2018年08月03日

◆蔡英文・台湾総統が南米訪問時、アメリカに立ち寄り

                                   宮崎 正弘


平成30年(2018年)8月1日(水曜日)通巻第5775号   

 蔡英文・台湾総統が南米訪問時、アメリカに立ち寄り
  嘗てなかったトランプ政権高官との会談が実現か?

北京が猛烈に吠えている。

「台湾の指導者(中華民国総統のこと)が南米訪問の途次にロスとヒュー
ストンに立ち寄りを認めるな」。

8月、蔡英文(台湾総統)は南米のベリーズとパラグアイを訪問する。
現在、台湾と外交関係にある国は18ヶ国に減少しており、パナマ、コスタ
リカなどが、中国のカネに転んで台湾との外交関係を断ち切った。
残る国々は台湾にとって重要である。

しかし、南米訪問より、行きと帰りに蔡英文はロスとヒューストンに立ち
寄る。

この間の詳細なスケジュールが公表されていない。前回はヒューストン
で、親台湾派の議員や知事、市長と面談した。テキサス州選出のテッド・
クルーズ上院議員(2016」年大統領選挙で3位)らとの面会も実現した。

トランプ大統領はおそらく滞在中に電話会談を行うと予想されるほか、高
官(国務長官クラス)あたりがヒューストンでの会談を実現させると観測
されている。

すでにトランプ政権は「台湾旅行法」を成立させ、署名を済ませており、
両国首脳はお互いに訪問できることになった。また台北の事実上の米国大
使館は規模も拡大させており、海兵隊が警備している。

ただし、蔡英文の人気が台湾で急落しており、11月25日に予定されている
地方選挙(六大市長選を含む)で民進党が現状維持できるか、新党の「時
代力量」が躍進すると、国民党が漁夫の利を得ることになり、行方が注目
されている。
      
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 なぜ信長暗殺に黒幕がいたことになるのか
  明智光秀への過小評価と勘違いが錯綜すると奇説、珍説が生まれやすい

  ♪
安部龍太郎『信長はなぜ葬られたのか』(幻冬舎新書)
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現在の歴史論壇でもっとも進んでいるのは信長研究である。しかも新しい
書き手が次々と現れる。

従来の明智評価は「主殺し」の「謀反人」だった。

秀吉が広めたもので、こうやって明智を悪役にしておけば、秀吉の権力簒
奪というダークサイドの本質が回避できるからだ。

だが、江戸時代に明智評価は、かなり正しく行われていた形跡があり、頼
山陽の詩碑などを読み解くと、明智悪役説が定着していなかったことが読
み取れる。幕末にパワー全開となる国粋主義的史観は後醍醐天皇正統説と
なって、再び明智への評価は軌道から外れた。近代では野望説などで、高
柳光寿と桑田忠親説が入り乱れた。

それが現代となると、キリスト教をグローバルに捉え直すという奇妙な論
壇の流行現象が生まれ、この文脈の中で「本能寺の変」が、盛んに論じら
れるのだが、きまってでてくるのが明智光秀を背後で操った黒幕がいたと
する『陰謀論』だ。

本能寺の変は、精密に言えば軍事クーデタである。

だが、光秀への過小評価が長い歳月のなかで、澱のように堆積していたた
め、過小評価がなされてしまった。

光秀の力量を無視し、かならずや黒幕がいたに違いないということになる
のだ。

代表的な黒幕説は、足利、この延長線から毛利説までが飛び出す。明智の
親戚だった長曽我部が黒幕だった珍説も語られた。

黒幕が朝廷だったという説は公家と絡んで出てくる。そして変後に最も得
をしたのが秀吉だからと後智恵によっての、秀吉は最初から仕掛け人だと
いう説、はては家康説まで飛び出した。

新しいところでは土岐源氏復興を狙ったという根拠の薄い説。そのうえ、
突拍子もないのが切支丹バテレン説となる。

さて長谷川等伯を鮮烈に描いた歴史作家の安部龍太郎が信長暗殺の黒幕に
挑むのだから、きっと詳細な時代考証と論理的帰結があるに違いないと、
期待して読んだら、おやまぁ、奇説と珍説を微妙にこね合わせたネオ新説
となって、朝廷とキリスタンバテレン大名との共闘、ないしは連携説が組
み立てられている。

安部が信長暗殺の黒幕を、世界史の中で捉え直す姿勢には賛成である。
 日本の歴史家がおうおうにして欠落させた視点である。ときは大航海時
代、ポルトガルが真っ先に種子島に漂着して鉄砲を伝えた。当時、ポルト
ガルとスペインが世界分割支配を仕分けしたが、日本は明確に区別されて
おらず、未踏の場所であった。

イエズス会が布教を開始するや麻疹のように西日本に拡大した。やがて京
にも及び、信長は、この一神教のドグマなどはどうでも良く、鉄砲と火薬
のディールに引かれ、布教を許可した。

また往時、もっとも先鋭的に信長と軍事対決をしていたのが比叡山、石山
本願寺など仏教の既成勢力だから、キリスト教の信者が増えれば、仏教の
影響を弱めるために、何かのカードに使えると信長が踏んだに過ぎない。
 近年の新説の夥しい登場理由は、フロイスらの本国への報告が、日本語
に全訳されて以来である。

