2018年06月27日

◆中国の「ドローン鳩」はスパイ・偵察用

宮崎 正弘


平成30年(2018年)6月26日(火曜日)通巻第5737号  特大号

 まるで本物のハトではないか。中国の「ドローン鳩」はスパイ・偵察用
  ウィグル、内蒙古で国境監視と活動家の補足に活用

ロボットを邪な考え方で開発を進めると、本物そっくりの鳩ができた。こ
の人工鳩はドローン。つまり「スパイ鳩」であり、本物の鳩が間違えて暫
し周囲を群体飛翔することもあるという。

開発したのは「殲21」ステルス戦闘機をつくった軍事技術センターの一
人、孫?鋒(音訳=西北工業大学教授)といわれる。

もともと飛翔物体を鳥に擬してのロボット開発は欧米で進められてきた。
日本はせいぜい愛玩犬ロボットで「お花畑」の発想しか出来ないが、軍事
優先の列強はままごと遊びより、防衛技術に直結させている。

中国の鳩ドローンは新彊ウィグル自治区と内蒙古を主舞台にチベット、青
海省、陝西省など30の軍事基地に既に実戦配備されており、国境警備の
補足と活動家の行動範囲を見張る役目を果たす。ただしまだ開発途上で
バッテリー駆動の上限があり飛行時間は最大30分。時速40キロだ。

ウィグルはロシア、カザフスタン、キルギスと国境を接する宏大な土地ゆ
えに、広範囲をカバーするレーダーだけでは限界があり、隙間を観察する
ためには好都合の武器がドローンを鳥に擬して、カムフラージュすること
だった。

実際に中国軍が活用しはじめた鳩スパイは、GPSで衛星とリンクし、高
画質カメラを内蔵、データと繋がるアンテナが尾翼部分に取り付けられ、
羽根を動かす装置は動作が自然にみられるようなメカニズムが植え込まれ
ている。

だから本物の鳩と見間違えることが多いことが実験で判明した。

この鳩ドローンに次いで、中国軍は曠野、砂漠を観察するために鷲ドロー
ンを開発する手筈という。AI開発が進めば、いずれ自主判断で敵地を飛
ぶ鳥(スパイバード)も登場するだろう。

また軍事分野に限定せず、災害救助、環境保護監視など、民生分野への転
用も可能であり将来の市場規模を15億ドルと想定している。

しかし渡り鳥の典型は290グラムの鳥が11000キロを飛ぶ。アラスカから
ニュージーランドの距離である。人工鳩は200グラムと軽いが、30分の飛
翔が限度、飛翔距離を伸ばす技術は、今後の大きな課題であろう。
 
米陸軍は、はやり鳥に似せたスパイドローンを2013年に実験しているが、
データなど詳細は公表されていない。
       
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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 「ベルリンの壁」を造語したチャーチルは、それで敗北を認めた
  FDRは二人の共産主義スパイに操られ、米国外交を完全に誤った

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渡辺惣樹『第二次世界大戦 アメリカの敗北 』(文春新書)
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FDRをまだ褒めそやすアメリカ人歴史家が多い。しかしフランクリン・
D・ルーズベルト大統領ほど劣悪で莫迦な大統領はいなかった。

FDRは神聖ローマ帝国の版図をごっそりとスターリンに贈呈し、さらに
シナを共産主義者に売り渡した。

ところが戦後のアメリカでは、FDRはJFKを超える偉大な大統領だっ
たとし、真実をいう歴史家やジャーナリストに「歴史修正主義」という
レッテルを貼る。マッカーサーやニクソンらが展開した共産主義のスパイ
摘発も、左翼ジャーナリズムが「赤狩り」などと批判している裡に有耶無
耶になり、ハリウッドは依然として赤の巣窟である。

だが、そのねじ曲げられた嘘も、いよいよ歴史学的に通用しなくなった。
長らく覆い隠されてきた歴史の真実が、遅きに失したとはいえ、つぎつぎ
とあらわれてきた。

真珠湾が日本のだまし討ちではなく、FDRが暗号を解読しながらハワイ
の司令官には知らせず、意図的に日本の奇襲を誘い出して、一気にアメリ
カの世論を対日参戦にもっていった陰謀であったことも、いまでは広く知
られる。

これまで薄々は気づいていたが、証拠がなくてFDR批判に精彩を欠いた
のも、アメリカが機密情報を公開しなかったことが大きい。

フーバー元大統領はFDRに騙されていたことに気がついて、長い年月を
掛けて『裏切られた自由』(邦訳はやはり渡辺惣樹氏、草思社)を世に問
うた。

もう一つ。

FDR政権に潜り込んだ共産主義のスパイが、巧妙に上役に取り入って政
権を操り、外交を操り、いずれもがスターリンに繋がっていたことだっ
た。そして「ヴェノナ文書」の開封によって、すべての謎が白日の下に晒
された。

「歴史修正主義」が正しかったのである。

米国を誤った道に陥らせた世紀のスパイはFDR政権で高官になりあがっ
たホワイトとヒスである。
 
本書は渡辺氏が、出そろった証拠を適宜駆使しつつ、この2人の大物スパ
イの行状に焦点を充てながら近現代史の再叙述を試みる意欲作である。
 まずはホワイトである。

「彼はモーゲンソーの右腕としてたちまち頭角を現した」。

というのも、FDRは無学で歴史に無知であり、そのうえ「勉強嫌いで、
専門のはずの歴史学でも戦史本を読む程度であり、経済学には全くの無知
だった。FDRは『馬の合う』お友達モーゲンソーを財務長官に登用し
た。モーゲンソーも出来の悪い学生であり、経済学の素人だった。それが
ホワイトの出世に有利に働いた」のである(37p)。

フーバー元大統領は戦後のドイツを視察して食料援助をきめた功労者、
ヒューマニストだが、トルーマンはフーバーの報告に基づいてドイツ緊急
援助を決め、怪しげなモーゲンソー計画を取りやめて、『マーシャルプラ
ン』に移行した。

「トルーマンは、ただただドイツを憎む2人の男(モーゲンソー、ホワイ
ト)の復讐心がつくった」戦後復興計画の愚かさを認め、とくにモ−ゲン
ソーを「煉瓦頭の能なし、くそもミソも分からないきちがい野郎」
(57p)と罵っていた。

なぜこれほど彼らはドイツを憎んだか。

ふたりともユダヤ人であり、復讐心に燃えていたからだ。「敵の敵は味
方」とばかりにスターリンに機密を売り渡していた。まわりにもスパイは
ごろごろといた。

結局、病気がちのルーズベルトの信任があつかったので、国務省の頭越し
に、外交は、モーゲンソー財務長官が仕切る場面が多く、「対日最後通牒
であるハル・ノートの原案はハリー・ホワイトが書き、ドイツ農業国化政
策(モーゲンソー・プラン)は、モーゲンソーとホワイトが立案した」
(192p)。

 ヤルタ会談の勝利者はスターリンだが、「FDRが人生最後の場面で、
その夢(国連をつくり代表となること)の実現のためには何もかも犠牲に
しても構わないと覚悟していることを、2人のスパイ(ホワイト、ヒス)
を通じてわかっていた」(147p)。
 

 ▲ホワイト、ヒス、そしてモーゲンソー

もう一人のスパイ、アルジャー・ヒスは苦学してハーバード大学に学んだ
が、同大学教授でFDR政権に影響力を発揮したユダヤ人のフェリック
ス・フランクファーターの薫陶を受けた。

「多くの門下生を」フランクファーター教授はFDR政権中枢に送り込む
役割を果たした。なかにはディーン・アチソンらがいた。

すでにヒスがスパイであることはFDRに伝えられたが、それを伝えた
バールにFDRは、『その辺の湖に飛びこんで頭を冷やせ』と叱責した。

チャーチルもまた敗北者となって英国を没落させた。戦後、訪米した
チャーチルにトルーマン大統領は大統領専用車に招待し、地元の大学で講
演をさせている。

「バルト海のシュテェチン(現ポーランド)からアドリア海のトリエステ
(現イタリア)まで、ヨーロッパ大陸を横切る『鉄のカーデン』が降ろさ
れた。(中略)西側民主主義国家、とりわけイギリスとアメリカは、際限
なく力と思想の拡散を続けるソビエトの動きを抑制しなくてはならない」
とチャーチルは吠えたが、時すでに遅かった。

