2018年06月30日

◆極東情勢大転換、日本の正念場だ 

櫻井よしこ


全世界が注目した6月12日の米朝首脳会談の共同声明を読んで、つい、
「耐震偽装」という言葉を思い出した。スカスカで強度が足りない。「北
朝鮮の完全非核化」を達成させるといっても、そこに至る具体的取り決め
が盛り込まれていない、これで大丈夫かと、疑問を抱く。 

共同声明には、「完全で検証可能、不可逆的な核の廃棄」(CVID)と
いう言葉はない。「北朝鮮の非核化」もない。代わりに「朝鮮半島の非核
化」が3度繰り返されている。

朝鮮半島の非核化は、北朝鮮が非核化を達成する前提として、韓国が米国
の核の傘から外れることを想定するものだ。つまり、米韓同盟の解消が前
提で、中国や北朝鮮が長年主張してきたことに他ならない。

韓国は長年、米韓同盟によって守られてきた。歴代政権も同盟を重視して
きた。だが、文在寅大統領の下の、今日の韓国は必ずしもそうではない。
韓国は驚く程大きな政治的変化を遂げてしまったのである。

米朝首脳会談という史上初の派手な出来事の陰に隠れて、韓国では6月13
日に統一地方選挙が行われた。米朝会談の翌日に行われたこの選挙につい
て、なぜか日本では殆ど報道されていないが、文大統領の与党で左翼政党
の「共に民主党」が圧勝した。文氏は昨年、経験も不十分な左翼の判事を
いきなり大法院(最高裁)長官に抜擢した。新長官は前長官の「非合法な
行為」をあげつらい、前長官を刑事告訴しようとして、他の判事と対立中
である。

統一日報論説主幹の洪熒(ホンヒョン)氏は、「司法の左傾化が決定的に
なるかもしれず、熾烈な戦いが進行中です」と語る。

韓国では左派勢力が、文大統領と共に行政府を握った。マスコミ界、教育
界も親北朝鮮の左派勢力が席巻している。いま、議会(立法府)が左翼勢
力に席巻され、司法も危ういのだ。結果として韓国は本当に別の国のよう
になりつつある。このことを、日本人はもっとはっきり認識しておくのが
よい。

「戦争ゲーム」

そもそも、6月13日の選挙前日に米朝首脳会談が設定されたのはなぜか。
韓国では文氏と朝鮮労働党委員長の金正恩氏が共謀したという見方が濃厚
だ。事実、選挙前日に行われた米朝首脳会談の効果は絶大だった。米朝会
談への流れを作ったのは文氏だと喧伝され、支持率は70%を超え、決定的
な追い風となった。こうして文氏の左翼政党が圧勝し、正恩氏に批判的な
保守勢力は潰滅的敗北を喫して力を失った。韓国の保守論壇の中心人物と
もいえる趙甲濟(チョガプジェ)氏は「韓国は国家自殺の道を進んでい
る」と警告した。

権力基盤を固めた文氏は、かねてより掲げていた南北朝鮮の連邦政府樹立
をはじめとする対北宥和策を加速させるだろう。米韓同盟の後退もしくは
破棄は、中朝両国のみならず、文氏をはじめとする韓国左派勢力が長年渇
望してきたことだ。無論、ロシアも大歓迎であろう。

こうした状況を知ってか知らずか、米朝首脳会談直後の記者会見でトラン
プ大統領は、米韓合同軍事演習を「戦争ゲーム」と呼んで、中止を示唆し
たのである。中止の理由は、「恐ろしく金がかかる」「(軍事演習は)挑
発的だ」からだそうだ。グアムからB─1B爆撃機を北朝鮮上空付近まで飛
行させた件についても、トランプ氏は「6時間半の飛行だ。非常に金がか
かる」と批判した。

安全保障戦略や軍事行動のひとつひとつを「金勘定」を基準に評価するの
では、北朝鮮の背後に構える中国に最初から白旗を掲げるようなものだ。
米韓合同軍事演習の中止について、日本政府中枢の安全保障問題の専門家
はこう述べた。

「米国でも専門家は皆、馬鹿げた考えだと言っています」

だが、米大統領の言葉は非常に重い。合同軍事演習は、「北朝鮮が真摯に
非核化に向けての話し合いを続けている限り」との条件つきながら中止す
ることになってしまった。

シンガポールでの6月12日の記者会見で、トランプ氏はさらに在韓米軍撤
退の可能性にまで触れた。米朝首脳会談とは別に、在韓米軍3万2000人を
家に戻すことは大統領選挙のときの自分の公約だと強調したのである。

トランプ氏の国家安全保障問題担当大統領補佐官、ボルトン氏は別の意味
で在韓米軍の撤退を前向きにとらえている。米軍を日本や台湾に移すこと
で、米兵が朝鮮半島で人質にとられている現状を変えられるというのが理
由のひとつだと、氏は説明している。

また、米国内には、朝鮮半島よりも台湾にコミットすべきだとの見方が生
まれている。台湾を中国に奪われれば南シナ海はほぼ完全に中国の海に
なってしまう。戦略的に台湾の重要性は韓国のそれを上回るという分析
だ。その考えに従えば、釜山に戦略的拠点さえ確保できれば、米軍は朝鮮
半島から引き揚げてもよいことになる。

国民を守る

無論、米国内にも反対論は根強い。それでもトランプ氏が決意すれば、日
米中露南北朝鮮の6か国の中で、明確に米軍引き揚げに反対するのは、日
本だけになりそうな状況だ。

朝鮮半島からの米軍の引き揚げは、間違いなく極東情勢を一変させずには
おかない。その場合、日本の姿はどうなるか。米軍の核の傘から韓国が脱
け出し、残るのはわが国だけになる。このような国の在り方でよいのか
と、私たちは問うべきだ。

安倍首相は、いまやトランプ氏以下米国政府が掲げるインド・太平洋戦略
を提起した首脳である。トランプ氏が突然拒否した環太平洋パートナー
シップ協定(TPP)を米国抜きで取りまとめ、欧州連合(EU)との
EPAもまとめ上げた。国連安全保障理事会で北朝鮮に対する制裁決議を
採択に導いたのも、安倍首相だ。

日本が掲げる価値観は、国際社会に遍(あまね)く通用する普遍的価値観
であることを確信して、世界の秩序構築に貢献してきた。日本の進むべき
道筋をきちんと押さえた外交・安保戦略を提示してきた。

