2018年11月10日

◆蕪村公園横の「毛馬の閘門」

石田 岳彦


阪急千里線の柴島駅(本筋から思い切り離れますが「柴島」を初見で「くにじま」と読める人がどれだけいるでしょうか。)から天神橋筋六丁目駅へ向かい、淀川にかかる鉄橋を渡る際、左側奥、淀川大堰の向こう側に大きな「水門」が見えますが、その水門には「毛馬こうもん」と白抜きで大きく書かれています。

「こうもん」を漢字で書くと「閘門」です(ちなみに「毛馬」は地名で「けま」と呼びます)。

最近は警察署にも建物の壁に「けいさつ」と平仮名で大きく書いているところがありますが、「閘門」と書いても読めない人が多いので、「こうもん」と平仮名で書いているのでしょうか。

もっとも、警察署と違い、読みだけ知ったところで何をやっている施設かは分からないと思いますが。

それはさておき、阪急千里線を通勤経路にしている私にとって、毛馬の閘門は見慣れた存在でしたが、近くにまで行く機会はありませんでした。

平成20年春、毛馬の閘門が国の重要文化財に指定されることになったというニュースを聞いた私は、これをよい機会と毛馬の閘門に行ってみました。我ながらミーハーです。

毛馬の閘門に行くには、天神橋筋六丁目駅(阪急千里線、地下鉄堺筋線・谷町線)から北上し、淀川にかかる長柄橋の南詰めから河川敷に出て、更に5分ほど東へ歩きます。

河川敷は公園になっていて、堤防上には歩道も整備されていて、歩いていて楽しい道ですが、天神橋筋六丁目駅からは20分以上の歩きになり、大阪市内ということを考えると交通の便の悪い場所といえるでしょう(私がなかなか行く気になれなかった理由もこれです。)。
 
現地に設けられていた説明板によると、閘門というのは、水位の異なる川、運河等の間で船を行き来させるため、両側に水門を設けた水路で、毛馬の閘門の場合、大川(低)と淀川(高)との間の高低差を調整して船を通すために建造されたものです。

淀川から大川に入る場合、まず、水路内の水位を淀川に合わせたうえ、淀川側の水門のみを開けて船を水路に入れたうえで閉じ、水路内の水を抜いて、水面の高さを大川と同水位に下げた後、大川側の水門を開けて船を通過させるという仕組みになっています。

逆に大川から淀川に行く場合には、大川側から水路に船を入れたうえ、水を補充して水路面を淀川と同水位にまで上げてから、淀川側の水門を開放することになります。

なお、そもそも隣り合っている2つの川の水面に何故、極端な高低差があるかといえば、本来の淀川の流れは大川の方で、現在の淀川のうち毛馬よりも河口側の部分(新淀川)は明治時代に治水上の必要で人工的に作られたためだそうです。

ちなみに現在の毛馬の閘門は3代目で、私が毎朝見かけている「毛馬こうもん」もこの3代目にあたります。今回、重要文化財に指定されたのは、初代と2代目(今は船溜になっているそうです)で、このうち初代の閘門は、3代目のすぐ近くに見学用として整備されていました。

初代閘門の水門は2つの扉が観音開きになる方式で(なお、現役の3代目の閘門は門扉が上下して開閉するシャッター方式だそうです。)、現在は半開きの状態で固定されています。最近になって塗りなおされているようで、水色の大きな扉が鮮やかです。

北側の淀川側の水門は、近くにある堤防から一段低いところにあり、階段で下まで降りることもできますが、降りたところに柵が設けられていて、その先の水門をくぐることはできません。

もっとも、南側にある大川側の水門(淀川側に比べてかなり小型です)は開放されていて、そちら側から(旧)水路(当然のことながら現在では水路に水は流されていません。)の中に入ることができ、更に進んで淀川側の水門をくぐることもできます。北側の柵はいったい何のためでしょうか。

水路の中央に見学用の通路が設けられていて、その両側は何故か芝生になっていました。先ほどの柵といい、「こうもん」のペイントといい、この芝生といい、大阪市はよく分からないことに、金と手間を使います。

水路といっても船が通り抜けることができるだけのスペースですから、幅もそれなりにあり、スペース自体はちょっとした広場並みです。両側の側壁はレンガ造りになっていて、ところどころに鎖が取り付けられています。係船環と呼ばれる船を繋ぐためのものだそうです。水路に水を注入または排出するときに船が動かないようにするためでしょうか。

近くには初代閘門の付属施設として建設された洗堰(水が堰の上を越えて流れるタイプの堰)も残っています。淀川(新淀川)から大川に流れ込む水の量を調節するためのものだそうです。なかなかシックなデザインですね。

大阪市やその近郊にお住まいの方であれば、天気のよい休日にでも、広々とした淀川の河川敷や与謝蕪村公園の横を歩きつつ、ちょっと「毛馬の閘門」に寄ってみられるのも悪くないでしょう。(終)



2018年11月09日

◆すごいトシヨリBOOK」だが・・(2/2)

                     馬場 伯明


(池内紀さんの著書「すごいトシヨリBOOK」の感想を1/2から続けます)

「10年以上、検査(健康診断や人間ドック)は受けていません。(血液検
査はしている)」とある。「調べれば何か出ます。そうやって、治療を始
めると際限なく治療が続いて、結局・・・入院したままでなくなる
(101p)」。本気でそう思っているのだ。

これはおかしい。1泊2日数十万円の豪華な人間ドックでなくても、たとえ
ば私が住む千葉市。がん検診(胃がん・大腸がん・肺がん・子宮がん・乳
がん)とその他検診(ピロリ菌・肝炎・前立腺がん・骨粗鬆症・歯周病)
が毎年用意されている。しかも、費用は各500〜3000円だが70歳以上は無
料である。さらに、特定健康診断も毎年あり血液や尿検査など20数項目で
これも70歳以上は無料。近くの病院や医院が指定されている。

池内さんは、そうひねくれず素直に検査を受け自分の健康状態を確かめた
あと治療は自分で決めればいい(101p・195p)。「検査なんかしなくてい
いじゃない(102p)」と他の老人を扇動しないでほしい。高位の知識人の
池内さんが何というバカを言っているのか。(高度な検査を密かにしてい
るのか?と勘繰りたくなる)。

世間の人は毎年健診を受け早期発見により大問題になる前に治療する。10
年以上も拒否し健診を受けていないので、池内さんが病気で倒れたら、重
症の大問題になる恐れがある。奥様が救急車を呼び大病院に運ぶだろう。

わがままな池内さんのために治療の着手が遅れ、結果として日本の治療費
が余分にかかる可能性がある。「(本書が)なにかのヒントになれば、こ
れ以上うれしいことはない」とあるが、「検査なんかしなくていいじゃな
い」という逆ヒントは世間に対し大きな悪影響を及ぼす。

池内さんの終末の医療を考えてくれるかかりつけの町医者(立派なヤブ医
者!)はどこの誰だろうか(195p)。ご紹介願いたい。本書で連絡先を紹
介されたらよかったのに。

「老人は自立が大事だ(112p)」。賛成であり、そうありたい。しかし、
池内さん流の「自立」はどうか。TV・過去の友人などからの自立はまあい
いが、家族・夫婦から自立(別行動)し、夫婦旅行も別となれば、その先
は「離婚」の終着に向かうことにならないか。ご夫婦の離婚の危機を憂う。

老いの楽しみの一つ「ホテルコレクション(142p)」。「いつ出来たか、
いつリニューアルしたか」を基準に「新しくて小ぶりなホテルがいい」
と。最適のホテルが急成長中のAPAだ。元谷外志雄代表から詳しく説明を
受けており責任を持って推薦する(内容は省略。HP等をご覧ください)。

