2018年08月10日

◆全員がスパイだ」とトランプ

宮崎 正弘


平成30年(2018年)8月9日(木曜日)弐 通巻第57844号  

 「あの国からアメリカに来る学生は全員がスパイだ」とトランプ
   私的な夕食会で、おもわずホンネ? 中国は日本に異様な擂りより

慰安婦に関してのシンポジウム(8日、上海で予定されていた)を突如、
中国は中止した。日本を刺戟したくないから?

その一方で、むかしむかし日中友好に尽くした松村謙三を偲ぶ会などと、
誰もが名前さえ忘れた人を思い出した。不利になると、昨日まで敵視して
罵詈雑言を浴びせてきた日本が、急に懐かしくなったらしい。

北京で開催された「松村謙三を偲ぶ会」には富山県出身の政治家もかけつ
け、日中国交正常化に尽くした政治家の想い出を語ったそうな。

さて中国を顔面蒼白にしたトランプ大統領は、夏期休暇中だ。

ニュージャージー州にあるトランプのゴルフクラブで、8月8日、私的な
夕食会が開かれ、メラニー夫人、イバンカ夫妻、クドロー国家経済会議委
員長らが出席した。

この私的な夕食会に13人が招待されたが、主にトランプと長い友人関係
にある財界人。ペプシ会長、ボーイング、ジョンソン&ジョンソン、クラ
イスラー、アーンスト・ヤングなど錚々たる大企業幹部である。
 席上、トランプは思わずホンネを漏らしたという(サウスチャイナモー
ニングポスト、8月9日)。

「あの国からアメリカにやって来る留学生らは全員がスパイだ」

「あの国」の名指しはなかったが、誰が聞いても、どの国かは明らかだろう。

        
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 ハッカーに襲撃され情報やデータが盗まれている
   中国と北朝鮮の「情報泥棒」の手口と、その防御策

  ♪
浜口和久、江崎道朗、坂東忠信著 イラスト=富田安紀子
 『日本版 民間防衛』(青林堂)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

ときおり地政学的・軍事的な危機が迫ると、日本でも「民間防衛」につい
て熱心に語られた時代があった。昭和30年代からしばらくは、モデルがス
イスと言われた。

しかし国内擾乱、共産革命の危機が去ると皆は関心を失い、日常の安逸さ
に埋没してしまう。自衛隊退役の予備自衛官が、いかに少ないか、信じら
れないほどの体たらくを示すのが、平成の日本だ。

しかも拉致被害に遭おうと尖閣に中国の軍艦が押し寄せようと、日本の空
が敵機で蔽われようと、目の前に危機に鈍感となり、何をどうしたら良い
のか分からない。

まともな防衛策を主張すると、左翼メディアは「極右」などと言いがかり
をつける。中国の敵対行為をなかったかのように意図的な印象操作を展開
するのだから、利敵行為である。

軍事的侵攻を受けたときだけではなく、日本は24時間、中国からの「間接
侵略」を受けている。だが、国民は不感症なのだ。よほど鈍感か、無神経
か、それとも善意の塊なのだろうか?

この本は戦国武将時代からの地政学に詳しく城の研究家でもある浜口氏
と、戦中のスパイ活動や現在の諜報工作の専門家である江崎氏と、そして
移民問題に鋭角的な問題提議をつづける警視庁刑事出身の坂東氏との合
作、まさに名物トリオの執筆陣となった。

民間防衛の役割が平易に、イラスト入りで説かれ、テロ、戦争、移民問
題、そして地震、異常気象、災害など予期せぬ事態に遭遇したときに、い
かに対応するかのマニュアルでもある。

第一章の「テロとスパイ工作」、第二章『戦争』、第三章が「自然災害」
と、これらは浜口氏の執筆範囲である。第四章の『移民問題』はこの人を
おいて専門家はいないと言われる坂東氏。そして第五章「インテリジェン
ス」が江口氏と、まさしく適材適所の陣容で、内容は多彩にみえて、一貫
した整合性がある。
 
さて中国がハッカー攻撃で標的とするのは何々か?

指揮系統をずたずたにし、日常生活を成立させなくするには、まず首相官
邸、放送局、ガスタンク、水道施設、発電所、化学工場、鉄道、空港、石
油コンビナート、駅、通信網、金融ネットワークなどである。

すでに日本の官公庁や大手企業の被害は続出しているうえ、年金機構が狙
われ、125万人分の個人データが盗まれてしまった。

中国ばかりか北朝鮮のハッカー部隊も格段の進歩を遂げているとの指摘が
ある。

北はサイバー戦力の一元化を図り「人民武力部偵察局隷下にあったサイ
バー部隊121所を偵察総局の直属とした。(中略)兵力をそれまでの5500人
から3000人の規模に増強している。

その目的は韓国軍の機密資料をハッキングし、指揮系統を痲痺させること
にある。

「現役軍人や入隊対象の青年に厭戦思想を広めて、戦闘力の質的な瓦解を
実現し、国内対立を煽り、社会的混乱を増大させるなど、韓国社会を根底
から揺るがすことまで想定している」という(59p)。

 また北朝鮮は「朝鮮コンピュータセンター(総勢4500人)が中心となっ
て、日本の重要インフラのコンピュータシステムへのサイバー攻撃のシ
ミュレーションを行っている」(60p)。
 油断大敵である。

