2018年05月15日

◆今世紀最大の政治ショー米朝首脳会談

杉浦 正章


 ポンペイオの“まき餌”に食らいついた金正恩

日本も拉致問題を棚上げしてまず正常化を


米大統領ドナルド・トランプと北朝鮮の労働党委員長金正恩による、今世
紀最大とも言える政治ショーが展開されようとしている。水面下での懸命
の駆け引きから垣間見える焦点は、いちにかかって北の「核廃棄の度合
い」と見られる。

米国は北の核実験と核・ミサイルの完全なる廃絶を要求しているが、北は
安全保障上の脅威を理由に20発と言われる核弾頭を手放す気配はない。

さらに6月12日の首脳会談は、トランプが秋の中間選挙を意識して細部を
詰めない妥協に走る危険を内包している。

日本を狙う中距離核ミサイルなどは二の次三の次に回されかねない。日本
は天井桟敷から大芝居を見物していてはならない。会談成功に向けて堂々
と発信すべきだ。拉致問題は最大の課題だが、ここは関係正常化が先だ。
早期の日朝会談が望ましい。

 歴史に残る米中極秘会談の立役者は大統領補佐官ヘンリー・キッシン
ジャーであった。1971年にニクソンの「密使」として、当時ソ連との関係
悪化が進んでいた中華人民共和国を極秘に2度訪問。

周恩来と直接会談を行い、米中和解への道筋をつけた。今回の立役者は国
務長官マイク・ポンペイオであった。そのしたたかさはキッシンジャーに
勝るとも劣らない。2回にわたる金正恩との会談で、おいしい“まき餌”を
ちらつかせて金正恩をおびき寄せた。

ポンペイオは「北朝鮮が、アメリカの求める、完全かつ検証可能で不可逆
的な非核化に応じれば、制裁は解除され、北朝鮮で不足する電力関係のイ
ンフラ整備や農業の振興など、経済発展を支援する。

アメリカ企業や投資家からの投資を得ることになる」とバラ色の未来を描
いて見せた。さらにポンペイオは「アメリカは、北朝鮮が、韓国を上回る
本物の繁栄を手にする条件を整えることができる」と北にとって垂涎の誘
いをかけると共に、トランプ政権が、北朝鮮の金正恩体制を保証する考え
も伝えた。軍事オプションは当面使わないという姿勢の鮮明化だ。

 これだけのおいしい話しに乗らなければ金正恩は指導者たる素質を問わ
れる。元国務次官補カート・キャンベルも「これにより対話や協議に向け
て新たな道が開かれ、少なくとも短期的には核拡散のリスクが低減し、粗
暴な軍事オプションは後回しになるだろう」と展望した。

金正恩は「非核化協議に応ずる」と飛びついたが、非核化にもいろいろあ
る。米国が目標に掲げているのは「朝鮮半島の完全なる非核化」なのであ
るが、金正恩の狙いは現状のままで核開発プログラムを凍結し、その見返
りに国際社会からの経済制裁を直ちに緩和させるというものだ。

それは、米国が目標に掲げている朝鮮半島の非核化とは似て非なるもので
ある。米国にとって非核化は、北朝鮮の核兵器プログラムと核兵器そのも
のの完全な破棄を意味するのであり、トランプは正恩との会談では核兵器
の解体を速やかに進めるよう求めるだろう。この両者の見解の相違が事態
の核心部分であるのだ。

そもそも父の正日が1998年に核計画に着手して以来、金一族はプルトニウ
ムを「家宝」のように営々として作り上げてきた。GDPが米国の1000分の
1しかない国が、国家よりも自分や一族の体制を守る手段として核を開発
してきたのだ。

米下院軍事委員長マック・ソーンベリーが「これまで北朝鮮は米国を手玉
に取ってきた。大統領は過度の期待を慎まなければならない」と看破して
いるがまさにその通りだ。核イコール金王朝の存続くらいに思わなければ
なるまい。

 
こうした状況下で開催されるトランプ・金会談の焦点はどこにあるのだろ
うか。まず第一に挙げられるのは金正恩が米国や国際機関による完全な形
による検証に応ずるかどうかだ。

坑道には水爆実験用に新たに掘ったものもあるといわれる。それを完全に
破壊するかどうかが疑わしいといわれている。坑道の入り口だけを破壊し
て、完全破壊を装う可能性があるからだ。また北が主張する「ミサイル開
発計画の放棄」は何の意味もない。現状が固定されるだけに過ぎないからだ。

既に保有するミサイルと核爆弾の解体が不可欠なのだが、金正恩が「核大
国」と自認する以上、容易に核を手放すことはないだろう。

こうした核問題と並行して、極東の平和体制を構築するために、米政府内
には休戦協定を平和条約に格上げする構想がある。休戦協定は1953年7月
27日に署名され、「最終的な平和解決が成立するまで朝鮮における戦争行
為とあらゆる武力行使の完全な停止を保証する」と規定した。

しかし、「最終的な平和解決」(平和条約)は未だ成立していない。朝鮮
戦争の休戦協定は北朝鮮、米国、中国の間で署名されているが、韓国は署
名していない。

平和条約実現のためには、まず米朝で終戦を宣言し、ついで南北で終戦を
宣言する。そして韓国、北朝鮮。米国、中国で平和条約に署名し、これに
日本とロシアが加わって最終的には6か国の枠組みで平和条約を確立させ
る方式が考えられる。

