2019年01月10日

◆日本という太陽が世界を照らす

加瀬英明


6年前に、セルビア共和国のアダモヴィッチ・ボヤナ大使によって、大使
館に昼食に招かれた。

私は挨拶を終えると、すぐに第一次世界大戦後のパリ講和会議において、
日本全権団が戦後世界を管理する国際機構となる国際連盟憲章に、「人種
平等条項」をうたうように提案したのに対して、セルビアが賛成票を投じ
てくれたことに、御礼を述べた。

すると、女性の大使が驚いて、「着任してから、このことについて御礼を
いわれたのは、はじめてです」といって、喜んでくれた。

11月に、パプア・ニューギニアでAPEC(アジア太平洋経済協力機構)
サミットが開催され、安倍首相も参加した。

3年前に、私は都内の夕食会で、パプア・ニューギニアのガブリエル・
J・K・ドゥサバ大使と同席した。すると、大使が「私の父親は先の大戦
中、日本軍の連隊を助けて、密林のなかを、オーストラリア軍と戦いまし
た。日本のおかげで、独立を達成することができました」といって、連隊
長の名と連隊番号をあげて、感謝した。

ニューギニア島は東半分がオーストラリア、西半分がオランダによって、
領有されていた。

パリ会議は、ヴェルサイユ会議としても知られるが、1919年2月に日本全
権団が「人種平等条項」を提案したところ、11票対5票で採択されそう
になったが、議長をつとめていたウィルソン・アメリカ大統領が、「この
ような重要な案件については、全会一致でなければならない」といって、
日本案を葬った。

小国が賛成票を投じたのに対して、アメリカはフィリピンを領有し、国内
で黒人を差別していたが、英仏などの植民地帝国が反対した。

今年は、日本全権団が「人種平等条項」を提案してから、100周年に当たる。

日本は先の大戦で、大きな犠牲を払って戦って敗れたが、西洋が数百年に
わたり支配していたアジア諸民族を解放し、その高波がアフリカ大陸も
洗って、次々と独立していった。

その結果、日本の力によって、長い人類の歴史における最大の革命となっ
た、人種平等の理想の世界が、はじめて招来された。

不平等条約改正と、人種平等の世界を創ることが、幕末からの日本国民の
大きな夢だった。

日本という太陽が昇って、世界を隅々まで照らした。

 私事になるが、オノヨーコが私の従兄姉に当たるので、ジョン・レノン
とも親しかった。今年がジョンとヨーコが結婚してから、50周年に当たる
ために、内外でさまざまなイベントが催される。

ジョンは『イマジン』の曲で有名だが、日本が先の戦争によって、戦争前
に誰も想像(イマジン)すらできなかった、人種平等の世界を創ったことを
高く評価して、ヨーコと2人で靖国神社に参拝している。


◆4000人が米国から帰国

宮崎 正弘


平成31年(2019年)1月9日(水曜日)弐 通巻第5947号  

 中国人留学生、客員学者、交換教授ら4000人が米国から帰国
  中国の米国企業買収は95%減っていたーートランプ効果は激甚

衝撃的な(中国にとってだが)ニュースが次々と飛びこんでくる。

ハイテクを米国から取得(「盗取」ともいうが)するために派遣される学
者、研究者、教授、学生らに対してヴィザの審査が厳しくなったことは広
く知られるが、滞在延長が認められないばかりか、いったん帰国した中国
人の米国留学組の再入国に対してもヴィザ審査がより厳格化された。

中国人留学生は数十万人に達するが、これをのぞいた客員派遣の学者、交
換教授ら4000人(奨励金が14万500ドルから72万ドルの巾で供与され
る)が米国から帰国していた。

これは12月1日に「自殺」した張首晟スタンフォード大学教授が運営して
いた「ホライゾン・キャピタル」とかの面妖な財団が象徴するように、ス
パイ養成、ハイテク泥棒のダミー、表向きの看板がシンクタンクというわ
けだった。慌てて帰国した疑惑の中国人も目立ったという。

 一方で、アメリカ企業、不動産を片っ端から買いあさっていたのは
HNA、安邦に代表される投機集団だったが、いずれも有利子負債が膨張
したため、事実上、国有化された挙げ句、在米資産を殆ど売却した。その
ドルを外貨準備が底をついた中国に環流させた。

このケースが代弁するように中国の米国企業買収は95%も激減していた。

ちなみに2016年に553億ドル、17年に87億ドル。それが2018年速報で30億
ドルという激減ぶりだった。

ところがアジア太平洋地域では中国の投資額は激増し、52・4%増の1600
億ドルに達した。

もっと激増したのが欧州諸国で中国からの投資は81・7%増の604億ドル
だった。余談だが、中国の富裕層は昨今、規制をくぐり抜けるか地下銀行
を通じて、京都の豪邸や億ションを「爆買い」していると南華早報が伝え
ている。
      

◆韓国との情報戦に立ち遅れている日本

櫻井よしこ


「韓国との情報戦に立ち遅れている日本 手強い存在と心して戦うこと
が必要だ」

12月4日、東京の日本外国特派員協会、通称外国人記者クラブで、「朝鮮
人戦時労働者」の裁判について、韓国側弁護団が会見した。

朝鮮人戦時労働者はこれまで「徴用工」と呼ばれてきた。しかし、戦時
中、日本に働きにきた朝鮮半島の人々の多くは民間企業の募集に応じた
人々で、必ずしも徴用された人々だけではない。安倍晋三首相も国会で述
べたように、新日鐵住金を訴え、判決が10月30日に下された裁判の原告4
人は全員、徴用工ではなかった。そのような事情から徴用工の代わりに
「朝鮮人戦時労働者」と呼ぶ。

