2018年06月23日

◆米朝首脳会談中止 騒動

加瀬 英明


「米朝首脳会談中止」騒動、米の圧力は中国にも向いている

トランプ大統領が、6月12日にシンガポールで予定されていた、米朝首脳
会談を直前に中止することを発表して、北朝鮮の金正恩委員長を狼狽(う
ろた)えさせた。

私はかねてから、本誌のこの欄で、北朝鮮が核を棄てることはありえな
く、文在寅大統領と金正恩委員長による南北首脳会談は“安手の韓流ドラ
マ”にすぎなかったし、米朝首脳会談が実現しても、空ら騒ぎに終わろう
と、論じてきた。

トランプ大統領が“リトル・ロケット・ボーイ”と呼ぶ、金正恩委員長は米
朝首脳会談に執心している。北朝鮮にとって米朝首脳会談が行われれば、
国際的地位が大きくあがるが、それなしには、哀れな、みすぼらしい小国
でしかない。

南北首脳会談や、米朝首脳会談を行わず、中国も含めて北朝鮮に対する経
済制裁を、粛々と進めてゆけばよかった。

私は4月30日から、ワシントンを4泊で訪れて、トランプ政権を支える
人々と、朝鮮半島危機について話した。

着いた晩に、国防省の親しい友人と夕食をとったが、「世界は30年ぶり
に、“ベルリンの壁”が崩壊するところを見るだろう」といって、米朝首脳
会談によって北朝鮮が核を放棄することになると、自慢した。

私は「まさか。金正恩(キムジョンウン)がよほど愚かだったら、そうなる
だろう」と、答えた。

私はホワイトハウスの前の小さな公園をはさんだホテルを、常宿にしてい
る。バーで金正恩(キムジョンウン)の愛嬌ある似顔絵が描かれた、コース
ターが使われていた。ちょっとした、北朝鮮ブームだった。

だが、トランプ大統領も6月の会談を中止したものの、金委員長に一撃を
加えたうえで、米朝首脳会談を開くことを望んでいる。金委員長が懇願し
た結果、再調整されたが、本誌が発行されるころに実現しているかどうか。

別の政権の関係者は、もっと現実的だった。

「われわれは中国が北朝鮮に核放棄を迫らないかぎり、北朝鮮が核を手離
すことはない。米朝交渉を続けるあいだに、中国に強い圧力を掛けてゆく
ことになる」と、語った。

トランプ政権にとって、ほんとうの敵は、中国だ。

北朝鮮の核ミサイルは、まだ戦列に配備されていないし、成層圏から目標
へ向かって再突入する、終末段階(ファイナル・フェーズ)の摂氏7000度に
達する高熱に耐える技術を持っていない。

アメリカにとって、中国の南シナ海進出の方が、差し迫った脅威だ。

中国の脆い点は、中国経済が対米輸出に依存していることだ。

中国はアメリカに寄生している、パラサイトだ。トランプ政権は中国の弱
点をとらえて、揺さぶろうとしている。

これから、商務省が諸国による自動車、自動車部品の対米輸出がアメリカ
の工業ベースと、安全保障を脅かしていないか、調査を始めるが、もし、
“黒”となった場合には、天井知らずの関税をかけることができる。

帰京後に、トランプ大統領が自動車、自動車部品に20%から、25%の高関
税をかける方針を発表したが、これはEU(ヨーロッパ連合)、カナダ、
メキシコ日本との貿易交渉にあたってテコともなるが、中国へ向けたものだ。

中国は自動車部品の対米輸入で、巨額を稼ぎ出しているうえに、安価な
EV車をアメリカへ輸出することをはかっており、すでに売り込みが始
まっている。

◆ベンチャー・キャピタルの資金が集めやすい

宮崎 正弘


平成30年(2018年)6月22日(金曜日)弐 通巻第5732号  

 中国の「起業第二世代」はベンチャー・キャピタルの資金が集めやすい
  ならば大蹉跌したとき、責任は所在は誰になるのだろう?

小紙の前々号だったか、トランプ政権で強引な対中制裁路線を推進する
ピーター・ナバロ通商産業政策局長が報告した中国の経済レポートで、中
国人留学生は年間30万人との指摘があった。

しかし、この数字は古い。現在は年間60万人以上が米国に留学し、しかも
40万人前後が中国に帰って、隙間ビジネスからEV、ロボット、自動運
転、IT、AIなど米国で学んできたの最新技術を背景にベンチャーを起
業する。

現在、中国の大学卒業生は790万人から810万人ほどおり、米国留学はこの
うちの7・5%程度になる。異常に高い数字である。日本人の米国留学が
激減している現象と対照的である。

なぜこうなったかと言えば、大学卒業が現代中国の「科挙」を意味するか
らであり、一人っ子が殆どの中国社会ではブルーカラーにはなりたくな
い。花嫁も来ない。一生うだつが上がらない。だから両親も祖父母も、自
らの生活を切り詰めてでも、こどもを大学へ送り込む。

いや、幼稚園からすでに中国では競争である。

保育園にも「名門」があり、なんと保育料は月に20万円という(年間では
ない。毎月である)。公立保育園は一万円程度だが、一人っ子を「小皇
帝」とする中国では、有名幼稚園におくることから始めるのだ。

となれば大学は駅弁大学、インチキ臭い大学も出来るだろうし、金を積め
ば卒業証書を呉れる悪徳経営陣も出てくるだろう。

統計によれば2017年の帰国組は48万人で、このうちに23万人が博士号もし
くは修士号取得者だったそうな。

 この中国版「新人類」は、大企業に勤めたり、公務員になるより、技術
に自信があれば、すぐに起業する。自分が自分のために人生を賭けるのだ。
しかも起業に際しては、中国政府が奨励し、補助金を出している。第十九
回共産党大会と2018年の全人代で、李克強首相が懸命に訴えたのは
「MADE IN CHINA 2015」だったように、次世代技術に本格
的に取り組むためには若者の起業を促すことに力点が置かれるとした。

この中央政府の方針に便乗して、地方政府はビルのフロアを格安で、かれ
らに提供する。多くは三ヶ月以内が条件で、その間に将来の見通しがたた
なければ立ち退きとなる。なかでも広東省政府はビルの家賃無料どころ
か、ベンチャー企業社員のマンションの家賃まで負担している。背景に中
国共産党が進める「メイドインチャイナ2025」という大戦略があり、ふん
だんな予算がついているからだ。


 ▲若者に「起業」を薦めるのは失業対策でもある

もとより起業を盛んにすすめた理由は、失業の若者が反政府暴動を起こし
かねないからで、就職難の状況に活を入れるためにもベンチャーを奨励し
て補助金をつけるという絶妙のアイディアを発見したのだ。
エネルギーを反政府に向かわせないためでもある。

ウーバーも、ネットの出前サービスも、車の自動運転技術に特化した新興
企業も、こうして雨後の筍のごとく乱雑に粗製された。

「これは!」という技術を持っていると、米国などのファンドがやってき
て幹部に面会し、ベンチャーキャピタルがどんと入ってくる。

げんにアリババなどは、ベンチャーのなかでも、将来性のある「飢了磨」
(ウーラマ)やOFO(シェア自転車)を買収した。ついでに言っておく
とアリババは「アリペイ」(スマホ決済)、陶宝(ネット通販)、借唄
(小口金融)など将来性のある起業を片っ端から傘下におさめ、総合的な
ネットビジネスの覇者を目指している。

そのうえ中国的特質は株式上場がしやすいという資本主義社会ではおよそ
考えられない支援体制がある。

一般的に日本の場合は経理報告を念入りに調べられ、過去3年くらいは連
続的に経常利益が計上されていること。取引先の信用度など、あれもこれ
もと調べられてから株式の上場が認められる仕組みだから、この「インス
タントIPO」(IPOは新規株式公開)という遣り方は常識外である。

また中国人のドライな感覚はアメリカ人と同質なところがあって、いつま
での自社にしがみつかない。儲かっている企業を横から買収するという敵
対的なM&A(企業買収&合併)のやり方も中国人とアメリカ人は感性が
酷似している。


 ▼粗製乱造も中国人の感性にぴったりなのだ

中国のこうした環境の下では粗製乱造のベンチャー企業に巨大な夢が集ま
りやすい。しかし成功するのは「千三つ」(千件に三件)ではなく「万三
つ」の世界だ。大概は失敗して、ファンドの出資金は返せず、そのうち行
方不明になる。

