2018年11月12日

◆韓国に分かる形で怒り示そう

                          阿比留 瑠比


2014年6月、ソウルで元韓国外務省東北アジア局長、趙世暎(チョ・セヨ
ン)氏に慰安婦問題や元徴用工をめぐる訴訟問題についてインタビューし
た。趙氏は1965年の日韓請求権協定に関し、こう明言していた。

 「2005年に韓国政府は、反人道的問題である慰安婦問題、サハリン残留
韓国人問題、韓国人原爆被害者問題の3つは請求権協定の対象に入ってい
ないという解釈を発表した。裏を返すと、徴用工問題は入っているという
ことだ」


請求権協定をめぐる日韓交渉では、韓国側が「個人への支払いは韓国政府
の手でする」と主張した。そして実際、韓国は1975年に元徴用工への補償
を実施し、2008年から追加補償も行っている。

慰安婦問題などに関しては日本政府の見解と相いれないが、徴用工問題は
すでに決着済みだと韓国も自覚していたのである。

それが簡単に韓国最高裁に覆されたのだから、たまったものではない。31
日の自民党の外交部会などの合同会議では、出席議員の言葉もとがっていた。

「韓国は国家としての体をなしていないんじゃないか」(中曽根弘文元外相)

「もう怒りを通り越してあきれるというか、韓国のセンスの無さを言うし
かない」(新藤義孝元総務相)

ソウルの在韓日本大使館前に設置されたウィーン条約違反の慰安婦像を放
置していることも含め、韓国が国際条約もルールも守れない非法治国家で
あると自己宣伝するのは勝手である。

だが、韓国は中国に対してはこんな暴挙は仕掛けはしない。何をやっても
反撃してこないと、日本を甘く見ているのだろう。

「非常に残念だ」

岩屋毅防衛相は10月20日、韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相と
会談した際に、韓国での国際観艦式で、海上自衛隊の自衛艦旗(旭日旗)
の掲揚自粛を求められ、参加を見送った問題でこう伝えた。

日本人らしく抑えた物言いだが、これでは意味がない。麗澤大の西岡力客
員教授は、月刊『正論』3月号でこう訴えている。

 「日本人は100のことを言いたい場合は50のことを言う。相手が 50のこ
とを話したら『本当は100、言いたいのだな』と忖度(そんた く)するわ
けです。でも、韓国人は逆なのです。韓国人は、100のこと を伝えたいと
きに200を言います。相手が200を言ったらそれを 100と受け止める」

難儀な話だが、韓国に対してはそれ相応の対応を取るしかない。徳島文
理大の八幡和郎教授は10月30日、自身のフェイスブックに「日本は何 も
しないと思われるから韓国は無茶をする」と書き、次の5つの報復措置
を提案していた。


 (1)日本人が(朝鮮)半島に残した個人財産への補償を要求(2)対
北朝鮮経済協力の拒否(統一時も含む)(3)3代目以降に特別永住者の
地位を認めない事(4)歴史教科書における(近隣国への配慮を定めた)
近隣国条項を韓国に限って撤回(5)韓国大衆文化の流入制限−。

八幡氏は筆者に「これらは日本が単独でできる」と指摘し、こう付け加
えた。

「日本はここまでやれると見せないと、韓国とは話し合いにならない。
紳士的に対応していたら、韓国政府も(感情に流されがちな)国民を説得
できない」

韓国側にも理解できる形で、日本の怒りを示すべきだろう。(論説委員
兼政治部編集委員)

産経ニュース2018.11.1 09:00 阿比留瑠比の極言御免

◆中国の住宅の22%が空き屋

宮崎 正弘


平成30年(2018年)11月10日(土曜日)弐 通巻第5886号  

 中国の住宅の22%が空き屋、空室は5000万戸と有名教授
  「もしいっせいに叩き売りにでれば、中国経済に悪夢が訪れる」

曾理(中国の西北大学教授)が近く発表に踏み切る研究報告によれば、
「中国全体の空室は22%、5000万戸だろう」。

「もしオーナー等がいっせいに叩き売りに動くと、それは中国経済の悪
夢となる」とも警告した。ブルームバーグなどは、この曾発言を大きく取
り上げている。

実際に不動産価格暴騰は、中国人の射幸心というより博打好きがなした
ことで、誰もが別荘をローンで買える環境があった。当局が購入を煽った
側面もある。

ところが、一転して不動産価格暴騰を抑えるため、金利あげ、課税強
化、とくに2軒目の住宅購入者には別税率を適用し、都市部では固定資産
税の導入などに踏み切ったが、効果は薄かった。

ようやく2017年頃から中国人自身が、不動産価格が日本よりも高いこと
に自信を深めるのではなく、深い疑問を抱くようになった。(市場が操作
されているのではないか?)。

そのうえ、殆どが空き屋というのも、納得がいかない。デベロッパーは
「党幹部とか、金持ちが投資用に買ったのであり、住む意思はないが、確
実に相場はあがる」などと説明した。

無理に借金して住宅を買った中間層が、組織だって抗議行動を始めた。
切っ掛けはP2P(ネット間の金の貸し借り)の破産で、大金を失った
人々はP2Pのオフィスなどに押しかけたが、経営幹部はとうに夜逃げ、
この人たちが「金融難民」となって、監督官庁に抗議し、そのうちにマ
レーシアのフォレストシティが値崩れ、デベロッパーの「碧桂園」(中国
不動産業界三位)本社にも連日デモ隊が繰り出された。