だが、それでも、拉致問題は解決されていない。日本国は40年以上も国民
を救出し得ていないのである。どれほど立派な提言ができても、国民を守
るという国家の基本的責務を果たし得ないのでは、日本は国家として立つ
瀬がない。

トランプ大統領は拉致問題交渉のとば口まで、道をつけてくれた。今後の
ことは、韓国からの米軍撤退も含めて何があっても不思議ではない。米朝
交渉で米国が劣勢に立つこともあり得る。極東情勢は大転換してしまった
のだ。そのことを覚悟して、日本が力を発揮して拉致被害者を取り戻すに
は、迂遠かもしれないが憲法改正を含めて力の外交もできる国にならなけ
ればならない。

『週刊新潮』 2018年6月28日号 日本ルネッサンス 第808回

◆人民元、11日間連続で3・8%下落

宮崎 正弘

平成30年(2018年)6月29日(金曜日)弐 通巻第5742号 

民元、11日間連続で3・8%下落。向こう6ヶ月は下落容認か
   中国人民銀行筋。「輸出競争力を高め、米国の利上げには呼応しない」

 人民元が下落を始めた。11日間連続で、(6月13日のレートに対して)現
時点(6月28日)までに3・8%の下落ぶりだ(1ドル=6・60人民元)
もし数年前の1ドル=8人民元レベルに戻るとすれば、1人民元は17円
から13円になる。

中国人民銀行筋は「米国との貿易戦争に対応するため、人民元の輸出競争
力を持たせるためであり、米国の利上げによる市場の反応ではない」と
言っているが、それは実情を反映していない。

人民元は準固定相場で操作されているため、一日の変動幅は2%。した
がって、下落方向は継続的な介入でも、徐々にしか下落しないメカニズム
となっている。ウォール街は「向こう6ヶ月、人民元は下落傾向」と予測
している。

直接的に下落が始まったのは6月14日からで、海外オフォショア市場の人
民元取引からである。ドル需要が高まるのは、米国の金利であり、人民元
を高い裡に売って、とりあえずはドルに交換するのは投資家の常道である。

また通貨危機に対するヘッジである。

しかし人民元はどこまで崩落するのか。
 
もとより人民元レートは高すぎたのである。なぜなら為替は金利と経常収
支が二大要素、この列に3番目の要素として政治的要因が加わる。

市場関係者は米中貿易戦争が直接的原因とみる向きが多いが、やはり金利
である。通貨は金利の高いほうへ流れるのは自然の摂理。次に経常収支で
あり、中国の外貨準備が事実上、急激に減っており、対米黒字が激減すれ
ば、外貨が枯渇することは明らか。
 
この傾向を確認すれば、中国から投機資金も逃げ出す。それが今回の人民
元下落の根底的な要因である。
      
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
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 いまさら指摘されるまでもないが、日本の宣伝下手は直らないなぁ
  悪辣な嘘放送を中国はなぜ、アメリカで執拗に展開しているのか

                  ♪
ジェイソン・モーガン『アメリカも中国の韓国も反省して日本を見習いな
さい』(育鵬社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

いやはや題名通りの内容だが、表現された日本語が平明でありすぎるの
で、何故だろうと訝しんだ。

著者のモーガン氏はなるほどニューオーリンズに生まれ、大学では中国史
を専攻、韓国で英語教員。そしていま日本の麗澤大学で教鞭を執る。

いまの大学生はまったく敬語の使い方を知らないことに驚いて、そのせい
か、本書の叙述が平明すぎるほどやさしい日本語になった。それが意外に
効果的なのも、題名の所為である。なぜならアメリカと中国、韓国に静か
に落ち着き払って、しかし反省を促しているからである。

傲慢という治癒の見込みがないDNAの共通性をもつ米・韓・中と、「謙
虚な」、いや謙虚すぎる日本人との文化比較は、いままでにもさんざんな
されてきたし、歴史捏造に関しても、議論は尽くされている。

さはさりながら、いまも日本人は若いアメリカ人からみても自虐的であり
すぎ、反省することが好きなようだ。これは可笑しい、とモーガン教授は
驚くばかりだ。自省もほどほどにして、これを克服しなければいけないと
説く。

本書の中に展開された多くの指摘のなかでも、「情報戦争に後れを取る日
本」という項目がとくに重要である。

KGBは冷戦時代にアメリカ社会に入り込み、イメージ作戦で情報を繰っ
ていたが、その一例をヘミングウェイにみる。

KGBは「まず、ヘミングウェイ、スタインベッグといった作家、ジャー
ナリストたちをソ連に招きました。彼らの金銭欲や名誉欲を刺戟し、『貧
しい国のために協力してもらえないか』などといって正義感をくすぐり、
巧みに操ることで、ソ連が書いて欲しいものを書かせた」

これを真似る中国は「他国のメディアを買収したり、大学などの公共機関
に多額の寄付をし、中国批判をする学者にビザを与えないなど、様々な手
段を講じて、中国批判ができないようにしています」。

戦争前夜からスメドレーやエドガースノーらは中国に買収され、アメリカ
人大衆を洗脳した。

「日本は悪い国だから何をされてもしようがない。だから原爆投下や大空
襲などでの民間人の犠牲は仕方がなかった」と免罪符にしたのである」。
著者は続けてこういう。

「自国の所業を正当化するために悪人に仕立てられた日本、という訳で
す。アメリカのドラマや英語でもよくこのような陰謀が描かれ、嵌められ
た主人公は戦いますが、日本も戦わないと永遠に悪者扱いされるでしょ
う」(71−72p)。

本書はとくに大学生、高校生によんで欲しいと思った。

◆万葉集に軍事メッセージ

毛馬 一三 

「万葉仮名」で書かれた「難訓歌」や「未詳歌」、つまり日本語では判読出来ない歌のほとんどを、何と韓国語で詠んでみると、「未詳歌」ではなく、総て読み明かせると聞いた事を思い出した。

しかもその「万葉集の未詳歌」には、当時の日本と百済との間で「軍事、政治に関する驚くべきメッセージ」が秘められているということだ。

この話をしてくれたのは、以前のことだが、韓国の著名女流作家、李寧煕(いよんひ)氏。韓国大手新聞社「韓国日報」の政治部長・論説委員長から国会議員を経て、韓国女流文学会会長を歴任された。ただ、今もご健在か確認出来ていない。