◆京都に30余しかない門跡寺院

渡邊 好造



日本全国の寺院数は約18万3千、「日本寺院総監」に掲載されているのは7万6千というが、皇族や摂家などのいわゆる高格式者の出家の対象となる『門跡(もんぜき)寺院』は、京都を中心に全部で30余りしかない。

第59代宇多天皇が、寛平10年(平安時代・898年)法皇となり、京都(右京区)の”仁和寺(にんなじ=真言宗)”にこもり、「御室(おむろ)門跡」と称したのが”門跡寺院”の始まりである。

鎌倉時代に入って、皇族や摂家が特定の寺院に出家することが定着し、室町時代には寺格としての門跡が確立され、これらの政務を担当する門跡奉行も設けられた。

その後、 江戸幕府は出家者の位階により @宮(みや)門跡、A摂家(せっけ)門跡、B清華(せいが)門跡、C公方(くぼう)門跡、D准(じゅん)門跡の5つの門跡寺院を制度化した。

最上位の「宮門跡」は、親王(皇族)、法親王(親王の宣下をえた僧)の出家者を対象としたもので、13寺院あるうち”輪王寺(りんのうじ=天台宗=茨城県日光市)”、”園満院(えんまんいん=天台宗=滋賀県大津市)”以外は全て宮家の中心であった京都市内にある。

ついでながら、”園満院”については、平成21年(2009年)5月に重要文化財の建物9棟、庭園・土地1万4千平米が寺院の借金返済のために競売となり、約10億円余りで滋賀県甲賀市の宗教法人に落札され、同年8月所有権移転が成立するという所管の文化庁もビックリの異例の事態となった。

ただし、建物以外の文化財は第2次大戦後に京都、奈良、九州などの国立博物館所蔵となっていたため無事である。

「摂家門跡」は、近衛、九条、二条、一条、鷹司の五摂家とその子弟が、「清華門跡」は、久我、三条、西園寺、徳大寺、花山院(かさんのいん)、大炊御門(おおいのみかど)、今出川、醍醐、広幡(ひろはた)などの公家、「公方門跡」は武家、「准門跡」は"脇門跡"ともいわれ、特別に認められたその他の高格式者がそれぞれ対象となる。

さて注目したいのは、京都市内11の「宮門跡寺院」のうち3つがここ「山科」にあることで、”勧修寺(かじゅうじ)=真言宗”、”毘沙門堂(びしゃもんどう)=天台宗”、そして”青蓮院・大日堂(だいにちどう)=天台宗=東山区の青蓮院の飛び地庭園”がそれである。

その他の門跡寺院も含めると、”安祥寺(あんしょうじ)=真言宗”、”随心院(ずいしんいん)=真言宗”が加わり、改めて概略にふれておく。

”勧修寺”は、「山科門跡」ともいい、水戸光圀寄進の勧修寺型燈篭、境内の"氷池園"という名の平安時代・池泉園で知られる。”毘沙門堂”は、狩野益信筆の書院の襖絵116面が有名。”青蓮院・大日堂”は、将軍塚といわれる展望台からの京都中心部と山科の眺望が素晴らしい。

”安祥寺”は、広大な領地を誇り上寺と下寺をもつ寺院であるが、現在院内への入場は残念ながらできない。”随心院”は、平安時代36歌仙の一人"小野小町"一族所縁の邸宅跡に創建された寺院で、境内は国史跡である。

「山科」は、『門跡寺院』の存在でみても、歴史と伝統を引き継ぐ由緒ある京都の一角なのである。(再掲)

2018年08月09日

◆竹下派、「自主投票」と言う名の「分裂投票」

杉浦 正章


竹下(亘)の力量不足が主因ー自民総裁選

名門竹下派の総裁選への対応が空中分解して、自民党総裁・安倍晋三の事
実上独走態勢が固まった。安倍は9月の総裁選挙で所属国会議員8割以上
の支持を受けて3選される流れとなっている。安倍3選は筆者がもともと
「決まり」と報じてきたが、ますます「決まり」となった。

国会議員の安倍支持勢力は細田派94人、麻生派59人、岸田派48人、二階派
44人、石原派12人の大勢となる見通しだ。405票ある国会議員票の8割近
くを安倍がまとめつつある。

一方竹下派の参院議員は大勢が元幹事長・石破茂を支持する方向だ。立候
補の意欲を見せる石破は、自派と参院の竹下派21人程度の支持で、せいぜ
い50票弱を獲得するする方向にとどまる。

石破の狙いは3年後の総裁選にあるが、安倍の圧勝は、立候補を見送り安
倍支持に回った前外相・岸田文男に勝てない流れを生じさせそうだ。岸田
が立候補する際には安倍派が岸田に雪崩を打つからだ。

竹下派の内部事情は衆参で月とすっぽんほど異なる。その原因は総務会
長・竹下亘の指導力欠如に如実に表れている。同派の衆院側は、経済再生
担当相・茂木敏充、厚生労働相・加藤勝信ら8割超が安倍支持へ動いている。

一方参院は元参院議員会長・青木幹雄が反安倍路線であり、政界引退後も
影響力を保持している。その理由は極めて個人的で、青木の長男一彦がは
2016年参院選から合区された「鳥取・島根」選挙区で、石破の手厚い
支援を受けていることだ。青木としては、石破の協力を得て、一彦の選挙
基盤を盤石にしたい思惑があるのだ。

