2018年08月19日

◆学童保育園庭にツリーハウス

馬場 伯明


2018.8.10(土)日経新聞に「ツリーハウス・何でもランキング」が載っ
ていた。60年前に作った樹上の家(ツリーハウス):「ヤグラ(櫓)」
を、本誌(頂門の一針)第4772号(2018.8.15)で紹介した。

その後、日経の後追いだったのか、2018.8.14(火)の朝日新聞に円山史
記者の「ツリーハウスの夢 目前」が掲載された。私はこれを読み唖然と
した。あいた口がふさがらない。内容がよくない。

朝日の記事を紹介する。《「園庭を面白くするには」をテーマに、つくば
市の学童保育「Kids Creation Afterschool」に通う小学1〜5年生の16人
(多くが1,2年生)が話し合った。3年生のI君が「秘密基地を作りたい」
と提案し(施設の)園庭の樹上にツリーハウスを作ることになった。

職員が試算した経費は130万円。インターネットで資金を募るクラウド
ファンディング(crowd funding CF)という方法(*1)を職員から聞き、
子供らは「みんなに仲間になってもらえればできるかもしれない」とCF挑
戦を決めた。看板やPR動画も自作しnetで協力を呼びかけている》。

学童保育(所)の子供らがCFで資金調達中ということだが、いくつかの疑
問がある。以下、異論を申しあげる。

第1に、子供らがツリーハウスを作る目的と理由があやふやである。何の
ためになぜ作るのか。記事では《「園庭をおもしろくするには」をテーマ
に話し合った。「秘密基地を作りたい(I君3年)」「木の上にあったらお
もしろい」「(したいことは)読書にハンモックでの昼寝と様々」「おや
つパーティをしてみたいな(Aさん2年7歳)」》とある。

えっ、たったそれだけ。駄々っ子の「ほしがり」に近い。CF申請では目的
が最も重要である。だが、必要な水準に達していない。メンバーは「小学
1〜5年の16人。多くが1,2年生だ」という。集合写真を見てもあまりに幼
い。だから、仕方がないとも言える。

本誌第4772号に書いた。「(目的は)もっぱら遊ぶため。トランプ、将
棋、双六。本やマンガ。夏休みの宿題。両親ら大人と離れての自由なしゃ
べり。女の子の品定めの話など」と。重要なことは「両親ら大人と離れ
て」「自由なしゃべり」「女の子の品定め」だ。自宅ではダメでツリーハ
ウスの価値がそこにある。だから、力を合わせ「作るぞ」という気力が湧
く。つくばの子供らの気力は小林製薬のCM「あったらいいな」くらいかな
(笑)。

第2に、ツリーハウスの設計では、子供らの目的があやふやだから具体案
が浮かばない。広さ、高さ、屋根、梯子、蚊帳、灯りなどの記事もない。
円山記者も(関心はCFの金だけか!)子供らへの質問もないようだ。

第3に、問題の資金調達。いきなり職員試算の経費130万円。子供らには信
じられない大金である。できるはずがない。子供らは、またいきなり「CF
という方法を職員から聞き(聞かされ)」(CFへの)挑戦を決めた」。

子供らがCFを選択したのは最悪である。まず、大金130万円の意味を話し
合うべき。公園の掃除、トイレの掃除、園庭の草取り、新聞配達などを実
行し、自分の労働とそのお金の価値を知ることが重要だ。「多くが1,2年
生の16人」は、大人に言われ訳も判らずCFを押し付けられたのだ。

責任の所在は明白である。宮嶋さやか代表ら大人が、資金(金)欲しさ
に、子供らの夢をダシに使い、利用・悪用し、(子供らが全く理解できな
い)CFへ誘導し、勝手に進めたのである。私の「邪推」は正しいと思う。

では、どうすればいいのか。子供らは目的に合う設計と正当な資金で着手
し完成させるよう宮嶋代表に依頼する。ツリーハウスは小さくなるかもし
れないが、話し合うことが大切だ。一挙に大金は得られないから、数年越
しの計画になるかもしれない。小学1,2年生が高学年になり、5年生が中
学生で作業を手伝うこともあるだろう。苦労の上に成功がある。

ポンと降ってきた(悪)銭に頼ってはならない。CFの裏側も見る。自分の
意図(私利)をうまく宣伝し、他人を乗せ(だまし)、安易に金を得る
「システム」がある。「味を占める」甘い経験が子供らに刷り込まれる。
この「たかりの構造と手法」に囚われ、地道な努力を忘れ、その努力を馬
鹿にする。そして「詐欺師」の予備軍となる。その先は、詐欺師の「パシ
リ」か、オレオレ詐欺の「出し子」かもしれない。それでは困る。

第4に、CFは子供らを「自分で努力する」考えから遠ざける。正直・努
力・勤勉などの日本人の道徳心を蝕む。宮嶋代表は「大人になった時、大
勢の人と仲間になり思いが集まれば何かを動かせることを、思い出してほ
しい」と話す。だが、幼い彼らには理解できない。

第5に、職員が経費130万円の試算で業者が建築する。子供らは見るだけ
か。それでは無意味だ。作る体験があってこそ出来がよくなくても愛着が
わく。そこで一晩寝ただけでも満足だ。その体験が子供らの将来にまさに
生きる。業者のツリーハウスでは蚊に刺されただけで嫌になる。130万円
の大金が無駄になる。それは子供らのせいではなく、大人の責任だ。

60年前に私たちはどうしたのか。5〜6年生5人が100%自分たちだけで「ツ
リーハウス」樹上の家:ヤグラ(櫓)を作り上げた。大人の知恵や手は全
く借りなかった。子供の知恵の伝承だった。現場ではノコギリ(鋸)やナ
タ(鉈)の操作ミスによるケガや転落事故などもあった。危険と成功は隣
り合わせである。だから、自分で注意し自分を守る。

ツリーハウス(ヤグラ)を作る私たちの目的はそこで遊ぶことだったが、
実際はヤグラを完成させる作業自体に目的があったような気もする。作業
はきついが楽しかった。だから、作業が少ないつくばの子供らにとって、
ツリーハウスの魅力は半減する。いや、半減以上ではないか。

だから、私は本誌の最後にこう書いた。「樹上の家:ヤグラは木登りの延
長にある行為である。座っていても横たわっていても、さわさわとした夏
の風は心地よい揺れをもたらす。私たちは何も考えることなく、ただ自然
のゆりかごに抱かれていた。ヤグラを通り抜けた夏の夜風の記憶が巡りく
る。冷房機もなかったが、涼しく心地よかった」と。学童保育の16人の児
童らは、今の計画案では残念ながらあの満足感は味わえないだろう。