あるいは腕を活かして成功したベンチャー企業に入り、腕をさらに磨いて
次の起業に備えるのだ。

韓国でも大手財閥に就職できるのは、大学卒業の2%程度で、あとは「負
け組」に勘定されるが、かれらもまた、すぐに起業するのである。ところ
が韓国通の室谷克実氏によれば、「起業」の内容たるや、九割が屋台。し
かも年収はせいぜい50万円ほど。1年後にはほとんどが廃業しているという。

中国の若者を引き付けてやまない起業家への夢は、アリババ、テンセント
などが、大成功という道を辿ったからで、アリババのジャック馬や、百度
のCEO李彦宏、テンセント(騰訊)の馬化騰などが現代中国のヒーロー
となる。

もし仮にジャック馬らが[起業第一世代]とすれば、いまは『第二世代』
の時代に突入しているのである。

そして第二世代がもっか集中して開発しているのが自動運転テクノロジー
である。

もともとは米シリコンバレーのグーグルで生まれ、先駆者は「ウェイモ」
「オーロラ」「クルーズ」など。基本はグーグルからの独立である。

中国も同じようなスタイルで「百度」からスピン・オフしたエンジニアら
が「仔馬智行(ポニーa)」、「深せん星行科技(ロードスター)」「景
馳科技」など注目株にベンチャーを立ち上げた。まったくの新興勢力である。

スマホ決済が中国で急速に進展した理由も、じつは簡単である。

日本と違って現金は偽札が多い。中国で流通している紙幣の20%が偽札
である。つぎに信用カードだが、これもニセモノがおおいうえに、スキミ
ングされやすく、詐欺に使われることが多い。

それゆえ、スマホ決済にみなが飛びついたのだ。

末端の若者とてつねにニッチを狙う。典型が「飢了磨」で、マックの注文
を個別にとり、代理にマックで希望の品物を購入し、注文主に配達して、
しっかりと手数料をとる。

元手もかからず、瞬く間に、あらゆる出前に適用され、これに目を付けた
アリババが買収したのだ。

原型は昔からあるダブ屋である。

鉄道駅に並ぶとかならず声をかけられる。先頭付近に並んでいる相棒に合
図して、順番をとり、手数料をとる。病院でも朝から順番待ちの札を確保
して、遅れてきた患者に売りつけるビジネスがあった。あれを出前に適用
したに過ぎないが、当ったのである。

日本はこうした中国人のエネルギーに負けているかも知れないが、しかし
日本でも孫正義、楽天の三木谷、ライブドアのホリエモンなどの成功者が
いる。

いずれにしても世界中で成功者にのみ光りが当たっている。その陰に隠れ
たが多くのベンチャーが失敗に終わっている。


 ▼日本も中国人留学生、研修生のヴィザを制限するべきではないのか

しかしちょっと待った。

たちどまって考えてみると、中国のやり方が不公平である。WTOは政府
補助金の輸出を不公平取引と規定している。だから太陽光発電パネルや風
力発電装置を中国政府は奨励し、補助金もつけたが、それを輸出する際に
は国際的な問題となった。

国内産業の奨励とはいえ、補助金はほかの国の状況を比較すれば不公平で
ある。

なぜ、中国政府は表向き「MADE IN CHINA 2025」などと標
榜して優秀な人材、エンジニア、発明家を特定のテクノロジー開発に集中
され、補助金をつけているのか。


答えは明瞭である。

AIもITも、自動運転も将来の軍事技術に直結するからである。自動運
転はドローンではすでに実現しているが、これが自動車から転用され、装
甲車、戦車に転用しようとしている。AIもITも、リチュウムり電池
も、将来の兵器、そしてロボット兵士への技術転換が容易になるからにほ
かならないだろう。

アメリカは中国の「MADE IN CHINA 2025」戦略に潜む中国
の軍事的野望をすでに見破っている。だからハイテク企業への中国のベン
チャー・キャピタルの出資を制限し、企業買収を阻止してきた。

そのうえ、中国人へのヴィザの制限を実施し始めた。

中国人留学生のヴィザはこれまで五年間だったが、1年間の短期に「修
正」された。中国の現実の脅威を目の当たりにして、米国はようやく重い
腰を上げたのだ。
     
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1749回】        
――「支那人は巨人の巨腕に抱き込まるゝを厭はずして・・・」――中野(5)
  中野正剛『我が觀たる滿鮮』(政?社 大正4年)

               △

 三頭政治の行われている関東州と満洲は、じつは「既に支那の領土にあ
らず、又日本の領土にあらず、是れ實に一種の變態の下に在る土地なり」。
しかも「支那も亦後日自己の領土として之を保有すべき實力なく、日本人
にも亦敢えて之を永遠に領有せんとするの決意なし」。つまり関東州と満
洲は現在も将来も誰のものでもない『宙ぶらりん』の状態が続く可能性が
大であり、将来にわたっても所有者が定まらないから「變態」というわけだ。

 日本においても「我帝國に百年の大計を抱きて、斷じて之を實現せん
と努力するの政治家」が見当たらない以上、出先機関が次々に設けられは
するものの結果として「無定見の數を盡して、一般居住者の非難の中心と
なるのは自然の勢ひ」というものだ。

 一般に日本では「關東州とは、〔中略〕露西亜の租借權を繼承して、
我國の租借する所」であり、「南滿は最近に我國が露西亜と協定して、内
蒙と共に我勢力範圍に置きたる所」であり、「此勢力範圍内を貫」く南満
鉄道が「我國に屬する期間、之も滿鐵の支配下に在るものなり」と説明さ
れている。
租借地というからには「条約の文面に指示するが如く、年限經過後、文句
なしに支那に返却すべきものなるか」。そこで中野は、そんな安易な考え
でよいのか、と疑問を呈す。

 中野は「租借なる語は、歐洲と清國とが始めて條約を締結せる以來、
清國の土地に表示する外國人の私權(事實上所有權に等しき)を表示する
通語となり居れり」とのドイツによる解釈を援用しながら、租借地・関東
州に対する日本当局の腰の定まらない対応を批判する。
だから関東都督府にしても満鉄にしても、将来にわたる確固たる方針が打
ち出せない。「我消極的政治家の中には此滿蒙に於ける我の無形の權利」
を放棄せよ、「鐵道及び鐵道沿線附屬地に於ける、有形の權利すら他に讓
り渡」せと主張する者がいる始末だ。

 たしかに満蒙における日本の地位を保持することは困難ではあるが、
「國勢の均衡上一歩も退く」ことは出来ない。
それというのも日本が退いたと「同時に進み來る一國あ」るのみならず、
列国係争の地になることは火を見るより明らかだ。満蒙を棄て南方に転ず
べきだとの主張も聞かれるが、「南北と東西とを論ぜず、抵抗力乏しき所
に向つて發展し行くべき」が国際政治の現実だ。だから日本が北方を棄て
たら、「列國若くは或國は安んじて北方を奪」うだけでなく、余勢を駆っ
て日本の南方進出を抑えにかかる。満蒙を棄てたら、「地勢上朝鮮も抛棄
せざる可からず」。

かくて「宛かも大氣の低気壓區域に向つて流動し來るが如く」に「島帝
國」に攻め寄せることは明かだ。いわば日本はノー天気に内向き志向を続
けていたら「列國若くは或國」がまるで飢えた猛禽のように日本に襲い掛
かって来るに違いない、ということだろう。

「南下せんとする露國の力と、北上せんとする我が帝國の力の均衡」に
よって現状が維持されているわけで、「滿洲に於ける日露両国は、進む可
らず、引く可からず、苦しきなりにも現状を維持せざる可からざる」状況
にある。だから満蒙は「決して唯の外國」ではない。
 であればこそ、「滿蒙の脊髓たり、且勢力の基點たる南滿鐵道及び其附
屬地」の経営は最重要なのだ。にもかかわらず我が政府は「一定の方針の
下」で諸般の施策を打つわけでもない。

 「滿洲は何と言ひても支那と稱する他國の一部分」だが、日本の利害
には大きく関わっている。
他国に置かれた領事館とは性質を異にするにもかかわらず、他国に置かれ
たそれと同様に「外務省に直屬し、其外務省なるものが日本一の無定見」
だというのだから、「都督府及び滿鐵と共に、南滿一帶に於て矛盾、齟
齬、撞着の奇態を呈するは自然の勢いなり」。
 それにしても「外務省なるもの」が、この時代既に「日本一の無定見」
だったとは。

