2018年05月12日

◆「習近平の罠」に落ちた共青団

宮崎 正弘


平成30年(2018年)5月9日(水曜日)通巻第5695号 

「習近平の罠」に落ちた共青団のライジング・スター
  習近平の潜在敵=孫政才に無期懲役判決。冤罪か、巻き込まれ型か

嘗て孫政才は共青団のライジング・スターだった。トップ25人の政治局員
として将来を嘱望され、43歳で農林大臣、そして吉林省書記、
2012年11月には薄煕来失脚のあとをうけて(リリーフは張徳江だった)、
重慶特別市の書記に任命された。一説に江沢民派に近付いたことにより、
その人脈の推挽とされたこともある。
 
ところが、2017年7月、突如、孫は重慶市書記を解任され、後継は陳敏爾
になった。

露骨な習近平人事である。無能だが、おべんちゃらの天才、イエスマンの
チャンピオン陳敏爾は、重慶市に乗り込むや「辣腕」を発揮して既存マ
フィアと退治したなどと報じられた。

習のバックがあればこその「つくられた業績」と酷評する人が多い。

さて孫政才は重慶市から薄煕来の悪の残滓を一斉出来なかったばかりか、
吉林省時代の入札に便宜を図り、特定企業などから賄賂を受け取った容疑
で拘束された。

なぜか妙齢の婦人たちがロビィとして介在したと騒がれた。賄賂の額面は
2670万ドル(大物にしては少なすぎるのでは?)。4月12日に死刑の求刑
がされ、5月8日、天津地方裁判所は「無期懲役」の判決を言い渡した。
 共青団(団派)は孫を守りきることが出来なかった。

孫夫人の取り巻き、とくに温家宝夫人が影のボスと言われ、令計画夫人等
とつくった「夫人倶楽部」のメンバーとして、ビジネスに手を突っ込んで
いたことが、検察の目にとまって容疑が浮かんだというのが当局の説明で
ある。孫の汚職が芋づる式に捜査されたことになっている。

しかしネットでは、習近平の罠ではないかという意見が書き込まれるとす
ぐに削除され、真相はまったくの闇。ともかく将来のリーダーとして、孫
は胡春華とともに若くして政治局員入りしたため、習近平にとっては邪魔
者に映り、狙われていたのである。

こうした一連の失脚劇に背後にちらつくのは温家宝一家の汚職である。す
でにニューヨークタイムズが何回もすっぱ抜いたように、温家宝元首相の
夫人と長男の利権構造が暴かれており、この関連で、孫政才はスケープ
ゴーツにされたようである。

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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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 いま、「石平歴史学」の3部作が出現した
  他国を巻き込み、内ゲバを繰り返す朝鮮半島の得意技

  ♪
石平『結論! 朝鮮半島に関わってはいけない』(飛鳥新社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

石平氏の最新作である。

さきに本欄で評者(宮崎)は、石平氏の『なぜ中国は民主化したくてもで
きないのかーー「皇帝政治」の本質を知れば現代中国の核心がわかる』
(KADOKAWA)と『なぜ日本だけが中国の呪縛から逃れられたの
かーー「脱中華」の日本思想史』 (PHP新書)の2冊を取りあげ、かなり精
密な分析をした。

この新作を加えて、これで「石平歴史学」3部作が出現した。まずは祝意
を述べたい。

本書の骨格は、朝鮮半島の特質的手法、というより朝鮮民族の伝統芸であ
る「内ゲバ」と「外国を巻き込む」という特徴的な歴史を簡潔に叙述して
いる。

朝鮮半島2千年の歴史をパノラマ絵巻のように振り返りつつ、そのときそ
のときの政局を明確に腑分けして、朝鮮民族のDNAに染みこんだ事大主
義、無責任、逃避癖、讒言の得意技をたくみに整理整頓した歴史のまとめ
である。

いまも特質は同じであって北朝鮮では叔父も実兄も粛清して邪魔者を消し
た。祖父の金日成は中国派、ロシア派、民族派を次々と粛清した。

韓国も「従北派」の文在寅大統領は、前任の朴権惠と李明博を逮捕して裁
判にかける。その前の盧武鉉は自殺し、その前任者すべてが刑務所か、暗
殺か、亡命か。なぜこんなことが繰り返されるかと言えば、2千年かわる
ことのない朝鮮民族の体質、つまり内紛の残虐性をぬぐい去ることが出来
ないからだ。

そのうえ「周辺国のわれわれにとって他人事ではない。朝鮮半島の歴史を
見ていると、自分たちの内紛あるいは内戦に、周辺国や他民族を巻き込む
のはむしろ彼らに一貫した習性である」と石平氏はまとめるのだ。

「白村江の闘い」とは、高句麗の脅威に対応するために百済が随に応援を
もとめたことから日本が巻き込まれ、その同情による派兵という、日本独
特の情緒的防御作戦は、随の大軍という、予期せぬ援軍の出現のため日本
軍が敗れた。しかしもともとは新羅と百済の内戦に日本が巻き込まれたか
らだ。

「隋は百万人の大軍を派遣して高句麗征伐を再開した。しかしこの時も、
高句麗が国の命運をかけて徹底的に抗戦した結果、隋の煬帝の軍事行動は
失敗」した。この挫折が煬帝の権力基盤を弱体化させ、王朝の崩壊を早めた。

習近平があれほど金正恩を嫌い、南北朝鮮の統一を嫌がるのは高句麗の再
来を恐れるからである。そして隋が4度も高句麗成敗に失敗した経過を教
訓としているからだ。

隋の崩壊を継いだ唐王朝も、じつに3回、つまり随・唐で合計7回も高句
麗遠征を繰り返し、いずれも失敗した。

その挙げ句、半島の内戦に巻き込まれてしまったのが日本だった。

元寇では、元朝のお先棒をかついでフビライを焚きつけ、日本侵略に先頭
切ってやって来たのは高麗であり、尚武の精神に溢れた鎌倉武士によって
さっさと追い返された。

日清戦争の原因も朝鮮王朝の内紛に巻き込まれた結果、起こった。
 
朝鮮戦争ではスターリンと毛沢東が金日成の謀略に引っかかり、またアメ
リカは李承晩に騙されて参戦し、苦戦したという説を石平氏は採る。

この特質的な朝鮮民族の習性を理解すれば、現在の半島危機にアメリカも
中国も巻き込まれることを嫌がるのは当然であり、日本は半島がどうなろ
うと関わる必要はまったくないと説くのである。
 なるほど、じつに納得のいく、説得力に溢れた歴史指南書である。

