湾、南シナ海、東シナ海、ど
の断面で見ても、さらに拉致問題を考えても日本は米国と共に歩むのが正
解である。ただ、米国は日本の保護者ではない。私たちは米国と協力する
のであって依存するのではない。そのことをいま、私たち日本国民が深く
自覚しなければ、大変なことになると思う。

『週刊新潮』 2018年5月24日号 日本ルネッサンス 第803号

◆健康百話・「治療」の前にまず「予防」

向市 眞知 

 
医療が「治療」をおこなうだけでなく、「治療」の前に「予防」を、そしてそのあとに「社会復帰」という概念を位置づけるようになってだいぶ経ちました。 そのため医療は、在宅生活にも意識を向けるようになりました。

今では入院患に対して「退院に向けて心配なことはありませんか?」と、医療の側から患者の療養生活にまで援助を行なう時代になりました。

 定年後奥さんと2人暮らしをしておられた人が、脳梗塞で倒れ入院してこられた時の例です。この患者は、集中治療室で管理をうけて意識も回復し、幸い10日後一般病棟に移ることができました。ですが、「一命をとりとめた」とホッとしたその瞬間、「これからどうなるのだろうか?」という今後の心配に奥さんはとらわれたのです。

「どこまで回復できるのだろうか?」「家に連れて帰れるのだろうか?」「このままでは私ひとりでは介護できない」「入院費はどのくらいかかるのだろうか?」と不安なことが次々と表れてきます。

病院では、医師や看護師、ソーシャルワーカーが、「退院後のくらしについて心配はありますか?」と、家族にたずねて、退院計画を一緒に立てるシステムをとっています。 「右半身マヒは残りますが、杖歩行ができるようリハビリを頑張ってください」と担当医が回復のゴールについて説明します。

でもこれだけの話だけではこれからの生活をイメージすることはできません。
「お風呂は入れるのかしら?」
「トイレは1人で行けるかしら?」
「食事は1人で食べられるのかしら?」
「階段は登れるのかしら?」など、わからないことだらけです。考えれば考えるほど、家族はパニックになってしまい「こんな状態では連れて帰れない」と逃げ出したくなってしまいます。

そこで退院調整担当者が、患者や家族と相談することになります。時々、「早く退院させようとしているのではないか」と、家族の方から勘違いされることがありますが、全くそんなことはありません。

自宅のお風呂の構造、トイレまでの距離、玄関段差などを聞き、リハビリテーションの計画に取り入れますし、手すりをつけたり段差解消をしたり、住宅改修も考えてゆけば、身体にマヒがあっても自立した生活が可能になるからです。

もちろん、家族の体調や希望も無視できないことです。たとえば奥さんが腰痛の場合や、息子さんと同居していても仕事があり、昼間は「独居」ということもあるからです。
 
家族から得た情報も含め、病院の関係者でカンファレンスを開きます。そして、リハビリテーション計画と看護計画を立てることになります。早期の計画・立案は入院治療の有効活用の第一歩です。

お風呂の入り方、衣服の着脱練習、食事の工夫、介助方法の工夫が、訓練士、看護師、栄養士により実施されることになります。スタッフがバラバラにかかわるのではなく、目標をきめて、その目標に向けて協同でかかわることが有効です。

かなり早い時期から、退院に向けてのお話をすすめて行くことになりますが、退院計画は早期に立てる必要があることを理解していただけたと思います。また、退院計画は一方的に病院側が決めるものではありません。患者の希望の「どこでどのように暮らしたいか」を基本に、病院側が「療養プラン」をアレンジしていくことになります。

退院計画は病院側と患者側との協同で立案するものです。その意味で病院に話しても仕方ないとか、病院では聞いてもらえないと早合点せずに、ご自宅の生活の様子やご希望を病院にお話し下さることが適切な計画を立てる一助となると思います。病院にある相談室やソーシャルワーカーをご利用されるのが一番話しやすい方法です。                         (完)              
大阪厚生年金病院 前ソーシャルワーカー

