2018年10月31日

◆中国と対峙する米政権を日本は支えよ

櫻井よしこ


マイク・ペンス米副大統領が10月4日、アメリカの有力シンクタンクのハ
ドソン研究所で行った演説は凄まじかった。トランプ政権が中国の脅威を
どれ程深刻にとらえているか、また中国に対してどれ程厳しい戦いを展開
しようとしているかを世界に周知させた演説だった。

米中はまさに「新たなる冷戦」(米クレアモント・マッケンナ大学ケック
国際戦略研究所所長、ミンシン・ペイ氏)の中で鎬を削っていることを示
すもので、日本は政府も民間も、このアメリカの決意を十分に理解し日本
の国益につなげなければならない。

ペンス氏は演説の冒頭、ハドソン研究所中国戦略センター所長のマイケ
ル・ピルズベリー博士の名前を口にして、研究所に招かれたことに謝意を
表明している。

ピルズベリー氏は3年前に、『China2049』を世に問うた。日本語に
も訳された同書はワシントンに一大旋風を巻き起こした。著書の中で氏
は、自身が米政府の一員として長年中国と関わり、一貫して手厚い保護と
援助を中国に与えるようアメリカ政府の政策を立案してきた体験を詳述し
ている。

豊かになれば中国はアメリカのように自由で民主的な国になりたいと望む
に違いないと信じて援助してきたが、中国はアメリカの考え方や価値観に
は反対の立場であり、中国がアメリカのようになりたいと考えることなど
期待できないとの結論を下している。

自身も含めてアメリカは中国に騙されていたという痛恨の思いを、援助と
裏切りの生々しい具体例を挙げつつ、氏はこれでもかこれでもかとばかり
書き連ねたのだ。

ピルズベリー氏の個人名を敢えて演説冒頭で口にしたペンス氏は、明らか
にピルズベリー氏の中国体験に学んでいると考えてよいだろう。

余談だが、ピルズベリー氏を最初に日本に招いたのは、私の主宰するシン
クタンク、「国家基本問題研究所」である。2010年の国際セミナー、「イ
ンド洋の覇権争い・21世紀の大戦略と日米同盟」で日米中印の国際会議を
開催し、副理事長・田久保忠衛氏の長年の友人である中国専門家のピルズ
ベリー氏に声をかけたのだ。

トランプ氏の本心

ペンス氏はトランプ大統領と習近平国家主席は過去2年足らずの間に「強
い個人的絆」を築いたと語る一方で、「今日、私は米国民が知るべきこと
を語りに来た」として、「北京は国ぐるみであらゆる政治的、経済的、軍
事的手段を使い、さらに宣伝戦を通して米国内で影響力を強め中国の国益
につなげようとしている」と、約1時間にわたって強烈な非難の言葉を連
ねた。

現在のアメリカの対中政策はトランプ大統領が昨年12月に発表した「国家
安全保障戦略」で明らかなように、それ以前の政権の対中政策とは異なる
と、ペンス氏は強調する。

右の戦略を現場の戦術に置き換えて説明した「国家防衛戦略」は、中国と
ロシアの脅威を、「略奪的経済政策」「周辺諸国を恫喝し続ける」などの
強い表現で非難し、アメリカの敵は、「テロではなく、中露両国」だと位
置づけ、とりわけ中国に対する警戒心を強く打ち出す内容だった。

ここで、多くの人は疑問を抱くに違いない。この戦略報告の前には、トラ
ンプ氏は習氏をカリフォルニアの自身の別荘、マララーゴに招き(昨年4
月6日)、その後の11月8日にはトランプ氏が北京を訪れ、歯の浮くような
賞賛の言葉を習氏に贈った。また、戦略報告の後、今年に入ってからは中
国に制裁的関税をかける一方で、北朝鮮の非核化を巡って中国の助力を期
待し、またもや習氏を度々ほめ上げた。トランプ氏の本心はどこにあるの
か、と迷うのは当然だ。

トランプ氏の言葉と行動が往々にして一致しないために、アメリカの対中
政策の真実が何処にあるのかを測りにくいのは確かだが、この2年間の
「実績」を辿っていくと、トランプ政権はいま、本気で中国と対峙しよう
としていると見てよいだろう。

ペンス氏は、アメリカも賛成して中国を世界貿易機関(WTO)に参加さ
せたのが2001年であり、これまでの17年間にアメリカは中国に巨額の投資
を行い、その結果中国のGDPは9倍に成長したと説明する。

他方、中国共産党は、自由で公正な競争というアメリカが大切にする価値
観とは相容れない関税、割当、自国産業への不公正な補助金、為替操作、
企業への強制的技術移転の要求、知的財産の窃盗などの不公正な手段で応
じてきたとし、いま、「中国製造2025」というスローガンを掲げて、25年
までに世界の最先端産業の90%を中国がコントロールしようとしていると
論難する。

ロボット、バイオ、人工知能

ペンス氏は具体的にロボット、バイオ、人工知能の分野を挙げて、中国が
アメリカに対して優位に立ち、支配を確立するために、如何なる手段を講
じてもアメリカの技術や知的財産を盗み取ろうとしていると、強く反発した。

軍事的にも、中国はかつてない程大胆な挑戦を続けているとして、日本が
施政権をもつ尖閣諸島の事例にまっ先に触れた。南シナ海でアメリカの
イージス駆逐艦「ディケーター」が「航行の自由」作戦を行っていると、
中国海軍の駆逐艦が40メートルの近さにまで異常接近した事例にも言及
し、アメリカはこんなことには屈しないと息巻いた。

中国の言論弾圧、宗教弾圧にも具体的に触れ、国民全員を監視する中国
は、社会をジョージ・オーウェルの世界にしようとしているのだと喝破した。

貧しい発展途上の国々を借金漬けにして、港や鉄道などのインフラを取り
上げてしまう債務の罠についても豊富な具体例を列挙して中国の手法を非
難した。

また、アメリカに対しては、アメリカ国民に影響を与え、トランプ氏以外
の大統領を選ばせようと情報工作をしており、中国政府が「米国社会分断
のために、正確かつ注意深い打撃を加えるよう」指示を出していると語っ
ている。そのために、自由の国アメリカに、中国はラジオ局を30局以上設
立し、中国のテレビ放送は7500万人の視聴者を獲得している、その影響は
大きいと警告する。

中国の許容し難い点をおよそすべて列挙して、トランプ政権はアメリカの
国益を中国の略奪的行動から守る決意だと、ペンス氏は強調した。どう考
えても、アメリカの価値観と中国のそれは合致しない。突き詰めれば突き
詰める程、相違は大きくなる。米中の冷戦は長期化するとの前提に立っ
て、アメリカと歩調を合わせる局面である。それが日本の国益につなが
る。トランプ氏の言葉に惑わされず、アメリカ政府の政策をじっと見るべ
きときだ。

『週刊新潮』 2018年10月18日号 日本ルネッサンス 第823回

◆キリスト教会を破壊し、

宮崎 正弘


平成30年(2018年)10月29日(月曜日)通巻第5871号 

「キリスト教会を破壊し、聖書を焚書し、信徒を弾圧している」(ペンス
演説)
「バチカンは中国内のキリスト教徒を絶滅させるつもりなのか」(香港の
枢機卿)

香港のカソリック教会枢機卿であるジョセフ・ゼンは「バチカンは中国国
内1200万人のキリスト教信徒を絶滅させようとしている」として、激しく
バチカンのフランシスコ法王を批判した。