◆安珍・清姫伝説で有名な「道成寺」(御坊市)

石田 岳彦



長い階段を数えながら登ると確かに62段でした。上りつめたところには仁王門があり、当然のことながら仁王さんが立っています。門をくぐって左側には金属製の手水鉢が置かれていました。
 
小学校の音楽の時間に教わった童謡「道成寺」にある「62段の階(きざはし)をあがりつめたら仁王さん 左は唐銅(からかね)手水鉢」との歌詞は事実でした。しばしば追憶と感傷にふけります。

安珍・清姫伝説で有名な道成寺です。

大阪からJRの特急で御坊駅まで。そこから普通電車に乗り換え(本数が少ないので、時間的余裕と人数に応じてタクシーを利用するのがよいかと思います)、1駅行くと道成寺駅です。

改札を通り、踏切を渡って、駐車場と土産物屋(兼食堂)に挟まれた短い参道を通り抜けると冒頭の階段へ至ります。

62段の階段を登りつめ、仁王門をくぐると、正面に本堂、その右側(東側)には三重塔。いずれも江戸時代の建物で、相応に貫禄があります。

もっとも私の(おそらく、ほとんどの参拝客の)お目当ては、境内西側にある鉄筋コンクリート製の宝仏殿・縁起堂の中で待っています。

宝仏殿・縁起堂は1つ繋がりの建物で、仁王門から見て、手前の、入り口のある建物が縁起堂、奥が宝仏殿です。

縁起堂では、和尚さんが絵巻物(のコピー)を拡げ、安珍・清姫伝説についてユーモアを交えながら、絵解き説法をしてくださいます。説法は頻繁に繰返し行われるので、そう待たされることはないでしょう。

次に述べるように、安珍と清姫の伝説は、事件それ自体は極めて陰惨で後味の悪いものですが、和尚さんの語りのお蔭で、全く暗くなりません(それはそれで問題な気もしますが)。

時は平安時代前期の醍醐天皇の御世。安珍という若い僧侶が、熊野三山の巡礼のために奥州から紀伊の国にやってきました。

ところが、道中、安珍が土地の有力者の屋敷に泊まった際、その屋敷の娘である清姫は安珍に惚れてしまい、還俗して自分と結婚してくれるよう強く迫ってきたのです。

結果から見ると、ここで安珍はきっぱりと断るべきだったのでしょうが、清姫の執拗な懇願を拒絶し切れず、結局、巡礼を終えたら帰り道にまた清姫に会いに来ると嘘をつき、屋敷を後にしました。

その後、清姫は首を長くして安珍を待ちますが、約束の日になっても安珍は訪れません。清姫は屋敷を抜け出し、安珍を探し出しましたが、安珍は人違いだと嘘をつき、清姫を相手にしようとしません。

これも結果論ですが、安珍はここできちんとした謝罪のうえ、清姫と一緒になるなり、きっぱりと拒絶するべきだったのでしょう。清姫は悲しみの余り、半狂乱になってしまい、やがて蛇の化け物になり、安珍を猛追します。

安珍は死に物狂いで逃げ、道成寺に逃げ込み、寺の僧侶らに事情を話しました。僧侶らは鐘楼に吊ってあった梵鐘を下ろし、その中に安珍を隠しますが、清姫の化けた大蛇は梵鐘に撒きつき、火を噴いて安珍を焼き殺してしまい、自身は入水自殺してしまいました。お終い(実際の説法では、この後、夫婦円満その他の在り難い和尚さんのお話が続きます。)。

この事件は、記録(?)に残っている限り、日本で最古・・・かは知りませんが(未遂でよければ、イザナギ、イザナミの黄泉比良坂の件が最古の事例として挙げられそうです)、おそらく最も有名なストーカー殺人事件でしょう。

歌舞伎、謡曲等、様々な芝居の題材になっていて、道成寺ものというジャンルを形成しており、縁起堂にも様々な道成寺もののポスターが張っていました。

和尚さんの絵解き説法を聴き終えたら奥の宝仏殿に進みます。

道成寺の創建には複数の伝承があり、時期についてもはっきりしないそうですが、遅くとも奈良時代前半には建立されていて、古い寺宝・仏像も少なからず残っています。

その中で最も有名で、かつ特筆するべきものは、やはり国宝に指定されている平安時代の千手観音立像・伝日光菩薩立像、伝月光菩薩立像の仏像3体でしょうか。

肉付きのよい、がっしりとした体躯の堂々たるお姿です(ご多聞にもれず、写真撮影禁止なので残念ながら画像はありません。)。ここで、あれっと思われた方もいるかも知れません。

というのも、日光菩薩、月光菩薩は本来、薬師如来の左右を守る脇侍であり、他の如来や菩薩につくことは基本的に無く、また、千手観音は単体で祀られることがほとんどで、脇侍がつくことは、まず無いからです。
   
そういうこともあり、実のところ、この3体が1つのセットとして作成されたものか否かについては確証がなく、争いがあるとのことでした。

ちなみに奈良市の東大寺の法華堂では、千手観音ではありませんが、不空羂索観音と日光菩薩・月光菩薩という組み合わせが見られます。

こちらについては、日光菩薩と月光菩薩が後になってから余所のお堂より移されてきたのではないかとの説が有力なのだそうです。

大阪からはやや遠いですが、早起きをすれば余裕をもって日帰りできるはずです。白浜温泉への行き帰りに途中下車をして立ち寄るのもよいかもしれません。

2018年05月11日

◆「反故常習国」北朝鮮は軽々に信用出来ない

杉浦 正章


核全廃まで圧力は維持すべきだ

米WHに「南アフリカ方式」の核廃棄が浮上

北朝鮮の非核化問題の鼎(かなえ)が煮えたぎり始めた。6月の米朝首脳
会談を見据えて北朝鮮は3人の米国人を解放。2年半ぶりの日中韓首脳会
談は朝鮮半島の非核化に向けた協力で一致した。