さて曾理教授は「22%が空き屋」というが、その程度ではない。「持 ち
主がいて、住んでいない」のか、「始めからまったく売れていないか」
でも空室率が異なる。

幽霊都市が際限もなく造られ、夜まったく電灯が付いていないゴースト
シティを見ていると、空室率が40%近くの地域があり、空き屋は中国全
土で8000万戸から一億戸と見られる。
     ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒書評 しょひょう 
BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
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 中国の最初の躓きは独断が強すぎて、トランプを誤断したことにある
  TPP脱退、ディール優先のトランプを中国は「商人」。「扱いやす
い」と見た

  ♪
近藤大介『習近平と米中衝突』(NHK出版新書)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 米中対決を「新冷戦」と捉える筆者は、この大攻防の深層を追求し、
『アジアの新皇帝』となった習近平の世界戦略とは何かに迫ろうとする。
 習近平の権力基盤の脆弱性についても、すこし触れているが、本書が特
筆しているのは、中国のトランプ政権への誤断が生じたのはファーストコ
ンタクトから矛盾、齟齬が生まれていたという見立てだ。

 貿易戦争は、いまのところ高関税の掛け合いで、中国が「最後までおつ
きあいする」(奉陪到底)と豪語したように、お互いに譲る気配はないよ
うに見える。が、中国がさきに悲鳴を挙げているのが実態で、先週の王岐
山発言にあるように「そろそろお互いの譲歩」を模索する段階を迎えてい
るかにも見える。

高関税など、トランプにとってはディールの一手段にすぎず、アメリカ
の狙いは知的財産権を中国に渡さないために、企業買収を阻止し、技術ス
パイを摘発し、留学生のヴィザを規制し始めたことによっても明瞭だ。
5Gに代表される次世代通信技術をファーウェイやZTEには絶対に渡さ
ないとする。

中国の最初の誤断は、それ以前の環境の変化があったからだ。

第一にトランプはTPPからの脱退を表明していたので、中国囲い込み
にもなりかねないTPPにアメリカが加盟しないことは中国に得策、だか
らヒラリー支援をやめてトランプに乗り換えた。

第二にトランプは南シナ海問題にほとんど言及せず、また人権問題には
関心が薄かったので、この男なら「はなせる」と誤信した。北朝鮮問題へ
の協力をする「努力をするふり」をすれば良いと。

第三にトランプは政治素人ゆえに、扱いやすい、ディールに乗ってくる
と安易な相手だと考えた。

第四にトランプは商人であることは計算とカネ、つまり中国はトランプ
をカネで操れると考えたのである。そこで中国はイヴァンカ夫妻に異常接
近を試みた。イヴァンカを招待し、彼女のブランドを中国全土で売った。
 
ついでアリババの馬雲をNYに飛ばし、大々的な投資を打ち上げた。

ところが、トランプは商人ではなかった。

最初の驚きはトランプが「中国は一つという外交原則には拘らない」と
表明したことで、これには中国が慌てた。南シナ海の自由航行作戦も復活
させ、ついで本格的に貿易不均衡への不満を爆発させるにいたる。

習近平訪中による米中新時代は、北朝鮮の核が目の前にぶら下がってい
たので、トランプは習近平に期待した。なにがしかの前進があるとトラン
プはフロリダ州での階段で、習近平に「百日の猶予」を与えたが、これは
脅しとは取らず、結局、中国は何もせず、むしろ米朝首脳会談への道を拓
いた。

米中の貿易不均衡について、中国が用意した「大風呂敷」は、米国
シェールガス開発への投資(837億ドル)、アラスカ州のガス開発(430億
ドル)、ボーイング300機を購入(370億ドル)、クアルコムから携帯電話
部品を購入(120億ドル)、大豆を1200万トン追加輸入する(50億ドル)
など、合計2535億ドルだとした(ボーイングなど例外を除き殆どは実現さ
れず、約束は自然発火的に反古となった)。

次にトランプが中国の躍進を許せば、アメリカが深刻なヘゲモニーの衰
退に繋がると懸念した。軍事力の大躍進ばかりか、経済的な脅威の一つ
が、中国の推進する「一帯一路」だった。

これは中国の唱える「六路」(鉄道、道路、水路、空路、管路(パイプ
ライン)、信路(通信網))戦略であり、これらのプロジェクトを通して
中国が世界にヘゲモニーを確立するとアメリカは見たのだ。

著者の近藤氏がみるところでは、「アメリカは中国との『貿易戦 争――技
術覇権戦争―軍事衝突』という角逐を、すでに一体化して考えてい る」
(244p)と捉え直している。

 中国通の著者、最新情報満載のうえに立った分析である。
        

◆「改憲案の提示が国民主権の一丁目一番地 

櫻井よしこ


国会は国民に投票の機会を与えるべきだ」

臨時国会は10月24日に始まったばかりだが、その様子を見ていて、政党も
国会議員も現実を見ていない、余りに無責任だと、腹立たしい思いにな
る。とりわけ焦眉の急である憲法改正について、なぜ、こうも無責任でい
られるのか。

国際情勢の厳しさは、日本よ、急ぎ自力をつけよと警告している。国民、
国家、国土は自国が守るという原点を思い出せと告げている。国民の命や
安全に責任をもつべきは政府であるにも拘わらず、日本国政府には国民、
国家を守る有効な手段を取ることができにくい。国の交戦権さえ認めない
恐らく世界でたったひとつの、変な憲法ゆえである。

憲法改正を急ぐべしと問題提起を続けているのは、安倍晋三首相ばかりの
ように見える。首相は、「自民党の憲法改正案をこの臨時国会に提出でき
るように取りまとめを加速すべきだ」と幾度となく旗を振ってきたが、周
りの動きはなぜかにぶい。