こうした構想は確かに極東情勢が行き着くべき終着点だが、ことはそう簡
単ではあるまい。紆余曲折をたどるに違いない。今後5月22日に米韓首
脳会談。5月26日に日露首脳会談。

6月8,9日に韓国も参加する可能性があるカナダでのサミット。6月12
日の米朝首脳会談へと激しい外交の季節が続く。モリだのカケだの政権を
直撃することのない話しに1年以上もこだわる野党も、時代を見る眼を問
われる。

集中審議に応じた自民党執行部の見識のなさも尋常ではない。集中審議な
ら米朝会談をテーマとすべきではないか。野党も議論に参加すべきである。

安倍は12日の会談結果を早期にトランプから聞く必要があろう。日朝関係
は経済支援を米国が日本に頼る意向を示していることから、日本の対応が
クローズアップされる時期が必ず来る。日本は拉致問題を抱えているが、
生存すら不明な拉致問題に拘泥していては物事は進まない。

ましてや拉致問題の解決をトランプに頼んでも二の次三の次になることは
否めない。いったん棚上げして日朝関係を正常軌道に乗せた上で、解決を
図るべきだろう。日朝関係を拉致問題調査団を派遣できるような状態にし
なければ、未来永劫に拉致の解決はない。

◆平和憲法重視の宏池会の外交方針では

櫻井よしこ



「平和憲法重視の宏池会の外交方針では国際政治の大きな変化に対応で
きない」

米朝関係を背後から操るのは中国である。米中関係の中で翻弄されるのは
韓国である。米中韓朝の四カ国が狙うのは日本国の財布である。他方、日
本は北朝鮮の核やミサイル問題も、そして拉致問題も解決しなくてはなら
ない。日本がどの国よりもしっかりと足場を固めるべき理由である。

国際政治の力学が大きく変化するとき、何よりも重要なのは世界全体を見
渡す地政学の視点だ。150年前の明治維新でわが国は大半のアジア諸国と
異なり、辛うじて列強諸国の植民地にされずに済んだ。当時の人々が、わ
が国に足らざるものは経済力と軍事力だと認識し、富国強兵の国家目標を
よく理解し、あらゆる意味で国力強化に力を尽くしたからだ。

しかし、もうひとつ大事な要因があったことを、シンクタンク「国家基本
問題研究所」副理事長の田久保忠衛氏は強調する。

「ペリーが来航した1853年にクリミア戦争が始まり、ロシアと英仏がオス
マン帝国を巻き込んで世界規模の戦いを繰り返しました。8年後、米国で
南北戦争が勃発、日本を窺うペリーらの脳裡には祖国の危機がよぎったは
ずです。明治維新の大業はこのような外圧の弱まりにも扶けられてなされ
たと思います」

政府と国民の意識の高まりと、外圧の弱まりの中で、150年前、日本国は
辛うじて国難を切り抜けた。

現在はどうか。中国の野心的な動きに明らかなように外的脅威が弱まる気
配は全く無い。国民、そして多くの政党にも、危機意識が高まっていると
は思えず、これこそ最大の危機だ。外的内的要因の双方から、現在の危機
はかつてのそれより尚、深刻である。

そう考えていたら宏池会が決意表明した。「宏池会が見据える未来 より
よきバランスをめざして」と題された提言を見て心底驚いた。安倍政権の
下で5年間も外相を務めた岸田文雄氏が長を務めるその派閥の提言がこれ
なのか。岸田氏が外相として展開した日本国の外交と、宏池会が見据える
未来は全く違うではないか。このギャップは何なのか。

宏池会の政策には三つの重要な柱が書かれている。(1)トップダウンか
らボトムアップへ、(2)対症療法から持続可能性へ、(3)自律した個
人、個性、多様性を尊重する社会へ、である。

また「K-WISH」として、Kind、Warm、Inclusive、Sustainable、humaneの
5つの英単語が掲げられた。日本国の総理を目指そうと言う政治家がな
ぜ、自分の思いを英単語の羅列で表現するのか、理解できない。

加えて、「Humaneな外交」の項には「平和憲法・日米同盟・自衛隊の3本
柱で平和を創る」と明記されている。だが、平和憲法の欠陥ゆえに、日本
は国際社会で苦労している。

宏池会の一員である小野寺五典防衛相は、私の尊敬する政治家の1人であ
る。防衛相として米国のみならず各国の軍事や安全保障に関連する実態を
知悉する氏にとって、日報問題に関する日本の国会論議のおかしさは、身
に沁みるものがあるはずだ。それはひとえに「平和憲法」と呼ばれる現行
憲法の虚構と欺瞞に満ちた立てつけゆえであろう。

また平和憲法では日本を守れず、日米同盟も維持できにくいことを、米国
政府首脳、とりわけ軍事専門家との対話で誰よりもよく理解しているの
が、防衛相の小野寺氏であろうに。
 