「英国はナチスドイツとの戦いで国富の4分の1を失った。英国の対外負
債は140億ドルにも上り、ケインズは、『英国の外貨資産は底をつい
た。五年以内に国家破産する』と警告していた(1945年4月)。その結果
がブレトンウッヅ体制であり、世界を支配する通貨はポンドからドルに完
全に取って代わられた。チャーチルの『敵の的は味方』とする単純な思考
がもたらした英国の没落であった」。(321p)。

本書にはもう一つの深読みがある。

アメリカは英国の没落を究極的に意図して対のではないのか、という中西
輝政氏が提議しているFDRのかくされた意図、つまり世界通貨の覇権を
にぎるためには英国を対独戦に挑ませ、その国力を破壊することではな
かったのか、という深読みの発想も下敷きになっている。

   
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1751回】        
――「支那人は巨人の巨腕に抱き込まるゝを厭はずして・・・」――中野(7)
  中野正剛『我が觀たる滿鮮』(政?社 大正4年)

              △

 「關東州と、州外の鐵道附屬地と、附屬地以外の開放地」の3地を満鉄
(政府)、都督府(陸軍)、領事(外務省)の三頭政治で押さえるという
縦割り行政――組織が屋上屋を重ねるように膨らめば、人員もまた肥大化す
る。費用対効果は最悪である上に、往々にして営利事業にまで手を出す始
末――だから、まともな経営が出来ない。「然らば斯くの如く重複せる機關
を統一して、斯の如く過剩なる冗員を淘汰するには、是を如何すべきか」。

そこで中野は、「吾人は復根本に反りて、我政府の根本方針の確定を叫ば
ざるべからざるなり」と。

このように中野の主張を追ってみると、根本方針を定める――とりもなお
さず全体状況を把握し、利害得失・費用対効果を慎重に比較検討しながら
自らの位置を見定め、変化する全体状況のなかで自らに有利な新しい状況
を作り出す――ことが、政府だけではなく、じつは日本人そのものが不得手
ということだろうか。

これをいいかえるなら戦略なきナマクラ戦術であり、兵は強いが指揮官は
ダメという辺りに帰着しそうだ。

中野は現地で「床次鐵道院總裁の巡視に對する、滿洲3機關有力者の態
度」を眼にして、「3機關の統御し易き」ことを悟る。

それというのも床次の持つ日本の最上層における隠然たる影響力を前にし
て、三機関の長と雖も従順忠実な部下の如く振る舞っていたからだ。かく
て「眞に内閣の方針を確立し、之を示して違ふなからしむるの内命あるに
於ては、何ぞ3頭政治の統一難を嘆ぜんや」。つまり「由來權力なる鞭影
をだに示さば、官吏の從順なるは猫の如きなり」と。

やはり「3頭政治なるものは」、「本國政府の源に不統一の存するあり
て、其影の末流に映ずるに外ならざるなり」ということだ。

やや蛇足だとは思うが、「權力なる鞭影をだに示さば、官吏の從順なるは
猫の如きなり」の指摘について心当たりのある思い出を記しておきたい。

ある年の暮れの夜11時近く、東京駅で電車に乗った時のことである。中
年と思しき4,5人の2グループが騒ぎ出した。

双方共にアルコールが回っている風情で、どうやら空席の取り合いが原因
らしい。互いが掴みかからんばかりの勢いで口角泡を飛ばせ、相手の非を
詰っている。ところが互いに相手が霞が関の住人であることに気づいたよ
うだ。

そこで片方の年長と思しきが名刺を差し出すと、片方のリーダーらしきも
名刺を取り出す。喧嘩に名刺とは奇妙な取り合わせだと思うが、「權力な
る鞭影をだに示」すのが当時の霞が関における『喧嘩作法』だったのか。
互いに名刺を見た瞬間、勢いの良かった方が引き下がりしぶしぶ別の車輌
に移っていった。

かくて残った方は「戦果」を誇るかのように椅子に腰を下ろして呵々大
笑・・・やはり官界というところでは、「權力なる鞭影」は無敵らしい。

中野は「3頭政治の統一方法に就て」さらに考えを進める。
 「無能なる都督府と、優柔なる領事とは、之を廢止し」て満鉄に一本化
せよとの考えがある。

だが満鉄の諸事業を仔細に検討するに、じつは「居留民の不平を招くの類
枚擧に遑あらざるなり」。

つまりは「其發展の?末は世人の往々想像するが如く、光輝あり、非難な
きものに非ず」。特許会社たる満鉄は「行政權をすら純潔に行ひ難きを知
るべ」きであり、加えて「我國の如く會社の組織せらる所、必ず暗?方面
の模索せられざる可からざるが如き、社會状態にありては、特許會社に諸
種の權能を持たしむるを不可なる、固より明白なるものあり」である。

満鉄は巨大で事業も多岐に亘っているから「少々の腐敗、少々の失態を重
ぬるも」、簡単には倒産しない。

そこで中野は「獨占的商業會社の政治は、恐らく如何なる國に取るも最惡
の政治也」とのアダムスミスの言を引いて、満鉄に「3頭政治を統一する
政治上の權能を有せしむるが如きは斷じて不可なり」と結論づけた。
では、どうすべきなのか。

◆米朝山場、日本は官民あげて拉致解決を

櫻井よしこ


「金正恩が話のできる男かどうかは、私は会って1分で判断できる」。ト
ランプ米大統領は記者会見でこう語った後、カナダでの先進7か国首脳会
議を早めに切り上げて、シンガポールに向かった。

この記事が皆さんの目にとまる頃、史上初の米朝首脳会談の結果が吉か凶
か、明らかになっているだろう。

世界最強国の大統領と、世界で最も多くの嘘をついてきた国のひとつ、北
朝鮮の独裁者が合意に達するには、北朝鮮が核・ミサイルの廃棄を確約し
なければならない。許されざる人道問題である拉致を、「被害者全員の帰
国」を大前提として解決しなければならない。

北朝鮮に核・ミサイルを放棄させられなければ、ただでさえ、すでに崩壊
しているといわれる国際社会の核拡散防止条約(NPT)体制は、さらに
悪化し、核保有国が次々にふえる世界になってしまうだろう。また、拉致
を解決できなければ、究極のテロの前で、世界は無力化する。

この二つの問題のいずれも、北朝鮮の3代にわたる政権が元凶である。彼
らは自身の栄華と生き残りのためにあらゆる悪に手を染めてきた。常識も
良識も通じないが、生き残りのための状況分析には、鋭い嗅覚を持つ人々だ。

だからこそ、昨年9月23日、ステルス性が高く、60トンもの爆弾を運べる
B─1B爆撃機2機を米軍が北朝鮮の元山上空に飛行させたとき、そして正
恩氏らが、貧弱な防空態勢ゆえに2機の飛来にまったく気付かなかったと
き、彼は本気で米軍の斬首作戦を恐れ始めた。それ以降、人が変わったよ
うに核やミサイルの実験を控えるようになった。

国民の命や生活よりも自身の命を最も心配する正恩氏に対しては、その弱
点をつけばよい。十分な軍事力と強い意思に基づく戦略を保持して、しか
し、友好的な笑みを忘れずに、初回の会談をこなすのが、一番よい。

日本がすべきこと

この点について6月10日、交詢社の第10回オープンフォーラムの基調講演
で河野太郎外務大臣が語った。

「日本には多くの誤解に基づく解説が溢れています。トランプ政権内にポ
ンペオ国務長官とボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の、対
北朝鮮宥和派と強硬派の対立があるなどと言われていますが、それはあり
ません。米国政府内で基本方針は共有されています。最大限の圧力という
言葉をトランプ大統領が使わなくなったので宥和策に傾いているとの指摘
も間違いです。北朝鮮が核を放棄しない限り、現行の制裁は緩めない。た
だ、交渉のテーブルにつこうとしている今だから、『最大限の圧力』と言
わないだけです」

12日からの米朝首脳会談の行方は、会談前日の段階でも予測困難な面はあ
るにせよ、河野氏の見通しは日本にとって心強い。6月7日に安倍晋三首相
と行った共同記者会見でのトランプ氏の言葉にも期待する。