 しかし、宣教師らの報告が当てにならないのは、布教活動でいかに成績
をあげたかを誇大に表現し、成功を見せかけるために大袈裟に、しかも虚
偽の報告が常套手段としてなされていたことである。したがって第一級史
料として扱うにはよほどの配慮が必要である。

 しかしながら本書で論理の展開は詭弁的な組み立てが目立ち、そもそも
キリスト教団への過大評価、そこから派生して戦国大名のキリスト教への
帰依も、大袈裟な評価になって高山右近、黒田官兵衛、伊達政宗の評価が
膨張的に過大となる。

朝廷との橋渡しは近衛前久であり、かれは細川藤孝と親しく、むろん明智
と近く、京での影響力は絶大だった。信長はこの近衛前久とくっついたり
離れたり、関係は輻湊しているが、惠林寺野焼き以後、明瞭に距離を置い
た。そして陰謀家の才能が発揮されるという筋立ては、概ね正しいだろう。

公家の多くは近衛の動きを知っていたし、山科言継も吉田兼見も、日誌を
のちに改竄し、都合の悪い箇所を書き換えた。関与を疑われるのを避ける
ため自己保身を図ったのだ。これらも事実である。

しかし公家、朝廷黒幕説が根本的に間違いなのは、あまりにも明智を過小
評価している結果から起きている。

当時、明智光秀は信長軍団にあって最強の武将であり知謀の人であり、か
つ文化人でもあった、

つまり信長を脅かす最大最強のライバルであったという客観的事実をス
ルーした黒幕説を、しかも、キリシトン大名への異常な過大評価がこの陰
謀説に付け加えられると、やはり、まともな評価は出来ないということで
ある。
詳しくは稿を改める。
               

◆虐待死なくすために全件情報共有を

櫻井よしこ


東京都目黒区で5歳の船戸結愛ちゃんが両親から虐待を受けて死亡したの
は3月2日だった。結愛ちゃんは1月23日に、父親の船戸雄大容疑者(33
歳)と母親の優里容疑者(25歳)に連れられ、香川県善通寺市から目黒区
に転居した。

それからひと月と1週間、結愛ちゃんは、「もうおねがい ゆるして ゆ
るしてください おねがいします」と書き残して死亡した。

安倍晋三首相は7月20日の関係閣僚会議で「幼い命が奪われる痛ましい出
来事を繰り返してはならない。やれることはすべてやるという強い決意で
取り組んでほしい」と指示し、政府は児童虐待防止に向けて緊急対策を打
ち出した。その柱が来年度から4年かけて児童福祉司の数を約2000人増や
し、全国で5000人強まで、児童相談所(児相)の体制を強化することだ。

これはこれで歓迎すべきことだが、肝心のことができていない。実は私は
7月6日の「言論テレビ」で、政府の決断を前にして特別番組「私たちは結
愛ちゃんの命を救える国になる」を放送した。集った論客は作家の門田隆
将氏、「NPO法人シンクキッズ─子ども虐待・性犯罪をなくす会」代表
理事の後藤啓二氏らである。議論のキーワードは「全件情報共有」だった。

児童虐待情報は、基本的に各地の児童相談所や警察に寄せられる。児童相
談所と警察が、虐待が疑われるすべての事案について、互いの情報を共有
するのが全件情報共有だ。

幼い子供の命を守るのは社会と国全体の責任だという考え方に基づいて、
このような制度は他の先進国では当然、整えられている。だが、日本では
警察と児相(厚生労働省の指針にそって運営)がタテ割り構造から脱け出
せず情報共有ができていない。一般論だが、警察から児相への情報提供が
比較的行われている一方で、その逆は殆んどなされていない。

主治医の警告

門田氏が厳しく指摘した。

「児相と警察はその成り立ちからして組織の特質、DNAが違います。児
相の人はこの番組を見て怒るかもしれないけれど、児相にとって(結愛
ちゃん事件は)普通のことです。警察は命を守る組織です。結愛ちゃんの
命を守ろうとする遺伝子を持っているのが警察です。児相は親子関係、或
いは家庭の在り方を修復するという遺伝子を持つ組織です。だから自分た
ちの手元の情報を警察に通告して、子供の命を守ろうという発想が元々な
いのです」

こんなことを言われれば、門田氏も断ったように児相の人たちは立腹する
だろう。しかし、言論テレビの番組から1週間後、新しい情報がもたらさ
れた。結愛ちゃんがまだ香川県にいたとき、虐待された結愛ちゃんを診察
した主治医が傷の状態に強い危機感を抱き、転居先の児相に電話をかけて
いたのだ。

結愛ちゃんは香川県の児相に2度保護された。診察をした主治医は「虐待
以外では考えにくい命に関わる傷を確認」し、香川県の児相にも、転居後
には品川児相にも連絡したのである。「日本経済新聞」の7月16日付朝刊
によると、品川児相がこの医師から連絡を受けたのは、後述する2月20日
の入学説明会の直後だった。

ここは時系列で見ることが大事である。先述のように結愛ちゃんは1月23
日に目黒区に転居した。29日に香川県の児相は品川児相に口頭で結愛ちゃ
んの状況を説明した。2月9日には、品川児相が結愛ちゃんの様子を見に家
庭訪問したが、母親が結愛ちゃんは不在だと言い張り、児相はそのまま引
き下がった。