第6に、結局このプロジェクトは「つくば学童保育」の職員・代表・大人
が考えた、大人による、大人のための企画である。「多くが1,2年生の16
人」である子供らを使い、CFを利用する。それに朝日新聞が相乗りしてい
る。「目標金額まであと十数万円。CFは9月11日まで。CFサイトのアドレ
スは・・・(こちら)」と朝日新聞が宣伝している。

必要な130万円の残りは十数万円という。では、だれが110数万円を出金し
たのか。まさか、つくば市や関連団体がこっそり出金したのではないと信
じたいが・・・。

結論を述べる。このツリーハウスのCFへの挑戦は、おそらく「百害あって
一利なし」の企画である。130万円が集まったら資金提供者に返金した方
がいい。あるいは、同意を得て広島や岡山の水害の被災者への義援金とし
て日本赤十字社へ託する道もある。子供らの道徳心を涵養する意味でもそ
うした方がいい。(2018.8.17 千葉市在住)

(追記)
1.(*1)「クラウドファンディング(crowd funding CF)」とは、不特定
多数の人からインターネットを介して資金を集めること。(1)寄付型
(2)購入型(3)投資型がある。「つくば学童保育」のCFは(1)寄付型
で返済不要と思われる。

2.私の文章への反論は、(必要なら)自ら(学童保育)のブログなどに書
いてください。本誌の主宰者(渡部亮次郎)は反論文の掲載はしません。
ただし、反論文の掲載場所(ブログやホームページ)は、連絡があれば掲
載します。(了)

◆中国マネーが席巻する征服と略奪の網

櫻井よしこ


「中国マネーが席巻する征服と略奪の網 日本は負の流れ変える歴史的使
命がある」


中国で異変が起きている。7月26日、北京の米大使館付近で爆発事件が発
生、中国当局は内蒙古自治区出身の26歳の男を拘束した。情報筋は、少数
民族に対する苛酷な監視の網をくぐってモンゴル系の青年が爆弾を所持し
て北京中心部の米大使館に近づくなど、あり得ないと強調する。

「産経新聞」の藤本欣也記者が7月17日に北京発で報じたのは、(1)7月
第2週、屋内外の習近平中国国家主席の写真やポスターの即刻撤去を命じ
る警察文書がインターネットで拡散した、(2)中国政府系のシンクタン
ク「社会科学院」で習氏の思想及び実績を研究するプロジェクトが中止さ
れた、(3)党機関紙「人民日報」一面から習氏の名前が消え始めたとい
う内容だった。

いずれも権力闘争の明確な兆候と見てよい変化である。

中国の報道では常に鋭い視点を見せる産経の矢板明夫記者も7月18日の紙
面で以下の点を報じた。(1)7月初め、江沢民、胡錦濤、朱鎔基、温家
宝らを含む党長老が連名で党中央に経済・外交政策の見直しを求める書簡
を出した、(2)長老たちは、党内にはいま個人崇拝や左派的急進主義な
どの問題がある、早急に改めよと要請した、(3)習氏の政治路線と距離
を置く李克強首相の存在感がにわかに高まった。

(2)の「個人崇拝」や「左派的急進主義」などの表現は、独裁者、毛沢
東の時代に逆戻りするかのような習氏を念頭に置いた警告であろう。長老
群の習氏に対する強い不満が読みとれる。

8月1日の産経で、中国河北省の北戴河から西見由章記者が報じた。北戴河
は毎夏、中国共産党の指導部や長老が一堂に会し、2週間ほどかけて人事
や重要政策を議論する場として知られる。会議に備えて、渤海に面した北
戴河一帯は数キロにわたって交通が遮断され厳重な警備体制が敷かれる
が、街中で見掛ける看板には、ごく一部を除いて習氏の名前がないという
のだ。

最も顕著なのが、「新時代の中国の特色ある社会主義思想の偉大な勝利を
勝ち取ろう」という大スローガンを書いた看板である。これは昨年10月の
第19回共産党大会で華々しく打ち上げた習氏の思想である。当然、「習近
平による」という枕言葉がつかなければならない。にも拘わらず、沿道沿
いの看板には習氏の名前はないのである。

また、街のどこにも習氏の肖像画や写真が1点もないそうだ。習氏の個人
独裁体制が批判されているのは明らかといえる。

北戴河で長老たちはどんな人事を要求するのか。学生時代の級友たちを重
要閣僚や側近につける習氏の「縁故政治」にストップをかけるのか、憲法
改正まで断行して、習氏は自らの終身主席制度への路線を敷いたが、それ
を阻止するのか。そこまでの力が長老たちにあるのかは不明だが、中国が
尋常ならざる混乱に陥る可能性もある。

習氏の強権政治が牽制されるにしても、警戒すべきは国際社会に対する中
国支配の網が、彼らの言う一帯一路構想の下で着々と進んでいることだ。
一帯一路構想で620億ドル(約6兆8200億円)という最大規模の融資を受け
たパキスタンは、そのプロジェクトのおよそ全てで債務の罠にはまりつつ
ある。過大借り入れで返済不能に陥るのはもはや避けられないだろう。7
月の選挙で誕生した新政府が、いつ世界銀行などに緊急援助を求めるかが
注目される中で、中国の債務の罠に捕捉された国々はスリランカのよう
に、港やダム、重要インフラ、広大な国土を99年間などの長期間、中国に
奪われてしまいかねない。

中国がどうなろうと、中国マネーによる征服と略奪の網は広がっている。
この負の流れを米欧諸国と共に変えていくのが日本の歴史的使命である。
奮起し、世界の秩序構築に貢献する責任を政治には自覚してほしい。
『週刊ダイヤモンド』2018年8月11・18日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1243 

◆名所旧跡だより 平原遺跡(福岡県糸島市)

石田 岳彦


私の故郷である福岡市の周辺では、「桧原(ひばる)」、「屋形原(やかたばる)」、「前原(まえばる)」と、「原」を「はら」ではなく、「ばる」と呼ぶ地名が散在しており、上記の「平原」も「ひらはら」ではなく、「ひらばる」と読みます。

本日は福岡県糸島(いとしま)市にある平原遺跡について述べさせていただきます。

魏志倭人伝には邪馬台国を初め、多くの国名が記載されていますが、伊都(いと)国もその中の1つです。

現在の福岡市西区から糸島市にかけては、もともとは糸島郡であった地域ですが(平成の大合併で、前原市と志摩町、二丈町がまとまって糸島市が誕生し、糸島郡は最終的に消滅しました。)、この糸島郡自体、明治時代に怡土(いと)郡と志摩(しま)郡が合併して成立しました。