「老年オリンピック」はいい発想だ。デッサン、将棋、ギターなど4年単
位で「仕掛ける」のは「日常の再生」に有効であろう。ここで「医学的に
見ても、人間の細胞は4年ごとに生まれて死んで常に細胞が再生していま
す。・・・4年ぐらいすると全身が一巡して、4年前の細胞がなくなって、
新しい人間が誕生している」とある(146p)。

ちょっと待って!「4年で・・新しい人間」だと? 専門外であっても、
このようなあやふやなことを書いてはならない。私も医学・医療分野の専
門家ではないがそれが俗論であることは知っている。Webを見てもわかる
(*2)。確認の上、次版での訂正を希望する。

(*2)「・・7(4)年毎に細胞が生まれ変わるというのはインターネット
上の与太話にすぎない(SciShow:Hank Green〈ハンク・グリーン〉)」
「60兆個(37兆個説も・・)の細胞は周期的に生まれ変わる。周期は部位
により異なる。神経細胞や心筋細胞は生涯更新されない(Wikipedia)」
各自お調べください。

 池内さんは39枚撮りの「写ルンです」を使っているという。同行のカメ
ラマンが「いやあ、なんかうごかなくなっちゃって」と。「写ルンです」
で撮ったらほとんど変わらないと(79p・174p)。そのカメラマンの名誉
のために私は言う。「嘘だろう?彼はどこの誰だ?」と。大型カメラの故
障に備え予備のデジカメなどを用意しておくのはプロの初歩である。

「写ルンです」は(低位の)デジカメにさえ品質・価格・納期面で明らか
に劣る。5000円のデジカメでも、ズーム・ワイド・動画・連写・各種のフ
ラッシュ・消去などが自由自在。「写ルンです(39枚)」は一回きりだ。
本体購入価格998円、安めの「カメラのキタムラ」でも現像648円、プリン
ト1391円(@39円)。DPEなしに写真を見ることもできない。

「写ルンです」から(孫らの)ラインに写真を送るには携帯やPCへの転送
(540円)が必要だ。不便で高費用のカメラを軽いだけでの理由で3つの
リュックに1台ずつ常備するとは狂気の沙汰。世間の老人は「そんな(高
額な)贅沢はできない」と拒否するだろう。「すごいトシヨリ」でも不合
理な思い込みはダメ。デジカメかスマホにすぐ替えてください。

「(老人でも)批判の仕方は上手だし、弁も立つ。マイナスを数えること
も鋭敏ですが、批判の基準がやっぱり古い。見当違いなことで批判してい
る(当人はそれに気づかない)」とあった(51p)。読むうちに、いま文
章を書いている私(!)のような者を指しているように思われた。だが、
逆だと思う。この言葉はそっくりそのまま池内さんへお返ししたい。

「あとがき」で池内さんは「意図して譲らなかったことが二つある」と本
書に書かなかった2つをあげている(212p)。それは、
(1) 暮らしを保障する蓄えや収入と健康、そのための生活設計。
(2) 高齢者を待ち受けている危険、不便、不安・・・その安全対策。
池内さんはなぜ書かなかったのか?その理由は次のとおりである。
(1) は、「各人の知恵と工夫によるしかないからだ」と。
(2) は、「当人が、そんな世の中にした多数者の一人であるからだ」と。

一種の自己責任論である。(1)(2)ともに自身(池内さん)は自力で確
立済みである。出来ていない人はしょうがないということである。冷厳な
事実であるが、世間の人の大きな関心事は、リュックやカメラなどではな
く、それを知りたいのに・・・。(本書では、この2つに触れないか、ま
たは、せめて、このセリフを本書の冒頭で書いてほしかった)。

池内さんは、家族のうち両親と妻については触れているが、兄弟姉妹・子
供・孫・(曾孫)らについては書いていない。日本の少子高齢化を突破し
ていくためには、「家族や多世代の共助・協同」が大きな課題になるとも
言われてきている。

池内さんは(1)(2)の重要な課題に触れず、老人の「自立」を唱え(離
婚?・死別?を経て)孤老へと走っているように思われる。私としては、
文学の分野で「すごい業績」があっても、このようなトシヨリ(老人)を
「すごいトシヨリ」とは呼べない。本書の表題はむしろ「ひどいトシヨリ
BOOK」の方がしっくりするのではないか。

ところで、本書最後の行に「僕は、風のようにいなくなるといいな
(209p)」とある。少しホッとした。私の思いと概ね同じだから。かつ
て、本誌に「古稀からどう生きるのか?」を書いた。以下、引用を交えて
記述する。

ペルシャの数学者・天文学者・詩人のウマル・ハイヤーム(1048〜1131)
の四行詩「ルバーイヤート」には深い無常観が流れている。一部を引用す
る(「一日一言」桑原武夫編・岩波新書より)

若い時には わしもまじめに 
博士や聖者の所に よくいったものさ
あれやこれやの大げさな議論
だが、いつでも 入ったと同じ戸口から出てきた

かれらとともに、わしも知恵の種をまいた
自分の手を使って育てようともした
収穫といえば たったこれだけ
「わしは、水のように流れてきた。風のように吹きすぎて行く」

だれのどんな人生にも「明日は明日の(いい)風が吹く」ことがある。私
たちは今日が辛くても、明日を信じ、今日をぽつぽつ生き抜いて・・・、
流れ流れて、消えて行くのである。

晩年は認知症になられたらしいが、池内さんの伯父さん(町医者)の口癖
はドイツの文豪ゲーテ(Goethe)の「人生はされど麗し(Das Leben ist
doch schön)」だったとあった(182p)。「されど」に含蓄がある。

では、古稀を通過したその果ての・・・私の臨終はどうなるのであろう。
ゲーテ(Goethe)は「もっと光を!(Mehr Licht!)」と言い残したらし
い。おそらく、(ゴルフ好きの)私は、苦し紛れに「ううっ!・・・もっ
と飛距離を!」と呻(うめ)くだろう(笑)。

これまでに、池内さんの著書はいくつか読んでいる。善意の人だと思う。
本書にあれこれ突っ込み、ケチをつけたが、他意はない。なお、池内さん
には会ったことはない。

とりあえずの結論。これからの人生100年時代の到来に際し、池内さんに
は、私たちの模範となる真の意味での「すごいトシヨリ」になっていただ
きたいと思っている。(2018/11/7千葉市在住)

◆友好の中でも、中国に塩を送り過ぎるな

櫻井よしこ


「友好の中でも、中国に塩を送り過ぎるな」

米中新冷戦が進行する中で、対米関係で窮地に陥った中国との日中首脳会
談が10月26日に行われた。これまでの首脳会談では、およそいつも日本が
攻めこまれていた。今回は初めて日本が中国に注文をつけ得る立場で臨ん
だ。安倍晋三首相は日本優位へと逆転したこの状況を巧く活用したと、評
価してよいだろう。

日中間には日本国の主権に関わる案件として尖閣諸島や東シナ海のガス田
問題等がある。日本の名誉に関わるものとして慰安婦問題をはじめとする
歴史問題がある。

安全保障及び経済問題として、米国共々膨大な被害を蒙っている最先端技
術や情報などの知的財産の窃盗問題がある。事実この問題ゆえに、米国は
中国に貿易戦争を仕掛けた。同盟国との協調という点からも、日本が中国
に厳しく言わなければならない立場だ。