そして20日、結愛ちゃんは小学校の入学説明会に欠席し、母親だけが出席
した。私はこの件について4月に品川児相所長に就任したという林直樹氏
に尋ねた。氏はこう答えた。「結愛ちゃんが欠席したことは、私どもも関
係機関から情報を入手して知っていました」。

香川県の主治医が心配して、品川児相に結愛ちゃんの状況を説明したのは
その直後だったわけだ。事情を最もよく知り得るこの主治医の警告に、児
童を守るという視点で危機感は抱かなかったのかと問うと、林氏は「回答
できない」と答えた。だが、2月9日の家庭訪問の目的はまず新しく引っ越
してきた両親と支援関係を打ち立てるためで、必ずしも結愛ちゃんの状況
をチェックすることが最優先ではなかったとも語った。門田氏の「遺伝
子」論そのものだ。

4月に所長に就任した氏に、それ以前の件について尋ねるのは酷かもしれ
ない。ただ事実関係を見れば品川児相は主治医の電話を「あくまでも『情
報提供』として受け止めたため、具体的な対応につながらなかった」(前
出「日経新聞」)。そして10日後に結愛ちゃんは死亡したのである。

政府が児相の人員を新たに2000人増やす計画について尋ねると、林氏は人
員増加によって「子供の置かれている家庭状況を評価し、何をなすべきか
判断する力などを身につけ各々の専門性を高めていくことができる」と評
価した。

「完全な敗北」

実はこの点は、言論テレビで大いに議論された論点のひとつだった。門田
氏が強い調子で語ったものだ。

「児相は自分たちの専門性を高める、そのために要員増には大賛成と言う
でしょう。組織の権限も拡大します。しかし、それでは対応できないとこ
ろまで日本社会はきています。警察と手を携えなければ子供の命は守れな
いでしょう」

児相の物理的能力を見ても子供の命を彼らに任せておくのは不安である。
児童福祉司は全国で現在3000人強。品川児相の場合、児童相談員は、林氏
によると25人だ。同児相がカバーするのは品川区(39万人)、目黒区(28
万人)、大田区(73万人)で約140万人。25人でどうやって見守れるの
か。後藤氏が指摘した。

「隠れているケースも含めれば毎日一人の子供が虐待死させられていま
す。この苛酷な現実の前で児相の専門性もなにもないでしょう。完全な敗
北です。警察は全国に30万人、交番のお巡りさんは10万人です。彼らに、
子供さんは元気ですかと声をかけてもらうだけで事情はかわります」

だが、庶民の情報を警察に渡すのは人権侵害だと論難する声もある。そこ
はすべての情報を渡すわけではない。すでに高知県や愛知県では全件情報
共有がうまくいっている。埼玉県も8月1日から全件共有に踏み切る。上田
清司知事が語った。

「児相と警察が情報を全件共有し、きちんと情報を守っていけるソフトを
作りました。菅官房長官は、地方自治体でやれるところからやってほしい
と言っています。政府も本来、早く省庁の壁を破りたいのです」

人権の極致は命を守ることだ。安倍首相はやれることはすべてやれと指示
済みだ。一日も早く、厚労省の厚い壁を破り、全件情報共有への道を開い
てほしい。
『週刊新潮』 2018年8月2日号 日本ルネッサンス 第813回

◆加齢疾病連発に悩まされた夏

石岡 荘十


今日書こう、明日こそはと思いながら、胸や背中を孫の手で掻くのに忙し
くて今日に至ってしまった。何の話か。すでに畏友毛馬一三氏が本誌で報
告しているように帯状疱疹“事件”の経緯についてである。

夏は、典型的な加齢疾病といわれる病につぎつぎと襲われ、悪戦苦闘した
3ヶ月だった。この間、私を襲ったのは帯状疱疹。発症から3ヶ月、やっと
終息にこぎつけたと思ったら今度は、加齢黄班変性といわれる眼球の疾病
である。これについては今なお加療の真っ只中であり、別稿で報告したい。

帯状疱疹の兆しが現れたのは6月の末のことだった。「夏バテ」というの
は夏だけの症状だと思われがちだが、気候の変化が激しい梅雨時や初夏に
も起こりやすい。

気温の乱高下に老体がついていけず、何もする気がしない。全身がともか
くけだるい。にもかかわらず梅雨明けの7月、以前からの約束もあって、
猛暑の中、秩父盆地のど真ん中にあるゴルフ場に出陣。疲労困憊、這うよ
うにして帰宅した。完全に体力を消耗していた。これが祟った。

思い返すと、その数日前すでに左胸の皮膚に違和感があり肋骨のあたりに
ピリピリ感があった。間もなく胸から左肩甲骨下にかけて赤い斑点がぽつ
ぽつ。ゴルフの後から左側の神経に沿って激痛が走るようになった。

にもかかわらず、まだ帯状疱疹とは気がつかず、市販のかゆみ止め軟膏
(レスタミン)を塗ったり、サロンパスの湿布を患部に張ったりして凌ご
うと試みていた。無知は恐ろしい。

そうこうしているうちに、赤い斑点は水ぶくれとなり、夜はベッドの上で
転々。背中を孫の手で掻きまくったものだから水ぶくれが破れ、かさぶた
へと変わったがかゆみと痛みは治まらなかった。