竹下はこのほど同派衆参両院議員らから総裁選への対応を聴取したが、衆
院23人が安倍支持を表明、石破支持は竹下自身を含めて6人程度にとど
まっている。

参院側は21人の大半が石破支持であり、青木の影響を感じさせる。「鉄の
結束」を誇り、遠く佐藤栄作派に源流を置く竹下派も、近年では総裁選で
自派候補を出せないままとなっている。

異母兄に当たる故竹下登と亘の政治力の差が如実に出ているのだろう。竹
下は自分自身が石破支持のようであり、この方向で派内をまとめようとし
たが、安倍支持勢力の反発を食らい、力量の不足を見せつけた。8日の幹
部会でも竹下は一本化を試みたが、実現に至らなかった。結局竹下派は
「自主投票」という名の分裂投票に突入するしかない方向となって来た。

福田康夫の任期途中での総裁辞任に伴う2008年総裁選挙でも、派内の 支
持は3候補に分断されている。自民党内7派閥のうち態度を表明してい
なかった石原派12人は9日の幹部会合で安倍支持を打ち出す方向だ。


◆上海の汚職構造の闇が暴かれ

宮崎 正弘


平成30年(2018年)8月8日(水曜日)通巻第5781号  

 上海の汚職構造の闇が暴かれ、國際空港集団のボスが拘束
   上海宝山製鉄のボス失脚以後、初めての「虎」退治

上海の紅橋と浦東という2つの国際空港を管理・監督する上海空港当局の
ボス、伍健栄(56歳)は、理由が明らかにされないまま、上海市検査当局に
よって拘束された。

警察、検事側は、「上海規律監視監察委員会が行っていること」として、
情報を把握していないとした。
 
監査当局は「伍健栄は党規約違反ばかりか、法律も犯した」とだけ発表し
ている。伍は共産主義青年団出身で、上海副書記を経験している。

上海では宝山製鉄のボスだった?宝浚が、党規違反、汚職などで17年の
懲役を言い渡されている。この上海の大物は、副市長を経験しており、上
海始まって以来の「虎退治」と騒がれた。

伍健栄の拘束によって、上海航空集団の株価は6日、8%近く下落した。
同集団は2017年度経常利益を16%増加の80億元と「好成績」を誇示したば
かりだった。
        

◆摩訶不思議な米露首脳会談

櫻井よしこ


敵味方逆転の摩訶不思議な米露首脳会談 トランプ氏の非難はいつか必
ず日本にも

7月16日、フィンランド・ヘルシンキでの米露首脳会談はおよそ万人の予
想を超えた。米CNNのクーパー・アンダーソン記者は「自分が報じてき
たこれまでの如何なる首脳会談に較べても、米国と米国民にとって恥ずか
しい内容だった」と伝えた。CNNはトランプ政権に必要以上に厳しい
が、今回は、「米国人ならそう感ずるだろう」と、共鳴できた。

首脳会談の前、米国の複数のメディアは、トランプ米大統領が単独でプー
チン露大統領と会談することへの懸念を報じていた。どのような言質をと
られるやもしれない、単独会談は回避する、もしくはできるだけ短くすべ
きだという指摘だった。

他方、ホワイトハウスはトランプ氏に、プーチン氏には強く厳しい姿勢で
対処するように、その方が「トランプ氏自身の見映えがよくなる」と説得
していたと、米「ウォールストリート・ジャーナル」紙が伝えている。

ジョン・ボルトン米大統領補佐官らは、トランプ氏に米露関係の分析や各
議題での攻め方などを詳細に説明したはずだ。KGB(旧ソ連国家保安委
員会)出身のプーチン氏に関する客観的分析や米露関係の戦略的解釈より
も、「トランプ氏自身が格好よく見える」という、トランプ氏のエゴに訴
える論法で説得しようとした事実は、身近な側近でさえもトランプ氏の知
的水準をその程度に見ていたということなのだろうか。

結局、首脳同士のサシの会談は2時間も続き、公式の議事録もない。加え
て全体会合が2時間、計4時間の会談を受けてトランプ・プーチン両首脳が
会見した。

トランプ氏がへりくだり、プーチン氏が自信の微笑をうかべた同会見は、
味方が敵になり、敵が味方になる摩訶不思議な歴史の大逆転をまざまざと
見せた。トランプ氏を掌中におさめたとでも言うかのような余裕を感じさ
せたプーチン氏が、トランプ氏の為に記者団の質問に答えた場面さえあっ
た。クリミア半島問題である。

トランプ氏はロシアのクリミア半島の強奪についてさしたる反対論は唱え
ていない。それどころか、クリミア在住ロシア人の多さ故に、同地はロシ
ア領だとの見方を示したことさえある。

プーチン氏はしかし、トランプ氏をかばうようにこう語った。

「トランプ大統領は、クリミア併合は違法だという主張を維持している。
ロシアの考えは別だが」と。

ロシアによる米大統領選挙介入疑惑で米AP通信が、トランプ氏に米国の
情報機関とプーチン氏の、「どちらを信ずるのか」と質した。トランプ氏
はまともに答えなかったが、プーチン氏はこう語った。

「私は情報機関の一員だった。(偽の)資料がどのように作成されるかも
知っている。おまけにわがロシアは民主主義国だ」

米情報機関が偽の資料を作成したとも、「米国同様の民主主義国」である
ロシアが、他国の米大統領選挙に介入することなどあり得ないという主張
ともとれる。噴飯物である。だがトランプ氏はプーチン氏の隣で頷いていた。