完全非核化への道筋は複雑で遠いが1歩前進ではある。極東をめぐる力の
構図は緊張緩和の入り口に立ったが、北の後ろ盾としての中国と、日米同
盟の対峙の構図は変わらず、融和だけが売り物の韓国文在寅外交は荒波に
もまれ続けるだろう。

こうした中でまずは北朝鮮の核廃棄方式としてホワイトハウスの内部に急
きょ浮上しているのが「南アフリカモデル」だ。

国務長官として初めて訪朝したポンペイオは3人を連れて帰国したが、米
朝首脳会談の開催場所と日程が決まったことを明らかにした。

日程公表はまだないが、トランプは6月初旬までに予定される米朝首脳会
談の開催地については、南北軍事境界線のある「板門店ではない」と述べ
た。詳細については「3日以内に発表する」と語るにとどめた。

トランプはこれまで、板門店のほか、シンガポールを有力候補地に挙げて
いる。3人の帰国は米朝関係にとって大きな摩擦要因の一つが取り除かれ
たことになり、1歩前進ではある。しかし核心は「核・ミサイル」であ
り、ここは、不変のままであり、難関はこれからだ。

 ここに来て金正恩の“弱み”をうかがわせる行動が見られはじめた。それ
は金正恩の習近平への急接近である。40日に2回の首脳会談はいかにも異
常である。そこには中国を後ろ盾に据えないと心配でたまらない姿が浮か
び上がる。泣きついているのだ。

金正恩は習近平との大連会談で米国への要求について相談を持ちかけた。
その内容は二つある。一つは米国が敵視政策をやめることが非核化の条件
というもの。他の一つは「米国が段階的かつ同時並行的に非核化の措置を
取ること」である。

 泣きつかれて悪い気のしない習近平は8日トランプとの電話会談で「北
朝鮮が段階的に非核化を進めた段階で何らかの制裁解除をする必要があ
る」「米朝が段階的に行動し北朝鮮側の懸念を考慮した解決を望む」など
と進言した。

これに対し、トランプは「朝鮮半島問題では中国が重要な役割を果たす。
今後連携を強化したい」と述べるにとどまった。おいそれとは乗れない提
案であるが検討には値するものだろう。

注目の日中韓首脳会談は、大きな関係改善への動きとなった。しかし、北
の核・ミサイルをめぐっては安倍と中韓首脳との間で隔たりが見られた。
日本側は「完全かつ検証可能で不可逆的な核・ミサイルの廃棄」を共同宣
言に盛り込むことを主張した。

しかし、中韓両国は融和ムードの妨げになるとして慎重姿勢であった。習
近平は金正恩に対して「中朝両国は運命共同体であり、変わることのない
唇歯(しんし)の関係」と述べている。唇歯とは一方が滅べば他方も成り
立たなくなるような密接不離の関係を意味する中国のことわざだ。

 こうした中でホワイトハウスではまずは北朝鮮の核廃棄方式だとして
「南アフリカモデルが急浮上している」という。韓国中央日報紙は、国家
安保会議(NSC)のポッティンジャー・アジア上級部長が文正仁(ム
ン・ジョンイン)韓国大統領統一外交安保特別補佐官らにこの構想を伝え
たという。

これまでホワイトハウスではボルトンNSC補佐官が主張したリビア方式
が考えられていた。リビア方式は「先に措置、後に見返り」だった。その
方式ではなく南アフリカ方式を選択するというのはある意味で現実的路線
のようだ。

南アは第一段階で、1990年に6つの完成した核装置を解体した。第2段階
は、1992年に開始された弾道ミサイル計画の廃棄で、これには18か月を要
した。

第3段階は、生物・化学戦争計画を廃棄した。ただ、南アフリカ方式は経
済的な見返りがないという点が問題となる。同紙は「南アフリカモデルを
検討するというのは、北朝鮮の核放棄に対する経済支援は韓国と日本、あ
るいは国際機関が負担し、米国は体制の安全など安全保障カードだけを出
すという考えと解釈できる」としている。

結局お鉢は日本に回ってくることになるが、金額によっては乗れない話し
ではあるまい。同紙は「北の核は南アフリカと比較して規模が大きく、
“見返りを含めた折衝型南アフリカモデル”になる可能性がある」としている。

一方、安倍首相は文在寅に対して「核実験場の閉鎖や大陸間ミサイルの
発射中止だけで、対価を与えてはならない。北の追加的な具体的行動が必
要だ」とクギを刺している。

北は過去2回にわたって国際社会の援助を取り付け、その裏をかいて核兵
器を開発してきており、まさに裏切りの常習犯だ。政治姿勢が左派の文在
寅は、北への甘さが目立つ。圧力はまだまだ維持するべきであろう。北
は、日米に取っては「反故常習犯国」なのだ。核兵器の全て廃棄という目
標達成まで圧力を継続するのは当然である。

◆「習近平の罠」に落ちた共青団

宮崎 正弘


平成30年(2018年)5月9日(水曜日)通巻第5695号 

「習近平の罠」に落ちた共青団のライジング・スター
  習近平の潜在敵=孫政才に無期懲役判決。冤罪か、巻き込まれ型か

嘗て孫政才は共青団のライジング・スターだった。トップ25人の政治局員
として将来を嘱望され、43歳で農林大臣、そして吉林省書記、
2012年11月には薄煕来失脚のあとをうけて(リリーフは張徳江だった)、
重慶特別市の書記に任命された。一説に江沢民派に近付いたことにより、
その人脈の推挽とされたこともある。
 
ところが、2017年7月、突如、孫は重慶市書記を解任され、後継は陳敏爾
になった。

露骨な習近平人事である。無能だが、おべんちゃらの天才、イエスマンの
チャンピオン陳敏爾は、重慶市に乗り込むや「辣腕」を発揮して既存マ
フィアと退治したなどと報じられた。