宏池会の3大課題の筆頭に「トップダウンからボトムアップへ」があ
る。安倍氏の力強い「政治主導」の逆を行こうというのであろうか。安倍
政権打倒の政局に入ったのか。だとしても、宏池会の平和憲法路線ではこ
れからの国際社会の荒波は決して乗り越えられないだろうと思うがどうか。
『週刊ダイヤモンド』 2018年5月12日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 Number 1230 


          

◆シンガポールで何が起こるか

宮崎 正弘

平成30年(2018年)5月13日(日曜日)通巻第5700号 

 6月12日、シンガポールで何が起こるか
  焦りまくる習近平、同日にシンガポールに闖入する可能性


米朝会談は6月12日、シンガポールと発表された。それまでにあがっ て
いた候補のうち板門店は最終的に除外された。トランプにとっては「呼
びつけられる」印象を避けたということだろう。

また中国、露西亜という米朝会談の候補地は、アメリカから見れば情報
漏れの危険性があり始めから慮外の地。のこるモンゴルとマレーシアは、
前者は治安面でセキュリティの確保がされにくく、後者は金正男が毒殺さ
れた場所だから、やはりふさわしくなかった。

シンガポールはセキュリティ、環境から考慮しても申し分なく、また国
際会議には慣れている。「シャングリ・ラ対話」も、舞台はシンガポール
である。

しかし米朝首脳会談の会議の場所は間違いなく「マリナベイ・サンズ」
という予測がシンガポールのメディアで囁かれている。

同ホテルは3層の高層ビルのてっぺんに軍艦のようなプールが設備さ
れ、世界中から観光客を集める新しいメッカでもある。

シャングリ・ラホテルはマレーシア華僑のロバート郭が経営しており、
どちらかと言えば親中派華僑として知られる。

同ホテルは中国各地にチェーンを展開しているからだ。

その点でトランプの最大の献金者でもあり、ラスベガスのホテル王シャ
ルダン・アデルマンが経営するマリナベイ・サンズなら、トランプ大統領
にとって安心感がある、というわけだ。

米朝会談後、トランプは帰路に日本に立ち寄り安倍首相と会談すること
も決まっているが、こうした動きに気が気でないのが習近平だ。

金正恩を2度も呼び出して、会議に注文をつけた習近平はそれでも安心
できないのだろう、米朝会談の現場へ乗り込み、金正恩、トランプと会談
するという、歴史的な会談への闖入を企図しているようである。
     

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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1730回】                     
――「支那人に代わって支那のために考えた・・・」――内藤(31)
  内藤湖南『支那論』(文藝春秋 2013年)

             ▽

歴史的に振り返ると中国の地方制度は「小区画制」と「大区画制」の別
があるが、「大体において地勢並びに風俗からして」、「今日の大行政
区」が「自然の道理に適っておるのである」。「官吏を増やせば行政が行
き届くようになるという議論」があるが、「これはどこまでも誤りである
と云わねばならぬ」。

じつは「支那においては官吏の生活は、(中略)名目はともかく、事 実
は非常に収入の多いものである」。そこで官吏の増員は「収支相償わな
い支那の現在の財政状態ではとうてい堪うべからざるものである」。だか
ら増員は不可ということ。

じつは「支那の官吏の習慣として」、最末端の「知県のごとき小さい 官
吏からして」、地方行政の実務には通じていない。そこで「一種の官吏
の下働きをする職業、すなわち胥吏というようなものがあって、実際の政
務を執っておる」。ところが「この胥吏がまた代々世襲」するなどして地
域の実権を握っていて「動かすべからざるほどに盤踞」している。地方行
政の実務は彼らに任せるしかなく、中央政府派遣の官吏は手足をお飾りに
過ぎない。

だから中央政府の行政意思を社会の底辺にまで行き届かせようとする な
ら、中央政府からの官吏の実務能力を飛躍的に向上させる一方で、地方
に盤踞した胥吏を廃する必要がある。

さらに考えるべきは「官吏の政治的徳義の問題である」。「実はこれ は
いずれの問題にも関係し、またいずれの問題の根柢ともなることである
が、支那のごとく数千年来政治上の弊害が重なって、官吏という者はほと
んど政治上の徳義が麻痺して、その弊害ということをも自覚しないような
国にあっては、この問題を解決することは、容易ではない」。

ここでまたまた内藤から離れ、「官吏の政治的徳義の問題」について些か
いくつかの事例を示しておきたい。

先ずはお馴染みの林語堂(『中国=文化と思想』講談社学術文庫 1999
年)から。

●「中国語文法における最も一般的な動詞活用は、動詞『賄賂を取る』
の活用である。すなわち、『私は賄賂を取る。あなたは賄賂を取る。彼は
賄賂を取る。私たちは賄賂を取る。あなたたちは賄賂を取る。彼らは賄賂
を取る』であり、この動詞『賄賂を取る』は規則動詞である」。

●「中国が今必要としていることは政治家に対し道徳教育を行うことで
はなく、彼らに刑務所を準備することである」。

●「官吏たちに廉潔を保持させる唯一の方法は、いったん不正が暴露さ
れたならば死刑に処するぞと脅かしてやることである」。


次は1960年代初頭の農村の状況を、
  ●「1963」年、河南省などの農村調査の文献を見る機会があったが、
文献が私に与えた印象は、陰惨でぞっとするものであった。富むものは富
み、貧しい者は生活のどん底に押しやられている。