「もし私が漫画家なら、ローマ法王が、あろうことか習近平にひざまずい
て『どうか私をローマ法王と認定して下さい』と懇請している構図のもの
を描くだろう」とフランシスコ法王の異常な遣り方を非難する。カソリッ
クの枢機卿が法王を批判したのである。

たしかに現在のローマ法王フランシスコはイエズス会出身の異端児、その
うえアルゼンチン出身でイタリア留学組である。

南米はカソリックの王国であり、プロテスタントは少なく信徒の大市場ゆ
えに選ばれたという説も流れたが、法王に着座以来、キューバを訪問した
り、正教会と和解したり、イスラム教とも対話を推進するなど、型破りの
行動をとってきた。

特筆すべきはアルバニア訪問だった。この無神論の国へ赴いてマザー・テ
レサを追悼するミサを行ったのだが、中国のキリスト教徒を「マーケッ
ト」と見立て、9月には中国共産党と暫定合意を結んでいることに直截に
繋がる。つまり中国共産党が任命する地区の司教をバチカンが追認すると
いう破戒的な合意である。

台湾は、すぐさまカソリック司教をバチカンに派遣したが、ローマ法王は
すげなく台湾への招待を断り、外交観測筋は年内にもバチカンが台湾と断
交し、中国と国交を開くかも知れないと予測する。

中国国内のキリスト教徒は推定6000万人、カソリックはこのうちの1000万
人から1200万と見積もられているが、中国共産党御用達のキリスト教会に
背を向け、大半の信者は地下教会に通う。

 英文政権発足以来、台湾と断交した国々は五ヶ国。ところが米国は最近
になって台湾と断交したドミニカ、パナマ、エルサルバドルから大使を召
還し、一方で台湾への梃子入れが顕著である。

駐台北の米国大使館(米台交流協会)の警護は海兵隊が行い、トランプ政
権は「台湾旅行法」の制定以来、台湾防衛を鮮明にして武器供与を加速化
している。


▼バチカンへ間接的な警告を為したトランプ政権

これは米国のバチカンへの無言の圧力である。

そのうえ、10月4日のペンス副大統領の宣戦布告的な演説のなかに「中国
はキリスト教会を破壊し、聖書を焚書し、信徒を激しく弾圧している」と
の文言がある。

キリスト教徒の多い米国では、これまでウィグル族弾圧にそれほどの関心
がなかったが、キリスト教徒への弾圧を聞いて、中国への敵愾心はさらに
高まっている。「反中」は全米のコンセンスなのである。

香港の枢機卿による激しいローマ法王批判は、大いに注目しておく必要が
ある。

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BOOKREVIEW 書評BOOKREVI
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痛快・豪快に戦後日本の思想的衰弱、文春の左傾化、知的劣化をぶった斬る
マハティール首相は激しく迫った。「日本は明確な政治的意思を示せ」

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渡部昇一 v 西尾幹二『対話 日本および日本人の課題』(ビジネス社)
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この本は言論界の二大巨匠による白熱討論の記録を、過去の『諸君』、
『WILL』、そして「桜チャンネルの番組」(『大道無門』)における
収録記録などを新しく編集し直したもので、文字通りの対話扁である。

討議した話題はと言えば、自虐史観、自由とは何か、歴史教科書問題、戦
後補償などという奇妙な政治課題、朝日新聞と外務省批判、人権など多岐
にわたり、それぞれが、対談当時の時局を踏まえながらも、本質的な課題
をするどく追求している。

目新しいテーマは文藝春秋の左傾化である。

評者(宮崎)も、常々「文春の3バカ」として立花隆、半藤一利、保阪正
康の3氏を俎上に乗せて批判してきたが、文春内では、この3人が「ビン
の蓋」というそうな。えっ?何のこと、と疑えば文春を右傾化させない防
波堤だという意味だとか。半藤などという極左がまともな議論が出来ると
でも思っているのだろうか。

半藤よりもっと極左の論を書き散らす立花隆について西尾氏は「かつて
ニューヨーク同時多発テロが起こったとき、立花は日本の戦時中の神風特
攻隊をアフガンテロと同一視し、ハッシッシ(麻薬)をかがされて若者が
死地に追いやられた点では同じなんだという意味のことを得々と語ってい
ました(『文藝春秋』2001年10月緊急増刊号)。条件も情勢もまったく違
う。こういう物書きの偽物性が見通せないのは文春首脳部の知性が衰弱し
ている証拠です」と批判している(252p)。

文藝春秋の左傾化という文脈の中で、「朝日が慰安婦虚偽報道以来、いま
の『モリカケ問題』を含め情けないほど衰弱していったのは、野党らしく
ない薄汚い新聞」に変わり果て、文春はどんどんその朝日に吸い込まれる
かたちで、たぶん似たようなものになってくる」と嘆く。

評者が朝日新聞を購読しなくなって半世紀、月刊文春もこの10年以上、読
んだことがない。なぜって、読む価値を見いだせないからである。

戦後補償について渡部昇一氏は「戦後の保障は必ず講和条約で締結されて
いる」のであって、戦後補償という「とんちきな話」が半世紀後に生じた
のは社会党があったからだと断言する。

この発言をうけて西尾氏は「中国の圧力を日に日に感じているASEAN
では、米国の軍事力がアジアで後退しているという事情もあって、日本に
ある程度の役割を担って貰わなければならないという意識が日増しに高
まっている。マハティール首相の発言にみられる『いまさら謝罪だ、補償
だということをわれわれは求めていない、それよりも日本の決然たる政治
的意思を明らかにして欲しい』というあの意識です。こういう思惑の違い
ははっきり出てきている。結局、戦後補償がどうのこうのというのは日本
の国内問題だということですね」(104−105p)

活字を通しただけでも、2人の熱論が目に浮かんだ。

◆「黄砂アレルギー」に注意

毛馬 一三

花粉症歴の経験が全く無い筆者にとって、軽い風邪症状の一種かなと思って、余り気にも止めていなかった。

ところがとんでもない。次第に喉の違和感が痛みを伴うようになり、咳も痰も出るようになった。

そこで、慌てて近くの内科診療所に飛び込んだ。内科医は喉の症状を見た途端、「炎症がひどいですね」という。「原因は?」と訊いたら、「飛来してくる黄砂の黴によるものと思われます。花粉症ではありません」と教えてくれた。

同医師によると、黄砂によるいろんな健康被害で訪れる患者が、急増しているという。同医院から、

・抗生物質―フロモックス錠100mg(毎食後1錠・3日間分)
・咳を鎮める薬―メジコン錠15mg(毎食後2錠・7日分)
・痰や膿を薄めて、痰や鼻汁を出しやすくする薬―ムコダイン錠500mg(毎食後1錠・7日分)
・胃薬―セルベックスカプセル50mg(毎食後1カプセル・7日分)薬を貰った。

だが、マスクを付けて外出を余儀なくさせられた1週間が過ぎても喉の炎症と咳、痰共に治まる気配が無い。再診の結果、まだ喉の炎症は完治してないと診断され、改めて下記の薬を貰った。

・咳を鎮める薬―メジコン錠15mg(毎食後2錠・7日分)
・痰や膿を薄めて、出しやすくする薬―クリアナール錠200mg(毎食後1錠・7日間分)
・炎症を抑えて腫れや痛みを和らげる薬―ダーゼン5mg錠(毎食後1錠・7日分)
・SPトローチ0.2mg(28錠・1日4回)
・アズノールうがい液4%(5ml・1日4回)