習のバックがあればこその「つくられた業績」と酷評する人が多い。

さて孫政才は重慶市から薄煕来の悪の残滓を一斉出来なかったばかりか、
吉林省時代の入札に便宜を図り、特定企業などから賄賂を受け取った容疑
で拘束された。

なぜか妙齢の婦人たちがロビィとして介在したと騒がれた。賄賂の額面は
2670万ドル(大物にしては少なすぎるのでは?)。4月12日に死刑の求刑
がされ、5月8日、天津地方裁判所は「無期懲役」の判決を言い渡した。
 共青団(団派)は孫を守りきることが出来なかった。

孫夫人の取り巻き、とくに温家宝夫人が影のボスと言われ、令計画夫人等
とつくった「夫人倶楽部」のメンバーとして、ビジネスに手を突っ込んで
いたことが、検察の目にとまって容疑が浮かんだというのが当局の説明で
ある。孫の汚職が芋づる式に捜査されたことになっている。

しかしネットでは、習近平の罠ではないかという意見が書き込まれるとす
ぐに削除され、真相はまったくの闇。ともかく将来のリーダーとして、孫
は胡春華とともに若くして政治局員入りしたため、習近平にとっては邪魔
者に映り、狙われていたのである。

こうした一連の失脚劇に背後にちらつくのは温家宝一家の汚職である。す
でにニューヨークタイムズが何回もすっぱ抜いたように、温家宝元首相の
夫人と長男の利権構造が暴かれており、この関連で、孫政才はスケープ
ゴーツにされたようである。

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 いま、「石平歴史学」の3部作が出現した
  他国を巻き込み、内ゲバを繰り返す朝鮮半島の得意技

  ♪
石平『結論! 朝鮮半島に関わってはいけない』(飛鳥新社)
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石平氏の最新作である。

さきに本欄で評者(宮崎)は、石平氏の『なぜ中国は民主化したくてもで
きないのかーー「皇帝政治」の本質を知れば現代中国の核心がわかる』
(KADOKAWA)と『なぜ日本だけが中国の呪縛から逃れられたの
かーー「脱中華」の日本思想史』 (PHP新書)の2冊を取りあげ、かなり精
密な分析をした。

この新作を加えて、これで「石平歴史学」3部作が出現した。まずは祝意
を述べたい。

本書の骨格は、朝鮮半島の特質的手法、というより朝鮮民族の伝統芸であ
る「内ゲバ」と「外国を巻き込む」という特徴的な歴史を簡潔に叙述して
いる。

朝鮮半島2千年の歴史をパノラマ絵巻のように振り返りつつ、そのときそ
のときの政局を明確に腑分けして、朝鮮民族のDNAに染みこんだ事大主
義、無責任、逃避癖、讒言の得意技をたくみに整理整頓した歴史のまとめ
である。

いまも特質は同じであって北朝鮮では叔父も実兄も粛清して邪魔者を消し
た。祖父の金日成は中国派、ロシア派、民族派を次々と粛清した。

韓国も「従北派」の文在寅大統領は、前任の朴権惠と李明博を逮捕して裁
判にかける。その前の盧武鉉は自殺し、その前任者すべてが刑務所か、暗
殺か、亡命か。なぜこんなことが繰り返されるかと言えば、2千年かわる
ことのない朝鮮民族の体質、つまり内紛の残虐性をぬぐい去ることが出来
ないからだ。

そのうえ「周辺国のわれわれにとって他人事ではない。朝鮮半島の歴史を
見ていると、自分たちの内紛あるいは内戦に、周辺国や他民族を巻き込む
のはむしろ彼らに一貫した習性である」と石平氏はまとめるのだ。

「白村江の闘い」とは、高句麗の脅威に対応するために百済が随に応援を
もとめたことから日本が巻き込まれ、その同情による派兵という、日本独
特の情緒的防御作戦は、随の大軍という、予期せぬ援軍の出現のため日本
軍が敗れた。しかしもともとは新羅と百済の内戦に日本が巻き込まれたか
らだ。

「隋は百万人の大軍を派遣して高句麗征伐を再開した。しかしこの時も、
高句麗が国の命運をかけて徹底的に抗戦した結果、隋の煬帝の軍事行動は
失敗」した。この挫折が煬帝の権力基盤を弱体化させ、王朝の崩壊を早めた。

習近平があれほど金正恩を嫌い、南北朝鮮の統一を嫌がるのは高句麗の再
来を恐れるからである。そして隋が4度も高句麗成敗に失敗した経過を教
訓としているからだ。

隋の崩壊を継いだ唐王朝も、じつに3回、つまり随・唐で合計7回も高句
麗遠征を繰り返し、いずれも失敗した。

その挙げ句、半島の内戦に巻き込まれてしまったのが日本だった。

元寇では、元朝のお先棒をかついでフビライを焚きつけ、日本侵略に先頭
切ってやって来たのは高麗であり、尚武の精神に溢れた鎌倉武士によって
さっさと追い返された。

日清戦争の原因も朝鮮王朝の内紛に巻き込まれた結果、起こった。
 
朝鮮戦争ではスターリンと毛沢東が金日成の謀略に引っかかり、またアメ
リカは李承晩に騙されて参戦し、苦戦したという説を石平氏は採る。

この特質的な朝鮮民族の習性を理解すれば、現在の半島危機にアメリカも
中国も巻き込まれることを嫌がるのは当然であり、日本は半島がどうなろ
うと関わる必要はまったくないと説くのである。
 なるほど、じつに納得のいく、説得力に溢れた歴史指南書である。

        

◆科研費の闇、税金は誰に流れたか

櫻井よしこ


山口二郎氏と言えば2015年の平和安全法制に反対する集会の中で「安倍に
言いたい! お前は人間じゃない! 叩き斬ってやる」と演説したと報じ
られた人物だ。4月20日の「言論テレビ」で衆議院議員の杉田水脈氏が、
その山口氏に以下のように巨額の科学研究費補助金(科研費)が支給され
ていたことを報告した。

02年から06年までの5年間に亘る研究、「グローバリゼーション時代にお
けるガバナンスの変容に関する比較研究」には4億4577万円、07年から11
年の「市民社会民主主義の理念と政策に関する総合的考察」には9854万
円、12年から17年の「政権交代の比較研究と民主政治の可能性に関する考
察」には4498万円となっている。山口氏は16年連続で科研費を獲得し、そ
の合計は6億円近くに上ったわけだ。