産経新聞外信部次長の矢板明夫氏は、これらに加えて人権問題こそが最重
要案件だと指摘する。

「米国議会は共和・民主の超党派で、イスラム教徒のウイグル人100万人
以上が強制収容され、拷問や虐待で多くが死に追いやられている現状を指
摘し、中国政府の行為は人道に対する罪だと主張しています。安倍首相
も、ウイグル人に対する人権弾圧について習近平国家主席に抗議すべきで
す。その前に8人の日本人に対する人権弾圧に抗議すべきです」

中国政府は日本人8人をスパイ容疑で逮捕しているが、どう見ても彼らが
スパイであるとは思えない。百歩譲って、たとえスパイであったとして
も、彼らは日本のために働いたのであるから、安倍首相は彼らの早期釈放
を中国側に求めるべきだと、矢板氏は強調する。

中国政府はこれまで何人もの日本人をスパイ容疑で逮捕してきたが、逮捕
された人々が本当にスパイであると納得できる十分な情報を日本側に提示
したことはない。「日本人スパイ」の摘発は政治的要素が大きいと指摘さ
れているだけに、安倍首相は同件をまっ先に持ち出さなくてはならないと
の指摘は正しい。

日中外交の重要な転換点

今回安倍首相は李克強首相との会談でウイグル人弾圧に関して、「中国国
内の人権状況について日本を含む国際社会が注視している」と注文をつけ
た。中国政府の血走った人権弾圧を明確に問題提起したことは、これまで
の対中外交にはなかった。日中外交の重要な転換点となるだろう。

邦人8人の安全についても、習氏との会談で前向きの対応を求め、「中国
国内の法令に基づき適切に対処する」との言葉を引き出した。恐らく、早
期の解放が期待されるのではないか。

尖閣諸島問題については、中国公船が尖閣の排他的経済水域(EEZ)に
侵入し続けていることについて状況改善を要求した。

中国が海警局を設置して、尖閣諸島周辺海域への侵入を激化させたのは
2013年だ。今回の首脳会談は海警局の公船がわが国の海に侵入し始めて以
降、初めての公式訪問だ。この機会に何も言わなければ、中国の領海侵犯
を黙認することになる。首相が状況改善の要求をつきつけるのは当然なの
だが、非常に大事なことだった。

首脳会談の発言は、その後の外交の基本となる。首相が指摘した件は今
後、日中間の議題となり続ける。とりわけ、習氏の来年の訪日は今後の日
中関係における重要事項だ。さまざまな条件が話し合われるとき、尖閣の
海の状況改善という日本の要求は、必ず取り上げられ続ける。中国側の無
謀、無法な侵入をその度に批判し続けることが大事だ。

知的財産権についても、安倍首相は習、李両氏に問題提起した。興味深
かったのは、知的財産権について更なる改善を図ることが重要だと安倍首
相が中国側に求めたその席で、安倍、李両首相が高齢化社会への対応につ
いて大いに話が合ったという点だ。つまり、知的財産権の侵害という根本
的かつ最重要の厳しい問題を提起しても、日中首脳の対話が盛り上がっ
た、波長が合ったということは評価してよいのではないか。

中国の少子高齢化は、日本よりもはるかに厳しい。わが国は高齢国家の最
先端を走っているが、国民皆保険も、年金制度や福祉制度も一応整えてい
る。中国はこれらの準備が殆んど整わないまま、世界最大規模の少子高齢
化を最速で迎える。富裕層以外の中国人をざっと10億人とすると、彼らの
老後は真に厳しく惨めなものとなると予測され、大国中国の土台を蝕む要
因となる。

中国経済の舵取り役である李氏が大いに参考にしたいのが日本の事例であ
るに違いない。そして、多くの人は忘れているかもしれないが、安倍首相
はもともと厚生族だ。社会保障や年金制度について恐らく誰よりも詳し
い。その安倍首相の話に、習氏よりずっと合理的な思考の持ち主だと言わ
れる李氏は、熱心に耳を傾けたに違いない。両首脳の話が弾んだのは、今
後の日中関係に一筋の明るい光を投げかけている。

米国はどう受けとめるか

他方、懸念すべきは一帯一路への日本の協力である。一帯一路は「第三国
民間経済協力」と名前を変えて登場し、日本の企業各社がコミットしたか
に見える。

日中双方の企業が共同で第三国にインフラ投資をするという覚書が52件も
交わされ、その合計金額は180億ドル(約2兆160億円)と報じられた。さ
らに、安倍首相は3兆円をこえる大規模通貨スワップ協定を結んでしまった。

3.1兆ドル(約348兆円)の外貨を保有するといいながらも、対外負債を引
くと中国の外貨準備は実質マイナスだ(『産経新聞』10月26日、田村秀男
氏)。

スワップ協定が実際に発動されるような事態とは、中国経済が潰滅状態に
陥るということで、スワップ協定は政治的な意味合いが強いものの、習氏
は日本の姿勢を心強く思うだろう。片や中国と冷戦を戦い、中国の力を殺
ぎたいと願う米国はどう受けとめるか。日本にとって米国は最重要の国だ
けに、米国への事前事後の説明とその理解が欠かせない。

新冷戦の中での日本の生き残りの必須条件は、同盟国であり価値観を同じ
くする米国との関係を緊密に保つことだ。他方、中国は共産党が潰れない
限り恐らく本質的には変わらない。日本の路線とも決して交わることはな
い。だからこそ、中国とは必要な関係は維持しつつも、彼らに塩を送り過
ぎないことだ。

日本も米国も、旧ソ連でさえ、中国が演じ続けた「か弱い存在の振り」を
信じて中国を援助してきた。だが彼らは十分に自力をつければ、助けてく
れた国に対しても牙を剥く。安倍首相と日本への厳しい非難から笑顔へと
急転換した中国の思惑は明らかだ。彼らの笑顔はうすい表面の皮一枚のも
のと心得て、日本は戦略を読み違えてはならない。中国への過度の肩入れ
は国益を損なう。

『週刊新潮』 2018年11月8日号 日本ルネッサンス 第826回

◆足の血管にもステント

石岡 荘十


数十メートル歩くと左足がだるくなって歩行困難になる。で、数分立ち止まって休むとまた歩けるようにはなるが、またすぐだるくなる。

このような症状を専門的には「間欠性跛行」という。「跛行」はビッコを引くという意味だ。こうなった経緯については、本メルマガ「齢は足にくる」

http://www.melma.com/backnumber_108241_4132433/

で述べたとおりだが、先日、閉塞した足の大動脈にステントを入れる治療を受け、ビッコは解消し、元通り颯爽と歩けるようになった。

はじめ、「これはてっきり腰をやられた」思い込んで、近所の接骨院に駆け込んだら、「典型的な脊柱管狭窄症の症状だ」と断言する。つまり神経の管が腰のところで狭まっている疑いがあるとのことで、電気治療、針を数回やってもらったが、はかばかしくない。

業を煮やして、行きつけの大学病院の整形外科で腰のレントゲン、さらにMRIを撮ってみると、確かに、腰椎のひとつがずれているが、神経には触っていないことが確認できた。脊柱の管にはどこも狭くなっているところはない。ビッコの原因はほかにあるというのが整形外科医の診断だった。

考えられるのは、足に血液を供給する血管、動脈がどこかで狭くなっていて、血液や栄養補給が足の筋肉の運動量に追いつかないのではないか。血管の動脈硬化ではないかというのが循環器内科の医師のお見立てだった。

となると、検査法はPWV(脈波伝達速度)。両腕、両足に幅広のベルト(カフ)を巻いて四肢同時に血圧を測定する検査法である。この検査をすると、動脈の詰まり具合と動脈の硬さ(柔軟性)手足の動脈などの比較的太い動脈の高度狭窄の有無がわかる。

