2019年01月28日

◆拉致:朝鮮半島の闇、日本の闇 第18章

“シーチン”修一 2.0


組織暴力団・北組による拉致問題は一向に進まないどころか、売笑婦崇拝
のノーズロパープリン韓国自体が北に拉致されそうで、朝鮮半島はほとん
ど中華帝国の版図、朝貢国、三跪九叩頭の属国になりそうな感じだ。

ま、中共は南北というトンデモ民族、ババを引くわけだが、半島、特に南
の庶民は自業自得とは言え、北同様に貧民化するだろう。

諸悪の根源は共産主義で(〇〇主義とか一神教は排他的、独善的、好戦
的、妄想的、感情的、非科学的で、狂気のよう)欧州ではリベラル≒アカ
モドキは間違いなく斜陽へ向かっているが、中露は相変わらずの強権独裁
国家だから「自由・民主・法治・人権」という近代国家(強国とか先進
国)の基本、インフラが未整備で、まあ穏やかな“治まる御代”という日本
のような「普通の国」になるには100年、1000年はかかりそうだ。

支那もロシアも数千年の有史以来、強権独裁しか体験したことがない。ス
ラブ民族の格言に曰く「馬と女は殴って調教しろ」、為政者は人民も殴っ
て統治してきたのである。1万年経ってもこの伝統、民族性は変わらない
かもしれない。マキャベリ先生曰く「強権独裁だけれど秩序がある国と、
自由だけれど秩序がない国。あんた、どっちがいい? 秩序がある方がマ
シだろうが」。

欧州・中東・インドなどは一神教を秩序の背骨とする国、中露などは独裁
で秩序を維持し、多神教の日本は天皇でまとまる。2000年以上続いている
国は日本だけだ。猫とスキンシップして蕁麻疹になった曽野綾子先生曰く
「仲良くても距離を保つことが大事よ」「日本は桃源郷に一番近いわ」。
非寛容のイスラム教徒を抱きしめた寛容な独仏は蕁麻疹で苦しんでいる。
トランプは無節操な移民はノーモアだと叫んでいる。マキャベリなら「ト
ランプの方が民主党よりはるかにマシ」と言うだろう。

安倍氏は今の政治家の中で突出して優れている。「お代わり」になる人材
はゼロだ。辞任するまで総理をしてもらったほうが日本のためにはいいと
思うがのう、どや、諸君。移民、増税など「? 大丈夫かよ?」という不
安はあるが・・・

早朝、ハシゴに乗ってペンキ塗りしていたら可愛い声で「オハヨゴザイマ
ス」、見下ろせばスカーフ姿の娘さん7人ほどがニコニコしている。イン
ドネシアあたりからの実習生だろう。複雑な気持ち。

拉致や領土問題などは解決できないままに、“天国に一番近い島”日本が、
やがては祖国を捨てた or 諦めた外国人だらけになり、海面が100mも下
がって大陸と陸続きになった4回の氷河期以外は孤絶していたために育ま
れた日本らしさ、日本人らしさが失われていくようで、何とも言いようの
ない「漠然とした不安」が募っていく・・・大丈夫かよアベシャン、
「ちょっとだけよ」と安易にズロースを脱いだり、増税したりよ・・・元
の娘にゃ戻れないんだぜ。そんな不安を覚える国民は結構多いんじゃないか。

さてさて、久し振りに本題に入ろう。「正論」2005年2月号「大島信三編
集長インタビュー 元朝鮮総連活動家の懺悔録『未来のために私の過去を
話します』元朝鮮青年同盟中央本部副委員長兼組織部長:全京千」から要
約する。(記事を書くのは好きだが、記事を写すのは消耗するので、ここ
のところ拉致問題から遠ざかっていたが、そうもいかないからもうひと踏
ん張りしよう)

<《全京千氏は1931(昭和6)年11月23日、韓国の全羅北道高尚郡で生まれ
た。(幼くして両親に先立たれ)日本にいた実姉のもとに身を寄せた。

中学生の頃から左翼運動に目覚め、終戦直後にできた「在日本朝鮮人連
盟」(朝連)、その後に結成された「在日本朝鮮統一民主戦線」(民戦)
系の青年グループに参加し、次第に武闘派の活動家として頭角を現して
いった。

1955(昭和30)年5月25日、「民戦」が発展的に解消して「在日本朝鮮人
総連合会」(朝鮮総連、以下総連)が誕生した。23歳の全氏は2001年2月
に病死するまで終身議長として君臨した総連のドン、韓徳朱(金偏)のボ
ディガードとして結成大会を見守った。

全氏の活躍の場は、総連の実戦部隊の中核とも言うべき青年同盟であった》

――どうして過去を話す気になったのですか。

全 やはり拉致問題です。総連も社会党も、拉致なんてあり得ないとずっ
と突っぱねてきたわけです。私自身は2001(平成13、以下西暦のみ表
記))年12月、北の工作船が海保の巡視船に撃沈された時、もしかした
ら、とふいに疑念が生じて、それが日を追ってだんだん確信に変わってい
きました。

2002年9月、小泉首相が初めて訪朝し、金正日が拉致を白状しました。私
の思った通りの結果になって落ち込みました。私は今73歳ですが、このま
ま黙って世を去れば、自分が見聞した様々なことが闇に葬られてしまいま
す。それでいいのか、とずいぶん考えた上での決断です。

――北あるいは昔の組織、仲間との間で摩擦や軋轢があるかもしれません。

全 それは覚悟の上です。事実、私の家内の身内は今北に住んでいますか
ら、家内はマスコミに話すことに反対しました。けれども何とか現状を打
破した地という気持ちに変わりはありませんでした。私の後に続いて新た
に証言する人が出てきて欲しい、ということも考えて、踏み切りました。

在日コリアは新しい道を歩んでほしいと思います。未来にために私の過去
を話します。

――北の現状はひどいですね。

全 餓死者が増えています。物乞いがすごいのです。在日コリアが訪朝す
る際、いろんな土産を持っていきます。で、親戚に手渡す前に向こうの官
憲に品物をねだたれて困っているんです。

親戚に手袋とか軍手が喜ばれるので持っていくと、官憲が自分の分だけで
なく、部下の分も欲しいと。向こうでは軍手も貴重品なんですね。

脱北者がどんどん出ています。国民が自分の国を捨てるというのは大変な
ことです。こういう悲惨な現状に、もう我慢がならないのです。

――日本へ来た頃のことからお聞かせください。

全 私は姉さんに拾われて6歳の時に日本に来ましたが、日本語なんて分
かりゃしない。夜間の小学校に行かされ、だんだん日本語を覚えて1年後
に正式に昼間の小学校へ入学しました。
(東京の)深川小学校で、3つ上の姉と一緒に通いました。

戦争が激しくなって、姉さんの旦那さんの仕事の関係もあって山形に疎開
しました。戦争のさなかに私は東京へ戻って旧姓府立三中(現両国高校)
を受験し、合格しました。朝鮮人が府立三中に受かるのは珍しいと、1945
年3月9日の晩に近所の人たちがお祝いをしてくれました。そこへ爆撃を受
けて、私の甥たち3人も亡くなりました。

せっかく三中に合格したのですが、空襲のため混乱し、結局、旧制山形中
に入りました。中学生というのは多感な時ですね。考え方が左翼的になっ
ていったのも、山形中学へ入ってからです。

戦争が終わった途端、昨日まで米英撃滅と叫んでいたのがメリカ文化を礼
賛している。そんな時に学校の先生から、「お前には自分の祖国があるん
だぞ」と言われ、歴史に興味を持ち始めました。民族というものに芽生え
た(目覚めた?)んですね。学校を代えようと思い、北区にある東京朝鮮
中学へ転校しました。

――こちらも名門ですね。

全 名門も名門。私は3期生で、学校を整備するためにずいぶん労働をさ
せられ、勉強はほとんどしていません。

在学中に関西の朝鮮学校で、生徒がピストルで撃たれて殺されるという事
件が起きました。これは許すわけにはいかんと、生徒たちが立ち上がりま
した。わが学校にも警官が入り込み、毎日のように石のぶっつけ合いで
す。学校の閉鎖令が出た時に、われわれは民族学校を守るんだと、そりゃ
燃えました。

そういう体験を通じて私はだんだん組織というものに興味を持ち始めました。

――全さんは韓国の生まれですが、北朝鮮の組織に入った。こういう例は珍
しくなかったようですね。

全 北の組織と言っても、メンバーは南の人の方が多いんですよ。当時の
李承晩大統領は米帝国主義の傀儡だと言われていたんです。それで金日成
の大衆動員のスローガンであった千里馬(チョンリマ)運動に憧れたんで
すね。本当の祖国は南より北ではないかと感じたわけです。

――まだ北には行ったこともないのに。

全 ええ、行ったこともないのに。金日成の英雄伝を好んで読みました。
あの頃は金日成の活動や思想に感動しました。まだ十代でしたが、生意気
にもマルクスもかじっていました。私たちの先輩もほとんど北の支持者で
したね。

闘争で先輩たちが捕まりますね。その時、法廷で先輩たちが、「私は朝鮮
民主主義人民共和国の国民です」と宣誓して(占領軍の)アメリカに食っ
て掛かるんです。それを見て、実に格好良く勇敢だと感動したものでした。

「在日本朝鮮統一民主戦線」(民戦)ができた後、若者たちで「民主愛国
青年同盟」(民愛青)という組織をつくるんです。大阪での結成大会に私
も参加しました。そして組織自体がだんだんと過激になっていきました。
その最たるものが祖国防衛隊、略して祖防隊(チョバンデ)ですね。

――祖防隊というのはずいぶん過激な集団だったそうですね。

《1950年6月25日、北は韓国に侵攻した。朝鮮戦争の勃発である。日本国内
の親北勢力によって祖国防衛隊がその3日後に結成された。祖国とはもち
ろん北のことで、日共の指導の下で広報攪乱により北の戦況を有利にしよ
うという意図があった》