東京工業大学特任教授の奈良林直氏が驚いて語った。

「科研費は昭和7(1932)年の天皇陛下の御下賜金をきっかけとする日本
学術振興会と文科省が80年近く、資金配分してきました。2017年度の科研
費の予算額は2677億円、日本中の大学の研究者が応募します」

日本学術振興会のサイトには、予算の99.8%が国からの運営費交付金及び
補助金等で賄われているとの説明がある。天皇陛下の御下賜金から始まっ
た学術研究振興の貴い資金は、私たちの税金によって大きく支えられてきた。

奈良林氏は3つの研究について科研費を受け取った。うち1件はフィルタベ
ントに使うAgXの研究で、その時の競争倍率は20倍だった。「この研究に
は大きな装置が必要でしたが、3年間で2000万円でしたからそこにお金を
かける余裕はありませんでした。そこで学生たちに手伝ってもらって装置
を手作りしました。研究には40人の学者、専門家に参加してもらいました
が、彼らは全員、交通費も含めて手弁当で協力してくれました」と奈良林氏。

人文科学系で数億円

研究の成果は世界初のフィルタベントシステムの開発につながった。それ
はセシウムなどの放射性物質だけでなく有機ヨウ素を取り除く優れもの
で、広く世界に認められた。このフィルタベントシステムを設置すれば、
万が一原子力発電所で爆発事故があっても、セシウムも有機ヨウ素も除去
できるため、甲状腺癌などの心配が減少するというのだ。

2000万円の科研費でこのような成果を導き出した奈良林氏は、山口氏が受
け取っていた6億円規模の科研費についてこう語る。

「理系の研究では、私のフィルタベントの研究のように実験装置の製作や
最先端の測定器などを必要としますので、費用がかかります。しかし、人
文科学系で数億円規模の研究費がなぜ必要なのか、そのような大金が支給
されていたことに驚いています。科研費は学者・研究者にとって非常に大
切なものです。それだけに、数億円の科研費はどのような審査を経て与え
られたのか、その成果物は何だったのかなど、厳しく評価することが大事
だと思います」

科研費は多くの研究に支給されているが、中には疑問を抱かざるを得ない
研究もある。杉田氏が指摘する。

「たとえば沖縄の基地反対運動や琉球独立を主張する研究者グループへの
支給です。龍谷大学教授の松島泰勝氏の『沖縄県の振興開発と内発的発展
に関する総合研究』に442万円の科研費が出されています。研究の期間は
11年から15年となっていて、研究成果として多くの雑誌論文が並んでいます」

成果とされた雑誌への論文寄稿では、「琉球の独立と平和」、「なぜ、琉
球独立なのか・琉球と日本との新たな関係性を考える」、「尖閣諸島は
『日本固有の領土』なのか」などが目につく。図書(書籍)としては『琉
球独立論・琉球民族のマニフェスト』や『琉球独立への道・植民地主義に
抗う琉球ナショナリズム』などがある。

『琉球独立論』は、中央政府対地方自治体という構図の中での沖縄論は既
に意味を持たないものであり、現在の課題は、琉球が日本に同化するため
の差別撤廃というテーマから、琉球が独立するために構築すべき日本との
関係性というテーマに移っているといった内容だと紹介されている。

沖縄と日本、或いは沖縄県人と日本人を完全な別の国家、民族と見做した
論理展開である。この主張に基づいて雑誌に寄稿し、書籍を出版する松島
氏は13年に「琉球民族独立総合研究学会」を、沖縄国際大学教授の友知政
樹氏、同大学准教授の桃原一彦氏と共に設立している。彼らの目指すとこ
ろは「琉球の日本からの独立」である。

厳しく公正な審査を

杉田氏が指摘した。

「松島氏は『沖縄県の振興開発と内発的発展に関する総合研究』の名目で
研究費を申請しています。よくわからないタイトルですが、地域発展につ
いての研究かと思わせる。けれどその成果物を見るとそうではない。尖閣
諸島は本当に日本固有の領土なのかと問う論文を書いたり、沖縄独立を主
張しています。それに松島氏らは15年9月にニューヨークの国連本部で記
者会見し琉球独立を宣言しています」

記者会見の写真を見ると、松島氏は自著を、他の3人は「琉球新報」を掲
げて会見に臨んでいる。4人の背景に「琉球民族獨立總合研究學會」の看
板がかかっている。

「漢字を見ればこれは中国向けの記者会見ではないでしょうか。この会見
に先立つ国連内のあるシンポジウムで、琉球新報編集局長が『沖縄はアメ
リカの領土でも日本の領土でもない』と発言しています」

と、杉田氏は指摘する。

研究にはさまざまなものがあってよいとは思う。しかし、科研費は税金で
ある。公正なルールに基づいて支給されなければならないのは当然だ。こ
こに示した事例はどう考えても国民の納得を得られるものではないだろう。

奈良林氏も指摘したように、大学関係者にとって科研費は非常に重要な意
味を持つ。それだけに厳しい審査も受ける。たとえば山中伸弥氏が所長を
務める京都大学iPS細胞研究所で起きた論文不正問題である。不正を
行った若手研究者に科研費80万円が支給されていたため、この科研費を返
還すべきか、また、山中氏は辞任すべきかという問題にまで発展した。

内外で高く評価され尊敬を集めている山中氏の辞任は誰も望んでおらず、
氏は辞任を思いとどまった。だが、80万円という少額であっても科研費の
在り方は厳しく精査された。それに較べて、山口氏や松島氏らへの科研費
はどこまで厳しく公正な審査を受けているのだろうか。実はこの他にも疑
問を抱かせる科研費支給の事例は少なくない。科研費は私たちの予想以上
に深い闇に沈んでいるのではないか。

『週刊新潮』 2018年5月3・10日合併号 日本ルネッサンス 第801回

◆健康百話 乳がんの治療

小川 佳成(医師)