◆米朝山場、日本は官民あげて拉致解決を

                                 櫻井よしこ


「金正恩が話のできる男かどうかは、私は会って1分で判断できる」。ト
ランプ米大統領は記者会見でこう語った後、カナダでの先進7か国首脳会
議を早めに切り上げて、シンガポールに向かった。

この記事が皆さんの目にとまる頃、史上初の米朝首脳会談の結果が吉か凶
か、明らかになっているだろう。

世界最強国の大統領と、世界で最も多くの嘘をついてきた国のひとつ、北
朝鮮の独裁者が合意に達するには、北朝鮮が核・ミサイルの廃棄を確約し
なければならない。許されざる人道問題である拉致を、「被害者全員の帰
国」を大前提として解決しなければならない。

北朝鮮に核・ミサイルを放棄させられなければ、ただでさえ、すでに崩壊
しているといわれる国際社会の核拡散防止条約(NPT)体制は、さらに
悪化し、核保有国が次々にふえる世界になってしまうだろう。また、拉致
を解決できなければ、究極のテロの前で、世界は無力化する。

この2つの問題のいずれも、北朝鮮の3代にわたる政権が元凶である。彼
らは自身の栄華と生き残りのためにあらゆる悪に手を染めてきた。常識も
良識も通じないが、生き残りのための状況分析には、鋭い嗅覚を持つ人々だ。

だからこそ、昨年9月23日、ステルス性が高く、60トンもの爆弾を運べる
B─1B爆撃機2機を米軍が北朝鮮の元山上空に飛行させたとき、正恩氏ら
が、貧弱な防空態勢ゆえに2機の飛来にまったく気付かなかったとき、彼
は本気で米軍の斬首作戦を恐れ始めた。それ以降、人が変わったように核
やミサイルの実験を控えるようになった。

国民の命や生活よりも自身の命を最も心配する正恩氏に対しては、その弱
点をつけばよい。十分な軍事力と強い意思に基づく戦略を保持して、しか
し、友好的な笑みを忘れずに、初回の会談をこなすのが、一番よい。

日本がすべきこと

この点について6月10日、交詢社の第10回オープンフォーラムの基調講演
で河野太郎外務大臣が語った。

「日本には多くの誤解に基づく解説が溢れています。トランプ政権内にポ
ンペオ国務長官とボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の、対
北朝鮮宥和派と強硬派の対立があるなどと言われていますが、それはあり
ません。米国政府内で基本方針は共有されています。

最大限の圧力という言葉をトランプ大統領が使わなくなったので宥和策に
傾いているとの指摘も間違いです。北朝鮮が核を放棄しない限り、現行の
制裁は緩めない。ただ、交渉のテーブルにつこうとしている今だから、
『最大限の圧力』と言わないだけです」

12日からの米朝首脳会談の行方は、会談前日の段階でも予測困難な面はあ
るにせよ、河野氏の見通しは日本にとって心強い。6月7日に安倍晋三首相
と行った共同記者会見でのトランプ氏の言葉にも期待する。

トランプ氏は「拉致問題は、首相にとって重要なことだと理解している。
首相の望みに沿って、絶対に、絶対に北朝鮮との議題にする」と強調した。

客観的に見て、私たちはいま、拉致の解決に最も近づいている。1977年か
ら78年にかけて、久米裕さん、横田めぐみさん、増元るみ子さんらが次々
に拉致された。それから41年、ご両親や兄弟姉妹、多くの日本人がどれ程
心を焦がしても、被害者を取り戻せなかった。だからこそこの機会を逃し
てはならない。

トランプ大統領との共同記者会見で安倍首相は「北朝鮮と直接向き合い、
話し合いたい。あらゆる手段を尽くしていく決意だ」と「決意」という言
葉を5度、口にした(『産経新聞』6月8日)。

北朝鮮との話し合いに備えて日本がすべきことは多い。まず、日本の世論
を背景にして北朝鮮に迫ることだ。核・ミサイル問題が正しい方向で解決
に向かうとき――このこと自体を確認するのにかなり難しい作業が必要で容
易ではないが、それが担保されたとして――国際社会は北朝鮮への制裁緩和
に向かうだろう。

トランプ氏はすでに、北朝鮮が戦略的に完全非核化の道を選べば、繁栄す
る未来が開ける、北朝鮮には支援が与えられるが、その資金は米国ではな
く、韓国や中国、日本が払うだろうと語っている。米国のみならず、中
国、ロシア、韓国も含めた国際社会は日本に支援せよと迫るだろう。その
とき、しかし私たちは拉致被害者全員を帰さない限り、資金は出さない
と、声をひとつにして主張すべきだ。

これまでの日本の世論、朝日新聞をはじめとするメディア、野党や親北朝
鮮の人々の主張を思い出せば、このような場面になると必ず、彼らは「日
本だけが取り残される」と批判し、だから早く援助の輪の中に入れと言う
であろう。いまでも「圧力と言い続ける安倍政権は蚊帳の外」「北朝鮮に
会ってももらえない」という批判がある。

「全員」帰国を

なんという浅慮であろうか。正恩氏を対話の席に導いたのは、斬首作戦も
あり得ると、正恩氏に認識させた米国の圧力戦略である。その必要性を繰
り返し、トランプ氏に説いたのが安倍晋三首相である。蚊帳の外というよ
り、対北朝鮮戦略の重要な部分を担ってきたのが安倍政権だ。

いま、首相は、「日朝平壌宣言に基づき、不幸な過去を清算して国交を正
常化し、経済協力を行う用意がある」と、北朝鮮に向けて発表している。
2002年9月、小泉純一郎首相(当時)が金正日国防委員長と発表した右の
宣言は、実は「拉致」には直接触れていない。

ただ、第3項に日本国民の生命と安全にかかわる懸案について、北朝鮮側
は、「日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後
再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した」と書いてあ
るだけである。

この部分は拉致被害者を指しているとも解釈できるが、もう拉致はしない
というだけでは不十分で、被害者は全員返してもらわなければならないと
いう世論をこそ盛り上げたい。

だが、「全員」とは何人か。帰国した人々が全員かどうかをどう確認でき
るのかと問う声もある。日本側に「全員」についての明確な情報があるわ
けではないため、このような疑問が生ずるのも自然であろう。しかし、帰
国者全員から聞き取り調査をして、拉致された被害者の情報を収集するこ
とで、「全員」帰国を北朝鮮が誠実に実施したかどうかは検証できる。そ
のことを確認した後、初めて私たちは国交正常化交渉に入れる、それまで
は入らないという国民の意思が、ここでも大事である。

そのうえで、「国交正常化の後」日本の援助は行われるという平壌宣言第
2項を実施していくという道筋を受け入れたい。

こうした点について、揺るがない国民世論をいまから固めておきたいものだ。
『週刊新潮』 2018年6月21日号  日本ルネッサンス 第807回

◆6〜7世紀「木津川流域」

白井 繁夫


『古事記.日本書紀』の古墳時代に登場した物語:「武埴安彦の反乱、忍熊王の謀反」と云う2度にわたる木津川流域の戦いに大和政権が勝利した結果、「木津」は大和盆地からの北の出入口となり、大和政権の拡大した支配領域の重要な結節点にもなったのです。

6世紀に入ると、大和政権は仁徳系の王統を継承する皇子(25代武烈天皇後の皇子)が絶えかける状況になり、大伴金村大連(おおともかねむらのおおむらじ)が、近江の息長(おきなが)氏の系統:応神天皇五世の孫:男大迹王(おほどのみこ)の擁立をはかります。

大和、河内の一部の「男大迹王」を快く思わない勢力が丹波の別の王を推すのに対して、前述の2度の戦いで敗れた樟葉、綴喜の子孫や、近江の息長氏、母方(越前三国の振媛)や木津川流域の人々の強い支援もあり、更に前王統の手白香皇女(たしらかのひめみこ:仁賢天皇の皇女)と結ばれ、「男大迹王」は河内北部の楠葉宮で即位し、「継体天皇」になりました。