トランプ氏は「拉致問題は、首相にとって重要なことだと理解している。
首相の望みに沿って、絶対に、絶対に北朝鮮との議題にする」と強調した。

客観的に見て、私たちはいま、拉致の解決に最も近づいている。1977年か
ら78年にかけて、久米裕さん、横田めぐみさん、増元るみ子さんらが次々
に拉致された。それから41年、ご両親や兄弟姉妹、多くの日本人がどれ程
心を焦がしても、被害者を取り戻せなかった。だからこそこの機会を逃し
てはならない。

トランプ大統領との共同記者会見で安倍首相は「北朝鮮と直接向き合い、
話し合いたい。あらゆる手段を尽くしていく決意だ」と「決意」という言
葉を5度、口にした(『産経新聞』6月8日)。

北朝鮮との話し合いに備えて日本がすべきことは多い。まず、日本の世論
を背景にして北朝鮮に迫ることだ。核・ミサイル問題が正しい方向で解決
に向かうとき――このこと自体を確認するのにかなり難しい作業が必要で容
易ではないが、それが担保されたとして――国際社会は北朝鮮への制裁緩和
に向かうだろう。

トランプ氏はすでに、北朝鮮が戦略的に完全非核化の道を選べば、繁栄す
る未来が開ける、北朝鮮には支援が与えられるが、その資金は米国ではな
く、韓国や中国、日本が払うだろうと語っている。米国のみならず、中
国、ロシア、韓国も含めた国際社会は日本に支援せよと迫るだろう。その
とき、しかし私たちは拉致被害者全員を帰さない限り、資金は出さない
と、声をひとつにして主張すべきだ。

これまでの日本の世論、朝日新聞をはじめとするメディア、野党や親北朝
鮮の人々の主張を思い出せば、このような場面になると必ず、彼らは「日
本だけが取り残される」と批判し、だから早く援助の輪の中に入れと言う
であろう。いまでも「圧力と言い続ける安倍政権は蚊帳の外」「北朝鮮に
会ってももらえない」という批判がある。

「全員」帰国を

なんという浅慮であろうか。正恩氏を対話の席に導いたのは、斬首作戦も
あり得ると、正恩氏に認識させた米国の圧力戦略である。その必要性を繰
り返し、トランプ氏に説いたのが安倍晋三首相である。蚊帳の外というよ
り、対北朝鮮戦略の重要な部分を担ってきたのが安倍政権だ。

いま、首相は、「日朝平壌宣言に基づき、不幸な過去を清算して国交を
正常化し、経済協力を行う用意がある」と、北朝鮮に向けて発表してい
る。 2002年9月、小泉純一郎首相(当時)が金正日国防委員長と発表した
右の 宣言は、実は「拉致」には直接触れていない。

ただ、第3項に日本国民の生命と安全にかかわる懸案について、北朝鮮側
は、「日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後
再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した」と書いてあ
るだけである。

この部分は拉致被害者を指しているとも解釈できるが、もう拉致はしない
というだけでは不十分で、被害者は全員返してもらわなければならないと
いう世論をこそ盛り上げたい。

だが、「全員」とは何人か。帰国した人々が全員かどうかをどう確認でき
るのかと問う声もある。日本側に「全員」についての明確な情報があるわ
けではないため、このような疑問が生ずるのも自然であろう。

しかし、帰 国者全員から聞き取り調査をして、拉致された被害者の情報
を収集するこ とで、「全員」帰国を北朝鮮が誠実に実施したかどうかは
検証できる。そ のことを確認した後、初めて私たちは国交正常化交渉に
入れる、それまで は入らないという国民の意思が、ここでも大事である。

そのうえで、「国交正常化の後」日本の援助は行われるという平壌宣言第
2項を実施していくという道筋を受け入れたい。

こうした点について、揺るがない国民世論をいまから固めておきたいものだ。
『週刊新潮』 2018年6月21日号 日本ルネッサンス 第807回

◆中性脂肪が気になる人の食事療法

庄司哲雄


<中性脂肪とは>

血液中の中性脂肪(トリグリセリドともいう)には二つの由来があり、食事で摂取した脂肪が小腸から吸収され血液中に現われたものと、肝臓で炭水化物から脂肪に作り変えられて血液中に放出されたものがあります。

いずれも、体の組織でエネルギーとして利用されるのですが、血液中の濃度が極端に(1000mg/dL以上)増えすぎますと、急性膵炎を引き起こすことがありますし、それほどでない場合でも(150mg/dL以上)動脈硬化の原因のひとつになります。

<中性脂肪を下げる食事の第一歩>

食事療法の基本は、摂取エネルギーの適正化です。脂肪の摂りすぎのみならず、炭水化物の過剰も中性脂肪を増やしてしまいますので、全てのトータルを適正にする必要があります。
身体活動度にもよりますが、標準体重1Kgあたり25〜30kcal/日程度が適切です。肥満気味の方は少なめにし、減量を目指します。アルコール多飲や運動不足は中性脂肪の大敵です。

<炭水化物と脂肪のどちらをひかえるか>
各人の食習慣により異なる場合がありえますが、炭水化物1グラムで4kcal、脂肪1グラムで9kcalですから、脂肪摂取を控えることが大変効果的です。

<ジアシルグリセロールとは>

少し難しくなりますが、中性脂肪とはグリセロールという物質に脂肪酸が3つ結合した構造(TAG)をしており、いわゆる「油」です。これに対して、脂肪酸が2つだけ結合した油もあり、これをジアシルグリセロール(DAG)といいます。同じような油であっても、小腸で吸収されてからの代謝が異なるため、中性脂肪の値や体脂肪への影響の程度に差があります。

通常の油TAGは、小腸で膵リパーゼという酸素のはたらきで、脂肪酸が2つはずれ、脂肪酸ひとつだけが結合したモノアシルグリセロール(MAG)に分解されます。それぞれは吸収された後、小腸でまた中性脂肪に再合成され、血液中に放出されます。

一方、DAGは中性脂肪へ再合成されにくいため、食後の中性脂肪の上昇が小さく、また体脂肪の蓄積も少ないといわれています。最近、DAGを利用した機能性食品が開発されています。しかし、DAGの取りすぎもカロリー 過剰につながりますので、通常の油TAGとの置き換え程度にすべきでしょう。

<脂質低下作用のある機能性食品>

動物に含まれるステロールという脂質の代表はコレステロールですが、
植物には植物ステロールという脂質が含まれます。これは小腸でのコレステロール吸収を抑制する働きがあります。

<専門医に相談すべき病気>

中性脂肪の増加する病態には、糖尿病やある種のホルモン異常、稀には先天的な代謝障害もありますので、一度は専門の先生にご相談いただくのも大切だと思います。(再掲)
<大阪市立大学大学院代謝内分泌病態内科学  >

2018年06月26日

◆ベトナムとフィリピンで「反中デモ」が再燃

宮崎 正弘


平成30年(2018年)6月25日(月曜日)通巻第5736号  

 ベトナムとフィリピンで「反中デモ」が再燃
  「中国はでていけ」「スカボロー岩礁から立ち去れ」
 
ドゥテルテ大統領はフィリピン領海のスカボロー岩礁が中国に盗まれ、
ハーグ國際裁判所が「中国の言い分には根拠がない」という判決をだした
にも関わらず、中国に厳重な抗議せず、むしろ中国から援助を獲得すると
いう狡猾な外交を展開した。

2年間のドゥテルテ大統領の対中外交は一定の成果をあげたかに見えた。

漁場を失った漁師らは執拗に政府に抗議し、フィリピン外交の弱腰を批判
してきた。

しかしドゥテルテ大統領は「中国と戦争をしたら勝てるはずがない」「中
国から物資が輸入できなくなり」「出稼ぎ労働者が中国で解雇され」「バ
ナナは陸揚げを拒否されて腐ったではないか」と、むしろスカボロー沖合
の資源開発を共同で行うアイディアを振りかざし、習近平とは何回もの会
談をこなした。

またミンダナオのイスラム都市マラウィの復興には中国資本の参入を歓迎
する。


▲フィリピン政府はパシフィズム

しかし、スカボロー岩礁に中国軍が軍事施設を構築して以後、「近海から
魚がいなくなった」と漁民が訴える。「もぅあそこは漁場ではなくなっ
た。昔のように豊かな資源の漁場に戻して欲しい」。

ところが中国とフィリピンの沿岸警備隊が共同パトロールすることで合意
した沿岸警備活動も、いまでは「フィリピンの警備艇はいない。付近をパ
トロールしているのは全部、中国の艦船だ」と地元漁民はフィリピンのテ
レビのインタビューに答えている。