会見した韓国人弁護士達は、韓国で新日鐵住金を訴えた裁判で原告の代理
人を務めた大弁護団の一部だ。会見に現れたのは金世恩(キム・セユ
ン)、林宰成(イム・ジェソン)両氏らである。両氏共に若く、韓国の法
務法人「ヘマル」に所属、或いは関係が近いと見られている。

彼らは会見当日、新日鐵住金本社に2度目の訪問を強行し、面会を断られ
ている。要請書を置いてきたそうだ。内容は韓国大法院(最高裁判所)の
判決に従って、朝鮮人戦時労働者に慰謝料を支払い、謝罪することが必要
で、いつ、どのような形で実施するか、12月24日午後5時までに回答せよ
というものだそうだ。

彼らは、さらなる訴訟を準備中で、新日鐵住金側が韓国側との協議に応じ
ない場合、差し押さえ手続きに入る予定だと明言した。

彼らはさらに、新日鐵住金が韓国で保有する資産、PNRという企業の株
式234万株は約110億ウォン(約11億円)に相当し、差し押さえの対象だと
語った。新日鐵住金保有の韓国における知的財産権は3000件余りで、こち
らも差し押さえの対象だという。

新日鐵住金側には一切妥協する気配はない。それで正しいのである。

韓国側の主張には、おかしな点が多い。そのひとつが朝鮮人を労働させた
のは国際労働機関(ILO)29号条約に反するという主張であるが、この
指摘は間違いだと言ってよいだろう。

29号条約は「処罰の脅威の下に強要される」労働を強制労働としており、
強制労働は時効のない犯罪である。ただ、「緊急の場合、即ち戦争、火
災、洪水、飢饉、地震……」などに対処する強制労働は例外として許容され
ている。

ILO専門委員会は朝鮮人戦時労働者問題に関して、救済策を講じよとい
う意見を日本に出してはいるが、その一方で、補償問題は日韓請求権協定
で全て解決済みだとする日本政府の主張は正しいと認めてもいる。

ILOの見解には微妙な矛盾が見てとれるが、これは近年の「個人を救済
する」思想を反映するものだ。

そこで重要になるのが、朝鮮人労働者への実際の待遇や労働条件は当時の
状況の中で受け入れられるものだったかどうかである。日本企業の資料や
当時の労働者の証言は、日本企業の待遇がきわめてまともだったことを示
している。だが、不足しているのが、そうした情報の発信と周知徹底である。

長崎県端島、通称「軍艦島」をテーマに韓国が作った映画は大嘘の満載
で、日本での労働はまるで地獄だったなどという酷い情報が世界に拡散さ
れている。この種の情報戦に日本は立ち遅れている。加えて懸念されるの
は相手の弁護団である。彼らは長年日本を標的にしてきた手強い存在である。

冒頭で触れた韓国の法務法人「ヘマル」の中心人物が、張完翼(チャン・
ワンイク)弁護士だ。氏は、慰安婦問題で日韓両政府を激しく攻撃するこ
とで知られる韓国挺身隊問題対策協議会の活動に1994年から参加、2000年
には、松井やより氏やVAWW−NETジャパンなどが主催した女性国際
戦犯法廷で韓国側検事役を務めた。同法廷は日本国天皇を裁き有罪を宣告
した。こういう人々が相手だ。心して戦うことが必要だ。

『週刊ダイヤモンド』 2018年12月22日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1261

◆今の大阪城は「太閤城」ではない

毛馬一三


国の特別史跡に指定されている大阪城が、実は「太閤秀吉築城の大阪城」ではなく、総てが「徳川大阪城」だと知る人は、意外に少ない。

では秀吉が、織田信長から引継ぎ築城した元々の「大阪城」は一体どこに姿を消したのか。それは追々―。

「聳える天守閣は昭和初期に再建され、城の堀は徳川方によって埋められたことは承知していたが、だからと言って秀吉大阪城の城跡が些かも無いとは全く知らなかった」という人が多い。大阪城へ朝散歩する人々から異口同音に同様の返事が返ってくる。

天満橋から大手前、森の宮、新鴨野橋と城郭を一周する道筋を車で回ると、「大阪城の高い石垣と深い堀」が、雨滴の葉が陽光を跳ね返す樹林の間からと、大きく広がり、歴史の威容を誇らしげに見せ付ける。特に大手前周辺の高さ32mもある幾重もの「反りの石垣」には、当時の石垣構築技術の進歩の姿を覗かせる。

大阪夏の陣で豊臣家を滅亡させた徳川家康は、同戦いの2年後(1616)死ぬが、家康遺命を受けた秀忠が、元和6年(1620)から寛永6年(1629)までの10年3期にわたり大阪城を大改築する。

その時徳川の威令を示すために、「太閤大阪城」の二の丸、三の丸を壊し、その上、総ての「堀」を埋め、「石垣」は地下に埋め尽して、「豊臣の痕跡」を意図的にことごとく消し去った。

では「太閤大阪城」は、地下に眠ったままなのか。

「大阪城石垣群シンポジウム実行委員会」の論文をみると、そこに「太閤大阪城」が地下に埋められたままになっていた遺跡の一部を発掘した調査記録が、下記のように書かれている。