農村の幹部は悪辣を極 め、汚職、窃盗、蓄妾などは朝飯前のこと、投機
買占めが横行し、高利貸 しが流行り、一口でいえば、農村は生き地獄そ
のものである。

ところが、実態はもっとひどいものだと、毛沢東が文革の2年前から言
いだした。農村の末端組織の3分の1がもう既に共産党の手中にない。

社 会主義の看板は掲げているものの、実際は資本主義が復活している。
農村 の幹部などで構成されている新しい裕福な農民階級が出現し、彼ら
は既に 階級の敵の代理人と保護者に成り代わっている、と毛沢東は断定
した」。 (楊威理『豚と対話ができたころ』岩波書店 1994年)

ここにみられる「農村の幹部」こそ、現代の「胥吏」ということになる
だろう。《QED》

◆人工関節手術で歩ける喜び

小池 達也


整形外科の分野ですばらしい発展を遂げていると考えられているのは、人工関節分野です。現在では、肩・肘・股・膝・足関節に人工関節手術が施されますし、手や足の指関節にも応用が始まっています。

特に、股関節と膝関節に関しては膨大な数の手術が毎年日本中で行われています。
成績も安定しており、それほど高度な手術でもなくなりつつあります。

しかし、本当に人工関節は進歩したのでしょうか。

1962年にチャンレイという先生が人工股関節手術を初めて実施されました。 今から振り返ってみても、良く考え抜かれたデザイン・材質・手術方法でした。やっぱりパイオニアと呼ばれる人たちには何か光るものがあります。

このチャンレイ型人工股関節は長期成績も良く、スタンダードとなりましたが、もちろん完璧ではないので、チャンレイ自身を含め様々な改良が加えられました。

ところが、それらの改良、良かれと思ったデザインや材質の変更は逆に長期成績を悪化させました。

そうすると、また改良が加えられ、猫の目のようにくるくるとデザインや果てはコンセプトまで変わっていきました。最近ようやく、コンセプトも成熟し成績も安定してきました。しかし、改良が加えられ続けていた時代に人工股関節手術を受けてしまった人は恩恵を受けることが出来なかったわけです。

最先端のものが最良とは限らない好例ではないでしょうか。これは人工関節の性格上、結果がすぐに出ないことが一番の理由です。そして、この危険性は今後も出てくる可能性はあります。

では、人工関節手術などすべきではないのでしょうか。

そうではありません。歩くことさえ大変な方が、人工関節手術を受けて痛みなく歩けるようになった時の喜びは、本人でない我々でさえ感じることの出来る大きなものです。

「人生が変わった」・「旅行に行けるようになった」・「歩くのって楽しい」など、多くの喜びの声を聴かせていただける、医者にとっては実にやりがいのある手術です。これを永続する喜びに変えるために、いくつかの合併症を克服してゆくのが、我々の今後の使命でしょう。

人工関節の合併症で厄介なのは感染とゆるみです。ゆるみの方は、多くの研究により克服されつつありますが、異物を体の中へ入れる手術であることから、感染の危険性はなかなか解決されそうにはありません。また、スポーツも可能になるような丈夫な人工関節もまだ存在しません。真の人工関節出現はもう少し先になりそうです。
 
ところで、最近ではナビゲーションといって、コンピュータが人工関節を入れる方向を指示するシステムやロボットが人工関節を入れる方法も実用化されています。

あなたは、ロボットと人とどちらに手術して欲しいですか?
         (大阪市立大学大学院医学研究科リウマチ外科学 )

2018年05月14日

◆マハティール元首相率いる野党が

宮崎 正弘


平成30年(2018年)5月10日(木曜日)通巻第5697号 

(速報)
 マレーシア、マハティール元首相率いる野党が単独過半
  ナジブ親中政権の敗北は想定外。習近平にショックを与えた


5月9日行われたマレーシア総選挙の投開票で、日本時間10日午前4時に
野党連合の単独過半が判明、マハティール元首相率いる野党連合が政権を
担うこととなった。

92歳のマハティール元首相は勝利を宣言した。

マレーシア政治は独立後60年にわたって与党が政権を担ってきた。ナジブ
首相は2代目首相ラジブの息子で、いってみれば「太子党」である。
行政の隅々にまで貼りめぐらされた組織、とくに選挙直前の選挙区割り
で、与党が負けるはずのない仕組みを作っていた。また反フェイクニュー
ス法を急遽制定し、マハティール元首相のキャンペーンを妨害してきた。

にも拘わらず、マレーシアの民衆の反感は強く、またマレーシアのナショ
ナリズムを訴えたマハティール元首相の真摯な取り組みに打たれた。かく
してマレーシアを統治した与党は下野する。

野党連合の勝利という奇跡は、勝因を探ってみると、ナジブ政権の腐敗へ
の嫌悪もさることながら、あまりに中国の経済進出に無策、フォレストシ
ティの建設がマレーシア国民の不安を掻き立てたからだ。マレーシアの南
東沖に人工島を中国が建設し、70万を収容するマンション群「フォレスト
シティ」を購入した大半が中国人であり、マハティール元首相は、「われ
われは中国の植民地ではない」と訴えた。