結果は、左足だけが標準値に遠く及ばない。病名は閉塞性動脈硬化症。左足へ行く動脈のどこかが詰まっている疑いが強まった。

血流が詰まる動脈硬化は典型的な加齢疾病だ。脳の血管が詰まれば脳梗塞になるし、心臓の血管(冠動脈)が狭くなると狭心症、詰まると心筋梗塞になる。私の場合は足にきたというわけである。

造影剤を使ったCTで診ると、左足付け根から動脈を15センチほど遡ったところで90パーセント狭窄していることが確認できた。左足へは最大、通常の7割ほどしか血が流れていない。これではビッコになるわけだ。

治療法は、脳梗塞や心臓梗塞と同じだ。血管の狭くなったところにカテーテルを挿し込んでフーセンで拡げるとか、バイパスを作るとか、etc。

心臓カテーテル室でカテーテル台に横になると、若くて美形の看護婦さんが何の躊躇もなくパラリとT字帯をはずし、左足の付け根周辺の陰毛を電気かみそりで刈る(剃毛という)。慣れたものだ。

局所麻酔の後、この治療では実績も多い腕利きの医師が、モニター画面を見ながらカテーテルを挿入。先端には、中心部に細くすぼめたバルーンを仕込んだステントがある。

ステントはステンレスで出来た金網のチューブである。これを狭窄部分まで持っていってバルーンを膨らますと、すぼめてあったステントの内径も同時に拡がって、狭窄した血管を見事に押し広げた。

ステントは内径8ミリ、長さ40ミリ。心筋梗塞の治療に使うステントは内径2ミリほどだから、それに較べると大型だ。治療時間は1時間ほど、治療費86万円、自己負担9万円ほどだった。

心筋梗塞でステントを使う治療法はよく知られているが、足の大動脈狭窄にステントを使うケースはまだそれほど多くない。

下肢(足)へ行く動脈が詰まると、下肢が腐ってしまい、痛いだけでなく、命にかかわるケースもある。そうなると「命には代えられない」とやむを得ず下肢を切断しなければならなくなる。日本では毎年1万人以上が足を切断されているという報告もある。高齢化で症例は増えている。

足にもステントを入れるという治療法は、循環器内科ならどこでもやっているわけではない。リスクもある。医師の選択には慎重でありたい。

元京都大学心臓血管外科部長・米田正始(こめだまさし)医師を中心とする研究グループは新しい血管を作って下肢切断を救う「血管再生法」という試みを行なっていて、再生医学のひとつとして注目されている。

「なんとなく足の先が冷たい」

これが、アラームだ。接骨院では治らない。専門の医師を選んで、治療を受ける必要がある。(再掲)


2018年11月08日

◆下院舞台に攻防段階へ突入

杉浦 正章


唯我独尊政治が極東外交にも影

中間選挙の結果米国は、民主党が下院を奪還し、多数党が上院は共和党、
下院は民主党という「ねじれ議会」となった。この大統領と下院の多数派
が異なる政治状態は、戦後の議会ではレーガン政権、ブッシュ政権、オバ
マ政権で生じている。

とりわけオバマ政権の2期目は、「決められない政治」で有名だが、トラ
ンプも多かれ少なかれ「決められない」状況に落ち込むだろう。2年後の
大統領選は、奇跡の逆転でトランプ再選がないとは言えないが、その可能
性は低い。勢いづいた民主党が反トランプの攻勢をかけることは必定であ
り、大統領弾劾の事態もあり得ないことではない。米国の政治は流動化の
傾向を強くする。

民主党にとっては8年ぶりの下院奪還であり、ねじれを利用してトランプ
政権への攻勢を強め、大統領の弾劾訴追も視野に入れるとみられる。その
ための圧力は、法案の成立数となって現れるだろう。米議会における法案
成立数は毎年通常400〜500本で推移しているが、議会がねじれた政権では
その数が著しく減少する。レーガンの成立率は6%、ブッシュ4%、オバ
マ2%といった具合だ。

法案は通常、上下両院でそれぞれ同時期に審議され、内容が一本化されて
成立の運びとなる。民主党は今後ポイントとなる重要法案の成立を阻むも
のとみられ、トランプは議会対策で苦境に陥る公算が強い。とりわけ下院
が主戦場となる。民主党の狙いは言うまでもなく2年後の大統領選挙でト
ランプを引きずり下ろすことにある。2年間でトランプをボロボロにし
て、再起不能にしようというのだ。

民主党はトランプの弱点を突く戦術を展開するものとみられる。弱点は山
ほどある。外交では北朝鮮の金正恩やロシアのプーチンとの親密ぶりばか
りを露骨に誇示して、同盟国である日本やカナダをないがしろにして、高
関税をちらつかせる。

内政では元女優との不倫に口止め料を支払ったのが露呈したかとおもう
と、女性やマイノリティに対する侮辱的な発言。議会が指摘する「嘘つき
政治」は日常茶飯事である。

よくこれで大統領職が務まると思えるほどの問題ばかりが山積している。
他国に対する制裁関税も、製造業が大不況で息も絶え絶えのラストベルト
地帯にこびを売るものにほかならない。トランプは国全体を見る視野よ
り、自分への支持層だけを大切にしているかに見える。

「我々はグローバリズムを拒絶し、愛国主義に基づき行動する」という発
言は、国際協調路線とは決別しているかに見える。現実に環太平洋経済連
携協定(TPP)や、地球温暖化対策の「パリ協定」からの離脱表明は、
釈迦も驚く唯我独尊ぶりだ。

この結果、米国民に分断傾向が生じている。国内に医療制度や移民問題を
めぐって対立が生じているのだ。もともと共和党支持層は地方の有権者や
白人が多く、民主党は若者や、有色人種、女性が支持する傾向が強い。本
来なら複雑な社会形態を統合するのが米大統領の重要な役割だが、トラン
プは分断が自らを利すると考えているかに見える。

よくこれで大統領が務まると思えるが、米国政治の懐は深く、弾劾などは
よほどのことがない限り実現しそうもないのが実態だ。米国では大統領と
議会の多数派が異なることを分割政府(divided government)と言う。

米国の政治制度の特質は、大統領と議会の多数派が異なる分割政府の常態
化を前提として政治運営や立法活動が複雑な駆け引きの下に行われる。大
統領が利害調整を行はざるを得ない場面が過去の政権でも見られた。

その傾向が常態化するのであろう。さすがに心配なのかトランプはさっそ
く「ねじれ」状態を踏まえ、「いまこそお互いが一緒にやるときだ」と
べ、民主党に連携を呼びかけたが、ことは容易には進むまい。

トランプの政治姿勢が続く限り、西欧や日本などの同盟国の国民は心理的
な離反傾向を強めかねない。そうすれば喜ぶのはプーチンや習近平だけで
あろう。トランプの対中対立路線が原因となる米中離反は、中国による対
日接近姿勢を強めており、国家主席習近平の来年の訪日など今後交流が強
まる傾向にある。

トランプの唯我独尊政治は、単に米国内にとどまらず、極東外交にも大き
な影を落としているのだ。しかし大統領が誰であれ、日米関係は重要であ
り、同盟関係を堅持し、通商関係の維持向上を図るべきであることは言う
までもない。