遂にたまらず、行きつけの病院の皮膚科に駆け込んだのはゴルフから3週
間を過ぎていた。

「帯状疱疹です。ずいぶん我慢強い方ですねぇ。もうかさぶたになり始め
ていますから、ペインクリニックに行きなさい」という。

帯状疱疹は、幼児に経験した水ぼうそうのウイルスが原因だ。ウイルスは
長い間体内の神経節に潜んでいて、加齢(50歳代〜70歳代)やストレス、
過労などが引き金となってウイルスに対する免疫力が低下すると、潜んで
いたウイルスが再び活動を始める。ウイルスは神経を伝わって皮膚に達
し、帯状疱疹として発症するとされている。

東京女子医大の統計によると、発疹する部位は、一番多いのが私のケー
ス。上肢〜胸背部(31.2%)、次いで腹背部(19.6%)、そして怖いのは
頭部〜顔面(17.6%)などとなっており、高校の友人が右顔面に発症。何
年か前のことだが、今でも顔面の筋肉がこわばっている。

最悪、失明をしたケースも報告されている。頚部〜上肢にも発症する。い
ずれの場合も体の左右どちらか一方に現れるのが特徴だ。

発症してすぐ気づき、すぐ適切な治療を受けた場合でも3週間は皮膚の痛
みや痒みが続く。痛みがやや治まってからも神経の痛みは容易に治まらな
い。数年間、痛みが消えなかったと言う症例もある厄介な加齢疾病である。

まして、私のケースは、初期治療のタイミングを逸した。その祟りで、い
まだにときどき、肋間や背中にピリピリと痛みが走る。

さて治療法である。皮膚科では坑ヘルペスウイルス薬を処方する。ウイル
スの増殖を抑える飲み薬で初期の痛みや痒みを抑える効果があるが、私は
そのチャンスを逃し、我慢強く無為に苦しんだ。

ペインクリニックでは、飲み薬と塗り薬を処方される。

【飲み薬】、

・鎮痛剤リリカプセル:今年4月、保健が適用されることとなった帯状疱
疹の最新特効薬だ。

・セレコックス:リリカカプセルが効かない場合に飲む頓服錠剤。炎症に
よる腫れや痛みを和らげる。
・メチコバール:末梢神経のしびれ、麻痺、痛みを改善する。

【塗り薬】、

・強力レスタミンコーチゾンコーワ(軟膏)

ペインクリニックでの治療5週間。月初旬にくすりの処方が終わった。発
症から3ヶ月の闘病であった。この間体力をつけようと金に糸目をつけず
美食に走った結果、太ってしまった。

初動がこの病気治療の決め手である。



2018年08月02日

◆竹下派が“分裂総裁選”へ

                                  杉原 正章


“ラスプーチン”も暗躍

自らの将来を思うと暗然とした気分にならざるを得ないのが元幹事長・石
破茂だろう。依然として自民党総裁、すなわち首相への道は見えてこない
と言わざるを得ないからだ。ジタバタすればするほど、先が見えなくなる
のが石破の置かれた立場のように見える。

それにもかかわらず参院竹下派が、たった21人とはいえ石破支持に動くの
も解せない。どうも暑さで政治家も、意識が朦朧として判断力が鈍ってい
るかのようだ。

竹下派は保守本流を行く名門派閥だ。遠く吉田派に端を発し、佐藤→田中→
竹下→小渕→橋本→津島→額賀→竹下派と続いてきたが、常に時の政権の基盤
となる動きが目立ったものだ。

ところがここにきて9月の総裁選で参院側が各派のトップを切って総裁選
への態度を決定、石破を推す流れとなった。参院竹下派は31日、幹部8人
が会合、石破支持の方向を確認したのだ。「反旗」をかかげたが、一方
で、竹下派の衆院議員は、経済再生担当相茂木敏充らをはじめ首相支持派
が8割以上に上る見込み。同派は分裂投票となる。

派閥会長竹下亘は、板挟み状態となった。判断力が試されている。総裁選
の大勢は、事実上細田、麻生、岸田、二階の4派の支持を取り付けている
安倍の圧倒的優位は変わらない。

新聞はすぐにこうした動きを「森友・加計を抱える安倍への国民の不信
感」に結びつけたがるが、森友・加計は1年半たっても何も政権直撃の疑
惑など生ぜず、朝日と野党の結託が生じさせた虚構にすぎない。

加えてこの参院竹下派の動きの背景には政局と言えば顔を出す怪僧ラス
プーチンの暗躍がある。政界引退後も竹下派に影響を持つ元参院議員会
長・青木幹雄だ。

今回の青木の“仕掛け”は極めて個人的な原因に根ざしているようだ。鳥取
出身の石破が、前回の参院選における「鳥取・島根」合区選挙区で青木の
長男、一彦の再選に尽力したことへの“返礼” の意味があるといわれてい
るのだ。

引退後も“参院のドン” は健在ということになる。竹下派の参院議員らも
「石破を支持して安倍に圧力をかける」と威勢は良いが、この選択は得る
ものが少ないことを分かっていない。

というのも大きな政局の流れは安倍の3選が確実であり、安倍政権はあと
3年継続する。安倍の後は岸田が本命であり、岸田政権は6年は続くだろ
う。当然安倍の後を石破も目指そうとするだろうが、安倍支持グループの
大勢が石破を推すことはまずあり得ない。岸田を推す者が多いだろう。