首相は繰り返し語っている。憲法改正は国会が決めるのではない。最終的
に国民が決める、と。そのとおりだ。日本国憲法の三大原則は「平和主
義」「人権尊重」「国民主権」である。国士舘大学特任教授の百地章氏
は、「現行憲法で唯一、具体的に国民主権を発揮できる場は憲法改正のた
めの国民投票だけです」と指摘する。

主権を行使する機会は、国会が憲法改正を提示(発議)して国民投票に踏
み切るとき、初めて、国民に与えられる。国会が国民に改憲案を提示しな
ければ何も始まらない。改憲案を国民に示すことが、主権が国民にあるこ
とを証す1丁目1番地なのである。

だが、公明党はこう語っている。

「国民の関心は高まっているが、具体的にどう改正するか議論は熟してい
ない。衆参両院の憲法審査会で議論を活性化し、与野党で幅広い合意を作
る。その過程で国民的コンセンサスを作らなければならない」(井上義久
副代表)

憲法調査会が2000年に設置され、07年に憲法改正の原案作成を任務とする
憲法審査会ができた。憲法改正作業は約20年も続いているのだ。公明党は
議論は熟していないというが、この20年間、一体政治家として何をしてき
たのか。少なくとも自民、公明の間では議論は核心に触れるところまで熟
しているではないか。

そもそも公明党は国民をバカにしているのではないか。安倍首相が提唱し
た9条1項と2項を維持したまま、自衛隊を憲法に書き込む案は公明党の案
だった。

公明党が「加憲」を言い出したのは04年だ。10年後、彼らは「自衛隊の存
在を明記」する加憲案を公約とした。安倍首相が17年5月に提唱した、自
衛隊を憲法に書き込むという案は、再度強調するが、公明党の案そのもの
である。

公明党案を自民党が取り入れたのである。なぜ公明党はそこから議論を進
めないのか。なぜまだ時期尚早だなどというのか。

公明党は驕っていないか。憲法改正が必要か否かは政治家が決める。国民
には問わないし、決定もさせない。政治家の判断力が国民の判断力より優
れており、国民に判断を任せることはしない、とでも考えているのではな
いか。このような国民不信の極みともいえる尊大さを、公明党の姿勢に見
て取るのは間違いだろうか。

安倍首相が繰り返し指摘しているように、憲法改正は通常の法律改正とは
異なる。法律は国民の代表である政治家が国会で議論して決める。憲法は
国会が発議し、国民が投票で決定する。私たちは戦後一度も、国の基(も
とい)である憲法について意思表示する権利を行使し得ていない。国会が
その機会を奪い続けてきたからだ。しかし、いま、国会は国民を信じて発
議し、国民に決定させるべきだ。

『週刊ダイヤモンド』 2018年11月10日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1255

◆米原潜佐世保初入港のスクープ

                                           毛馬 一三


山崎豊子著の「運命の人」(全4巻・文藝春秋)が、ベストセラーになった時のことだ。山崎豊子フアンの筆者は、同書1巻を買い求め、読み始めた。ところが、読み始めたところ、「エッ!?」と思う記述が目に飛び込んできた。

その記述とは、第1章の「外交官ナンバー」に書かれている「米原潜日本初入港スクープ」のくだりであった。主人公の毎朝新聞政治部の外務省担当・弓成亮太が同省審議官から耳打ちされたことがキッカケで、政府公式発表前に米原潜佐世保入港当日の朝刊で「スクープ」したというのだ。

だがその「スクープ」より先に「原潜佐世保入稿」の「特報」を出したのは、NHK福岡放送局からだったのだ。しかも入港より丸1日早い、昭和39年11月11日早朝6時だったのである。

この「特報記事」を書いたのは、当時現地NHK佐世保放送局の新人記者だった筆者だったのだ。当時の思いと事実経過を「回想」しながら、綴ってみることにした。経過は追々・・。

そもそも、「米原潜佐世保米軍海軍基地入港」が発表されたのは、昭和38年3月。以来、佐世保では地元社会党系労働組合が「原潜入港反対闘争本部」を立ち上げ、これに市民団体も呼応して、大規模な入港反対闘争がはじまり、佐世保市内は米海軍基地周辺を中心に騒然となり出した。

とりわけ被爆地長崎と隣り合わせの現場佐世保では、米原潜搭載「核」持込みの懸念が市民らを強く刺激し、急遽集結した各地の革新団体や全学連が、デモ行進や集会を繰り広げ、騒動は日増しに激化していった。

その反対闘争の取材担当したのが、当時NHK佐世保局に赴任して間もない筆者だった。「サツ回り」と兼務だったが、入港反対闘争本部だった当時の佐世保地区労(佐世保地区労働組合会議)本部に夜討ち朝駆けを行い、反対運動の動静を追い続けた。

当時、総評系の佐世保労働組合の中核組織「全駐労」の委員長だった石橋正嗣氏が、衆院議員に転身して社会党書記長に就任していたことなどから、この反対運動は当時野党第一党の社会党と緊密に連携しながら、全国規模の反対運動に発展していった。

筆者は、帰郷する石橋書記長を掴まえ「反対運動」の中央の方針をしつこく聞き取って回ったことから、気難しい石橋書記長から特に目を掛けて貰う間柄となった。

同時に、足元の社会党系「佐世保地区労闘争本部」の早見魁議長、小島亨事務局長、西村暢文本部員らにも気に入られ、極めて親密な関係を築くことが出来た。

この仕事は、歴史の現場を直に目撃できる、当に「記者冥利」に尽きる無上の喜びであった。しかも現場で親交を深めた取材対象の人脈とも、立場を超えた人間同士の触れ合いが出来ることも学んだ。そうした教訓は、駆け出し記者の記者魂を助長してくれた。