しかし、大和への入国を阻止しようとする反対勢力により、即位5年後、山背(やましろ)の筒城宮(つつき:京田辺市普賢寺)に遷都し、さらに、7年後の12月3日に弟国宮(おとくに:乙訓:長岡京市今里)へ遷都しました。

「継体天皇」が大和(磐余玉穂宮:いわれたまほのみや:桜井市池之内)に入り名実ともに大王となるのには、楠葉宮を出てから20年の歳月を要しました。

この間、近江、越前、尾張などをはじめ木津川、淀川水系の諸豪族(息長、和珥、茨田氏:まんだ)の地道な支援と、前王統の皇女との婚姻などで、継体政権は安定したのです。
(日本書紀は継体の直系の子孫:天武天皇によって編纂されており、古事記の記述と異なるところもあります。)

「木津川流域」は「継体天皇」以降の大和にとっては更に重要度が増し、海外からの渡来人も木津川市内に多く住むようになりました。

6世紀半ばを過ぎると、朝鮮半島の戦乱をさけて北九州の筑紫に到着した人達も、高麗人(こまひと)も上狛(かみこま).下狛(しもこま)など木津川地域に定着しだしました。(南部2郡:相楽、綴喜は「高麗(狛)氏」、山城北部:京都盆地は「秦氏」が集中していました。)

朝鮮半島の百済と倭国は非常に親密な関係であり、欽明天皇13年には百済の聖明王から仏像や経論が贈られ、文字や土木技術も伝えられました。

欽明天皇31年(570年)に、国交を開く目的で来日した高句麗使の一行の船が難破して北陸沿岸に漂着したのを、現地の道君(みちのきみ)が隠していると奏上あり、天皇は山城国相楽郡に館を建て、使者を安置するよう命じました。

「木津川の港」(泉津)、木津の相楽神社近隣に外交館舎「相楽館:さがらかのむろつみ」を建てて、一行を出迎えました。しかし、上表文と献物を差し出せないうちに、天皇が病死していまい、使者はいたずらに滞在が長引いていました。
(相楽館は高楲こまひ館とも呼ばれたことから木津川北岸の上狛との説もありますが外交館舎は後の難波館同様港の近く相楽:サガナカに在ったと思われます。)

次に即位した敏達天皇は、長く使者が逗留していることを知り、大いに憐れみ、即刻臣下を派遣して上表文などを受け取らせて、(572年5月)帰国の途に就かせました。
(大和朝廷は百済との外交が基本であり、物部氏らは高句麗との新しい外交に反対していました。政界のニュウリーダー大臣蘇我馬子の決断によったと云われています。)

任務を終えて帰国途中の一行は、蘇我氏に反対する者たちによって、暗殺されてしまったと云われています。当時の日本の一部には、大陸から伝来した仏教文化を受け入れずに神道をもって国教とすべきという信念を抱く反対勢力があったのです。

6世紀後半以降、外交使節は大和川を遡上しその支流なども利用して大和盆地の南部にある「宮」へ行く水運利用や、難波から大和にむけて敷設された陸路も利用していました。
しかし、木材や石材などの物資輸送に関する「木津川の重要度」にはなんの変化もありません。

朝鮮半島では3世紀(220年)、後漢の滅亡により、中国の影響から離れて、3国時代に入り、それぞれの国は発展し、文化的にも儒教から仏教に変化し、百済は4世紀が最も栄えていたと云われています。高句麗も鴨緑江から満州へ領土を徐々に拡大して行きました。

6世紀末から7世紀にかけて、朝鮮半島が再び、中国の隋、唐の侵略戦争の被害を受けていた時代、倭国では蘇我氏が皇族との婚姻を結び、絶大な勢力を得ることにより、大伴、物部の各氏を廃絶し、無力化してしまいました。

蘇我馬子は592年11月には東漢駒(やまとのあやのこま)に命じて、崇峻天皇をも弑逆(しいぎゃく:臣下が君主を暗殺)しましたが、(根回しの効果か?)、他豪族からのクレームもでなかったと云われています。

30代敏達天皇の皇后(33代推古天皇)は蘇我馬子に請われ即位しました。日本史上、初の女帝が誕生したのです。(593年)推古天皇は甥の厩戸皇子(うまやどのおうじ:聖徳太子)を皇太子として政治を補佐させました。

7世紀に入ると、大化の改新、壬申の乱、白村江の戦いなど木津川流域にもまた動乱があり、大津京、飛鳥京から藤原京へと移り行くのです。

参考資料: 木津町史  本文篇  木津町

2018年06月22日

◆闇の帝国とトランプ

Andy Chang


トランプ政権が誕生してから「闇の帝国(Deep State)」の存在がだんだ
ん浮上するようになった。Deep Stateとは日本語では闇の帝国である。つ
まり、主に政府内に存在する隠れた勢力が、政権の交代に関係なく、国家
の政策を推進する隠れた政府のことである。

実態は明らかでないが主に政府の国家安全や情報などの部門に巣食ってい
ると言われている。この存在が先週15日に公開されたホロウイッツ監察官
のFBI調査の586ページの報告書を詳しく検討することでだんだん明らかに
なってきた。

トランプが大統領に当選した後、彼のロシア癒着疑惑をでっち上げ、マラー
特別検察官が調査を始めたら、FBIのコーメイ元長官やその他のオバマ政
権の高級官僚が中立でなく極端な反トランプでヒラリーを援助していたこ
とがわかり、FBI/DOJの官僚がヒラリーの選挙に関わっていたことがわ
かった。

コーメイ元長官はヒラリーの違法メールサーバーの設置事件を調査したに
も拘らず彼女を起訴相当としなかったし、ヒラリーが大統領になったあと
の保身のためにヒラリーを援助するようになった。ホロウイッツ監察官の
調査報告は主にFBIのヒラリーの調査から派出したトランプ降ろし陰謀の
調査である。

ところがホロウイッツ監察官が9ヶ月以上もかけて調査した結果を公開し
た報告書は、FBI幹部がプロヒラリーで反トランプの陰謀に加担していた
ことを明記したけれど、「犯罪事実の証拠がなかった」、「コーメイ元長
官の調査は政治的偏見がなかった」、「本調査はヒラリーを起訴請求が目
的ではない」など玉虫色の結論をつけたので、結果として調査した人物を
暗々裏に弁護する結果となった。

輿論は侃々諤々、ある人はホロウイッツが数多の犯罪事実を解明したこと
を褒め、ある人は犯罪事実が沢山ありながら誰も起訴相当としなかったこ
とに不満である。

ホロウイッツ監察官はFBI内部の数ある犯罪事実を誠実に記録したけれど
彼らを起訴相当とするに至らなかった、つまりDOJ/FBIの一員である彼が
仲間を断罪することが出来ないのは、彼自身も闇の帝国の一員であること
が判明したのだ。しかしこの報告書で闇の帝国の形が浮上してきたことは
評価できる。

●FBI調査報告の概要

586ページの資料の概要を述べることは困難だが、調査報告で最も明らか
なのは、コーメィ元FBI長官のヒラリー関与と、FBIのストローク情報員
(PeterStrzok)とページ(Lisa Page)特別顧問のメール交信で、ページ
から「トランプは大統領になるのか?」と聞かれてストロークが「ノー、
ノー、我々がストップする」という交信記録である。

FBIがトランプの選挙妨害行動をとったこと、トランプが当選した後も反
トランプ陰謀でロシア疑惑をでっち上げ、マラー特別検察官を指名して大
統領罷免を画策したのである。

マラー検察官は今でもトランプのロシア癒着の証拠を発見できず、調査範
囲を広げてフリン将軍、ポール・マナフォートなど20人ほどを起訴した。

コーメイ元長官はヒラリーの違法メールサーバーの調査で、ヒラリーを起
訴相当と判定できないとし、逆にヒラリーの弁護にまわり、ヒラリーの選
挙応援、ヒラリーと民主党がでっち上げたスティール(SteeleDossier)
でFISAを使ってトランプのロシアゲートの調査を開始し、トランプの当選
後もマラー検察官を指名してロシアゲート調査を続けた。つまりマラー検
察官の調査の合法性も疑問なのだ。

コーメイ氏はヒラリーが違法に個人スマホを使用した調査で、彼自身も違
法な個人スマホを使っていたことが判明した。違法調査で自分も違法行為
をしていたのだ。FBI内部で反トランプ行動をとった人物は10名以上も
いるが、ホロウイッツは「彼らは現職の情報員であるから、実名を発表す
ればFBIの職務に影響する」という理由で個人の名前を伏せている。

