2018年08月29日

◆山科だより 「日清都CC」

渡邊好造


本誌で『古稀でホ-ルインワン』の記事を拝見した。筆者はほぼ同年齢なのに、それとは正反対に、 22年間入会していたゴルフ場に昨年12月退会届けを提出した。一昨年痛めた右足首が思うように完治せず、あと2〜3年はプレ-するつもりが諦めざるをえなくなった。

京都市山科区には、東山連峰中腹・川田梅ヶ谷町に「太閤坦CC(たいこうだいらカントリ-クラブ=東山コ-ス・9ホ-ル)」があり、いずれは、と思いながらプレ-しないままとなった。

このほど退会したのは、JR山科駅そして山科の拙宅、いずれからも車なら20〜30分の京都府宇治市「日清都CC(にっしんみやこカントリ-クラブ=27ホ-ル)」で、親会社はチキンラ-メンで有名な”日清食品”、昭和41年(1966年)に開業した。玄関と食堂からの山科の展望は絶景である。

当クラブは トリッキ-で、広々としたコ-スに慣れた関東のプレ-ヤ-には嫌われる面もあったが、ハンデ6のかっての会社同僚に言わせると、「こんな面白いコ-スは関東にはない。飛ばせばいいだけでなく頭を使わせるという意味では最高のコ-スだ」とのこと。

しかし誰が何と言おうと、筆者にとって近くて便利なだけでなくこんな面白いゴルフ場はないと思ってプレ-してきたし、小学校以来の友人のホ-ルインワンに遭遇し、記念品を頂戴したこともある思い出一杯のコースである。

ここでは、日清食品広告取引関係者(関西のテレビ局、ラジオ局、新聞社、広告代理店などの本社、支社の社員)との親善大コンペが開催され、初期の頃のこの大会で成績の悪かったあるテレビ局の社員が入浴中に「こんな安物のひどいゴルフ場はない!」などと大声で悪口を言った。

そのとき共に浴室にいたのが近年亡くなった親会社の安藤百福・会長で、気付かれないままその場は黙って聞いていたという。そんなことがあった所為ばかりでないだろうが、会長は一念発起、その後クラブ・ハウスは建替えられ、フェアウエ-を広げたりして改修に改修を重ね、今では伸び伸びとプレ-できる関西屈指のゴルフ場となった。

後日談だが、悪口社員のテレビ局には1年間広告発注がストップされ、他社から耳打ちされるまで理由が分らず、うろたえたという。この話は面白おかしく大袈裟に伝えられていて、話半分にするべしは勿論だが、”トイレと風呂場での噂話、とくに悪口ご法度”の見本のような話といえる。

下手なりに永年楽しみ、親しんだ『ゴルフプレ-』をギブアップせざるをえなかったのは残念でならない。

しかし、頭、内臓、指先はなんとか健在だから、これまでどうり「飲酒(種類を問わずコップでグイッ)」、「河川釣り(危険な海釣りは断念、"小型船舶操縦免許2級"は返上予定)」、「昆虫標本の作成(山科疎水道を中心にして採集)」を続けるが、さらにもうひとつの楽しみは本誌『"百家争鳴"への投稿プレ-』である。(完)

<追記>―筆者の退会届け日に茨木高原CCでAクラス入りしたと連絡してきた友人が、1月31日に、なんと『ホールインワンをやってしまった』と言ってきた。

驚きと羨ましさのいりまじった複雑な心境。おかげでこれをネタに仲間内で一杯飲む機会が増えた。(渡邊)

2018年08月28日

◆米中貿易戦争、第二幕が開演

宮崎 正弘


平成30年(2018年)8月24日(金曜日)弐 通巻第5806号 

米中貿易戦争、第二幕が開演。秋の第三幕で合計2500億ドル分に制裁関税
 商業レベルで見れば「狂気の沙汰」だが、長期戦略の原点に立ち帰って
みると。。。

なぜ商人の発想しか出来ないのか、日本のメディアの論調を読んでつくづ
く思った。

7月6日に発動されたトランプ政権の対中制裁関税の第一幕は160億ド
ル。(前史として鉄鋼とアルミへの25」%関税があった)。8月23日の第
二幕は340億ドル分、合計500億ドルの中国からの輸入品に対して25%の
関税をかける。中国はただちに応戦し、同額の関税を報復課税で応じた。

9月以降に予想される第三幕では2000億ドルの中国からの輸入物品に対し
て、知財侵害への制裁を名目に高関税をかける準備作業に入っている。

日本経済新聞(8月24日)の一面トップは「供給網に亀裂、経済の影」と
あって、「米の対中制裁 狙い裏目――半導体の六割『逆輸入』」の見出し
が躍った。

 ¥曰く。「グローバル企業が築いたサプライチェーンにヒビが入り、世
界の自由貿易体制は大きく揺らぐ」

「実は中国企業を狙い撃ちにしているようで、大きな被害を受けるのは米
企業だ」。

トランプの唱えるアメリカ・ファーストは、反グローバリズムであること
をすっかり忘れたような分析である。

トランプ大統領はロイターとのインタビュー(8月20日)に答え、「中国
との貿易戦争は無期限であり、事務レベルの協議には何も期待していな
い」と冷淡に突き放している。事実、8月23日に終了した事務レベルの米
中討議は何の成果もあがらなかった。

ただし第三幕の2000億ドル分への高関税適用は、消費者物資、食品など、
アメリカの有権者の台所を直撃する品目が対象になるため、さすがのトラ
ンプ政権も中間選挙を前に、公聴会を開くなどして、慎重な姿勢である。
 
それにしても、日本のメディアの分析は、トランプの長期的戦略には思考
が及ばず、一方的、かつ商業主義的レベルである。

第一に米中貿易戦争はお互いに裨益せず、経済的損失に繋がるとそろばん
勘定しか頭にないが、米国は賃金の安さの魅力に引かれて中国へ進出して
米国企業に、早く中国での生産をやめて、米国に戻ることが解決方法であ
ると示唆しているのである。

つまりトランプのアメリカ・ファーストは、「中国進出企業よ、帰ってこ
い」という強いナショナリズムの呼びかけであり、長期戦になることは必
定である。日本はこの期に及んでもトヨタと日産は3割増の設備投資に踏
み切る。勇気を持って中国から撤退を決めたのはスズキだけだ。