そんな折の昭和39年11月10日の夜10時過ぎ、佐世保放送局で当直勤務をしていた筆者に、佐世保地区労の小島事務局次長から電話が入った。

「あなたの家に電話をしたら、当直と聞いたので電話したよ。実はね、上の方からあなただけに伝えなさいと今、指示があったので連絡するんだが・・・」

小島事務局次長はそう言った上で、「米原潜シードラゴンが12日朝、佐世保に入港する」という極秘情報を伝えてきた。筆者は、足が諤諤と振るえ、気は動転し、感謝の意を短く伝えるのがやっとだった。

すぐさま、福岡放送局の報道課長の自宅に架電してその情報を伝えると共に、これから出稿する旨を伝えた。報道課長は直ちに東京政治部の首相官邸キャップに連絡し、政府から確認を取って貰う。「君は、米原潜12日入港の記事を急いで書き、送りなさい」という指示が出た。

11日の2時ごろ、原稿を送ろうとしているところに、報道課長から電話が来た。「官邸キャップが官房長官に確認したが、どうも煮え切らない返事だったようだ。東京政治部では、引き続き政府関係者に当たるが、スクープとして当面は福岡発で流したらどうかと言っている。原稿をすぐ
送ってくれないか」ということだった。

そこで、「米原潜あす佐世保入港・現地では大規模集会やデモ」という原稿にすることを考え、「闘争本部」に裏付け取材をして上、急ぎ福岡局報道課に電話送稿した。「闘争本部」で特に友好の深い西村暢文氏に「他社は気付いていませんよね」と念を押し、確認を取ることを忘れなかった。

これが他社より1日早く福岡局から「原潜あす佐世保入港」のスクープが発せられたいきさつである。NHK東京発の同関連ニュースが放送されたのは、「米原潜」が入港する12日午前6時のニュースからであった。従って小説の毎朝新聞のスクープには遅れを取っていない。

これを綴るに当たり、先述の西村暢文氏に電話してみた。46年ぶりの懐かしい声に接した。西村氏は原潜闘争の後、佐世保市会議員を9期務め、最近引退されたという。「あなたのスクープで、闘争本部が一層盛り上がったことを、時折思い出していたよ」という嬉しい返事だった。

感涙の言葉だった。歴史の現場にいち早く立ち会える記者稼業とは、この上ない幸せ者である。(了) 2009.07.14


2018年11月11日

◆あの「アラブの春」から7年

宮崎 正弘


平成30年(2018年)11月9日(金曜日)通巻第5884号  

あの「アラブの春」から7年が経過したが、いま「アラブの冬」の時代に突入
サウジアラビア、周辺国の援助継続不能。イエーメンとの戦費も無理に

ジャメル・カショギ殺害でサウジ王家は世界的な批判に晒されているが、
もっと切実な問題はサウジの財政破綻である。

サウジは潤沢なオイルマネーのおかげで、豊かな教育、福祉サービル、健
康保険も充実し、外国人労働者も高給が取れた。

「この余裕を再び回復できるには原油価格が1バーレル@87ドルとならな
ければ行けない」(『フォーリン・アフェアーズ』、2018年11月、12月
号、マルアン・ムアシェル氏の寄稿)。

状況が激変したのは2014年からの原油価格大暴落だった。

とくにヨルダン、エジプトへの支援が難しくなった。先月のイムラン・
カーン(パキスタン首相)のリヤド訪問でも60億ドルの財政支援を約束し
たと伝えられたが、本当に実行されたのか、どうか。予定していた「アラ
ムコ」の上場は不可能となり、資金をかき集める手だてをなくした。アブ
ドラ皇太子の指導力が陰った。

サウジがイエーメンとの戦争に費やしているのは毎月60億ドルから70億ド
ルにも達しており、最大で年間800億ドルを超えるカネが砂漠に消えている。

高価な武器と傭兵による。

このため国内の福祉、社会サービス、教育無償化などのプログラムの実行
ができなくなっている。国民の不満を逸らすために女性の自動車運転を認
めるなど小細工も講じているが社会全体の擾乱気配は深化している。

サウジの国内バラマキは年間300億ドル、クエートは国民各自に@3500ドル
を給付した。オマーンは道路掃除など公共事業に三万の雇用を無理矢理つ
くりだし、優秀な若者には奨学金の無料交付なども続けた。すべてが物理
的に継続不能となった。

中東全体で失業率は30%前後とされ、とくに産油国でないエジプトとヨル
ダンは、サウジ、クエート、UAE等からの支援で社会保障を維持してき
た。財政悪化状態はサウジとUEA、オマーンなど同じである。

産油国が周辺国を金銭的に支援するプログラムが継続可能という展望がない。

このためエジプトは120億ドルの償還が出来ずIMF管理となり、ヨルダ
ンではデモが発生し、クエートも社会擾乱の兆し、これらの国々へ出稼ぎ
にでていたフィリピン人が最近は大挙して帰国している。

あの「アラブの春」から七年を閲し、民主化どころか、状況は泥沼。原油
価格高騰の局面にはあるが、1バーレル@100ドル時代の到来は想定しにく
い。産油国のどこが最初に「第二のベネズエラ」となるか?