全 朝鮮戦争が起きると、やっぱり若い人たちですよね。祖国を俺たちで
守ろうと。あの時は祖国という言葉に飢えていました。(米国は)我々の
祖国に日本から武器弾薬を持っていく。そんなことを許せるか。場所はど
こだ。立川基地だ。それじゃ立川へ攻め込もうと、そりゃ血気にはやって
いました。(つづく)>

祖防隊は「粗暴隊」だな。ま、小生もマルクス教徒の粗暴隊ではあった
が・・・洗脳されちゃダメよ、ちっちゃな脳ミソでも一所懸命に学び、考
えんとな・・・小生が教祖の「心の道標教団」(通称みちしるべ)は、信
者は愛犬だけだったが、ここ1年ほどで40人に増えたで。ま、スズメだか
ら40羽で、朝夕のエサという現世利益に魅かれ、小生を崇めるどころか飼
育係としか見ていないようだがの。それでも最近は窓を羽で叩いて「ご飯
まだー? 早よしてーな」と催促するようになった。スズメの恩返しっ
て・・・クソだけ? フーン・・・

ビルの営繕は「これがわしの終活や! 発狂亭雀庵は高所のペンキ塗りで
墜落、死んでも刷毛を放しませんでした、これは立派な戦士やで、これで
行こう!」と死に物狂いで励んで、ようやく第4コーナーを回った。あと
は比較的楽な作業だから、のんびりPCで遊べる。一時期30センチの高さに
なったツンドク新聞の最後、去年の6月28日号も読んでスッキリ。読書も
進んでいる。いい傾向だ。

【措置入院」精神病棟の日々(109)】

これも実に久し振りやな。懐かしいで。老い先短い未来を見、酒とバカの
日々を思い返す。発狂亭“終活アリ地獄”雀庵の病棟日記から。

【2016/12/20】火曜、素晴らしい快晴。昨日の夕方から32歳の“マジメ”が
テーブルに加わった。デスクワークだが過労自殺一歩手前だったようで、
(可愛い娘さんが死んじゃった電通事件に懲りて?)多くの企業がナマス
を吹き、自殺しかねない社員を病院へ送り込んでいるのではないか?

“マジメ”は最初から礼儀正しく挨拶、自己紹介した。家柄、教育は良さそ
うだが、線が細い感じがする。

【産経】「『サイバー防衛』ネット演習 総務省、人材育成検討」。ハッ
カーというワルとハサミは使いよう。毒を薬にすれば皆ハッピーだ。

田村秀男「トランプ相場呼ぶ中国リスク」。中国からの資金流出は膨らみ
続け、「11月までの12か月合計で1兆ドル(115兆円)に及ぶ。債務国米国
は年間で1兆ドルの外部資金流入を必要としているが、その多くは中国発
の逃避資金で賄われる」。

支那に愛想尽かしたヒト、モノ(産業)、カネが逃げていく。先見性とカ
ネがある人は最初に逃げ、最後にはカネも才もない(6億〜9億の)貧民だ
けが残る。中共は5年もつのか、10年もつのか・・・カウントダウンは始
まっている。

北方領土は「劣悪な治安、相当の覚悟必要」「一歩でも裏に入るとまった
く別のロシア社会が存在する」。裏経済、裏社会、密造酒、暗殺・・・森
に入ればクマに襲われたり。距離感もって付き合うべし。

「シルバー民進 支持層、60歳以上が62%占める」。70歳前後の団塊・全
共闘世代を中心とした65〜75歳はアカ新聞、共同通信、岩波支持者であ
る。オツムは岡田、レンホー並。悪知恵もない。政党交付金や議員手当と
いうユーカリの餌にロートルアカがしがみついている。まるでコアラ、生
活保護者みたいだ。(つづく)2019/1/20


◆法を無視する「力治」思想の国家に対し

                         櫻井 よしこ


「法を無視する「力治」思想の国家に対し日本は力なき国である限り苦し
い立場だ」

1月14日、河野太郎外相とロシアのラブロフ外相が、安倍・プーチン会談
の前座としてモスクワで会った。ラブロフ氏の表情は硬く、視線は険し
く、まるで領土返還への日本の期待を憎んでいるかのようだった。

ラブロフ氏は2004年の外相就任以来、河野氏を含め日本の外相11人と協議
してきたベテランである。片や河野氏は祖父の一郎が日ソ交渉に携わり、
当時の日本の国力の貧弱さ、ソ連に抑留されていた幾万の日本軍兵士の身
柄返還のこともあり、ソ連側に事実上屈服した。

「産経新聞」は、今回ラブロフ氏が国境画定問題に入る前に、歴史的経緯
や国際法の解釈などあらゆる角度から攻めてきたとして、「日本の北方領
土という呼称は受け入れ難い。日本の国内法に北方領土という呼称が規定
されている問題をどう解釈していく考えか」と質したと報じた。

安倍晋三首相が1月4日の年頭記者会見で、北方領土交渉に関連して「ロシ
ア人の住民に帰属が変わることを納得、理解してもらうことも必要だ」と
述べた件では、駐ロシア日本大使を呼びつけて「日本のシナリオを押しつ
けようとするもの」だと非難した。

この一方的主張や姿勢こそ日本側は受け入れ難いが、こんな厳しい雰囲気
が全てなら、安倍首相とロシアのプーチン大統領が24回も会うことはな
かったのではないか。表に出ない部分でより深い相互理解が生まれ、それ
ゆえに交渉は継続されてきたと考えられる。

1月9日に在日米軍司令官、マルティネス氏が「現時点で米軍が(北方領土
に)基地を置く計画はない」と発言した。司令官一人の判断でできる発言
ではなく、国防総省、ホワイトハウスの了承があったと考えるのが普通だ。

つまり、北方領土への米軍の展開に対するロシア側の根強い不安を解消す
るために、安倍首相がトランプ米大統領にあらかじめ説明し、要請した結
果ではないのか。だとすれば、両首脳の話し合いはそこまでは進んでいる
と見てよいということか。

ロシアは「力治国家」だ。法や道義よりも力を優先させる国、という意味
だ。力治国家の実態をわが国はまさに北方領土の不幸な体験で承知してい
るが、国際社会も同じように実感したのはクリミア半島奪取の時であろう。

小野寺五典前防衛相が1月11日、「プライムニュース」で、ロシアがウク
ライナからクリミアをどのようにして奪ったかについて、ざっと以下のよ
うに語っていた。

14年3月、ウクライナ全土で突然携帯電話がつながらなくなった。次に
GPSが狂った。その直後にSNS及びラジオで偽情報が流され始めた。
軍を含めてウクライナ全体が右往左往している内に、クリミア半島に知ら
ない集団が入ってきた。気がつくとそれはロシア軍で、あっという間に占
領されてしまった。ウクライナ軍は出来得る限りのドローンを飛ばした
が、どんどん落とされた。ドローン積載の爆弾も信管を電磁波で破壊さ
れ、どれも全て不発弾になって落とされた、と。

実は小野寺氏は、ロシアが従来のミサイルや砲を前面に出す方法から、サ
イバー攻撃などを先行させる方法に戦い方を変えたので日本も対応しなけ
ればならないという文脈で右のように語ったのだが、このような攻め方は
すでにロシアがグルジア(現在はジョージア)に侵攻した08年に実証済み
だった。サイバー攻撃で相手の機能を全滅させたうえでロシア軍はグルジ
アに侵攻し、力任せに奪った。理屈は如何様にもつけられる。

法を無視する力治の思想はロシアだけではない。中国、北朝鮮、韓国も同
じだ。領土も拉致も、日本が力なき国にとどまる限り、交渉では非常に苦
しい立場にある。日本人はそうしたことを覚悟しなければならない。

『週刊ダイヤモンド』 2018年1月26日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1264 

◆米国の対中ハイテク輸出規制強化

宮崎 正弘


平成31年(2019年)1月26日(土曜日)通巻第5970号    

米国の対中ハイテク輸出規制強化で日本、台湾、韓国経済も直撃
  ハイテク製造メーカーは株価大下落、好況見通しは去った

米国は対中技術輸出に厳格な規制を導入する。運用次第では対中輸出が困
難になる。

とくに14分野の先端技術に絞られ、法の淵源は「国防権限法」である。
規制されるのはAI、バイオ、測位テクノロジー、マイクロプロセッ
サー、次世代コンピュータ、データ分析技術、ロボット、先端的材料な
ど。その多くは日本企業に関連が深く、ましてICなどは米国の基本特許
であるケースや、クロス・ライセンス契約による技術が目立つため、実際
には米国が国防権限法の運用を強めれば強めるだけ、日本企業の対中輸出
も自動的に縮小する。台湾、韓国も同様な影響を受ける。

加えて「アップル・ショック」の到来だ。

アップルのティム・クックCEOは、1月4日に「2018年第4四半期のス
マホ売り上げ激減」と発表したため、市場は株価激安をしめした。また
「2019年第1四半期の生産予定は10%減らすことになる」と衝撃的予測を
語った。

ちなみにピーク時の18年10月3日から、2019年1月8日までの株価激減率は
 
 TDK      ▼38・2%
 アップル     ▼35・0%
 サムソン     ▼28・5  (韓国)
 鴻海精密     ▼25・9  (台湾)
 日本電産     ▼25・5  (日本)
 マイクロソフト  ▼25・3
 村田製作所        ▼18・8%  (日本)
 TSMC         ▼17・1   (台湾)
 テキサツインスツルメント ▼12・8  

このアップル・ショックという下方修正見通しは日本、台湾、韓国という
スマホ部品、中枢部品、液晶パネル、高純度材料、組み立て、販売という
ビルトイン・システムを根底的に揺らすことは明らかであり、アップルは
時価総額趣意の座から転落し、マイクロソフトに譲った。村田製作所も部
品出荷激減を認めた。