この怡土が伊都と通じること、佐賀県の旧松浦郡(現在の伊万里から唐津あたりにかけての地域)にあったとされる末廬国(まつら)国の南東に伊都国があったとの魏志倭人伝の記載から、伊都国は旧糸島郡にあったとされているそうです。

平原遺跡はこの伊都国の女王の墓とされています。 平原遺跡は糸島市の平原地区(遺跡の大半は発見された場所の地名で呼ばれます)にあり、周辺はのどかな農村地帯です。

そもそもこの遺跡が発見されたのも、昭和40年に地元の農家が蜜柑の木を植えようとして、銅鏡の欠片を発見したことがきっかけでした。

報告を受けた福岡県は、郷土史家の原田大六(大正6年の生まれということで、こう名付けられたそうです。)に発掘の指揮を依頼しました。

この原田大六は、糸島中学校(今の福岡県立糸島高校)を出たものの、大学では学ばず(歴史しか勉強しようとしなかったので、進学が無理だったとか)、太平洋戦争から復員した後、公職追放にあったのを契機に(軍隊において憲兵隊に入っていたのが祟ったといわれています)、中山平次郎博士に弟子入りし、博士から9年以上にわたり、1日6時間以上のマンツーマン指導を受け、考古学者になったという歴史小説の主人公にもなれそうなユニークな経歴と個性の持ち主です。

ちなみに中山博士は、現在でいうところの九州大学医学部の教授でありながら、寧ろ考古学者としての業績が有名という(九州考古学会の設立者だそうです)、これまた変わった経歴の持ち主で、この師匠にして、この弟子ありというところでしょうか。

この原田大六が、途中からは自費で発掘を継続し、遺跡からは墳墓の副葬品と見られる多くの出土品が発掘されました。

発掘品の中でも特に目立つのは39面又は40面(何分、破片で見つかったので、枚数について争いがあるようです。)発見された銅鏡で、うち4枚は直径46.5cmと、日本で発見された銅鏡として最大のものです。

他方で、剣等の武器はほとんど見つかっておらず、被葬者が女性であったことをうかがわせます。 副葬品の内容と豪華さから見て、時代は弥生時代。被葬者は王クラスの女性、つまり女王。遺跡(墳墓)のあった場所は伊都国があったとされるエリアということで、現在では、上記のように伊都国の女王の墓と推定されています。

弥生時代の女王といえば、邪馬台国の卑弥呼が有名ですが(実際には「日巫女」という太陽神を祀る神官女王の役職名だったのではないかとの説もあるそうですが)、それ以外にも女王がいたのですね。

ちなみに原田大六は玉依姫(たまよりひめ。神武天皇の母親とされる神話上の女神です。)の墓と主張していました。

平原遺跡の女王の墓は四角形(現在では少なからず形が崩れていますが)で、写真を見ればお分かりのように、その周囲には溝が掘られています。学問的には方形周溝墓(ほうけいしゅうこうぼ)と呼ばれるタイプの墓だそうで、上記の発掘品も近年になって「福岡県平原方形周溝墓出土品」という名称で一括して国宝に指定されています。

現在の平原遺跡は、墳墓の周りが低い柵で囲まれ、その周囲は横長のレリーフが建っているのを除けば何もない広場になっており、少し離れたところに古民家(遺跡とは全く関係ありませんが、保存のため移築されたようです)が1軒ぽつんという、よく言えば開放的、率直にいえばスペースが広々と余った歴史公園となっています。個人的にはこういう長閑な雰囲気は好きですが。

平原遺跡から車で10分ほど走ると農村風景の中に4階建の立派な建物がそびえているのが見えてきます。伊都国歴史博物館です。もともとは伊都歴史資料館といったようですが、平成16年に新館が建てられて博物館に昇格したとのこと。

「福岡県平原方形周溝墓出土品」の一部は九州国立博物館の平常展示室で公開中ですが、大半の発掘品はこちらの新館に保管・展示されています。館内撮影禁止のために写真はありませんが、鈍く緑色に輝く大型の銅鏡がケースの中にずらっと並ぶ姿はさすがに壮観です。
 
展示ケースの前に、立てられた状態の銅鏡が1枚、機械仕掛けでゆっくりと回転しながら展示されていましたが、見学者が私と妻の他におらず(施設と所蔵品の豪華さを考えれば、もったいない限りです。)、静けさの中で、微妙なモーター音をあげながら回転する銅鏡の姿は率直にいって不気味でした。

この博物館の前身たる伊都歴史資料館の初代館長には、上でも述べた原田大六が予定されていたそうですが、大六が開館を待たずに死去したため、名誉館長の称号が追贈され、資料館の前に銅像が立てられました(銅像は現在も立っていますが、新館の入り口からだと目立たない場所になっています)。

自分の主導で遺跡を発掘し、国宝級の副葬品を発見して、それを納めた郷里の資料館の前に銅像を建ててもらう。郷土史家としては頂点を極めたという感じですね。大学の考古学の教授でもここまでの成功を得られる人は滅多にいないでしょう。
 
福岡市やその近郊にお住まいの方は休日にでもドライブがてらにでも、平原古墳と伊都国歴史博物館を訪れてみてください。晴れた日には本当に気持ちの良い場所ですので。(終)  <弁護士>

2018年08月18日

◆電子マネー決済が主流になると、造幣局に尋常

宮崎 正弘


平成30年(2018年)8月16日(木曜日)通巻第5792号

 電子マネー決済が主流になると、造幣局に尋常ならざる異変
  中国は100元の新札、香港は全面的に新意匠の香港ドル発行へ

デジタル・マネー(スマホ決済、ビットコイン、銀連カード)が中国では
完全に主流となった。いまや現金決済は小売りで10%程度しかない。あと
は全てがデジタルマネーで支払いを済ませる。

第一に偽札が多いことが理由だが、第二にクレジットカードはスキミング
され、不正利用される犯罪が多いことだ。

中国は2015年11月12日に新百元札を発行した。

従来の百元札と同じ毛沢東の意匠だが、すかしや番号などで、安全装置
を、より高度な印刷技術を駆使した新札をつくったのだ。

偽札偽造団は広東のマフィアが印刷工場を持つという「一大産業」だった。

2015年10月22日、江蘇省杭州で20歳の大学生がカラーコピィで印刷した20
元札を262枚作成した。コンビニで使って、すぐに逮捕され、懲役10年の
判決がでた。