華僑が35%を占めるマレーシアで、しかもインド系は独自の選挙戦を戦っ
た中で、野党が勝利したのである。

北海道を買い占める中国資本を目の前にして、北海道閔は次にいかなる行
動をとるのか。

◆宏池会の外交方針では

櫻井よしこ



「平和憲法重視の宏池会の外交方針では国際政治の大きな変化に対応で
きない」

米朝関係を背後から操るのは中国である。米中関係の中で翻弄されるのは
韓国である。米中韓朝の四カ国が狙うのは日本国の財布である。他方、日
本は北朝鮮の核やミサイル問題も、そして拉致問題も解決しなくてはなら
ない。日本がどの国よりもしっかりと足場を固めるべき理由である。

国際政治の力学が大きく変化するとき、何よりも重要なのは世界全体を見
渡す地政学の視点だ。150年前の明治維新でわが国は大半のアジア諸国と
異なり、辛うじて列強諸国の植民地にされずに済んだ。当時の人々が、わ
が国に足らざるものは経済力と軍事力だと認識し、富国強兵の国家目標を
よく理解し、あらゆる意味で国力強化に力を尽くしたからだ。

しかし、もうひとつ大事な要因があったことを、シンクタンク「国家基本
問題研究所」副理事長の田久保忠衛氏は強調する。

「ペリーが来航した1853年にクリミア戦争が始まり、ロシアと英仏がオス
マン帝国を巻き込んで世界規模の戦いを繰り返しました。8年後、米国で
南北戦争が勃発、日本を窺うペリーらの脳裡には祖国の危機がよぎったは
ずです。明治維新の大業はこのような外圧の弱まりにも扶けられてなされ
たと思います」

政府と国民の意識の高まりと、外圧の弱まりの中で、150年前、日本国は
辛うじて国難を切り抜けた。

現在はどうか。中国の野心的な動きに明らかなように外的脅威が弱まる気
配は全く無い。国民、そして多くの政党にも、危機意識が高まっていると
は思えず、これこそ最大の危機だ。外的内的要因の双方から、現在の危機
はかつてのそれより尚、深刻である。

そう考えていたら宏池会が決意表明した。「宏池会が見据える未来 より
よきバランスをめざして」と題された提言を見て心底驚いた。安倍政権の
下で5年間も外相を務めた岸田文雄氏が長を務めるその派閥の提言がこれ
なのか。岸田氏が外相として展開した日本国の外交と、宏池会が見据える
未来は全く違うではないか。このギャップは何なのか。

宏池会の政策には三つの重要な柱が書かれている。(1)トップダウンか
らボトムアップへ、(2)対症療法から持続可能性へ、(3)自律した個
人、個性、多様性を尊重する社会へ、である。

また「K-WISH」として、Kind、Warm、Inclusive、Sustainable、humaneの
5つの英単語が掲げられた。日本国の総理を目指そうと言う政治家がな
ぜ、自分の思いを英単語の羅列で表現するのか、理解できない。

加えて、「Humaneな外交」の項には「平和憲法・日米同盟・自衛隊の3本
柱で平和を創る」と明記されている。だが、平和憲法の欠陥ゆえに、日本
は国際社会で苦労している。

宏池会の一員である小野寺五典防衛相は、私の尊敬する政治家の1人であ
る。防衛相として米国のみならず各国の軍事や安全保障に関連する実態を
知悉する氏にとって、日報問題に関する日本の国会論議のおかしさは、身
に沁みるものがあるはずだ。それはひとえに「平和憲法」と呼ばれる現行
憲法の虚構と欺瞞に満ちた立てつけゆえであろう。

また平和憲法では日本を守れず、日米同盟も維持できにくいことを、米国
政府首脳、とりわけ軍事専門家との対話で誰よりもよく理解しているの
が、防衛相の小野寺氏であろうに。
 
宏池会の3大課題の筆頭に「トップダウンからボトムアップへ」があ
る。安倍氏の力強い「政治主導」の逆を行こうというのであろうか。安倍
政権打倒の政局に入ったのか。だとしても、宏池会の平和憲法路線ではこ
れからの国際社会の荒波は決して乗り越えられないだろうと思うがどうか。
『週刊ダイヤモンド』 2018年5月12日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 Number 1230 


◆山科だより「門跡寺院」

渡邊好造


日本全国の寺院数は約18万3千、「日本寺院総監」に掲載されているのは7万6千というが、皇族や摂家などのいわゆる高格式者の出家の対象となる『門跡(もんぜき)寺院』は、京都を中心に全部で30余りしかない。

第59代宇多天皇が、寛平10年(平安時代・898年)法皇となり、京都(右京区)の”仁和寺(にんなじ=真言宗)”にこもり、「御室(おむろ)門跡」と称したのが”門跡寺院”の始まりである。

鎌倉時代に入って、皇族や摂家が特定の寺院に出家することが定着し、室町時代には寺格としての門跡が確立され、これらの政務を担当する門跡奉行も設けられた。

その後、 江戸幕府は出家者の位階により @宮(みや)門跡、A摂家(せっけ)門跡、B清華(せいが)門跡、C公方(くぼう)門跡、D准(じゅん)門跡の5つの門跡寺院を制度化した。