またシャープを買収した液晶パネルなどの大手「鴻海精密工業」は河南省
鄭州工場で5万人、ほかの工場を含めて、とりあえず10万人のレイオフを
実行した。


▼「ファーウェイはスパイ機関だ」。トランプ政権、規制強化の姿勢かえず

1月15日に米連邦議会の超党派議員が強力な中国制裁法案を提出した。こ
れは大統領権限強化という法の淵源をさらに強化し、米国の輸出管理法違
反の中国の通信メーカーを制裁する目的をもつ。

国がほぼ合意しているのは「ファーウェイはスパイ機関だ」という確定的
分析であり、ファーウェイ、ZTE以外の通信メーカーにも対象を広げる。

すでに1月16日のウォールストリートジャーナルが報じたところでは、
ファーウェイが米国携帯で第3位の「TモバイルUS」が企業機密(管理
ロボット技術)を盗まれたとして、2014年に民事訴訟を起こしている経過
に当局が強い関心を示しているとした。

慌てたファーウェイ創業者の任正非は数年の沈黙を破って記者会見し、
「共産党に命じられたこともなければスパイ行為などしたことがない」と
しらを切ったが、「それなら、なぜ共産党員なのか。党の方針に従わない
党員はいないのではないか」等とする記者団の質問には答えなかった。

米国はカナダで拘束中の孟晩舟ファーウェイCFO(創業者の娘)の送還
を正式に要請した。中国は真っ青になって反論し「国際法違反だ、反対で
ある」などと支離滅裂な駁論を展開した。

これらのニュースが日本市場にもたらした心理的悪影響は、「日本電産
ショック」となった。日本電産の永守重信会長は「2018年10月から異常な
注文減少に直面している。未曾有の注文減少だが、中国ばかりか欧州でも
ビジネスが悪化している」と記者会見した。

かくしてアップル・ショック、日本電産ショックと連続し、不況入り本格
化という衝撃を証券界にもたらし、関連する企業の株価が下落を演じる場
面があった。

日本電産はすでに2019年3月決算の売り上げを350億円マイナスに下方修
正しており、ほかに安川電機、日立建機などが売り上げの下方修正を発表
した。

日本企業は決算のピークを控え、日本電産の大幅下方修正に続いて中国依
存度の高いミネベア、ダイキン、信越化学、SMC、マブチなどを直撃し
た。翌日からも新日鉄住金、ファナック、コマツなどの株価を揺らした。

先行きは暗い。
       

◆山科だより・日本初の産業用水力発電所

渡邊 好造


山科区にある京都市最大の施設は、”琵琶湖疎水(山科疎水)”である。

明治維新後、首都が東京に移ったことで人口の3分の1が流出し、このままだと京都は沈没するのではないか、そんな危機感もあって産業振興の狙いから手がけられたのが琵琶湖の水をひく疎水建設で、京都のあせりが生み出した産物といえる。

疎水は滋賀県大津市の観音寺、三井寺辺りを基点にして山科区北部の山の斜面に沿って、左京区蹴上までの約11キロメートルにわたる水路である。

明治18年(1885年)に日本人技師のみで着工した最初の大工事で110年前の明治23年(1890年)に完成した。日本初の"産業用"水力発電所建設が最大目的で、これにより蹴上発電所が翌明治24年(1891年)に稼動(現在も無人で運転中)、明治28年(1895年)この電力により国内初の市電が京都市内で運行された。

なお、最初の水力発電所は明治21年(1888年)の仙台市三居沢(さんきょざわ)発電所で、国指定有形文化財として今も残されている。

疎水建設の当初予算は60万円だったのが、明治政府の意向もあって、最終的には125万円に倍化され、当時の京都府年間予算の2倍に相当した(資料・京都市上下水道局)。

使用したレンガは1370万個、地下鉄・御陵駅の近くにレンガ工場跡の記念碑がある。現在の水路は、何回もセメントを吹付けて改修されているので、表面にレンガはない。

疎水は、大津・京都間の船による輸送手段としても活用され、昭和23年(1948年)まで利用された。そうした船便の名残りが、”蹴上インクライン(台車を使って船を引張り上げる線路)”の遺跡である。疎水は山科日ノ岡までの傾斜は緩いが、ここから蹴上へは急な下り坂となるので、このインクラインが利用された。

また、疎水の水路北側に沿って、上水用として第2疎水建設工事が明治41年(1908年)に着工され、明治45年(1912年)に完成した。こちらは全て暗渠となっているため山科の住民でも知らない人が多い。

筆者宅から疎水までの距離は約100メートル。ちょうどそこには3つ目の疎水トンネル(トンネルは全部で4つ)の入口があり、明治時代の政治家・井上 馨の揮豪による偏額(門戸等に掲げる横に長い額)が、当時のまま埋めこんである。

偏額には『仁呂山悦智為水歓』(じんはやまをもってよろこび ちはみずのためによろこぶ = 仁者は動かない山によろこび 智者は流れゆく水によろこぶ)の8文字が彫られている。京都あげての力の入れようが、ここにも残る。
 
京都はお寺中心の古都の印象が強いが、明治維新後は産業面でなんとか振興をはかろうと、日本の最先端技術を駆使して走り始めていた。
 
疎水に関しては、平成元年(1989年)8月に完成した左京区「琵琶湖疎水記念館」(地下鉄東西線・蹴上駅下車)に詳しい。
 
ところで、京都市左京区の南禅寺境内には、ヨーロッパ遺跡に似た赤レンガ造りの「水路閣」(疎水の水をひく水道橋)が残されているが、建設当時は京都の景観を損ねるとして大反対運動が展開されたらしい。

そんな反対運動の心意気が在ったのなら、何故あの悪名高い「京都タワー」建設時(昭和39年=1964年)にどうして発揮されなかったのだろうか。当時の京都市の人口131万人にあわせて高さ131メートルの灯台を模したコンクリート・タワーが古都京都にふさわしいと考えた連中がいたとは、とても解せない。

京都市は新景観条例を制定し、建物の高さ(最高31メートル)や看板の色・デザインを規制強化し、将来は市電の復活、電線電柱の地下化を目指す、といった百年河清を待つような方針が今頃になって出始めている。

NHK京都放送局のTVニュース番組の放送終了時、京都市内の夜景の画面中央にライトアップされた不釣合いな京都タワーが突き出しているのをみるたびに腹立たしい思いにさせられる。(完  再掲)

2019年01月27日

◆ジョージ・ソロスが爆弾発言

宮崎 正弘


平成31年(2019年)1月25日(金曜日)弐 通巻第5969号    

ジョージ・ソロスが爆弾発言、右翼より右翼的
  「習近平は自由社会にとって、もっとも危険な敵である」

民主党支持者、リベラル派の頭目、反トランプの急先鋒としても知られる
投機家のジョージ・ソロスはことしもダボス会議に乗り込んでスピーチした。

1月24日の分科会と、引き続いての新聞記者との夕食懇談会において、ソ
ロスはこう言った。

「習近平は自由社会に対するもっとも危険な敵だ」と。」

なぜなら「習近平は富裕で、強力で、しかもハイテクで進歩が著しい中国
のトップにあり、国民をデジタルシステムで管理し、支配しており、やが
て人間の支配者になろうとしているからだ」。

ソロスはハンガリーから英国へ亡命したユダヤ人で、青年期はロンドンの
ザシティで使い走りから身を起こし、経済の現場で株取引の遣り方を学
び、独自の方法論を確立した。かれの設立したクアンタムファンドは年率
24%の高配当を記録し、さらには英国ポンドに挑戦して10億ドルを稼ぎ
出したという伝説の投機家となった。

同時に旧東欧諸国の自由民主団体に

献金を繰り返し、「オープン・ソサイアティ」と設立してバルト3国に民
主化や、近年はウクライナの反ロシア運動で影の黒幕と言われた。

しかし米国ではあまりのリベラル思想と、見え透いたフィランソロフィ
(社会奉仕、慈善活動)を偽善とみて不快感を示す向きも多く共和党支持
の右派からは蛇蝎の如く嫌われていた。

NYの別邸に爆発物を送られたこともあった。
     
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
読者の声 ☆どくしゃのこえ ★READERS‘OPINIONS
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   ♪
(読者の声1)韓国海軍による火器管制レーダー照射問題、日本側が実務
者協議を行わない(もう相手にしない)と表明したところ、今度は自衛隊機
が低空飛行で威嚇を繰り返しているとの言いがかり。

韓国の虚言癖&ストーカー体質には呆れ果てて言葉もありません。
 ネットでは「韓国人は嘘をついていないと死んでしまう病気」、「声闘
(ソント)では一瞬でも言い淀んだら負け」など、大手マスコミの韓国擁
護論など誰も相手にしていない。野党のかなりの部分や自民党の中にも帰
化や背乗りの勢力が多いのでしょう。

モリカケであれほど騒いだ野党も妙におとなしい。立憲民主党は伊勢神宮
を参拝してみせたり、共産党の赤い小池(都知事は緑の小池)は神社の前で
の写真を公表したり(犬の散歩のついでですが)、日本人アピールに必死の
ようです。

日韓関係が破綻し日韓戦争ともなれば「余命」の過去記事のように反日組
織とその構成員は殲滅対象になることにいまさらながら気づいたのでしょ
うか。

韓国海軍が公表した「自衛隊機による低空威嚇飛行」とやらの画像も立ち
どころに合成写真とバレてしまう。
http://www.moeruasia.net/wp/wp-content/uploads/2019/01/index_2-197.jpg
http://www.moeruasia.net/archives/49622700.html