乳癌の治療法は、病状や進行度、あなたの全身状態を考慮して決まります。治療には主として、手術、放射線治療、抗癌剤(抗ホルモン剤を含む)治療があります。

病状の進んでいる方には抗癌剤治療が優先されますが、通常は手術を行い、その後再発予防のための抗癌剤治療を行います。

【手術】
手術には主として、1.乳房切除、2.乳房温存手術があります。腫瘍の大きさや広がり具合などにより術式を選びます。当大阪市立総合医療センターでは、半数以上の方が乳房温存療法を受けられています。
 
乳癌の手術では転移の有無に関わらず、癌の根治・予防のためにわきの下のリンパ節を全部取り除くこと(リンパ節郭清といいます)が標準的に行われてきましたが、リンパ節郭清をすると術後に腕がむくみやすい等の症状が残ります。

そこでわきの下のリンパ節転移がないと予測される方を対象に術後の症状を軽減するために、センチネルリンパ節生検という方法を用いた、腋窩(わきの下)リンパ節郭清を省略する術式が行われるようになりつつあります。当センターでは6割の方がこの術式を受けられています。

【放射線治療】
乳房温存手術を行った場合には、残った乳腺での再発を抑えるために乳房に対する放射線治療を術後に行っています。治療期間は5〜6週間でこの治療により乳腺内での再発は2〜3%以下に抑えることができると考えられています。

【抗癌剤治療】
切除した癌の性格を詳しく調べて、術後の抗癌剤治療の必要性とその内容を決めます。これらの治療で再発の3〜4割を抑えることができるとされます。抗癌剤治療は充分な副作用対策をして外来にて行っています。

【乳房再建】
乳房切除後の乳房再建は形成外科にて行っています。当センターでは、術後1〜2年を過ぎ、治療が一段落してからの再建をお勧めしています。

乳癌の治療は5〜10年ごとに大きく進歩しています。当センターでは、“あなたがより良く生活していくために治療があるのだ”という想いのもとに、各分野の専門医が協力し合い乳癌の治療に当たっています。  
                       <大阪市立総合医療センター 外科>

2018年05月10日

◆マルクスは正しいとのたまうのは

宮崎 正弘


平成30年(2018年)5月8日(火曜日)通巻第5694号 

 中国は「自由貿易の旗手だ」と宣言したはずの習近平が
  マルクスは正しいとのたまうのは精神分裂症状ではないのか?

ダボス会議で習近平は「自由貿易の旗手は中国である」と宣言し、保護貿
易的なイメージのある米国を揶揄したことは記憶にあたらしい。先月の
ボーアオ会議でも、中国は自由貿易政策を推進すると豪語してみせた。

その舌の根も乾かぬうちに、習近平は「マスクスは正しい」と演説するの
だから、どう考えても論理矛盾ではないのか。

しかも、その矛盾に気がつかないとすれば、分裂症かもしれない。
「対外的に自由貿易、対内的にマルクス」とはこれ如何に?

2018年5月7日、北京の人民大会堂に3千名をあつめて開催した「マルク
ス生誕200年記念」兼「『資本論』刊行170周年記念」の学習会で、習近平
が自らの思想を「21世紀のマルクス主義」と言い放った。そのうえで、
「マルクスは全世界のプロレタリアートと勤労人民の革命の教師であり、
近代以降のもっとも偉大な思想家」と礼賛し、「習思想」が現代のマルク
スに匹敵すると定義したのである。

すでに1980年代から北京大学で『マルクス経済学』を講義すると学生は失
笑した。いまの中国のヤングばかりか、共産党員ですら「マルクスって
誰?」であり、知識層は『マルクスは外来思想であり、中国の伝統にはそ
ぐわない』と批判してきた。

しかし文革時代を田舎で送り、勉学の蓄積が稀薄な習近平の世代は、マル
クスに一種の郷愁を覚えるのかもしれない。ともかく拝金主義、市場経済
に酔う中国で、マルクスの亡霊が復活するのは時代錯誤だろう。


◆ポンペオ国務長官、再び平壌訪問

宮崎 正弘


平成30年(2018年)5月9日(水曜日)弐 通巻第5696号 

 ポンペオ国務長官、ふたたび平壌訪問。横田基地で給油
  大連での習近平、金正恩会談を受け、「段階的、同時並行的非核化」
の下準備

じつに目の回る3日間だった。

2018年5月7日、専用機で極秘に大連に飛んだ金正恩は、習近平の出迎えを
受け、儀仗兵閲兵後、ただちに実務会談に臨んだ。中国側の出席は王こ寧
政治局常務委員、楊潔チ国務委員、王毅外相という外交三羽烏に加えて、
宋涛(中央弁事処主任)らが出席したが、王岐山の姿はなかった。

大連空港での北朝鮮特別機の駐機を最初に報じたのは日本のメディアだった。

中朝首脳会談は引き続き8日も行われ、ふたりが大連の海岸を悠然と歩き
ながら話し合う風景がCCTVに映し出された。大連は嘗て金正日が極秘
訪問した場所だが、新義州から丹東、大連と陸路を走った。出迎えに行っ
たのは李克強だった。黒塗りの高級車40台を連ねての訪問で大連は交通麻
痺に陥った。

たまたま大連にいた筆者も、その行列に遭遇したことを鮮明に記憶してい
る。大連では近く中国国産空母第一号の正式な就航式が行われることも予
想されている。

さて僅か1ヶ月という短期間に2回という異常な中朝会談だが、板門店に
おける南北首脳会談の報告を受けた後、習近平の関心は近く行われる予定
のトランプ大統領と金正恩対談に釘を刺し、牽制することだ。
 
米国は「段階的、同時並行的な非核化」のプロセスが明瞭になるまで制裁
を続行すると表明しているが、習近平としては、米朝間に最終的な合意が
あるのか、北朝鮮の本心は奈辺にあるのか、中国はどこまで介入余地があ
るかを探ったと考えられる。中国筋に拠れば、米朝首脳会談はシンガポー
ルでの開催がもっとも有力だという。