筆者は、以前「韓国日報」からの紹介で、李氏が来日された折、2日間、奈良県桜井の「万葉の道」やその周辺の「古代天皇古墳群」散策の案内役を務めた。

その時李氏が、こもごもと語ってくれたのが、この「万葉集」に秘められた日本と百済との「軍事、政治に関する驚くべき秘話」だった。

李氏が、日本の「万葉集」と関わりを持ったのは、国会議員だった当時、日本の高校の歴史教科書に韓国関係記述が歪曲されているという問題が提起されているということから、日韓両国国会議員による特別委員会を設け、事実調査を始めたのがきっかけだったという。

つまり、歴史書が歪曲されているかどうかに探るには、古代史にまで遡って検証する必要があり、そのためには両国歴史書に目を通すことだった。

その時、日本の「万葉集」に魅せられて仕舞ったというのだった。その瞬間から「万葉仮名」の研究に励み出されたそうだ。

「万葉仮名」で書かれた「難訓歌」や「未詳歌」、つまり日本語では判読出来ない歌のほとんどを、何と韓国語で詠んでみると、「未詳歌」ではなく、総て読み明かせること分かったというのだ。これは大発見に違いなかった。

帰国した李氏から、筆者に李氏著書「もう一つの万葉集・文藝春秋刊」が送られてきた。読んでいくうち「日本語訳では見えない様々な謎」が書き込まれていた。その中に、特に注目すべき下記の記述があった。

<万葉集20巻、4516首の内に、日本語では判読できない、正式に「未詳歌」は「3首」があり、このうちの1首に恐るべきメッセージが織り込められている。

斉明天皇(655年即位)の心の中を、額田王(ぬかだのおおきみ)が代わって歌にしたのが、それである。

◆原文: 金野乃 美草苅葺 屋杼礼里之 兎道乃宮子能 借五百礒所念 <巻1の7・未詳歌>

・日本語で詠むと、(秋の野の み草刈り葺き 宿れりし 宇治のみやこの 刈廬(かりいほ)し思ほゆ)

「日本語解釈」では、下記のようになっている。
(秋の野の 萱(かや)を刈って屋根を葺き 旅宿りした 宇治のみやこの 仮の庵が思われる)。

この解釈だと、額田王が何を言いたいのか、さっぱり意味が伝わってこない。だからこの歌が、解釈不能または解意不明であることから、公式に「未詳歌」とされたのだろう。

そこでこの詳らかでないこの歌の原文を、韓国語で読んでみた・・・。すると、
(徐伐『そぼる』は 鉄磨ぐ 締め苦しむること勿れ 上の都は 刀来るぞよ 陣地固めよ)。

・韓国語訳―(新羅は刀を磨いで戦いに備えている。締め苦しめないといいのに・・・。吾がお上の、百済の都は、敵が襲ってくるから、陣地をお固めなされ)>。

李氏の韓国語詠みによる解釈によると、これは明らかに斉明天皇が「百済」に送った「軍事警告メッセージ」だということが、はっきりと分かる。

となれば斉明天皇が百済に、これほどまでの「国家機密情報」を送らなければならなかった理由があったのか、その疑問にブチ当たる。

<皇極天皇(斉明天皇と同じ・斉明天皇は二度即位)から斉明天皇の時代は、朝鮮半島では、新羅、百済、高句麗の3ヵ国の間が緊張状態にあった。

この歌(皇極時代の時の648年に入手していた機密情報)は、斉明天皇に即位してから、額田王に作らせた歌だ。百済が、新羅・唐連合軍に滅亡させられた661年より13年も前のメッセージだから、このメッセージ自体には「歴史的真実性」がある。

実は斉明天皇は、百済の滅亡と遺民の抗戦を知ると、百済を援けるため、難波(大阪)で武器と船舶を作らせ、自らその船に乗り込んで瀬戸内海を西に渡り、百済とは目と鼻の先の筑紫(福岡)の朝倉宮で新羅・唐との戦争に備えた。

だが斉明天皇は、遠征軍が百済に出陣する直前、その意志に貫けず、出陣先の筑紫(福岡)で亡くなった。

斉明天皇の異常なまでの「百済贔屓」について日韓学者間では、斉明天皇は実は、百済第三十代武王の娘の「宝」で、百済最後の王、義慈王の妹だった説がある>。

恐らく斉明天皇自身もさることながら、親族関係も「百済」と強力な血脈が在あったのではないだろうか。額田王の「万葉集」(未詳歌)歌に秘められた「軍事警告メッセージ」も、その視点で詠めば「未詳歌」ではなくなってくるような気がする。

ところが、「万葉集」を古代の珠玉の日本文学と仰ぐ人たちにとっては、この韓国語読みは認め難く、あくまで額田王作の「未詳歌」としてしか、今でも取り扱わない。

とは云え、このあと白村江の戦いの敗戦(663年)まで、百済国の救援にこだわり続けてきた日本の歴史を見れば、日本と百済との関係は極めて緊密であったことは明らかだ。

だとすれば、万葉集愛好家も「万葉集の未詳歌」に、韓国語で詠み明かされる新たな視点を投げかければ、「万葉集」珠玉を更に広げることになるのではないだろうか。詠みを広げてみては如何。

今、「韓ドラ」放映が人気を集めている。「万葉集の未詳歌」」に対する視点と解釈を変えて観れば、当時の歴史の激烈さが浮上して興味が増してくるのは間違いない(了)    (修正加筆再掲)

参考―・李寧煕氏著書「もう一つの万葉集・文藝春秋刊」
   ・小林恵子著「白村江の戦いと壬申の乱・現代思潮社」
   ・ウィキぺディア

2018年06月29日

◆マラゥイ再建の都市計画に住民が反対

宮崎 正弘


平成30年(2018年)6月28日(木曜日)通巻第5740号 

 マラゥイ再建の都市計画に住民が反対
  なぜ市の中央に中国資本の商業センターが?