フィリピンの民衆は立ち上がって「スカボロー岩礁から中国は立ち去れ」
のスローガンを掲げ、マニラ市内て反中デモを展開した。

2009年制定の「フィリピン基本法 第9522号」にはスカボローはフィリピ
ン共和国の領土と明記されている。


一方のベトナム。

一党独裁の全体主義国家でもあるベトナムは、中国との友好関係を謳い、
中国企業の工業団地を提供するとして以来、反中抗議デモが全土で展開さ
れている。

デモ隊は中国企業の工場に繋がる高速道路を塞ぎ、ホーチミンから始まっ
たデモは、ダナン、ハノイへと伝播した。またたくまに数千の労働者らが
抗議の列に加わり、台湾企業まで巻き添えをくらって、生産活動が停止した。


 ▲ベトナムの反中暴動の背後にあるもの

ベトナムでは2014年に大規模な反中暴動が発生し、中国人に死傷者がで
た。ベトナムの怒りはスプラトリー諸島領海に展開される中国の海洋リグ
開発を巡って、中国海軍がベトナムを威嚇し漁船を追い払い、何隻かを沈
没させ、そのうえ近くに島にミサイル基地を建設したからだった。

2018年のデモは、ベトナム共産党が中国企業用に特別団地を3箇所、99年
租借という条件で提供するという議会の動きに反撥しておこった。

これら工業団地創設プロジェクトは、総計68億7000万ドルの投資となり、
またヴィンタン水力発電所の建設も中国がオファーしているが、総工費は
17億6000万ドル。

くわえて貿易関係ではベトナムの出超がつづき、そのうえに中国からの観
光客と、マンション建設などへの投資が顕著なった。表向き、中国の侵略
行為を非難しながらも、投資と貿易は歓迎という二枚舌がベトナム政府の
姿勢だった。

「中国は交易増大、輸出の拠点が欲しい。ベトナムは中国の投資と金が欲
しい」(ロバート・ロス、ボストン大学教授)。

したがって民衆の怒りをもっともしながらも、ベトナム政府は都市部での
抗議行動には弾圧をもってのぞみ、100名の抗議デモ参加者を逮捕した。
ハノイの中国大使館が「在ベトナムの中国人の生命と財産を守るように
k」との要請に応えたからだ。

民衆の反中抗議デモの目的は「ベトナム領土から中国を叩き出せ」「中国
に一寸の土地も渡すな」だが、実際は反中行動というよりも、全体主義独
裁のベトナム共産党批判が、真の目的である。
 
共産党支配層は、そのことを熟知しており、最近はネットの監視を強め
て、反政府言論を厳しく取り締まり、言論空間を圧殺しつつある。
 
ベトナムが最近議会を通過させた「サイバー・セキュリティ法」はフェイ
スブックやグーグルに対して、データの蓄積はベトナム国内で行えとして
いる。

ベトナム議会は「99年租借を認める」法案審議を秋に延ばして抗議デモと
の妥協を図った。
     
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
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あまたいた妖怪変化。孫文に張作霖親子、王兆銘、李哲元、張自忠エトセ
トラ。。
  ソ連に愛想を尽かされ絶望の淵に落ちた毛沢東、起死回生の秘策とは

  ♪
田中秀雄『中国共産党の罠』(徳間書店)
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かの「日中戦争」は中国共産党と背後にあったコミンテルンの謀略によっ
て巧妙に仕組まれた世紀の陰謀、罠だった。結果的に蒋介石は駒として弄
ばれたのではないか。

本書は現代中国史の論客、田中秀雄氏が心血を注いで叙述した裏面史。そ
れこそ満州事変から廬講端事件まで、表向きのプロパガンダを覆し、本当
は何が起きていたかを、様々な第一級史料と照合しながら迫る労作である。

用いられる資料は、今日の現代史家が見落としてきた、あるいは左翼や親
中派の歴史家が「意図的」にスルーしてきた重要な報道、回想録、インタ
ビュー、そして当時の夥しい刊行物である。

しかも田中氏は意外なことにエドガー・スノーの著作を屡々引用する。と
いうのも、嘘だらけのスノーの親共産党プロパガンダ的な報道に、いっぺ
んの真実、僅か一行の記述に、ホンネが秘められているからである。

スノーの墓は北京大学の敷地の中にひっそりとあるが、後年、スノー未亡
人が語ったところに拠れば、「文化大革命の最中に訪中した彼は、毛沢東
の神格化と独裁に幻滅の思いであった」という。

評者(宮崎)も、数年前に石平氏の案内で北京大学構内をゆっくりと歩い
た折に、所謂「北京大学版・三四郎池」の側にひっそりとスノーの墓があ
ることを発見した。石氏の指摘がなければ見落とすところだった。

本書の骨子は「満洲事変から廬溝橋事件」までに絞りこまれ、「満洲が日
本の国防上いかに重要であったか、また満洲建国とその後の日本の行動の
正しさの証拠」を列挙しつつ、「アジアに重点を移したコミンテルンの世
界戦略、これと協働する中国共産党の満洲事変前からの策謀の実態、彼ら
が防共の砦としての満州国を打倒し、中国国民党を放逐し、中国を共産化
するためにいかなる手段をもちいたか」を白日の下に晒すことにある。

歴史的経緯は日清・日露の闘いにあるが、義和団の大混乱。そのどさくら
に紛れて、ソ連は満洲全域を占領した挙げ句、「1896年には、ロシアと清
国の間に対日軍事同盟密約が結ばれていた。その存在の噂はポーツマス会
議以前からあったのだが、日本は確信ができないまま」、ポーツマス会議
が進んでいたのだ(16p)。

しかしシナの「実情を理解しないアメリカは、中国北京政府にとっては絶
好の標的であった。外国の利権回収という目的達成のためにアメリカを利
用するのだ」(21p)

アメリカを舞台にシナのスパイや宣伝隊が躍動し、ジャーナリストを買収
し、世論誘導工作を行った結果、アメリカの世論は日本に冷たく、シナに
同情的となった。

誤解を解くために新渡戸稲造は渡米し、各地で演説したが、短期的地域的
理解しか得られなかった。とにかく日本は宣伝が下手なのである。
 そのうえ日本には東洋の理想という大義があり、中国とは友好関係が構
築できるという理想論が先走り、善意の行為を続けた。

その全てが中国人によって踏みにじられた。

「支那は長年の日貨排斥、即ち廉価なる日貨を排斥し、高価なる西洋品を
購入し来たれることにより、出超国が入庁国となり」(135p)、財宝、
資金は海外へ流出した。中国経済は疲弊し、経済的破綻の惨状を描いていた。

当時、酒井隆(支那駐屯軍参謀長)が『満洲時報』(昭和9年11月23日付
け)に中国の裏切りの風土を語っている。

酒井はこうも指摘した。

「日本人はよく日支親善というけれども、この一語を聞いて、支那人の頭
に、ピンと来るものは、利益交換主義である(中略)。一対に物事を僻
(ひが)んで考えることと、機会ある事に自己をなるべく高値で売りつけ
ようとする」(168p)

彼らが命の恩人を避けるのは、そのときに代償を求められるからである。
頭の中は貸借対照表で成り立ち、一流の駆け引きをもっとも得意芸とする
のである。

また支那人は約束事を守らない。

協定、条約を厳格に遵守する日本と、この点が根底的にことなり、いつも
臍をかむのが善意に溢れる日本人である。

一例を挙げる。

1936年8月、米国ヨセミテで開催された太平洋会議で身勝手な演説をした
胡摘に対して日本代表の吉沢謙吉が次の反論をした。

「ワシントン会議で日本は九カ国条約を結び、山東省を中国に還付し、関
税自主権を認めた。関税自主権で率先したのは日本である。しかるに中国
はこの恩を仇で返す。関税をどんどん上げて日本商品の流通を阻止した。
あまつさえ日本との条約上の義務を守らず、鉄道平行線をつくるなどして
日本の権利を取り上げようとした。中国に対する我々の融和的態度が官署
の態度で迎えられず、中国側の継続的な暴力政策にあったことが満州事変
の原因である」(213p)


西安事件で国民党優位の軍事状況を戻した共産党は、それでもモスクワか
ら信頼を得ていたわけではなく、周恩来は廬山におもむき、蒋介石と会談
しているが物別れに終わっている。