 ▲、「中国進出のアメリカ企業よ、帰ってこい」

第二にサプライチェーンに支障が出てきたから、需給の構造が軋むと日本
のメディアが批判している。

トランプの狙いは、サプライチェーンを改編し、中国中心の構造を壊し
て、新しいサプライチェーンの構築にある。

アジア諸国は「中国基軸」のサプライチェーンに見事にビルトインされ
ており、この構造と無縁な存在はインドしかない。だからインドは高度成
長を続けているが、ビルトインされた国々は中国経済の失速の影響をもろ
に被って失速する。ベトナム、韓国、台湾がその典型である。

この生産、物流、販売の「チャイナ・サプライチェーン」を改編し、分散
を目的としているのが米国であり、この戦略行使こそが、中国がもっとも
怖れることだ。このままで事態が推移すれば習近平の唱える「中国製造
2025」は達成不可能となるだろう。

具体的に半導体産業を俯瞰すれば、その構造がよくよく理解できる。
ハイテク製品に適用される半導体、集積回路、世界に「三大メーカー」が
ある。嘗てITチップの時代は日本が世界一だった。いまは米国のインテ
ル、韓国のサムソン、そして台湾のTSMC(台湾積体電路製造=張忠謀
が創設)である。中国はこれらから集積回路を輸入しなければスマホなど
を製造できない。

中国はなんとしても欲しい技術であるがゆえに、東芝メモリィを買収しか
けた。台湾の鵬海精密工業はシャープを買収したが、これは液晶が主なビ
ジネスである。

さてインテルは言うに及ばず、韓国サムソンは米国が育てた。1980年代の
日米貿易摩擦で、アメリカは「ヤングレポート」を出したが、このときの
米国戦略は次世代技術を日本の頭越しに韓国に製造基地をもうけ、日本の
競争力を弱体化させることだった。
 
一方、台湾のTSMCは、富士通からの技術提供、技術提携をうけてめき
めきと急膨張し、当時注目されたエーサーも買収して巨大企業にのし上
がった。

このTSMC創設者の張忠謀(英語名モリス・チャン)は浙江省寧波生ま
れの外省人であり、マサチューセッツ工科大学に学び、TI(テキサスイ
ンスツルメント)で腕を磨いて創業した。鵬海の郭台銘と同様に外省人で
あり、中国に郷愁を持つ。


 ▲「中国製造2015」を潰すまでトランプは戦い続ける様子だ

第三に米中貿易戦争は、年内には終わりそうな気配がないが、米中高官会
談に希望を見出す論調が目立つ。

しかしトランプ側近の布陣をみよ。あたかもルーズベルト政権が、モーゲ
ンソー、ハル、ホワイト、ヒスといった対日強硬派で固められ、日本がい
かように和平を模索しても日米開戦は鉄壁の基本原則だったように、トラ
ンプ政権の対中タカ派はポンペオ国務長官、ジョン・ボルトン大統領補佐
官、ピーター・ナバロ通商産業政策局長、ライトハイザーUSTR代表、
クドロー国家経済委員会委員長となって、対中妥協派のムニューチン財務
長官の影は薄く、全員が貿易戦争貫徹組しかいないではないか。

ヘゲモニーを賭けた戦いを挑んだトランプ大統領は、異形ではなく、当た
り前のアメリカ人の原則に回帰した大統領であり、ジョンウエインを尊敬
し、レーガンを仰ぎ見る。むしろオバマの8年間こそ、米国政治史におい
て、異質で異形の大統領だったのである。

◆中国マネーが席巻する征服と略奪の網

櫻井よしこ


「中国マネーが席巻する征服と略奪の網 日本は負の流れ変える歴史的使
命がある 」

中国で異変が起きている。7月26日、北京の米大使館付近で爆発事件が発
生、中国当局は内蒙古自治区出身の26歳の男を拘束した。情報筋は、少数
民族に対する苛酷な監視の網をくぐってモンゴル系の青年が爆弾を所持し
て北京中心部の米大使館に近づくなど、あり得ないと強調する。

「産経新聞」の藤本欣也記者が7月17日に北京発で報じたのは、(1)7月
第2週、屋内外の習近平中国国家主席の写真やポスターの即刻撤去を命じ
る警察文書がインターネットで拡散した、(2)中国政府系のシンクタン
ク「社会科学院」で習氏の思想及び実績を研究するプロジェクトが中止さ
れた、(3)党機関紙「人民日報」一面から習氏の名前が消え始めたとい
う内容だった。

いずれも権力闘争の明確な兆候と見てよい変化である。

中国の報道では常に鋭い視点を見せる産経の矢板明夫記者も7月18日の紙
面で以下の点を報じた。(1)7月初め、江沢民、胡錦濤、朱鎔基、温家
宝らを含む党長老が連名で党中央に経済・外交政策の見直しを求める書簡
を出した、(2)長老たちは、党内にはいま個人崇拝や左派的急進主義な
どの問題がある、早急に改めよと要請した、(3)習氏の政治路線と距離
を置く李克強首相の存在感がにわかに高まった。

(2)の「個人崇拝」や「左派的急進主義」などの表現は、独裁者、毛沢
東の時代に逆戻りするかのような習氏を念頭に置いた警告であろう。長老
群の習氏に対する強い不満が読みとれる。

8月1日の産経で、中国河北省の北戴河から西見由章記者が報じた。北戴河
は毎夏、中国共産党の指導部や長老が一堂に会し、2週間ほどかけて人事
や重要政策を議論する場として知られる。会議に備えて、渤海に面した北
戴河一帯は数キロにわたって交通が遮断され厳重な警備体制が敷かれる
が、街中で見掛ける看板には、ごく一部を除いて習氏の名前がないという
のだ。

最も顕著なのが、「新時代の中国の特色ある社会主義思想の偉大な勝利を
勝ち取ろう」という大スローガンを書いた看板である。これは昨年10月の
第19回共産党大会で華々しく打ち上げた習氏の思想である。当然、「習近
平による」という枕言葉がつかなければならない。にも拘わらず、沿道沿
いの看板には習氏の名前はないのである。

また、街のどこにも習氏の肖像画や写真が1点もないそうだ。習氏の個人
独裁体制が批判されているのは明らかといえる。

北戴河で長老たちはどんな人事を要求するのか。学生時代の級友たちを重
要閣僚や側近につける習氏の「縁故政治」にストップをかけるのか、憲法
改正まで断行して、習氏は自らの終身主席制度への路線を敷いたが、それ
を阻止するのか。そこまでの力が長老たちにあるのかは不明だが、中国が
尋常ならざる混乱に陥る可能性もある。

習氏の強権政治が牽制されるにしても、警戒すべきは国際社会に対する中
国支配の網が、彼らの言う一帯一路構想の下で着々と進んでいることだ。
一帯一路構想で620億ドル(約6兆8200億円)という最大規模の融資を受け
たパキスタンは、そのプロジェクトのおよそ全てで債務の罠にはまりつつ
ある。