2度目の薬を飲んだり、うがいを励行したところ、数日が経過してやっと喉の痛みや違和感がなくなり、咳と痰も出なくなった。

喉にこのような強度な症状が出たのは初めてのことだ。しかも気にはなっていた飛来の「黄砂」によるものだ。

今強烈になっている中国の大気汚染と原因が重なっているらしく、中国から飛来する「黄砂と大気汚染」が、日本に被害をなすりつけているのだ。気象庁も「中国で黄砂が急激に発生してる」と指摘している。日本が被害者になるのか。無性に腹が立つ。

話は後先になるが、<黄砂(こうさ)とは、中国を中心とした東アジア内陸部の砂漠または乾燥地域の砂塵が、強風を伴う砂嵐などによって上空に巻き上げられ、春を中心に東アジアなどの広範囲に飛来し、地上に降り注ぐ気象現象。あるいは、この現象を起こす砂自体のこと>である。

細かい砂の粒子や、粒子に付着した物質、黄砂とともに飛来する化学物質などにより、さまざまな健康被害が生じる。

即ち、咳、痰、喘息、鼻水、痒みといった呼吸器官への被害や、目や耳への被害が目立つ。黄砂が多い日には、花粉症、喘息、アトピーなどのアレルギー疾患の悪化が見られる。>という。 
参考―フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

花粉症で悩まされるだけでなく、黄砂アレルギーで健康被害を煩わされるのでは、堪ったものではない。

ところが肝腎の黄砂による呼吸器官への被害が、増えていることにはあまり知られていないようだ。

黄砂の飛来が顕著な九州や関西では、既にこの被害が出て問題化しているが、全国にも広がるだろう。

黄砂の飛来が予測される時は、TVの「天気予報」で早めに知らせてほしい。

しかも喉などに異常を感じたら、医療機関で診察を早めに受けられることをお勧めしたい。(了)     


2018年10月30日

◆中国の対日大接近は「強国路線」の一環

杉浦 正章


米中は「新冷戦時代」突入 日本は“ラジエーター役”も

単なる貿易戦争と言うより米中二大超大国の覇権争いが始まったとみるべ
きだろう。中国は米国との冷戦状態に入ったが、日本とは関係改善に動く
など二股柔軟路線だ。

加えて今年は日中平和友好条約締結40周年の節目の年であり、首相・安倍
晋三訪中の極東安定に果たした役割は大きい。背景には米中貿易戦争が、
中国の態度に変化を促したことがあるのは確かだろう。

中国が日本との関係を強化しようとするのはパワーバランス上の狙いがあ
るからであり、喜んでばかりはいられない。日本は米中のはざまで、ただ
でさえ流動化している極東情勢が波乱の激動期に突入しないようラジエー
ター役を好むと好まざるとにかかわらず求められるからだ。

 日中関係は安倍訪中により戦後まれに見る良好な関係へと入りつつあ
る。安倍との会談で習近平は「この歴史的なチャンスをつかみ中日関係発
展の歴史的な指針とすべきだ」と強調した。

さらに加えて習は「日本訪問を真剣に検討する」と来年の訪日を確約し
た。過去には日本など眼中にないとばかりに、安倍と会っても何かくさい
臭いでも嗅いだかのような表情をしていたが、こういった態度をがらりと
変えたのだ。

これに先立ち下準備のために来日した首相李克強も関係改善 の必要を説
いており、中国の対日大接近は習政権挙げての大方針として固 まってい
たことが明白だ。首脳会談で安倍が「競争から協調へ、日中関係 を新た
な時代へと導いて行きたい」と応じたのは、まさに日中蜜月時代の 到来
を予測させるものであった。

世界も安倍訪中を固唾をのんで見守っており、仏の国営ラジオ放送局
RFI(ラジオ・フランス・アンテルナショナル)は27日、中国語版サイト
で、日中関係について「米中の関係悪化により日中は対抗状態から抜け出
す」とする記事を掲載した。

記事は、「米国と中国との間の貿易戦争が、 世界の『長男』である米国
と『次男』中国との関係を全面的に悪化させ た。一方で『次男』の中国
と『三男』の日本が手を差し伸べ合うことを促 し、日中関係を7年間に及
ぶ低迷期から抜け出させた」と明快に分析して いる。

 日中関係は1972年の国交正常化で極めて良好な関係に入ったが、以来、
絶えず起伏があった。とりわけ、2012年から13年にかけては、尖閣問題や
歴史問題で最悪の状態にまで冷え込んだ。安倍は今回経済界リーダー500
人を率いて訪中し、500件を超える協定に署名し、「その価値は計26億ド
ル(約2900億円)に達する」とした。

中国の態度激変の背景には、米中貿易戦争のエスカレートがある。貿 易
戦争の結果経済は悪化しており、安全保障の分野にまで対立の構図がで
きつつあり、長期化する様相を見せている。筆者がかねてから指摘してい
るように中国と米国は、「新冷戦時代」に突入しているのだ。

こうした背 景を見れば対日接近が、経済的利益につながると同時に対米
牽制の狙いが あることは明白であろう。日米関係にくさびを打ち込もう
という狙いが透 けて見えるのだ。

この超大国の覇権争いに多かれ少なかれ日本は巻き込まれるだろう。地
政学上から言っても、それが宿命だ。だが、日米同盟の絆はいささかも揺
るがしてはならない。中国ばかりでなくロシアのプーチンまでが喜ぶこと
になりかねないからでもある。米中貿易戦争は始まったばかりであり、米
国は矛先を緩める状態にはない。

対中関係を過剰に緊密化すれば、良好なる安倍・トランプ関係にも影響
が生じかねない要素である。その線上で、日米関係が悪化すれば習近平の
思うつぼにはまることになる。安倍は日米同盟関係を維持しながら、対中
関係改善で経済的利益を最大化するという、サーカスでの“空中ブランコ”
を演じなければならないのである。

時には習近平の「強国強軍路線」とい う「新覇権主義」に手を広げて
「まった」をかける必要も出てこよう。国 連の場などを通じて世界世論
に働きかける手段なども必要となろう。


◆れっ、こんなことありか?

宮崎 正弘


平成30年(2018年)10月28日(日曜日)通巻第5870号 

 「れっ、こんなことありか?」。コロンボの政変
   ラジャパクサ前大統領が、スリランカ首相に電撃就任

スリランカで珍型の政変が起きた。

2018年10月27日、シリナセ大統領は親米、親インド路線の有力政治家とし
て知られるウィックラマシンハ首相を突如更迭し、前の大統領で親中派と
して悪名高いラジャパクサを、首相に任命した。

そのうえ、そそくさと就任儀式を執り行った。この模様はテレビ中継さ
れ、スリランカ国民ばかりか、インド政界に衝撃をもたらした。

ラジャパクサ前大統領といえば、スリランカ南方のハンバントタ港を中国
に売り渡した張本人である。

中国は99年の租借権を手にいれ、港湾の近代化、工業団地、免税倉庫など
を建設中で、付近の飛行場もラジャパクサ空港と命名された。後者の飛行
場は閑古鳥、ドバイ、アブダビからの定期便も客数がすくなくて欠航が続く。

インドならびに西側の軍事専門家は、「中国はハンバントラを軍港にする
のだ」と分析した。ラジャパクサ前大統領は、言ってみれば、「腐敗の象
徴」であり、彼を批判して現在のセリナセが大統領に当選したのではな
かったのか。

つまり2015年のスリランカ大統領選挙は「借金の罠」に落ちたラジャパク
サ前大統領の汚職体質を猛烈に抗議するキャンペーンが基軸となった選挙
戦だった。インドが背後で野党を支援したといわれる。

ラジャパクサ前大統領は、一方で10年にわたったタミルとの内戦を終結さ
せたが、その強硬な武力発動に対して欧米から非難の声があがった。落選
後、しばらく沈黙してきたが、周囲に押され政界復帰を狙っていた。