2016年1月7日、人民元の偽札(20元札を1000万元分)偽造した犯罪集団
20人が逮捕され、偽札が押収された。

2018年8月7日、香港で大量の偽札偽造団が摘発され、500香港ドル、
1000香港ドルを売りさばいていた国際的な偽造集団の実態が判明した。
アメリカ国籍やパキスタン人が、闇ルートで偽札を売りさばいていた。香
港の警察当局がアジトに踏み込んだところ、13億7000万香港ドル(邦貨換
算で200億円強)が未使用のまま見つかった。

このため、2018年の年末から香港ドルは全てが新札となる。

新たに6つの偽造防止の措置が通貨印刷に施される。香港ドルの発券銀行
は香港上海銀行、スタンダード&チャータード銀行に加えて、中国銀行も
発行している。

香港ドルは米ドルの預託金の範囲内で発行されているため国際的な信用力
が高く、華南全域に流通している。


 ▲デジタル通貨で、従来の貨幣印刷は激減の運命

問題は別の分野に波及した。貨幣が買い物に使われないとなれば、通貨を
印刷してきた、いわゆる「造幣局」の運命はどうなるか、という難題である。

中国で通貨の印刷、コインの鋳造は国有企業「中国銀行券印刷造幣局」が
一括で請負、全国に10ヶ所の印刷工場があり、厳重な警戒体制の下、管理
が行われている。従業員は18000名とされた。

しかし既に40歳以下でphDの資格を持つ若手2500人が退職しているとい
う。ほかの印刷業界から引く手あまただからだ。

ドイツと英国では、高度な技術を駆使して外国の貨幣を印刷している。

とくに英国デァルエ(De La Rue)社は大英連邦諸国の貨幣も印
刷してきた。従業員は3100人。英国は嘗てリビアのディナール札の印刷も
請け負っていたが、カダフィ政権倒壊で、注文のあった15億ディナール札
が倉庫に眠ったままの状態という。

米国の造幣局はドル紙幣だけとされ、従業員は1800人弱である。

さて、中国の造幣局が目を付けた「生き残り作戦」は何かと言えば、諸外
国の通貨印刷を請け負うことだった。2017年以来、工場は異様なフル回転
となって、とくに中国が進めるシルクロード沿線の国々から高度な安全装
置、つまり偽札防止が施された貨幣を印刷する需要が強いからだ。

国の名前は明かさないことは守秘義務だが、ネパール・ルピーは公式に中
国での印刷を認めている。

ほかに『サウスチャイナ・モーニングポスト』(8月14日)は、中国に貨
幣の印刷を発注している国は、スリランカ、バングラデシュ、マレーシ
ア、印度、ブラジル、ポーランドだろうと推測している。
    
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1775回】            
――「實に亡國に生まれたものは何んでも不幸である」――釋(7)
  釋宗演『燕雲楚水 楞伽道人手記』(東慶寺 大正7年)

             △

旅は一気に洛陽へ。道行く人に名所を尋ねたが「皆無いとか知らないとか
云ふて不得要領であつたが、全く無いらしい」。

そこで「日本の京都奈良の樣に昔は必ず多く存在してあつたに違ひない
が、國の惡政や、亂戰を重ねた結果國民が疲弊して、美術に保護を與へる
餘猶もなく遂に無名所の地と化したらしい」と考えた。

郊外を歩くと伊水に出くわす。「其の左岸の巖壁に有名な六朝時代の遺
跡として萬を以て數ふ程の大小石佛が、岸壁や洞窟の自然石に隙間もなく
彫刻されてあつた」。

さらに進むと、「大小の岸壁内や斷壁に無數の大小佛が刻まれて人目を喜
ばすけれども土地の者等は魔よけとか呪ひとかにする爲め、ドンドン石像
を欠いて持ち去るそうだ」。かくして「實に無智の輩には困つたものであ
る」そうな。まあ、日本でも有名人の墓石を削ってお守りやら薬にする風
習があったそうだが、それと同じだろうか。

道端の老樹が枝を大きく四方に広げ、黄土の道に影を落としている場所
でのこと。「田舎の老婆連の巡禮團が15^6名程、揃ひの?衣を纏ひ頭に
は基?の尼が冠る樣なものを皆戴いて(中略)いかにも敬虔な純直な態度
で、此の神木とも謂はれる締縄のある樹に向ひつゝ(中略)心から合掌し
て」いる光景に出くわす。

「其の時はまるでラファイエルかミレーの宗?畫を眼前に投付けられたよ
うな心持になつた」。そこに「支那の眞の生きた宗?清淨い信仰が老婆の
まわりから輝いてゐたのであつた。予が若し畫家であればなどと思」った
のである。

 京漢鉄道を南下する日。鄭州の宿屋で仮眠していると、「頻りに淫賣
婦が來つて扉を敲く、そして夜中ブツ通しで博奕か何かで騒いでゐた」。
彼女らからすれば坊主でもなんでも客は客ということなのか。妻帯する日
本の僧侶を僧侶と認めないほどに女性を近づけることを厳禁しているから
こそ、彼女らとの交渉が黙認されているのか。真実は、その両方にあろう
とは思うが。

京漢鉄道の車窓から眺める。「百姓は未明から牛や馬を追ふて?い影を動
かしてゐたのは意外であつた」。

そこで「支那人は元來怠惰者ではない。この原始的生活を營むでゐる百姓
は固來の支那人種の本性を備へていゐて實に勤勉である、各都市の阿片や
煙草をズーズー吸つて毎日轉がつてゐる人種と甚だ違つてゐるように思は
れて頼母しい氣がした」。だが、ここで考え違いをしてはいけない。「原
始的生活を營むでゐる百姓」も都会で「阿片や煙草をズーズー吸つて毎日
轉がつてゐる人種」も、共に同じ支那人なのである。

京漢鉄道の終着点である「漢口は支那のシカゴと云はれてゐる位い政治
上經濟上重大が地位を占めてゐる」。

だから「各國軍艦商船が漢口の河岸には驚くべく繋がつてゐる」。この日
はちょうど10月31日の「天長節の佳日」だった。「一行は10時頃近くの領
事館へ到つて御真影に對し奉り謹むで禮拝を捧げて引き戻つた」。

漢口から船で長江を下り南京、鎮江、蘇州へ。各地の古寺名刹を訪ね、
蘇州の宿は「日本租界の月廼家旅館」だった。

翌朝起きて見ると、「茫々たる野原に月廼家が淋しく建つて」いるのに気
づく。そこからは「蘇州の城壁も見へないので未狐にだまされてゐる樣な
氣がした」。だが、そこは紛れもなく日本租界である。「事實日本の租界
地に相違ないが實に寂しいもので有名無實の有樣、空地の雜草は日本人の
渡來を待つてゐる」のであった。