同じ日、重要な外交場面から外された李克強首相が訪日した。日中友好40
年を記念する目玉とはいえ、日本のメディアが多少は報じたくらいで、華
字紙の扱いは小さい。

李克強首相は9日に同じく来日する文在寅韓国大統領を交えての日中韓3
国会談に臨んで、そのあと北海道を訪問する予定。


 ▲同じ日、トランプはイランとの核合意離脱を正式に表明した

トランプが「イランとの核合意から離脱」を表明し、欧米メディアは、こ
ちらのニュースを特大に扱って、北朝鮮の動きは2番か3番の扱い。
イランへの制裁再開は180日の猶予期間をおいて実施され、イランとの銀
行送金も出来なくなる。イスラエルの新聞は前向きに評価する分析が目
立った。

米国の軍事筋がもっとも懸念するのは、北朝鮮が核弾頭をイランに売却す
るのではないかという危険性である。

ワシントンタイムズはポンペオ国務長官が近く平壌を再訪問し、米朝首脳
会談の地ならしを行うだろうと予測記事を流していたが、直後にトランプ
は記者団に対して「すでにポンペオは北朝鮮に向かっている」と発表した。

ポンペオの特別機は横田基地で給油後、日本人時間の9日午前五時40分
に大統領専用機で平壌へ向かった。

横田を飛び立つ風景は日本のメディアがとらえた。

ポンぺお国務長官に随行したのはブライアン・フック政策局長、シュー・
ポテンガー国家安全会議アジア部長ら七名とされ、帰路に勾留されている
アメリカ人三名を連れ帰るのではないかという期待がある。

しかしアメリカの世論はとくに、アメリカ国籍の3人が帰っても、情緒的
な反応を示すようなことはない。

ポンペオは3月末に極秘に北朝鮮を訪問し、4月1日に金正恩と会談してい
る(このときポンペオはCIA長官、こんどは国務長官)。この動きから
分かるのは国務省主導の外交権をホワイトハウスが掌握したという事実で
ある。リベラルの巣窟だった米国務省が、外交の蚊帳の外に置かれている
という事実も、尋常ではない。
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1728回】            
――「支那人に代わって支那のために考えた・・・」――内藤(29)
   内藤湖南『支那論』(文藝春秋 2013年)

               ▽

満洲の実情を弁えない一知半解で頭でっかちの「書生輩」が権力に任せて
政治を行なえば、摩擦は必ず起きる。やはり驕りに導かれた強権が反発を
招くことは必至だ。

内藤の主張に従うなら、どうやら当時の日本は小さくは満洲政策、大き
く言うなら対中政策を策定する際に、中国における南方と北方、南方人と
北方人、さらには満洲における満人と在満漢人の違いを考慮することな
く、彼らを一緒くたに扱ってしまったのではなかろうか。

 じつは「今日でも一般の人民は日本の勢力というものを認め」、さらに
「満洲におい馬賊などから成り上って、日清日露の戦争以来の実際のこと
を知っておる軍隊の頭目など」も、「何事があっても日本に頼らなければ
危いということを深く呑み込んでおる」。ところが、そういった実情を知
らない南方出身官吏――彼らを送り込んだのは日本だ――に邪魔され、「日本
と満洲の関係が、段々気まずい傾きを来しておる」。
かくして内藤は、「今日でもその歴史を知らない南方人の官吏さえ逐い退
けてしまえば、満洲のことは、日本との間に何ら悪い関係がなしに、円満
に行くべきはずである」と結論づけた。

 満洲の歴史、満洲と日本の関係を知る在満漢人に満州を任せるべきだ。
「もしも日露の勢力を引き去ってしまうと、満洲は依然として貧乏の土地
に止まる」。だから財政的に考えるなら中華民国から満州を切り離すがい
い。中華民国が「漢人の天下で漢人が支配するということになると、支那
本部の財力でもって、支那を支配するということを根本の主義として立て
て行かなければならぬ」。かくして新しい国家は「支那の根本財政に害こ
そあるけれども、利益にはならぬというような土地をば切り離してしまう
方が、財政の理想上から云うと至当のことである」と主張した。
財政上も中華民国は満洲を切り離すべし、である。

  さらに内藤は筆を進めるが、かりに「支那人がそこらじゅうの異種族
の土地を侵害するということは、一方から云えば漢民族の発展」と見做す
ことができるが、これを異種族の立場から考えるなら「支那の人民」の
「侵略的精神」というべきものだろう。だから「今日において国力すなわ
ち兵力とか財政力」からして「維持できない土地は、政治上からこれを切
り離してしまって、単に将来の経済上の発展を図る方」が得策である。

 かくして内藤は、「五族共和というような、空想的議論」を排し、中華
民国は実力に見合う形で「むしろその領土を一時失っても、内部の統一を
図るべきである」。「今日支那の領土問題を論ずるにおいて、(中略)種
族問題と、政治上の実力とが最も注意して考えられなければならぬところ
である」とする。

歴史的経緯と現状を弁えず、メンツと理想にこだわる余りに「五族共和と
いうような、空想的議論」を掲げ推し進めることは政治的には愚策という
べきだ。内政にせよ国際関係にせよ、高邁な理想を掲げはするが、軍事的
にも財政的にも、また民力のうえからも費用対効果を考え判断するのが政
治の要諦だろう。だからこそ日露戦争から中華民国初期の満洲を考えた
時、内藤の考えは傾聴に値する。
そこで問題となるのは内藤の主張が、実際に満洲に関心を懐いた日本朝野
を動かしたか否かである。

内藤の主張を敷衍するなら、日本は中国における南北――ということは、中
部・西部・東部に加え、東西南北の辺境部の違いからくる文化(つまりは
《生き方》《生きる姿》《生きる形》)の違いに思いを致すことはなかったとい
う決定的な間違いを犯してしまったということになろうか。
やはり中国と中国人を文化的に一律と見做してきたことが、日本にとって
の大きな蹉跌だったようだようにも思える。
どうやら日本の中国理解は、根本から見直さざるを得ないことになろうか。
《QED》