そうなれば、石破派と支持グループは、かれこれ10年冷や飯を食らうこと
になりかねないのだ。10年の冷や飯ということは、政治家にとっては夢も
希望も失せるのであり、致命傷だ。従って石橋支持の選択肢はいずれ潰れ
るのが落ちだ。

青木も「真夏の夜の夢」を見るのは自由だが、議席を失ってまで政局に口
を出すのは「年寄りの冷や水」と心得た方がよい。

こうした中で幹事長二階俊博が31日、ソウルで「安倍総理への絶対的支
持を表明する。国民が真のリーダーシップを託せるのは安倍総理をおいて
他にない」と支持を表明。

衆参で総裁選対応が割れる可能性が出てきた竹下派についても、「私らの
グループはこっちが安倍さんを支持し、そっちが誰かを支持するとか、そ
んな器用なことはやらせたことはない。そんなのは派閥とは言えない」と
酷評した。確かに総裁の選択という重要局面で衆参の判断が異なるとは、
派閥の体をなしていない。名門竹下派も凋落したものだ。

こうした中で派閥間の動きも活発化しはじめており、31日夜には岸田、石
破、前経済再生相・石原伸晃、元防衛相・中谷元が会合。石破が岸田に
「私が立候補の際はよろしく」と支援を要請するなど、水銀柱の上昇と比
例するかのように生臭さが一段と強まってきた。


◆アフリカ諸国へ合計88億ドル

宮崎 正弘


平成30年(2018年)7月31日(火曜日)通巻第5774号   

 習近平歴訪で、アフリカ諸国へ合計88億ドルの貸し付け。
  「借金の罠」に落ちるゾとケニヤ、ジブチは警告を発するのだが。。

習近平は10日間のアフリカ歴訪を終えて北京へ戻った。

最初の訪問は中東のUAE(アラブ首長国連邦)で、ドバイ、アブダビへの
インフラ建設プロジェクトの案件をまとめた。

アフリカ最初の訪問国はセネガル。マッキー・ソール大統領と会談し、道
路ならび港湾建設での投資が発表された。具体的な地域や金額は不明。

次にルワンダへ移動し、かのツツ族とフツ族の大虐殺から24年、荒廃した
国土の再建のため、中国はインフラ建設に協力を約束し、15の協定に署
名、とくに2つのハイウェイ建設に1億2600万ドルの貸し付けが約束された。
 
ヨハネスブルグでは、トラブルに巻き込まれている「エスコム発電」プロ
ジェクトに、25億ドルの貸し付けが約束された。これは中国開発銀行の前
回の貸し付けに対する不払いに、追加融資でのプロジェクト継続が目的と
された。

この案件に加えて将来的に合計147億ドルの投資を南アに注入することが
発表され、中国は今後も南アからの輸入を増やすとした。

同時にBRICS会議が併行して行われ、インド、ロシア、ブラジルなら
びに南アへのプロジェクトも話し合った。プーチン大統領も、この
BRICS会議出席のため、ヨハネスブルグ入りしていた。

最後の訪問国はモーリシャスで、これで習近平のアフリカ歴訪は終わった。

2017年までに中国がアフリカ全体になしたローンは合計88億ドルに及
び、借金の罠に落ちたケニヤやジブチからは警告が発せられた。
      
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 日本は真の独立国家を目指すべきことに目覚めよ
  何をもって反撃を躊躇っているのか、日本国民よ

  ♪
ヘンリー・S・ストークス、藤田裕行編訳『日本大逆転』(ハート出版)
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おりしも7月29日は通州事件から81年にあたった。

「通州事件アーカイブ」(代表=藤岡信勝、事務局長=三浦小太郎)は、
昨年に引き続き、靖国神社で犠牲者の冥福を祈る慰霊祭を行った。祭文は
藤岡信勝教授が読み上げた。参列者はおよ100名。台風一過の猛暑日だった。

その控え室で、不思議なことに評者(宮崎)は、この本の下記のページを読
んでいたのである。

「日本の教科書に『南京事件』が登場するようになったのは、1982年の教
科書誤報事件のあとになってからだった。つまり、80年代になって初め
て、『南京事件』が教育現場で問題となり始めたのだった。(中略) 自由
社の教科書は、通州事件について次のように記述している。

『北京東方の通州には親日政権がつくられていたが、7月29日、日本の駐
屯軍不在の間に、その政権の中国人部隊は、日本人居住区を襲い、日本人
居留者385人のうち、子供や女性を含む223人が虐殺された』」(172p)

そしてこう続ける。

「その目を蔽うばかりの惨状は、典型的な中国人による陵辱、惨殺の遣り
方だった。53年前の1884年に、朝鮮半島で金玉均が甲申政変を起こしたと
きも清国軍に日本人居留民と30余名の婦女子が陵辱、虐殺された。その遣
り方はそっくりだった。日本軍将兵も、そうして手口はよく知っていた
が、通州事件の残虐非道は衝撃だった」

当時の新聞は、この事件を大きく報じた。

日本国民からは憤怒の声がわき起こった。しかし日本政府はひたすら平和
的解決を望んだため「満州事変以降の日本の中国権益をすべて白紙に戻す
という、最大限の譲歩だった」のである。