次いで杭州を経た上海では僧侶たちと筆談を重ね歓談の時を持つ。「日支
僧侶の親善の端緒は今日充分に展かれた」。この動きを継続すれば「外交
官の手を煩はす」こともなく、「やがては一般國民の上にも健全な親善を
及ぼす事が出來」ると、2ヶ月半の旅を閉じた。
釋宗演の旅は、現実離れした『日本製支那像』に拘ることの愚を物語って
いる。

◆インスリンに思う 

渡部 亮次郎


日本の政界に糖尿病が登場するのは確かに1945年の敗戦後である。「オラ
が大将」の子息で山口県知事もした田中龍夫元文部大臣は公務の合間を
縫って日に何度も注射のため医者に通っていた。

田中角栄、大平正芳、伊東正義、園田直、田中六助。皆糖尿病が元で死ん
だ。脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、網膜症、癌を併発するのが 糖尿病患者
の末路だからである。

1921年7月30日にインスリンが発見され、人類に測り知れない恩恵をもた
らした。欧米ではすぐに患者自身が自己注射が始まった。だが日本では
「危険」を理由に医者の反対で厚生省が許可しなかった。患者の中には日
に3度も医者通いを余儀なくされる人がいた。

仮に自己注射が許可されていれば、医療器具業者は競って注射器の簡略化
や注射針の改良に取り組んだ筈である。だが厚生省(当時)の役人たちは
日本医師会に立ち向かおうとはしなかった。

わたしが秘書官となって厚生大臣として乗り込んだ園田直は1981年、敢然
として自己注射を許可した。その結果、注射器はペン型となり、針も世界
一細い0・2ミリになって殆ど無痛になった。

だがとき既に遅し。園田本人は自分の決断の恩恵に浴することなく腎不全
に陥り、僅か70歳で死んだ。1984年4月2日の朝だった。

糖尿病は多尿が特徴なので、長い間、腎臓が原因と考えられていた。糖尿
病最古の文献はB.C1500年のエジプトのパピルスに見られる記述だ。日本
で記録のある最も古い患者は藤原道長である。

「この世をばわが世とぞ思ふ 望月の欠けたることもなしと思へば」と詠
んだ、平安時代中期の公卿である。康保3年(966年)―万寿4年12月4日
(1028年1月3日))62歳薨去した。

当時としては意外な長生きである。糖尿病を放置した場合、実際より10年
は短命になるとされているから、当時としては大変な長命というべきだろ
う。それにしても満月のような権勢も病には勝てなかった。

昔から糖尿病の尿は甘く糖分を含んでいる事は良く知られていたが膵臓が
どのような働きをしているか、どれほど重要な臓器か不明の時代が長く続
いた。

突如、1869年にLanngerhans島が発見された。それから20年たった1889
年、ドイツ人のMeringとMinkowskiは史上初めて、犬の膵臓を摘出したあ
と、高血糖と尿糖が出現することを発見し、やっと膵臓と糖尿病が切って
も切れない関係にあることを証明した。

その後ジョンズホプキンズ大学のOpie博士が、このランゲルハンス島は
内分泌器官であり、糖尿病が関係することを明らかにした。
膵臓のランゲルハンス島から出ているのがインスリン。それが少ないと
か、全く出ないのが糖尿病と判りだしたのだ。

そこからインスリン発見の物語は更に後である。

人類に測り知れない恩恵をもたらしたインスリンの発見物語の主人公は
Banting &Bestの2人のカナダ人である。苦しい実験を重ねてインスリン
を発見したのだがこの2人は当時全くの無名だった。

Frederick Bantingは1891年、カナダの農家に生まれ、1916年トロント大
学医学部を卒業し医者になった。

ある日彼は「膵臓結石で膵管が完全に閉ざされた症例」ー膵臓の腺細胞は
萎縮しているのにランゲルハンス島だけは健全であったーという論文を読
んだ。

それなら結石の代わりに手術で膵管を縛ってしまえばよいと彼は考えた。

膵管を縛るという考えは天才的な閃きだった。彼は自分のアイディアを実
行すべく、トロント大学の生理学者 Macleod教授を訪ねた。
このとき、助手として学生のC.H.Bestを推薦された。

早速実験が始められた。膵管結縛の手術は難しく、内分泌を抽出するのは
さらに難しい。

彼らは1921年7月30日に初めて抽出エキスを犬に静脈注射してみた。効果
は覿面だった。そこで彼らはこの物質をインスリンと命名した。

しかしこのBantingとBestの苦心の作も、まだまだ不純物が多く、実用に
は耐えなかった。その後安全に血糖を下げることが可能になったのは生化
学者 Collips博士が、粗雑な抽出物を人間の使用に耐えるように精製した
結果だった。

1923年のノーベル生理、医学賞はBantingと教授Macleodに決定した。

2005年の国際糖尿病連合の発表によると、アメリカ人のなんと20%が糖尿
病の疑いありで、60歳以上の老人に限れば20%強が糖尿病に罹患している。

アメリカに住む白人種に限っても糖尿病患者は確実に8%を越え増加の一
途を辿っている。

21世紀が進行し始めるとヨーロッパとアメリカという、今までは罹患率が
極めて少ないと言われていたコーカソイド人種全体に糖尿病が一気に蔓延
しはじめた。

これはアメリカの高脂肪、高蔗糖、高エネルギー食がグローバル化し、
ヨーロッパもその例外でない事を示している。

19世紀末までコーカソイドである白人種たちは国によって糖尿病発症率が
低かった。しかしこれから20年以内にはヨーロッパもアメリカも糖尿病激
増で悲鳴をあげるだろうといわれている。

1000年はおろか数百年前にDNA の中に眠っていた遺伝子が社会環境の激変
で目覚めたのである。さらに遺伝子とは関係なく運動不足も大いに影響し
ている。

2004年、アメリカでゲノム研究者が2型糖尿病(中年に発症)の遺伝子を
発見したことが報じられた。これは飢餓遺伝子とは関係ないと考えられて
いる。

日本人の場合、江戸も中期以降になると、庶民の間でも1日3食の食習慣
が成立したが、明治維新までウシも豚も常食として食べる習慣が全くな
かった。つまり高血糖の原因となる高カロリー、高タンパク、高脂肪食と
は無縁な栄養学的にはかなり貧困な食生活が300年以上続いたのである。

一方、1850年ごろからヨ−ローパ人は大量生産方式の牧畜蚕業勃興と発展
により肉食が一般市民階級に広く普及した。日本人が反射的に頭に思い描
くヨーロッパ風の肉中心の食事スタイルの成立だ。