このほかにトランプの当選直後に反抗組織を作る(Viva le Registnase)
とメールした人物も居ると言う。政府の要員が反政府組織を作るという、
まさに闇の帝国がトランプ政権の打倒を画策していたのだ。

●国会喚問が始まった

ホロウイッツ監察官の報告書では誰も起訴請求に至らないが、犯罪事実は
明白なので国会の情報委員会がさっそく調査を開始した。今週18日に国会
の情報委員会はレイ(Christopher Wray)現FBI長官とホロウイッツ監察
官を召喚して事情聴取を行った。この2人以外にコーメイ氏、マッケイブ
氏、ストローク氏も招待したが、彼ら3人は召喚に応じなかったので、委
員会はストローク氏を法的召喚(Subpoena)する手続きを取ると発表した。

報道によるとレイFBI長官は22日、ストローク氏を現職から外したと発表
したが、まだ罷免されていない。

●関係者の起訴はできるか

ホロウイッツ監察官は「調査をしたが起訴相当の判断は職務範囲ではな
い」と逃げを打った。国会の情報委員会が関連人物を召喚して調査をして
も起訴に持ち込むまでにはいくつもの難関がある。

司法部は法を執行する機関だが自分の手足を切ることはしない。司法部か
ら独立した特別検察官を設置しなければならない。

たとえ委員会が関係人物を法的召喚しても召喚拒否、または黙秘権を行使
して犯罪事実を明らかにできなくすることはほぼ確実だ。闇の帝国を調査
するのは至難の業である。

●ヒラリーが諸悪の根源だ

ホロウイッツ監察官の調査報告が公開されてからいろいろな評論が発表さ
れたが、中でもナショナル・レビューの記事は一読の価値があると思う。
Clinton Emails: What the IG Report Refuses to Admit IG Report &
Clinton Emails: The
WasInationReviewhttps://www.nationalreview.com/2018/06/ig-report-clinton-emailsfix-was-in/

結論から言えばヒラリーが諸悪の根源なのだ。ヒラリーの犯罪を調査をした
BIは彼女を起訴することが出来ず、オバマ民主党がヒラリーを大統領にす
るため、闇の帝国がヒラリーの選挙を援助した。政府の高級官僚がヒラ
リーのために有罪起訴される破目になったのだ。だから結局、ヒラリーの
犯罪を調査しなければ闇の帝国を根底から潰すことが出来ない。

ヒラリーは自分が法律に縛られないと思っているし、政府は40年もの長
きにわたって数多のヒラリーの違法行為を断罪できなかった。ヒラリーは
これまで何回も法を犯しながら、常に言い逃れで断罪されることがなかった。

ヒラリーは「違法を承知で」個人サーバーを設置して国家機密のメールを
やり取りしていた。オバマ政権も「ヒラリーの違法を容認」していた。

彼女の部下が違法サーバーに機密メールを送信するのは部下の違法行為
で彼女は違法ではないと言い逃れしている。サーバーのことは政府が容認
したのだから問題にならないと言う。このため国務院のヒラリーの部下数
名、FBI/DOJ、ブレナンCIA長官、クラッパーDNI長官など沢山の高級官僚
が法を犯してヒラリーを擁護し、オバマ本人もヒラリーの違法を容認し援
助してきたのである。

ヒラリーが有罪判決を受けなければ闇の帝国は解消されない。その他の関
係者だけが断罪されるのは不公平である。これは国家の根本を揺るがす大
事件で、若しもトランプ政権がヒラリーの罪を徹底調査し、闇の帝国を徹
底掃討できなかったら、逆にトランプの命取りとなるかもしれない。

◆ネパール首相もおねだりのため北京詣で

宮崎 正弘 

平成30年(2018年)6月20日(水曜日)弐 通巻第5728号 

オリ(ネパール)首相もおねだりのため北京詣で。
インドは3億1700万ドル、ところが北京の対ネパール投資は83億ドル!

ネパールは北の国境をヒマラヤ山脈に阻まれて、中国とは無縁、ながらく
はインドに保護されてきた。換言すれば、インドがネパールの「宗主国」
然として振る舞ってきた。したがってインドの振る舞いに傲慢なところが
あったのは事実だろう。

東西冷戦が終わり、航空機が飛び交い、中国からネパールへの観光客が、
またたくまに西洋人や日本人の訪問客を超えて、いまやカトマンズやポカ
ラの町は中国人団体ツアーに溢れ、日本食レストランにしても、中国人だ
らけである。

中国の狙いは明白で、ネパールと印度の関係を分断することにある。
 中国は最初に発電所建設に力を貸した。次ぎに習近平は自らの政治生命
をかけた「一帯一路」プロジェクト(BRI)の一環として、ネパールを
も巻き込み、高速道路と鉄道網の建設を提言し、実際に自動車道はヒマラ
ヤを越えるまでの建設が進んだ。

ヒマラヤの中国側にはリゾート歳を開発しており、ホテルや山小屋が建っ
て、かなりの国内ツアーを集めており、またチベットでは首都のラサから
第二の都市シガツェまで、高速鉄道を繋いだ。その早先のヒマラヤにトン
ネルを掘って、カトマンズへ鉄道を繋ぐなどと大生風呂敷を拡げている。

ネパールは立憲君主を廃止して、共和制に移行してからマオイストが勢力
をのばし、現在のカトマンズ政権はマオイストの右派と左派の連立であ
る。オリ首相は明らかに親中派である。そしてオリ首相は今週、北京を訪
問し、習近平と会談する。目的はずばり、おねだりだ。中国が掲げている
BRI関連の投資額は83億ドル、他方のインドは3億1700万ドル。じつに
インドの26倍だ!
     
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評BOOKREVIEW
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 幕末維新の知られざる裏面史を埋もれていた逸話で活写
  明治150年でなくて、戊辰150年というべきだ

  ♪
中村彰彦『幕末維新改メ』(晶文社)
@@@@@@@@@@@@@@@

 日本歴史でスリルに満ちた時代は戦国と幕末維新だろう。最近は古代史
もブームとなり、さらには観応の擾乱とか、応仁の乱も見直され、本能寺
の変の裏面もずいぶんと研究者が増えた。
 しかし幕末維新に限って言えば、広範な資料、それも未発見だった文献
を見つけて、歴史に埋もれてきた人々を甦らせる作業を一貫して書いてき
た作家は中村彰彦をおいてないのではないか。
 おもしろ可笑しく書こうとすれば、信長の横死を謀略史観のように奇譚
に仕立て上げた加藤廣のような作家もいるが、中村はあくまでの史書を資
料の基礎としているので、時代小説ではなく歴史小説家というべきなので
ある。
 さて、本書は知られざる逸話の集大成であり、たとえば薩摩のチェスト
剣法の由来とか、尊皇攘夷の発想の起源とか、河井継之助を『バカ家老』
と呼んでいた話とか、見落としがちな奇話の連続で、じつは評者、本書を
片手に機中の人となり、取材先のモルディブの宿で読み出したら、途中で
やめられず、朝の静かな海の光りに気がついたとき、読み終えていた。

 とくに興味を惹くのは幕末に瞬間的に誕生し、短時日裡に消えた藩が四
つあること(鶴田藩、香春藩、岩国藩など)。反対に幕末動乱で消滅した
浜田藩と小倉藩の経緯も詳細に書かれている。

さらに度肝を抜かれるのは『勝ち組の内訌』つまり、内ゲバである。

もとより水戸藩の内訌は天狗の乱となって、悲劇を産んだが、戊辰戦争に
勝ったはずの長州藩は騎兵隊の暴走、腐敗で勝利後も内紛に疲弊した。
 薩摩の悲劇は維新前のお由良騒動が有名だが、じつは戊辰戦争以前にも
激しい内部対立で犠牲者が輩出した。こうした悲劇はそこら中で展開され
ていた。政変とは、血の犠牲を伴い、その恨みは百年消えないだろう。

会津は保科正之を藩祖として、雄藩だったがゆえに蝦夷地警備をやらさ
れ、さらに誰もが引き受けなかった京都守護職の任にあたらざるを得な
かった。

最後の藩主となった松平容保は、その後、悲壮ともいえる悲劇の主人公と
なった。流された斗南藩とは穀物も不作続きの土地で、移封後に餓死した
旧藩士や家族、ボロ家屋に着るものさえなく寒さに震え、この赤貧の中か
ら柴五郎が誕生した。