以後もなお中国共産党の挑発がつづき、上海事変を誘発せられ、いってみ
れば中国の謀略によって、日本は泥沼にはまり込んでいくのだった。

こうして日本の立場をよく理解しての近代史見直しが、元ニューヨークタ
イムズ東京支局長だったヘンリー・ストークス氏の筆で、ただしい史観に
修正されてゆくのである。

在京の外交筋に衝撃を運び続けるストークス氏の新作である。
           

◆缶詰はナポレオン命令

渡部 亮次郎


1795年フランス革命の最中に,ナポレオンはヨーロッパ戦線を東奔西走し
ていた。当時のヨーロッパは新鮮な食物が不足し,一般市民に栄養不良に
よる病気が流行していた。

その時代の食品の保存法は昔ながらの乾燥,塩蔵および薫製によってなさ
れていたが,長い航海をする船員は塩蔵肉や乾パンで我慢しなければなら
なかったため,海軍部内には壊血病が蔓延していた。

ナポレオンは軍隊の士気を高め戦闘力を維持するためには,栄養豊富で新
鮮美味な食糧を大量に供給する必要性を痛感し,従来の方法によらない食
品貯蔵法を懸賞金つきで募集することを政府に命じた。

懸賞にこたえ、1804年にフランスのニコラ・アペールにより長期保存可能
な瓶詰めが発明され賞金1万2000フランを与えられた。

たが、ガラス瓶は重くて破損しやすいという欠点があった事から、1810年
にイギリスのピーター・デュランド(Peter Durand)が、金属製容器に食品
を入れる缶詰を発明した。これにより、食品を長期間保存・携行すること
が容易になった。

ただし、初期のものは殺菌の方法に問題があり、たびたび中身が発酵して
缶が破裂するという事故を起こした。これはのちに改良された。

また、1833年にはフランスのアンシルベールによって、缶のふたの回りを
はんだ付けし、熱で溶かして缶を開ける方式が考案された。その後、1860
年代にブリキが発明されてからは、缶切りが登場するようになった。

当初、缶切りは発明されず、開封は金鎚と鑿を用いる非常に手間のかかる
ものだった。戦場では缶を銃で撃って開けることもあったが、撃たれた衝
撃で中身が飛び散ってしまい使い物にならなくなることも多々あったという。

このため内容物が固形物に限られ、液状のドリンク類は入れられなかっ
た。缶切りが発明されると液体なども入れられるようになり、内容物のバ
リエーションが広がった。さらに缶切りが無くても開けられる様にプル
トップ(イージーオープン缶)が発明された。

缶詰は、初期には主に軍用食として活用された。特に、アメリカ合衆国の
南北戦争で多く利用された。のちに一般向けにも製造されるようになり、
現在では、災害対策用の備蓄用食品(非常食)としても利用されている。

現在作られている缶詰は日本で約800種類,世界では約1200種類といわれ
ている。原料の種類別では魚介類,果実類,野菜類,畜肉類に大別される。

加工調理方法の別では魚介類は水煮・塩水漬・油漬・味付け・みそ煮・蒲焼き・
薫製油漬・トマト漬・香辛料漬・その他の調味料漬が,果実類はシロップ漬・
水煮(固形詰)・ジャム・ゼリーなどがある。

果実類として大きな地位を占めるのは果汁である。野菜類としては料理の
原材料となる水煮が主体であるが,味付け,漬物などもある。畜肉類は水
煮,味付け,ハム,ベーコン,ソーセージや各種の調理食品がある。

特殊に入るものとしては,各種の調理食品,米飯類,ソース,めん類のか
け汁,しるこ,甘酒などの飲物などがある。食品缶詰の規定には当てはま
らないが,コーヒー,紅茶,緑茶の真空パックや不活性ガス(おもに窒素
ガス)を充てんし,香りや味を保持させるための缶詰もある。

ペット用のペットフード缶詰の生産も多い。そのほか食品ではないが培養
土に種子を入れ,開缶後水をやれば花の咲く缶詰,おもちゃの缶詰,下着
類の缶詰も作られている。

1812年にイギリスのドンキンにより缶詰製造は企業化されたが,その後イ
ギリス,アメリカなどで企業化が進んだ。1890年には自動製缶機械に一大
進歩をみたことにより,1901年に容器のみを作るアメリカン・キャン社が
設立され,缶詰製造業界に一紀元を画した。

製造量は南北戦争後の1870年で約4000万函といわれているが,第1次・第2
次世界大戦の軍用食としての需要の増大により,缶詰産業も各種の技術革
新とともに発展をとげた。

国別の生産量では,1970年ころまではアメリカが全世界の70〜75%を占め
ていたが,80年には世界の総生産量(約20億函)の40%を占めるだけとなった。

またイギリスが主要生産国から脱落し,発展途上国の進出が目だってきて
いる。この主な理由としては,作業員の人件費の高騰,原料確保の困難
(漁業の200カイリ問題など)などがあげられる。なお,アメリカに次ぐ生
産国はドイツ,フランス,イタリア,日本などの先進諸国である。

資料:世界大百科事典及び『ウィキペディア』 2008・10・05



◆摩訶不思議な米露首脳会談

櫻井よしこ


敵味方逆転の摩訶不思議な米露首脳会談 トランプ氏の非難はいつか必ず
日本にも

7月16日、フィンランド・ヘルシンキでの米露首脳会談はおよそ万人の予
想を超えた。米CNNのクーパー・アンダーソン記者は「自分が報じてき
たこれまでの如何なる首脳会談に較べても、米国と米国民にとって恥ずか
しい内容だった」と伝えた。CNNはトランプ政権に必要以上に厳しい
が、今回は、「米国人ならそう感ずるだろう」と、共鳴できた。