第2次国共合作が陰謀的である事態に蒋介石は腹を立てていた。

そのうえ、日独伊防共協定が締結されると、

「ソ連の国民党に対する比重が共産党より高くなっている。ボゴモロフ・
ソ連大使の帰任がまぢかで、彼へのモスクワからの指示には、中国共産党
との緊密な連絡を絶ち、これを指導することで中国の統一を妨害するのは
止め、国民党の国内統一に協力することがあるという(中略)。

そうした自党軽視の環境変化を毛沢東は敏感に感じ取っていただろう。南
京政府の貨制改革が成功すれば、わが共産党には脅威である。乾坤一擲の
勝負をかけるときが来てはいないか。国民党と日本軍を戦わせるのだ。
『抗日戦争をすることにより、革命勢力は政権に就くことが出来る』と周
恩来は言う。しかも『抗日戦争の初日が蒋介石失脚の始まりを意味する』
のだ。。。」(268p)。

かくて廬溝橋の発砲は中国共産党によってなされた。

「国民党は1928年以来の無責任な排日政策、反日教育に自縄自縛され、そ
れを共産党に逆用されることにより、対日開戦をせざるを得ない羽根に陥
らされたのである。自業自得というべきであろう」(288p)。

こうした歴史的事実は、今日の日中関係、ときにふんぞり返り、ときに猫
なで声の豹変男たち、江沢民、胡錦涛、習近平の立ち居振る舞いや、対米
外交における反日宣伝の謀略、約束を守らず、自己を高く売り抜ける処世
など。満洲事変から廬溝橋までの近代史を彷彿とさせてくれるのではない
のか。

◆日本は官民あげて拉致解決を

櫻井よしこ


「米朝山場、日本は官民あげて拉致解決を」

「金正恩が話のできる男かどうかは、私は会って1分で判断できる」。ト
ランプ米大統領は記者会見でこう語った後、カナダでの先進7か国首脳会
議を早めに切り上げて、シンガポールに向かった。

この記事が皆さんの目にとまる頃、史上初の米朝首脳会談の結果が吉か凶
か、明らかになっているだろう。

世界最強国の大統領と、世界で最も多くの嘘をついてきた国のひとつ、北
朝鮮の独裁者が合意に達するには、北朝鮮が核・ミサイルの廃棄を確約し
なければならない。許されざる人道問題である拉致を、「被害者全員の帰
国」を大前提として解決しなければならない。

北朝鮮に核・ミサイルを放棄させられなければ、ただでさえ、すでに崩壊
しているといわれる国際社会の核拡散防止条約(NPT)体制は、さらに
悪化し、核保有国が次々にふえる世界になってしまうだろう。また、拉致
を解決できなければ、究極のテロの前で、世界は無力化する。

この二つの問題のいずれも、北朝鮮の3代にわたる政権が元凶である。彼
らは自身の栄華と生き残りのためにあらゆる悪に手を染めてきた。常識も
良識も通じないが、生き残りのための状況分析には、鋭い嗅覚を持つ人々だ。

だからこそ、昨年9月23日、ステルス性が高く、60トンもの爆弾を運べる
B─1B爆撃機2機を米軍が北朝鮮の元山上空に飛行させたとき、そして正
恩氏らが、貧弱な防空態勢ゆえに2機の飛来にまったく気付かなかったと
き、彼は本気で米軍の斬首作戦を恐れ始めた。それ以降、人が変わったよ
うに核やミサイルの実験を控えるようになった。

国民の命や生活よりも自身の命を最も心配する正恩氏に対しては、その弱
点をつけばよい。十分な軍事力と強い意思に基づく戦略を保持して、しか
し、友好的な笑みを忘れずに、初回の会談をこなすのが、一番よい。

日本がすべきこと

この点について6月10日、交詢社の第10回オープンフォーラムの基調講演
で河野太郎外務大臣が語った。

「日本には多くの誤解に基づく解説が溢れています。トランプ政権内にポ
ンペオ国務長官とボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の、対
北朝鮮宥和派と強硬派の対立があるなどと言われていますが、それはあり
ません。米国政府内で基本方針は共有されています。最大限の圧力という
言葉をトランプ大統領が使わなくなったので宥和策に傾いているとの指摘
も間違いです。北朝鮮が核を放棄しない限り、現行の制裁は緩めない。た
だ、交渉のテーブルにつこうとしている今だから、『最大限の圧力』と言
わないだけです」

12日からの米朝首脳会談の行方は、会談前日の段階でも予測困難な面はあ
るにせよ、河野氏の見通しは日本にとって心強い。6月7日に安倍晋三首相
と行った共同記者会見でのトランプ氏の言葉にも期待する。

トランプ氏は「拉致問題は、首相にとって重要なことだと理解している。
首相の望みに沿って、絶対に、絶対に北朝鮮との議題にする」と強調した。

客観的に見て、私たちはいま、拉致の解決に最も近づいている。1977年か
ら78年にかけて、久米裕さん、横田めぐみさん、増元るみ子さんらが次々
に拉致された。それから41年、ご両親や兄弟姉妹、多くの日本人がどれ程
心を焦がしても、被害者を取り戻せなかった。だからこそこの機会を逃し
てはならない。

トランプ大統領との共同記者会見で安倍首相は「北朝鮮と直接向き合い、
話し合いたい。あらゆる手段を尽くしていく決意だ」と「決意」という言
葉を5度、口にした(『産経新聞』6月8日)。

北朝鮮との話し合いに備えて日本がすべきことは多い。まず、日本の世論
を背景にして北朝鮮に迫ることだ。核・ミサイル問題が正しい方向で解決
に向かうとき――このこと自体を確認するのにかなり難しい作業が必要で容
易ではないが、それが担保されたとして――国際社会は北朝鮮への制裁緩和
に向かうだろう。

トランプ氏はすでに、北朝鮮が戦略的に完全非核化の道を選べば、繁栄す
る未来が開ける、北朝鮮には支援が与えられるが、その資金は米国ではな
く、韓国や中国、日本が払うだろうと語っている。米国のみならず、中
国、ロシア、韓国も含めた国際社会は日本に支援せよと迫るだろう。その
とき、しかし私たちは拉致被害者全員を帰さない限り、資金は出さない
と、声をひとつにして主張すべきだ。

これまでの日本の世論、朝日新聞をはじめとするメディア、野党や親北朝
鮮の人々の主張を思い出せば、このような場面になると必ず、彼らは「日
本だけが取り残される」と批判し、だから早く援助の輪の中に入れと言う
であろう。いまでも「圧力と言い続ける安倍政権は蚊帳の外」「北朝鮮に
会ってももらえない」という批判がある。

「全員」帰国を

なんという浅慮であろうか。正恩氏を対話の席に導いたのは、斬首作戦も
あり得ると、正恩氏に認識させた米国の圧力戦略である。その必要性を繰
り返し、トランプ氏に説いたのが安倍晋三首相である。蚊帳の外というよ
り、対北朝鮮戦略の重要な部分を担ってきたのが安倍政権だ。

いま、首相は、「日朝平壌宣言に基づき、不幸な過去を清算して国交を正
常化し、経済協力を行う用意がある」と、北朝鮮に向けて発表している。
2002年9月、小泉純一郎首相(当時)が金正日国防委員長と発表した右の
宣言は、実は「拉致」には直接触れていない。

ただ、第3項に日本国民の生命と安全にかかわる懸案について、北朝鮮側
は、「日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後
再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した」と書いてあ
るだけである。

この部分は拉致被害者を指しているとも解釈できるが、もう拉致はしない
というだけでは不十分で、被害者は全員返してもらわなければならないと
いう世論をこそ盛り上げたい。

だが、「全員」とは何人か。帰国した人々が全員かどうかをどう確認でき
るのかと問う声もある。日本側に「全員」についての明確な情報があるわ
けではないため、このような疑問が生ずるのも自然であろう。しかし、帰
国者全員から聞き取り調査をして、拉致された被害者の情報を収集するこ
とで、「全員」帰国を北朝鮮が誠実に実施したかどうかは検証できる。そ
のことを確認した後、初めて私たちは国交正常化交渉に入れる、それまで
は入らないという国民の意思が、ここでも大事である。