また海外移住に積極的になったのも、諫言すれば「挙藩流罪」ではなかっ
たのかと別の角度からの光りを宛てている。

会津藩は逆賊ではなかったことは明治中期にすでに証明されていたが、そ
れは孝明天皇の直筆が公開されたからで、のちに東大総長となる山川健次
郎は「白虎隊総長」と渾名されたが、兄が書き残した『京都守護職始末』
を公刊したからだった。
 かくして著者の立場は「明治150年」でなく、「戊辰150年」史観に基づ
いている。

◆米朝山場、日本は官民あげて拉致解決を

櫻井よしこ


「金正恩が話のできる男かどうかは、私は会って1分で判断できる」。ト
ランプ米大統領は記者会見でこう語った後、カナダでの先進7か国首脳会
議を早めに切り上げて、シンガポールに向かった。

この記事が皆さんの目にとまる頃、史上初の米朝首脳会談の結果が吉か凶
か、明らかになっているだろう。

世界最強国の大統領と、世界で最も多くの嘘をついてきた国のひとつ、北
朝鮮の独裁者が合意に達するには、北朝鮮が核・ミサイルの廃棄を確約し
なければならない。許されざる人道問題である拉致を、「被害者全員の帰
国」を大前提として解決しなければならない。

北朝鮮に核・ミサイルを放棄させられなければ、ただでさえ、すでに崩壊
しているといわれる国際社会の核拡散防止条約(NPT)体制は、さらに
悪化し、核保有国が次々にふえる世界になってしまうだろう。また、拉致
を解決できなければ、究極のテロの前で、世界は無力化する。

この二つの問題のいずれも、北朝鮮の3代にわたる政権が元凶である。彼
らは自身の栄華と生き残りのためにあらゆる悪に手を染めてきた。常識も
良識も通じないが、生き残りのための状況分析には、鋭い嗅覚を持つ人々だ。

だからこそ、昨年9月23日、ステルス性が高く、60トンもの爆弾を運べる
B─1B爆撃機2機を米軍が北朝鮮の元山上空に飛行させたとき、そして正
恩氏らが、貧弱な防空態勢ゆえに2機の飛来にまったく気付かなかったと
き、彼は本気で米軍の斬首作戦を恐れ始めた。それ以降、人が変わったよ
うに核やミサイルの実験を控えるようになった。

国民の命や生活よりも自身の命を最も心配する正恩氏に対しては、その弱
点をつけばよい。十分な軍事力と強い意思に基づく戦略を保持して、しか
し、友好的な笑みを忘れずに、初回の会談をこなすのが、一番よい。

日本がすべきこと

この点について6月10日、交詢社の第10回オープンフォーラムの基調講演
で河野太郎外務大臣が語った。

「日本には多くの誤解に基づく解説が溢れています。トランプ政権内にポ
ンペオ国務長官とボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の、対
北朝鮮宥和派と強硬派の対立があるなどと言われていますが、それはあり
ません。米国政府内で基本方針は共有されています。

最大限の圧力という言葉をトランプ大統領が使わなくなったので宥和策に
傾いているとの指摘も間違いです。北朝鮮が核を放棄しない限り、現行の
制裁は緩めない。ただ、交渉のテーブルにつこうとしている今だから、
『最大限の圧力』と言わないだけです」

12日からの米朝首脳会談の行方は、会談前日の段階でも予測困難な面はあ
るにせよ、河野氏の見通しは日本にとって心強い。6月7日に安倍晋三首相
と行った共同記者会見でのトランプ氏の言葉にも期待する。

トランプ氏は「拉致問題は、首相にとって重要なことだと理解している。
首相の望みに沿って、絶対に、絶対に北朝鮮との議題にする」と強調した。

客観的に見て、私たちはいま、拉致の解決に最も近づいている。1977年か
ら78年にかけて、久米裕さん、横田めぐみさん、増元るみ子さんらが次々
に拉致された。それから41年、ご両親や兄弟姉妹、多くの日本人がどれ程
心を焦がしても、被害者を取り戻せなかった。だからこそこの機会を逃し
てはならない。

トランプ大統領との共同記者会見で安倍首相は「北朝鮮と直接向き合い、
話し合いたい。あらゆる手段を尽くしていく決意だ」と「決意」という言
葉を5度、口にした(『産経新聞』6月8日)。

北朝鮮との話し合いに備えて日本がすべきことは多い。まず、日本の世論
を背景にして北朝鮮に迫ることだ。核・ミサイル問題が正しい方向で解決
に向かうとき――このこと自体を確認するのにかなり難しい作業が必要で容
易ではないが、それが担保されたとして――国際社会は北朝鮮への制裁緩和
に向かうだろう。

トランプ氏はすでに、北朝鮮が戦略的に完全非核化の道を選べば、繁栄す
る未来が開ける、北朝鮮には支援が与えられるが、その資金は米国ではな
く、韓国や中国、日本が払うだろうと語っている。米国のみならず、中
国、ロシア、韓国も含めた国際社会は日本に支援せよと迫るだろう。その
とき、しかし私たちは拉致被害者全員を帰さない限り、資金は出さない
と、声をひとつにして主張すべきだ。

これまでの日本の世論、朝日新聞をはじめとするメディア、野党や親北朝
鮮の人々の主張を思い出せば、このような場面になると必ず、彼らは「日
本だけが取り残される」と批判し、だから早く援助の輪の中に入れと言う
であろう。いまでも「圧力と言い続ける安倍政権は蚊帳の外」「北朝鮮に
会ってももらえない」という批判がある。

「全員」帰国を

なんという浅慮であろうか。正恩氏を対話の席に導いたのは、斬首作戦も
あり得ると、正恩氏に認識させた米国の圧力戦略である。その必要性を繰
り返し、トランプ氏に説いたのが安倍晋三首相である。蚊帳の外というよ
り、対北朝鮮戦略の重要な部分を担ってきたのが安倍政権だ。

いま、首相は、「日朝平壌宣言に基づき、不幸な過去を清算して国交を正
常化し、経済協力を行う用意がある」と、北朝鮮に向けて発表している。
2002年9月、小泉純一郎首相(当時)が金正日国防委員長と発表した右の
宣言は、実は「拉致」には直接触れていない。

ただ、第3項に日本国民の生命と安全にかかわる懸案について、北朝鮮側
は、「日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後
再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した」と書いてあ
るだけである。

この部分は拉致被害者を指しているとも解釈できるが、もう拉致はしない
というだけでは不十分で、被害者は全員返してもらわなければならないと
いう世論をこそ盛り上げたい。

だが、「全員」とは何人か。帰国した人々が全員かどうかをどう確認でき
るのかと問う声もある。日本側に「全員」についての明確な情報があるわ
けではないため、このような疑問が生ずるのも自然であろう。しかし、帰
国者全員から聞き取り調査をして、拉致された被害者の情報を収集するこ
とで、「全員」帰国を北朝鮮が誠実に実施したかどうかは検証できる。そ
のことを確認した後、初めて私たちは国交正常化交渉に入れる、それまで
は入らないという国民の意思が、ここでも大事である。

そのうえで、「国交正常化の後」日本の援助は行われるという平壌宣言第
2項を実施していくという道筋を受け入れたい。

こうした点について、揺るがない国民世論をいまから固めておきたいものだ。
『週刊新潮』 2018年6月21日号 日本ルネッサンス 第807回

◆南京大虐殺はなかった

早川昭三(評論家)


南京大虐殺の情報が、中国から伝わって来る。『南京大虐殺は30万人』だったというのが中国の歴史感で、これに基づいて慰霊祭も行われた。
このことが本当に真実なのかという思いが、日本では広がっていることは否めない。

そんな空気が広がりを見せる中で、『南京30万人大虐殺はなかったという厳然たる事実を未来に伝えたい』という映画を作製した脚本・監督の水島総氏の講演と、制作映画の試写会のことを思い出した。

監督の水島総氏が来阪し講演・試写会をしたのは、2008年2月とかなり以前の事になる。当時の大阪八尾市文化会館プリズムホールに1400人収容の会場がほぼ満席の中で、同監督の映画制作意図の講演と、制作の「南京の真実」第一部『七人の死刑囚』の試写会が行われた。
先ず水島監督の講演からはじまった。