首脳会談の前、米国の複数のメディアは、トランプ米大統領が単独でプー
チン露大統領と会談することへの懸念を報じていた。どのような言質をと
られるやもしれない、単独会談は回避する、もしくはできるだけ短くすべ
きだという指摘だった。


他方、ホワイトハウスはトランプ氏に、プーチン氏には強く厳しい姿勢で
対処するように、その方が「トランプ氏自身の見映えがよくなる」と説得
していたと、米「ウォールストリート・ジャーナル」紙が伝えている。

ジョン・ボルトン米大統領補佐官らは、トランプ氏に米露関係の分析や各
議題での攻め方などを詳細に説明したはずだ。KGB(旧ソ連国家保安委
員会)出身のプーチン氏に関する客観的分析や米露関係の戦略的解釈より
も、「トランプ氏自身が格好よく見える」という、トランプ氏のエゴに訴
える論法で説得しようとした事実は、身近な側近でさえもトランプ氏の知
的水準をその程度に見ていたということなのだろうか。

結局、首脳同士のサシの会談は2時間も続き、公式の議事録もない。加え
て全体会合が2時間、計4時間の会談を受けてトランプ・プーチン両首脳が
会見した。

トランプ氏がへりくだり、プーチン氏が自信の微笑をうかべた同会見は、
味方が敵になり、敵が味方になる摩訶不思議な歴史の大逆転をまざまざと
見せた。トランプ氏を掌中におさめたとでも言うかのような余裕を感じさ
せたプーチン氏が、トランプ氏の為に記者団の質問に答えた場面さえあっ
た。クリミア半島問題である。

トランプ氏はロシアのクリミア半島の強奪についてさしたる反対論は唱え
ていない。それどころか、クリミア在住ロシア人の多さ故に、同地はロシ
ア領だとの見方を示したことさえある。

プーチン氏はしかし、トランプ氏をかばうようにこう語った。

「トランプ大統領は、クリミア併合は違法だという主張を維持している。
ロシアの考えは別だが」と。

ロシアによる米大統領選挙介入疑惑で米AP通信が、トランプ氏に米国の
情報機関とプーチン氏の、「どちらを信ずるのか」と質した。トランプ氏
はまともに答えなかったが、プーチン氏はこう語った。

「私は情報機関の一員だった。(偽の)資料がどのように作成されるかも
知っている。おまけにわがロシアは民主主義国だ」

米情報機関が偽の資料を作成したとも、「米国同様の民主主義国」である
ロシアが、他国の米大統領選挙に介入することなどあり得ないという主張
ともとれる。噴飯物である。だがトランプ氏はプーチン氏の隣で頷いていた。

トランプ氏は70年近く同盟関係にあるNATO(北大西洋条約機構)諸国
を酷い言葉で非難した一方で、いまや理念も体制も異なるプーチン氏のロ
シアと、核や中東問題などを共に解決できるという構えだ。

長年ロシアを共通の敵として団結してきたNATOの大国、ドイツは軍事
支出がGDPの1.25%にとどまるとしてメルケル首相がトランプ氏に面罵
された。日本はドイツ同様敗戦国として、戦後を経済中心で生きてきた。

日本はドイツよりも尚、米国頼りだ。ドイツよりも国防費のGDP比率は
小さく、憲法改正もできていない。トランプ氏の非難はいつか必ず、ドイ
ツ同様日本に向かってくるだろう。

『週刊ダイヤモンド』 2018年7月28日号

◆今月の法律コラム


「民法改正」

                               川原 敏明


民法の債権分野が大改正される――!! 数年前から、お聞きにな
ったことのある人も多いのではないでしょうか。平成29年5月2
6日、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)が成
立しました(同年6月2日公布)。今回の改正は、一部の規定を除
き、平成32年(2020年)4月1日から施行されます。

せっかくの機会ですので、二つご紹介しましょう。

<1 買った物に欠陥等があった場合、何ができる?>

従来の法律上は、@損害賠償、A契約解除しか認められていません
でした。改正法では、B修補等の履行の追完、A代金減額といった
方法を請求することもできるようになります。

<2 保証が厳しくなります>

主債務者は、事業のために負担する債務を主債務とする保証を委託
するときは、保証人となる者に、@財産及び収支の状況、A主債務
以外に負担している債務の有無、並びにその額及び履行状況、B主
債務の担保とされるものがあるときはその旨及びその内容、という
情報を提供しなければいけません。情報提供義務を履行しないと、
場合によっては保証契約を取り消されてしまいます。

今回の改正では、もっと沢山の法律内容が変わります。

「改正法の施行が2年も先だから心配ない」? 本当にそうでしょ
うか。皆さんの周りの契約書式等、見直さなければならないものが
ないか、ご注意くださいね。

2018年08月01日

◆「独中蜜月」に明白な転機

宮崎 正弘


平成30年(2018年)7月30日(月曜日)通巻第5773号   

 「独中蜜月」に明白な転機
  メルケル政権、中国の独ハイテク企業買収を却下へ

嘗て中国がドイツのロボット製造企業「クーカ社」を買収したとき、ドイ
ツ財界では反対も少なく、というより国を挙げて中国フィーバーに浮かれ
ていた。メルケルは14回も北京に通い続けた。