さらに防衛省は1月18日に北朝鮮のタンカーと船籍不明の小型船が横付け
しての瀬取りの写真公表しました。韓国に対する国連決議違反による制裁
もあるかもしれません。

おまけですが、「韓国の建設労組(5万人)が1月9日、抗議書簡を手渡
すためにソウルの日本大使館を訪れた。連帯ユニオン関西地区生コン支部
に対する異常な権力弾圧の即時中止を求めたものだ。」 という記事。
http://www.moeruasia.net/archives/49622612.html

コメント欄では、関西生コンは中核派の一大勢力との指摘があります。中
核派といえば沖縄やソウルのデモにも積極的に参加。お里が知れます。

安倍総理が防衛大臣を交代させたのは岩屋防衛大臣には弱気を演じても
らって(素で韓国寄り?) 韓国を付け上がらせ、日本国民の不満と怒りを
沸騰点レベルまで高めるためだというのは考え過ぎでしょうか。
日韓断交まであともう一息かもしれません。(PB生、千葉)

  ♪
(読者の声2)中国はいよいよジャーナリストばかりか、フリーの物書き
も拘束しはじめましたね。

中国外交部は1月24日に、オーストラリア国籍を持つ中国出身の作家を拘
束したことを認め、その言いぐさは、「国家安全に危害を加える活動に従
事した疑いで北京市国家安全局が強制措置を取った」としました。

理由はなんでも取って付ける。ポケットにへんなクスリをするりと入れて
あらぬ疑いをかけたり。なにしろ日中友好屋の人士まで捕まえて懲役12年
という無法国家!
宮崎さん、気をつけて下さいね。(HG生、茨城)


(宮崎正弘のコメント)行く先々で尾行され、電話が盗聴されていました
ので、2013年9月に北朝鮮国境の丹東取材を最後に、小生は5年以上、中
国には行っておりません。ほかにも「自主規制」している物書きが小生の
周囲にも何人かおります。

  ♪
(読者の声3) フレデリック・フォーサイス『アウトサイダー』を読んだ。

フレデリック・フォーサイス(Frederick Forsyth) - 1938年生まれ とは
僕がまだ20代だった頃夢中になって読んだ本の著者だ。<ジャッカルの
日>、<オデッサ・ファイル>、<戦争の犬たち>など多数ある。

全部が全部読んだわけではないが、これほど読み出したらやめられないほ
どの面白さはなかった。上記三部も映画化もされ特に<ジャッカルの日>
は映画としても素晴らしい作品だった。僕が米国にいた頃ロードアイラン
ド州の高級別荘地にフォーサイスの家があり、まさに軽井沢の有名人の別
荘巡りのようなツアーがあって、その聳え立つ城のような家を見て、その
世界のベストセラー作家の巨大な印税に驚いたものだった。

この2015年刊行の本には僕は気がつかずたまたま本屋で山積みされてお
り、即購入したのだが、久しぶりに手にするフォーサイスの自伝ともいう
べきこの本、あのフィクションの語りが自伝にもあり、まさに一気に読ん
でしまった。

面白いのは彼の生い立ち、ケンブリッジ大学に行けたのに、そんな凡庸さ
を蹴飛ばして19歳でイギリス空軍に入隊後、1956年から1958年まで勤務す
る。その後、イースタン・ディリー・プレスのレポーターとしてジャーナ
リズムの世界に入り、1961年にロイター通信社の特派員としてパリ、東ベ
ルリン、プラハで過ごす。

1965年にBBC放送に転職し、1967年にナイジェリア内戦(ビアフラ独立戦
争)取材の特派員として現地入りした。まさにロイター記者としてスパイ
もどきスリリングな生活をした経験が、その著者にも生かされているどこ
ろか、ビアフラの惨状に正義感を持って、自ら稼いだ印税で傭兵を雇い、
ビアフラのために戦うまさに歴史を動かす、物書きの<口先>だけの世界
ではないほどの正義感を持った男だというのも感動的だ。

とにかく面白い自伝であり、特に僕が商社マン時代通ったベルリンそれは
僕が通った1980年だよりもずっと前のさらにさらに暗い時代にロイター特
派員としていた時代であり、シュタージ(秘密警察)を翻弄したり、とに
かくリスクを冒すのを楽しみ、ちゃっかりとベルリンでもチェコでも美人
を相手につまみ食いするアドベンチュア(実は敵もさることながら、彼女
らも秘密警察だったのオチもあり)の面白さ、写真を見ても<いい男>の
フォーサイスの色男ぶりもさりげなく書かれている。

『オデッサ・ファイル』ではナチスSSが自分の父親をリガで惨殺したとの
日記を見て復讐に奮い立つ主人公の話だが(決してユダヤ人浄化への復讐
ではないのが味噌で当時僕は注目していた)この映画を上映したアルゼン
チンにてこのSS高官が近所に住んでいることが発覚して、事件化したこと
も、彼の綿密な調査の成果が現実として時代を動かす活き活きとした
ジャーナリストの役割を、ビアフラの傭兵工作と共に只者ではないと思わ
せる。

傑作なのはこんな成功者が前妻には慰謝料として半分を明け渡したのは当
然としても、その慰謝料を現金化して財テクに大成功した前妻とは裏腹に
フォーサイス自身は資金運用を安全資金として委ねたコンサルに騙され全
財産を詐取されたほどのトンマ性があまりのも人間的であり、これをあて
に買った牧場の借金だけ残り、それを取り戻すために小説を書かねばなら
ないと奮い立ったことも書かれている。

こんな知恵ものが詐欺師に簡単に騙される面白さ、その恥を晒す可愛さも
格別だ。

ジャーナリズムは、つまり内部に入り込んで真実を掴む努力つまりインサ
イダーとしての役割は重要であり、まさにフォーサイス自身がその稀なる
冒険心と好奇心でピカイチの役割を果たしたが、それと同時にその中にの
めり込まない一線を画し客観的な洞察力と中立性を保つアウトサイダーの
役割がより重要であるが、フォーサイスはその点においても秀でているこ
とがわかるだろう。

もちろん燃えるような正義感が彼の原動力であるのだが・・(奥山篤信)


(宮崎正弘のコメント)小生もフォーサイスは短編集まで含めて、おそら
く全作品は読んでいます。どちらかと言えば映画はみないほうですが、
ジャッカル、オデッサ、戦争の犬は見ました。

嘗てフォーサイスの上司だったフリーマントルが「あいつがかけるのな
ら」とスパイ小説を書き出したら、これも大当たりで、殆どが翻訳されて
新潮文庫にはいってますね。

チャーチルしかり、サマセット・モームしかり、そして007のイアン・フ
レミングと、これらの作家は全員が英国情報部出身です。精度の高い機密
情報にふれていたからこそ、すれすれの情報小説が書けるのかも。

◆法を無視する「力治」思想の国家に対し

櫻井よしこ


「法を無視する「力治」思想の国家に対し日本は力なき国である限り
苦しい立場だ」

1月14日、河野太郎外相とロシアのラブロフ外相が、安倍・プーチン会談
の前座としてモスクワで会った。ラブロフ氏の表情は硬く、視線は険し
く、まるで領土返還への日本の期待を憎んでいるかのようだった。

ラブロフ氏は2004年の外相就任以来、河野氏を含め日本の外相11人と協議
してきたベテランである。片や河野氏は祖父の一郎が日ソ交渉に携わり、
当時の日本の国力の貧弱さ、ソ連に抑留されていた幾万の日本軍兵士の身
柄返還のこともあり、ソ連側に事実上屈服した。

「産経新聞」は、今回ラブロフ氏が国境画定問題に入る前に、歴史的経緯
や国際法の解釈などあらゆる角度から攻めてきたとして、「日本の北方領
土という呼称は受け入れ難い。日本の国内法に北方領土という呼称が規定
されている問題をどう解釈していく考えか」と質したと報じた。

安倍晋三首相が1月4日の年頭記者会見で、北方領土交渉に関連して「ロシ
ア人の住民に帰属が変わることを納得、理解してもらうことも必要だ」と
述べた件では、駐ロシア日本大使を呼びつけて「日本のシナリオを押しつ
けようとするもの」だと非難した。

この一方的主張や姿勢こそ日本側は受け入れ難いが、こんな厳しい雰囲気
が全てなら、安倍首相とロシアのプーチン大統領が24回も会うことはな
かったのではないか。表に出ない部分でより深い相互理解が生まれ、それ
ゆえに交渉は継続されてきたと考えられる。

1月9日に在日米軍司令官、マルティネス氏が「現時点で米軍が(北方領土
に)基地を置く計画はない」と発言した。司令官一人の判断でできる発言
ではなく、国防総省、ホワイトハウスの了承があったと考えるのが普通
だ。つまり、北方領土への米軍の展開に対するロシア側の根強い不安を解
消するために、安倍首相がトランプ米大統領にあらかじめ説明し、要請し
た結果ではないのか。だとすれば、両首脳の話し合いはそこまでは進んで
いると見てよいということか。

ロシアは「力治国家」だ。法や道義よりも力を優先させる国、という意味
だ。力治国家の実態をわが国はまさに北方領土の不幸な体験で承知してい
るが、国際社会も同じように実感したのはクリミア半島奪取の時であろう。

小野寺五典前防衛相が1月11日、「プライムニュース」で、ロシアがウク
ライナからクリミアをどのようにして奪ったかについて、ざっと以下のよ
うに語っていた。

14年3月、ウクライナ全土で突然携帯電話がつながらなくなった。次に
GPSが狂った。その直後にSNS及びラジオで偽情報が流され始めた。
軍を含めてウクライナ全体が右往左往している内に、クリミア半島に知ら
ない集団が入ってきた。気がつくとそれはロシア軍で、あっという間に占
領されてしまった。ウクライナ軍は出来得る限りのドローンを飛ばした
が、どんどん落とされた。ドローン積載の爆弾も信管を電磁波で破壊さ
れ、どれも全て不発弾になって落とされた、と。