2018年05月25日

◆米朝会談中止の背景を探る

杉浦 正章

 
文在寅の「仲裁外交」失敗 トランプ、段階的非核化で“呼び水”

世紀の米朝会談が流れた。トランプが6月12日の会談予定を中止した。そ
の背景には韓国大統領文在寅のトランプへのミスリードがあったようだ。

経緯を見れば、まず22日の米韓首脳会談に先立つ米韓調整で急速にトラ
ンプと金正恩との会談へのムードが盛り上がった。文が“垂涎の話し”を伝
えたからに違いない。

ところが北の対米強硬路線は変化の兆しを見せず、トランプは文在寅に対
し電話で「なぜ、私に伝えた個人的な確信(assurance)と北朝
鮮の公式談話内容は相反するのか」と詰問している。従ってトランプと文
の会談は文の言い訳で、相当気まずいものとなったようだ。

これを裏付けるようにニューヨークタイムズ(NYT)は20日、「トラ
ンプ米大統領がかけた電話は文在寅韓国大統領の訪米のわずか3日前だっ
た」とし「これは文大統領がワシントンに来るまで待てないという、トラ
ンプ大統領の不満(discomfort)を表しているという解釈が米
政府で出ている」と報じた。

要するに、トランプは韓国から伝え聞いた北朝鮮の非核化交渉の意志を
信じていたが、違う状況へと展開し、韓国の「仲裁外交」が失敗したと言
うことだ。

トランプは金正恩に送った書簡で6月12日の会談断念の理由について「会
談を楽しみにしていたが残念なことに北朝鮮の最近の声明で示されている
怒りや敵意を受けて私は現時点で会談を開くことは適切でないと感じた」
と述べた。

トランプが会談を断念した理由をもう一つ挙げれば、何と言っても水面下
の交渉で米国の北に対する非核化要求の内容が極めて厳しかったことが挙
げられる。これが北を硬化させたことにあるのだろう。

また補佐官ボルトンが北の非核化でカダフィ殺害に至る「リビア方式」に
言及したが、金正恩は自分もカダフィと同様の運命をたどりかねないと感
じて拒絶反応を示したのだろう。

北朝鮮外務省第1次官の金桂冠は16日「我が国は大国に国を丸ごと任せ悲
惨な末路を迎えたリビアやイラクではない」として、「リビアモデル」と
これに言及したボルトン補佐官に強い拒否感を示している。

この発言に対してトランプは、怒りをあらわにして「このまま会談をやっ
てもいいのか」と周辺に漏らすに至った。副大統領ペンスも「トランプ大
統領を手玉に取るような行動は大きな過ちとなる。

会談で大統領が席を立つ可能生もある」と会談決裂の可能性まで示唆し
た。しかし北の“挑発”発言は止まらず、外務省で対米交渉を担当する次官
崔善姫は公然とペンスを批判「米国問題に携わる者として、ペンス副大統
領の口からそのように無知でばかげた発言が飛び出したことに驚きを禁じ
得ない」とのべた。

加えて「我が国は米国にこれまで経験も想像すらもしたことのない恐ろし
い悲劇を味わわせる可能性がある」とすごんだ。「米国は『核対核の対
決』で北朝鮮と相まみえることになる」ともまくしたてた。

この崔善姫発言は米朝首脳会談の中止を改めて確定的にしたものと言えよう。

一方、日本政府には早くから会談の実現性に疑問を持つ空気が強かった。
外相河野太郎は「条件が整わないなら米朝会談をする意味がない」と述べ
ると共に「会談をすることが目的ではなく、北朝鮮の核、ミサイル、拉致
問題の解決が究極の目的」と日本の立場を強調している。

官房副長官野上浩太郎は、「トランプ大統領が米朝首脳会談延期の可能性
に言及したことは北朝鮮の具体的行動を引き出すためのもの」と分析して
いる。

こうして6月12日の会談は実現しない方向が定まったが、トランプが完全
に断念したかというとそうでもなさそうである。トランプは「今は適切で
はない」と述べており、望みを捨てていないのだろう。