最上位の「宮門跡」は、親王(皇族)、法親王(親王の宣下をえた僧)の出家者を対象としたもので、13寺院あるうち”輪王寺(りんのうじ=天台宗=茨城県日光市)”、”園満院(えんまんいん=天台宗=滋賀県大津市)”以外は全て宮家の中心であった京都市内にある。

ついでながら、”園満院”については、平成21年(2009年)5月に重要文化財の建物9棟、庭園・土地1万4千平米が寺院の借金返済のために競売となり、約10億円余りで滋賀県甲賀市の宗教法人に落札され、同年8月所有権移転が成立するという所管の文化庁もビックリの異例の事態となった。

ただし、建物以外の文化財は第2次大戦後に京都、奈良、九州などの国立博物館所蔵となっていたため無事である。

「摂家門跡」は、近衛、九条、二条、一条、鷹司の五摂家とその子弟が、「清華門跡」は、久我、三条、西園寺、徳大寺、花山院(かさんのいん)、大炊御門(おおいのみかど)、今出川、醍醐、広幡(ひろはた)などの公家、「公方門跡」は武家、「准門跡」は"脇門跡"ともいわれ、特別に認められたその他の高格式者がそれぞれ対象となる。

さて注目したいのは、京都市内11の「宮門跡寺院」のうち3つがここ「山科」にあることで、”勧修寺(かじゅうじ)=真言宗”、”毘沙門堂(びしゃもんどう)=天台宗”、そして”青蓮院・大日堂(だいにちどう)=天台宗=東山区の青蓮院の飛び地庭園”がそれである。

その他の門跡寺院も含めると、”安祥寺(あんしょうじ)=真言宗”、”随心院(ずいしんいん)=真言宗”が加わり、この5寺院については「山科だより」で詳しく紹介してきたが、改めて概略にふれておく。

”勧修寺”は、「山科門跡」ともいい、水戸光圀寄進の勧修寺型燈篭、境内の"氷池園"という名の平安時代・池泉園で知られる。”毘沙門堂”は、狩野益信筆の書院の襖絵116面が有名。”青蓮院・大日堂”は、将軍塚といわれる展望台からの京都中心部と山科の眺望が素晴らしい。

”安祥寺”は、広大な領地を誇り上寺と下寺をもつ寺院であるが、現在院内への入場は残念ながらできない。”随心院”は、平安時代36歌仙の一人"小野小町"一族所縁の邸宅跡に創建された寺院で、境内は国史跡である。

「山科」は、『門跡寺院』の存在でみても、歴史と伝統を引き継ぐ由緒ある京都の一角なのである。 (完)

2018年05月13日

◆平和憲法重視の宏池会の外交方針では

櫻井よしこ



「平和憲法重視の宏池会の外交方針では国際政治の大きな変化に対応で
きない」


米朝関係を背後から操るのは中国である。米中関係の中で翻弄されるのは
韓国である。米中韓朝の四カ国が狙うのは日本国の財布である。他方、日
本は北朝鮮の核やミサイル問題も、そして拉致問題も解決しなくてはなら
ない。日本がどの国よりもしっかりと足場を固めるべき理由である。

国際政治の力学が大きく変化するとき、何よりも重要なのは世界全体を見
渡す地政学の視点だ。150年前の明治維新でわが国は大半のアジア諸国と
異なり、辛うじて列強諸国の植民地にされずに済んだ。

当時の人々が、わが国に足らざるものは経済力と軍事力だと認識し、富国
強兵の国家目標をよく理解し、あらゆる意味で国力強化に力を尽くしたか
らだ。

しかし、もうひとつ大事な要因があったことを、シンクタンク「国家基本
問題研究所」副理事長の田久保忠衛氏は強調する。

「ペリーが来航した1853年にクリミア戦争が始まり、ロシアと英仏がオス
マン帝国を巻き込んで世界規模の戦いを繰り返しました。8年後、米国で
南北戦争が勃発、日本を窺うペリーらの脳裡には祖国の危機がよぎったは
ずです。明治維新の大業はこのような外圧の弱まりにも扶けられてなされ
たと思います」

政府と国民の意識の高まりと、外圧の弱まりの中で、150年前、日本国は
辛うじて国難を切り抜けた。

現在はどうか。中国の野心的な動きに明らかなように外的脅威が弱まる気
配は全く無い。国民、そして多くの政党にも、危機意識が高まっていると
は思えず、これこそ最大の危機だ。外的内的要因の双方から、現在の危機
はかつてのそれより尚、深刻である。

そう考えていたら宏池会が決意表明した。「宏池会が見据える未来 より
よきバランスをめざして」と題された提言を見て心底驚いた。安倍政権の
下で5年間も外相を務めた岸田文雄氏が長を務めるその派閥の提言がこれ
なのか。岸田氏が外相として展開した日本国の外交と、宏池会が見据える
未来は全く違うではないか。このギャップは何なのか。

宏池会の政策には三つの重要な柱が書かれている。(1)トップダウンか
らボトムアップへ、(2)対症療法から持続可能性へ、(3)自律した個
人、個性、多様性を尊重する社会へ、である。