実は小野寺氏は、ロシアが従来のミサイルや砲を前面に出す方法から、サ
イバー攻撃などを先行させる方法に戦い方を変えたので日本も対応しなけ
ればならないという文脈で右のように語ったのだが、このような攻め方は
すでにロシアがグルジア(現在はジョージア)に侵攻した08年に実証済み
だった。サイバー攻撃で相手の機能を全滅させたうえでロシア軍はグルジ
アに侵攻し、力任せに奪った。理屈は如何様にもつけられる。

法を無視する力治の思想はロシアだけではない。中国、北朝鮮、韓国も同
じだ。領土も拉致も、日本が力なき国にとどまる限り、交渉では非常に苦
しい立場にある。日本人はそうしたことを覚悟しなければならない。

『週刊ダイヤモンド』 2018年1月26日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1264 

◆リハビリって、再び生きること

向市 眞知 (ソーシャルワーカー)


「リハビリ」という用語は訳さなくてもよいくらい、日本語になってしまいました。しかし、この用語がとてもくせものです。皆がこの用語の前向きなところにごまかされ、便利に安易に使ってしまいます。


医師は最後の医療としてリハビリにのぞみをつなげる言い方をします。家族は家にもどるためにはリハビリを頑張ってほしいと期待をかけます。患者様もリハビリを頑張れば元どおりになれると思います。リハビリとは「再び生きる」という用語と聞きました。この概念で考えるととても幅広い概念です。


病院にはリハビリテーション科があり、そのスタッフには理学療法士、作業療法士、言語聴覚訓練士という、国家資格をもった専門技師がそろっています。身体機能回復訓練に携わるスタッフです。医師が「リハビリ」という用語を使う場合にはこのようなリハビリテーション科のスタッフによる訓練をさすだけではなく、「再び生きる」心構えをもちましょう、という意味を含んでいる場合が多いのです。


しかし、患者様、家族様のほうは、リハビリは療法士がするものと思い込んでいるケースが多いように思います。よく言われるのに「リハビリが少ない」、「リハビリをしてもらえない」というクレームがあります。療法士がするものだけがリハビリなら、診療報酬上点数がとれるのは一日20分から180分です。


「リハビリを受けさせたいから入院させてほしい」とよく言われますが、一日の何分の1かの時間のリハビリだけで「再び生きる」道のりを前に進むことはむずかしいものです。あとの時間をベッドに寝ているだけでは何の意味もありません。「リハビリのために入院している」というだけの安心感の意味しかありません。


いくら日本一の理学療法士の訓練をうけたといっても、患者本人が「リハビリをする(再び生きる)」心構えになっていなければ、空振りに終わってしまいます。マヒした身体に対して、拘縮してしまわないように理学療法士が外から力を加え訓練をすることはできます。でも、訓練が終わって身体を動かさなければもとのもくあみです。


しかし、言語訓練はそうはいきません。本人が声を出そう、話そうとしなければ訓練になりません。「絶対話すものか!」と口をつぐんでいる患者様に訓練は意味をなしません。まずは声を出してみよう、話してみようという気持ちになるように心理的にリラックスしてもらうことから訓練を始められると聞きました。


このことからわかるように、リハビリは本人次第なのです。そしてやはりリハビリも療法士と患者様の協同作業です。療法士さんの訓練の20分が終われば、患者様自らがもう一度リハビリのメニューをくりかえしてやってみることや、家族が面会時間に療法士に家族ができるリハビリを教えてもらい、リハビリの協力をしてみるなど、何倍にもふくらませていくことがリハビリの道のりなのです。


療法士さんまかせにしないこと、繰り返しやっていくこと、退院しても療法士さんがいなくてもリハビリ、再び生きる道のりは続いていること、それを実行するのは自分であることを忘れないでいてほしいと願っています。


更にこの認識が重要になってきています。療法士による機能回復訓練が継続してうけられる回数の上限が疾病により90日〜180日と定められました。これ以上の日数の訓練を続けても保険点数がつかないことになりました。医療機関は保険がきかなくなればリハビリを打ち切らざるをえません。

患者様も10割自費で料金を支払ってまでリハビリを続けることはできないでしょう。リハビリは入院の中でしかできないものではなく、退院しても自宅でもリハビリを続けていくいきごみが大切です。

2019年01月26日

◆中国発「大不況」に備えは

宮崎 正弘


平成31年(2019年)1月25日(金曜日)弐 通巻第5968号    

中国発「大不況」に備えは出来ていますか?
  発端はアップルのスマホ売り上げ急減、株の大下落からだった

凄まじい勢いで日本の景気が悪化している。米国も悪化の兆しがでた。

元凶は中国だが、この中国の経済構造にビルトインされたシステムの下で
成長してきたアジア諸国が軒並み不況ムードに蔽われた。日本経済も例外
ではない。

「アップル・ショック」というのは2019年1月4日、ティム・クック
CEOが「中国でのスマホの売り上げが10%落ち込んだ」と発表したこと
を受けて、同社株価は9・22 %の大下落、半年で35%強も下げた。

このためアップルばかりかスマホ関連企業が悲鳴を挙げた。とくに香港株
式は10%の下落となり、日本でも部品、ICなどを供給している多くの
メーカーの株価が5−8%も下がった。目立った下げが日本電産、京セ
ラ、村田製作所などだったことは投資家ならずとも周知の事実だろう。
 鵬海精密工業は河南省鄭州の工場で五万人をレイオフし、代替工場をイ
ンドに移転して稼働すると発表したため、同社従業員が騒ぎ出した。
 
景気後退というより、状況はもっと悪い。

中国の就職戦線。ハイテク技能を持つ理工系ですら、応募倍率が32倍と
いう難関になり、これまで会社を移るたびに給与を増やしてきた「トラ
バーユ・ジャンプ組」も「向こう十年はいまの会社にしがみつく」と言
う。リクルート代理店、人材スカウト会社も閑古鳥である。

或るコンピュータ企業は2018年8月まで毎月、技能者を8人平均で雇用
し、輝かしい未来を約束されたかに見えたが、12月に突然半分の社員が解
雇された。

華字紙が大きく報じた事例はベンチャーの「マインドレィ社」(本社深せ
ん、従業員7千名、NY上場の優良企業)の新卒内定者取り消しという
ショックだった

マインドレィ社は急成長を続けてきたため、2017年には430 名の新規採用
があった。18 年には中国全土50の大学から成績優秀の理工系学生485名を
採用した。ところが昨師走になって、このうちの254名を内定契約破棄、
補償金として約束した給与の3分の1を支払うとした。
若者たちの未来は真っ暗、この先、どうなるのか?

夥しい不況の実例が『サウスチャイナ・モーイングポスト』(1月24日)
で報じられている。

ベンチャーキャピタルは2018年の年初と比較して第3・四半期には25%の
激減ぶり、たとえばバイクレンタルのベンチャー・ビジネスは50都市で派
手な営業を展開したが、倒産が目立ち、1400万人のユーザーが補償金を返
せと訴えている。

とりわけ厳しい環境に転落したのはアリババ、バイドゥ(百度)と並ぶ御
三家のテンセントに代表されるゲームソフトのベンチャーだった。
カジノ・ゲーム開発ベンチャーなど30%の落ち込みとなった。いよいよ
中国経済の破綻は秒読み、備えはできていますか?
   
 ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆書評 しょひょう 
BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
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監視システムは顔認証で6万人のスタジアムから指名手配犯を見つけ出した

SNSの監視によって潜在的な反党人物を割り出して家族に圧力をかける

  ♪
坂東忠信『移民戦争』(青林堂)
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元警視庁通訳捜査官の坂東さんの新作である。明日にも発生しそうな大量
難民だが、我が国政府は『移民を増やす』と頓珍漢極まりない危険は方針
で暴走を始めた。
欧州でいまおきていることを対岸の火事として高みの見物、明日は我が身
という警戒心は稀薄であり、移民法があっという間に国会で成立したこと
に保守の政治家はほとんど抵抗を示さなかった。

 安倍政権をどちらかといえば支持してきた多くの保守層が、見限った瞬
間でもある。したがって今後おこることはナショナリト政党ではないか。
ドイツでフランスで「極右」と左翼ジャーナリズムから批判される愛国者
政党は着実に、いや飛躍的に勢力を伸ばし、イタリアで、オーストリアで
政権の座についた。

全ては移民への反感ばかりか、実際に移民に職を奪われたか、賃金が下
がってしまい、自分の問題として移民問題を真剣に考えれば、ナショナリ
ストが主張していることが正しいという流れになったのである。

坂東さんは、対策提案のユニークさにかけても定評があるが、中国の断末
魔がいずれ百万の難民を発生させると氏は大胆に予測し、しかも多くが
『偽装難民』となるだろうと予言する。

このいやな未来への対策についての坂東氏のアイディアは本書によってい
ただくとして、本書の余滴部分で、大事なポイントが幾つかある。

中国の顔認証技術は、交通警察官のサングラスにも装填されていることか
ら、世界一だろうが、14億人のスキャンリサーチが可能の段階まで発展し
ており、「その確度は99・8%。江西省の南昌市警察の発表では、このシ
ステムにより六万人が参加する音楽フェスティバルで指名手配犯を割り出
し逮捕した」(中略)「貴陽市では顔認証システムによりBBC(英国放
送協会)の記者を発見、当局は彼を7分で身柄拘束しています」
 そればかりではない。ビッグデータによって、プライバシーは当局に筒
抜けとなった。

「個人メール、クレジットカード消費金額、ファイナンスリース、ホテル
の部屋、旅行、結婚・恋愛、ジャンル別情報」等々によって「ネットゲー
ムで一日に十時間を超える人物は『ネットの暇人』としてカテゴライズさ
れ、またネットでおむつを買う人物は『社会的責任感を期待できる人物』
として認識している」そうな。