とりわけトランプの反移民政策やロシアとの不透明な関係への不満から野
党・民主党に追い風が吹いている秋の中間選挙をひかえて、北との和解は
大きなプラス材料になる。

トランプは北への圧力を維持しつつ、秋までに会談実現に向けてのアヒル
の水かきが続くのだろう。トランプが北に求める非核化について「直ちに
完了してほしいが、段階的に行う必要が少しあるかもしれない。段階的で
も迅速に行うべきだ」と述べたのは、北への呼び水の一環であろう。

◆朝鮮半島勢力巡る歴史的闘いが展開中も

櫻井よしこ


「朝鮮半島勢力巡る歴史的闘いが展開中も日本の野党は政治責任を果た
していない」
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の動きが派手派手しい。5月7日から8
日、妹の与正氏と共に中国の大連を訪れた。習近平国家主席と共におさ
まった幾葉もの写真を北朝鮮の「労働新聞」に掲載し、米国に対して「僕
には中国がついているぞ」と訴えるのに懸命である。

懐の窮鳥を庇うように、中国共産党を代弁する国営通信社の新華社は「関
係国が敵視政策と安全への脅威をなくしさえすれば核を持つ必要はない」
と正恩氏が語ったと伝えた。

習氏は8日、トランプ米大統領に電話し、「米国が北朝鮮の合理的な安全
保障上の懸念を考慮することを希望する」と語った。正恩氏を囲い込み、
米国の脅威から守ってやるという中国の姿勢であろう。

9日には北朝鮮の招待でポンペオ米国務長官が平壌を訪れ正恩氏と会談、
北朝鮮に拘束されていた米国人3人は解放されて、ポンペオ氏と共に米東
部時間で10日未明にワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地に到着した。

トランプ大統領から早速、安倍晋三首相に電話があった。米国人3人の解
放に祝意を述べた首相の思いは、日本人拉致被害者の上にあったことだろう。

この間の9日、東京では日中韓の首脳会談が開催されたが、日本と中韓の
間にある大きなギャップは埋めきれていない。会談後の記者会見で安倍首
相は朝鮮半島情勢への対応を三首脳で綿密に話し合ったと述べたが、日米
の主張する「完全で検証可能な、不可逆的な核・弾道ミサイルの廃棄」
(CVID)という言葉も、北朝鮮への圧力という表現も3首脳の口から
は出なかった。

拉致について安倍首相は、「早期解決に向けて、両首脳の支援と協力を呼
びかけ、日本の立場に理解を得た」と述べたが、中韓両首脳は拉致には共
同記者発表の席で言及していない。彼らの発言は徹底して自国の国益中心
である。

中国の李克強首相は朝鮮半島の核に関して、「対話の軌道に戻る」ことを
歓迎し、経済に関しては「自由貿易維持」を強調した。北朝鮮の核問題は
時間をかけて、話し合いで折り合うべきだというもので、軍事力行使をチ
ラつかせる米国への牽制である。自由貿易に関する発言も、米国第一で保
護貿易に傾く米政権への対抗姿勢だ。

韓国の文在寅大統領は、日中双方が板門店宣言を歓迎したと語った。拉致
にも慰安婦にも触れずに言及した板門店宣言は、2分されている朝鮮民族
の再統一を前面に押し出したものだ。「北朝鮮の非核化」ではなく、米韓
同盟の消滅をも示唆する「朝鮮半島の非核化」を強調するものでもある。

今回の首脳会談からは3か国が足並みを揃えて懸案を解決する姿勢より
も、同床異夢の様相が浮き彫りにされた。

10日の電話会談でトランプ氏は、北朝鮮問題で「日本はビッグ・プレー
ヤーだ」と述べたという。いま、朝鮮半島勢力を巡って日清戦争前夜と
いってもよい歴史的な闘いが展開中だ。朝鮮半島を中国が握るのか、米国
が握るのか、そのせめぎ合いの最前線に私たちはいる。

日本の命運を大きく揺るがすこの局面で叡知を集め、対策を練り、何とし
てでも拉致被害者を取り戻し、北朝鮮の核、ミサイル、生物兵器をなくす
べき時だ。日本全体が団結することなしには達成できない課題である。