過大借り入れで返済不能に陥るのはもはや避けられないだろう。7月の選
挙で誕生した新政府が、いつ世界銀行などに緊急援助を求めるかが注目さ
れる中で、中国の債務の罠に捕捉された国々はスリランカのように、港や
ダム、重要インフラ、広大な国土を99年間などの長期間、中国に奪われて
しまいかねない。

中国がどうなろうと、中国マネーによる征服と略奪の網は広がっている。
この負の流れを米欧諸国と共に変えていくのが日本の歴史的使命である。
奮起し、世界の秩序構築に貢献する責任を政治には自覚してほしい。

『週刊ダイヤモンド』2018年8月11・18日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1243 

◆加齢疾病連発に悩まされた夏

石岡 荘十


今日書こう、明日こそはと思いながら、胸や背中を孫の手で掻くのに忙し
くて今日に至ってしまった。何の話か。すでに畏友毛馬一三氏が本誌で報
告しているように帯状疱疹“事件”の経緯についてである。

夏は、典型的な加齢疾病といわれる病につぎつぎと襲われ、悪戦苦闘した
3ヶ月だった。この間、私を襲ったのは帯状疱疹。発症から3ヶ月、やっと
終息にこぎつけたと思ったら今度は、加齢黄班変性といわれる眼球の疾病
である。これについては今なお加療の真っ只中であり、別稿で報告したい。

帯状疱疹の兆しが現れたのは6月の末のことだった。「夏バテ」というの
は夏だけの症状だと思われがちだが、気候の変化が激しい梅雨時や初夏に
も起こりやすい。

気温の乱高下に老体がついていけず、何もする気がしない。全身がともか
くけだるい。にもかかわらず梅雨明けの7月、以前からの約束もあって、
猛暑の中、秩父盆地のど真ん中にあるゴルフ場に出陣。疲労困憊、這うよ
うにして帰宅した。完全に体力を消耗していた。これが祟った。

思い返すと、その数日前すでに左胸の皮膚に違和感があり肋骨のあたりに
ピリピリ感があった。間もなく胸から左肩甲骨下にかけて赤い斑点がぽつ
ぽつ。ゴルフの後から左側の神経に沿って激痛が走るようになった。

にもかかわらず、まだ帯状疱疹とは気がつかず、市販のかゆみ止め軟膏
(レスタミン)を塗ったり、サロンパスの湿布を患部に張ったりして凌ご
うと試みていた。無知は恐ろしい。

そうこうしているうちに、赤い斑点は水ぶくれとなり、夜はベッドの上で
転々。背中を孫の手で掻きまくったものだから水ぶくれが破れ、かさぶた
へと変わったがかゆみと痛みは治まらなかった。

遂にたまらず、行きつけの病院の皮膚科に駆け込んだのはゴルフから3週
間を過ぎていた。

「帯状疱疹です。ずいぶん我慢強い方ですねぇ。もうかさぶたになり始め
ていますから、ペインクリニックに行きなさい」という。

帯状疱疹は、幼児に経験した水ぼうそうのウイルスが原因だ。ウイルスは
長い間体内の神経節に潜んでいて、加齢(50歳代〜70歳代)やストレス、
過労などが引き金となってウイルスに対する免疫力が低下すると、潜んで
いたウイルスが再び活動を始める。ウイルスは神経を伝わって皮膚に達
し、帯状疱疹として発症するとされている。

東京女子医大の統計によると、発疹する部位は、一番多いのが私のケー
ス。上肢〜胸背部(31.2%)、次いで腹背部(19.6%)、そして怖いのは
頭部〜顔面(17.6%)などとなっており、高校の友人が右顔面に発症。何
年か前のことだが、今でも顔面の筋肉がこわばっている。

最悪、失明をしたケースも報告されている。頚部〜上肢にも発症する。い
ずれの場合も体の左右どちらか一方に現れるのが特徴だ。

発症してすぐ気づき、すぐ適切な治療を受けた場合でも3週間は皮膚の痛
みや痒みが続く。痛みがやや治まってからも神経の痛みは容易に治まらな
い。数年間、痛みが消えなかったと言う症例もある厄介な加齢疾病である。

まして、私のケースは、初期治療のタイミングを逸した。その祟りで、い
まだにときどき、肋間や背中にピリピリと痛みが走る。

さて治療法である。皮膚科では坑ヘルペスウイルス薬を処方する。ウイル
スの増殖を抑える飲み薬で初期の痛みや痒みを抑える効果があるが、私は
そのチャンスを逃し、我慢強く無為に苦しんだ。

ペインクリニックでは、飲み薬と塗り薬を処方される。

【飲み薬】、

・鎮痛剤リリカプセル:今年4月、保健が適用されることとなった帯状疱
疹の最新特効薬だ。

・セレコックス:リリカカプセルが効かない場合に飲む頓服錠剤。炎症に
よる腫れや痛みを和らげる。
・メチコバール:末梢神経のしびれ、麻痺、痛みを改善する。

【塗り薬】、

・強力レスタミンコーチゾンコーワ(軟膏)

ペインクリニックでの治療5週間。月初旬にくすりの処方が終わった。発
症から3ヶ月の闘病であった。この間体力をつけようと金に糸目をつけず
美食に走った結果、太ってしまった。

毛馬一三氏が先日レポートしたとおりで、初動がこの病気治療の決め手で
ある。他山の石とされたい。



2018年08月27日

◆石破立候補は“消化試合”か

杉浦 正章


3年後には「岸田の壁」

「我が胸の燃ゆる思ひにくらぶれば煙はうすし桜島山」ー首相・安倍晋三
の桜島を背景にした出馬表明を聞いて、筑前(現在の福岡県)の勤王志
士・平野国臣が詠んだの短歌を思い起こした。

安倍が意図したかどうかは別として、薩長同盟が明治維新という歴史の舞
台を回転させたことを意識するかのように、激動期の難関に立ち向かう政
治姿勢を鮮明にさせたのだ。日々水銀柱の高止まりに連動するかのように
安倍批判を繰り返している石破茂に対して頂門の一針を打ち込んだ形でも
ある。今後9月20日の総裁選に向けてボルテージは高まる一方となった。
 
安倍の26日の演説は、総じて「格調」を重視したかのようであった。堰を
切ったように「まさに日本は大きな歴史の転換点を迎える。今こそ日本の
あすを切り開く時だ。平成のその先の時代に向けて、新たな国造りを進め
ていく。その先頭に立つ決意だ」と3選への決意を鮮明にさせた。その背
景には自民党国会議員の大勢と、地方票の多くが安倍に向かうとの自信が
あるようだ。