 IS過激派が入り込んで暴力テロを繰り返したため、フィリピンは国軍
を投入して軍事的に武装集団マウィ集団を制圧した。

犠牲者はおよそ千名。避難民は40万、いまも17万人がテント暮らしの避難
生活を強いられている。

都市の再建と言っても、住宅を破壊された住民の生活復帰が優先されるべ
きだが、マラウィ市当局の青写真は、破壊された地区を整地して、中国資
本の建てる商業センター、複合ビル。治安維持のための軍事基地が中央部
をしめており、学校の建設は重視されておらず、あまりのことに住民は反
対に立ち上がった。

マラウィはミンダナオ島の西部に位置するイスラム教徒の街で、人口は40
万、マニラはダバオから空路も開かれている。

中国は資本投下を早々と申し出ており、武装集団への軍事作戦のおりには
武器も供与するほどにフィリピン政府に協力的だった。

このためドゥテルテ大統領はスカボロー礁の領海帰属問題、漁業問題を表
立って中国政府に抗議せず、せっかくの国際裁判所の判決(中国の言い分
には何らの根拠はない)がでているにも関わらず、棚上げしてしまった。

マニラを中心に学生等がドゥテルテ大統領を批判する集会やデモを行って
いるが、肝腎のマニラ市民は関心が薄く、もっとも強い関心を引いている
のは香港とシンガポールのメディアだけという情報の閉鎖状況がある。
       
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1752回】       
――「支那人は巨人の巨腕に抱き込まるゝを厭はずして・・・」――中野(8)
   中野正剛『我が觀たる滿鮮』(政?社 大正4年)

                △
「單に目前の利?のみに支配せらるる者に非」ざる国家と、「元來利?を
目的として活動する」会社とを同列に論ずるわけにはいかない。そこで中
野は「『私人の植民的企業は、唯新開地最初の發展時期に於てのみ許し得
べき者なり』とのルロア、ボリューの説」を援用して、満鉄をして「其豐
富な資力を以て、滿蒙開拓の先驅となり、諸種の利源を調査」せしめ事業
を拡大させればいい。

だが「其附屬地を永久に支配するが如きは、國家の發展の爲め、否滿鐵の
爲にも」させるべきではない。

軍人に代わって文官の都督を置き「滿鐵と都督府を統一」させたうえ
で、領事もまた都督の下に配す。そうすることで「滿洲なる特殊の地に在
る領事をして、普通の領事と、異なる行動を取らしむる」ことが可能にな
る。つまり満州という特殊な地で領事に国家のために存分な働きをさせる
ためには、領事業務を外務省から切り離さなければならない。

実際に現地で領事に接すれば判ることだが彼らは無能であるばかりか、
「滿洲に於ける領事の地位が、一種外務省内不遇者の休息所たる觀あり、
各領事が無事にして期日をだに了せば、更に榮轉の曙光を認め得べしなど
云ふ態度にて、萬事事勿かれ主義にて萎縮する」ばかりである。

これでは「我國の滿蒙に於ける對支外交は、決して面目を改むる」ことな
どできはしないというのが、中野の考えだ。


また「今日の如く陸軍部内の老朽者を都督に任じ」、「之に三頭政治を
統一せしむるが如き權能を授」けることは極めて危険である。「唯だ有爲
の士に權力を授けよ、重みは自から附くべきなり」と結論づけるが、「本
國に於ける政界の不安定」が「植民地に於ける事務の不統一を甚だし」く
させることを考えれば、やはり満蒙の開拓・開発の要諦は一にも二にも本
国政界の安定に掛かっていることに帰結する。

 つまり「滿洲に三頭政治ありて、治績の擧らざるも、本國政界の不眞
面目なるに因ること大半に居る」。「本國政界の不眞面目なる」が外交の
手足を縛り国益を毀損させるのは、すでにこの時代に始まっていたという
ことか。
それにしても満州における領事が無能だったり、「一種外務省内不遇者の
休息所」であったり、「無事にして期日をだに了せば、更に榮轉の曙光を
認め得べしなど云ふ態度にて、萬事事勿かれ主義」であったり・・・ダメ
さ加減が外務省の伝統というのなら、もはや処置ナシ。

 やがて中野は奉天を経て長春へ。「日露支三國箇國の勢力鎬を削りて
相爭ふ所なれば、悠長なる支那下層民までも其刺戟を受け」て「何となく
活氣あり、何となく忙しげなり」。

 早速、市街に公升号の屋号を持つ商店を訪ねる。
店構えはチッポケで「當地隨一の焼酎釀造」とは思えない。だが「其中を
一觀するに及びて、實に豪家なる」を知るのであった。正業は焼酎醸造だ
が、「磨房を副業とするのみならず、錢舗(兩替屋)、當舗(質屋)、米
屋、雜貨屋、舶來品卸小賣屋、油屋等總ての商賣を同一邸に於て營む」そ
うだから、現在の企業集団といったところか。
ビジネスのモットーは「正直と勤儉」だそうだ。

 日本が内外に誇る「三菱三井を物の數とせざる大富豪」が長春のよう
な田舎町にあることは、決して奇異なことではない。
ただ「純然たる舊式の支那風にて、これ程の大規模をなすは甚だ奇觀な
り」。ここで中野は富豪というものの生態を比較してみせる。

 「日本人ならば中庭を淨めて樹木を植うるべき筈なれど、勤儉と稱す
る御家法に副ふべく豚を養ひて糞泥を迸しらせ、牛馬を放養して豚と共に
相追逐せしむ。凡そ一本の草木、一疋の獸類にても、何等か利益の目的」
がなかったら、植えもしないし育てもしない。
これこそが「支那人性の特徴にして甚だ無風流」ではあるが、「政治的に
は滅亡せんとしながら、經濟的に活くる所以も此に在るべし」。「支那人
性の特徴」は永遠に不滅なのか。
        

◆極東情勢大転換、日本の正念場だ

櫻井よしこ


全世界が注目した6月12日の米朝首脳会談の共同声明を読んで、つい、
「耐震偽装」という言葉を思い出した。スカスカで強度が足りない。「北
朝鮮の完全非核化」を達成させるといっても、そこに至る具体的取り決め
が盛り込まれていない、これで大丈夫かと、疑問を抱く。 

共同声明には、「完全で検証可能、不可逆的な核の廃棄」(CVID)と
いう言葉はない。「北朝鮮の非核化」もない。代わりに「朝鮮半島の非核
化」が3度繰り返されている。

朝鮮半島の非核化は、北朝鮮が非核化を達成する前提として、韓国が米国
の核の傘から外れることを想定するものだ。つまり、米韓同盟の解消が前
提で、中国や北朝鮮が長年主張してきたことに他ならない。

韓国は長年、米韓同盟によって守られてきた。歴代政権も同盟を重視して
きた。だが、文在寅大統領の下の、今日の韓国は必ずしもそうではない。
韓国は驚く程大きな政治的変化を遂げてしまったのである。

米朝首脳会談という史上初の派手な出来事の陰に隠れて、韓国では6月13
日に統一地方選挙が行われた。米朝会談の翌日に行われたこの選挙につい
て、なぜか日本では殆ど報道されていないが、文大統領の与党で左翼政党
の「共に民主党」が圧勝した。

文氏は昨年、経験も不十分な左翼の判事をいきなり大法院(最高裁)長官
に抜擢した。新長官は前長官の「非合法な行為」をあげつらい、前長官を
刑事告訴しようとして、他の判事と対立中である。