SNSを見張り、すこしでも反党的言辞を吐く人物がいたら、家族を脅す。

もう一つ、面白い箇所がある。ファーウェイ誕生秘話である。

中国産業部長だった呉基伝が、「巨竜通信」「大唐通信」「中興通訊」
「華為技術」と命名して、これらを横に並べると「巨大中華」と「龍唐興
為」となる。

「龍たる唐を興して巨大中華と為す」と読める、このネーミングにも中国
の隠された野心が存在している。
         
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1848回】         
――「支那はそれ自身芝居國である」――河東(6)
  河東碧梧桐『支那に遊びて』(大阪屋號書店 大正8年)

       ▽

数千年の歴史と文明を徒に誇りにはするが、この国に過去はない。

極論するなら、彼らにとっての過去は、自らの立場を補強するための方便
に過ぎない。確かに歴代王朝の歴史を綴った正史をはじめとして膨大な歴
史書群は残されているが、そこに記された史実は真偽を問う前に、専ら善
悪が基準となって採用されているのである。

なによりも道徳が基準となって史実が判断されるから、勢い荒唐無稽な議
論が罷り通ってしまう。

先人の営みを道徳によって裁こうというのだから、どだいムリな話だ。

たとえば文革時、「毛主席の親密な戦友」と持ち上げられ党規約で毛沢
東の後継者とされた林彪ではあったが、権力闘争の果てに遂には毛沢東に
対する叛徒とされ抹殺されていた。抹殺の理由として挙げられた公式的見
解に「林彪は孔子の熱心な信奉者」が加わる。

林彪の書斎を捜索すると「克己復礼」の4文字を発見した。それさえも
怪しいが、林彪のモットーは「克己復礼」と断定されてしまう。「克己復
礼」は孔子の封建思想の柱であればこそ、林彪は封建社会再興を狙い、毛
沢東が目指す社会主義社会建設に反対した。いいかえるなら毛沢東思想に
よる道徳律に照らして悪である孔子の考えを信奉したがゆえに、問答無用
で林彪は悪というリクツだ。もうそうなったら最後、林彪の一生は凡てデ
タラメ・インチキで毛沢東に反対する陰謀で終始していたとされて一巻の
終わり。正直な話、林彪が本当に孔子を信奉していたのかなどといった考
察は、この際、一顧だにされない。

20世紀後半の社会で、共産党独裁政権内の権力闘争において政敵抹殺の正
当性の論拠が古代社会に生きた“聖人”というのだから、奇妙と言う他はな
い。林彪批判の論拠に孔子を持ち出すことは、たとえるならアメリカでト
ランプ大統領の政治姿勢を非難するに当たってワシントンやリンカーンを
引っ張り出すようなものだろう。どう考えても中国以外では通らない屁リ
クツの類だろうに。

それにしても林彪批判の材料にされるとは、孔子サマも浮かばれまい。
 じつは文革時代、孔子は諸悪の根源であり、封建王朝・封建搾取のイデ
オローグであり、有史以来の民族最大の大悪人と蔑まれ否定されたものだ。

「封建王朝に『至聖』などと崇め奉られる孔子ヤロー」を断固として許す
わけにはいかない、というのだ。ところが現在では孔子学院、孔子平和賞
(まだ続いているのか!?)など共産党政権の正統性を補強するための
“ツール”として重用されている。時に地獄の門の入口にまで墜とされ、時
に天高く持ち上げられる。孔子サマとしてもタマラナイ。嗚呼、妄言冷
血、鮮ナシ真・・・。

やはり孔子サマにゴ同情申し上げる次第であると同時に、じつに身勝手な
屁リクツを捏ね繰り回す民族であることを改めて心に牢記しておきたいも
の。であればこそ、こういった思考回路を持つ方々と歴史認識を一致させ
ようなどと、まるで太陽を西から昇らせるに近いほどの不可能事と心得て
おくべきだろう。

閑話休題。

河東は旅に古くからの舟を利用したが、なかでも足蹴船と呼ばれる原始的
な様式の舟に興味を持つ。

「此足蹴船は、禹の治水時代に人間經濟から割出した進歩した便法であつ
たものであらう、それが其のまゝに進歩もせずに保留されてゐるのだら
う。一方に蒸氣機關や瓦斯エンヂンがとめ度なく發達して行く世の中に、
南洋の土人のそれと同じやうに、神代に近い物の其の儘の面影を見得るの
を、寧ろ一個の軌蹟としてよりも、文化運動中の有り勝な事相として、反
進化論にも相到せしめらるゝものだつた。總ての過去を葬るに吝かならぬ
支那人にも、それと兩極端な思想が存することが、別な興味を惹くのでも
あつた」という。
      
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 福島香織(ジャーナリスト)のチャイナ・ウォッチング
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台湾をめぐって何かが起きるかもしれない
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                 福島香織(ジャーナリスト)

 台湾をめぐって何かが起きるかもしれない ほとんど恫喝、習近平の危
うい台湾政策【JP PRESS:2019年1月24日から転載】

習近平が2019年初頭の「台湾同胞に告げる書」40周年記念行事で発表した
台湾政策がかなり激しい。恫喝を交えながら一国二制度による「平和統
一」を台湾政府に迫る内容だった。

もちろん、江沢民の台湾政策(江八点)の方が、武力統一を強調していた
という意見はあろう。だが江沢民は「できるだけ早く」といった抽象的な
期限しかいっていない。一方、習近平の演説には、あきらかに自分の代で
台湾との統一を実現するという強い意思が感じられ、しかもそれをやりか
ねない中国内外の情勢も見てとれるので、怖いのだ。

この脅迫めいた呼びかけに蔡英文はきっぱりと反論。はっきり「92年コン
センサス」(中台が「一つの中国」原則を確認するという合意)を認めな
い立場を強調した。昨年(2018年)の統一地方選の惨敗で、党内外から批
判を受けていた蔡英文は、その対応により支持率が盛り返した。やはり恫
喝は台湾人の反感しか呼び起こさない。
だが、蔡英文政権の支持が上がると、中国との対立姿勢がなおさら先鋭化
してくるだろう。しかも米国も台湾に急接近。今年、台湾をめぐって何か
が起きるかもしれない、という予感に満ちている。

◆歴代指導者が発表してきた台湾政策

習近平の台湾政策とはどういったものか。その前に、習近平が大晦日に
行った恒例の「新年のあいさつ」で、必ず冒頭に入れていた香港、マカ
オ、台湾同胞および海外華僑同胞への祝賀が入ってなかったので、お
やっ? と思った人も多かっただろう。

一部では、香港、マカオはもはや取りたてて挨拶するほど特別な存在では
ない中国の一地方都市に成り下がったからだ、と囁かれた。では、台湾も
無視していいほど中国化が進んでいると思っているのか。昨年の台湾統一
地方選では与党民進党が惨敗で、蔡英文は党首を引責辞任、行政院長の頼
清徳も辞任しており、蔡英文政権など相手にせずともいい、と思ったの
か、などと話題になった。

だが年明け1月2日、習近平は「台湾同胞に告げる書」40周年記念行事で台
湾に対する強烈なメッセージを発する。

 「台湾同胞に告げる書」は1979年1月にトウ小平が発表した国共内戦後
初めて中華民国に対し軍事的対峙を終結させ平和統一を呼びかけた文書で
ある。その後、歴代指導者は必ず任期中に自分なりの台湾政策を発表して
きた。1981年全人代常務委員長だった葉剣英が発表した「台湾平和統一に
関する九条方針政策」(葉九条)や、83年に?小平の6つの主張(?六
条)、1995年江沢民が発表した「祖国統一大事業促進を完成し奮闘を継続
する」ための8項目(江八点)、2008年暮れに胡錦濤が発表した「手を取
り合って両岸の平和的発展を推進し、中華民族の偉大なる復興を一緒に実
現する」ための6項目(胡六点)だ。

江沢民の江八点は武力行使を放棄しないことを強調。だが当時の台湾総
統・李登輝が両岸の政治分離の現実や民主促進など6つの主張を含む反論
(李六点)を発表し、これに怒った江沢民が武力威嚇姿勢を打ち出して台
湾海峡危機を引き起こした。

一方、胡錦濤は胡六点で両岸の平和的発展に重点を置き、台湾の現実を考
慮した対話や融和政策を呼びかけた。もちろん胡錦濤政権は台湾が独立を
宣言した場合に非平和的手段を取ることを合法化する「反国家分裂法」
(2005年)を制定し、それをもって対台湾強硬派とみなす人もいるだろう
が、これは当時の陳水扁政権に独立宣言をさせないことを目的としてお
り、本当の狙いは現状維持であったと見られている。だが、結果的に親中
派の馬英九政権を誕生させ、胡錦濤政権時代が一番台湾人民の心を中国に
引き寄せ、中台統一に一番現実味が出た時期でもあった。

◆「習五条」から伝わる習近平の野望

 さて習近平は台湾政策として5項目(習五条)を挙げた。簡単に内容を
まとめると、以下のようになる。
 
(1)平和統一の実現が目標。台湾同胞はみな正々堂々とした中国人であ
り、ともに「中国の夢」を共有できる。台湾問題は民族の弱さが生んだも
ので「民族復興」によって終結する。
(2)一国二制度の台湾版を模索。92コンセンサスと台湾独立反対という
共同の政治基礎の上で、各政党各界の代表者と話し合いたい。
(3)一つの中国原則を堅持。中国人は中国人を攻撃しない。だが武力行
使放棄は約束しない。外部勢力の干渉と少数の台湾独立派に対しては一切
の必要な選択肢を留保する。
(4)経済融合を加速させる。両岸共同の市場、インフラ融合を進める。
特に馬祖・金門島のインフラ一体化を推進する。
(5)台湾同胞との心の絆を強化。台湾青年が祖国で夢を追い実現するこ
とを熱烈歓迎。