既に固まっている議員票は自派の細田派(94)を筆頭に麻生派(59)、岸
田派(48)二階派(44)衆院竹下派(34)をほぼ確保。さらに73人いる無
派閥へと浸食しつつある。

今回は議員票405票、地方票405票合計810票の争奪戦だ。前回12年の総裁
選では石破に地方票で大差を付けられたことから、安倍は夏休み返上で地
方行脚を続けている。しかし地方票が前回のような石破支持に回るかと言
えば、そうではあるまい。

地方票は議員票に連動する傾向が強いからだ。前回石破に地方票が流れた
のは安倍が首相になる前であったからだ。現職の総理総裁は、油断しなけ
れば地方票の出方を大きく左右させるだろう。総裁選後足を引っ張られな
いためにも最低でも半分以上は取る必要がある。

これに対して石破は自派20と反安倍に動く元参院議員会長・青木幹雄の支
援を得て参院竹下派の大勢の支持を得つつある。しかし、議員票は不満分
子を含めてもせいぜい50票弱を獲得するする方向にとどまるものとみられ
る。石破は愛知県での講演で「自由闊達(かったつ)に議論する自民党を
取り戻さなければいけない」と首相の党運営を批判した。

この石破の置かれた立場を分析すれば将来的な展望がなかなか開けないこ
とに尽きる。なぜならポスト安倍の本命は岸田と受け止めるのが党内常識
であるからだ。岸田が今回の総裁選に立候補しなかったのは3年待てば安
倍支持グループの支持を得られるという計算がある。

従って今後安倍が3年、岸田が2期6年やった場合、10年近く石破政権は
実現しないことになる。立ちはだかる「岸田の壁」は今後ことあるごとに
石破を悩ますだろう。石破派幹部は佐藤3選阻止に立候補した三木武夫
が、田中角栄の後政権についた例を指摘するが、田中の場合はロッキード
疑惑に巻き込まれて短期政権にとどまったのであり、慎重な岸田が高転び
に転ぶ可能性は少ない。


いずれにしても、今回の総裁選は野球で優勝チームが確定してから行う
“消化試合”のような色彩が濃厚である。なぜなら例えば石破が地方票の半
分を確保しても安倍が票の過801半数を確保する流れに変化は生じないか
らだ。石破が得をしていることと言えば、軽佻浮薄な民放テレビ番組が、
まともな対立候補として取り上げ、面白おかしくはやし立てることしかない。

世論調査で石破支持が安倍を上回るケースがある理由は、民放番組にあ
る。安倍陣営は気にする必要はない。石破はなんとかしてテレビ討論を実
現したいようだが、軽々に応ずる必要はない。石破を実体以上に大きく見
せてしまう。やるなら両者が日本記者クラブと会見して、それをテレビが
中継すれば良い。

◆残念な石破茂氏の現状

阿比留瑠偉

 自民党総裁選をめぐり、異なものを見た。21日のテレビ朝日番組で、
ジャーナリストの青木理氏が産経新聞の20日付朝刊記事「首相『石破封
じ』牽制(けんせい)球次々」について「ある種異様な記事だ」と述べる
と、出演していた石破茂元幹事長がこう同調したのである。

 「今の指摘の新聞がそうだが、メディアと権力は一定の距離を置いてい
たはずだ。代弁人ではなかった」

 まるで産経が権力の代弁人だと言わんばかりだが、いったい何の根拠が
あってどの部分がそうだというのか甚だ疑問だった。

 当該記事は、総裁選に関する当事者たちの生々しい発言を複数の記者が
取材してまとめたインサイドストーリーである。現在の自民党内の空気と
実情を、具体的なエピソードを通して描いたものが、どう「異様」だと言
うのだろうか。

確かに、石破氏にとってはあまり歓迎できない内容だったかもしれな
い。とはいえ、事実を書かれたら新聞社を「代弁人」扱いするというの
は、石破氏のこれまでの主張と矛盾する。

石破氏は総裁選に向け7月に出版した新著『政策至上主義』で、わざわ
ざ「マスコミのせいにしない」という見出しを立ててこう記しているでは
ないか。

「『マスコミが悪い』と言いたくなる気持ちは本当によくわかります
し、マスコミ自身が批判されるべき場合には、きっぱりとした抗議や申し
入れも必要だと思います。しかし、私は経験から、それだけでは理解が広
がらないとも思っています」

不都合な真実を指摘されて報道のせいにするようでは、鼎(かなえ)の
軽重が問われる。

現に、最近の石破氏の言動をめぐっては、党内にも疑問の声が多い。今
回、石破氏支持の立場を取る竹下派(平成研究会)の参院側をたばねる吉
田博美氏も、21日の記者会見で石破氏の安倍晋三首相批判をこう強く牽
制した。

「相手への個人的なことでの攻撃は非常に嫌悪感がある」

また、総裁選での投票先を明らかにしていない竹下派の中堅衆院議員も
首をかしげていた。

「石破さんの出馬記者会見をみると、正直引いてしまう。あれじゃ野党
と同じだ。同じ党なのに、あんな人格攻撃みたいなことを前面に出してど
うするのか」

石破氏は新著で「異論と『足を引っ張る』はまったく違う」と書いてい
るが、周囲に個人攻撃、人格攻撃と受け止められていることをもっと反省
すべきだろう。

もう一つ、違和感を覚えたことがある。北朝鮮情勢が激変している時期
だというのに、新著では拉致問題が論じられていない。

もう政界でも忘れてしまった人の方が多そうだが、石破氏は平成14年4
月から9月ごろまで拉致議連の会長を務めたことがある。石破氏に会長就
任を要請した故・中川昭一元財務相が当時、うれしそうに筆者にこう語っ
ていた。

「(中国や北朝鮮に宥和(ゆうわ)的なイメージがある)橋本派(現竹
下派)の石破さんが受けてくれたのは大きいよ。インパクトがある」

ところが、石破氏は第1次小泉純一郎改造内閣の防衛庁長官に抜擢(ばっ
てき)されると、拉致問題から手を引いていく。それどころ か石破氏は
この6月には、北朝鮮に宥和的で拉致被害者家族から警戒され ている日
朝国交正常化推進議員連盟(衛藤征士郎会長)の会合に姿を現し ている。