とくにラジャパクサ前大統領にとって、インドとの関連が最重要であり、
過去三ヶ月、頻繁にニューデリーに出かけてインド政界へのロビィイング
を展開してきたという(『ザ・タイムズ・オブ・インディア』、10月28日)

この政変劇は、シリセナ大統領をささえる与党が連立政権であり、統一自
由人民連合党が、とつじょ連立から離脱したために、議席のバランスが崩
れておきた。ラジャパクサ前大統領派の議会工作による。

しかし、「議会が承認するまでわたしは首相の座にある」として、ウィッ
クラマシンハ首相は、27日以来、首相官邸に立て篭もり、ラジャパクサ
前大統領の首相就任に抗議している。スリランカ国会は11月5日に開会さ
れる。

おりしも、28日、インドのモディ首相が来日する。
      
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いま戦わなければ中共の軍門にくだり、自由世界の人々がシナの奴隷に
  トランプは米中貿易戦争という「大英断」を下したのだ

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ケント・ギルバート『「パクリ国家」中国に米・日で鉄槌を!』(悟空出版)
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いま店頭に並ぶ『NEWSWEEK』日本語版(2018年10月30日号)は、
なんと「ケント・ギルバート現象」特集である。

なぜ「ケント本」が書店にうず高く積まれベストセラーを続けるのかの秘
訣を探ろうとし、同誌の結論は、とどのつまり白人のアメリカ人が、日本
の保守論客になりかわって左翼リベラルをぶっ叩いていることが小気味良
いので、読書人も釣られて買うのだという底の浅い分析である。

そんなことよりケントさんは、日本人が露骨に批判しないところを、まっ
すぐに批判するというポイントを見逃してはならない。そのうえ、言い分
はあくまでも論理的であり、さすがに弁護士だけあって、日本の左翼特有
の感情的な批判ではなく、論拠を明示した論の組み立て方に、注意するべ
きではないかというのが評者の感想である。

それはそれとして、アメリカ人が、なぜ中国に怒りを表明しているのか。
日本はあれほど中国に苛められ、莫迦にされ、顔に泥を塗られ、利用され
るだけ利用され、技術もカネも盗まれても、中国を非難しない。

そればかりか、安倍首相訪中でも「競合から協調へ」などと唐変木な言辞
を吐いて、中国の狙う日米分断に策略に引っかかろうとしている。エド
ワード・ルトワックは、米国は対中認識では与野党、右翼・左翼、メディ
アを問わず「反中というコンセンサス」があって、中国を潰すという戦略
で結束しているという(今月号の「HANADA」と「WILL」を参照)

ケント・ギルバート氏は、この背景を詳述してはいないが、米中貿易戦争
はトランプ大統領がしかけた「大英断」(76p)という

「勝てる間に勝つことが重要」と判断したトランプは、中国は対面を重視
するという弱点があるため、「中共は、負ける戦争では、できるだけ権威
が傷つかない形で早めにダメージ・コントロールしようと考えます。そこ
がアメリカの狙いどころであり、オールマイティーなカードにもなる」
これによりアメリカは北京から多くの譲歩を獲得できると説く。

その上で、ケントさんは米中貿易戦争を批判している人に問いたいと反論
する。

「現在ですら貿易ルールを守らない中共が、今後さらに経済成長した結
果、誰も逆らえない技術力や軍事力、政治力を手にした場合、自由貿易や
WTO体制を破壊し、世界大戦を脅し文句に、もっと傍若無人に振る舞う
のは、火を見るよりも明らか」

「私たちは、肥大化した中共の下で、彼らの言いなりになって暮らすこと
を拒否したい」。

それゆえに戦いは早いほうがよく、「いま戦うしかない」という結論が導
かれる。

ちょっと日本人評論家が書かないような語彙(たとえば「大英断」とか
「中共」など)、その力強き言辞に感心しながら読み終えた。

        
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1810回】              
――「支那人は不可解の謎題也」・・・徳富(35)
徳富蘇峰『支那漫遊記』(民友社 大正7年)

                ▽

「支那人をして、斯くの如く思惟せしむる」ために、「只だ、興亞の一天
張りを主要とする、大旗幟の下に、日支協同の一大新聞を、發行」させる
べきだ。そこで問題になるのが人材と資金だが、いずれ「英、米、獨逸其
他の國人」は必ず新聞創刊に踏み出すはずだ。その時になって「如何に
七?八到するも時機既に晩しと云はざるを得ず」。であればこそ、日本人
は躊躇せずに一日も早く新聞創刊に踏み切れ。


■「(65)道?の天下」

「儒教は、治者階級少數者に?にして、然もそれさへ實際は覺束なく、唯
だ看板に過ぎず。佛教も寧ろ、曾て上流社會の一部に行はれる迄」であ
り、「強ひて國民的宗教」をあげようとするなら「道?に若くはなかる可
し」。「未來の安樂を豫約する佛?よりも、現在の福利を授與する道?が
支那の民性に適恰す」る。

道教と国民性の関係を考えれば、「道?支那人を作らず、支那人道?を
作」るというべきだ。いわば「支那人ありての道?にして、道?ありての
支那人」ではない。「道教其物」こそ「支那國民性の活ける縮圖」なのだ。

■「(66)回教徒」

「若し支那に於て、眞に宗?と云ふ可きものを求めば、恐らくは唯回?あ
らんのみ」。それというのも形式にも虚儀に流れない回教だけが「聊か活
ける信仰と、活ける力を有」しているからだ。

「回教とは、新疆より北滿に及び、寨外より南海に至る迄、殆んど一種の
秘密結社たるの風あり」て、彼らは異郷にあっても「必ず回?徒の家に宿
す」。彼らの「分布の地域は、支那の領土に普」く、「彼等が?徒として
の氣脈相接し、聲息相通じつゝある團結は、蓋し亦た一種の勢力」という
ものだ。

なぜ回教徒が全土に住んでいるのか。それは「支那は、世界のあらゆる物
の會湊所也、即ち溜場」だからだ。宗教をみても「佛?あり、道?あり、
拝火?あり。猶太?も、今尚ほ若干開封府に存し、景?に至りては、唐代
に於ける盛況」が伝えられている。

少数派である彼らは「宗門の戒律を守」ることで、自らを守る。であれば
こそ「少なくとも支那に於ける、他の宗?に比して、其の活力の若干を保
持しつゝあるは」否定できない。

■「(67)日本の?史と支那の?史」

「日本の歴史は、支那に比すれば、稀薄にして、其の奥行き深からず」。
だから「如何に贔屓目に見るも、支那の?史に於て、太陽中天の時は、日
本の?史に於ては、僅かに東方に曙光を見たるならむ」。だが「唯だ日本
が支那に對してのみならず、世界に向て誇り得可きは、我が萬世一系の皇
室あるのみ」。「此の一事に於ては。空前絶後、世界無比」といっても過
言ではないが、「帝國其物の?史は、質に於ても、量に於ても、到底支那
の敵にあらず」。

――さて蘇峰山人の説かれる歴史の「質」が何を指し、「量」は何を指すのか。

■「(68)一大不思議」

「吾人(徳富)が不思議とするは、支那史の久遠なるにあらずして、其の
久遠なる繼續にあり」。「或る意味に於ては、支那の保全は支那其物の爲
めのみならず、世界に於ける活ける最舊國の標本として、是非必要」だろう。