◆改憲案の提示が国民主権の一丁目一番地

櫻井よしこ


「改憲案の提示が国民主権の一丁目一番地 国会は国民に投票の機会を
与えるべきだ 」

臨時国会は10月24日に始まったばかりだが、その様子を見ていて、政党も
国会議員も現実を見ていない、余りに無責任だと、腹立たしい思いにな
る。とりわけ焦眉の急である憲法改正について、なぜ、こうも無責任でい
られるのか。

国際情勢の厳しさは、日本よ、急ぎ自力をつけよと警告している。国民、
国家、国土は自国が守るという原点を思い出せと告げている。国民の命や
安全に責任をもつべきは政府であるにも拘わらず、日本国政府には国民、
国家を守る有効な手段を取ることができにくい。国の交戦権さえ認めない
恐らく世界でたったひとつの、変な憲法ゆえである。

憲法改正を急ぐべしと問題提起を続けているのは、安倍晋三首相ばかりの
ように見える。首相は、「自民党の憲法改正案をこの臨時国会に提出でき
るように取りまとめを加速すべきだ」と幾度となく旗を振ってきたが、周
りの動きはなぜかにぶい。

首相は繰り返し語っている。憲法改正は国会が決めるのではない。最終的
に国民が決める、と。そのとおりだ。日本国憲法の三大原則は「平和主
義」「人権尊重」「国民主権」である。国士舘大学特任教授の百地章氏
は、「現行憲法で唯一、具体的に国民主権を発揮できる場は憲法改正のた
めの国民投票だけです」と指摘する。

主権を行使する機会は、国会が憲法改正を提示(発議)して国民投票に踏
み切るとき、初めて、国民に与えられる。国会が国民に改憲案を提示しな
ければ何も始まらない。改憲案を国民に示すことが、主権が国民にあるこ
とを証す1丁目1番地なのである。

だが、公明党はこう語っている。

「国民の関心は高まっているが、具体的にどう改正するか議論は熟して
いない。衆参両院の憲法審査会で議論を活性化し、与野党で幅広い合意を
作る。その過程で国民的コンセンサスを作らなければならない」(井上義
久副代表)

憲法調査会が2000年に設置され、07年に憲法改正の原案作成を任務とする
憲法審査会ができた。憲法改正作業は約20年も続いているのだ。公明党は
議論は熟していないというが、この20年間、一体政治家として何をしてき
たのか。少なくとも自民、公明の間では議論は核心に触れるところまで熟
しているではないか。

そもそも公明党は国民をバカにしているのではないか。安倍首相が提唱し
た9条1項と2項を維持したまま、自衛隊を憲法に書き込む案は公明党の案
だった。

公明党が「加憲」を言い出したのは04年だ。10年後、彼らは「自衛隊の存
在を明記」する加憲案を公約とした。安倍首相が17年5月に提唱した、自
衛隊を憲法に書き込むという案は、再度強調するが、公明党の案そのもの
である。

公明党案を自民党が取り入れたのである。なぜ公明党はそこから議論を進
めないのか。なぜまだ時期尚早だなどというのか。

公明党は驕っていないか。憲法改正が必要か否かは政治家が決める。国民
には問わないし、決定もさせない。政治家の判断力が国民の判断力より優
れており、国民に判断を任せることはしない、とでも考えているのではな
いか。このような国民不信の極みともいえる尊大さを、公明党の姿勢に見
て取るのは間違いだろうか。

安倍首相が繰り返し指摘しているように、憲法改正は通常の法律改正とは
異なる。法律は国民の代表である政治家が国会で議論して決める。憲法は
国会が発議し、国民が投票で決定する。私たちは戦後一度も、国の基(も
とい)である憲法について意思表示する権利を行使し得ていない。国会が
その機会を奪い続けてきたからだ。しかし、いま、国会は国民を信じて発
議し、国民に決定させるべきだ。

『週刊ダイヤモンド』 2018年11月10日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1255

◆外国人観光客の急増

川原 俊明 (弁護士)


 最近、電車を利用していると、必ず外国人観光客を見かけます。

 私は、政府が目標としている「2020年東京オリンピックまでに外国人観光客2000万人」が実現されつつあるのを肌で感じています。

 大阪では、舞洲にカジノを中心としたリゾート総合施設の計画があり、これが実現すれば、まちがいなく政府の目標が達成されるでしょう。

 さて、ここで最近話題になっているのが、外国人観光客のお土産として注目を浴びている日本の商品です。いくつか挙げてみましょう。

 まず、炊飯器です。特に、米を主食とするアジアの人々にとって、日本の炊飯器は、とても性能がよく大人気だそうです。関西空港でも、炊飯器が入った箱を積み上げて運んでいる中国の方たちをよく見かけます。

 次に、爪切りです。海外では、ニッパー式の爪切りが主流みたいで、日本の爪切りのように、コンパクトに折りたためて、しかも切った爪を収納できるのは、非常に珍しいようです。それに、非常に良く切れるとの評判です。

 最後に、最近特に注目を浴びているのが、消せるボールペン、フリクションペンです。
 皆様ご存じでしょうが、特殊なインクを使用することで、ペンに付いているチップで軽くこすると、あら不思議、消えてしまうのです。一定の摩擦熱をインクにあたえることで消えるみたいです。日本には、とてもカラフルな色が揃っており、1箱単位で買って行かれる方も珍しくないそうです。

 これらの商品が外国人に喜ばれているのを聞いて、日本人の私としては、非常に誇りに思うと同時に、お土産として母国に持って帰っていただくことは、アピールするのが苦手な日本人にとって、これ以上の宣伝はないとも思います。

2018年11月10日

◆悪意に満ちた国連委員会の対日非難

加瀬 英明

 
8月に、スイス・ジュネーブで国連人種差別撤廃委員会が「対日審査会」
を行い、慰安婦、韓国人・朝鮮人に対するヘイトスピーチ、委員会が先住
民とみなすアイヌ・沖縄県民、朝鮮学校問題などを取りあげて、3日にわ
たって日本を嬲(なぶ)りものにした。