<「東京裁判(極東国際軍事裁判)の原点は、でっち上げ「南京大虐殺」の告発から始まったものだ。いい加減な証拠と証人で、7人が死刑に処せられた。

だから歴史のウソを正し、南京大虐殺の真実を後世に伝えるために、史実と1aも違わないリアルシーンを再現し、撮影した」とのべた。

そして「この映画によって、『南京30万人大虐殺』はなかったという厳然たる事実を、未来のこども達に伝えなければならない」と、映画製作意図を強調した。>

「試写会」が始まった。

<映画ストリーは、巣鴨プリズンに収監されていた「東京裁判」の戦争指導者「7人(A級戦犯6名とBC級戦犯1名)の死刑囚」に死刑執行が告知された瞬間から、執行までの24時間をドキュメンタリータッチで描いたものだった。

ドラマは、執行時刻が刻々と切迫する中、一組の寝具と一脚の座り机しかない3畳ほどの独房で居ずまいを正す7人の実像を、際立った表情のクローズや強烈なノイズを折り混ぜながら、新事実セットの中で展開した。

映画の主人公は、死刑判決を受け処刑された松井 石根中支那方面軍司令官兼上海派遣軍司令官、陸軍大将(浜畑賢吉役)。

このでっちあげの「南京大虐殺事件」の告発で、「東京裁判」での死刑判決が出されたと見方にもとづき、主役松井大将の証言を主軸に、「東京裁判」そのものの不当性を暗示する手法で進めていった。

ところで、映画の中で目を見張ったのは、南京陥落の翌日の昭和12年12月14日、「東宝映画撮影隊」が南京現場に踏み入り、その翌15日から正月にかけて南京状況を、実際に撮影した「記録シーン」が映画の中に組み込まれていたことだった。

恐らく、多くの日本人が未だ見たことが少ない「貴重な記録フイルム」だろう。

この中で、まず南京城内で「兵を民に分離」する登録風景が映し出されている。

仮に30万人の大虐殺があったのなら、憎しみのある日本軍に、中国人民間人がにこやかな表情で長蛇の列を作り、穏やかに「登録署名」に応じる筈はあるまい。

第一、日本兵が強姦・殺戮を平気でやる奴らだと思っていたら、憎しみと恐怖心から中国人が進んで集うことも、まず考え難い。

現場と名指される南京では、子供たちが爆竹に笑顔で興じているシーンも記録されていた。もしその風景撮影のために、強制、もしくは偽装演技させたてものだったら、あんなに愉快に飛び跳ねる楽しい仕種をさせることは、親も許さないだろう。

極めつけは、正月前の「餅つき」や「門松飾り」の行事だ。正月とは、日本における厳粛な行事だからだ。この正月の東宝映画撮影隊の記録映画も、まさに「大虐殺」があったといわれる同時期のものだが、そんな雰囲気は南京では微塵も感じさせない。

虐殺があった後、累々と横たわる死骸の近くで、日本軍が平気で正月準備ができるはずもない。

水島総監督は、なぜ「南京大虐殺」が捏造されたかについて、下記の様に主張した。

i)中国共産党政権が繰り返してきた自国民に対する「大虐殺」を隠蔽するため。
i)一党独裁体制の内部矛盾への人民の怒りを日本に転嫁するため。
i)日本に対して常に精神的優位に立つための決定的「歴史カード」設定するため。

上記3理由をあげたのだ。(映画「南京の真実」製作委員会・広報誌)

同監督が、「南京大虐殺」は、絶対に存在しなかったとの明言を思い出す。

このことを世界に知らしめ、日本と日本人の名誉と誇りを守るため、これから第二部「検証編」、第三部「米国編(英語版)」を製作したいとしていると主張された。>

確かに、この映画第一部「7人の死刑囚」試写会を見て、検証された歴史事実に感動し、「南京大虐殺捏造」に怒りを覚えたことを今でも思い出す。

それだけに水島監督が日本の誇りの保持のために挑むこれからの第二部「検証編」の製作に期待しているのだが、残念にも筆者はその第二部を見ていない。

いずれにせよ、当時南京現場で撮影された記録フイルムを組み入れて「南京大虐殺捏造」を制作された同映画には心を動かされた。

中国の「南京大虐殺」歴史感には納得出来ない。要はねつ造で、在り得なかったからだと、この実録映画をみてから、今でもそう思う。
                                              (了)

2018年06月21日

◆オリ首相もおねだりのため北京詣で

宮崎 正弘


平成30年(2018年)6月20日(水曜日)弐 通巻第5728号 

オリ(ネパール)首相もおねだりのため北京詣で。
  インドは3億1700万ドル、ところが北京の対ネパール投資は83億ドル!

ネパールは北の国境をヒマラヤ山脈に阻まれて、中国とは無縁、ながらく
はインドに保護されてきた。換言すれば、インドがネパールの「宗主国」
然として振る舞ってきた。したがってインドの振る舞いに傲慢なところが
あったのは事実だろう。

東西冷戦が終わり、航空機が飛び交い、中国からネパールへの観光客が、
またたくまに西洋人や日本人の訪問客を超えて、いまやカトマンズやポカ
ラの町は中国人団体ツアーに溢れ、日本食レストランにしても、中国人だ
らけである。

中国の狙いは明白で、ネパールと印度の関係を分断することにある。

中国は最初に発電所建設に力を貸した。次ぎに習近平は自らの政治生命を
かけた「一帯一路」プロジェクト(BRI)の一環として、ネパールをも
巻き込み、高速道路と鉄道網の建設を提言し、実際に自動車道はヒマラヤ
を越えるまでの建設が進んだ。

ヒマラヤの中国側にはリゾート歳を開発しており、ホテルや山小屋が建っ
て、かなりの国内ツアーを集めており、またチベットでは首都のラサから
第二の都市シガツェまで、高速鉄道を繋いだ。その早先のヒマラヤにトン
ネルを掘って、カトマンズへ鉄道を繋ぐなどと大生風呂敷を拡げている。

ネパールは立憲君主を廃止して、共和制に移行してからマオイストが勢力
をのばし、現在のカトマンズ政権はマオイストの右派と左派の連立であ
る。オリ首相は明らかに親中派である。そしてオリ首相は今週、北京を訪
問し、習近平と会談する。目的はずばり、おねだりだ。中国が掲げている
BRI関連の投資額は83億ドル、他方のインドは3億1700万ドル。じつ
にインドの26倍だ!
     
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 幕末維新の知られざる裏面史を埋もれていた逸話で活写
  明治150年でなくて、戊辰150年というべきだ

  ♪
中村彰彦『幕末維新改メ』(晶文社)
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日本歴史でスリルに満ちた時代は戦国と幕末維新だろう。最近は古代史も
ブームとなり、さらには観応の擾乱とか、応仁の乱も見直され、本能寺の
変の裏面もずいぶんと研究者が増えた。

しかし幕末維新に限って言えば、広範な資料、それも未発見だった文献を
見つけて、歴史に埋もれてきた人々を甦らせる作業を一貫して書いてきた
作家は中村彰彦をおいてないのではないか。

おもしろ可笑しく書こうとすれば、信長の横死を謀略史観のように奇譚に
仕立て上げた加藤廣のような作家もいるが、中村はあくまでの史書を資料
の基礎としているので、時代小説ではなく歴史小説家というべきなのである。

さて、本書は知られざる逸話の集大成であり、たとえば薩摩のチェスト剣
法の由来とか、尊皇攘夷の発想の起源とか、河井継之助を『バカ家老』と
呼んでいた話とか、見落としがちな奇話の連続で、じつは評者、本書を片
手に機中の人となり、取材先のモルディブの宿で読み出したら、途中でや
められず、朝の静かな海の光りに気がついたとき、読み終えていた。

とくに興味を惹くのは幕末に瞬間的に誕生し、短時日裡に消えた藩が四つ
あること(鶴田藩、香春藩、岩国藩など)。反対に幕末動乱で消滅した浜
田藩と小倉藩の経緯も詳細に書かれている。