統一日報論説主幹の洪熒(ホンヒョン)氏は、「司法の左傾化が決定的に
なるかもしれず、熾烈な戦いが進行中です」と語る。

韓国では左派勢力が、文大統領と共に行政府を握った。マスコミ界、教育
界も親北朝鮮の左派勢力が席巻している。いま、議会(立法府)が左翼勢
力に席巻され、司法も危ういのだ。結果として韓国は本当に別の国のよう
になりつつある。このことを、日本人はもっとはっきり認識しておくのが
よい。

「戦争ゲーム」

そもそも、6月13日の選挙前日に米朝首脳会談が設定されたのはなぜか。
韓国では文氏と朝鮮労働党委員長の金正恩氏が共謀したという見方が濃厚
だ。事実、選挙前日に行われた米朝首脳会談の効果は絶大だった。

米朝会談への流れを作ったのは文氏だと喧伝され、支持率は70%を超え、
決定的な追い風となった。こうして文氏の左翼政党が圧勝し、正恩氏に批
判的な保守勢力は潰滅的敗北を喫して力を失った。韓国の保守論壇の中心
人物ともいえる趙甲濟(チョガプジェ)氏は「韓国は国家自殺の道を進ん
でいる」と警告した。

権力基盤を固めた文氏は、かねてより掲げていた南北朝鮮の連邦政府樹立
をはじめとする対北宥和策を加速させるだろう。米韓同盟の後退もしくは
破棄は、中朝両国のみならず、文氏をはじめとする韓国左派勢力が長年渇
望してきたことだ。無論、ロシアも大歓迎であろう。

こうした状況を知ってか知らずか、米朝首脳会談直後の記者会見でトラン
プ大統領は、米韓合同軍事演習を「戦争ゲーム」と呼んで、中止を示唆し
たのである。中止の理由は、「恐ろしく金がかかる」「(軍事演習は)挑
発的だ」からだそうだ。グアムからB─1B爆撃機を北朝鮮上空付近まで飛
行させた件についても、トランプ氏は「6時間半の飛行だ。非常に金がか
かる」と批判した。

安全保障戦略や軍事行動のひとつひとつを「金勘定」を基準に評価するの
では、北朝鮮の背後に構える中国に最初から白旗を掲げるようなものだ。
米韓合同軍事演習の中止について、日本政府中枢の安全保障問題の専門家
はこう述べた。

「米国でも専門家は皆、馬鹿げた考えだと言っています」

だが、米大統領の言葉は非常に重い。合同軍事演習は、「北朝鮮が真摯に
非核化に向けての話し合いを続けている限り」との条件つきながら中止す
ることになってしまった。

シンガポールでの6月12日の記者会見で、トランプ氏はさらに在韓米軍撤
退の可能性にまで触れた。米朝首脳会談とは別に、在韓米軍3万2000人を
家に戻すことは大統領選挙のときの自分の公約だと強調したのである。

トランプ氏の国家安全保障問題担当大統領補佐官、ボルトン氏は別の意味
で在韓米軍の撤退を前向きにとらえている。米軍を日本や台湾に移すこと
で、米兵が朝鮮半島で人質にとられている現状を変えられるというのが理
由のひとつだと、氏は説明している。

また、米国内には、朝鮮半島よりも台湾にコミットすべきだとの見方が生
まれている。台湾を中国に奪われれば南シナ海はほぼ完全に中国の海に
なってしまう。戦略的に台湾の重要性は韓国のそれを上回るという分析
だ。その考えに従えば、釜山に戦略的拠点さえ確保できれば、米軍は朝鮮
半島から引き揚げてもよいことになる。

国民を守る

無論、米国内にも反対論は根強い。それでもトランプ氏が決意すれば、日
米中露南北朝鮮の6か国の中で、明確に米軍引き揚げに反対するのは、日
本だけになりそうな状況だ。

朝鮮半島からの米軍の引き揚げは、間違いなく極東情勢を一変させずには
おかない。その場合、日本の姿はどうなるか。米軍の核の傘から韓国が脱
け出し、残るのはわが国だけになる。このような国の在り方でよいのか
と、私たちは問うべきだ。

安倍首相は、いまやトランプ氏以下米国政府が掲げるインド・太平洋戦略
を提起した首脳である。トランプ氏が突然拒否した環太平洋パートナー
シップ協定(TPP)を米国抜きで取りまとめ、欧州連合(EU)との
EPAもまとめ上げた。国連安全保障理事会で北朝鮮に対する制裁決議を
採択に導いたのも、安倍首相だ。

日本が掲げる価値観は、国際社会に遍(あまね)く通用する普遍的価値観
であることを確信して、世界の秩序構築に貢献してきた。日本の進むべき
道筋をきちんと押さえた外交・安保戦略を提示してきた。

だが、それでも、拉致問題は解決されていない。日本国は40年以上も国民
を救出し得ていないのである。どれほど立派な提言ができても、国民を守
るという国家の基本的責務を果たし得ないのでは、日本は国家として立つ
瀬がない。

トランプ大統領は拉致問題交渉のとば口まで、道をつけてくれた。今後の
ことは、韓国からの米軍撤退も含めて何があっても不思議ではない。米朝
交渉で米国が劣勢に立つこともあり得る。極東情勢は大転換してしまった
のだ。そのことを覚悟して、日本が力を発揮して拉致被害者を取り戻すに
は、迂遠かもしれないが憲法改正を含めて力の外交もできる国にならなけ
ればならない。
『週刊新潮』 2018年6月28日号 日本ルネッサンス 第808回

◆基礎疾患に注目しよう  

石岡 荘十

「基礎疾患」は医学用語で「病気の大元の原因となる疾患」と定義される。

例えば、よく言われるのが心筋梗塞や脳梗塞の基礎疾患として挙げられる「死の四重奏」。

内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)、高血圧、高脂血症、糖尿病の4つが揃っていることを言い、死亡率は、そうでない人に比べて30倍以上も高くなるという調査結果がある。これにさらに喫煙習慣を加えた五つ揃い文で「死の五重奏」という。

リンゴ型肥満というのは中高年男性の典型的な体型で、写真などで見る金正日氏がその典型的な体型である。女性の場合は、体脂肪が引力に逆らえず臀部に下がってくるので「(西洋)ナシ型肥満」ということになる。