 ずっと総裁候補であり続けてきた石破氏の現状が、残念でならない。
(論説委員兼政治部編集委員)産経ニュース


◆米中貿易戦争、第2幕が開演

宮崎 正弘


平成30年(2018年)8月24日(金曜日)弐 通巻第5806号 

米中貿易戦争、第2幕が開演。秋の第3幕で合計2500億ドル分に制裁関税
 商業レベルで見れば「狂気の沙汰」だが、長期戦略の原点に立ち帰って
みると。。。

なぜ商人の発想しか出来ないのか、日本のメディアの論調を読んでつくづ
く思った。

7月6日に発動されたトランプ政権の対中制裁関税の第一幕は160億ド
ル。(前史として鉄鋼とアルミへの25%関税があった)。8月23日の第2
幕は340億ドル分、合計500億ドルの中国からの輸入品に対して25%の関税
をかける。中国はただちに応戦し、同額の関税を報復課税で応じた。

9月以降に予想される第3幕では2000億ドルの中国からの輸入物品に対し
て、知財侵害への制裁を名目に高関税をかける準備作業に入っている。

日本経済新聞(8月24日)の1面トップは「供給網に亀裂、経済の影」と
あって、「米の対中制裁 狙い裏目――半導体の6割『逆輸入』」の見出し
が躍った。

曰く。「グローバル企業が築いたサプライチェーンにヒビが入り、世界の
自由貿易体制は大きく揺らぐ」

「実は中国企業を狙い撃ちにしているようで、大きな被害を受けるのは米
企業だ」。

トランプの唱えるアメリカ・ファーストは、反グローバリズムであること
をすっかり忘れたような分析である。

トランプ大統領はロイターとのインタビュー(8月20日)に答え、「中国
との貿易戦争は無期限であり、事務レベルの協議には何も期待していな
い」と冷淡に突き放している。事実、8月23日に終了した事務レベルの米
中討議は何の成果もあがらなかった。

ただし第3幕の2000億ドル分への高関税適用は、消費者物資、食品など、
アメリカの有権者の台所を直撃する品目が対象になるため、さすがのトラ
ンプ政権も中間選挙を前に、公聴会を開くなどして、慎重な姿勢である。
 
それにしても、日本のメディアの分析は、トランプの長期的戦略には思考
が及ばず、一方的、かつ商業主義的レベルである。

第一に米中貿易戦争はお互いに裨益せず、経済的損失に繋がるとそろばん
勘定しか頭にないが、米国は賃金の安さの魅力に引かれて中国へ進出して
米国企業に、早く中国での生産をやめて、米国に戻ることが解決方法であ
ると示唆しているのである。

つまりトランプのアメリカ・ファーストは、「中国進出企業よ、帰ってこ
い」という強いナショナリズムの呼びかけであり、長期戦になることは必
定である。日本はこの期に及んでもトヨタと日産は三割増の設備投資に踏
み切る。勇気を持って中国から撤退を決めたのはスズキだけだ。


 ▲、「中国進出のアメリカ企業よ、帰ってこい」

第二にサプライチェーンに支障が出てきたから、需給の構造が軋むと日の
メディアが批判している。

トランプの狙いは、サプライチェーンを改編し、中国中心の構造を壊し
て、新しいサプライチェーンの構築にある。

アジア諸国は「中国基軸」のサプライチェーンに見事にビルトインされて
おり、この構造と無縁な存在はインドしかない。だからインドは高度成長
を続けているが、ビルトインされた国々は中国経済の失速の影響をもろに
被って失速する。ベトナム、韓国、台湾がその典型である。

この生産、物流、販売の「チャイナ・サプライチェーン」を改編し、分散
を目的としているのが米国であり、この戦略行使こそが、中国がもっとも
怖れることだ。このままで事態が推移すれば習近平の唱える「中国製造
2025」は達成不可能となるだろう。

具体的に半導体産業を俯瞰すれば、その構造がよくよく理解できる。
ハイテク製品に適用される半導体、集積回路、世界に「3大メーカー」が
ある。嘗てITチップの時代は日本が世界一だった。いまは米国のインテ
ル、韓国のサムソン、そして台湾のTSMC(台湾積体電路製造=張忠謀
が創設)である。中国はこれらから集積回路を輸入しなければスマホなど
を製造できない。

中国はなんとしても欲しい技術であるがゆえに、東芝メモリィを買収しか
けた。台湾の鵬海精密工業はシャープを買収したが、これは液晶が主なビ
ジネスである。

さてインテルは言うに及ばず、韓国サムソンは米国が育てた。1980年
代の日米貿易摩擦で、アメリカは「ヤングレポート」を出したが、このと
きの米国戦略は次世代技術を日本の頭越しに韓国に製造基地をもうけ、日
本の競争力を弱体化させることだった。
 
一方、台湾のTSMCは、富士通からの技術提供、技術提携をうけてめき
めきと急膨張し、当時注目されたエーサーも買収して巨大企業にのし上
がった。

このTSMC創設者の張忠謀(英語名モリス・チャン)は浙江省寧波生ま
れの外省人であり、マサチューセッツ工科大学に学び、TI(テキサスイ
ンスツルメント)で腕を磨いて創業した。鵬海の郭台銘と同様に外省人で
あり、中国に郷愁を持つ。


 ▲「中国製造2015」を潰すまでトランプは戦い続ける様子だ

第3に米中貿易戦争は、年内には終わりそうな気配がないが、米中高官会
談に希望を見出す論調が目立つ。

しかしトランプ側近の布陣をみよ。あたかもルーズベルト政権が、モーゲ
ンソー、ハル、ホワイト、ヒスといった対日強硬派で固められ、日本がい
かように和平を模索しても日米開戦は鉄壁の基本原則だったように、トラ
ンプ政権の対中タカ派はポンペオ国務長官、ジョン・ボルトン大統領補佐
官、ピーター・ナバロ通商産業政策局長、ライトハイザーUSTR代表、
クドロー国家経済委員会委員長となって、対中妥協派のムニューチン財務
長官の影は薄く、全員が貿易戦争貫徹組しかいないではないか。

ヘゲモニーを賭けた戦いを挑んだトランプ大統領は、異形ではなく、当た
り前のアメリカ人の原則に回帰した大統領であり、ジョンウエインを尊敬
し、レーガンを仰ぎ見る。むしろオバマの8年間こそ、米国政治史におい
て、異質で異形の大統領だったのである。