また「K-WISH」として、Kind、Warm、Inclusive、Sustainable、humaneの
5つの英単語が掲げられた。日本国の総理を目指そうと言う政治家がな
ぜ、自分の思いを英単語の羅列で表現するのか、理解できない。

加えて、「Humaneな外交」の項には「平和憲法・日米同盟・自衛隊の3本
柱で平和を創る」と明記されている。だが、平和憲法の欠陥ゆえに、日本
は国際社会で苦労している。

宏池会の一員である小野寺五典防衛相は、私の尊敬する政治家の1人であ
る。防衛相として米国のみならず各国の軍事や安全保障に関連する実態を
知悉する氏にとって、日報問題に関する日本の国会論議のおかしさは、身
に沁みるものがあるはずだ。それはひとえに「平和憲法」と呼ばれる現行
憲法の虚構と欺瞞に満ちた立てつけゆえであろう。

また平和憲法では日本を守れず、日米同盟も維持できにくいことを、米国
政府首脳、とりわけ軍事専門家との対話で誰よりもよく理解しているの
が、防衛相の小野寺氏であろうに。
 
宏池会の3大課題の筆頭に「トップダウンからボトムアップへ」がある。
安倍氏の力強い「政治主導」の逆を行こうというのであろうか。安倍政権
打倒の政局に入ったのか。だとしても、宏池会の平和憲法路線ではこれか
らの国際社会の荒波は決して乗り越えられないだろうと思うがどうか。

『週刊ダイヤモンド』 2018年5月12日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 Number 1230

◆そして誰もいなくなるのか

石岡 荘十


表題は、いうまでもなくアガサ・クリスティーのミステリー小説の名作『そして誰もいなくなった』(米版And Then There Were None)をもじったものだ。刊行されてからかなりなるので、簡単にあら筋をおさえておく。

大西洋の孤島に招待された10人がひとりずつ殺されていく。そして最後に誰もいなくなる。犯人は誰か。クローズド・サークルと呼ばれる外界との往来が断たれた状況設定の代表的ミステリー作品だとされている。1945年ルネ・クネールのメガホンで映画にもなっている。

私がアガサ・クリスティーにのめりこんだのは学生時代の‘50年代後半ことだが、ここではその話をしようというのではない。最近のこの国の状況が、アガサ・クリスティーの表題を思い起こさせる。

この閉塞状況は大西洋上の絶海の孤島に似ている。情報は燦燦と降り注ぐが、この国の国民は情報リテラシー、つまりあふれる情報を読む能力に欠けているらしい。

就中、リーダであるべき鳩は情報が読めない。本メルマガだけでなく、あらゆるメディアが「ヤメロ、ヤメロ」の大合唱で、これらを読む限り、いまや退任が“既成事実”、決まったことと国民に思い込ませている。

思い起こせば、遡った10人ほどのわが首相はアガサ・クリスティーの描く絶海の孤島で、それぞれのバックグラウンドや経緯はともかく、消えていった。

めまぐるしくて細かいことは思い出せないが、ここ5人か10人は首相になった途端、「ヤメロ、ヤメロ」の猛攻撃に合って倒れたような気がする。そしていま「鳩ヤメロ、一ヤメロ」の大合唱だ。

自分たちが選んだ首相に、政治のプロ、評論家が罵詈雑言のシャワーである。なかには、物書きとしての最低限の品性をも疑わせる単語も駆使する御仁がいる。

日本人は人を謗るにしても、昔はこんな言い方はしなかったものだ。その尻馬に乗って、止せばいいのにど素人が訳知り面で「ともかくヤメロ」と絶叫。

結果、無邪気な選挙民はつい半年前、自分があの人を選んだのはひょっとしたら「間違いだった?」「騙された?」とモヤモヤ。やがてそれが確信に変わり、世論調査に答える。

が、それは本当の世論か、と最近思う。彼らは「そして誰もいなくなる」リスクに気がついているのか。 

そこで政治問題のプロ、評論家、それに連なる方々にお聞きしたいのである。世界の孤島で歴代の首相がつぎつぎに“世論”の餌食になった日本列島で、鳩は何人目のターゲットなのか。10人目だとすると、これはやばくないですか。

この島をリーダーのいない極東の孤島にしたいのか。そんなことないですよね。つぎは誰が最適か、ベストではないが誰がベターか、密かな思いはあるはずだ。決まってから、ああでもないこうでももないとケチつけることで口を糊するのは後出しジャンケンのようなものだ。フェアではない。

ここはひとつ、ど素人なのでよく分からないが、プロは当然のこと、追っかけ素人も「辞めろ」というなら、「辞めさせて、菅にしろとか、舛がいいとか」、はっきり個人名を挙げて宣言してもらいたいのである。それがプロの最低限の見識・責任ではないのか。

本メルマガで何度か同じ趣旨のアピールをしたことがあるが、誰も答えてくれなかった。なぜ?子育ては「褒めて(おだてて)育てる」っていいますね。そんなことも考えないと「誰もいなくなる」のでは?