それでも当時ですら日本人に比べるとヨーロッパ人の体格は立派であった
のだから、その後の食生活の100年が生み出した肉体的格差は想像以上の
結果を生んだのだ。

日本では第2次大戦後、それも戦後20年たって、やっと高エネルギーと高
脂肪食をとりいれた結果、糖尿病が急上昇で増加した。わずか30年から40
年の食生活の変化だ。

日本人の中に眠っていた飢餓遺伝子が飽和脂肪の刺激を受けて目覚めた結
果である。世界中の人類に共通の現象で別段、驚くべきことではない。経
済の高度成長と糖尿病患者の趨勢は同一だ。

だから中国では物凄い勢いで糖尿病患者が増えている。精々鶏を食べてい
たものが、1切れでその何倍ものカロリーのある牛肉を食えば、報いは当
然、肥満と糖尿病など生活習慣病である。毛沢東語録にはない。

出典:さいたま市大島内科クリニック「インスリン発見物語」
http://members.jcom.home.ne.jp/3220398001/discovary/index.html  
 文中敬称略 2007・10・03名所旧跡だより 太宰府天満宮(福岡県)

◆敵味方の区別つかないトランプ外交

                                       櫻井よしこ


「敵味方の区別つかないトランプ外交で欧州情勢が激変する可能性に現実味」

6月上旬、カナダでの先進7カ国首脳会議(G7)に出席したトランプ米大
統領は孤立した。「6対1」のサミットと表現されたG7の2日目午後の会合
を欠席して、トランプ氏は北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長に会うため
にシンガポールに向かった。

7月11、12日の両日、ベルギーでのNATO(北大西洋条約機構)首脳会
議に臨んだトランプ氏は、ここでも多くの問題を残した。会議の前には、
NATO各国首脳に宛てて「貴国の国防費がなぜこんなに少ないのか、米
国国民に説明できない」「米国とNATOの関係はもはや持続可能ではな
い」など、類例のない表現で相手国を非難する手紙を出していた。

首脳会議では、「米国が世界の貯金箱と思われている状況を止める」決意
を、改めて示した。

NATO諸国は2014年、ロシアがクリミア半島を奪ったことに警戒を強め
軍事力を高めるために、少なくとも各々のGDPの2%を軍事費に充てる
と決定したが、その2%条項が守られていないとして、トランプ氏は
NATO諸国を非難していたのだが、今回の首脳会議で、4%という新し
い数字を突然打ち出した。

NATO首脳の間には、トランプ氏がどこまで本気なのかと疑う声もある
が、4%以前の、もっと深刻な問題があるのではないか。

前述のように、カナダでのG7では価値観を共有するはずの先進諸国を非
難して、価値観の全く異なる正恩氏に会いに行った。ベルギーでの首脳会
議では同盟国を非難して、最終的にロシアのプーチン大統領に会いに行く。

集団安全保障の考え方で成り立つ世界最大規模のこの軍事同盟はそもそも
旧ソ連(ロシア)を共通の敵と位置づけて組織されたものだ。トランプ氏
は完全に味方と敵の区別がつかなくなっていると思われる。

トランプ氏の「アメリカ・ファースト」は、これでは「アメリカ・アロー
ン」になってしまう。米国は同盟国、あるいは友邦国として信ずるに足る
国かとの疑問が、米国にコミットし頼ってきた国々から出始めたことを、
最も喜んでいるのは中国とロシアであろう。

そうした中、ロシアはハイブリッド戦争を進める。これは「非対照的」で
「非伝統的」な力の行使によって、相手国の民主主義的体制を破壊してい
く戦争のことだ。具体的にはサイバーアタックや偽情報の拡散、政治的プ
ロパガンダの拡散などである。NATO諸国にとってロシアの脅威は、も
はや軍事力だけではないのである。

国際社会が直面する新たな戦いは「文化が戦場」となり、音楽や映画がそ
の有力手段となるといわれている。たとえばNATOの一員であるラトビ
アを見てみよう。

小国ラトビアは歴史的にソ連に支配され、次にドイツ、そして再びソ連の
支配下に置かれた。ラトビアが民族国家として自立したのはソ連崩壊後の
4半世紀ほど前のことで、安定した国民生活が可能になったのは、
NATOの枠内に入って以降にすぎない。

ラトビアの人口の約3割が人種的にはロシア人だ。彼らはロシア語を母国
語とし、ロシア文化を守りつつ暮らしている。プーチン氏はラトビアはロ
シア領だと主張し続ける。ロシア、そして中国も全く同様だが、「自国民
擁護」の旗を掲げて他国を脅かすのが常だ。

人口の3割がロシア人という事実は、クリミアに多くのロシア人が住んで
いることが侵略の口実のひとつになったように、ラトビアを再びロシアの
支配下に置く理由として十分活用されるだろう。

こうした中、トランプ氏は、クリミアはロシア領、理由はそこに多くのロ
シア人が住んでいるからと語っている。トランプ外交で欧州情勢が激変す
る可能性が現実となりつつある。

『週刊ダイヤモンド』 2018年7月21日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1240

◆健康百話 乳がんの治療

小川 佳成(医師)


乳癌の治療法は、病状や進行度、あなたの全身状態を考慮して決まります。治療には主として、手術、放射線治療、抗癌剤(抗ホルモン剤を含む)治療があります。

病状の進んでいる方には抗癌剤治療が優先されますが、通常は手術を行い、その後再発予防のための抗癌剤治療を行います。

【手術】
手術には主として、1.乳房切除、2.乳房温存手術があります。腫瘍の大きさや広がり具合などにより術式を選びます。当大阪市立総合医療センターでは、半数以上の方が乳房温存療法を受けられています。
 
乳癌の手術では転移の有無に関わらず、癌の根治・予防のためにわきの下のリンパ節を全部取り除くこと(リンパ節郭清といいます)が標準的に行われてきましたが、リンパ節郭清をすると術後に腕がむくみやすい等の症状が残ります。

そこでわきの下のリンパ節転移がないと予測される方を対象に術後の症状を軽減するために、センチネルリンパ節生検という方法を用いた、腋窩(わきの下)リンパ節郭清を省略する術式が行われるようになりつつあります。当センターでは6割の方がこの術式を受けられています。

【放射線治療】
乳房温存手術を行った場合には、残った乳腺での再発を抑えるために乳房に対する放射線治療を術後に行っています。治療期間は5〜6週間でこの治療により乳腺内での再発は2〜3%以下に抑えることができると考えられています。

【抗癌剤治療】
切除した癌の性格を詳しく調べて、術後の抗癌剤治療の必要性とその内容を決めます。これらの治療で再発の3〜4割を抑えることができるとされます。抗癌剤治療は充分な副作用対策をして外来にて行っています。