トランプ氏は70年近く同盟関係にあるNATO(北大西洋条約機構)諸国
を酷い言葉で非難した一方で、いまや理念も体制も異なるプーチン氏のロ
シアと、核や中東問題などを共に解決できるという構えだ。

長年ロシアを共通の敵として団結してきたNATOの大国、ドイツは軍事
支出がGDPの1.25%にとどまるとしてメルケル首相がトランプ氏に面罵
された。日本はドイツ同様敗戦国として、戦後を経済中心で生きてきた。
日本はドイツよりも尚、米国頼りだ。ドイツよりも国防費のGDP比率は
小さく、憲法改正もできていない。トランプ氏の非難はいつか必ず、ドイ
ツ同様日本に向かってくるだろう。

『週刊ダイヤモンド』 2018年7月28日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1241

◆「痴呆」から「認知症」へ

                         向市 眞知

有吉佐和子さんの小説「恍惚の人」でボケ老人が話題になって、何年が経つでしょうか。「ボケ」も「痴呆」もやはり不適切な呼び方だと思います。やはり「認知症」「認知障害」が、用語としては適切と思います。
 
<脳生理学によれば、脳の神経細胞は140億個というとんでもないたくさんの数だそうです。しかし、実際に働いているのは40億個だけ。脳は20歳頃に発達を終え、脳のピーク時の重量は1400gだそうです。20歳のピークを過ぎると、1日に10万個ずつ脳の神経細胞がダメになっていき、脳細胞の数は日に日に減少。
 
1日に10万個、1年365日で3650万個が失われていき、10年で3億6500万個が失われ、30年で約10億個が失われる計算になります。すなわち20歳で40億個働いていた脳の神経細胞が50歳で30億個になり、80歳で20億個になる。つまりピーク時の重量より100gも重量が減るのです。>

この話を知った時、物忘れがひどくなって当たり前と納得してしまいました。一生懸命考えても考える脳の量が減っているのだから、思い出せないし覚えられなくて当然と思ってしまいました。人の名前が出てこない、ふと用事を思いついて立ってみたものの「さて何をするつもりだったのか?」わからなくなってしまう。まさしく老化の入口なのでしょう。

しかし、「認知症」となるともっともっと記憶の障害が強くなるわけです。よく言われるように自分が朝ごはんを食べたことさえも忘れてしまう。とすれば、一瞬のうちに自分のしたことを忘れてしまうという、とてもつらい体験のなかで暮していることになります。
 
1週間前の記憶、昨日の記憶、今朝の記憶も忘れてしまう。自分のしたことを忘れて記憶していないということは、記憶喪失に近い感覚で、体験の積み重ねができないことになります。

すなわち毎日毎日新しい体験ばかりが自分に降りかかってくるという、緊張とストレスの連続の中で生きてゆかねばならないことになります。そんな認識の中で生きている高齢者の辛さをまずわかってあげてほしいと思います。

「認知症」の人が、それぞれの脳に残された能力の範囲で一生懸命に世界を認識しようとしている。私達からみればその世界が非現実的でまちがっている世界であっても、高齢者からすれば他に考えようのない現実なのです。それを頭から否定されたらどうしてよいかわからなくなって、混乱におちいってしまうことになります。
 
「認知症」の人への対応の奥義は「(相手を)説得するより(自分が)納得する」ことです。しかし、だんだんと世の中の決まりごとを超えた行動をとりはじめるのが、「認知症」や「精神科疾患」の特長です。客観的に見ればありえない話が患者さんを支配します。

もの取られ妄想とか、しっと妄想といわれる行動です。たとえば妻が「ここに置いてあった財布を知らないか?」と夫にたずねたとします。夫が「知らないよ。見なかったよ。」と答えます。

夫の答えに対して通常妻は「おかしいなあ、どこへ置いたのかなあ。」と自分の態度を修正するのです。しかし、「認知症」となると自分の態度が修正できません。夫の「知らない。見なかった」という答えに対して「おかしい?!私の財布をとったな?!かくしたな?!」と思い始めるのです。
 
今のところ「認知症」に対する効果的な治療は見つかっていません。まず周りの者が「認知症」を理解し、対処のしかたを身につけることが現実的な道です。そして、その対処の仕方を授けてくれるのが、医療や介護の専門家です。

「老人性認知症疾患センター」という相談機関があります。精神科のある総合病院などに設置されており、大阪全域の場合、9ヶ所の病院にあります。ここでは、「認知症」についての診断と、医療・福祉サービスの情報提供を行っています。まずしっかりと診断を受けないことには対処方法も立てられません。

介護保険をはじめ福祉サービスをうける場合も、入院や施設入所をする場合も、すべて医師の診断書がなければ利用できないことをご存知でしょうか。診療をうける必要を感じない「認知症」の本人を診察につれて行くことが最大の難関となります。もし高齢者に認知症状を疑われたら、本人の身体に関する訴えに注意しておきましょう。

「もの忘れがひどくなった」とか「夜ぐっすり眠れない」という症状は、案外本人も自覚しているものです。それを理由に「受診」をすすめてみましょう。最近は「精神科」という看板ではなく、「もの忘れ外来」という看板をあげている病院もふえてきています。

「おしっこの出が悪い」でも何でも構いません。ご本人の訴えをもとに医師に診てもらうチャンスを作り出してください。精神科でなくても内科系の開業医でも「認知症」の理解はあります。受診にこぎつければ、医師は検査や服薬をすすめてくれます。