さらに度肝を抜かれるのは『勝ち組の内訌』つまり、内ゲバである。

もとより水戸藩の内訌は天狗の乱となって、悲劇を産んだが、戊辰戦争に
勝ったはずの長州藩は騎兵隊の暴走、腐敗で勝利後も内紛に疲弊した。
 薩摩の悲劇は維新前のお由良騒動が有名だが、じつは戊辰戦争以前にも
激しい内部対立で犠牲者が輩出した。こうした悲劇はそこら中で展開され
ていた。政変とは、血の犠牲を伴い、その恨みは百年消えないだろう。

会津は保科正之を藩祖として、雄藩だったがゆえに蝦夷地警備をやらさ
れ、さらに誰もが引き受けなかった京都守護職の任にあたらざるを得な
かった。

最後の藩主となった松平容保は、その後、悲壮ともいえる悲劇の主人公と
なった。流された斗南藩とは穀物も不作続きの土地で、移封後に餓死した
旧藩士や家族、ボロ家屋に着るものさえなく寒さに震え、この赤貧の中か
ら柴五郎が誕生した。

また海外移住に積極的になったのも、諫言すれば「挙藩流罪」ではなかっ
たのかと別の角度からの光りを宛てている。

会津藩は逆賊ではなかったことは明治中期にすでに証明されていたが、そ
れは孝明天皇の直筆が公開されたからで、のちに東大総長となる山川健次
郎は「白虎隊総長」と渾名されたが、兄が書き残した『京都守護職始末』
を公刊したからだった。

かくして著者の立場は「明治150年」でなく、「戊辰150年」史観に基づい
ている。

◆三叉神経痛に有効な治療法!

中村一仁( 脳神経外科 医師)

「三叉神経痛」に対する治療方法は、内服、神経ブロック、ガンマナイフ、MVD(microvascular decompression: 微小血管減圧術)と、多岐にわたる。
 
患者は痛い治療は好まないので、近年の治療手段としては低侵襲性と有効性からガンマナイフ治療を選択することも多くなってきた。

本論のガンマナイフ治療とは、コバルト線を用いた放射線治療で非常に高い精度で目的とする病変に照射することが可能な装置である。

さて本題。「三叉神経痛」というと聞きなれないかも知れないが、簡単に言うと、顔面が痛くなる病気である。一般には「顔面神経痛」という単語が誤用されていることがある。顔が痛くなるので「顔面神経痛」という表現はわかりやすい。

ところが、顔面の感覚は三叉神経と呼ばれる第5脳神経に支配されていることもあり、正しくは「三叉神経痛」というわけである。因みに顔面神経は、第7脳神経で顔面の筋肉を動かす運動神経の働きを担っている。

三叉神経痛の原因の多くは、頭蓋骨の中の三叉神経に脳血管が接触・圧迫し刺激となることで痛みが発生するとされている。
 
<対象・方法>
さて、1999年11月から2003年10月の4年間に、当センターで治療を行った三叉神経痛31例のうち、経過を追跡した29例についての検討を行った。ガンマナイフ施行1年後の有効率は69%(20/29例)であり、31%(9/29例)が無効であった。

そこで、このガンマナイフ治療により、治癒しなかった「三叉神経痛9例」の特徴について検討した。

<結果>
ガンマナイフ治療が無効であった「三叉神経痛9例」のうち4例で、MVD(微小血管減圧術)による手術治療が施行された。4例全例で三叉神経痛は消失軽快した。

ガンマナイフ治療無効例の術中所見は、クモ膜の肥厚や周囲組織の癒着などは認めず、通常通りMVDが施行可能であった。

ガンマナイフ治療が無効であった9例について、平均年齢65.7歳(46-79歳)、男性5例、女性4例。平均罹病期間8.7年(1.5-20年)、患側は右側5例、左側4例だった。

全例MRI画像にて圧迫血管を確認した。上小脳動脈(superior cerebellar artery:SCA)による圧迫病変は通常の割合より少なく、静脈や椎骨動脈による圧迫が4例と多かった。

ガンマナイフ治療が有効であった症例との比較では性別、年齢、罹病期間、病変の左右、圧迫部位に統計学的な有意差は認めなかったが、圧迫血管についてはガンマナイフ治療無効例で有意に上小脳動脈によるものが少なかった(χ2検定,P<0.05)。

<考察>
一般に三叉神経痛は脳血管が三叉神経に接触・圧迫することで生じるとされている。その圧迫血管として最も頻度が高いとされているのであるが、今回の検討ではSCAによる圧迫が少なく、ガンマナイフ治療無効例に特徴的な所見であると考えられた。

わが国で三叉神経痛に対する治療としては、抗てんかん薬であるカルバマゼピンの内服、ガンマナイフ、MVDといった選択枝を選ぶことが多い。MVDによる三叉神経痛治療は脳神経外科医Janettaの手術手技の確立により、安全に行なわれるようになった。

しかし、高齢化および低侵襲手術への期待から、近年ではガンマナイフ治療の有効性が多く報告されるようになってきている。

当センターでの経験では、三叉神経痛に対するガンマナイフ治療の1年後の有効率は69%であり、過去の報告と大差はなかった。ガンマナイフ治療後の再発例に対して検討した報告は散見されるものの、その再発・無効の機序は明らかではなく、ガンマナイフ治療後の再発例についての検討が必要である。

三叉神経痛の発症機序は、血管による圧迫と三叉神経根の部分的な脱髄により起こると考えられており、MVDにて減圧することでその症状は軽快する。

一方、ガンマナイフによる治療では、放射線照射に伴い三叉神経全体の機能低下が起こり疼痛制御されると推察されている。

このようにMVDとガンマナイフではその治療機序が異なるため、それぞれの利点を生かすべく、再発・無効例の検討を行い、治療適応を確立していく必要がある。

過去の報告ではガンマナイフ治療後の三叉神経痛に対してMVDを施行した6症例についてクモ膜肥厚や明らかな三叉神経の変化を認めず、ガンマナイフ治療後のMVDは安全に問題なく施行できるとしており、当センターでMVDを施行した2症例も同様の所見であった。

一方で、ガンマナイフ治療施行による血管傷害の例も報告されているが、再発との関連はないように思われる。

ガンマナイフ治療施行後の再発についての検討では、年齢、性別、罹病期間、以前の治療、三叉神経感覚障害の有無、照射線量、照射部位は再発と相関しなかったとの報告がある。

今回の検討では再発に関与する因子として、解剖学的な特徴に着目した。ガンマナイフ治療無効例では上小脳動脈による圧迫病変は通常の分布より有意に少なく、一般に頻度が低いとされている椎骨動脈やMVD後に再発し易いとされる静脈による圧迫が多かった。

このことはガンマナイフ治療無効例における何らかの解剖学的な特徴を示唆する。ガンマナイフ治療では画像上、三叉神経の同定の困難な症例や神経軸の歪みの大きい症例において正確にターゲットに照射することが困難な場合もあり、より広範囲に放射線照射を行うことも考慮されている。

前述の条件が揃うものにガンマナイフ治療の無効例は多いのかもしれないが、推論の域を出ない.この仮説が成り立つならば、MVDは直接的に血管を神経より減圧し、周囲のクモ膜を切開することで神経軸の歪みを修正することができるため、このような症例に対して有効な治療であるといえよう。

しかし、圧迫部位と再発に関連性なしとする報告や、MVD後再発再手術例の約50%で責任血管などの所見なしという報告、MVD無効後のガンマナイフ治療有効例が存在することも事実であり、解剖学的因子のみが治療方法の優劣を決定する要素とはならないのかもしれない。

また、初回のガンマナイフ治療で治癒しなかった三叉神経痛に対して、再度ガンマナイフによる治療を行なうことで症状が改善するとの報告もあるが、長期的な結果はなく、今後の検討課題のひとつである。

今回の研究ではガンマナイフ治療無効例にSCA(上小脳動脈)による圧迫が少なかったという解剖学的な点に着目したが、現時点では臨床的に三叉神経痛に対する治療としてのガンマナイフ治療とMVDは相補的な関係であるべきであり、今後さらに有効例、無効例を詳細に検討することで、各治療の術前評価においてその有効性が証明されることを期待したい。

<まとめ>
ガンマナイフ治療無効例に対して施行したMVDにて、4例中4例で三叉神経痛は消失軽快した。

ガンマナイフ治療無効例9例では静脈や椎骨動脈による圧迫を多く認め、ガンマナイフ治療有効例と比較して有意にSCAによる圧迫が少なかった。今後、ガンマナイフ治療無効例の特徴およびMVDの有用性について検討する必要があると考えられた。(完)