◆これからの日中関係を決める首脳会談

櫻井よしこ


「これからの日中関係を決める首脳会談 騙され続けた長年の歴史から脱
せるか」

10月23日、私が理事長を務めるシンクタンク「国家基本問題研究所」は
「中国の人権侵害に、日本の沈黙は許されない」とする意見広告を、複数
の全国紙に掲載した。

中国政府は100万人を超えるイスラム教徒のウイグルの人々を収容所に押
し込め、絶え間ない洗脳を行っており、多くのウイグル人が弾圧され、拷
問を受け、死亡し、廃人にされ、或いは深刻な後遺症に苦しんでいる。

米議会はマルコ・ルビオ上院議員らが中心になって、民主、共和両党が結
束し、中国政府に問題をつきつけた。米議会は中国の凄まじい人権弾圧を
「人道に対する罪」と定義し、国際社会に告発した。2022年の冬期五輪の
開催地に予定されている北京を他の都市に変更するよう、国際オリンピッ
ク委員会に要請し、中国で国家分裂罪で無期懲役の判決を受けて獄中にあ
るイリハム・トフティ氏を来年のノーベル平和賞に推薦するという。

ルビオ氏らは同盟国にも、中国非難の同じ隊列に加わるよう求めている。
米中間で進行中の貿易戦争の背後には両国の価値観の相違がある。ウイグ
ル人に対する不条理な弾圧はそのひとつである。日米安保条約によって同
盟国として結ばれている日本にとって、価値観の闘いで、米国と共同歩調
をとらない理由はない。その意味で日本の政府も国会議員も、いま、ウイ
グル問題で声を上げるべきである。

トルコのサウジアラビア総領事館でジャーナリストのジャマル・カショギ
氏が殺害された。サウジ政府によるカショギ氏殺害の、人権無視の酷いや
り方はもはやどの世界にも受け入れられない。一人のジャーナリストの殺
害事件が、サウジ皇太子のムハンマド・ビン・サルマン氏の地位を危うく
している。米国とサウジの関係に亀裂が生じ、サウジの影響力が低下し、
イスラエルとの連携も弱まり、イランが得をし、結果として中東情勢が揺
らぐ深刻な展開になりかねない。

人権問題が世界情勢を大きく左右する要素になる中で、中国はサウジより
も遙かに残酷な拷問死の山を築いてきた人権弾圧国家である。日本の政治
家が中国に抗議の声を上げない方がおかしいのである。

たとえウイグル問題がなくとも、日本政府には中国の人権弾圧について発
言しなければならない事情がある。8人もの日本人が中国にスパイとして
囚われている。彼らがスパイであるなどとは信じ難い。中国側は容疑を裏
付ける詳しい情報を全く示していない。これまでにも中国が日本人をスパ
イ容疑で拘束した事例はあるが、いずれも濡れ衣と言ってよい事例だった。

26日(本稿執筆は23日)の、実に7年ぶりの日中首脳会談で安倍晋三首相
が何を語り、何を語らないかで、これからの日中関係が決まる。首相は日
中首脳会談を望みながらも中国が首脳会談実現の条件としてつきつけた要
求に屈しなかった。中国側が欲し、日本側も欲した首脳会談でも、同じよ
うに妥協しないことが日本の国益を守る道だ。

日本側が中国側に求めるべきことは、まず第一に日本国民の人権と命を守
るという意味で、前述の8人の日本人救出である。次に尖閣諸島海域に定
期的に侵入する中国の公船について1ミリも譲らずに抗議することだろ
う。そうしなければ尖閣海域における中国の行動を黙認し、中国が領土を
奪うことを認めることになる。第三に中国の知的財産の窃盗への抗議だ。
米中貿易戦争で米国の側につく意思を示し、同時に日本が被っている損害
について、これ以上許さないとの決意を示すためである。

最低限こうした点をおさえることができれば、首相の対中外交は成功だ。
それができて初めて中国に騙され続けるという長年の日中関係から脱する
ことも可能になる。

『週刊ダイヤモンド』 2018年11月3日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1254

◆すごいトシヨリBOOKだが・・

馬場 伯明


池内紀さん(*1)の新著「すごいトシヨリBOOK」が売れているという。毎
日新聞出版・1080円。読みやすく面白いので購読をお勧めする。以下に感
想を記すが、違和感がある箇所には斜めから少し突っ込みたい。(本書を
読まないと「突っ込み」もわからないかな?)。

(*1)1940年姫路市生まれ。ドイツ文学者・エッセイスト。主な著書に
「ゲーテさんこんばんは」「海山のあいだ」・・。訳書に「カフカ小説全
集」「ゲーテ・ファウスト」・・。山や町歩きや自然の本も「森の紳士
録」「ニッポン周遊記」・・など多数。(本書より)。

本書へのおぼろげな「違和感」は、池内さんが日常生活よりその水準を少
し下げるというか、一種の偽悪ぶる手法で書いているのではないかという
(下司の)勘繰りに似た私の推測から生じるものである。そのように勘繰
る私の品性(の低さ)を追求される恐れはあるが、とりあえず、そのまま
書き進める。

「群れて、集まって、はしゃいで、というのは老いの尊厳に対する侮辱で
はないか」とある(37p:本書の該当頁)。でも、老人が群れたらなぜ悪
いのか?何が侮辱なのか?群れに参加できない老人への配慮なのか?「老
いの尊厳」って理解に苦しむ。

私は1944年生まれ。池内さんの少し下だ。2018年10月〜11月初は群れの連
続だった。10.4~5大学の卒業50周年クラス会(京都)、10.8~9高校のクラ
ス会(長崎)、10.27関東在住者の中学校同窓会(東京)、10.29~30勤務
した企業の入社50周年同期会(箱根)と続いた。また、長崎県島原半島の
別高校の関東の同窓会にも2つ出席した(東京10.20、11.3来賓)。

時間とお金を消費した。しかし、「群れたこと」は決して無駄ではなかっ
た。多くの体験を共有した友人たちと語り合い「これでしばらく生きてい
ける」と思った。腹の底から凛々と生きる勇気が湧いてきた。

20~30年前のハートマン(Hartmann)のリュックサックを今も使っている
(78p・87p)とのことだが、信じられない。当時はいいものだったかもし
れないが、機能(ファスナー・ポケット・ペットボトル収納・肩ベル
ト)、材質(重量・強度・防水)、デザイン(形状・色・模様)におい
て、現在の安い製品が優ると思う。単なる懐古趣味ではないか。今
Hartmannのリュックは5〜10万円とあるが、1万円の無印への買い替えを提
案する。

大きなキャリーバッグを転がす旅行者を揶揄する(81p・83p)が、池内さ
んは仕事も含め月数回の旅行と推測する。世間の人たちは(金がないか
ら)回数が少ない。たまの観光旅行では、上下ジーンズで川沿いを散策
し、夜は洒落た服装で夕食やバーのお酒を楽しみたい。気分が昂揚し満足
度も高くなる。こんな小旅行でも小さなリュックでは無理である。

「金種を揃え、金を持って外出する(77p)」と。世間の人はそんな無駄
はせず財布1個で十分だ。財布に3万円、リュックに5万円、その他千円札
を3枚と小銭・・・。そもそも、中堅サラリーマンでも8万数千円は持って
いない。ま、カードだ。それに外国旅行はカード無携帯ではほぼ不可能で
ある。

無料の行事や展覧会はくそ喰らえと一点豪華主義に憧れる世間の人の気持
ちが、池内さんにはわからないか(84p)。老い先短い一生である。やは
り、国内外の一流作品や演奏にも触れたい。工面してお金を貯め鑑賞すれ
ば生きがいが増す。池内さんは、他人には無料や安物を勧め、自分は趣味
の歌舞伎や欧州のオペラなどの高額イベントに多く通っていないか?