内臓脂肪型肥満の人は動脈硬化になりすく、心臓病や脳卒中へと進んでいくリスクが高まるからだ。

メルマガ「頂門の一針」主宰の渡部氏が治療の経緯を述べておられる。一応、犯人は脳血栓の予防薬プレタールの副作用ということになったようだ。渡部氏は数十年前に禁煙を実行しておられるし、お見掛けしたところ、内臓脂肪もそれほど大量に溜め込んでいる様子はない。しかし糖尿がある。

高血圧、高脂血については伺ったことはないが、もし該当するような疾患の症状があるとすれば、末永く健筆を振るわれるためにも基礎疾患を撃退するよう心がけて頂きたい。

一口に「撃退」といっても、そのほとんどが、長年のいわゆる生活習慣病の結果なのでそう簡単にはいかない。例えば禁煙。簡単に決別できる人もいるが、懲りるような事態、例えば片肺切除に追い込まれてやっと、止めることが出来たという友人もいる。

心臓手術は不整脈の基礎疾患だ。

筆者は、13年前、心臓の大動脈弁が機能しなくなり人工の機械弁に置換する手術を受けた。10歳の頃から大動脈弁がうまく閉じない障害がありながら、手術までの50余年間放置しておいた結果、心臓の筋肉が正常な人の2倍近い厚さ(1.7ミリ)に肥厚し、弾力性を失いかかっていた。

手術後、不整脈の一つである心房細動に悩まされたのは、心臓手術によって傷つけられ弾力性を失った心筋が基礎疾患となって、時々、心臓の細胞があちこちで異常な動きを見せるためだと診断された。そこで、術後8年目(‘07年)、心房細動の根治治療に踏み切った。

カテーテル(ビニールの細い管)を腿の付け根から差し入れて、心臓まで押し進め、異常行動を起こす細胞を捜索・特定し、高周波で焼き切る。

カテーテル・アブレーション(電気焼妁)といわれる最先端の不整脈治療法だ。その上、術後、何種類かの薬の服用を強いられ、辛うじて心房細動の再発を阻止している。

心臓手術を経験すると、心房細動を起こしやすくなる。橋本龍太郎元首相は、心臓の弁(僧帽弁)がうまく閉じなくなり、私と同じように人工の機械弁に取り替える手術を受けた。

その3年後(‘06)、同じように心房細動を起こし、心臓で出来た血栓(血の塊)が飛んで腸に栄養を送る動脈を詰まらせ、どんな鎮痛剤も効かない激痛を訴えながら死亡した、といわれる。

死因は「腸管虚血を原因とする敗血症ショックによる多臓器不全」だが、この場合の基礎疾患は心臓手術→心房細動である。しかし、いまさら手術経験をなかったことには出来ない。

そこで、薬で心房細動を抑え込むことになるのだが、「すべての薬は毒」である。大学の薬学部で教鞭をとっている友人は、学生にまずこのことを教えるという。

だから種類と量の処方にはくれぐれも慎重でなくてはならないのだが、日本では2万種類の薬が使われている。この中からピタリ鍵穴に合う一本の鍵のような薬を処方するのは、至難の技である。

マスターキーはない。そう考えると、副作用が出ないほうがおかしいともいうことが出来る。私もプレタールを服用しているが、渡部氏のような副作用は今のところない。鍵穴の型が異なるということだろう。

アメリカには「5種類以上の薬を処方する医者にはかかるな」というのが常識だそうだが、日本では65歳以上の高齢者は平均して6種類の薬を服用しているといわれる。

が、薬はあくまでその場しのぎの対症療法に過ぎない。その中で一番多いのは複数種の降圧剤だ。ほとんどの降圧剤には性的機能を不能にする副作用があることはあまり知られていない。「そのお歳でもういいでしょう」と、医者はなめて処方しているのかもしれない。なめるな! 

基礎疾患である生活習慣病の克服こそが根治治療法であり、それができれば “毒”をのまなくてよくなる理屈である。“夜明けのテント”も夢ではなくなるかもしれない。        



2018年06月28日

◆党首討論は存在意義を問われる、抜本改革を

杉浦 正章


枝野は「演説」する場面ではない

与野党党首が党首討論の歴史的使命が終わったと言うのだから、本当に終
わったに違いない。党首討論は英国の議会を参考にして自民党幹事長の小
沢一郎が主導、大局的見地から質疑をしようと2000年に始まったものだ。

しかし、最初から指摘されていたが討論時間が45分間と短く、ほとんどの
党首が自らの主張を繰り返すにとどまり、一問一答型の紳士的な質疑応答
によって、国政に新風を吹き込むという構想からは、ほど遠い形となって
しまった。各党の思惑が空回りするばかりで、存在意義が問われる事態だ。

そもそも党首討論のあり方を否定したのは立憲民主党・枝野幸男が最初
だ。前回5月の討論後、枝野は、首相の答弁が長いことを理由に「今の党
首討論はほとんど歴史的使命を終えた」と語った。

これを2日の討論で取り上げた首相・安倍晋三は「枝野さんの質問という
か演説で感じたが、前回党首討論が終わった後、枝野さんは『党首討論の
歴史的な使命は終わった』と言った。まさに今のやりとりを聞いて、本当
に歴史的な使命が終わってしまったなと思った」と述べた。

枝野は「安倍 政権の問題点を7つ列挙したい」として、短い15分の質問
の7分を使っ て森友・加計学園問題の問題点を延々と並べ、「演説」を
行った。これで は大所高所からの討論ではなく野党の演説会になってし
まうのだ。枝野が 党首討論をマスコミ受けに“活用”しようとしたのは言
うまでもない。

こうした討論のやり方には疑問がある。第一に挙げられるのは討論時間
の短さだ。首相の答弁を含めて45分間では、1日に7時間から8時間も
質疑を行う予算委員会の集中審議と比べても短かすぎる。

各党首の質問も数 問で終わってしまう。加えてイギリスの質疑は紳士的
な傾向が強いが、日 本の場合は政権を陥れるような質問が繰り返され
る。27日も共産党委員 長・志位和夫の暴言が目立った。

志位は「愛媛県と今治市で加計学園への 補助金は50億円から93億円に膨
れあがった。首相の『腹心の友』加計 孝太郎理事長が経営する学園が首
相の名をたびたび使い、巨額の税金をか すめ取っていたのではないか」
と発言した。

「かすめ取る」とは下卑極ま る表現だが、安倍は 「補助金は県と市が主
体的に判断することだ。私は あずかり知らない」と全面否定した。事程
左様に理性に欠ける質問に、応 答をするわけだから、とてもイギリス議
会を手本にした紳士的討論とはほ ど遠くなるのである。