「おかしい」と気付いた家族が、本人の診察の前か後かに医師へ本人の在宅の様子を伝えておけば医師は上手に診察をしてくれます。家族の方々も皆それぞれに生活があるのですから、その生活までもが脅かされる問題行動が続く場合には、施設の利用も考えていかざるを得な
いと思います。         (了)
             大阪厚生年金病院 ソーシャルワーカー

2018年08月08日

◆紅海ルートの原油は一日480万バーレル

宮崎 正弘


平成30年(2018年)8月3日(金曜日)通巻第5777号  

 紅海ルートの原油は一日480万バーレルという生命線
  イスラエル、多国籍軍もしくは有志連合の軍事行動に参加の用意

8月1日、ハイファの海軍幹部学校卒業式に臨んだネタニヤフ首相は、も
しイエーメンの武装組織フーシ(イランの代理兵をいわれる)が、攻撃を
続けるのであれば、イスラエルとしては選択肢が狭まり、多国籍軍あるい
は有志連合が組織されるなら、それに参加する用意がある」と演説した。

これは先週、サウジアラビアのタンカー弐隻が、バアルマンダブ海峡を通
過中に、イエーメンからのミサイル攻撃を受け、一隻が被弾し、サウジが
「当面の間、紅海ルートからの原油運搬を取りやめる」としたためである。

バアルマンダブ海峡は、紅海の出入り口にある狭窄な海峡で、幅は29キ
ロ、イエーメンの対岸はジブチとエリトリアである。

エリトリアはエチオピアの出口に位置し、ジブチには米軍基地、自衛隊、
英国軍に加えて中国人民解放軍の軍事基地があり、アデン湾の海賊退治を
主任務に日夜警戒し、タンカーなどの安全航行を護衛している。この航路
を通る船舶は夥しく、アデン湾からスエズ運河を抜ける多くの船舶がある
が、とりわけ原油タンカーが一日に480万バーレルを運ぶ、もっともクリ
ティカルな航路である。

一方、ホルムズ海峡に関しては、イランが閉鎖する用意があるといえば、
ポンペオ国務長官は「イランを支配するのはマフィア。経済制裁を強化す
る」などと言葉の戦争をエスカレートさせる一方で、トランプ大統領は唐
突に「イランの指導者といつでも会談する」とした。これに対してもイラ
ン政府の反応はまだない。
      

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上海の観光名所「新天地」の隅っこ、ひっそりと中国共産党第一回大会記
念館がある

嘘で固められた歴史改竄の原点が、これだ

  ♪
石平『中国五千年の虚言史』(徳間書店)
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先週から中国で大騒ぎとなっているのは偽ワクチンである。すでに45万人
分が、投与された。いまのところ死人が出ていないが、当局は製薬メー
カーの16人を逮捕した。吉林省の怪しげなワクチン・メーカーは、偽薬
で大儲けしてきた札付きのブラックと言われた。

かつては中国製ペットフーズで、米国の犬猫およそ1万匹が死亡したた
め、爾来、米国では中国製に慎重である。粉ミルクでは中国国内で赤ちゃ
んの死亡事件が続出した。

日本関連で言えば「毒餃子事件」があった。日本に来る中国人ツアーは必
ず日本製の粉ミルクを爆買いした。

前々から評者(宮崎)も、口すっぱく言ってきたが「中国人は朝起きてか
ら寝るまで、生まれてから死ぬまで嘘をつく」のである。五千年、一貫し
てそうなのである。

この本は元中国人だった石平氏だからこそ、「嘘が中国の文化である」と
断言できるのである。

そもそも「五千年」という歴史そのものが真っ赤な嘘であり、中国史は、
秦の始皇帝から延々と、ひたすら嘘だけが述べられている。

本書は、それを王朝ごとに、きわめて簡潔に、何が嘘であり、真実が奈辺
にあるかを秦、漢、新、後漢、三国鼎立、随・唐、宋、元、明、清、忠仮
眠国(中華民国)。そして現代の習王朝までの偽史を適格に暴く。

生活も出世も、すべてが嘘で塗り固められている。イデオロギーも、文学
も、嘘に満ちていて、だから中国は一級の芸術が出てこなくなった。

なぜこうなったのかを石平氏は次のように解き明かす。

「日本では『嘘つきは泥棒の始まり』であるが、中国では『嘘つきほど成
功する』なのだ。清王朝末期の李宗吾という儒学者は歴代の皇帝や古来の
英雄を分析し、1911年から『厚黒学』『厚黒経』といった、乱世を生きる
中国四千年の成功哲学についての論考を発表した。(中略)成功の要諦
は、『面の皮は城壁より厚く、腹は石炭より黒く生きよ』というものであ
り、いかに鉄面皮で恥知らずになるか、そしてどこまでも腹黒く、自分の
利益のために何でもすることが重要だと説いている」のである。

いまの中国人が学校で習う嘘だらけの歴史は、共産党がいかに由緒正し
く、しかも抗日戦争を戦った主体であり、権力に合法性があるかを徹底的
に偽史観の塊で記述している。

共産党は匪賊、山賊が本質であり、抗日戦争は国民党が戦ったという真実
を語ると「偽史」と批判される。でっち上げの成功例が「南京大虐殺」
「731部隊」などだ。

なにしろ「第1回共産党大会」なるものが、すこぶる怪しいのである。

上海の観光名所「新天地」にひっそりと中国共産党第1回大会記念館があ
るのだが、嘘で固められた歴史改竄の原点が、これだ。

この場所は元フランス租界である。会場となったのは李漢俊の自宅だっ
た。評者(宮崎)も、何回か上海にある「中国共産党第1次全国代表大会
跡地記念館」を見学したことがある。