そのうえで、「国交正常化の後」日本の援助は行われるという平壌宣言第
2項を実施していくという道筋を受け入れたい。

こうした点について、揺るがない国民世論をいまから固めておきたいものだ。
『週刊新潮』 2018年6月21日号 日本ルネッサンス 第807回

◆生きるよりも「活きる」を選ぶ

渡邊 好造



新聞の有名人の死亡記事をみると、死因とともについ目をひくのはその年齢である。わが身に比べて長生きされたかどうか気になるのは筆者だけだろうか。

最近、死を迎えるのは80%以上が病院だそうである。今では昔のように自宅であらゆる手を尽くした後残念な結果になることはまずないといってよい。それも数年前までは、患者が例え意識を失い眠った状態でも血管から点滴で栄養分を送り、かなりの期間生きながらえることができた。

しかし、これにも限界があり血管が詰まったり、どうしても栄養分が足りなくなりいつまでも生きながらえるという訳にはいかなかった。

そこに今度は「胃ろう(胃瘻)」という新しい治療法が開発された。この治療法は、小説家・渡辺淳一氏の週刊誌連載エッセイでも取上げておられたが、意識のなくなった患者の胃に栄養分タップリの流動食を直接送り込む。したがって、意識はなくとも患者は延々と長生きできることになる。筆者かかりつけの内科医によると、「やってみますか」と勧める病院も増えているという。

点滴だったら精々3〜4年が限界だったのが、それ以上に症状が変らないまま長生きできるらしい。医学上目覚ましい進歩には違いない。患者の家族にとって大喜びのこともあろうが、当然のことだが治療費は計り知れない。

かといって途中で「胃ろう」を打ち切ってくれとは言えない。それを言うと”もう殺してくれ”となり、殺人罪に問われかねない。これではもはや”生き”ているだけで、”活き”ているのでは決してない。筆者は「生きる」よりも「活きる」方を選びたい。

そこでこんな迷惑な結果にならないよう次のような遺言書を残すことにした。もちろん異論があることは覚悟の上だし、本人死後のことだから守られなくともやむを得ない。

1)病気・事故などにより脳死状態、認知症などで通常の判断ができない、その他回復不能の病気にかかった場合、余分な延命処置、治療は一切不要のこと。とくに「胃ろう」だけは絶対ご免である。
2)死体処理は、法律上必要なことのみに限る。
3)寺、僧侶に関わる費用は使わない。葬儀、読経、戒名、祭壇など不要。焼場直行の直葬も可。(戒名がないと「三途の川」を渡れないと真剣にいう人がいた、、)

念のために申し添えるが、金が惜しくて言うのではない。死者も含めて既に死んだも同然の人に金を使うべきではなく、金は”活きている人”にこそ使うべきなのである。(再掲)

2018年06月25日

◆中東の秩序を搦め手で攪乱する中国

宮崎 正弘


平成30年(2018年)6月24日(日曜日)通巻第5735号  

 中東の秩序を搦め手で攪乱する中国
   兵器を武器に密輸にも手を染め、はてしなく拡がる闇

中国はアメリカ製ドローン「プレデター」の模造品を大量に生産している。

これが発覚したのはヨルダンで開催された武器展示会だった。ドローンの
メーカーは「中国航天空気動力技術」や「軽准科学技術」で、しかも大型
のドローンは無人の攻撃機(「彩虹」号とよばれ、西側のコードは
CH―4,CH―5など)である。

商業用の軽ドローンは世界一の生産量であり、すでに日本でも愛好家が中
国製を購入している。中国製はアメリカ製のドローンの4分の1という廉
価。これを大量に紛争地域に輸出しているから手に負えない。中東情勢を
掻き乱していることになる。

中国製のドローンを導入したことで、シリアの戦局がかわり、またヨルダ
ン、アルジェリア、イラク、サウジ、エチオピアも購入したとみられる。
『NEWSWEEK』(日本語版、2018年6月5日剛)に拠れば、ナイ
ジェリア、ザンビア、トルクメニスタン、パキスタン、ミャンマーにも輸
出されたと推定されている。

実際、シリア政府軍は、中国製ドローンと用いてISの拠点を攻撃し、そ
の命中度は100%だったという。ただしプレデターとはことなり宇宙衛
星とはリンクしておらず、有視界である。

しかしアメリカはなぜ、この中国の武器市場壊乱を拱手傍観したのか。
 第一に高度軍事技術を外国に売却するには議会承認が必要であること。
武器輸出は厳格な規制があり、台湾への武器供与でいつも議会が揉めるよ
うに、対日武器輸出にしてもF35で様々な議論があった。したがって米
国製ドローンを輸入したのは英・仏とイタリアだけである。
 
第二にMTCR(ミサイル関連技術規制措置=国際協定)の遵守である。
ところが中国はこのMTCRに加盟していない。やりたい放題になり、軍
事輸出で金を稼ぐ、てっとり早い道である。

中国にはモラルが存在しない。

中国軍の一部の部隊や傍系の武器商社は迂回ルーの密輸にも手を染めてい
る気配がある。

イラン・イラク戦争のときは双方に夥しいスカッド・ミサイルを売ってい
た。シリア政府にドローンなどを供与する一方で、中国はあろうことか、
ISにも機関銃、弾薬、そして指令系統を維持できる特殊携帯電話も売っ
ていた。
 
米国の『スターズ&ストライプ』紙(2014年10月6日)に拠れば、ISは
26ヶ国から多彩な武器を、砂漠に暗躍する武器商人から購入していた
が、このうちのじつに26%が中国製であったことが分かっている。

ISの部隊間の連絡も中国製の特殊携帯電話(PT580H)が使われた。
軍人の通信はデジタル数字など暗号化も可能で、戦場では20キロ範囲の距
離で電波が飛ぶ、会話が敵に防諜されにくい設計であり、中国の「好易通
科技有限公司」製。ブランドはHYTERA」。

なにしろ中国軍の腐敗はシナ人のDNA、歴史的体質である。

蒋介石軍の幹部が毛沢東の八路軍に米国から供与された武器を横流してい
たように最近の中国の国産空母の設計図などを高官が米国に売り渡してい
た。この不祥事はロシアの「スプートニク」や、香港の「アジアタイム
ズ」(6月22日)が報じた。

報道に拠れば国有企業「中郷船舶重工業集団」の孫波社長が中央検査規律
委員会に摘発され、「重大な規律違反」とされた。

中国国産空母は試験航海を適当におえるとただちに大連に運ばれ、改修工
事に入ったのも、いたるところ不具合が見つかったからだ。また孫波社長
は空母の設計図や機密をアメリカに売り渡していた疑惑が持たれていると
いう。

東西冷戦時代、ソ連は九隻の空母を造った。ぜんぶが失敗だった。

最後の一隻はウクライナが所有していたが電気信号系統とカタパルト設備
などを取り外して、鉄の塊をスクラップとして中国に売った。

それを10年掛けて回収したのが中国初の空母「遼寧」だった。孫波は、こ
の秘密情報をアメリカに売ったようである。

     
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1750回】            
――「支那人は巨人の巨腕に抱き込まるゝを厭はずして・・・」――中野(6)
  中野正剛『我が觀たる滿鮮』(政?社 大正4年)

              △

「日本一」であるかどうかは判断の分かれるところだが、考えてみれば
「領事の背後にある外務省」だけが「無定見」だったわけではなく、「滿
鐵の背後にある政府」も「都督府の背後にある陸軍」も共に「無定見」
だったはずだ。

せんじ詰めれば政府それ自体が「日本一の無定見」だったという結論に至
らざるをえない。それは政府を組織する各々の機関の「無定見」に止まる
ものではなく、政府総体、いわば日本が国家として関東州・満州を如何に
対処すべきかの大方針がなかったということを意味することになる。

現在でもメディアでは永田町に対しては「党利党略・派利派略のみ」、
霞が関に対しては「局?あって省益なし、省益あって国益なし」などと批
判し、国民不在を難詰する声が絶えないが、どうやら日本では既に大正の
時代に政府――とどのつまりは国家としての基本的大方針を定めないままに
(ひょっとして基本方針など定める必要なしと考えていたのかも知れな
い)、列強が手練手管を盡して国益を求めて火花を散らした国際政治の舞
台に踊り込んでいったということだろうか。それならば暴虎馮河・・・ま
さに匹夫の勇としかいいようはない。空恐ろしいことだが。

中野は、政府無定見の結果としておこる満洲における三頭政治の弊害を具
体的に説く。

日本は各々に「異なる國際上の性質を有す」る「關東州と、州外の鐵道附
屬地と、附屬地以外の開放地」の3地を持つが、それぞれが「都督府、滿
鐵、領事なる三機關」の下に置かれている。