だが、国会審議を拒否して半月以上も連休した野党は、国会審議に戻った
かと思えば、まだ、加計学園問題をやっている。立憲民主党の長妻昭氏は
「疑惑は深まったというよりも、予想以上に深刻だ。

徹底的に腰を据えて国会でやらないといけない」と語った。だが、獣医学
部新設は既得権益と岩盤規制を打ち破る闘いで、改革派がそれを打ち破っ
ただけのことだ。長妻氏の非難は的外れである。朝鮮半島大激変の最中、
国民を取り戻し、国民の命を守るにはどうすべきかを論じ、実行しなけれ
ばならない。野党の多くは政治の責任を果たしていない。

『週刊ダイヤモンド』 2018年5月19日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1231

◆中性脂肪が気になる人の食事療法

庄司 哲雄( 医師)


<中性脂肪とは>

血液中の中性脂肪(トリグリセリドともいう)には二つの由来があり、食事で摂取した脂肪が小腸から吸収され血液中に現われたものと、肝臓で炭水化物から脂肪に作り変えられて血液中に放出されたものがあります。

いずれも、体の組織でエネルギーとして利用されるのですが、血液中の濃度が極端に(1000mg/dL以上)増えすぎますと、急性膵炎を引き起こすことがありますし、それほどでない場合でも(150mg/dL以上)動脈硬化の原因のひとつになります。

<中性脂肪を下げる食事の第一歩>

食事療法の基本は、摂取エネルギーの適正化です。脂肪の摂りすぎのみならず、炭水化物の過剰も中性脂肪を増やしてしまいますので、全てのトータルを適正にする必要があります。
身体活動度にもよりますが、標準体重1Kgあたり25〜30kcal/日程度が適切です。肥満気味の方は少なめにし、減量を目指します。アルコール多飲や運動不足は中性脂肪の大敵です。

<炭水化物と脂肪のどちらをひかえるか>
各人の食習慣により異なる場合がありえますが、炭水化物1グラムで4kcal、脂肪1グラムで9kcalですから、脂肪摂取を控えることが大変効果的です。

<ジアシルグリセロールとは>

少し難しくなりますが、中性脂肪とはグリセロールという物質に脂肪酸が3つ結合した構造(TAG)をしており、いわゆる「油」です。これに対して、脂肪酸が2つだけ結合した油もあり、これをジアシルグリセロール(DAG)といいます。同じような油であっても、小腸で吸収されてからの代謝が異なるため、中性脂肪の値や体脂肪への影響の程度に差があります。

通常の油TAGは、小腸で膵リパーゼという酸素のはたらきで、脂肪酸が2つはずれ、脂肪酸ひとつだけが結合したモノアシルグリセロール(MAG)に分解されます。それぞれは吸収された後、小腸でまた中性脂肪に再合成され、血液中に放出されます。

一方、DAGは中性脂肪へ再合成されにくいため、食後の中性脂肪の上昇が小さく、また体脂肪の蓄積も少ないといわれています。最近、DAGを利用した機能性食品が開発されています。しかし、DAGの取りすぎもカロリー 過剰につながりますので、通常の油TAGとの置き換え程度にすべきでしょう。

<脂質低下作用のある機能性食品>

動物に含まれるステロールという脂質の代表はコレステロールですが、
植物には植物ステロールという脂質が含まれます。これは小腸でのコレステロール吸収を抑制する働きがあります。

<専門医に相談すべき病気>

中性脂肪の増加する病態には、糖尿病やある種のホルモン異常、稀には先天的な代謝障害もありますので、一度は専門の先生にご相談いただくのも大切だと思います。
<大阪市立大学大学院代謝内分泌病態内科学  >

2018年05月24日

◆米韓、北への「不可侵」を表明

杉浦 正章


米朝首脳会談前に和解ムード トランプ南北統一に言及


韓首脳会談は、6月12日に予定される米朝首脳会談に向けて、慎重姿勢の
トランプを韓国大統領文在寅が説得する構図が浮かび上がった。結局22
日の会談では、トランプと文在寅は「米朝会談が支障なく開かれるよう最
善を尽くす」方向で一致した。