【乳房再建】
乳房切除後の乳房再建は形成外科にて行っています。当センターでは、術後1〜2年を過ぎ、治療が一段落してからの再建をお勧めしています。

乳癌の治療は5〜10年ごとに大きく進歩しています。当センターでは、“あなたがより良く生活していくために治療があるのだ”という想いのもとに、各分野の専門医が協力し合い乳癌の治療に当たっています。  
                      <大阪市立総合医療センター 外科>

2018年08月17日

◆中国のAIロボット開発の凄まじさ

宮崎 正弘


平成30年(2018年)8月14日(火曜日)弐 通巻第5791号

 中国のAIロボット開発の凄まじさ
  不足するエンジニア確保は米国のシリコンバレーでリクルート

 油断大敵。

産業ロボット、とりわけ半導体製造装置や自動車の製造工程での塗装、組
み立てなど分野別ロボットでは、いまだに日本からの輸入に頼っている中
国だが、次世代のAIロボットの研究開発は、凄まじい加速度をともなっ
てきた。

なにしろ政府の補助金がふんだんに付いており、不足するエンジニアは米
国のシリコンバレーでかき集めている。アリババも百度もテンセントも、
シリコンバレーで、AIロボット研究開発ラボを立ち上げ、優秀な学生、新
卒をアメリカ人にターゲットを設定してリクルートしているのだ。

介護ロボットはすでに672の介護学校で教育現場に投入され、結構な人
気を博しているという(アジアタイムズ、8月13日)。キイコという愛
称のロボットは日本の愛玩ロボットのパクリかと思われるが、教師の補助
ができるレベルに達したという。

清華大学がまとめた「2018年中国のAIロボット報告」に拠れば、2017b年
に35億ドル規模のAI市場は、2018年に倍増する予測が出ている。

世界全体で51億ドルのAI市場の規模は2023年に173億ドルに成長する。
とくに2013年から2018b年までの累計で中国は世界市場の60%を寡占する
までになった。

政府の補助金がつくと聞いて雨後の竹の子のごとく北京の中関村に誕生し
たAI企業はじつに4000社におよぶ。

1月には中国政府が121億ドルを投下して、北京郊外に新しくAI研究セ
ンター特別区を設置するなど、その凄まじい意欲を目撃すると、アメリカ
の焦燥もよくよく理解できるだろう。


[MADE IN CHINA 2025]プロジェクトの中核が、予算配分
から推定して、このAI開発にあり、ロボットがAIを搭載しGPSと連
結して軌道力を発揮し、最先端機能を備えて、レーダー誘導という整合性
をえたものが完成するとなれば、まさに中国が「軍事ロボット」を世界に
先駆けて誕生させることになる。

アメリカの専門家には、「極端な一時的現象に過ぎず、風力発電ブーム、
太陽光パネルブームが補助金打ち切りと同時に去ったように、脅威視する
必要はない。中国の技術は日米の水準に十年の遅れを取っている」という
楽観論もあるが。。。。。

◆インスリン注射不要の夢

渡部 亮次郎


2006年8月、京大の山中伸也教授が、人の皮膚から採った細胞に4つの遺伝
子を入れて培養したら、万能細胞ができた。iPS細胞=人工多能性幹細胞
と言うそうだ。

万能細胞から、神経細胞、心臓細胞、臓器細胞、血液細胞、軟骨などが作
られ糖尿病や心臓病に使えるとされている。

自分の皮膚から採った細胞だから、自分の体に入れても拒否反応がない。
ノーベル賞だという声が上がって本当に受賞した。細胞や臓器の再生へ、
万能細胞の研究競争が激化するだろう。

山中教授は、何年かしたら、人工細胞ができると言う。激しい競争がある
からだ。

しかし、4つの遺伝子は、癌細胞から採っているので、人に応用すると思
わぬ事故になる可能性があると言う。

山中氏は、神戸大→大阪市立大→カリフォルニア大と研究を続けて、世界初
の万能細胞を作った。

人工細胞は、糖尿病、心筋梗塞(しんきんこうそく)、脊髄損傷(せきず
いそんしょう)などの治療に使える。
http://www2.ocn.ne.jp/~norikazu/Epageh3.htm

このうち糖尿病治療への展望について専門家に聞いて見ると、うまくすれ
ばインスリン注射が要らなくなる可能性があるという明るい見通しがある
らしい。

糖尿病は、食べたものを血肉にするホルモン「インスリン」が膵臓から十
分に出てこないため、溢れた栄養(ブドウ糖)が血管を内部から攻撃した
末に小便に混じって出る病気である。小便が甘くなるから糖尿病。

糖尿病それ自体ではなかなか死なないが、内部から血管を糖分で攻撃され
ると、脳梗塞、心筋梗塞、盲目、足の切断、癌多発といった
「合併症」を招いて、寿命より10年は早く死ぬ。

栃木県にある自治医科大学内分泌代謝科の石橋俊教授によると、駄目に
なった膵臓や膵頭を何らかの方法で丈夫なものを移植すれば問題は一挙に
解決し、インスリン注射も要らなくなる。

しかし日本ではドナーが不足し、膵頭を調整する試薬の供給がストップし
たりして、こうした治療を受ける患者は2桁どまりだ。

そこで注目されたのが、インスリン「製造工場」ともいえる膵ベーター細
胞の再生治療だったがヒトの受精卵の仕様に付随する倫理的制約や拒否反
応が壁になって進んでいなかった。

そこへ登場したのが山中教授の万能細胞。ヒトES細胞から膵ベーター細胞
を作る研究は壁に突き当たったが、山中教授のiPS細胞なら、自分の皮膚
から出来た物だから拒否反応も倫理的な問題も起きない。

問題は今回できた4つの遺伝子が、がん細胞からとっているので、人に応
用すると思わぬ事故になる可能性があることだ。石橋教授は「この問題が
解消されれば、実用化は意外に早いかも知れない」と言っている。

資料:(社)日本糖尿病協会関東甲信越地方連絡協議会機関紙「糖友
ニュース」91号(2008・7・1)  執筆 08・06・28

◆トランプの独批判は即日本批判だ

櫻井よしこ


この記事はヘルシンキでトランプ・プーチン会談が行われている日に書い
ている。米露首脳会談の結果はわからないが、プーチン大統領にとって開
催しただけで得るものが多く、トランプ大統領にとっては、「シンガポー
ル型首脳会談」になると見てよいだろう。トランプ氏の「大言壮語」の割
には米国が得るものは甚だ少ないという意味だ。