<地下に埋蔵された「太閤大阪城」の石垣を最初に見つけたのは、大阪城総合学術調査の一環として大阪城本丸広場で行われたボーリング調査だった。昭和34年(1959)のことである。天守閣跡の南西にあたる地下8m から「石垣」が見つかったの
だ。

4m以上も積まれた石垣で、花崗岩だけでなく、様々な石を積み上げた「野面積み」だった。「野面積み」は、石の大小に規格がなく、積み方にも一定の法則が認められないもの。当時城郭作りの先駆者だった織田信長が手掛けた安土城の「野面積み」工法と同じだったことから、秀吉がその工法を導入して築いた「石垣」と断定された。

それから25年後の昭和61年(1986)になって、再び天守閣跡の南東部の地表1mの深さから地下7mまで、高さ6mの「石垣」が発見されている。

この石垣も「野面積み」だったうえ、その周辺で17世紀初頭の中国製の陶磁器が火災に遭って粉々の状態で見つかったことから、大阪夏の陣で被災した「太閤城」の「石垣」であると断定される2回目の発見となったのである。

両「石垣」の発見場所の位置と構造を頼りに、残された絵図と照合していくと、この「石垣」は本丸の中で最も重要な天守や、秀吉の家族が居住していた奥御殿のある「詰め丸」と呼ばれる曲輪(くるわ)の南東角にあたることが明らかになったのである。

地下に消えた「石垣」は、切り石が少なく、自然石や転用石を沢山積み上げたもので、傾斜が比較的ゆるい、「徳川城」とは異なる「反り」の無い直線だった>。

第3の発見は偶然が幸いした。現在の「大阪城・西外堀」の外側の大阪城北西で、大阪府立女性総合センター建設の際の発掘調査で、地下から長さ25m に亘る「太閤大阪城の石垣」が出現したのだ。同石垣は、いま同センターの北の道沿いに移築復元されている。

「大阪城の石垣」の痕跡も、堀の外側にある学校法人追手門学院大手前センターの校庭で見つかり、保存されている。

何よりもこの発掘の価値が大きかったのは、今の大阪城郭から離れた外側の場所から「石垣」が現れたことだ。それは「徳川城」よりも「太閤城」の方が遥かに規模の大きかったことの証であり、今後の調査で城郭外から新たな「太閤大阪城」が出現する可能性を引き出したことだった。

地下に眠る遺跡の発掘調査は、エジプトやイタリアなど文明発祥地でブームになっているが、現在進められている大阪市の大阪城発掘調査で、「天下の台所」の基礎を築いた「太閤大阪城」の遺跡が、今の城郭外から見付かることを大いに期待したい。

その全景はあくまで「徳川城」の遺跡であって、「太閤大阪城」でないと思うと、寂しさがこころの中を翳める。(再掲)

2019年01月09日

◆憲法下では自衛隊は国防の傍役でしかない 

加瀬 英明


私は春と秋に、年2回、ワシントンに通っている。

いま、世界の未来が、アジアのありかたにかかっている。

トランプ政権は発足してから、11月に次の2020年の大統領選挙の折り返し
点になった2年が過ぎたが、前半の2年に起ったもっとも重要な出来事
は、中国と真正面から対決することになったことだ。

中国の習近平政権は中国の力を過信して、アメリカが内に籠ろうとしてい
ると判断して、アメリカを追し退けて、世界の覇権を握ろうとしているの
に対して、アメリカが反発して、立ち塞(ふさ)がったのだ。

習近平主席は、南シナ海に埋め立てた7つの人工島を「軍事化しない」
と、オバマ大統領と固く約束したのにもかかわらず、ミサイルを配備し
て、南シナ海を支配しようとしているのをはじめ、軍事先端技術でアメリ
カを凌ごうとするかたわら、中国からアジアを通ってヨーロッパまで、
70ヶ国あまりを取り込もうとする、「一帯一路」戦略を露骨に進めてい
るのに、アメリカが堪忍袋の緒を切らしたのだ。

米中対決は、“米中新冷戦”と呼ばれているが、これはトランプ政権だけに
よる決定ではない。共和、民主両党をはじめ、アメリカの識者、著名シン
クタンク、大手新聞・テレビによる、コンセンサス(合意)だ。

トランプ政権のもとで、アメリカは世界を一手に守ってきた重荷を軽くし
て、ヨーロッパや、日本などの同盟諸国が分担することを期待している。
多くのアメリカ国民が諸国の防衛を、アメリカに押しつけられてきたと
思って、不公平だと考えるようになっている。

アメリカは国防費にGDP(国内総生産)の3.1%を、支出している。
オバマ政権下でNATO(北大西洋条約)に加盟しているヨーロッパの
27ヶ国が、GDP2%を国防費にあてると約束したのにもかかわらず、
約束を守っているのは、イギリスなど7ヶ国にしかすぎず、ヨーロッパ第
一の大国のドイツは、1.2%でしかない。

11月に、ワシントンを訪れた時に、トランプ政権の旧知の関係者と会食し
たが、なかに国家安全会議(NSC)の幹部がいた。

 「ドイツの国防費は、1.2%にしかならない。ドイツ国民が自分の国
の価値が、それしかないとみなしているのなら、どうしてアメリカの青年
たちが、自国を大切にしない国を守るために、血を流す必要があるのだろ
うか」
 といった。