「關東都督は關東州に於ける行政の主體」だが、「一歩州外に踏出せば、
鐵道沿線の附屬地」では都督府ではなく満鉄の行政権の下に置かれる。だ
が満鉄には「兵權は勿論警察權すらも附與せられざるなり」。「警察權に
關する限りは、總て都督府の支配を受けざる可らざるなり」。

そこで都督府は該当する地域に警務署を置く。ところが「附屬地以外の開
放地」の「一定地域においても日本人の居住は許されている」から、これ
ら日本人を保護するために設けられた領事館には領事警察署が設けられて
いる。

ここで都督府管轄下と「附屬地以外の開放地」における二重の警察権とい
う問題が生ずる。そこで都督府は致し方なく領事警察署に都督府の警察権
を付与するのだが、領事警察は外務省と都督府の双方の指揮下に置かれる
ことなる。

領事警察は命令系統の上から「往々にして都督府の意向に悖りても、外務
省よりの使命を全うせん」するが、都督府は外務省の意向を無視してでも
領事警察を自らに従わせようとする。

かくして外務省と都督府、つまり陸軍との間に軋轢が生じてしまう。その
うえに「附屬地以外の開放地」は「支那警察官」も管轄し、「其傍には支
那兵が傲然」と控え日本側守備兵を監視している。

いわば「附屬地以外の開放地」の治安は日本側の「三頭政治の矛盾」と
「日支間の紛議」の中で複雑な仕組みによって維持されている。

「例えば外務省は支那に對して所謂温和主義を以て一貫す」るのとは反
対に、都督府は「威を示すを必とすべしとなすことあり」。また駐屯軍は
「或は陸軍省の方針により、或は參謀本部の意向により別個の考を持し、
常に領事の優柔なるを憤慨す」る。

こういった混乱した対応の最中、「領事の優柔」が愈々もって「支那人の
侮蔑を招けば」、「軍人側の憤慨は?々抑ふ可らざるに至る」ことにな
る。かくて「領事警察官が支那兵に毆打」される事態が起れば、「日本守
備兵が急馳せして支那兵いに報復する」ことになる。領事(外務省)が
「守備兵の輕擧」を批判すれば、「都督府と陸軍とは領事の軟弱なるを責
めて已まず」。

たしかに「軟弱なるを責むるは、至極尤も」だろうが、とどのつまり都督
府(陸軍)は「所謂腕力主義にて弱者を力制すれば足れりとなす短見の外
に出でず」。かくて営業に影響を及んだとしても満鉄の立場では効果的対
応は不可能であり、事態は紛糾するばかりだ。

◆アメリカには職業の流動性がある

前田 正晶



何のことかと思われるだろうが、アメリカでは大統領になるまでに我が国
のように(議員内閣制ではないから)先ずは地方議員から始めて国会議員
となってという類いの累進出世(で良いのかな)方式がないから、故レー
ガン大統領のように映画俳優から就任された例があるし、オバマ前大統領
に僅か1期だけ上院議員を務めた弁護士が大統領になれた例があると思っ
ている。文化の違いである。

トランプ大統領は今更言うまでもなく言わば大手の不動産業者から一気に
大統領になられた方だ。我が国の歴代の総理大臣と比較するのが適切かど
うか知らぬが、政治以外の分野を長年経験されてきた非職業政治家だっ
た。この辺りに私は「職業の流動性」を見る気がするのだ。

その点では手っ取り早くW社の例を挙げれば、数人の元大学教授のマネー
ジャーもいれば、その辺りの地位か副社長からリタイヤー後に大学強に転
じていった者は多かった。

悪く言えば、我が国の政治家の在り方は「体育会制度の下に一つの競技し
か深く極めていない者が多い」のである。例に挙げては非礼かも知れない
が、レスリング界の栄和人氏のような事態が生じるのだと思う。言うなれ
ば、レスリングという競技を深く極める間に「広く世間を見る機会を自動
的に失ってしまった」ことがコインの裏面で、天上天下唯我独尊の如くに
なってしまったことが不幸だったという例だと思っている。

私はアメリカの会社に転じて、予めそういう社会だとは承知ていたが、職
業の流動性の実態に接してあらためて文化の違いをマザマザと思い知らさ
れた。その辺りを「貿易」という業務がアメリカの会社の文化ではどのよ
うに扱われているかを述べていこう。

我が国では多くの業界で「外国 部」、「海外部」、「貿易部」という組
織があると思っている。そこには 英語の能力も要求されるし、受け渡し
から始まって輸出入のドキュメント というか事務処理の能力が必須であ
ると思っている。言うなれば、国内市 場担当とは異なる一種の「特殊技
能」が求められていると言えば良いか。

ところが、1972年にアメリカの会社に転じてみてある意味で驚愕だったの
は、アメリカ国内の営業の担当者がごく当たり前のように国内と国外の得
意先を担当していることだった。当時は未だL/C(信用状のこと、念の
為)の開設が必須の時代だったし、ドキュメントが読めなければ仕事にな
らないし、貿易相手国の市場にもある程度以上通じている(勉強してる)
ことは当然だった。

そこで、大胆にも新参者の私は内勤の事務方の責任者に「それで成り立つ
のか」と切り込んでみた。答えは割りに簡単で「事務処理は我々が担当し
ているから、営業担当者は国内であろうと外国だろうと営業の仕事である
事は同じだから何の問題もない」と何らの屈託もなく割り切っていた。

一寸した驚きの文化の違いだった。そう言われて考えてみれば、私自身が
Meadのオウナーにインタービューされた際に「紙という製品の販売から原
料のパルプ販売に移ることに不安はないか」と訊かれて「どちらでも営業
であるという根本原理は同じだと思うから不安はない」と答えていた。

ここまでで言いたいことは「ある分野である程度の経験を積み、実績を残
せるだけの実力が備わっていれば、業界が変わっても通用するのだ」とい
う点である。であるから、アメリカの大手製造業界では躊躇うことなく異
業種から即戦力となる者を採用していく文化で成り立っているのだ。そこ
では、当然のように「君は以前はどういう業界にいたのか」というよう
な、当時の我が国の感覚では「失礼な」と思うことを平気で尋ねてくるの
だった。

私はこれまでに再三再四「トランプ大統領はものを知らないのか、知って
いながら知らん振りをしているのかが解らない点が怖い」と指摘してき
た。そう言う訳は、唱えられた公約や就任後に打ち出された政策の中に
「本当にそのことについて十分な知識と経験があり裏と表の事情を承知で
あれば、とても言い出せない案件が多過ぎる」からだった。そこでは「あ
る業種で蓄えた知識と経験があれば他業種でも通用する」という原則は不
動産業者からアメリカの大統領という転進には当て嵌まらないのではない
かと考えていたからだった。

しかし、トランプ氏は当選され、彼以前の大統領が手がけるというか考え
てもいなかっただろうような大胆不敵な政策を次から次へと打ち出して
いった。その辺りを未だに「知らないから出来た」のか「本当に知らない
のかどうかが解らない」と疑問に感じている勢力はあると思っている。私
は今となってはメキシコ等の南アメリカからの移民を制限するし送還する
というような政策は支持したいと思うに至っている。

だが、トランプ大統領の「アメリカファースト」を基調に置く政策は貿易
赤字を削減する為に横紙破りというか、世界の貿易の実績がマイナス成長
となるのではないかとエコノミストや一部の学者が懸念するような中国等
の対アメリカ貿易黒字国を相手にする関税の賦課という政策に突き進んで
いったのだった。

私はこういう政策を採られる背景に「何もかも承知か」 か「知らないか
らこそ打って出た」のか「これまでの知識と経験はここで も通用する」
という信念に裏打ちされているのかとも考えたが、現時点で は何とも判
断のしようもない強引さであると思っている。

トランプ大統領のような手法に対する批判は極端に言えば二つに別れると
思う。それは「これまでの因習的な決め事と習慣に囚われることなく『ア
メリカを再び偉大にする為』に世界を変えてみせる」という強固な信念の
表れか「誰が何と言おうと形振り構わずに公約した通りに邁進するのだ」
ではないかと考えている。後者にはこれまでに通用してきた手法が通じる
のだと信じている「世界における貿易とは何かを知らないが故の強さ」が
あるようにも見えるのだ。