 武力行使放棄を約束しないという恫喝表現はじめ、江八点でも使われて
いる表現が多いが、江八点よりも激しく感じられるのは、全体の文脈にに
じみ出る、自分が権力の座にいるうちに何としても台湾を併合してみせる
という意欲だろう。
 たとえば前言で両岸関係を振り返るにあたって「70年来」つまり建国以
来という表現を5回以上繰り返し、過去の指導者の台湾政策の流れにほと
んど触れず、自分の意志を強調し、いかにも自分こそが建国以来の中国人
民の願いであった台湾統一を実現する当事者たらんという文脈で「祖国統
一は必須で必然」と強く訴えている。しかも、習近平が2049年までに実現
すると掲げている「中華民族の偉大なる復興」プロセスで台湾同胞は欠く
ことができない、としている。「中華民族の偉大なる復興」は習近平個人
独裁確立とセットでタイムテーブルが設定されていることを考えれば、そ
こに自分の任期中に台湾統一を実現させたいという野望が見て取れるだろう。

 また「一国二制度」を台湾に適用する考えは?小平から続いているもの
だが、トウ小平時代の「一国二制度」と今の「一国二制度」が指す状況は
全く違うだろう。「一国二制度」は今の香港の現状をみれば、決して2つ
の違う政治・経済システムが1つの国家の中で運用されているという意味
にはなっていない。香港はほとんど完全に中国化され、司法の独立も経済
の自由も「共産党の指導の下」という枠組みの制限がついている。共産党
が許す範囲の司法の独立であり、経済の自由であり、自治である。もはや
特別行政区の「一国二制度」は中国国内の自治区の自治と同じで、完全に
意味のないものになっている。なので、習近平がいくら「統一後の台湾同
胞の私有財産や宗教信仰、合法権益は十分に保障する」と言っても、それ
が嘘であることは香港を見ればわかるのである。

 また江沢民も使った「中国人は中国人を攻撃しない」という表現も、台
湾人自身の過半数から8割前後が「自分は台湾人であって中国人ではな
い」というアイデンティティを持っている現状では、台湾にとって何の安
全の担保にはならない。むしろ中国人は中国人を攻撃しないが、台湾人な
らば攻撃する、というニュアンスすら感じる。習近平が打ち出した台湾政
策は、表現こそ江八点と共通点が多いが、全体の文脈としては、台湾に対
する恫喝度合いはずっと強い印象を受けるわけだ。

 さらに言えば、江八点が発表されたときの台湾は、稀代の老獪な政治家
と呼ばれた李登輝が国民党現役総統の時代であった。李登輝 VS 江沢民で
あれば、政治家の力量とすれば間違いなく李登輝が上だろう。台湾海峡危
機が起きたとき、堂々と張りあえた李登輝政権の台湾と比較すれば、政権
としての力量は各段に劣る今の民進党・蔡英文政権が、江沢民時代より
ずっと軍事的にも経済規模としても強大になった中国からの恫喝を交えた
圧力に対抗し続けられるか、という部分もあろう。

◆蔡英文政権は毅然と反論

 もちろん、この習五条に対して即日、蔡英文政権は毅然と反論し、明確
に「一国二制度は絶対に受け入れられないことは台湾の共通認識」と拒否
し、92年コンセンサスについて「終始認めたことはない」との立場を久々
に言明した。
 さらに台湾の人材、資本を大陸に吸収するような中国利益のための経済
統合に反対し、台湾ファーストの経済路線を主張。国際企業に「台湾」名
称を使うなと圧力をかけたり、台湾の友好国に札束で断交をせまるやり方
を批判し、どの口で台湾同胞と心の絆とかいうのかと言わんばかりの拒絶
を示した。
 また「民主的価値は台湾人民が非常に大切にしている価値と生活様式」
「大陸も民主の一歩を勇気をもって踏み出したらどうか」と呼びかけ、中
国が民主化しない限り統一はありえない、という姿勢をはっきりさせた。

 蔡英文は今までは現状維持を心掛けるあまり、中国に対する姿勢は慎重
になりすぎた傾向があり、そのせいもあって昨年の台湾統一地方選挙で与
党惨敗の結果を招いたとして党首職を引責辞任した。今回は習近平の恫喝
的な台湾政策にきっちり反論できたおかげで、多少は失地を挽回できたわ
けだが、それでも2020年に総統再選の目はほとんどなく、民進党内の団結
も揺らいでいる。

◆「9」がつく年には乱が起きる?

 習近平は習五条を発表した2日後の中央軍事工作会議では「軍事闘争準
備」を呼び掛けており、あたかも台湾武力侵攻への準備を固めているよう
な印象も与えている。蔡英文の反論を受けて中国世論には台湾武力統一論
が再び盛り上がってきた。
 実際に、中国が台湾に対して武力統一を行使する能力があるかどうか、
といえば、米国が台湾の民主主義と独立性守ることが自国の利益であると
考えている以上、台湾に手を出せば米中戦争に発展しかねず、中国に今、
米国と本気で戦える意思や能力があるかといえば「ない」とほとんどの人
が思うだろう。可能性としては非常に低い。
 だが、ペンタゴンが発表した「2019年中国軍事パワー」リポートでは、
「中国の巡行ミサイルなど打撃兵器はすでに米国など西側先進国と同水
準」「中国の兵器システムの一部の領域は世界最先端水準」「解放軍は自
軍の戦闘能力に自信を深めており、最終的には中国指導部に部分戦争を発
動するリスクを侵させうる」といった分析を出している。この場合の「部
分戦争」として一番想定されるのが台湾と一般にはみられている。

 このリポートに関してペンタゴン関係者がAFPなどに寄せたコメントの
中には「最大の心配は、中国が技術的成熟や軍制改革の実施を行い、解放
軍の実力を理解してきたとき、中国が1つの臨界点に達すれば、軍事力の
使用で地域の衝突問題を解決しようとすることがありうること」「北京の
解放軍実力に対する自信の度合いによっては、軍事力による台湾統一とい
う選択肢を取らせる可能性がある」というものがあった。米国防関係者の
中には中国による台湾有事を現実感をもって予想している人はいるのだ。
だからこそ、米国は台湾に急接近しているということだろう。

 中華文化圏には「逢八必災、逢九必乱」というジンクスがある。8がつ
く年には厄災があり、9がつく年には乱が起きるという都市伝説だ。1969
年珍宝島事件、1979年中越戦争、1989年天安門事件・・・。杞憂であれば
と心から願っているが、必乱の2019年に台湾問題は最も警戒すべきリスク
の1つかもしれない。

   (ふくしまかおり氏はジャーナリスト、元産経新聞北京特派員)


◆現在革命続行中、文在寅政権の異常さ

櫻井よしこ


個人的な感想だが、韓国の文在寅大統領は「信用できない男」の典型では
ないか。とりわけ1月10日、韓国大統領府で開かれた年頭の記者会見での
発言や表情は、知的に耐えきれないものだった。

韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊の哨戒機に、日本の排他的経済水域
(EEZ)内で、火器管制用レーダーを照射した問題でも、「朝鮮人戦時
労働者問題」(自称徴用工問題)でも、文氏以下韓国側は自らの非を認め
ず、逆ギレを続けている。

レーダー照射問題に関して、韓国は、自衛隊機が低空で威嚇的に飛行した
と言った。ではなぜ、その場で抗議しなかったのか。日本側が低空飛行な
どしていなかったから、抗議できなかったのであろう。

加えて、彼らは当初、レーダー照射をしなかったとは言っていない。低空
飛行を持ち出して問題をすり替えたのは、なぜか。

日本のEEZ内で韓国の大きな艦船が2隻も目視され、しかもまん中に漁
船らしき小さな船をはさんでいるとなれば、日本の海や空を守る哨戒任務
についている自衛隊機が、上空から様子を見るべく接近しないほうがおか
しい。当然の責務として近づいた自衛隊機にレーダーを照射して追い払お
うとしたのは、韓国側に隠したいことがあったからだろう。

どうしても見られたくない現場がそこにあったために、レーダーを照射し
たのではないか。隠したいことはよほど重要なことである可能性も高い。
その点も含めて韓国側は重大な嘘をついていると考えてよいだろう。

もう一方の朝鮮人戦時労働者問題を、文氏は、「韓国政府がつくり出した
のではなく、不幸な歴史のために生じた問題」だと語り、日本政府に「も
う少し謙虚になるよう」求めた。

韓国大法院(最高裁)が下した判断を、韓国は三権分立の国であるが故
に、韓国政府は尊重せざるを得ない、そのことを日本政府も認識せよと、
文氏は言ったが、同問題の背景に、文氏の遠大な企みがあったと見るのは
決して深読みのしすぎではないだろう。

親北朝鮮の完全な左翼集団

日本企業に慰謝料の支払いを命ずる判決を下した大法院長は金命洙(キム
ミョンス)氏だ。一昨年9月に文氏が大抜擢した。金氏は「ウリ法研究会」
の一員で「親北朝鮮、反日反韓国」の極左思想の持ち主だ。金氏を大法院
長に任命したときに、すでに今回の判決の流れが決まったといえる。

韓国で朝鮮人戦時労働者問題の訴訟を支えるのは「法務法人ヘマル」の弁
護士達だ。「太平洋戦争犠牲者補償推進協議会」や「民族問題研究所」が
支援組織として名を連ねている。

「ヘマル」の中心人物、張完翼(チャンワンイク)弁護士は、2000年に元朝
日新聞の松井やより氏(故人)らと共に、昭和天皇を裁き有罪にした女性
国際戦犯法廷を開催し、検事役を務めた。また、民族問題研究所は親北朝
鮮の完全な左翼集団である。

留意しておくべきことは、文氏が大統領選挙に出馬したとき、法務法人ヘ
マルが全面的に支えたという事実だ。後述するように、朴槿恵前大統領を
弾劾して行った選挙はまさに「革命」と呼ぶべき異常なものだった。その
異常な選挙を乗り切るのに法的支援をしたのが法務法人ヘマルだった。両
者はまさに一心同体と言えるのではないか。