私たちは、米朝協議で米国が明らかに北朝鮮のペースに嵌まっていること
を認めないわけにはいかない。初の米朝首脳会談は、共同声明に北朝鮮の
CVID(完全で検証可能かつ不可逆的な核の解体)という大目標を明記
するものと期待されたが、CVID抜きの漠とした内容にとどまった。

7月上旬の3回目の訪朝で、米国の要求する「非核化」の内容を改めて突き
つけたポンペオ国務長官を、北朝鮮は「強盗」にたとえた。この大胆な非
難は、金正恩氏がトランプ氏はもはや軍事オプションなど取れないと、足
下を見抜いたからであろう。

プーチン氏との首脳会談でも、トランプ氏の準備不足とロシアの脅威に対
する認識の欠落が米国にとって決定的に不利な状況を生む可能性がある。
ベルギーでのNATO(北大西洋条約機構)首脳会議を終えて7月12日、
英国に到着したトランプ氏は米露首脳会談について記者団に語った。

「君たちお気に入りの質問をするさ。(選挙に)介入したかと聞くよ。彼
は否定するかもしれないが。自分が言えることは『やったのか、2度とす
るなよ』ということだ」

NATO首脳会議から英国訪問へ、その後の米露首脳会談に至る旅で、ト
ランプ氏は「一番たやすい(easy)のはプーチンとの会談かもしれな
い」と語っている。トランプ氏は自分の向き合う人物が、ソ連崩壊を「20
世紀最大の地政学的大惨事」と見做し、28年間ソビエト帝国建て直しを夢
見てきた男であることを知らないのか。米国を外敵ナンバーワンと位置づ
け、愛国心で国論を統一したいと願うプーチン氏は2007年2月、ミュンヘ
ンでこう述べている。

「アメリカはあらゆる分野で己の国境を踏み越えている。経済、政治、人
文の分野で他国に対して自己流のやり方を押しつけようとしている」

ロシアの存在感

13年9月には「ニューヨーク・タイムズ」に寄稿した。

「米国は己を他国とは異なるユニークもしくは『例外的な存在』と見做
し、『世界の警察官』としての役割を果たすとの大義名分を掲げ、かつ実
際に他国の内政に干渉している」(木村汎、『プーチン・内政的考察』藤
原書店)

実はプーチン氏の寄稿と同じ時期(13年9月10日)に、オバマ大統領(当
時)は内戦が激化したシリアについて、「軍事介入はしない」「アメリカ
は世界の警察ではない」と演説した。これは米大統領による近代稀な戦略
的大失敗とされ、ロシアによるシリア介入を招いた。

国際社会は異なるイデオロギーや価値観を持った国々があらゆる野望と力
でせめぎ合う場だ、という現実から目を逸らし、平和を希求する話し合い
で解決できると考えたオバマ氏の浅慮だった。プーチン氏は間髪を入れ
ず、この機を利用して中東におけるロシアの存在感を飛躍的に高めた。

陰謀を巡らす指導者は陰謀を恐れる。プーチン氏はジョージアやウクライ
ナの「カラー革命」、アフリカ北部や中東諸国の「アラブの春」は米国の
経済的、軍事的支援があって初めて可能だった、ロシア国内での反プーチ
ン運動も米国の陰謀ゆえだと信じていると見られる。

決して人を信じず、妻にも心を打ちあけないが、狙いを定めた人物の取り
込みには巧みなプーチン氏を、プーチン研究の第一人者、木村汎氏は「人
誑し」と呼んだ。そのプーチン氏とトランプ氏の首脳会談で、米国が戦略
的後退に陥り、その結果、ヨーロッパ情勢が歴史的大激変に追い込まれる
可能性がある。そのとき、NATO諸国はどうなるか、日本にとって他人
事ではない。

7月11、12の両日、ベルギーで開かれたNATO首脳会議でトランプ氏が
迫った要求は、表面上の粗野とは別に、国際政治の常識に基づけば十分正
当なものだ。1949年創設のNATOは、旧ソ連の脅威から西側陣営を守る
ために結成された集団安全保障の枠組だ。これまでずっと米国が経費の
70%強を担ってきた。

トランプ氏は米国の負担が多すぎる、NATOの取り決めであるGDP比
2%の国防費という約束を守れと言っているのだ。メルケル独首相「我々
がもっと努力しなければならないのは明らかだ」と述べ、NATO諸国
も、先にカナダで開かれた先進7か国首脳会議(G7)のような後味の悪い
結末だけは避けようと必死だった。

日本はどうするのか

トランプ氏とG7で激しくやり合ったカナダ首相のトルドー氏はNATO
首脳会議初日に、イラク軍の軍事訓練強化のために、カナダ部隊250人を
新たに派遣する、今年後半には現地部隊を車輌整備、爆弾処理、治安活動
で指導する、と語った。

「カナダは向こう10年間で軍事予算70%増を目指す。それでもGDP2%
には届かないが……。冷戦真っ只中の時代同様、NATOはいまも非常に重
要な軍事同盟だ」

NATO軍は、今秋、500人の新部隊をイラクに派遣するとし、さらにア
フガニスタンでも、駐留米軍約1万5000人に対し、1万3000人だった部隊を
1万6000人に増やすと発表した。トランプ氏の「足りない、もっと増や
せ」という要求に追い立てられるNATO諸国の姿が見える。

それでもトランプ氏は言い放った。「4%だ!」と。だが、氏の悪態にも
非礼にもNATO諸国は反論できない。国防が当事国の責任であるのはト
ランプ氏の言うとおりだからだ。

NATO諸国で2%条項を守っているのは今年でようやく8か国になる見通
しだ。米国を筆頭に英国、ギリシャ、エストニア、ラトビア、リトアニ
ア、ポーランド、ルーマニアである。

エストニア以下バルト三国は旧ソ連の下で苛酷な歴史を生きた。ポーラン
ドとルーマニアも東欧圏の一員として息が詰まるようなソ連の支配下に
あった。小国の彼らは再びロシアの影響下には入りたくないのだ。

では、日本はどうするのか。ロシア、中国、北朝鮮、左翼政権の韓国。日
本周辺は核を持った恐ろしい国々が多い。だが、わが国の国防費は、トラ
ンプ氏に激しく非難されているドイツよりもずっと低い1%ぎりぎりだ。
遠くない将来、「シンゾー、いい加減にしろよ」と、トランプ氏は言わな
いだろうか。

日本は安全保障も拉致問題の解決も、およそ全面的にアメリカ頼りだ。国
防費はGDPの1%、憲法改正もできず、第2のNATO、第2のドイツ
にならないという保証はない。その時取り乱すより、いまから備えなく
て、日本の道はない。
『週刊新潮』 2018年7月26日号 日本ルネッサンス 第812回