 日本はNATOの計算基準を当てはめると、防衛費として1.15%を
支出している。

 ここで、私が「防衛費」という言葉を使っていることに、注目していた
だきたい。「国防費」ということは、許されないからだ。

 日本は現行の「日本国憲法」のもとで、「国防」はアメリカに委ねて、
自衛隊はアメリカ軍を補助して「防衛」に当たることになっている。アメ
リカが日本の国防の主役であって、日本は傍役(わきやく)なのだ。

 日本国民は非常の場合には、アメリカが守ってくれると思い込んでいる
から、国防意識が低い。これでは、日本が亡びてしまう。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は、親北朝鮮政権であって、在韓米軍
が撤退することもありうる。

 憲法を改正して、自衛隊を保有することを憲法にうたうことを、急がな
ければならない。

◆インド太平洋における英仏海軍共同作戦

宮崎 正弘


平成31年(2019年)1月7日(月曜日)通巻第5943号  

 インド太平洋における英仏海軍共同作戦の本当の可能性
  ポール・ケネディ教授、「予算上、作戦上、そしてロシアがあり可能
性は低い」

英国国防相のケビン・ウィリアムソンは強気の発言を繰り返し、南シナ海
へ「自由航行作戦」を強化するとした。

フランスのフローレンス・パルリ国防相も、空母「シャルルドゴール」と
攻撃群を当該海域に派遣すると言明し、西側の航行の自由という原則を踏
みにじる国を牽制するとしている。『踏みにじる国』とはどの国なのか、
名指しはしていないが。

想定される英仏共同軍事作戦とは互いの得意領域でカバーし合い、たとえ
ば仏空母を守るために英国海軍駆逐艦が護衛するなどのシナリオである。

両国はともに2020年を達成目標にしている。

英仏が共同の作戦を展開するのもアデン湾の海賊退治での経験があるから
だ。英国はシンガポールかブルネイに海軍拠点の構築を模索しているとの
報道もある。

エール大学の歴史学者ポール・ケネディ教授が、『アジアタイムズ』
(2019年1月7日)のインタビューに答えて「英国国防予算の限界、まし
てや次の選挙で労働党が勝てば、国防予算は大幅に削減されるだろう。現
況を見ても、英海軍はフォークランドまでの大西洋、ロシア海軍の牽制の
ためにバルト海から地中海を守備範囲としており、このルーティン活動に
くわえて、インド太平洋に常時作戦を展開できる態勢とするには、ディエ
ゴガルシアか東アフリカのどこかに拠点が必要となる。総合的判断にたて
ば、艦数と兵員不足があり、『フォークランドからペルシア湾まで』で、
限界というところだろう」と悲観的である。

ポール・ケネディ教授は、嘗て『大国の攻防』をいう世界的ベストセラー
も著者としてもしられる。
     
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
★読者の声 ☆どくしゃのこえ  ★READERS‘OPINIONS
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   ♪
(読者の声1)高橋洋一氏が日本経済新聞を徹底的に批判した新刊で「日
経の記事は読むに堪えない。日銀と財務省事務方の意見しか反映されてい
ない」と痛罵しています。かつて『ザ日経』(上下2巻)や『日経の読み
方』を書かれた宮崎正弘先生は、最近の日本経済新聞をどのように見てお
られますか?SY生、三鷹)


(宮崎正弘のコメント)「日経の時代」は終わったのではないか、と思わ
れます。

左翼全盛時代の日経は保守の論調であり、安心感もあったし、主観を排除
した紙面作りは好感を持てました。

一時期は「メディアミックス」を主導し、日本のメディアがまだそれが何
のことか分からない時期に社内に「データバンク」を最初に創設し、『会
社四季報』に対抗する『会社情報』まで出して相乗効果をあげ、ニューメ
ディア時代のトップを走っていました。

ところが、その後、記事が徐々に朝日寄りになり、ましてや英国フィナン
シャルタイムズ買収以後は、つまらないリベラルのコラムやら翻訳やら、
これでは自主的な経済判断にリベラルのプリズムが反射して、まともな分
析が少なくなったと判断しています。

◆せめぎ合う内科と外科

石岡 荘十


医療技術の賞味期限は5年、といわれる。心臓疾患治療の分野もその例外ではない。

心臓の筋肉にエネルギーを送り届ける冠動脈の血管が狭まって血液が流れにくくなるのが狭心症、完全にふさがってしまうのを心筋梗塞という。こんな病状の患者の治療法をめぐって、内科医と外科医の陣取り合戦が繰り広げられている。

とりわけ、心筋梗塞の治療法は、かつては心臓外科医の独壇場だった。手術は胸の胸骨の真ん中を縦に真っ2つ切り離し、肋骨、つまり胸板を持ち上げて心臓を露出し、人工心肺を取り付けて、全身への血液循環を確保しながら、心臓に張り付いた冠動脈の詰まったところをまたぐように別の血管を吻合(縫い合わせる)し、詰まった部分をまたいでバイパスを作る。

開心手術というが、医者にこんな説明を受けた患者は例外なく衝撃を受ける。だけでなく、その後肉体的にも患者には大きなダメージとリスクを強いる手術が待っている。

そこで、内科医は考える。

「心臓を露出しないで、詰まった血管を開通させる方法はないのか」と。

考え出された治療法が、細い管(カテーテル)を、血管を通して心臓まで挿入する。狭くなった部分にカテーテルが到達すると、そこで先端に仕掛けられたフーセン(風船)をぷっと膨らませて狭くなったところを広げる。