こうしてみると大法院を支配する価値観と、戦時労働者訴訟の原告団を支
援する勢力の価値観は重なる。私たちはこうした人々相手の尋常ならざる
闘いに直面しているのだ。

右のような陣容で裁判をおこし、その中で下された判決を、韓国側は三権
分立を盾にして日本も尊重せよと言う。だが日本にも最高裁が存在する。
日本の最高裁は朝鮮人戦時労働者の件はすべて解決済みと判断した。日本
も三権分立の国だ。日本政府も日本の最高裁判決に従わなければならな
い。その事実を、韓国政府こそ、認識すべきであろう。

現在の韓国政府にはいちいち違和感を覚えるが、日本で発行されている韓
国の週刊新聞、『統一日報』の1月1日版に韓国の常識派の論文が複数、掲
載されていた。そのひとつが、ソウル大学経済学部教授を経て、昨年から
「李承晩学堂」の校長を務める李栄薫(イヨンフン)氏の講演である。

李氏は「反日種族主義を打破しよう」という題で語っている。李氏は「精
神文化の遅滞が、20世紀の韓国史を貫通してきた」と断じ、20世紀の韓国
の近代化を、韓国人は「無賃乗車」で成し遂げたと指摘する。「近代文明
の法、制度、機構は日本の支配と共にこの地(韓国)に移植された」ので
あり、国が滅びたのも国を建てたのも「自力」ではなかったと、韓国人が
一番聞きたくないことを、李氏は語っている。

精神文化の遅滞

それでも韓国がこの70年間大きな成果をおさめたのは、李承晩、朴正煕両
大統領をはじめとする「創造的少数」の功績だと李氏は続ける。その上で
韓国がいま、失敗の中にあるのは「種族主義」のためだと言う。種族主義
とは何かと、『統一日報』担当者に問い合わせると、民族主義以前の閉鎖
的で遅れた段階を指すとの説明だった。

李氏は、そのような精神文化の遅滞ゆえに、韓国は「国際感覚において不
均衡」、「日本に対しては無期に敵対的である反面、中国に対しては理解
できないほど寛大だ」と分析する。

もうひとつ『統一日報』には、前大統領、朴槿恵氏の弾劾及びその後の有
罪判決に関して、非常に重要な論文が掲載されている。

朴槿恵氏は過日、32年の懲役刑を下された。66歳の氏は、98歳まで獄に留
め置かれるということだ。このような結果になった朴氏弾劾事件を同紙
は、「韓国憲政史上、最も恥辱的な出来事」と痛烈に非難している。弾劾
の引き金となった唯一の物的証拠が「タブレットPC」だったが、これは
後に偽物だと証明された。このPCへの疑惑を提起したジャーナリストは
逮捕され、実刑を言い渡された。

どこを調べても朴氏は一ウォンのお金も不正に得ていなかったが、韓国司
法は朴氏に罰金200億ウォン(約20億円)を宣告した。収賄の証拠が皆無
だったために、裁判官の心証に基づいて「暗黙的請託」という新たな論理
をひねり出し、重罪に処するために韓国の刑法にない「国政壟断罪」も急
遽作り出した。

弾劾から裁判に至る過程を見れば背後に広範な工作があり、それは北朝鮮
との共謀関係の中でこそ可能だったと思わせられる。

論文には「韓国では嘘をつくことは、特に左翼勢力の嘘はほとんど処罰さ
れない」と書かれている。

こんな国が文政権下の隣国だと肝に銘じつつ、常識と良識を備えた韓国人
の存在も忘れないようにしよう。

『週刊新潮』 2018年1月24日号日本ルネッサンス 第836回

◆名所旧跡だより 平原遺跡(福岡県糸島市)

石田 岳彦


私の故郷である福岡市の周辺では、「桧原(ひばる)」、「屋形原(やかたばる)」、「前原(まえばる)」と、「原」を「はら」ではなく、「ばる」と呼ぶ地名が散在しており、上記の「平原」も「ひらはら」ではなく、「ひらばる」と読みます。

本日は福岡県糸島(いとしま)市にある平原遺跡について述べさせていただきます。

魏志倭人伝には邪馬台国を初め、多くの国名が記載されていますが、伊都(いと)国もその中の1つです。

現在の福岡市西区から糸島市にかけては、もともとは糸島郡であった地域ですが(平成の大合併で、前原市と志摩町、二丈町がまとまって糸島市が誕生し、糸島郡は最終的に消滅しました。)、この糸島郡自体、明治時代に怡土(いと)郡と志摩(しま)郡が合併して成立しました。

この怡土が伊都と通じること、佐賀県の旧松浦郡(現在の伊万里から唐津あたりにかけての地域)にあったとされる末廬国(まつら)国の南東に伊都国があったとの魏志倭人伝の記載から、伊都国は旧糸島郡にあったとされているそうです。

平原遺跡はこの伊都国の女王の墓とされています。 平原遺跡は糸島市の平原地区(遺跡の大半は発見された場所の地名で呼ばれます)にあり、周辺はのどかな農村地帯です。

そもそもこの遺跡が発見されたのも、昭和40年に地元の農家が蜜柑の木を植えようとして、銅鏡の欠片を発見したことがきっかけでした。

報告を受けた福岡県は、郷土史家の原田大六(大正6年の生まれということで、こう名付けられたそうです。)に発掘の指揮を依頼しました。

この原田大六は、糸島中学校(今の福岡県立糸島高校)を出たものの、大学では学ばず(歴史しか勉強しようとしなかったので、進学が無理だったとか)、太平洋戦争から復員した後、公職追放にあったのを契機に(軍隊において憲兵隊に入っていたのが祟ったといわれています)、中山平次郎博士に弟子入りし、博士から9年以上にわたり、1日6時間以上のマンツーマン指導を受け、考古学者になったという歴史小説の主人公にもなれそうなユニークな経歴と個性の持ち主です。

ちなみに中山博士は、現在でいうところの九州大学医学部の教授でありながら、寧ろ考古学者としての業績が有名という(九州考古学会の設立者だそうです)、これまた変わった経歴の持ち主で、この師匠にして、この弟子ありというところでしょうか。

この原田大六が、途中からは自費で発掘を継続し、遺跡からは墳墓の副葬品と見られる多くの出土品が発掘されました。

発掘品の中でも特に目立つのは39面又は40面(何分、破片で見つかったので、枚数について争いがあるようです。)発見された銅鏡で、うち4枚は直径46.5cmと、日本で発見された銅鏡として最大のものです。

他方で、剣等の武器はほとんど見つかっておらず、被葬者が女性であったことをうかがわせます。 副葬品の内容と豪華さから見て、時代は弥生時代。被葬者は王クラスの女性、つまり女王。遺跡(墳墓)のあった場所は伊都国があったとされるエリアということで、現在では、上記のように伊都国の女王の墓と推定されています。

弥生時代の女王といえば、邪馬台国の卑弥呼が有名ですが(実際には「日巫女」という太陽神を祀る神官女王の役職名だったのではないかとの説もあるそうですが)、それ以外にも女王がいたのですね。

ちなみに原田大六は玉依姫(たまよりひめ。神武天皇の母親とされる神話上の女神です。)の墓と主張していました。

平原遺跡の女王の墓は四角形(現在では少なからず形が崩れていますが)で、写真を見ればお分かりのように、その周囲には溝が掘られています。学問的には方形周溝墓(ほうけいしゅうこうぼ)と呼ばれるタイプの墓だそうで、上記の発掘品も近年になって「福岡県平原方形周溝墓出土品」という名称で一括して国宝に指定されています。

現在の平原遺跡は、墳墓の周りが低い柵で囲まれ、その周囲は横長のレリーフが建っているのを除けば何もない広場になっており、少し離れたところに古民家(遺跡とは全く関係ありませんが、保存のため移築されたようです)が1軒ぽつんという、よく言えば開放的、率直にいえばスペースが広々と余った歴史公園となっています。個人的にはこういう長閑な雰囲気は好きですが。

平原遺跡から車で10分ほど走ると農村風景の中に4階建の立派な建物がそびえているのが見えてきます。伊都国歴史博物館です。もともとは伊都歴史資料館といったようですが、平成16年に新館が建てられて博物館に昇格したとのこと。

「福岡県平原方形周溝墓出土品」の一部は九州国立博物館の平常展示室で公開中ですが、大半の発掘品はこちらの新館に保管・展示されています。館内撮影禁止のために写真はありませんが、鈍く緑色に輝く大型の銅鏡がケースの中にずらっと並ぶ姿はさすがに壮観です。
 
展示ケースの前に、立てられた状態の銅鏡が1枚、機械仕掛けでゆっくりと回転しながら展示されていましたが、見学者が私と妻の他におらず(施設と所蔵品の豪華さを考えれば、もったいない限りです。)、静けさの中で、微妙なモーター音をあげながら回転する銅鏡の姿は率直にいって不気味でした。

この博物館の前身たる伊都歴史資料館の初代館長には、上でも述べた原田大六が予定されていたそうですが、大六が開館を待たずに死去したため、名誉館長の称号が追贈され、資料館の前に銅像が立てられました(銅像は現在も立っていますが、新館の入り口からだと目立たない場所になっています)。

自分の主導で遺跡を発掘し、国宝級の副葬品を発見して、それを納めた郷里の資料館の前に銅像を建ててもらう。郷土史家としては頂点を極めたという感じですね。大学の考古学の教授でもここまでの成功を得られる人は滅多にいないでしょう。
 
福岡市やその近郊にお住まいの方は休日にでもドライブがてらにでも、平原古墳と伊都国歴史博物館を訪れてみてください。晴れた日には本当に気持ちの良い場所ですので。(終)  <弁護士>