枝野や志位に比べて国民民主党共同代表の大塚耕平 が、外国人労働者問
題を取り上げたのは建設的であった。外国人労働者の 受け入れ拡大は、
国の政策の大転換であり、安倍からも外国人労働者受け 入れに前向きな
答弁を引き出した。

だいたい自民党執行部の感覚も疑う。極東情勢を見れば北朝鮮をめぐっ
てトランプと金正恩の動きが活発化し、日本はまごまごすると潮流に乗り
遅れかねない側面がある。にもかかわらず野党の提案に乗って1年半も論
議して、何の疑惑も政権を直撃していないモリカケ問題を取り上げること
に応じてしまったのである。

ここは、大きく極東の安全保障の構図を変え かねない北朝鮮問題やトラ
ンプ外交への対応など、国家の命運に関わる外 交安保問題を取り上げる
べきであった。

党首討論も確かに現在のやり方では、予算委質疑へのプラスアルファ
的な側面ばかりが目立つ。質疑時間といい、内容といい、真に与野党が対
話を通じて国の政治を切磋琢磨する場に変貌させる必要があることは言う
までもない。たっぷり時間を取って首相が野党に質問しても良いではない
か。抜本的な党首討論改革に与野党とも取り組むべきだ。

◆マティス国防長官、3日間北京を訪問

宮崎 正弘


平成30年(2018年)6月27日(水曜日)通巻第5738号 

 マティス国防長官、3日間の日程で北京を訪問
  米中間の軍事対立、緊張が増大するか、緩和方向か

 6月27日、マティス国防長官は北京空港に降り立った。米国防長官の正
式な中国訪問は4年ぶりである。

 討議される問題は次の5つであろう。

南シナ海:すでに7つの島嶼に軍事基地を建設し、3つには滑走路を造成
した中国はアジア最大の軍事的脅威だが、この海洋ルートを航行する船舶
が当該諸国にもたらす貿易額は3兆4000億ドルにも達する。

米海軍は「航行の自由作戦」を実施して、中国の南シナ海での軍事行動を
牽制してきたが、中国は自国領海であると嘯いたまま不法占拠を続けている。

米国は引き続き、自由航行作戦を堅持する。

台湾問題:台湾海峡を挟んで中国と台湾はにらみ合いを続けているが、と
くに近年、中国海軍は空母を導入して台湾制圧を目的として軍事演習を繰
り返してきた。また台湾併呑を平然と嘯く中国共産党の脅威に台湾は揺れ
ている。

米国は台湾への武器供与を増やした上、海兵隊が私服で台湾に駐留している。
 
ボルトン大統領補佐官は、沖縄の海兵隊を台湾へ移転し、台湾の安全保障
の角度を高めよと主張している。

トランプ政権は「一つの中国政策」を反古とする姿勢に転じ、「台湾旅行
法」を先に成立させた。つまりトランプ大統領の訪台も、蔡英文総統のホ
ワイトハウス訪問も合法とされたのである。

中国は激しく反撥するものの、それ以上の言動はない。

米中軍事交流:今年からリムパックに中国軍を招聘しない方針をきめたト
ランプ政権だが、これまでの「太平洋司令艦隊」を「インド太平洋司令艦
隊」と改称し、その守備範囲をインド洋にも拡げた。また前司令官のハ
リー・ハリスを駐韓大使に任命し、北東アジアの安全保障へのコミット継
続を強く示唆した。

双方の軍事交流は再開されても低レベルのものに後退するだろう。

 北朝鮮問題:6月12日の米朝会談直後に、みたび金正恩は訪中し、習近
平に報告した。中朝関係の「蜜月」を内外に印象づける目的があるが、か
えって中朝関係がぎこちなく、お互いが猜疑心でみていることが読み取れる。

非核化の約束を北が守るか、あるいは中国はそのことに何処まで深く絡ん
で入るのかをマティスは中国共産党高官との対話を通じて体得するだろう。

メディアの米朝会談の評価は低いが、なにがなんでもトランプのやること
をけなすリベラル派のメディアの偏見を割り引けば、それなりの成果をあ
げた。ともかく鎖国してきた北の頑迷な扉をこじ開け、北朝鮮ははじめて
外の世界に触れたのだ。

軍事力検証;当時、ゲーツ国防長官が訪中し、胡錦涛主席と面談した折、
中国は成都においてステルス戦闘機を公開し、むしろ知らなかった胡錦涛
が慌てた。ヘーゲル国防長官が2014年に訪中したときは、中国海軍が空母
「遼寧」に招待した。

米国も米中軍事技術交流が盛んな頃には最新の宇宙基地などを中国軍の高
官等に見せた。このようなお互いの軍事力の検証は、今後も続けられるだ
ろうか?

◆米国の真の相手は、北を支える中国だ

櫻井よしこ


世界の安全保障問題専門家が集うアジア安全保障会議では、今年もまた中
国への物言いが際立った。シンガポールでの3日間の会議で、6月1日、基
調講演に立ったのはインドのナレンドラ・モディ首相である。

モディ氏はインド・太平洋の在り様が世界の運命を定める重要な要素だと
し、「大洋が開かれているとき海の安全が保たれ、国々は結ばれ、法治が
ゆきわたり、地域は安定し、国家は大小を問わず主権国として栄える」
と、謳った。

どこから聞いても、南シナ海のほぼすべてが自国領だと主張し、第1及び
第2列島線で米国の進入を防ぎ、インド・西太平洋に君臨しようとする中
華大帝国思想への批判である。インドは「東に向かえ」政策(Act East
Policy)の下で、日、米、豪を筆頭にASEAN諸国やロシアを含めた大
同団結で、平和で繁栄するインド・太平洋圏を構築すると語った。

翌日は、ジェームズ・マティス米国防長官が演説した。小野寺五典防衛相
のマティス氏の人物評は、「極めて物静か、人の話に耳を傾ける、控えめ
に話す」である。そのとおりに、マティス氏は冷静な口調ながら、冒頭か
ら鮮やかに切り込んだ。

「私にとって2回目の参加です。専門家が集い、自由で開かれた海として
のインド・太平洋の重要性を共通の認識とする最高の機会です」

「昨年は主として耳を傾けました。今日、私はトランプ政権のインド・太
平洋戦略を共有してもらうために来ました」

無駄な修飾語のひとつもなく、事柄の核心だけを淡々と述べる。それは自
ずと中国への批判となった。

「米国は台湾との協調関係を誠実に守ります。台湾関係法に基づいて台湾
の自主防衛に必要で十分な防衛品を供給し、助力、協力します。如何なる
一方的な現状変更にも反対し、(台湾海峡の)両岸の人々の意思が尊重さ
れなければならないと主張します」