たしかに「老大國」であり「老朽」ではある。「舊國民として多くの缺點
を有する」。「に拘らず、尚ほ若干の活力を有するを、驚嘆」しないわけ
にはいかない。

◆インスリンに思う

渡部 亮次郎


日本の政界に糖尿病が登場するのは確かに1945年の敗戦後である。「オラ
が大将」の子息で山口県知事もした田中龍夫元文部大臣は公務の合間を
縫って日に何度も注射のため医者に通っていた。

田中角栄、大平正芳、伊東正義、園田直、田中六助。皆糖尿病が元で死ん
だ。脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、網膜症、癌を併発するのが 糖尿病患者
の末路だからである。

1921年7月30日にインスリンが発見され、人類に測り知れない恩恵をもた
らした。欧米ではすぐに患者自身が自己注射が始まった。だが日本では
「危険」を理由に医者の反対で厚生省が許可しなかった。患者の中には日
に3度も医者通いを余儀なくされる人がいた。

仮に自己注射が許可されていれば、医療器具業者は競って注射器の簡略化
や注射針の改良に取り組んだ筈である。だが厚生省(当時)の役人たちは
日本医師会に立ち向かおうとはしなかった。

わたしが秘書官となって厚生大臣として乗り込んだ園田直は1981年、敢然
として自己注射を許可した。その結果、注射器はペン型となり、針も世界
一細い0・2ミリになって殆ど無痛になった。

だがとき既に遅し。園田本人は自分の決断の恩恵に浴することなく腎不全
に陥り、僅か70歳で死んだ。1984年4月2日の朝だった。

糖尿病は多尿が特徴なので、長い間、腎臓が原因と考えられていた。糖尿
病最古の文献はB.C1500年のエジプトのパピルスに見られる記述だ。日本
で記録のある最も古い患者は藤原道長である。

「この世をばわが世とぞ思ふ 望月の欠けたることもなしと思へば」と詠
んだ、平安時代中期の公卿である。康保3年(966年)―万寿4年12月4日
(1028年1月3日))62歳薨去した。

当時としては意外な長生きである。糖尿病を放置した場合、実際より10年
は短命になるとされているから、当時としては大変な長命というべきだろ
う。それにしても満月のような権勢も病には勝てなかった。

昔から糖尿病の尿は甘く糖分を含んでいる事は良く知られていたが膵臓が
どのような働きをしているか、どれほど重要な臓器か不明の時代が長く続
いた。

突如、1869年にLanngerhans島が発見された。それから20年たった1889
年、ドイツ人のMeringとMinkowskiは史上初めて、犬の膵臓を摘出したあ
と、高血糖と尿糖が出現することを発見し、やっと膵臓と糖尿病が切って
も切れない関係にあることを証明した。

その後ジョンズホプキンズ大学のOpie博士が、このランゲルハンス島は
内分泌器官であり、糖尿病が関係することを明らかにした。
膵臓のランゲルハンス島から出ているのがインスリン。それが少ないと
か、全く出ないのが糖尿病と判りだしたのだ。

そこからインスリン発見の物語は更に後である。

人類に測り知れない恩恵をもたらしたインスリンの発見物語の主人公は
Banting &Bestの2人のカナダ人である。苦しい実験を重ねてインスリン
を発見したのだがこの2人は当時全くの無名だった。

Frederick Bantingは1891年、カナダの農家に生まれ、1916年トロント大
学医学部を卒業し医者になった。

ある日彼は「膵臓結石で膵管が完全に閉ざされた症例」ー膵臓の腺細胞は
萎縮しているのにランゲルハンス島だけは健全であったーという論文を読
んだ。

それなら結石の代わりに手術で膵管を縛ってしまえばよいと彼は考えた。

膵管を縛るという考えは天才的な閃きだった。彼は自分のアイディアを実
行すべく、トロント大学の生理学者 Macleod教授を訪ねた。
このとき、助手として学生のC.H.Bestを推薦された。

早速実験が始められた。膵管結縛の手術は難しく、内分泌を抽出するのは
さらに難しい。

彼らは1921年7月30日に初めて抽出エキスを犬に静脈注射してみた。効果
は覿面だった。そこで彼らはこの物質をインスリンと命名した。

しかしこのBantingとBestの苦心の作も、まだまだ不純物が多く、実用に
は耐えなかった。その後安全に血糖を下げることが可能になったのは生化
学者 Collips博士が、粗雑な抽出物を人間の使用に耐えるように精製した
結果だった。

1923年のノーベル生理、医学賞はBantingと教授Macleodに決定した。

2005年の国際糖尿病連合の発表によると、アメリカ人のなんと20%が糖尿
病の疑いありで、60歳以上の老人に限れば20%強が糖尿病に罹患している。

アメリカに住む白人種に限っても糖尿病患者は確実に8%を越え増加の一
途を辿っている。

21世紀が進行し始めるとヨーロッパとアメリカという、今までは罹患率が
極めて少ないと言われていたコーカソイド人種全体に糖尿病が一気に蔓延
しはじめた。

これはアメリカの高脂肪、高蔗糖、高エネルギー食がグローバル化し、
ヨーロッパもその例外でない事を示している。

19世紀末までコーカソイドである白人種たちは国によって糖尿病発症率が
低かった。しかしこれから20年以内にはヨーロッパもアメリカも糖尿病激
増で悲鳴をあげるだろうといわれている。

1000年はおろか数百年前にDNA の中に眠っていた遺伝子が社会環境の激変
で目覚めたのである。さらに遺伝子とは関係なく運動不足も大いに影響し
ている。

2004年、アメリカでゲノム研究者が2型糖尿病(中年に発症)の遺伝子を
発見したことが報じられた。これは飢餓遺伝子とは関係ないと考えられて
いる。

日本人の場合、江戸も中期以降になると、庶民の間でも1日3食の食習慣
が成立したが、明治維新までウシも豚も常食として食べる習慣が全くな
かった。つまり高血糖の原因となる高カロリー、高タンパク、高脂肪食と
は無縁な栄養学的にはかなり貧困な食生活が300年以上続いたのである。

一方、1850年ごろからヨ−ローパ人は大量生産方式の牧畜蚕業勃興と発展
により肉食が一般市民階級に広く普及した。日本人が反射的に頭に思い描
くヨーロッパ風の肉中心の食事スタイルの成立だ。

それでも当時ですら日本人に比べるとヨーロッパ人の体格は立派であった
のだから、その後の食生活の100年が生み出した肉体的格差は想像以上の
結果を生んだのだ。

日本では第2次大戦後、それも戦後20年たって、やっと高エネルギーと高
脂肪食をとりいれた結果、糖尿病が急上昇で増加した。わずか30年から40
年の食生活の変化だ。

日本人の中に眠っていた飢餓遺伝子が飽和脂肪の刺激を受けて目覚めた結
果である。世界中の人類に共通の現象で別段、驚くべきことではない。経
済の高度成長と糖尿病患者の趨勢は同一だ。

だから中国では物凄い勢いで糖尿病患者が増えている。精々鶏を食べてい
たものが、1切れでその何倍ものカロリーのある牛肉を食えば、報いは当
然、肥満と糖尿病など生活習慣病である。毛沢東語録にはない。

出典:さいたま市大島内科クリニック「インスリン発見物語」
http://members.jcom.home.ne.jp/3220398001/discovary/index.html  
 文中敬称略 2007・10・03名所旧跡だより 太宰府天満宮(福岡県)

◆首相は中国の人権問題に言及せよ

櫻井よしこ


米中新冷戦が深まりつつある。

10月10日、米共和党上院議員のマルコ・ルビオ氏と同党下院議員のクリ
ス・スミス氏が「中国に関する議会・行政府委員会」の年次報告書を発表
した。

ルビオ氏らは中国政府が100万人以上の少数民族、とりわけウイグル人を
再教育施設に強制的に収容している、中国は北朝鮮と並ぶ弾圧国家で、南
アフリカのアパルトヘイトさながらの人種差別国家であると激しく非難した。