飾ってある金ぴかの銅像、初回参加者13名のレリーフ、当時、確かに参加
はしたが、チンピラでしかなかった毛沢東が、会議で発言しているオブ
ジェも飾られていて、思わず吹き出しそうになる。

共産党は陳独秀が創立した。この指導者は歴史から殆ど抹消された。
周恩来はこのとき巴里にいて、会議には欠席しているし、戴季陶は、この
ときすでに党を離れて、日本にいた。

ならば誰々が参加したのか?。

 李漢俊(東大出身)、李達(東大)、陳公博、包恵僧(陳独秀の代
理)、張国寿、劉仁静、陳譚秋、董必武(日本大学)、毛沢東、何淑衝、
トウ恩銘、王尽美、周仏海(東大)、この13人にコミンテルンからマーリ
ンと、ニコリスキーが派遣されていた。

欠席にもかかわらず陳独秀が委員長となり、役員も決められているが、そ
こに毛沢東の名前はない。つまり、毛沢東はこの時点でヒラでしかなく、
彼の主導権が確立されるのは、鄭義会議以後である。

さて石平氏は、その後、この創立メンバーの悲運をたどる。

共産党史が決して語らない事実とは、李達はいったん離党し、共産党政権
成立後復党するが、「毛沢東を批判したため、文化大革命で惨殺された。
李漢俊ものちに中国共産党を離党、国民党に加入したが、国民党の分裂・
紛争の中で処刑」となった。

「陳公博と周仏海は王兆銘政権に参加し、日中戦争でも日本に協力したた
め、戦後の中国では『売国奴』扱いされた。結局、中国共産党のなかで順
調に生き延びたのは、毛沢東と董必武の2人しかいない」のである。

つまり、共産党などと独自の自主的な政党を名乗るなど僭越であり、実態
はコミンテルンシナ支部でしかなかったのだ。

目から鱗の、真実の中国史は、それならいったいどうなるのだろう?
    

◆トランプの独批判は即日本批判だ

櫻井よしこ


この記事はヘルシンキでトランプ・プーチン会談が行われている日に書い
ている。米露首脳会談の結果はわからないが、プーチン大統領にとって開
催しただけで得るものが多く、トランプ大統領にとっては、「シンガポー
ル型首脳会談」になると見てよいだろう。トランプ氏の「大言壮語」の割
には米国が得るものは甚だ少ないという意味だ。

私たちは、米朝協議で米国が明らかに北朝鮮のペースに嵌まっていること
を認めないわけにはいかない。初の米朝首脳会談は、共同声明に北朝鮮の
CVID(完全で検証可能かつ不可逆的な核の解体)という大目標を明記
するものと期待されたが、CVID抜きの漠とした内容にとどまった。

7月上旬の3回目の訪朝で、米国の要求する「非核化」の内容を改めて突き
つけたポンペオ国務長官を、北朝鮮は「強盗」にたとえた。この大胆な非
難は、金正恩氏がトランプ氏はもはや軍事オプションなど取れないと、足
下を見抜いたからであろう。

プーチン氏との首脳会談でも、トランプ氏の準備不足とロシアの脅威に対
する認識の欠落が米国にとって決定的に不利な状況を生む可能性がある。
ベルギーでのNATO(北大西洋条約機構)首脳会議を終えて7月12日、
英国に到着したトランプ氏は米露首脳会談について記者団に語った。

「君たちお気に入りの質問をするさ。(選挙に)介入したかと聞くよ。彼
は否定するかもしれないが。自分が言えることは『やったのか、2度とす
るなよ』ということだ」

NATO首脳会議から英国訪問へ、その後の米露首脳会談に至る旅で、ト
ランプ氏は「一番たやすい(easy)のはプーチンとの会談かもしれな
い」と語っている。トランプ氏は自分の向き合う人物が、ソ連崩壊を「20
世紀最大の地政学的大惨事」と見做し、28年間ソビエト帝国建て直しを夢
見てきた男であることを知らないのか。米国を外敵ナンバーワンと位置づ
け、愛国心で国論を統一したいと願うプーチン氏は2007年2月、ミュンヘ
ンでこう述べている。

「アメリカはあらゆる分野で己の国境を踏み越えている。経済、政治、人
文の分野で他国に対して自己流のやり方を押しつけようとしている」

ロシアの存在感

13年9月には「ニューヨーク・タイムズ」に寄稿した。

「米国は己を他国とは異なるユニークもしくは『例外的な存在』と見做
し、『世界の警察官』としての役割を果たすとの大義名分を掲げ、かつ実
際に他国の内政に干渉している」(木村汎、『プーチン・内政的考察』藤
原書店)

実はプーチン氏の寄稿と同じ時期(13年9月10日)に、オバマ大統領(当
時)は内戦が激化したシリアについて、「軍事介入はしない」「アメリカ
は世界の警察ではない」と演説した。これは米大統領による近代稀な戦略
的大失敗とされ、ロシアによるシリア介入を招いた。

国際社会は異なるイ デオロギーや価値観を持った国々があらゆる野望と
力でせめぎ合う場だ、 という現実から目を逸らし、平和を希求する話し
合いで解決できると考え たオバマ氏の浅慮だった。プーチン氏は間髪を
入れず、この機を利用して 中東におけるロシアの存在感を飛躍的に高めた。