ドイツ・メディアの中国礼賛も目がまわるほど、反比例して日本の報道に
関しては中国と同様な歪んだ記事を書き続けた。

フォルクスワーゲンは200万台から300万台を中国で製造し、販売してい
る。そのフォルクスワーゲンに融資しているのは中国の国有銀行である。
 またドイツ銀行最大の株主が中国のファンド、そのドイツ銀行が経営危
機に陥り、さらにフォルクスワーゲンも不正データ問題でピンチに立たさ
れた。フォルクスワーゲンにとっても、ドイツ銀行にとっても、中国は死
活的なパートナーとなった。

実際に中国の富裕層は、近年、ベンツ、BMWを所有することをスティタ
ス・シンボルとしており、中国企業が買収したスェーデンのVOLVO
は、いまひとつ人気がない。車をよく分かっている中国人はトヨタのレク
サスだ。

 
ともかく「独中蜜月」関係と言われた時代は、大きな転換期を迎えたよう
である。

独の精密機械メーカー「ライフェルト・メタル・スピニング」に対して中
国の「煙台市台海集団」が買収の動きを見せている。

この事態に、ドイツ政府は「国家安全保障上、脅威となる」として許可し
ない方針を固め、最終的にはメルケル首相が近日中に判断を下す。同社は
宇宙ロケットのハイテク技術に卓越しているとされる。

◆摩訶不思議な米露首脳会談

櫻井よしこ


敵味方逆転の摩訶不思議な米露首脳会談 トランプ氏の非難はいつか必ず
日本にも

7月16日、フィンランド・ヘルシンキでの米露首脳会談はおよそ万人の予
想を超えた。米CNNのクーパー・アンダーソン記者は「自分が報じてき
たこれまでの如何なる首脳会談に較べても、米国と米国民にとって恥ずか
しい内容だった」と伝えた。CNNはトランプ政権に必要以上に厳しい
が、今回は、「米国人ならそう感ずるだろう」と、共鳴できた。

首脳会談の前、米国の複数のメディアは、トランプ米大統領が単独でプー
チン露大統領と会談することへの懸念を報じていた。どのような言質をと
られるやもしれない、単独会談は回避する、もしくはできるだけ短くすべ
きだという指摘だった。

他方、ホワイトハウスはトランプ氏に、プーチン氏には強く厳しい姿勢で
対処するように、その方が「トランプ氏自身の見映えがよくなる」と説得
していたと、米「ウォールストリート・ジャーナル」紙が伝えている。

ジョン・ボルトン米大統領補佐官らは、トランプ氏に米露関係の分析や各
議題での攻め方などを詳細に説明したはずだ。KGB(旧ソ連国家保安委
員会)出身のプーチン氏に関する客観的分析や米露関係の戦略的解釈より
も、「トランプ氏自身が格好よく見える」という、トランプ氏のエゴに訴
える論法で説得しようとした事実は、身近な側近でさえもトランプ氏の知
的水準をその程度に見ていたということなのだろうか。

結局、首脳同士のサシの会談は2時間も続き、公式の議事録もない。加え
て全体会合が2時間、計4時間の会談を受けてトランプ・プーチン両首脳が
会見した。

トランプ氏がへりくだり、プーチン氏が自信の微笑をうかべた同会見は、
味方が敵になり、敵が味方になる摩訶不思議な歴史の大逆転をまざまざと
見せた。トランプ氏を掌中におさめたとでも言うかのような余裕を感じさ
せたプーチン氏が、トランプ氏の為に記者団の質問に答えた場面さえあっ
た。クリミア半島問題である。

トランプ氏はロシアのクリミア半島の強奪についてさしたる反対論は唱え
ていない。それどころか、クリミア在住ロシア人の多さ故に、同地はロシ
ア領だとの見方を示したことさえある。

プーチン氏はしかし、トランプ氏をかばうようにこう語った。

「トランプ大統領は、クリミア併合は違法だという主張を維持している。
ロシアの考えは別だが」と。

ロシアによる米大統領選挙介入疑惑で米AP通信が、トランプ氏に米国の
情報機関とプーチン氏の、「どちらを信ずるのか」と質した。トランプ氏
はまともに答えなかったが、プーチン氏はこう語った。

「私は情報機関の一員だった。(偽の)資料がどのように作成されるかも
知っている。おまけにわがロシアは民主主義国だ」

米情報機関が偽の資料を作成したとも、「米国同様の民主主義国」である
ロシアが、他国の米大統領選挙に介入することなどあり得ないという主張
ともとれる。噴飯物である。だがトランプ氏はプーチン氏の隣で頷いていた。

トランプ氏は70年近く同盟関係にあるNATO(北大西洋条約機構)諸国
を酷い言葉で非難した一方で、いまや理念も体制も異なるプーチン氏のロ
シアと、核や中東問題などを共に解決できるという構えだ。

長年ロシアを共通の敵として団結してきたNATOの大国、ドイツは軍事
支出がGDPの1.25%にとどまるとしてメルケル首相がトランプ氏に面罵
された。日本はドイツ同様敗戦国として、戦後を経済中心で生きてきた。

日本はドイツよりも尚、米国頼りだ。ドイツよりも国防費のGDP比率は
小さく、憲法改正もできていない。トランプ氏の非難はいつか必ず、ドイ
ツ同様日本に向かってくるだろう。

『週刊ダイヤモンド』 2018年7月28日号
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