ワシントンでは曲折をたどっても会談は実現するとの見方が強まってい
る。しかしそれも「金正恩はノーベル賞を待望するトランプに対して時間
がたてば消える程度の非核化の約束をしようとしているかもしれない」と
ニューヨークタイムズ(NYT)が皮肉っており、水面下のやりとりがどう
進むかが焦点だ。

発表によるとトランプと文は「北が信用出来るような体制保障について意
見を交わし、北に対する『不可侵』の約束が必要なことで一致した」とい
う。また南北が板門店での首脳会談で合意した「終戦宣言」を米国、韓
国、北朝鮮の3か国で合意に持ち込むことでも一致した。

ただトランプは北朝鮮との首脳会談について「会談が開かれればいいが、
今回開かれなければ次回に開かれるだろう」となお懐疑的な立場を崩して
いない。「来週分かる」とも述べた。まだ米朝会談の延期もあり得るとい
う姿勢である。
 トランプは文との会談で、朝鮮半島の将来についての鳥瞰図を描いて見
せた。「南北朝鮮はいつかは一緒になり一つの国に戻る。南北がそれを望
むなら私もそれで良い」と述べた。トランプは既に机上にある「北の非核
化と終戦宣言。その後の経済協力」から大きく歩を進め、南北統一への支
援に初めて言及したことになる。
 これに関連して3月末と5月の二度にわたって金正恩と会談した米国務
長官ポンペオは23日、下院外交委員会の公聴会で、金正恩との会談で正
恩が「体制保証」を求めたことを明らかにしている。さらに金正恩はポン
ペオに対して「朝鮮戦争を終結させ、平和条約を締結する」意志を表示す
ると共に「我々の非核化の方針と意思を疑わないでほしい」と伝えたと言
われる。ポンペオは公聴会に提出した文書で米朝首脳会談について、「適
切な取引が机上になければ、丁重に立ち去ることになる」と述べた。これ
は水面下で進んでいるとみられる米朝調整に向けて“牽制球”を投げたもの
だろう。

一方でNYTはトランプの参謀の懸念として「大統領がノーベル賞を待望し
ている一面があり、これを看破した金正恩が時間がたてば忘れるような約
束を準備している可能性がある」と、金が“ノーベル賞”を“まき餌”にして
トランプをおびき寄せようとしている側面を報じている。

さらに同紙は、米政府関係者が「金正恩が米朝会談で今後半年以内に核兵
器の一切を放棄し、関連施設を閉鎖するタイムテーブルに同意する」と予
想したことをとらえて「こうした日程は極めて無理な計画だ」と否定的見
解を述べている。

北朝鮮の後ろ盾の中国は中国外務省報道局長の陸慷が23日、米国と北朝鮮
の双方に対し、「問題の政治解決プロセスは得難い歴史的好機を迎えてお
り、米朝双方が好機をつかみ、それぞれの懸念を解決してほしい」と強調
した。

トランプは中国を強く牽制する発言も繰り返した。「金正恩氏が習近平国
家主席と2度目の会談をしてから態度が変わり、落胆した。」と述べた。
これは金正恩が習近平に操られている側面に不満を抱いていることを物語る。

トランプは習近平を「世界一流のポーカープレーヤー」と皮肉った。国連
安保理事会の常任理事国であるにもかかわらず中国は制裁決議の完全なる
履行をしているかどうか疑わしい。国境線を越えて北に物資が続々と届い
ているとの情報もある。

一見日本の出番が無いように見えるが、今後米朝会談が進めば非核化の工
程表作りが俎上(そじょう)にのぼる。日本は積極的に核兵器解体と国外
への搬出や、専門家による検証に参加する必要がある。

安倍が北への見返りについて「先に核の完全放棄、後に補償」方式を強調
しているのは当然である。要点は金正恩が新年から打ち出している経済重
視路線をいかにして国際社会が定着させるかにあるのだろう。