陰謀を巡らす指導者は陰謀を恐れる。プーチン氏はジョージアやウクライ
ナの「カラー革命」、アフリカ北部や中東諸国の「アラブの春」は米国の
経済的、軍事的支援があって初めて可能だった、ロシア国内での反プーチ
ン運動も米国の陰謀ゆえだと信じていると見られる。

決して人を信じず、妻にも心を打ちあけないが、狙いを定めた人物の取り
込みには巧みなプーチン氏を、プーチン研究の第一人者、木村汎氏は「人
誑し」と呼んだ。そのプーチン氏とトランプ氏の首脳会談で、米国が戦略
的後退に陥り、その結果、ヨーロッパ情勢が歴史的大激変に追い込まれる
可能性がある。そのとき、NATO諸国はどうなるか、日本にとって他人
事ではない。

7月11、12の両日、ベルギーで開かれたNATO首脳会議でトランプ氏が
迫った要求は、表面上の粗野とは別に、国際政治の常識に基づけば十分正
当なものだ。1949年創設のNATOは、旧ソ連の脅威から西側陣営を守る
ために結成された集団安全保障の枠組だ。これまでずっと米国が経費の
70%強を担ってきた。

トランプ氏は米国の負担が多すぎる、NATOの取り決めであるGDP比
2%の国防費という約束を守れと言っているのだ。メルケル独首相は
「我々がもっと努力しなければならないのは明らかだ」と述べ、NATO
諸国も、先にカナダで開かれた先進7か国首脳会議(G7)のような後味の
悪い結末だけは避けようと必死だった。

日本はどうするのか

トランプ氏とG7で激しくやり合ったカナダ首相のトルドー氏は、
NATO首脳会議初日に、イラク軍の軍事訓練強化のために、カナダ部隊
250人を新たに派遣する、今年後半には現地部隊を車輌整備、爆弾処理、
治安活動で指導する、と語った。

「カナダは向こう10年間で軍事予算70%増を目指す。それでもGDP2%
には届かないが……。冷戦真っ只中の時代同様、NATOはいまも非常に重
要な軍事同盟だ」

NATO軍は、今秋、500人の新部隊をイラクに派遣するとし、さらにア
フガニスタンでも、駐留米軍約1万5000人に対し、1万3000人だった部隊を
1万6000人に増やすと発表した。トランプ氏の「足りない、もっと増や
せ」という要求に追い立てられるNATO諸国の姿が見える。

それでもトランプ氏は言い放った。「4%だ!」と。だが、氏の悪態にも
非礼にもNATO諸国は反論できない。国防が当事国の責任であるのはト
ランプ氏の言うとおりだからだ。

NATO諸国で2%条項を守っているのは今年でようやく8か国になる見通
しだ。米国を筆頭に英国、ギリシャ、エストニア、ラトビア、リトアニ
ア、ポーランド、ルーマニアである。

エストニア以下バルト三国は旧ソ連の下で苛酷な歴史を生きた。ポーラン
ドとルーマニアも東欧圏の一員として息が詰まるようなソ連の支配下に
あった。小国の彼らは再びロシアの影響下には入りたくないのだ。

では、日本はどうするのか。ロシア、中国、北朝鮮、左翼政権の韓国。日
本周辺は核を持った恐ろしい国々が多い。だが、わが国の国防費は、トラ
ンプ氏に激しく非難されているドイツよりもずっと低い1%ぎりぎりだ。
遠くない将来、「シンゾー、いい加減にしろよ」と、トランプ氏は言わな
いだろうか。

日本は安全保障も拉致問題の解決も、およそ全面的にアメリカ頼りだ。国
防費はGDPの1%、憲法改正もできず、第2のNATO、第2のドイツ
にならないという保証はない。その時取り乱すより、いまから備えなく
て、日本の道はない。
『週刊新潮』 2018年7月26日号 日本ルネッサンス 第812回

◆加齢疾病連発に悩まされた夏

石岡 荘十


今日書こう、明日こそはと思いながら、胸や背中を孫の手で掻くのに忙し
くて今日に至ってしまった。何の話か。帯状疱疹“事件”の経緯についてである。

夏は、典型的な加齢疾病といわれる病につぎつぎと襲われ、悪戦苦闘した
3ヶ月だった。この間、私を襲ったのは帯状疱疹。発症から3ヶ月、やっと
終息にこぎつけたと思ったら今度は、加齢黄班変性といわれる眼球の疾病
である。これについては今なお加療の真っ只中であり、別稿で報告したい。

帯状疱疹の兆しが現れたのは6月の末のことだった。「夏バテ」というの
は夏だけの症状だと思われがちだが、気候の変化が激しい梅雨時や初夏に
も起こりやすい。

気温の乱高下に老体がついていけず、何もする気がしない。全身がともか
くけだるい。にもかかわらず梅雨明けの7月、以前からの約束もあって、
猛暑の中、秩父盆地のど真ん中にあるゴルフ場に出陣。疲労困憊、這うよ
うにして帰宅した。完全に体力を消耗していた。これが祟った。

思い返すと、その数日前すでに左胸の皮膚に違和感があり肋骨のあたりに
ピリピリ感があった。間もなく胸から左肩甲骨下にかけて赤い斑点がぽつ
ぽつ。ゴルフの後から左側の神経に沿って激痛が走るようになった。