あるいは、先端に仕掛けられたドリルで血管にこびりついたコレステロールを削り取ったり、最近、脳梗塞治療薬として人気が高まったt-PA で血栓を溶かしたりする方法だ。

崖崩れでふさがったトンネルをあきらめてバイパスを作る外科心臓手術か、土砂を取り除いてもともとのトンネルを開通させる内科治療か。

この判断は、まず、最初に患者の診断をする内科医が行なうが、内科医によるトンネル再貫通(カテーテル)方式は、1度貫通しても、かなりの患者の血管がまたふさがる(再狭窄)、何度も手術をしなくてはならない。これが欠点だ。

一方、外科手術は患者に与える精神的な衝撃だけでなく、全身麻酔や人工心肺がもたらす肉体的なダメージやリスクも大きいが、同じ部分が再狭窄するリスクだけは避けられる。

一長一短だ。
そこへ登場したのが内科医によるカテーテル治療の新兵器「ステント」である。

ステントは金網でできた筒。まず、風船で押し広げたところへ、これそっと挿し入れて置き去りにすると、そこは再び狭窄しなくなる。掘ったトンネルを中から強固な金属の管で補強するような治療法だ。

しかし、ステントの金属が血管を傷つけて炎症を起こし、2・3割がまた再狭窄へ向かうという問題が起きる。

これを阻止できないか。

そこへ「薬剤溶出性ステント」が米国で03年4月に登場し、日本でも04年4月から使われるようになった。新型ステントは再狭窄を防ぐ効果のある薬(シロムスリ)が塗ってある。

これが少しずつ溶け出して、再狭窄を防ぐ。再狭窄率は最大5%へと激減した。ほとんどゼロだった。世界の内科医軍団は、もはや心筋梗塞治療で外科医の手を借りることはなくなった、と胸を張った。

外科医によるバイパス手術と内科医によるカテーテルの割合は欧米で1対1だった。日本では1対3から4だったが、それが1対7か8となり、間もなく10人中9人がカテーテルという時代になるのではないか。

しかし、世の中そんないいことばかりあるわけない。問題が起きた。

血管内に異物であるステントを入れると、血栓ができやすくなり、かえって心筋梗塞を起こすリスクが高まる。それを防ぐ薬を使うと、今度は重い肝臓障害などの副作用が出て、死に至るというケースも報告された。あちら立てればこちらが立たずというわけだ。

一方、外科医も指をくわえてこんな状況を見ていたわけではない。外科手術の分野では、胸は開くが人工心肺も使わず、心臓を動かしたままバイパス手術を行なう手法(心拍動下CABG)や、胸も開かず、胸を6〜7センチ切るだけで、そこから手術器具を挿入、バイパス手術を行なうというすでに評価の定まった“名医”も登場している。

心筋梗塞治療をめぐる内科医と外科医の陣取り合戦はさらに熾烈なものとなるだろう。

ちなみに、治療費である。
・人工心肺を使った冠動脈バイパス術 : 300万〜400万円
・使わないバイパス術: 200万円くらい
・カテーテル治療:技術料などを含めると100万円ほど。

額面の値段では内科方式に分がありそうだが、副作用の問題もある。治療費用は一定額を超えるとほとんどが戻ってくる高額療養費制度もあるし、致命を回避する費用としては、大差ない差額といえそうだ---。

さて、そうなったら、♪あなたならどうする? (了)

2019年01月08日

◆今年の政局は波瀾万丈

杉浦 正章


解散説も出たり引っ込んだりの危険水域に

亥年だからどうなるなどと言う馬鹿馬鹿しい話しは民放正月番組に
任せるとして、今年の政局を見通せば内外とも波乱要素に満ちている。首
相・安倍晋三が目指す北方領土返還も憲法改正も、具体論に入れば国論は
2分3分する。あえて火中の栗を拾い政権の根幹を揺るがす必要があるの
かといえば、疑問だ。それよりも統一地方選、参院選をこなさなければな
らず、まさに正念場だ。野党はここを先途とたたみかける。場合によって
は安倍が衆参同日選挙で斬り返す事態も予想される。政治決戦の年になる
ことは間違いない。

まず大局を見れば、近い将来国民が現自民党政権維持から野党政権への選
択をする可能性はゼロだろう。なぜなら安倍自民党政権の6年は、日本繁
栄の6年であり、失業率実質ゼロの状態維持は戦後の政権において存在し
ない。安倍にとっては赤壁の戦いではないが、天の利、地の利、時の利、
人の利があったのであり、その余韻は残る任期3年にも多かれ少なかれ及
ぶだろう。6年の実績を見て国民の大勢は、現状維持指向に向かうだろう。

立憲民主党代表枝野幸男は「衆参同日選挙はあり得るとの前提で準備した
い」との見通しを新年早々述べている。しかし安倍はよほどの好機と見な
ければやるまい。よほどの好機とは北方領土問題の大きな進展である。し
かし、ずる賢いプーチンが4島を返して、米軍に有利になる極東情勢を認
める可能生はゼロであり、せいぜい2島返還の可能性があるが、一部の期
待のように4島への足がかりなどにはなりそうもない。

2島で打ち切りというのが現実だろう。戦争で取られた領土が全て返るこ
となど世界史的にも希有なことであり、2島がせいぜいであろう。その2
島の是非で総選挙をぶちかませれば、野党やマスコミのの絶好の攻撃材料
となり、極右も何をするか分からない。現在の改憲勢力で3分の2の議席
の維持などはまず不可能となるだろう。北方領土は光明が見えているよう
で、本筋は依然として無明の闇といってよい状況なのだ。従って対露外交
の重要度はは2の次3の次でよい。