それはそうと、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』で10人を殺した犯人は誰か。思い出せない。で、アマゾンでハヤカワ文庫を発注した。    

2018年05月12日

◆反故(ほご)常習国 北朝鮮は軽々に信用出来ない

加瀬 英明


核全廃まで圧力は維持すべきだ

米WHに「南アフリカ方式」の核廃棄が浮上


北朝鮮の非核化問題の鼎(かなえ)が煮えたぎり始めた。6月の米朝首脳
会談を見据えて北朝鮮は3人の米国人を解放。2年半ぶりの日中韓首脳会
談は朝鮮半島の非核化に向けた協力で一致した。

完全非核化への道筋は複雑で遠いが1歩前進ではある。極東をめぐる力の
構図は緊張緩和の入り口に立ったが、北の後ろ盾としての中国と、日米同
盟の対峙の構図は変わらず、融和だけが売り物の韓国文在寅外交は荒波に
もまれ続けるだろう。

こうした中でまずは北朝鮮の核廃棄方式としてホワイトハウスの内部に急
きょ浮上しているのが「南アフリカモデル」だ。

国務長官として初めて訪朝したポンペイオは3人を連れて帰国したが、米
朝首脳会談の開催場所と日程が決まったことを明らかにした。

日程公表はまだないが、トランプは6月初旬までに予定される米朝首脳会
談の開催地については、南北軍事境界線のある「板門店ではない」と述べ
た。詳細については「3日以内に発表する」と語るにとどめた。

トランプはこれまで、板門店のほか、シンガポールを有力候補地に挙げて
いる。3人の帰国は米朝関係にとって大きな摩擦要因の一つが取り除かれ
たことになり、1歩前進ではある。しかし核心は「核・ミサイル」であ
り、ここは、不変のままであり、難関はこれからだ。

ここに来て金正恩の“弱み”をうかがわせる行動が見られはじめた。それは
金正恩の習近平への急接近である。40日に2回の首脳会談はいかにも異常
である。

そこには中国を後ろ盾に据えないと心配でたまらない姿が浮かび上がる。
泣きついているのだ。金正恩は習近平との大連会談で米国への要求につい
て相談を持ちかけた。その内容は2つある。1つは米国が敵視政策をやめ
ることが非核化の条件というもの。他の1つは「米国が段階的かつ同時並
行的に非核化の措置を取ること」である。

泣きつかれて悪い気のしない習近平は8日トランプとの電話会談で「北朝
鮮が段階的に非核化を進めた段階で何らかの制裁解除をする必要がある」
「米朝が段階的に行動し北朝鮮側の懸念を考慮した解決を望む」などと進
言した。

これに対し、トランプは「朝鮮半島問題では中国が重要な役割を 果た
す。今後連携を強化したい」と述べるにとどまった。おいそれとは乗 れ
ない提案であるが検討には値するものだろう。

注目の日中韓首脳会談は、大きな関係改善への動きとなった。しかし、北
の核・ミサイルをめぐっては安倍と中韓首脳との間で隔たりが見られた。
日本側は「完全かつ検証可能で不可逆的な核・ミサイルの廃棄」を共同宣
言に盛り込むことを主張した。

しかし、中韓両国は融和ムードの妨げになるとして慎重姿勢であった。習
近平は金正恩に対して「中朝両国は運命共同体であり、変わることのない
唇歯(しんし)の関係」と述べている。唇歯とは一方が滅べば他方も成り
立たなくなるような密接不離の関係を意味する中国のことわざだ。

こうした中でホワイトハウスではまずは北朝鮮の核廃棄方式だとして「南
アフリカモデルが急浮上している」という。

韓国中央日報紙は、国家安保会議(NSC)のポッティンジャー・アジア
上級部長が文正仁(ムン・ジョンイン)韓国大統領統一外交安保特別補佐
官らにこの構想を伝えたという。

これまでホワイトハウスではボルトンNSC補佐官が主張したリビア方式
が考えられていた。リビア方式は「先に措置、後に見返り」だった。

その方式ではなく南アフリカ方式を選択するというのはある意味で現実的
路線のようだ。南アは第一段階で、1990年に6つの完成した核装置を解体
した。

第二段階は、1992年に開始された弾道ミサイル計画の廃棄で、これに
は18か月を要した。第三段階は、生物・化学戦争計画を廃棄した。
た だ、南アフリカ方式は経済的な見返りがないという点が問題となる。

同紙 は「南アフリカモデルを検討するというのは、北朝鮮の核放棄に対
する経 済支援は韓国と日本、あるいは国際機関が負担し、米国は体制の
安全など 安全保障カードだけを出すという考えと解釈できる」としている。

結局 お鉢は日本に回ってくることになるが、金額によっては乗れない話
しでは あるまい。同紙は「北の核は南アフリカと比較して規模が大き
く、“見返 りを含めた折衝型南アフリカモデル”になる可能性がある」と
している。

一方、安倍首相は文在寅に対して「核実験場の閉鎖や大陸間ミサイルの
発 射中止だけで、対価を与えてはならない。北の追加的な具体的行動が
必要 だ」とクギを刺している。北は過去2回にわたって国際社会の援助
を取り 付け、その裏をかいて核兵器を開発してきており、まさに裏切り
の常習犯 だ。政治姿勢が左派の文在寅は、北への甘さが目立つ。

圧力は まだまだ維 持するべきであろう。北は、日米に取っては「反故常
習犯 国」なのだ。核 兵器の全て廃棄という目標達成まで圧力を継続する
のは 当然である。