私はこの討議の一部を動画で見たが、どの委員も日本が性悪な国として、
こき下ろした。

戦前の国際連盟が本拠だった「パレ・ウィルソン」(パレは宮殿)で開か
れ、会合での対日非難は悪意にみちたものだった。

韓国の委員の鄭鎮星(チョンジュソン)女史は「性奴隷(セックス・スレイ
ブ)」といって、「慰安婦の残酷な状況は、当時の文書、映像、証言など
多くの証言によって、裏付けられている」と、日本政府代表団に迫った。

アメリカの黒人女性のマクドゥガル委員は、日本政府代表団が反論したの
に対して、慰安所を「強姦所」と呼び、「事実を議論すべきではない。こ
れは女性の尊厳の問題だ。慰安婦の大多数が韓国人だった」と、詰め寄っ
た。事実は、大多数が日本女性だった。

ベルギーのポッソート委員は、日本において韓国・朝鮮人が迫害されてお
り、「日本に住む40万人の韓国・朝鮮人の大多数が、植民地時代に強制的
に日本に連行された」と、攻撃した。事実は同じ国だったから、自由に往
来できたために、より豊かだった日本本土に、仕事を求めて移ってきたの
が、正しい。

コンゴ民主共和国をはじめ、諸国の委員がつぎつぎと日本を誹謗した。

このような国連委員会が世界の世論をつくって、日本の名誉を大きく損ね
てきた。

委員会の会合は、荒唐無稽としかいえないにもかかわらず、日本政府代表
団が一つ一つ、丁寧に答えていた。私は代表団を率いた大鷹正人外務審議
官や、法務省員の苦労を心からねぎらいたいと思った。

私も英語屋だが、大鷹審議官の英語は流暢で、素晴しかった。ところが、
日本政府の代表が「お詫びし、償い金を支払っている」といって、委曲を
つくして答えるほど、弁解しているように見えた。

私だったら弁明に終止せずに、相手を積極的に攻撃して、その歪んだ根性
を叩きなおそうとするだろう。

韓国の委員には、「韓国が独立を回復してから、貴国の国軍は日本の旧軍
の制度を受け継ぎましたが、国軍の将兵の性処理のために、『慰安婦
(ウィアンプ)』と呼ぶ女性たちが働く売春施設を、つくっていました。

『慰安婦(いあんふ)』は旧日本軍とともに姿を消したはずなのに、韓国軍
に長いあいだにわたって存在しました。慰安婦がそんなにおぞましいもの
だったら、どうしてこの日本語を韓国語として発音をして、使っていたの
ですか?」と、たずねたかった。

アメリカの委員には、「アメリカでは1960年代に入るまで、黒人は選挙権
を認められず、白人と黒人の性関係が犯罪とされ、水飲み場、便所から、
食堂まで区別されて、ひどい差別を蒙っていたし、今でも苦しんでいま
す。日本が先の大戦を戦って有色人種を解放したおかげで、黒人が白人と
同等の公民権を勝ち取ったのではないですか?」と、質問する。

委員会が国際連盟を創設することを提唱した、アメリカ大統領の名を冠し
た「パレ・ウィルソン」で開かれたのも、皮肉だった。

ウィルソン大統領はアメリカ南部のジョージア州とサウスカロライナ州で
育ち、有色人種が優生学的に劣っていると説いた、人種差別主義者だった
ために、ウィルソンが創学者のプリンストン大学では、学生たちがその銅
像の撤去を求め、アメリカ議会が創立したシンクタンク「ウィルソン・セ
ンター」を改名すべきだという運動が、行われている。

私だったら、委員たちに「パレ・ウィルソン」の名を改めることを、提案
しただろう。

このように愚かしい委員会で、日本政府の代表が暴れれば、世界のマスコ
ミが取り上げて、日本の主張が理解されることだろう。

◆英国もファーウェイを排撃

宮崎 正弘


平成30年(2018年)11月8日(木曜日)通巻第5883号  

英国もファーウェイを排撃、豪はCK(香港和記)のパイプライン企業買
収に「NO」
大英連邦も、遅ればせ中国資本の浸透を警戒

ファーウェイ(華為技術)の製品は、米国トランプ政権によって米国市場
から締め出され、とくに公務員、軍人はファーウェイのスマホの使用を禁
止された。

英国にも、この動きが拡がり、英国政府は近く厳しい制限を発表するとさ
れる(サウスチャイナ・モーニングポスト、11月7日)。

豪も急激に反中姿勢を固めている。モリソン政権の財務長官ジョ・フライ
デンバーグは「買収の動きのあるCK和記のAPA集団の買収を許可しな
い。国家安全保障上からの判断である」とした。

具体的に何が問題かと言えば、1万5000キロのパイプラインを所有し、130
万家庭にガスを供給するAPA集団を、CK和記集団が10億ドルという市
場予測の3倍の値段を提示して買収しかけたことである。
何が問題か? ずばり中国の影だ。

CK和記集団とは旧名「ハッチソン・ワンポア」。かの香港財閥のボス李
嘉誠が牽引する長江実業と統合して、香港最大の企業集団の一つである。
2012年以来、長男のヴィックター李がCEOを努めるが、実際にこの長男
は決断が鈍く、影にいる李嘉誠がほぼ全てを決める。

豪政府の警戒は、李が中国のトップレベルの政治家と親しく、また長男は
人民政治協商会議のメンバーであることだ。つまり中国共産党の意をてい
していると考えられるからだ。