◆朝日英字報道は今も慰安婦で印象操作

櫻井よしこ


慰安婦は日本軍が強制連行したのであり、自分は実際に慰安婦を「狩り出
した」と大嘘をついた故吉田清治氏を、朝日新聞は何十年にもわたって持
ち上げた。

朝日はしかし、吉田氏の話はすべて虚偽であるとして関連記事を取り消し
た。それが4年前の8月だった。

イデオロギーとして慰安婦強制連行を主張し続ける少数の人々や、いまだ
に熱心に朝日を読む人々を除いて、日本国内の殆どの人たちが慰安婦は強
制連行ではなかったし、性奴隷でもなかったということを、今では納得し
ていると思う。

ところが、日本人が余り読まない英字報道において、朝日は今も、女性た
ちは強制連行された、性行為を強いられたという印象を抱かせる報道を続
けている。

英字報道は日本人には余り馴染みがないが、その影響力は大きい。なぜな
ら、日本について世界に向けて報道する特派員やフリーランスの記者ら
が、必ずといってよいほど、参考にするからだ。

大半の日本人が関知しない英字報道で、日本人からはこっそり隠れるよう
にして、しかし世界に対しては堂々と、事実に反する印象操作報道を続け
ているのが朝日新聞だ。

こんな朝日の印象操作を中止させるべく立ち上がったのが米カリフォルニ
ア州の弁護士、ケント・ギルバート氏と、山岡鉄秀氏だ。

山岡氏は『日本よ、情報戦はこう戦え!』(育鵬社)を上梓したばかり
だ。2014年、ビジネスマンとして居住していた豪州のストラスフィールド
市で、中韓反日団体が仕掛けた「慰安婦像設置」計画に遭遇した。地元在
住の日本人のお母さん方は突然降りかかった歴史戦争に困り果てていた。
子供は苛められひどく傷ついて帰ってくる。しかし、自分の英語力ではど
う反論してよいかわからない。このような状況を知った山岡氏は誓ったと
いう。「日本人としての自分の生き方に関わる根本的問題だ。自分は見て
見ぬふりで逃げることはしない」と。

日本に対する情報戦

結論から言えば、氏は現地のオーストラリア人らを巻き込んでコミュニ
ティの一員として市議会に訴えた。さまざまな国籍や人種の人々が仲よく
共存するこの町に慰安婦像を建てて、協調的、平和的な人々の生活を乱す
権利は誰にもないという論法で説得し、遂に慰安婦像設置を阻止すること
に成功した。

このときまで、慰安婦問題にも歴史問題にも特別の関心は抱いていなかっ
たという山岡氏だが、実際に反対運動に関わってみると、日本に対する情
報戦は激しく、かつ多岐にわたることを痛感したという。その意味では日
本はすでに戦時下にあると、氏は断言する。情報戦に疎く、警戒心の薄い
日本人はそのように言われれば驚くかもしれないが、情報戦は侵略戦争の
始まりであり、情報戦が仕掛けられたら宣戦布告に等しいとの警告は、歴
史に照らし合わせてみても正しいと思う。

情報戦に勝つには、必ず、仲間を増やさなければならない。山岡氏がスト
ラスフィールドで実践したように、第三者の支援が大事である。その意味
で、英字報道で朝日がおよそいつも慰安婦について旧日本軍の悪行を印象
づける内容を発信し続けるのは、知らず知らずのうちに海外の読者に「日
本軍は悪い」「日本人は野蛮だ」「女性の敵だ」という考えを植えつけ
る。これではいざというときに日本の味方になってくれる「第三者」はい
なくなる。

8月3日、言論テレビでギルバート氏が語った。

「朝日には2回、申し入れ書を出して2回、回答を受け取りました。結論か
らいえば朝日に対する知的信頼はゼロになったということです。我々は朝
日とのやり取りをきちんと本にして世に問います。英語でも出します。国
際社会の人々が読んだら、もう誰も朝日新聞を信頼しなくなるのではない
でしょうか」

ギルバート氏の憤りは強かったが、そもそも朝日の英字報道はどのような
表現で慰安婦を報じているのか。

再びギルバート氏が説明した。

「日本語では『慰安婦問題』と表現します。それが英語報道になると必
ず、慰安婦についての説明がつくのです。comfort women, who were
forced to provide sex to Japanese soldiers before and during World
War IIとかね」

山岡氏が補足説明した。

「慰安婦を関係代名詞で受けて性行為を強制されたという説明部分を加え
るわけです。慰安婦は、forced to provide sexだというわけです。
forcedとは力で強要されたという意味です。またprovide sexを英語圏の
人が読めば、これは対価を支払った行為とは読めませんね。場所もわから
ない。戦場かもしれない。限りなく性奴隷に近い意味になります」

とんでもない報道

ギルバート氏が強調した。

「英語圏の私たちが読めばprovide sexというのはレイプだったり、奴隷
制度の下であったりという意味です。ですから朝日新聞はとんでもない報
道をしているのです」

もうひとつの問題点は朝日新聞の英字報道が「受動表現」になっているこ
とだという。どの件(くだ)りを見ても慰安婦の説明は確かに受け身の表現
になっている。山岡氏が語る。

「ですから私たちは『誰が』女性たちに性行為を強要したのか、それを明
確にして下さいと要望しました」

どう読んでも女性たちは「軍隊による物理的な強制で性行為を強いられ
た」ととられてしまうと、山岡氏らは考える。だが朝日新聞はこう答えて
いる。

「英語ネイティブスピーカーが読めば、軍隊による物理的な強制で性行為
を強いられたという印象を受けると指摘されていますが、当該表現は、意
に反して性行為をさせられたという意味です」

ギルバート氏が解説した。

「結果としては印象操作になっていくわけです。相手がそれを、軍隊が強
制したと受けとめることを理解しているのに、辞書にこう書いているから
と逃げるのですよね」

山岡氏は、シドニーで過去1年に限っても、朝日新聞は12回、慰安婦に関
する英字報道を行っている、毎回必ず「forced to provide sex」という
説明がついているというのだ。

「ロイター通信の記事を朝日新聞が配信することがあります。その中で、
慰安婦の説明として、朝日の説明文とほぼ同じ表現が使われているので
す。ロイターのような国際的通信社が使う、つまり、朝日新聞の英語報道
が殆どグローバル・スタンダードになっているのです」

朝日は文字どおり、木で鼻をくくったような回答をギルバート、山岡両氏
に返してきたが、この新聞、読みたくないと改めて思う。
『週刊新潮』 2018年8月16・23日合併号  日本ルネッサンス 第815回

◆「三叉神経痛」に有効な治療法!