10.9は長崎「おくんち」の最終日だった。7年ぶりの樺島町の「太鼓山
コッコデショ」を高校の同級生らと観た。でも、できれば人波越しではな
く有料桟敷に座りたかった。老人でも安けりゃいいという訳ではない。

老人の無様な行為や現象が書かれている。事実だろうが読みたくない。
太った(旧)美女、腹が出たオッサン、目の下の垂れ、喉に皺あり、すっ
と言葉が出ない・・(40p・44p)。他人のことをくだくだ書いてどうす
る。自分のことならまだいいが・・。その意味で「アントンの漏れ」
(175p)には拍手する。他人の(−)は自分の(+)なのだ。人間はさも
しい。

「老化早見表」はの本書ヒット語である(59p)。「アントン」とともに
流行語大賞候補になりうる。特に「横取り症」と「忘却忘却症」が面白
い。確かに、話を横取りする老人が多い(私もときどき!)。「忘却忘却
症」はいわゆる「認知症」状態かそれに近い老人であろう。「忘却とは忘
れ去ることなり。 忘れえずして忘却を誓う心の悲しさよ( 菊田一夫「君
の名は」)。悲しみを忘れ去ることは、一種の幸せを得ることである。

最近「老年的超越(The overview of studies of gerotransendence)」
という言葉が注目されている。老年的超越とは、高齢期に高まるとされ
る、「物質主義的で合理的な世界観から、宇宙的、超越的、非合理的な世
界観への変化」を指す。この概念の提唱者であるスウェーデンの社会学
トーンスタム(Tornstam が1989年に離脱理論、精神分析理論、禅の知見
など取り入れこの理論を構築したという。「忘却忘却症」は、「老年的超
越」と友だち関係か?老人を悟りの境地にいざなうかもしれない。

「日本の平均寿命を伸ばしている理由の一つには、そういう人(延命治療
を受けている人)たちが非常に多いこと。しかも、それは病院にとっての
大きな収入源になっている(98p)」。私もほぼ同じ認識である。また、
日本の法律は尊厳死を認めていない。ヨーロッパや一部の国では容認して
いる。池内さんは容認派のようだが賛同する。

池内さんは日本尊厳死協会にご夫婦で入会している。「『死にかけたらこ
うしてほしい』と書いたものを用意している(99p)」と(私も「リビン
グウイル」を書いてある)。しかし、死後の遺族の判断は不明だ。自分の
決意を表明したという、言わば生きているうちの気休めかもしれない。ま
あ、死にそうな「まな板の鯉」とでもいうか・・・。。

「老いてからの癌は恵みの病(104p)」。私も癌で死にたい。末期癌の痛
みを緩和する医療技術が格段に進んだ。脳溢血や心臓発作のよう瞬間の
死、意識の欠落、上下肢機能障害などがほとんどない。何より人間にとっ
て最も大事な「意識」が残っているからだ。

私のある60代の後輩はすい臓がん4ステージで絶望的な状態に追い込まれ
た。しかし彼は賢かった。遺言を書き家屋等不動産以外の金融資産を現金
化し妻子へ渡し、残りの2,000万円は「死ぬまでに自分が使う」と宣言し
た。保険診療外の特殊な最先端の治療などに次々と意欲的に挑戦した。

見舞い行ったときの次の話には驚いた。「馬場さん、この頃ソープにも
行っています」「えっ、買春(売春の相方)か?」「そう、斯界最高の女
性と付き合っています」「何か、生き返るような・・・(気がして)」
と。英断である。そして1年後、彼は平穏に幸せに旅立った。合掌。
(2018.11.7千葉市在住 後半は2/2として後日掲載)。

◆パイナップルも無かった

渡部 亮次郎


朝と昼の食事のあとは果物を必ず食べる。だから秋は楽しい。果物の種類
が豊富だからだ。冬が近付くとみかんに混じってときどき供されるのがパ
イナップルだ。

南国の果物だから生まれ育った秋田では子ども時代はお目にかからなかっ
た。敗戦後、缶詰を初めてたべて美味しかった。しかし生を食べたのは大
人になって上京後である。

アメリカから返還される前に特派員として渡った沖縄では畑に植わってい
るのを沢山見たが、なぜか食べなかった。今、東京のデパートで売られて
いるのは100%フィリピン産である。

「ウィキペディア」によれば、パイナップルの原産地はブラジル、パラナ
川とパラグアイ川の流域地方。この地でトゥピ語族のグアラニー語を用い
る先住民により、果物として栽培化されたものである。

15世紀末、ヨーロッパ人が新大陸へ到達した時は、既に新世界の各地に伝
播、栽培されていた。 クリストファー・コロンブスの第2次探検隊が1493
年11月4日、西インド諸島のグアドループ島で発見してからは急速に他の
大陸に伝わった。

1513年には早くもスペインにもたらされ、次いで当時発見されたインド航
路に乗り、たちまちアフリカ、アジアの熱帯地方へ伝わった。

当時海外の布教に力を注いでいたイエズス会の修道士たちは、この新しい
果物を、時のインド皇帝アクバルへの貢物として贈ったと伝えられる。

次いでフィリピンへは1558年、ジャワでは1599年に伝わり広く普及して
行った。そして1605年にはマカオに伝わり、福建を経て、1650年ごろ台湾
に導入された。

日本には1830年東京の小笠原諸島・父島に初めて植えられたが、1845年に
オランダ船が長崎へもたらした記録もある。

パイナップル(レユニオン)は植付け後15〜18か月で収穫が始まる。自然
下の主収穫期は、たとえば沖縄では7〜9月と11〜翌年2月である。

1年を通した生産面の労働力の分配や缶詰工場の平準化を図り、植物ホル
モンであるエチレンやアセチレン(カーバイドに水を加えて発生させ
る)、エスレル(2-クロロエチルホスホン酸)、を植物成長調整剤として
利用し、計画的に花芽形成を促して収穫調節を施している。

栽培適地は年平均気温摂氏20度以上で年降水量1300mm内外の熱帯の平地か
ら海抜800mくらいまでの排水の良い肥沃な砂質土壌である。

世界生産量の約5割がアジア州で、残りの5割はアフリカ州、北アメリカ
州、南アメリカ州の間でほぼ均等に分かれている。

2002年時点のFAOの統計によると世界生産量は1485万トン。1985年時点に
比べて60%以上拡大している。主要生産国はタイ (13.3%)、フィリピン
(11.0%)、ブラジル (9.9%)、中国 (8.6%)、インド (7.4%)、コスタリカ、
ナイジェリア、ケニア、メキシコ、インドネシアである。

1985年の世界総生産は923万トンで、主産地はタイ、フィリピン、ブラジ
ル、インド、アメリカ、ベトナムなどである。日本では沖縄県が主産地で
2002年時点では1万トンである。

1985年から2002年までのシェアの推移をたどると、米国のシェアが6%から
2%までじりじり下がっていることが特徴である。既に米国は上位10カ国に
含まれていない。2012・11・06

◆今の大阪城は「太閤城」ではない 

毛馬 一三


国の特別史跡に指定されている大阪城が、実は「太閤秀吉築城の大阪城」ではなく、総てが「徳川大阪城」だと知る人は、意外に少ない。

では秀吉が、織田信長から引継ぎ築城した元々の「大阪城」は一体どこに姿を消したのか。それは追々―。

「聳える天守閣は昭和初期に再建され、城の堀は徳川方によって埋められたことは承知していたが、だからと言って秀吉大阪城の城跡が些かも無いとは全く知らなかった」という人が多い。大阪城へ朝散歩する人々から異口同音に同様の返事が返ってくる。