ちなみに李嘉誠実にはふたりの息子がおり、前述の長男ヴィクターは1992
年に誘拐され、10億香港ドルの身代金をギャング団に支払ったとされる。

次男のリチャード李は、兄より早くから実業界の乗り出し、通信ビジネス
に特化、一時は八重洲口の高層ビルを買収し、PCCWビルとして話題を
集めたこともある。

同社はイタリアで既に「イタリア・モバイル」に25億ドルを投じて、同
社筆頭株主になっている。この次男も北京市政治協商会議のメンバーである。

     
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1816回】        
 ――「支那人は不可解の謎題也」・・・徳富(41)
徳富蘇峰『支那漫遊記』(民友社 大正7年)

    ▽

日本が建設した山東鉄道を「支那横斷の一大幹線」として、「他日中央亞
細亞を經て、歐洲に達す」るようにすべきだ。「上海の對岸なる海門よ
り、甘肅の蘭州に達する、所謂海蘭線と、何處にてか接觸すべきは」当然
のことだ。

「我が當局者が、支那の生命線とも云ふ可き鐵道を、列強の分割」するが
ままに任せて「拱手傍觀」している姿は「切に遺憾と爲す」しかない。こ
のままでは、日本が得ている鉄道に関する既得権すら失いかねないではな
いか。徳富の義憤は募るばかりであった。

 ■「(85)亞歐の大聯絡」
 
誰もが満蒙を説き、長江流域を説く。満蒙も揚子江流域も日本にとっては
重要だが、やはり「獨逸人の山東省に著眼し」、「露人滿蒙に龍蟠し」、
「英人揚子江流域に虎踞し」た”先見性”に着目すべきだろう。

将来、「中部亞細亞を横斷し、亞歐を聯絡するの大鐵道は」、やはり「山
東より君府(コンスタンチノーブル)に達せざる可からず」。この「世界
的大經綸」に基づけばこそ、ドイツは早々と山東に食指を働かせたのである。

将来を構想するなら「地下の富を數へ」るべきだ。地下資源が将来の「世
界の運命に、重大なる關係を有する」ことは、もはや言うまでもない。
「世界の運命は、鑛脈を辿りて、運行しつゝある」のだから。

現在の我が当局のように「天惠地福を、空しく放抛して、之を顧みざる」
状況では、「如何に城禍西來の不幸を招くも、遂に如何とも」し難い。で
あればこそ、「支那に於ける新運命の開拓は、實に今日以後にある」とい
うのである。

■「(86 \)多大の希望」

「支那は懷舊弔古の老大國」でも「古代文明の標本を提供する、一の豐富
なる博物館」でもない。やはり「今日及將來に於て、世界の大舞臺に、其
れの役目を働く可き、偉大なる邦國として取扱はざる」をえない。たしか
に「一方より見れば、老幹朽腐するも、他方より見れば、新芽?々とし
て、舊株より發生しつゝある」ではないか。

たしかに多くの欠点を持つが、「支那人は東亞に於て、偉大なる人種」で
ある。だから我が国が「東亞の大局を料理せんとするには、支那人を除外
して、何事をも做す」ことはできない。「此の見地より」して、「日支の
親善と、提携とを望まずんばあらず」。

「兩國の識者にして、若し一たび興亞の大經綸に想到」するなら、双方が
「反目敵視」することはないだろう。

彼らは「老子、孔子の世界的大宗師を出した國民」であり、「管仲、唐太
宗の如き大政治家を出した國民」であり、「六經、四書、諸子、百家の思
想界大産物を出したる国民」であり、「萬里の長城を築き、江南より燕薊
に至る運河を開鑿したる世界的大工事を成就したる國民」である。ならば
今後、「空しく白人の雇奴たる」を唯々諾々と受け入れることはないだろう。

であればこそ、「日支親善の要訣は、何より先づ互いに亞細亞人たる自覺
あるのみ」ということになる。

――旅の折々の思いを綴った「遊支偶?」、支那と支那人を多角的に論じた
「(一)前遊と今遊」から最終の「(八六)多大の希望」までの「禹域鴻
爪?」。「遊支偶?」と「禹域鴻爪?」によって構成された『支那漫遊記』
を閉じることになる。

『支那漫遊記』は「日支親善の要訣は、何より先づ互いに亞細亞人たる自
覺あるのみ」と結ばれる。だが彼らに「亞細亞人たる自覺」はあるのか。
同じ「亞細亞」を思い描いていたのか。
「互いに亞細亞人」と思い込んでいたのは日本人だけだった・・・のでは。

◆「新冷戦」の今、中国の正体を見誤るな

櫻井よしこ


「「新冷戦」の今、中国の正体を見誤るな」

世界はまさに「新冷戦」の時代に入っている。トランプ大統領は10月20
日、訪問先のネバダ州でアメリカは中距離核戦力(INF)全廃条約を破
棄するとこう語った。

「ロシアが我々の所にきて、また中国が我々の所にきて、口を揃えて『互
いに賢くなろう、そして我々の中の誰も、あんな武器(中距離核)を開発
するのはやめよう』と言わない限り、アメリカは(中距離核を)開発しな
ければならないだろう」

トランプ氏はさらに「ロシアが賢くなり、他国も賢くなる」こと、即ち
INFを放棄することが大事だと繰り返した。「他国」が中国を意味して
おり、その「他国」がINFを諦める可能性はほぼないと予測しているの
も、間違いないだろう。

メディアから、本当にINF全廃条約から離脱するのかと問われ、「そう
だ。離脱する(pull out)」と述べ「アメリカには7000億ドル(77兆円)
を超える軍事費がある」と強調した。中露両国を相手に、十分な核戦力を
構築できると誇示した。