〜ガンマナイフか?手術か?〜

中村一仁
(大阪市立総合医療センター 脳神経外科医師)

「三叉神経痛」に対する治療方法は、内服、神経ブロック、ガンマナイフ、MVD(microvascular decompression: 微小血管減圧術)と、多岐にわたる。
 
患者は痛い治療は好まないので、近年の治療手段としては低侵襲性と有効性からガンマナイフ治療を選択することも多くなってきた。

本論のガンマナイフ治療とは、コバルト線を用いた放射線治療で非常に高い精度で目的とする病変に照射することが可能な装置である。

さて本題。「三叉神経痛」というと聞きなれないかも知れないが、簡単に言うと、顔面が痛くなる病気である。一般には「顔面神経痛」という単語が誤用されていることがある。顔が痛くなるので「顔面神経痛」という表現はわかりやすい。

ところが、顔面の感覚は三叉神経と呼ばれる第5脳神経に支配されていることもあり、正しくは「三叉神経痛」というわけである。因みに顔面神経は、第7脳神経で顔面の筋肉を動かす運動神経の働きを担っている。

三叉神経痛の原因の多くは、頭蓋骨の中の三叉神経に脳血管が接触・圧迫し刺激となることで痛みが発生するとされている。
 
<対象・方法>
さて、1999年11月から2003年10月の4年間に、当センターで治療を行った三叉神経痛31例のうち、経過を追跡した29例についての検討を行った。ガンマナイフ施行1年後の有効率は69%(20/29例)であり、31%(9/29例)が無効であった。

そこで、このガンマナイフ治療により、治癒しなかった「三叉神経痛9例」の特徴について検討した。

<結果>
ガンマナイフ治療が無効であった「三叉神経痛9例」のうち4例で、MVD(微小血管減圧術)による手術治療が施行された。4例全例で三叉神経痛は消失軽快した。

ガンマナイフ治療無効例の術中所見は、クモ膜の肥厚や周囲組織の癒着などは認めず、通常通りMVDが施行可能であった。

ガンマナイフ治療が無効であった9例について、平均年齢65.7歳(46-79歳)、男性5例、女性4例。平均罹病期間8.7年(1.5-20年)、患側は右側5例、左側4例だった。

全例MRI画像にて圧迫血管を確認した。上小脳動脈(superior cerebellar artery:SCA)による圧迫病変は通常の割合より少なく、静脈や椎骨動脈による圧迫が4例と多かった。

ガンマナイフ治療が有効であった症例との比較では性別、年齢、罹病期間、病変の左右、圧迫部位に統計学的な有意差は認めなかったが、圧迫血管についてはガンマナイフ治療無効例で有意に上小脳動脈によるものが少なかった(χ2検定,P<0.05)。

<考察>
一般に三叉神経痛は脳血管が三叉神経に接触・圧迫することで生じるとされている。その圧迫血管として最も頻度が高いとされているのであるが、今回の検討ではSCAによる圧迫が少なく、ガンマナイフ治療無効例に特徴的な所見であると考えられた。

わが国で三叉神経痛に対する治療としては、抗てんかん薬であるカルバマゼピンの内服、ガンマナイフ、MVDといった選択枝を選ぶことが多い。MVDによる三叉神経痛治療は脳神経外科医Janettaの手術手技の確立により、安全に行なわれるようになった。

しかし、高齢化および低侵襲手術への期待から、近年ではガンマナイフ治療の有効性が多く報告されるようになってきている。

当センターでの経験では、三叉神経痛に対するガンマナイフ治療の1年後の有効率は69%であり、過去の報告と大差はなかった。ガンマナイフ治療後の再発例に対して検討した報告は散見されるものの、その再発・無効の機序は明らかではなく、ガンマナイフ治療後の再発例についての検討が必要である。

三叉神経痛の発症機序は、血管による圧迫と三叉神経根の部分的な脱髄により起こると考えられており、MVDにて減圧することでその症状は軽快する。

一方、ガンマナイフによる治療では、放射線照射に伴い三叉神経全体の機能低下が起こり疼痛制御されると推察されている。

このようにMVDとガンマナイフではその治療機序が異なるため、それぞれの利点を生かすべく、再発・無効例の検討を行い、治療適応を確立していく必要がある。

過去の報告ではガンマナイフ治療後の三叉神経痛に対してMVDを施行した6症例についてクモ膜肥厚や明らかな三叉神経の変化を認めず、ガンマナイフ治療後のMVDは安全に問題なく施行できるとしており、当センターでMVDを施行した2症例も同様の所見であった。

一方で、ガンマナイフ治療施行による血管傷害の例も報告されているが、再発との関連はないように思われる。

ガンマナイフ治療施行後の再発についての検討では、年齢、性別、罹病期間、以前の治療、三叉神経感覚障害の有無、照射線量、照射部位は再発と相関しなかったとの報告がある。

今回の検討では再発に関与する因子として、解剖学的な特徴に着目した。ガンマナイフ治療無効例では上小脳動脈による圧迫病変は通常の分布より有意に少なく、一般に頻度が低いとされている椎骨動脈やMVD後に再発し易いとされる静脈による圧迫が多かった。

このことはガンマナイフ治療無効例における何らかの解剖学的な特徴を示唆する。ガンマナイフ治療では画像上、三叉神経の同定の困難な症例や神経軸の歪みの大きい症例において正確にターゲットに照射することが困難な場合もあり、より広範囲に放射線照射を行うことも考慮されている。

前述の条件が揃うものにガンマナイフ治療の無効例は多いのかもしれないが、推論の域を出ない.この仮説が成り立つならば、MVDは直接的に血管を神経より減圧し、周囲のクモ膜を切開することで神経軸の歪みを修正することができるため、このような症例に対して有効な治療であるといえよう。

しかし、圧迫部位と再発に関連性なしとする報告や、MVD後再発再手術例の約50%で責任血管などの所見なしという報告、MVD無効後のガンマナイフ治療有効例が存在することも事実であり、解剖学的因子のみが治療方法の優劣を決定する要素とはならないのかもしれない。

また、初回のガンマナイフ治療で治癒しなかった三叉神経痛に対して、再度ガンマナイフによる治療を行なうことで症状が改善するとの報告もあるが、長期的な結果はなく、今後の検討課題のひとつである。

今回の研究ではガンマナイフ治療無効例にSCA(上小脳動脈)による圧迫が少なかったという解剖学的な点に着目したが、現時点では臨床的に三叉神経痛に対する治療としてのガンマナイフ治療とMVDは相補的な関係であるべきであり、今後さらに有効例、無効例を詳細に検討することで、各治療の術前評価においてその有効性が証明されることを期待したい。