さらに、習近平国家主席の下で人権を巡る状況は幾何級数的に悪化してお
り、2022年に予定されている北京での冬季五輪開催を見直すよう国際オリ
ンピック委員会に申し入れ、獄中にある経済学者のイリハム・トフティ氏
を来年のノーベル平和賞候補に推薦する予定だと語った。

318頁に上る大部の報告書は、中国は経済大国になっても一党独裁をやめ
ず、民主化もしない国だと、歴史的経緯を辿りながら告発している。その
ような国に対してアメリカは、「常に政治犯について言及せよ」、「米中
2国間協議では必ず人権を議題に加えよ」、「相互主義を強調せよ」など
と17項目にわたって、中国との戦い方を詳述している。

報告書の約半分が人権問題に割かれ、人権弾圧の具体例が列挙された。
ぎっしりと書き込まれた中に、世界ウイグル会議総裁のドルクン・エイサ
氏の母、アヤン・メメットさん(78歳)が、今年5月収容所で亡くなった
ことも記されていた。

エイサ氏が世界ウイグル会議の事務総長を務めていた2012年、私はシンク
タンク「国家基本問題研究所」の「アジアの自由と民主化のうねり 日本
は何をなすべきか」と題した国際シンポジウムに、ウイグル、チベット、
モンゴルの三民族の代表を招いた。そのとき、世界ウイグル会議を代表し
て参加したのがエイサ氏だった。氏は中国から逃れ、ドイツ国籍を取得し
て、現在ドイツに住んでいる。

息子が海外で中国政府を非難しているという理由で、78歳の母を中国は収
容所に追いやるのである。エイサ氏を罰するためであるのは明らかで、高
齢のメメットさんは劣悪な環境の中で息絶えた。他の多くの高齢者たち、
幼い子供たち、病気を患っている人々も収容所で次々に命を落としてい
く。年次報告書はそうした事例を生々しく書き連ねている。

メメットさんは人生の最後の段階でどれほどの苦しみを味わったことだろ
うか。エイサ氏の悲しみと怒りは如何ばかりか。国際社会はこのような仕
打ちを許さない。ルビオ氏らは習近平政権によるウイグル人らイスラム教
徒弾圧を、「人道に対する罪」ととらえて糾弾を続けている。

対中強硬策

ルビオ氏らが記者会見した同じ日に、米司法省も対中強硬策に踏み切っ
た。中国の情報機関である国家安全省の幹部、シュ・ヤンジュン氏を起訴
したのだ。彼は4月1日にベルギーで逮捕、収監されていたが、米国の要求
で10月9日、米国に引き渡された。日本ではあまり報じられなかったが、
この事件は米中関係を大きく変えるものとして専門家の間で注目された。

産経新聞外信部次長で中国問題専門家の矢板明夫氏が語る。

「米国が第三国に中国人犯罪者の引き渡しを要求したのは、これが初めて
です。米国が引き渡し条約を結んでいる国では、今後、中国は諜報活動が
できなくなるわけです。中国は極めて深刻にとらえていると思います」

矢板氏の説明はざっと以下のとおりだ。シュ氏は2013年12月頃からGEア
ビエーションなどに狙いを定め、技術者らを費用丸抱えで中国に招き、最
新技術の窃盗につなげようとした。GEアビエーションはGEの子会社だ
が、他にも航空産業最大手の企業など数社が工作対象にされていたという。

矢板氏はなぜシュ氏がベルギーに行き、逮捕されたかに注目する。シュ氏
を監視していたアメリカの情報工作員が、今年春、ベルギーでアメリカの
技術者に会い情報を盗むという話を持ちかけ、シュ氏を呼び出すことに成
功したのだという。アメリカがシュ氏をおびき出したのだ。それだけ積極
的に攻めの手を打って、中国人スパイを摘発したのはなぜか。

現在進行中の米中貿易戦争では、アメリカは主に三つの要求を中国に突き
付けている。➀為替操作の禁止、➁アメリカを含む諸外国の情報や技術の窃
盗の禁止、➂労働者を安い賃金で働かせる奴隷労働の禁止である。

産業スパイ活動

右の三要素によって中国は輸出製品を安く製造し、アメリカをはじめ世界
の強豪と競っているが、これこそ途方もなく不公正、不公平だと、トラン
プ大統領は考えている。だからトランプ氏は中国製品に制裁関税をかける
のだ。

三つの要求のうち・が不可能になれば、独自の技術を生み出す能力がない
中国は壊滅的打撃を受ける。中国の製品はおよそ全て、日本やアメリカな
どから奪った技術により製造されており、中国は経済的に行き詰まる。

トランプ政権はまさにそこを狙っているのである。シュ氏をアメリカに連
行し、中国の産業スパイ活動は断じて許さないという強い姿勢を誇示した
のと同じ日、トランプ政権は対米投資規制の詳細を発表した。

8月には外資によるアメリカへの投資を規制する新たな法律が成立してい
たが、航空エンジン・部品、アルミニウム精錬、石油化学、ナノテクノロ
ジーなど、情報通信や軍事などの27産業にわたって米企業を保護する内容
だ。たとえ少額出資であっても、外資は事前に申請しなければならない。
その意図は明らかに中国マネーから米企業を守ることである。

こうした矢継早の措置を10月4日のペンス副大統領の厳しい演説に重ねる
と、米国が中国に対してどれほど強い警戒心を抱いているか、明白に見て
とれる。

そしていま、米議会がウイグル人に対する中国の人権弾圧を「人道に対す
る罪」として糾弾しているのである。同盟国の日本が米国と同一歩調を取
るべき場面である。

他方、中国は日本に的を絞って微笑外交を展開中だ。天安門事件の当時を
想い出す。世界から経済制裁を受け、追い詰められた中国は、「制裁の環
の最も弱い部分」が日本だと見定めて微笑外交を展開、日本はまっ先に制
裁を解除し、天皇皇后両陛下にご訪中をお願いした。中国は日本を利用し
て世界の制裁を打ち破り、その後、尖閣諸島を中国領とする法律を作るな
ど、今日の横暴な中国の正体を見せ始めた。

日本は同じ間違いを犯してはならない。安倍首相は、いまこそ米国とより
強く協調せよ。今月の訪中では、首相はウイグル人弾圧について言及する
ことを避けてはならない。

『週刊新潮』 2018年10月25日号 日本ルネッサンス 第824回

◆遺言書の作成

川原 俊明 弁護士


遺言には、公正証書遺言や、自筆証書遺言や、秘密証書遺言等
があります。

それぞれ遺言の方式によって、要件が決まっています。

例えば、自筆証書遺言であれば、日付と氏名を自署し、押印を
しなければならないと定められており、これを欠くと無効な遺言
と扱われてしまいます。

そのため、ご自身の意思を相続人にきちっと伝え、相続の争い
を防ぎたい方には公正証書遺言の作成をおすすめしています。

公正証書遺言は、公証役場で作成するので、要件の誤りで無効
になる心配はありませんし、遺言は公証役場で保存されるので紛
失とか書き換え等の心配もないからです。
もっとも、近日、公正証書遺言であっても、無効であるという
裁判例が出されています。その多くは、遺言能力の有無が争われ
   た事案です。
    