私の議論は何処まで行っても自分で経験したことに基づいている。それは
「アメリカという国は飽くまでも基本的には輸出依存の経済ではなく、内
需で成長してきたのである」ということが重要だと思っている。

中国から の輸入が多いのは、乱暴に言えば非耐久消費財のような物は産
業界を空洞 化させて低労働コストの国で生産するようにしたのである以
上当然であ り、それを今更非難するのは手遅れだとしか思えないのだ。
更に、そこに はアメリカ国内の労務費と労働力の質にも問題があったこ
とは、私も経験 上も心得ているし、再三述べてきたように嘗ての
USTR代表のカーラ・ヒルズ大使も認めておられたのだ。

思うに、トランプ大統領は70歳までの他業種での経験というか成功と失敗
に裏打ちされた知識と経験に自信を持たれ、新しいアメリカを構築されて
「アメリカを再び偉大にする為」に「アメリカファースト」の精神で突き
進むと固く決められたのだろう。それを支えているのが好調な国内の景気
と、プーアホワイト以下に加えて知識階層にも支持者が増えているという
事実があるのだと思って見ている。


私如きにはトランプ政治の結果がどう出るかなどの予測は不可能だ。当面
の間は我が国を始めとして、EUの諸国、中国、ロシア、DPRK、アジアの諸
国等が如何に対応していくかを見守っているしかないと考えている。


◆「痰の話」で思い出す支那

石岡 荘十(ジャーナリスト)


‘35京都で生まれ、そのすぐ後から敗戦2年後まで中国(当時は支那)に
留め置かれた。幼い頃の記憶はもちろんないが、物心ついて以降、見聞
きしたかの国の“文化”といまの日本のギャップを、本メルマガの反響
欄が思い起こさせた。 

幼い頃の記憶はこうだ。

その1。

夏の日、父の仕事が休みのある日、「支那人と犬入るべからず」という
立て札が入り口にある公園に家族そろって出かけ、公園の中の、支那人
以外のためのプールで家族で泳ぐ。ある日、帰りに天津市内でも最高級
の中華料理店でそろって子豚の丸焼きを食った。

糞をしたくなって、用を足そうと便所へ行くと便器のはるか暗い、深い
底にうごめく動物がいて、驚いて下を見ると、数匹の豚が新鮮な私の排
泄物をむさぼっていた。今思えばここでは完璧な“食の循環”が実現し
ている。

だが、これで私は完全に食欲を失った。これがトラウマになって、決し
て宗教上の理由ではなく、長い間、私はブタが食えなかった。

その2。

小学校の同級生に、当時の天津領事の息子(小山田あきら?)がいて、
放課後、いつも領事館へ遊びにいっていた。ほとんどは広大な領事公邸
の中で遊んでいたが、ある日、門の外に来る物売りの声に誘われて外に
出た。

天秤にかけた台に切り分けた瓜が載っていた。それが喰いたくて「どれ
がうまい?」と私たちに付き添ってきた領事館の守衛に聞いた。守衛は
「ツエーガ(これだよ)」と指差したのは、ハエが一番多く群がってい
る瓜だった。

“動物学的”に言ってそれはそうだろうと納得したのはずっと後のこと
だが、ハエがたかっているのは汚いという考え方は彼らにはないらしい。

いつだったか大分昔、多分、日中国交回復の頃、「中国にいまや1匹の
ハエもいなくなった」という提灯記事をどこかの新聞で読んだ記憶があ
るが、決して信じなかった。私の幼い頃の確かな記憶が記事のウソを見
破った。

その3。

父が勤めていた会社の管理職住宅は鉄筋コンクリートの一戸建ての“豪
邸”で、玄関を入ったところに、日本流で言うと、女中部屋があった。
女は阿媽(アマ)と私たちが呼んでいた纏足の小柄な女だったが、時々、
旦那が小さな女の子を連れて泊まりに来ていた。

女中部屋は6畳ほどの小さな部屋だったが、遊びに行くと、部屋の隅に
花瓶のような形の壷が置いてあって、そこに時々、「ペッ」と痰を吐く、
というか飛ばす。

それがまた結構遠くから正確に痰壷のど真ん中に命中するのを、何の不
思議もなく見ていたのを思い出した。ホールインワンどころではない。
アルバトロス級である。北京オリンピックで「痰飛投」などという種目
が出来たら間違いなく金だろう。

人前での屁は慎むが、食事中、げっぷは割と平気でやる。屁は平気だけ
ど、げっぷは禁忌という国もあると聞く。生活習慣がそんなに違う民が
十数億人もすぐそこにいる。

痰。さてどうするか。

話題はそれますが、昭和18・9年当時、幼馴染の父、小山田天津領事
とその家族の消息を知りたいと思っています。その頃、いつもアイスキ
ャンディーを作ってくれた、髪の長い、美しいお姉さまがいました。確
か、「たえ」さんでした。

2018年06月24日

◆健康百話 「認知症」には「散歩」が効果

                      向市 眞知    大阪厚生年金病院


以前、住友病院神経内科の宇高不可思先生の「認知症」の講演を聴きに行きました。その時、「こんな症状があったら要注意!」という話から始まり、次の11の質問がありました。

1、同じことを何度も言ったり聞いたりする
2、ものの名前が出てこない
3、置き忘れやしまい忘れが目立つ
4、時間、日付、場所の感覚が不確かになった
5、病院からもらった薬の管理ができなくなった
6、以前はあった関心や興味が失われた
7、水道の蛇口やガス栓の閉め忘れが目立つ
8、財布を盗まれたといって騒ぐ
9、複雑なテレビドラマの内容が理解できない
10、計算のまちがいが多くなった
11、ささいなことで怒りっぽくなった

「これらがいくつかあったり、半年以上続いている時は専門病院へ行きましょう」といわれました。

私自身、同じことを言ったり、物の名前が出てこなかったり、置き忘れやささいな事で怒りっぽくなったなあと思い当たるフシがいくつもありました。専門診療の対象といわれてしまうと本当にショックです。

認知症というと周りの人に迷惑をかけてしまう問題行動がクローズアップしてその印象が強いのですが、新しいことが覚えられない記憶障害もそうです。また、やる気がおこらない意欲の低下もそうですし、ものごとを考える思考力や判断する力、そして手順よくし処理する実行力の低下も認知症の症状です。

認知症高齢者のかた自身の不安は、時間や場所がわからなくなったり、体験そのものを忘れていく中で暮らしているのですから、自分以外の外界のすべてが不安要因になってしまうのです。

ご本人は真剣に外界を理解しようとしているのですが、家族は「ボケ」「痴呆」ということばの印象から「認知症だからわからないだろう、理解できないだろう」と思い込んでいる例が多くみられます。
 
診察室でなんとご本人を目の前にして認知症高齢者の失態を平気でドクターに訴えたり、「母さんがボケてしまって」とはばかりもなく言ってしまったりします。

その瞬間にご本人はその家族に対してまた不安をつのらせてしまいます。また話を向けられたドクターも、ご本人を前にしてウンウンとうなづくべきか、ほんとうは困っているのです。うなづけば家族は安心しますが、ご本人はドクターへの信頼感をなくしてしまいます。

よく「まだらボケ」とか言いますが、「正気の時もあるからやっかいだ」と表現されるご家族もあります。しかしそれは逆で、やっかいと考えるのではなく正気の部分があるのならその正気の部分を生かして日常生活を維持するようにしむけてみませんか。
 
認知症があってもくりかえし続けている一定の日常生活はできるはずです。老年期以前の過去の生活を思い出させてあげると、高齢者は自分の価値を再発見し、意欲も湧いてくるとききました。

高齢者にとって脳機能の低下だけではなく、視覚や聴覚、味覚や嗅覚などの感覚もおとろえてきていることを理解してあげてください。すべてを「認知症」の一言でかたづけてしまわないで下さい。見えやすくする、聞こえやすくするというような場面の工夫で問題行動が小さくなることもあります。
 
「認知症だからわからないだろう」と思い込むのは大まちがいです。「言ってもしかたない」と決めつけるのは悪循環です。認知症の方の感じる外界への不安を考えると、情報が遮断されると余計に不安が大きくなります。

どしどし情報を与えることが不安の軽減につながります。そのために外出しましょう。認知症には散歩の効果があります。外界の空気は聴覚、視覚、嗅覚への刺激になり、脳の活性化につながります。

医療ソーシャルワーカー