習主席が語った言葉

台湾に対する中国の一方的手出しは看過しないと言明した、この突出した
台湾擁護には、実は背景がある。トランプ大統領は昨年12月、6920億ドル
(約79兆円)の軍事予算を定めた国防権限法案に署名し、台湾への手厚い
対策を実現しようとした。

高雄を含む複数の港に米海軍を定期的に寄港させ、台湾海軍も米国の港に
定期的に寄港することを許可し、台湾の自主潜水艦建造、機雷製造など水
中戦力の開発を技術的、経済的に支えようとした。

ところが中国が猛烈な巻き返しに出た。米議会への中国のロビー活動は凄
まじく、法案は事実上骨抜きにされた。だがトランプ氏も国防総省も引っ
込みはしない。トランプ氏はすでに台湾の潜水艦の自主建造に必要な部品
の輸出の商談を許可し、シンガポールではマティス長官が前述の台湾擁護
の演説をしたのである。

マティス氏は「南シナ海における中国の政策は我々の『開かれた海』戦略
に真っ向から対立する。中国の戦略目標を疑わざるを得ない」と語り、
「南シナ海の軍事化で対艦ミサイル、対地・対空ミサイルが配備され、電
波妨害装置が導入され、ウッディー島には爆撃機が離着陸した。恫喝と強
制だ。ホワイトハウスのローズガーデンで2015年に(南シナ海人工島は軍
事使用しないと)習(近平)主席が語った言葉と矛盾する。

こうした理由ゆえに我々は先週、環太平洋合同軍事演習(リムパック)へ
の中国の招待を取りやめた」と、説明したのである。

軍人出身らしい無駄のない極めて短い表現で、事実のみを淡々と披露した
マティス氏に、例の如く中国側は激しく反論した。

今回の会議に中国代表として参加していた人民解放軍軍事科学院副院長の
何雷(ホーレイ)中将は「米軍の航行の自由作戦こそ、南シナ海の軍事化
だ」と反論した。他方、中国外交部は、マティス発言以前に華春瑩(ファ
チュンイン)報道官が米国の南シナ海に関する発言に対して「盗人猛々し
い狡猾さ」だと口汚い非難を展開済みだ。

決して自分の非を認めず必ず他国のせいにするのが中国だが、彼らは昨年
から、大物をアジア安全保障会議に派遣しなくなったと、「国家基本問題
研究所」研究員、太田文雄氏が指摘する。現に今年の代表の階級は中将だ。

「ここ数年、シンガポールに行く度に彼らは国際社会から総スカンを食
らってきました。国際社会の中枢勢力と折り合うのを諦めて、独自の道を
模索し始めたのではないでしょうか。それが香山フォーラムです」

トランプ大統領は大丈夫か

香山フォーラムは06年の創設である。米国、日本、インド、NATO諸国
など、自由と法治を尊ぶ国々の価値観に基づく安全保障論は、どこまで
いっても中国のそれとは折り合わない。そこで、中国が影響力を及ぼし得
る国々を集めて軍事の世界を仕切ろうという意図が見える。

中国はアジア安全保障会議に取って代る、中国主導の安全保障会議を創り
出したいのである。彼らは64か国が集まったと喧伝する。アジアインフラ
投資銀行(AIIB)や一帯一路(OBOR)構想には中国マネーに魅き
つけられて多くの国が参加した。しかし中国の軍事力やその安全保障政策
に魅きつけられる国々は、現時点では多くなく、影響力も小さい。

ただ、中国の意図を過小評価してはならないと思う。彼らはハーグの国際
司法裁判所の中国版の創設も目指している。金融、経済、軍事、司法など
の全ての分野において中国式のルールを打ち立て、それによって世界を支
配しようと考えているのは明らかだ。

まさに価値観の闘いに、中国は本気で挑んでいるのである。そのことに私
たちは気づかなければならない。米国は、少なくとも国防総省や通商代表
部などの行政組織、それに立法府である議会、とりわけ上院は十分に気づ
いているはずだ。

だからこそ、米国と台湾の要人の往来を自由にする台湾旅行法を、上院は
党派を超えて全会一致で支持したのではないか。地政学上、台湾擁護は南
シナ海の安定に直結する。インド・太平洋を開かれた海として維持するに
は台湾を死守しなければならないという認識であろう。

米中の価値観は全く異なる。対立の根は深い。その中で北朝鮮問題に関し
てトランプ大統領の姿勢は大丈夫か。トランプ氏は、中国が北朝鮮を支え
始めてから金正恩朝鮮労働党委員長が変化したと批判した。

中国の支援があるからこそ、北朝鮮は朝鮮半島の非核化とは言っても、
「完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄」(CVID)とは決して言わない。

北朝鮮の路線に乗る限り、トランプ氏の交渉はそれ以前の政権と同じく失
敗に終わるだろう。トランプ氏はその元凶の中国にこそ厳しく対峙しなけ
ればならないのである。

『週刊新潮』 2018年6月14日号 日本ルネッサンス 第806回

◆健康百話・薬の期限?

大阪厚生年金病院 薬剤部 


Q).残った処方薬を使おうと思うのですが、薬の期限について教えてください。

A).一般的に薬の有効期限は、製薬会社で作られてから2〜3年です。もちろん、薬そのものによってそれぞれ違いますし、みなさんの手元に届くまでに、随分と時間の経ている薬もあるかもしれません。

また、保管方法によっても大きく変わってきます。
薬にはそれぞれ適切な保管方法があるのです。例えば、冷蔵庫に保管しておかなければならないお薬を、暖かい部屋の中に長期間置いておいたり、光に不安定な薬を直射日光に当たるところで保管していたりすると、すぐに駄目になってしまいます。

ですから、一言にどれだけもつのかというのは答えられないんです。
そもそも、病院や診療所で処方される薬というものは、受診されたときの症状に合わせて出されるものです。自分では同じ症状だと思っても、実は違っていて、前回処方されたときとは異なるお薬が必要な場合もあるのです。

わかりやすく言うと、「病院で出される薬は、その人のそのときの症状に合わせた、オーダーメイドの薬だ」ということです。

病院で処方された薬をとっておいて、同じ症状の時に飲むというのはあまりいいことではありません。出されたときに正しく飲むようにして下さい。もったいないからと、次回に取っておかずに、必要がなくなれば捨てることをおすすめします