遺言は、15歳になれば作成できますが、15歳以上であって
   も、意思能力がない状態で作成すると無効になってしまいます。
    
公正証書遺言であっても、意思能力がなければ、無効になる可
   能性があるのです。
    
意思能力の有無は、遺言者の病状、遺言の内容、遺言の作成状
   況等から総合的に判断されます。特に、遺言者の病状(認知症の
   程度等)は重視されます。
    
そのため、確実に遺言を残してスムーズに相続させたい方は、
   病状が進む前に作成されることをお勧めします。
    
遺言の作成を希望される方や、相続の問題でお困りの方はいつ
   でも当事務所までご相談ください。
  
530-0047 大阪市北区西天満2丁目10番2号 幸田ビル8階  
弁護士法人 川原総合法律事務所      
弁護士 川 原 俊 明 

2018年10月29日

◆柴山発言、どこが「バカ」か

阿比留 瑠偉



「日中外交というのはある意味、日本外交の(あり方の)一つの象徴でも
あったのだろう」

 安倍晋三首相はかつて、こう語っていた。昭和47年の日中国交正常化
以来、日本外交は「日中友好至上主義」に自縄自縛(じじょうじばく)と
なり、友好に反することは全否定する空気に支配されてきた。首相は、国
益を確保する「手段」であるはずの友好が、いつの間にか「目的」となっ
た倒錯を指摘し、さらに付け加えた。

「友好に反することは何かを誰が決めるかというと、中国側が専ら決める」

首相がこれまでの対中外交で実行してきたことは、こんな旧弊を打ち切
ることではなかったか。

振り返れば平成24年12月に第2次安倍政権が発足した当時、日本と 中国
の関係は最悪となっていた。野田佳彦内閣による尖閣諸島(沖縄県石 垣
市)の国有化がきっかけで、完全に膠着(こうちゃく)状態に陥っていた。

中国は日本を軽視する一方で、旧日本軍をナチス・ドイツに重ね、首相
を危険な軍国主義者だと喧伝(けんでん)する宣伝工作を続けていた。

首相との首脳会談も拒否し、会談に応じる条件として首相の靖国神社不
参拝の確約や、尖閣諸島の領有権問題の存在確認など無理筋な要求を突き
つけていた。


柴山発言、どこが「バカ」か

安倍首相の訪中に秘められた明確な戦略


挑発乗らず冷静対応

それが26年11月には、首相と習近平国家主席による日中首脳会談が 実現
する。この時の習氏は仏頂面で笑顔はなかったが、今年9月の会談で は
満面の笑みを浮かべる豹変(ひょうへん)ぶりである。

この間、日本は中国の要求には一切応じず、友好を請うような言動も取
らなかった。何ら譲歩しなかったにもかかわらず、である。

理由はいくつも挙げられる。首相自身が展開した自由や民主主義、法の
支配を訴える「価値観外交」が少しずつ中国を追い詰め、包囲網を築いて
いったことや、中国の軍事的膨張主義が国際社会で広く認知されたことも
一因だろう。

新疆(しんきょう)ウイグル自治区でのイスラム教徒弾圧が欧米から非
難を浴びたことや、米国との貿易戦争で打つ手がない中国が、活路を日本
に求め始めたという事情も、もちろん大きい。中国共産党にとって死活問
題である経済成長には、日本の協力が必要との判断もあろう。

ただ、何より重要なことは安倍政権が中国の揺さぶりに動じず妥協せ
ず、挑発にも冷静に対応したことではないか。習政権は日本と対決路線を
取っても得るものはなく、損をするだけだと思い知ったのである。

最近では逆に、安倍政権側も中国の巨大経済圏構想「一帯一路」への協
力など、中国との接近に前のめりになっているのではないかとの見方も出
ている。だが、首相は周囲にこんな本音を漏らしている。

別にこちらが前のめりということではない。一帯一路の件は、リップサー
ビスをしているだけだ。中国にカネをやるわけでも出すわけでもない」

パンダ頼みたくない

首相が日中首脳会談で、新たなジャイアントパンダの貸与を求めるとの
観測についても突き放す。

 「パンダの件は地方自治体の要請で外務省が勝手に進めていることで、
私は知らなかった。そんなこと頼みたくもない」

首相は今回の訪中に合わせて対中政府開発援助(ODA)の終了を決め
るなど、姿勢は全くぶれていない。むしろ懸念されるのは政界、経済界の
今後だろう。中国の友好ムード演出に浮かれてこちらからもすり寄るよう
だと、利用されるだけされてはしごを外される。歴史の教訓である。
(論説委員兼政治部編集委員)

◆安倍訪中、「競合から協調へ」

宮崎 正弘


平成30年(2018年)10月27日(土曜日)弐 通巻第5869号 

 安倍訪中、「競合から協調へ」スタンスを本気で変えたのか?
  米国メディアは慎重に批判。「危機にヘッジした」とNYタイムズ

10月26日、訪中した安倍首相は李克強首相と会談し、「競合から協調へ」
として握手したが、米中対決という歴史的変化の流れに逆らうかのような
日中接近を、米国はいかに総括したか、或る意味、それが問題だろう。

ウォール・ストリートジャーナルは「日本は米国の警戒心を十分に心得て
おり、米国批判を差し控えたが、日中は『自由貿易』が重要として、トラ
ンプの遣り方を引っかけた」と書いた。

同紙はまた日本の代表団に1千人もの財界人が随行したことを問題視して
いる。

NYタイムズはトランプ批判の急先鋒だが、トップ記事は爆弾男の逮捕、
サウジ、イエーメン問題で、首相記事の片隅に日中接近のニュースが配置
されている。

「日本は中国をパートナーだと言って、トランプの移り気な対中政策に
よって孤立化する状況へのヘッジをかけた。つまり(保護貿易で)孤立し
たトランプ音対中政策が、日中を接近させたのだ」とあくまでも批判の対
象はトランプである。

そのうえで、米国メディアが特筆したのは日本のODAが終わりを告げた
こと、シルクロード(一帯一路プロジェクト)への日中の協力が唱われた
ことに焦点をあてつつ、日中通貨スワップに関しては、意外に小さな扱い
である。

しかし一帯一路への日本の協力に関しては、声明文に明確な付帯条件が
あって、「ルールに則り、透明性のあるプロジェクトへの協力」となって
おり、諫言すれば、その両方を欠いている中国の遣り方が続く限り、日本
の協力はないという意味に取れる。
      ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆書評 しょひょう 
BOOKREVIEW 書評BOOKREVIEW
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 切支丹伴天連の暗躍をイエズス会から見ると、日本はどう映っていたか
  意外に客観的に、世界史の視点から布教活動を評価している

  ♪
ウィリアム・バンガード著 上智大学中世思想研究会訳
『イエズス会の歴史』(上下。中公文庫)
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イエズス会の視点から書かれたイエズス会の歴史である。つまり内輪の人
間から見た、自分史でもある。しかし、過大評価でもなく、矮小化した歴
史叙述でもなく、淡々とイエズス会の誕生から現在までの波瀾万丈を述べる。
 
とくにイエズス会は神秘的な霊感をえた創始者イグナティウス・デ・ロヨ
ラがパリで唱え、忽ちにして七人の同志が糾合した(1534年)。
上智大学の正門前にあるイエズス会の教会は「イグナチオ教会」。命名は
この創始者から来ている。

その創始者7人のなかに、フランシスコ・ザビエルがいた。ふたりはバス
ク人だった。

1540年に国王の許可を得て、海外布教に乗り出したことはよく知られる
が、いきなり日本に来たのではなかった。その前史は大西洋からブラジ
ル、喜望峰を越えて、インドのゴアにたどり着き、そこからマルッカ(マ
ラッカ)、マカオを経て、薩摩にザビエルが上陸したのだった。こんにち
南アメリカ諸国は殆どがスペイン語圏なのに、ブラジルだけがポルトガル
語という歴史的背景は、この航路から理解できる。