<まとめ>
ガンマナイフ治療無効例に対して施行したMVDにて、4例中4例で三叉神経痛は消失軽快した。

ガンマナイフ治療無効例9例では静脈や椎骨動脈による圧迫を多く認め、ガンマナイフ治療有効例と比較して有意にSCAによる圧迫が少なかった。今後、ガンマナイフ治療無効例の特徴およびMVDの有用性について検討する必要があると考えられた。(完)

2018年08月26日

◆米中貿易戦争、第2幕が開演

宮崎 正弘


平成30年(2018年)8月24日(金曜日)弐 通巻第5806号 

米中貿易戦争、第2幕が開演。秋の第3幕で合計2500億ドル分に制裁関税
 商業レベルで見れば「狂気の沙汰」だが、長期戦略の原点に立ち帰って
みると。。。

なぜ商人の発想しか出来ないのか、日本のメディアの論調を読んでつくづ
く思った。

7月6日に発動されたトランプ政権の対中制裁関税の第一幕は160億ド
ル。(前史として鉄鋼とアルミへの25%関税があった)。そして8月23日
の第2幕は340億ドル分、合計500億ドルの中国からの輸入品に対し25%の
関税をかける。中国はただちに応戦し、同額の関税を報復課税で応じた。

9月以降に予想される第3幕では2000億ドルの中国からの輸入物品に対し
て、知財侵害への制裁を名目に高関税をかける準備作業に入っている。

日本経済新聞(8月24日)の1面トップは「供給網に亀裂、経済の影」と
あって、「米の対中制裁 狙い裏目――半導体の6割『逆輸入』」の見出し
が躍った。

曰く。「グローバル企業が築いたサプライチェーンにヒビが入り、世界の
自由貿易体制は大きく揺らぐ」

「実は中国企業を狙い撃ちにしているようで、大きな被害を受けるのは米
企業だ」。

トランプの唱えるアメリカ・ファーストは、反グローバリズムであること
をすっかり忘れたような分析である。

トランプ大統領はロイターとのインタビュー(8月20日)に答え、「中国
との貿易戦争は無期限であり、事務レベルの協議には何も期待していな
い」と冷淡に突き放している。事実、8月23日に終了した事務レベルの米
中討議は何の成果もあがらなかった。

ただし第3幕の2000億ドル分への高関税適用は、消費者物資、食品など、
アメリカの有権者の台所を直撃する品目が対象になるため、さすがのトラ
ンプ政権も中間選挙を前に、公聴会を開くなどして、慎重な姿勢である。
 
それにしても、日本のメディアの分析は、トランプの長期的戦略には思考
が及ばず、一方的、かつ商業主義的レベルである。

第一に米中貿易戦争はお互いに裨益せず、経済的損失に繋がるとそろばん
勘定しか頭にないが、米国は賃金の安さの魅力に引かれて中国へ進出して
米国企業に、早く中国での生産をやめて、米国に戻ることが解決方法であ
ると示唆しているのである。

つまりトランプのアメリカ・ファーストは、「中国進出企業よ、帰ってこ
い」という強いナショナリズムの呼びかけであり、長期戦になることは必
定である。日本はこの期に及んでもトヨタと日産は三割増の設備投資に踏
み切る。勇気を持って中国から撤退を決めたのはスズキだけだ。


 ▲、「中国進出のアメリカ企業よ、帰ってこい」

第二にサプライチェーンに支障が出てきたから、需給の構造が軋むと日本
のメディアが批判している。

トランプの狙いは、サプライチェーンを改編し、中国中心の構造を壊し
て、新しいサプライチェーンの構築にある。

アジア諸国は「中国基軸」のサプライチェーンに見事にビルトインされ
ており、この構造と無縁な存在はインドしかない。だからインドは高度成
長を続けているが、ビルトインされた国々は中国経済の失速の影響をもろ
に被って失速する。ベトナム、韓国、台湾がその典型である。

この生産、物流、販売の「チャイナ・サプライチェーン」を改編し、分散
を目的としているのが米国であり、この戦略行使こそが、中国がもっとも
怖れることだ。このままで事態が推移すれば習近平の唱える「中国製造
2025」は達成不可能となるだろう。

具体的に半導体産業を俯瞰すれば、その構造がよくよく理解できる。

ハイテク製品に適用される半導体、集積回路、世界に「3大メーカー」が
ある。嘗てITチップの時代は日本が世界一だった。いまは米国のインテ
ル、韓国のサムソン、そして台湾のTSMC(台湾積体電路製造=張忠謀
が創設)である。中国はこれらから集積回路を輸入しなければスマホなど
を製造できない。

中国はなんとしても欲しい技術であるがゆえに、東芝メモリィを買収しか
けた。台湾の鵬海精密工業はシャープを買収したが、これは液晶が主なビ
ジネスである。

さてインテルは言うに及ばず、韓国サムソンは米国が育てた。1980年代の
日米貿易摩擦で、アメリカは「ヤングレポート」を出したが、このときの
米国戦略は次世代技術を日本の頭越しに韓国に製造基地をもうけ、日本の
競争力を弱体化させることだった。
 
一方、台湾のTSMCは、富士通からの技術提供、技術提携をうけてめき
めきと急膨張し、当時注目されたエーサーも買収して巨大企業にのし上
がった。

 このTSMC創設者の張忠謀(英語名モリス・チャン)は浙江省寧波生
まれの外省人であり、マサチューセッツ工科大学に学び、TI(テキサス
インスツルメント)で腕を磨いて創業した。鵬海の郭台銘と同様に外省人
であり、中国に郷愁を持つ。


 ▲「中国製造2015」を潰すまでトランプは戦い続ける様子だ

 第三に米中貿易戦争は、年内には終わりそうな気配がないが、米中高官
会談に希望を見出す論調が目立つ。
しかしトランプ側近の布陣をみよ。あたかもルーズベルト政権が、モーゲ
ンソー、ハル、ホワイト、ヒスといった対日強硬派で固められ、日本がい
かように和平を模索しても日米開戦は鉄壁の基本原則だったように、トラ
ンプ政権の対中タカ派はポンペオ国務長官、ジョン・ボルトン大統領補佐
官、ピーター・ナバロ通商産業政策局長、ライトハイザーUSTR代表、
クドロー国家経済委員会委員長となって、対中妥協派のムニューチン財務
長官の影は薄く、全員が貿易戦争貫徹組しかいないではないか。

 ヘゲモニーを賭けた戦いを挑んだトランプ大統領は、異形ではなく、当
たり前のアメリカ人の原則に回帰した大統領であり、ジョンウエインを尊
敬し、レーガンを仰ぎ見る。むしろオバマの八年間こそ、米国政治史にお
いて、異質で異形の大統領だったのである。