◆米国が求める形の非核化目指す北朝鮮問題

櫻井よしこ



「米国が求める形の非核化目指す北朝鮮問題 「リビア方式」による解
決可能性を示唆か」

4月17日の日米首脳会談で、ドナルド・トランプ米大統領は安倍晋三首相
に、「極めて高いレベルで北朝鮮と直接対話している」と語り、その後記
者団が「金正恩氏と直接話しているのか」と問うと、「イエス」と答え
た。マイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官が3月30日から4月1日の
復活祭の連休を利用して訪朝したのだという。

いま米国の対北朝鮮外交はトランプ氏の意向を汲むポンペオ氏に加えて、
国家安全保障問題担当大統領補佐官のジョン・ボルトン氏が軸となって構
築されている。3氏共に、非核化の話し合いが失敗すれば、軍事オプショ
ンもあり得るとの考え方だ。

ポンペオ氏は正恩氏と話し合いをした後の4月12日、上院外交委員会で行
われた国務長官への指名承認公聴会で、正恩体制の転換は考えていないと
明言すると同時に、非核化に関して、「見返りを与える前に恒久的かつ不
可逆的な成果を得ることを確実にする」と述べた。

米国側の一連の動きは北朝鮮問題が「リビア方式」による解決に向かう可
能性を示唆するのではないか。

これはリビアの最高指導者、カダフィ大佐が選んだ非核化の道である。カ
ダフィ氏は秘密裏に大量破壊兵器の製造を進めていたが、2003年12月にイ
ラクのサダム・フセイン元大統領が地中に潜んでいたところを米軍に拘束
されたのを見て、震え上がった。カダフィ氏はその3日後に大量破壊兵器
を放棄する意思を世界に宣言した。

CIAと英国の秘密情報組織、MI6の要員を含む専門家集団がリビア入
りし、核兵器、核製造に必要な関連物資、核運搬用のミサイル、製造施
設、一連の計画に関する書類など全てを押収、化学物質はリビア国内で米
英作業部隊の監視の下で破壊され、書類は全て国外に持ち出された。

カダフィ氏は全てを受け入れて生き延びた。但し、彼は10年にチュニジア
でいわゆる中東の春と呼ばれる民主化運動が始まり、その広がりの中で11
年に群衆に殺害された。

正恩氏が核を放棄すれば、カダフィ氏やフセイン氏のように命を奪われる
という言説があるが、右の2つのケースが伝えているのは全く別の教訓で
はないか。フセイン氏は核兵器を持っていなかったが持っている振りをし
て査察を拒否し、米軍に殺害された。カダフィ氏は核兵器製造を明らかに
し、査察を受け入れ、8年間生き延びた。氏を殺害したのは前述したよう
に、リビアの国民であり、それはカダフィ一族による専制恐怖政治が招い
た結果だ。

2人の指導者の異なる運命を正恩氏が把握すれば、どちらを選べば氏の命
脈が守られるかわかるはずだ。

トランプ氏は安倍首相との共同記者会見でも「成果が期待できなければ米
朝首脳会談は実現しない。会談が実現しても実りがなければ退席する」と
語っている。正恩氏に圧力をかけ続け、米国の求める形の非核化実現を促
しているのだ。

安倍首相とトランプ氏は19日午前の共同記者会見で拉致問題についても
語った。トランプ氏は拉致被害者について、「日本に帰れることを大事に
考えている。私はこのことをシンゾーに約束した」と語った。救う会会長
の西岡力氏は語る。

「CIAは北朝鮮の情報当局にも接触しており、拉致被害者についても語
り合っていると思われます。その中で拉致被害者生存情報を得ているので
はないでしょうか。その上で拉致被害者の帰国に言及しているのです。勿
論、甘い期待はできませんが、拉致問題解決に向けてよい兆しだと思います」

国際政治は動いている。多くの日本人の命と運命がかかっている。国とし
てどう動くべきか、正念場である。日本の国会はもっとこうした大事な問
題に向き合うべきだ。

『週刊ダイヤモンド』 2018年4月28日・5月5日合併号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1229

◆風邪と肺炎にご注意

柴谷涼子

 
風邪やインフルエンザが流行する季節です。特にこの時期、朝晩の気温の変化が激しいことに加えて、空気が非常に乾燥するときには、風邪の原因になるウイルスの活動も活発になり、風邪をひきやすくなります。

●事前の予防
日ごろの心掛けとしては、外出から帰った後のうがいと手洗いが基本です。また、お天気の良い日には、日光浴や散歩など適度な運動をするよう心がけ、入浴により身体を清潔にしておくことも大切です。

●肺炎は高齢者にとって危険な病気
肺炎はお薬の進歩によって、かなり治療ができるようになりましたが、高齢の方にとってはまだまだ怖い病気です。

とくに糖尿病や心臓、呼吸器系に慢性的な病気を抱えている方、腎不全や肝機能障害のある方も罹患しやすく、病状も重くなる可能性があります。厚生労働省が報告している人口動態統計でも肺炎による死亡率はここ数年上昇してきています。

肺炎は細菌やウイルスなどいろいろな原因で起こりますが、肺炎を起こす原因となる細菌に肺炎球菌があります。

●肺炎球菌による肺炎を予防する
肺炎球菌は健康な人でも鼻腔などに常在する菌です。しかし加齢などにより免疫力が低下すると、病気を引き起こしやすくなります。

日本では、ペニシリンという抗生物質が効きにくい肺炎球菌の割合が増加しています。抗生物質の効きにくい肺炎球菌による肺炎に罹患すると、治療に難渋する場合があります。
 
そこで、肺炎球菌によって起こる肺炎を予防するワクチンが肺炎球菌ワクチンです。ただし、肺炎球菌ワクチンを接種してもこれ以外の原因で起こる肺炎は残念ながら予防することはできません。
 
ワクチンを接種して得られる免疫は約5年以上持続するといわれています。

次のような方に肺炎球菌ワクチン接種をおすすめします。
・65歳以上の高齢者 
・心臓や呼吸器系に慢性疾患のある方 
・糖尿病の方 
・腎不全や肝機能障害のある方

肺炎球菌ワクチンの接種については、最寄りの病院やかかりつけの医師にご相談下さい。肺炎球菌ワクチンのみでなく、今年もインフルエンザワクチンを積極的に接種しましょう。
       (大阪厚生年金病院 看護部看護ケア推進室感染管理認定看護師)