ここで今年の重要日程をみれば、今月通常国会が招集され、下旬には日露
首脳会談。4月には統一地方選挙があり、同月30日には天皇の退位があ
る。5月1日には新天皇が即位し、改元となる。6月28,29両日大阪で20
か国・地域首脳会合(G20)が開催され、中国国家主席習近平が来日する
予定だ。6月か7月には参院選挙、10月1日には消費税が10%に引き上げ
られる。

今年の政局展望にとって最大のくせ者がその消費税引き上げだ。なぜなら
消費税を引き上げた直後に解散・総選挙をすれば、確実に大敗する。従っ
て総選挙は引き上げのかなり前か、国民の怒りが収まる2020年後半以降し
かない。そもそも前回16年の参院選挙は、自民、公明、大阪維新で3分の
2を上回った。今回の参院選で自民、公明、日本維新の改憲勢力は90議席
弱。3分の2を維持するにはこの90弱をなんとしても死守しなければなら
ない。前回が勝ちすぎているのであり、減少を避けるのは極めて難しいのだ。

 こうした事態を回避するためにささやかれているのが、夏の衆参ダブル
選挙だ。一種の大ばくちだが、安倍は度胸があるからやりかねない。ダブ
ルについて安倍は「私自身は全くの白紙だ。頭の片隅にもない」と完全否定
している。しかし昔から解散と公定歩合に関しては首相の嘘が許されるこ
とになっている。元首相野田佳彦も「私も総理大臣になったときに大先輩
たちから、解散と公定歩合はウソをついてもよいと、言われ続けた。

そうはいっても、ウソをついてよいテーマが特定分野にだけあっていいと
は思えなかった。だから、(2012年に)『近いうちに解散』と言った後
は、葛藤した。今の安倍(晋三)総理がどう考えているかはわからない
が、人それぞれだと思う」と述べている。

やるかどうかは別として、今後安倍が「解散は考えていない」と発言した
ら、やる可能性があるのだなと疑った方がよい。首相が解散で嘘をついて
良いのなら、メディアも解散時期については独断と当てずっぽうが許され
ることになる。もっとも昔民放記者で、ことあるごとに「解散だ〜」と叫
びまくっているのがいて「解散小僧」と命名されたことがあったが、解散
判断には政治記者としての判断の蓄積と洞察力が不可欠であり、解散小僧
だけはいただけない。しかし、夏以降は何があってもおかしくない“危険
水域”に政局が突入すると心得た方がよいことは確かだ。



◆アメリカ人の中国旅行に「渡航注意」

宮崎 正弘


平成31年(2019年)1月6日(日曜日)通巻第5942号  

米国、アメリカ人の中国旅行に「渡航注意」を勧告
  22日からのスイス「ダボス会議」で王岐山がトランプと会談へ

1月22日からスイスのダボスで開催される「世界経済フォーラム」(いわ
ゆる「ダボス会議」)にトランプ大統領の出席が決まっているが、中国か
らは王岐山(国家副主席)がチームを率いて駆けつける。

「消防夫」の異名をもつ王岐山は、自らが関連する海航集団の財政スキャ
ンダルのためしばらく鳴りを潜めていたが、昨秋から発言を開始し、広州
の国際会議に登場、つづいて師走にはシンガポールの「ブルームバーグ経
済フォーラム」に登壇し、「米中摩擦はゼロ・サムゲームではない」と発
言を繰り出すようになった。

ダボスで王岐山はトランプと会談し、差し迫った3月1日締め切りの猶予
期限前に、米中貿易摩擦の解決案を最終的に提示すると観測されている。
 しかし新年早々に中国中央銀行が22兆円もの流動性発動をアナウンスし
たため、人民元下落が予測され、その下落率によっては高関税分を相殺す
る効果がある。投資家は人民元を売ってもドルが買えないため、日本円と
金へポジションを移行している。

一方、カナダで拘束されているファーウェイの孟晩舟CFOの裁判が2月
6日から開始される。中国は無言の圧力をかけ、既に13人のカナダ人を拘
束した。

米国籍の中国滞在者にも、この圧力が及んでおり、拘束はされていないが
数名が二重国籍を理由に出国禁止処分となって米国へ帰国できず、ジョ
ン・ボルトン補佐官はツィッターで、早く帰国させるべきだとのメッセー
ジを発進している。

米国当局はアメリカのパスポートを持つ国民に対して「中国への渡航注
意」を警告した。
       
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読者の声(1) どくしゃのこえ  READERS‘OPINIONS
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(読者の声1)貴誌の3日付でしたか、皇居一般参賀で宮崎さんも2時間
半並ばれたと書かれていましたが、小生は5時間でした。

それも正門の閉鎖時間が延び、さらには天皇ご一家のお出ましが、最後に
陛下の希望によって、午後4時にも行われました。

 メディアはこのことを伝えていません。あの寒い中に五時間並んでも誰
も帰る人はいませんでした。(MA生、千葉)



  ♪
(読者の声2)弐ヶ月ほどツンドク状態だったのですが、貴著『AI管理
社会・中国の恐怖』(PHP新書)を時間をかけて読みました。

いやはや、びっくりすることばかり、北朝鮮のハッカーがアジアや中東の
銀行にウィルスを侵入させ、すでに数十億円引き出したとか、ホテルの顧
客リストから米国連邦政府職員のリストまで中国が盗み出したとかの事件
が連続することは新聞で知っていても、その背後に中国の一貫した国家戦
略があることを、貴著は先駆的に啓蒙的に叙述されていて、非常に参考に
なりました。