にもかかわらず、まだ帯状疱疹とは気がつかず、市販のかゆみ止め軟膏
(レスタミン)を塗ったり、サロンパスの湿布を患部に張ったりして凌ご
うと試みていた。無知は恐ろしい。

そうこうしているうちに、赤い斑点は水ぶくれとなり、夜はベッドの上で
転々。背中を孫の手で掻きまくったものだから水ぶくれが破れ、かさぶた
へと変わったがかゆみと痛みは治まらなかった。

遂にたまらず、行きつけの病院の皮膚科に駆け込んだのはゴルフから3週
間を過ぎていた。

「帯状疱疹です。ずいぶん我慢強い方ですねぇ。もうかさぶたになり始め
ていますから、ペインクリニックに行きなさい」という。

帯状疱疹は、幼児に経験した水ぼうそうのウイルスが原因だ。ウイルスは
長い間体内の神経節に潜んでいて、加齢(50歳代〜70歳代)やストレス、
過労などが引き金となってウイルスに対する免疫力が低下すると、潜んで
いたウイルスが再び活動を始める。ウイルスは神経を伝わって皮膚に達
し、帯状疱疹として発症するとされている。

東京女子医大の統計によると、発疹する部位は、一番多いのが私のケー
ス。上肢〜胸背部(31.2%)、次いで腹背部(19.6%)、そして怖いのは
頭部〜顔面(17.6%)などとなっており、高校の友人が右顔面に発症。何
年か前のことだが、今でも顔面の筋肉がこわばっている。

最悪、失明をしたケースも報告されている。頚部〜上肢にも発症する。い
ずれの場合も体の左右どちらか一方に現れるのが特徴だ。

発症してすぐ気づき、すぐ適切な治療を受けた場合でも3週間は皮膚の痛
みや痒みが続く。痛みがやや治まってからも神経の痛みは容易に治まらな
い。数年間、痛みが消えなかったと言う症例もある厄介な加齢疾病である。

まして、私のケースは、初期治療のタイミングを逸した。その祟りで、い
まだにときどき、肋間や背中にピリピリと痛みが走る。

さて治療法である。皮膚科では坑ヘルペスウイルス薬を処方する。ウイル
スの増殖を抑える飲み薬で初期の痛みや痒みを抑える効果があるが、私は
そのチャンスを逃し、我慢強く無為に苦しんだ。

ペインクリニックでは、飲み薬と塗り薬を処方される。

【飲み薬】、

・鎮痛剤リリカプセル:今年4月、保健が適用されることとなった帯状疱
疹の最新特効薬だ。

・セレコックス:リリカカプセルが効かない場合に飲む頓服錠剤。炎症に
よる腫れや痛みを和らげる。
・メチコバール:末梢神経のしびれ、麻痺、痛みを改善する。

【塗り薬】、

・強力レスタミンコーチゾンコーワ(軟膏)

ペインクリニックでの治療5週間。月初旬にくすりの処方が終わった。発
症から3ヶ月の闘病であった。この間体力をつけようと金に糸目をつけず
美食に走った結果、太ってしまった。


2018年08月07日

◆最近の泌尿器科腹腔鏡手術

坂本 亘(医師)

泌尿器科領域の腹腔鏡手術をご説明します。

腹腔鏡手術とは、1cmぐらいの小さな穴をお腹に数箇所あけて、ガスで膨らませたお腹のなかを、小さな穴から挿入した内視鏡を使ってテレビ画面に写し、テレビ画面を見ながら、別の小さな穴から挿入した鉗子やはさみを使って行われる手術です。
 
最大のメリットは、小さな傷で手術が行われるため、術後の痛みが少ないこと、早期離床や早期退院が可能です。 問題は、手術は難しく一定の技術が必ず要求されることです。
 
泌尿器科で初めて主な腹腔鏡手術がなされたのは1991年の腹腔鏡下の腎摘出術ですが、その後、十数年の間に瞬く間に世界中に広まり、現在では、多くの施設で、さまざまな泌尿器科手術が、腹腔鏡で行われるようになっています。

 例を挙げますと、悪性腎腫瘍に対する腎全摘出術、腎部分切除術、腎尿管全摘除術、副腎腫瘍摘除術、睾丸腫瘍に対する後腹膜リンパ節郭清術、前立腺癌に対する前立腺全摘除、小児領域では腹腔内停留睾丸、水腎症に対する腎盂形成術、膀胱尿管新吻合術などがあります。

前立腺全摘除、腎部分切除、腎盂形成術など、腹腔鏡では特に難しいとされてきた縫合操作を必要とする手術も、普及してきています。

 2004年に泌尿器科腹腔鏡手術の技術認定制度が発足したことがあげられます。 この制度は、認定を希望するものは、自ら執刀した腹腔鏡手術をビデオに撮影し、そのビデオを数名の審査員が全行程を審査し、この手術技術が妥当か否かを判定するというものです。 一定基準をクリアーしなければ、技術認定を受けることはできません。

 技術認定者は、日本内視鏡外科学会のインターネット上で公開されています。泌尿器科では、初年度は約160人が応募し、約60%が技術認定を授与されています。

 このように、腹腔鏡手術が持つ多くのメリットを損なうことなく、安全かつ確実で患者さんの体に優しい負担の少ない腹腔鏡手術が多くの施設で行われるようになってきているのが最近の泌尿器科手術の傾向です。
     
(大阪市立総合医療センター  泌尿器科・小児泌尿器科)