天満橋から大手前、森の宮、新鴨野橋と城郭を一周する道筋を車で回ると、「大阪城の高い石垣と深い堀」が、雨滴の葉が陽光を跳ね返す樹林の間からと、大きく広がり、歴史の威容を誇らしげに見せ付ける。特に大手前周辺の高さ32mもある幾重もの「反りの石垣」には、当時の石垣構築技術の進歩の姿を覗かせる。

大阪夏の陣で豊臣家を滅亡させた徳川家康は、同戦いの2年後(1616)死ぬが、家康遺命を受けた秀忠が、元和6年(1620)から寛永6年(1629)までの10年3期にわたり大阪城を大改築する。

その時徳川の威令を示すために、「太閤大阪城」の二の丸、三の丸を壊し、その上、総ての「堀」を埋め、「石垣」は地下に埋め尽して、「豊臣の痕跡」を意図的にことごとく消し去った。

では「太閤大阪城」は、地下に眠ったままなのか。

「大阪城石垣群シンポジウム実行委員会」の論文をみると、そこに「太閤大阪城」が地下に埋められたままになっていた遺跡の一部を発掘した調査記録が、下記のように書かれている。

<地下に埋蔵された「太閤大阪城」の石垣を最初に見つけたのは、大阪城総合学術調査の一環として大阪城本丸広場で行われたボーリング調査だった。昭和34年(1959)のことである。天守閣跡の南西にあたる地下8m から「石垣」が見つかったの
だ。

4m以上も積まれた石垣で、花崗岩だけでなく、様々な石を積み上げた「野面積み」だった。「野面積み」は、石の大小に規格がなく、積み方にも一定の法則が認められないもの。当時城郭作りの先駆者だった織田信長が手掛けた安土城の「野面積み」工法と同じだったことから、秀吉がその工法を導入して築いた「石垣」と断定された。

それから25年後の昭和61年(1986)になって、再び天守閣跡の南東部の地表1mの深さから地下7mまで、高さ6mの「石垣」が発見されている。

この石垣も「野面積み」だったうえ、その周辺で17世紀初頭の中国製の陶磁器が火災に遭って粉々の状態で見つかったことから、大阪夏の陣で被災した「太閤城」の「石垣」であると断定される2回目の発見となったのである。

両「石垣」の発見場所の位置と構造を頼りに、残された絵図と照合していくと、この「石垣」は本丸の中で最も重要な天守や、秀吉の家族が居住していた奥御殿のある「詰め丸」と呼ばれる曲輪(くるわ)の南東角にあたることが明らかになったのである。

地下に消えた「石垣」は、切り石が少なく、自然石や転用石を沢山積み上げたもので、傾斜が比較的ゆるい、「徳川城」とは異なる「反り」の無い直線だった>。

第3の発見は偶然が幸いした。現在の「大阪城・西外堀」の外側の大阪城北西で、大阪府立女性総合センター建設の際の発掘調査で、地下から長さ25m に亘る「太閤大阪城の石垣」が出現したのだ。同石垣は、いま同センターの北の道沿いに移築復元されている。

「大阪城の石垣」の痕跡も、堀の外側にある学校法人追手門学院大手前センターの校庭で見つかり、保存されている。

何よりもこの発掘の価値が大きかったのは、今の大阪城郭から離れた外側の場所から「石垣」が現れたことだ。それは「徳川城」よりも「太閤城」の方が遥かに規模の大きかったことの証であり、今後の調査で城郭外から新たな「太閤大阪城」が出現する可能性を引き出したことだった。

地下に眠る遺跡の発掘調査は、エジプトやイタリアなど文明発祥地でブームになっているが、現在進められている大阪市の大阪城発掘調査で、「天下の台所」の基礎を築いた「太閤大阪城」の遺跡が、今の城郭外から見付かることを大いに期待したい。

余談ながら、私が主宰した前NPO法人近畿フォーラム21活動の「蕪村顕彰俳句大学講座<学長 川原俊明学長(弁護士)>は、徳川秀忠が創り代えた、高く聳える「大阪城天守閣」と、傾斜作りの幾つもの「石垣」を見ながら進めている。眺めは季節に応じて樹木により彩りが代わり、美景に包まれる。

しかし、その全景はあくまで「徳川城」の遺跡であって、「太閤大阪城」でないと思うと、寂しさがこころの中を翳める。(修正加筆・再掲)

2018年11月07日

◆拉致:朝鮮半島の闇、日本の闇 第17章

“シーチン”修一 2.0


【措置入院」精神病棟の日々(108)】9/28は久し振りの快晴で、大いに
気分よく病院でリハビリに励んだ。9/30は午前中は秋晴れで「ああ、いい
なあ」と感動したが、昼過ぎから雨、台風が来ているらしい。

「らしい」どころではなかった。10/1の1時半、ガタガタする音で目が覚
めると猛烈風雨で、大きなガラス戸が南風で圧迫され、ゆがんでいる。割
れたら我が「雀庵」は滅茶苦茶になるから慌ててガラス戸を1時間半も押
さえていたら、腕がおかしくなった。こんなに激しい台風は初めてだ。
「台風24号」、忘れまい。

朝見た屋上庭園は悲惨だった。11月3日あたりでようやく修復したが、物
干しの支柱が根元から折れていたのには驚いた。屋上のパノラマデッキは
かなり傷んでいるが、骨折した膝が治るまでは手の施しようがない。

西日本豪雨、北海道大地震、猛暑・・・今年は大雨や大地震などの天災が
とても多かった気がする。日本は世界有数の地震大国だが、長雨で地盤が
ゆるんでいる時にM6〜7クラスの地震が起きたら地元の多摩丘陵のあちこ
ちで土砂災害が発生するだろう。川崎市の「土砂災害警戒区域」でも住宅
はどんどん建っており、軟弱地盤や急勾配の斜面はパイルやコンクリート
で補強されてはいるものの、時々ブルーシートで覆われていたりするか
ら、「なんかなー、こんな所によー建てるわ」と思ってしまう。

インドネシアも地震大国だ。最近も大地震で大被害を蒙ったが、2008年頃
にインドネシアの古都ジョグジャカルタを中心としたジャワ島中部を訪ね
たが、前年に「1000年に一度」という大地震があり、世界遺産でもあるボ
ロブドゥール遺跡やプランバナン遺跡群が大きな被害に遭い、修復してい
る最中だった。「そういうもの」と諦観するしかない。

ジタバタしたところで津波が東京湾を襲ったら首都圏の湾岸は潰滅、多摩
川も無事ではすまないだろう。

わが街は多摩丘陵と多摩川に挟まれた南北1キロ、東西1キロの猫の額のよ
うなところだが、多摩川が氾濫したら多摩丘陵に逃げるしかないが、そこ
に逃げても土砂崩れに遭うかもしれない。小生が子供の頃に山を削って
「長尾の切通し」が開通したが、先日は壁補修の大工事をしていた。左右
はいつ崩れてもおかしくないほどの急斜面だ。

天気と女とバカ・アカはどうしようもない、黙って耐える、凌ぐしかな
い。自戒を込めて言えば、キチガイもやがては消えるから、我慢が肝心
だ。ダレモオランドは消えたし、デタラメルケルはフラフラだ。習近平、
プーチンも勢いがなくなってきた。

シーチンも満身創痍、リハビリのオネーサンはまるでサド侯爵夫人、情け
容赦しない。こうなればこちらはマゾを演じて楽しむばかりだ、「もっ
と、もっとイジメテ・・・」。一方で薬局のオネーサンはとても優しい。
頭がいい女はイヤミが多いが、彼女は癒し系。花は桜、人は武士、女は癒
し系に限るな。