会社の同僚にも回覧します。重要な本だと思います。(HI生、茨城)


(宮崎正弘のコメント)ゆうちょ銀行のATMが4日から5日早朝に掛け
て停まりました。米国のマリオット・ホテルは3億8300万人分の個人情報
が盗まれたと発表しています(当初5億人の被害を下方修正)。

 小生、海外ではときおりマリオットならびに系列のウェスチン、シェラ
トンに宿まることがあるので、ひょっとしたらパスポート番号が盗まれた
のか気がかりです。

 米国は中国の技術窃取阻止のため超党派議員が「枢要技術安全室」をホ
ワイトハウス内に設置する法案を提出しています。日本は、この対策でも
周回遅れ(それも五周ほど遅れています)。
      (読者欄は下段につづきます)
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1839回】           
 ――「只敗殘と、荒涼と、そして寂寞との空氣に満たされて居る」――諸橋
(12)
諸橋徹次『遊支雜筆』(目?書店 昭和13年)

     △
 諸橋やら宮崎滔天の指摘を素直に受け取るなら、とてもじゃないが「同
文同種」などというインチキが罷り通るわけはないのだが、それが声高に
叫ばれしまった。堪え性のない日本人の弱点を見透かされた、ということ
なのか。

 諸橋は「曾て私自身が交際を得た學者の三樣の死」を示しながら、思想
方面に於いても「皆己がじし自分の立場を取り得るといふ一つの幅の廣
さ」を語ろうとする。

 1人は「湖南の學者葉?輝」で、「民國革命が始まつて間もなく、彼は
舊思想の持ち主であるといふ單純な理由を以て?殺され、財産まで没収」
されてしまう。1人は「北京大學の?授李大?」で、北京のロシア大使館
において「新しき共産黨の持ち主であるといふ意味で殺されました」。残
る1人は「篤実の樸學者王國維といふ人」で、「時勢の日に日に非なる實
情に憤慨して、遂に北京西城の最も景色の好い萬壽山の麓の昆明池の中に
身を投じて死んだのであります」。

 つまり1人は「古き思想の持主なるが故に殺され」、1人は「新しき思想
の持主なるがゆえに殺され」、1人は「時勢と相容れざるの故に自ら身を
投じて殺して居る」――この3例から「支那民族の思想の幅の狹さ」を考え
ることは「恐らくは誤」だ。じつは「支那の人々は實は有ゆる思想に對し
て、之に順應し、又之に耐へ忍ぶ幅の廣さを持つて居る」という。

 およそ人間が思いつく思想のほとんどが萌芽を見た春秋戦国時代以来、
「混亂せる思想の中に在つて、支那民族は平然と能く之にへ忍んで來
た」。「(思想の)新しきも古きも打つて一丸となして、支那民族は左程
多くの思想混亂を來たして居らない」。一般には赤化が言われるが、「或
は一時政策的に或は方便的に赤化の形を取ることはあるかも知れませぬ
が、安價に之に陶醉するといふが如きことは、恐らくは無からうと考え
る」。「此の點は洵に不徹底な所ではあるが、一面又支那の民族の強い所
であり、不死身であると云はるゝ所以でもある」。

 諸橋が「赤化の形を取ることはあるかも知れませぬが、安價に之に陶醉
するといふが如きことは、恐らくは無からうと考え」た記したのは、満州
事変が勃発する1年前の昭和5(1930)年のこと。

それから5年が過ぎた1935年、林語堂は「長期間にわたる苦しい思索、読
書、内省の結果」えられた「自己の観点を披瀝」し、「たとえば共産主義
が支配するような大激変が起ころうとも、社会的、没個性、厳格といった
外観を持つ共産主義が古い伝統を打ち砕くというよりは、むしろ個性、寛
容、常識といった古い伝統が共産主義を粉砕し、その内実を骨抜きにし共
産主義と見分けのつかぬほどまでに変質させてしまうであろう。そうなる
ことは間違いない」(『MY COUNTRY AND MY PEOPLE』=『中国=文化と思
想』講談社学術文庫 1999年)と記した。この当時、共産党は?介石軍の
追撃から逃れ、やっと延安にたどり着いたのであった。

 それから14年が過ぎた1949年、中華人民共和国という共産党独裁国家が
誕生する。
1950年代に入る毛沢東の独裁化が進み、1958年の大躍進政策強行で、それ
は頂点に達する。一時後退した毛沢東の権力も1966年に始まった文化大革
命によって一層の強化をみるものの、1978年には事実上否定され、?小平
は新たな国是(金儲け第一主義)を掲げて国民を鼓舞する。
「貧乏は社会主義ではない。儲かる者は貪欲に儲けろ」。そして今や一帯
一路に「中国の夢」である。

 20世紀半ば以降、あの国は「方便的に赤化の形を取」って歩んだ。それ
とも共産主義の「内実を骨抜きにし」てしまったのか・・・
いったい中国共産党って何なんデスカ?
    