ザビエルは聖人として、ゴアの教会(世界遺産)にミイラが保存されてい
る。そのゴアに帰還する前にマラッカの教会に数ヶ月、遺体は保存された。

評者(宮崎)も両方を見に行ったが、ともに世界遺産の遺構のなかにある。

チェコの首都プラハのカレル橋に飾られた多くの英傑の銅像のなかでも、
観光客がもっとも集まり、写真を撮るのはザビエルだ。それほどザビエル
は、キリスト教徒から崇敬をあつめている。

さて、パリで結成されたイエズス会は、「清貧、貞潔、聖地巡礼」の三つ
の誓願に収斂された。

ザビエルは最初に上陸した薩摩での布教に失敗すると、「仏教の総本山で
ある比叡山と、北に遠く離れた都、現在の京都にいる帝の両者と接触する
ことにした」。(中略)だが都では、「大勢の人の嘲笑と軽蔑に」遭遇
し、ザビエルはすごすごと引き下がった。なぜなら「社会・政治機構につ
いてのひどく間違った情報にもとづいた浅はかなものだった」からだ。
ゴアやマカオで仕入れた日本に関する情報がすべて間違っていたというこ
とである。

そこでザビエルは山口の大内氏に「美しく書かれた信任状と、念入りに取
りそろえた献上品を携えて山口の大名の前に姿を見せることにしたのであ
る。彼とフェルナンデスは平戸まで戻り、ポルトガル人の協力を得て」、
時計、眼鏡、オルゴール、葡萄酒などを贈り物として揃え、威風を見せる
ために立派な衣装をまとうなどの工作をした。

山口での布教は成功し、日本人が「非常に知的で向学心に富み、新しい信
仰への専心に余念のない事に喜びを覚えた。ザビエルは教えながら学んで
もいた。日本の人々が世界で一番博識なのは中国人であると思っており、
芸術、思想、宗教の刺戟と手本を海の向こうのこの大帝国(シナ)に求め
ていることが分かった(中略)中国の改宗が日本の改宗に最も効果のある
鍵だ」

ザビエルは布教方針を日本からシナ重視に変えたのだ。

このような叙述が現在のイエズス会の記録にあるのは一種驚きでもある。
だが、信長の登場によって都での情勢が激変し、信者が加速度的に増えて
いった。有力大名の大友、有馬、そして天草、長崎でイエズス会の信者は
雪だるまのように膨らんだ。いかにデウスが大日、マリアが慈母観音とい
う布教の方法が効果的であったか、キリスト教のドグマは日本的に溶解し
ていたのだ。

その後の布教活動で、ヴァリニャーノが問題である。

 「ヴァリニャーノは日本文化の豊かさについて深い鑑識眼を持ち、カト
リックの教義にとって危険が生じない限り、この文化に自らの生活の仕方
などを会わせるべきであると確信し」ていたが、「3つの要因が成功とは
反対の方向に作用し、ついには1614年、追放の布告が出されるに至った。
その三つの要因とは、イエズス会の准管区長の判断の誤り、フランシスコ
会士との激しい論争、そしてイギリス人の到着で増した商業の利害を巡る
衝突の影響である」(上巻、302p」

コエリョが「軽率」だった、というのがこの著者の総括である。つまり、
これが現在のイエズス会の公式見解に近い意見とみるべきである。コエ
リョが好戦的に反応し「カトリック大名の叛乱を組織しようとし、またゴ
ア、マニラに派兵要請を書き送ったのである。ヴァリニャーノはひどく
噴って反対した」(上、3030p)。

この記述が公式見解であるとすれば、秀吉は誤解して禁教したという解釈
になり、首を傾げたくもなるが、当時の実力差を勘案すればイエズス会本
部は、一応妥当な判断をしていたということだろう。
 もうひとつの切支丹伴天連の見方が明確に分かる。

     
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1810回】                
 ――「支那人は不可解の謎題也」・・・徳富(35)
徳富蘇峰『支那漫遊記』(民友社 大正7年)


              ▽

「支那人をして、斯くの如く思惟せしむる」ために、「只だ、興亞の一天
張りを主要とする、大旗幟の下に、日支協同の一大新聞を、發行」させる
べきだ。そこで問題になるのが人材と資金だが、いずれ「英、米、獨逸其
他の國人」は必ず新聞創刊に踏み出すはずだ。その時になって「如何に
七?八到するも時機既に晩しと云はざるを得ず」。であればこそ、日本人
は躊躇せずに一日も早く新聞創刊に踏み切れ。

■「(65)道教の天下」

「儒教は、治者階級少數者に?にして、然もそれさへ實際は覺束なく、唯
だ看板に過ぎず。佛?も寧ろ、曾て上流社會の一部に行はれる迄」であ
り、「強ひて國民的宗教」をあげようとするなら「道?に若くはなかる可
し」。「未來の安樂を豫約する佛?よりも、現在の福利を授與する道?が
支那の民性に適恰す」る。

道教と国民性の関係を考えれば、「道?支那人を作らず、支那人道?を
作」るというべきだ。いわば「支那人ありての道?にして、道?ありての
支那人」ではない。「道?其物」こそ「支那國民性の活ける縮圖」なのだ。

■「(66)回教徒」

「若し支那に於て、眞に宗教と云ふ可きものを求めば、恐らくは唯回?あ
らんのみ」。それというのも形式にも虚儀に流れない回教だけが「聊か活
ける信仰と、活ける力を有」しているからだ。

「回教とは、新疆より北滿に及び、寨外より南海に至る迄、殆んど一種の
秘密結社たるの風あり」て、彼らは異郷にあっても「必ず回?徒の家に宿
す」。彼らの「分布の地域は、支那の領土に普」く、「彼等が?徒として
の氣脈相接し、聲息相通じつゝある團結は、蓋し亦た一種の勢力」という
ものだ。

なぜ回教徒が全土に住んでいるのか。それは「支那は、世界のあらゆる物
の會湊所也、即ち溜場」だからだ。宗教をみても「佛?あり、道?あり、
拝火?あり。猶太?も、今尚ほ若干開封府に存し、景?に至りては、唐代
に於ける盛況」が伝えられている。

少数派である彼らは「宗門の戒律を守」ることで、自らを守る。であれ
ばこそ「少なくとも支那に於ける、他の宗?に比して、其の活力の若干を
保持しつゝあるは」否定できない。

■「(67)日本の?史と支那の?史」

「日本の?史は、支那に比すれば、稀薄にして、其の奥行き深からず」。
だから「如何に贔屓目に見るも、支那の?史に於て、太陽中天の時は、日
本の?史に於ては、僅かに東方に曙光を見たるならむ」。だが「唯だ日本
が支那に對してのみならず、世界に向て誇り得可きは、我が萬世一系の皇
室あるのみ」。「此の一事に於ては。空前絶後、世界無比」といっても過
言ではないが、「帝國其物の?史は、質に於ても、量に於ても、到底支那
の敵にあらず」。

――さて蘇峰山人の説かれる歴史の「質」が何を指し、「量」は何を指すのか。

■「(68)一大不思議」

「吾人(徳富)が不思議とするは、支那史の久遠なるにあらずして、其の
久遠なる繼續にあり」。「或る意味に於ては、支那の保全は支那其物の爲
めのみならず、世界に於ける活ける最舊國の標本として、是非必要」だろう。

たしかに「老大國」であり「老朽」ではある。「舊國民として多くの缺點
を有する」。「に拘らず、尚ほ若干の活力を有するを、驚嘆」しないわけ
にはいかない。