Kこと春琴様は結構サドっぽい。排水パイプを時々塞いでいたオイルボー
ルを除去するために専用機械(ドレンクリーナ、写真↓)を使っている
が、昔から先端ヘッドは32ミリだった。これを貫通させれば3か月はもつ
のだが、60ミリのを使えば6か月はもつだろうと、初めて使ってみたが、
これが浅慮だった。地獄の4日間になってしまった。

http://www.asada.co.jp/product/dh150.html

何しろ1984年の新築以来初めて、カチカチのオイルボールに挑んだのだ、
怖いもの知らずで。左足と腰は痛むが不自由な右手でハンドルを回すしか
ない。電動にすれば良かったとは思うけれど、グチったところでどうしよ
うもない。10メートルを貫通させるために4万回転させた。Kにも手伝って
もらったが、右腕はヘロヘロに。

そうした事情を知っているはずなのに、春琴様は気分と感情の気質やから
「佐吉、キッチンの換気扇、もう我慢できへん」とご機嫌斜めや。「堪忍
したって」と思うんやが、マゾの佐吉としては「はい、明日から掃除しま
す」。

満身創痍のキチ〇イながらも赤い小さな火、闘志を燃やすのであった。
ま、一種の戦死やな。

戦死と言えば・・・小生には大中小の3人姉がいる。小生は67歳、池袋に
一人で暮らしている小姉は69歳。猛暑の7月25日あたりに孤独死した。近
所の人が「腐臭がする」と警察に連絡し、渋谷に住む長女のYが警官とと
もにアパートに行ったが、「奥さんは見ない方がいい」という警官のアド
バイスにより長女の旦那が確認した。かなりひどい状態だったようだ。

多分、熱中症で倒れ、そのまま死んだのだろう。とにかく早くお骨にした
いということで、葬儀は略し、お骨上げだけに大中姉が行った。歩行困難
な小生は香典だけ贈った。

Yは3、4日おきに食糧をもって小姉を訪ねたが、その隙間の出来事だった
ようだ。Yから手紙が来た。

<母は仕事中に骨折して、働けなくなり、家に引きこもるようになってか
ら認知症が酷くなり、去年から発言がおかしくなったため、包括センター
に相談したりしていました。

その感に貯金などの管理もできなくなり、お金をすべて使い切り、足りな
くなると私にお金を貸してくれと言ってくるようになりました。今年に入
り金銭感覚がひどくなり、お金を貸してくれというのが毎週のようになっ
て、いよいよ生活できないレベルになってきたため、区役所、包括セン
ター、看護師、先生と相談し、認知症の検査を行い、生活保護の準備をし
ていた最中に母が亡くなりました。

母は私を最後まで信用できなかったようで、私にすべてを任せることはさ
せてくれませんでした。最後まで「自分でできる」と言っていました。結
局、それもできず、誰にも知られず、看取られず死んで行ってしまいまし
た・・・>

小姉は4人きょうだいの中で不思議なほど変わっていた。勉強や読書をし
ている姿を見たことがない。女子高校に進学したが、テスト前は「徹夜に
備えて」帰宅後にコタツで眠り、夜中に布団で眠っていた。

小生がアドバイスをすると「自分の頭の上のハエも追えないのに、余計な
説教するんじゃないよ」と声を荒げた。その手の言葉を使う友達がいたの
だろう。卒業すると天下の博報堂に入社したが、1年にも満たずに辞めて
しまった。

その頃、「お月様って一つしかないんだって。どこの国も一つずつ持って
ると思っていたのに・・・」と言って小生を驚かした。「この人、一体何
者なんだ」と小生は思い、父母も同じ思いだったろう。園児が言えば可愛
いけれど、コピーライターなど変人が珍しくない博報堂でも「冗談かカマ
トトぶっているのかと思っていたけれど、あの娘、マジだった。いくら何
でも・・・受付にも置けないし」と困惑しただろう。

人間離れしている。

そのうち不動産屋の長男坊と結婚した。創業者(長男坊の父親)はやり手
で、当時は建売住宅も手掛けており、羽振りも良かったが、創業者の跡継
ぎであるはずの長男坊は大卒ながら10年以上受験したものの宅建免許がつ
いに取れなかった。カラオケは上手かったが・・・人間離れしている。

結局、創業者が亡くなって、不動産屋は名義を借りてアパートの管理業務
がメインになったが、長男坊は本来はオーナーに渡すべき金をかき集めて
失踪、小姉は「私は不動産屋のカネに目がくらんだのよ」と嘆いていた
が、いつまでもクヨクヨするタイプではなかった。

小姉はスーパーの品出し(陳列)やラブホのベッドメーク/清掃のパート
で一女二男を育て上げたが、父親の血筋なのか、長男は永らく失踪中、次
男はケータイは繋がるが居所は不明、この二人はお骨上げにも来なかった。

で、結局は孤独死。小姉は独り暮らしでも、それを寂しく思うこともな
かったのではないか。目の前の課題、つまり衣食住をどうするか、金をど
う工面するかだけが課題で、それ以外のことは関心外だったのではない
か。本能だけの動物みたい。

大姉と中姉は小姉からずいぶん無心されたようだ。気の弱い中姉は1000万
円ほど巻き上げられたろう。先日、大姉に会ったが、小姉の話はまったく
出なかった。二人とも内心では小姉とは関わりたくないという気分だった
ろう。

10月31日で発狂&措置入院2周年を祝った「キチガイを自認しているキチ
ガイ」の小生が偉そうなことは言えないが、小姉は相当な変人奇人ではな
かったか。血筋にそういうDNAがあるのかもしれない。

そう言えば膝の手術で退院した・・・真実は「病室を一歩でも出るときは
看護師を呼べとうるさく干渉され、これ以上入院していると発狂しかねな
いから無理にでも退院する」という強行退院だった9月16日は、因縁の日
でもある。1971年のこの日、小生はお縄を頂戴した。「転んでもただでは
起きない」から獄中で読書と執筆の習慣を身に付けた。

ケガをして入院して得たものは何か。Kと心が繋がり(修復し)始めたこ
と、無理にでも生かそうとする(患者の死ぬ権利を認めない)高齢者医療
の現場を見たこと、終活を急がないと自裁する機会を失うという焦り、な
どか。

前回9/17に続いて本号も「番外編」になってしまった。いくつか川柳モド
キを書いて擱筆する。

・安倍晋三 多くの民は 蚤の心臓 消費増税 日本はまた死ぬ
(バランス、バランスと言うが、心臓が止まったらどないすんねん。手術
する前に蛇口を締めるとかすることはいっぱいあるやろて)

・沖縄は 老いたサヨクの 吹き溜まり 革マル、中核、諸派越冬
(前科が多すぎてシャバには戻れない人が多い。沖縄なら何となく暮らせ
るようである。中核の兵隊だった小生の経験では飯代、交通費、雑魚寝だ
けれど寝床はある。タニマチは普天間移転に反対する軍用地地主なのかど
うか・・・知りたいね)

・老人呆けやすく ガクッとなりやすし 貢献 交流 恋で元気に
(バイアグラ、エディケア、マカ、スッポン、朝鮮人参、マムシ、ハ
ブ・・・効くのかなあ。友人曰く「修ちゃん、相手を変えないとダメよ」)

同志諸君!君たちはどう生きる?どう死ぬ? That is the question. 最
期はカッコヨクしたいが、のう。腐乱死体はどうもなあ・・・老いはいつ
でも初舞台やからナカナカ難しいもんやで。(つづく)2018/11/5