INF全廃条約は、1987年にレーガン米大統領とゴルバチョフ・ソ連共産
党書記長との間で締結された。核弾頭を搭載する地上発射型の、射程
500〜5500キロのミサイルを全廃するとの内容だ。やがてソ連は崩壊しロ
シアとなったが、両国は廃棄を続け、2001年には双方がINFを全廃した
と確認した。

しかし、プーチン政権が14年に「ノバトール9M729」と呼ばれる巡航ミサ
イルを開発したとき、オバマ大統領はこれをINF全廃条約違反だと断じ
た。無論ロシア側は否定したが、今回、トランプ氏はロシアの否定を認め
ず、正面からその違反行為に対抗すると宣言したわけだ。

ちなみにトランプ氏は、7月16日にヘルシンキでプーチン大統領と首脳会
談を行ったときは、INFについては殆ど理解していなかった。それがい
ま、国防総省や安全保障問題担当大統領補佐官のボルトン氏らの助言に
従ってロシアを非難する。米国の安全保障政策は専門家らによって決定さ
れているのである。

「新しいタイプの核兵器」

トランプ氏の離脱宣言で注目すべき点は、標的がロシアだけではなく、中
国も大いに問題視されていることだ。中国はINF全廃条約の当事国では
ないことを利用して、中距離核ミサイルを含む兵器を着々と開発、配備し
てきた。結果として、中距離核ミサイルを保有していないのは米国だけと
いう状況が生じた。トランプ政権を支える安全保障問題の専門家らは、こ
の点についての懸念を深めていたのである。

今回の発言が単にトランプ氏の思いつきや暴走ではなく、政権の基本政策
であったことが、昨年12月に発表された米国の「国家安全保障戦略」と、
今年2月の「核態勢の見直し」から見えてくる。前者では中露に対して
「アメリカの軍事力、影響力と国益に挑み、アメリカの安全と繁栄を侵食
しようとしている」という非難の言葉を投げかけている。後者では、冷戦
が最も激しかった時期に較べて米国は核弾頭の85%を廃棄したとの主張を
展開し、にも拘わらず、10年の「核態勢の見直し」報告以来今日まで、
「潜在敵国」(potential adversaries)による核の脅威が高まっている
として、次のように強調した。

「米国が核兵器を削減し続けてきたこの間、中露を含む他の国々は正反対
の動きをした。彼らは新しいタイプの核兵器を作り、核戦略を充実させ、
宇宙やサイバースペースに至るまで侵略的に行動した」

非常に興味深く、また説得力もあったのが、報告書の8頁に掲載された
「2010年以降の核運搬手段」の図表である。米中露が10年以降に新たに開
発に着手した、或いは実戦配備した核運搬手段の紹介である。中露の欄に
はかなりの種類が列挙されている反面、米国の部分はほとんどが空白に
なっている。

ロシアの場合、新たに地上に配備された核ミサイルはSS27Mod2(大
陸間弾道ミサイル、ICBM)、SSC08(地上発射巡航ミサイル、
GLCM)がある。潜水艦から撃ち出される海洋配備のミサイルは
SSN32、SSN30などの4種類、空から撃ち込むものはKh102が実戦配
備されたと書かれている。

その他、開発着手済みの地上発射、潜水艦発射或いは爆撃機から撃ち込ま
れるミサイルが7種類も列挙されている。

中国も、地上発射のミサイルは実戦配備済みと開発中のものが、ロシア同
様5種類列挙され、海に関してもロシアとほぼ同じ4種類が記載されている。

一方米国は地上発射、海洋配備の新しいミサイルは10年以降、開発も配備
もしていない。米国が10年以降導入したのは戦闘機のF35Aである。

トランプ氏の決断

対照的に中国は凄まじい。核ミサイル以前に第一列島線、第二列島線を想
定済みだ。有事の際には、西太平洋に米軍の進入を許さない、台湾や尖閣
諸島攻略などの作戦の初期段階で中国が上陸し占拠して目的を達せられる
ように、米軍の進入を遅らせる戦略を描き、準備を進めてきた。

そのために彼らは非対称の戦いを考えてきた。米軍の誇る空母群に中国の
空母をあてるのでなく、弾道ミサイルを搭載した潜水艦を配備するなどが
そうである。建造費も膨大で、艦自体も巨大な空母に対して、建造費がは
るかに少なく、潜ってしまえば探知するのが非常に難しい小さな潜水艦を
あてるのである。このような考えから中国保有の潜水艦はいまや71隻もあ
る。わが国は16隻、米国は69隻である。

中国はINF条約に全く縛られることなく、すでに射程1500キロの東風
(DF)21Dを配備済みだ。これは潜水艦から発射されると、複数の弾頭
が迎撃ミサイルを回避して飛ぶため「空母キラー」として恐れられている。

他にも「DF26」ミサイルは射程3000〜5000キロ、「グアム・キラー」と
通称される。なんといっても米軍には、中露両国が保有するこれらの中距
離核ミサイルがない。

こうした事情を考えれば、トランプ氏の決断には十分な理由があると言わ
ざるを得ない。今後の展開はまだ定かではないが、米国の離脱論は消えな
いと見るべきだ。

米国の最大限の警戒心がロシアのみならず中国に向けられている現実を、
日米安保条約に依存する日本は弁(わきま)えておかなければならない。米
露、米中新冷戦は米中貿易戦争からも明らかな現実である。

英国のウィリアムソン国防相は「絶対的に揺るがぬ決意でワシントンの側
に立つ」と語った。安倍晋三首相は折りしも10月26日、日中首脳会談に臨
む。中国の本質を見誤って甘い対応をしてはならない。日本の主張をきち
んと表明することだ。

『週刊新潮』 2018年11月1日 日本ルネッサンス 第825回