◆韓国大法院判決、恐るべき反日の理屈

櫻井よしこ


韓国大法院(最高裁判所)が10月末及び11月末に下した朝鮮人戦時労働者
問題に関する判決書にはとんでもないことが書かれている。

「とんでもない」という意味は、単に日韓両政府が1965年に合意した日韓
請求権協定に違反するというだけではない。それよりもはるかに深刻で国
際法軽視の対日非難であるという意味だ。

12月7日、インターネット配信の「言論テレビ」で女性の論客5人と男性の
論客1人の構成でこの問題を中心に2時間にわたって論じた。男性ゲスト
は、いま朝鮮問題で引っ張り凧の西岡力氏だ。

韓国大法院の判決を貫く主張は「日本統治不法論」である。日本の有志の
弁護士が仮訳したものを参考に、私たちが問題にした韓国最高裁判決の最
重要のくだりは以下の部分だ。

「原告らの損害賠償請求権は、日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地
支配および侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前
提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権(である)とい
う点を明確にしておかなければならない」

判決は続いてこう述べる。

「原告らは被告を相手に未支給賃金や補償金を請求しているのではなく、
上記のような慰謝料を請求しているのである」

判決の他の部分には、原告らは日本で同様の裁判を起こして敗訴している
が、日本の司法判決は受け入れられない、その理由は日本の判決が「日本
の朝鮮半島と韓国人に対する植民地支配が合法であるという規範的認識を
前提に」しているからだと書かれている。

そのうえで、「日本での判決をそのまま承認するのは、大韓民国の善良な
風俗や、その他の社会秩序に違反する」というのだ。

頑として譲らないこと

日本の朝鮮統治は不法だと決めつけ、日本側の主張は全く受け入れないと
いうわけだ。西岡氏が指摘した。

「新日鐵住金を訴えた原告4人は募集に応じて普通に日本に来て、普通に
企業で働いて、給料を貰った。未払い給料があったとしても、それらを清
算する機会は戦後2回もあった。彼らは無事に帰国し、怪我もしていな
い。だから韓国政府も彼らには特別な支払いはしていません。しかし、日
本統治が不法だったからという理屈をいま持ち出して、慰謝料が発生する
と言っているのです」

慰謝料という理屈を適用すれば、およそすべてが対象となる。日本統治下
で日本語を習わせられた、神社を参拝させられた、姓名を変えさせられ
た、精神的に苦しんだなど、何でも慰謝料請求の根拠とされるだろう。

このような要求を日本につきつける土台となる論理が日本統治不法論だ。
日韓基本条約と日韓請求権協定の締結までに日韓両国政府は延々14年間も
交渉を重ねた。当時も日本の韓国統治は合法だったか否かが激しく議論さ
れたのは確かだ。互いに折り合えず交渉は長引いた。そこで双方が智恵を
働かせた。

日韓基本条約第2条には「1910年8月22日以前に大日本帝国と大韓帝国との
間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認さ
れる」とある。

1910(明治43)年8月22日は韓国併合条約の調印の日である。日本の韓国
併合はそれ以前の種々の条約、協定の積み重ねで、米英露など諸外国も認
めるものだった。従ってそれらはすべて国際法に適い合法だとする日本の
主張は当然だ。だが、日韓の外交関係を進めるために両政府は以下の案を
生み出した。

前述のように、1910年8月22日以前(中略)の条約及び協定は、「もはや
無効」としたのだ。

西岡氏が説明した。

「日本側にとっては、韓国は1948年に独立した、もはや日本は韓国を併合
していない、だから韓国併合の根拠だった1910年8月22日以前の条約も協
定も、もはや無効になった、それ以前は合法で有効だったという意味で
す。他方韓国側は、『もはや』は副詞みたいなもので関係がない、だか
ら、そんな言葉は無視して、当初から無効だったと解釈したのです」

両者の解釈が異なるときは、両国が合意した英文によって解釈することに
なっている。英文は日本の解釈が正しいことを示している。

韓国側の主張は不当極まるが、不当判決が出されたいま、65年の協定で請
求権問題は「完全かつ最終的に解決された」と言うだけでは、日本側は闘
いきれないかもしれない。次なる一手も二手も準備する必要がある。

まず、法律上の問題だ。キモは頑として譲らないことだ。韓国弁護団は強
気で、12月4日、被告の新日鐵住金本社を訪れた。新日鐵住金側は韓国弁
護団を全く相手にしなかったが、彼らは要請書を置いて帰った。損害賠償
の履行方法や、賠償金の伝達方式を含む被害者の権利回復の措置につい
て、今月24日午後までの返答を求める内容だった。

法的闘争の準備を

日本側が応じなければ、彼らは日本企業の資産差し押さえなどに着手する
可能性がある。日本側も報復の差し押さえ措置など法的闘争の準備を万全
にすることだ。

もうひとつは国際世論を意識した歴史戦への備えだ。日本統治の合法性と
は別に、日本が朝鮮人労働者をどのように処遇していたかを事実に基づい
て内外に知らせ、慰謝料要求などは筋違いであり不条理だと納得してもら
えるだけの情報を十分に伝えておくことが、この種の歴史戦ではとても大
事である。その点において日本側は非常に手立てが遅れていると、西岡氏
は懸念する。

「現在の外交官は、当時の労働条件や賃金の支払い状況などについてよく
知りません。対照的に反日勢力の側は、実は彼らは日本人なのですが、80
年代から日本統治不法論を考え、その論理を磨き上げてきました。事実関
係については、すべてを反日的視点から資料収集しています。これら反日
日本人が韓国側に論理と資料を提供しているのです。彼らの資料は、私た
ちの側が集めた資料や研究の10倍はあると言っても過言ではありません。
彼らの反日闘争は私たちよりずっと早くから準備されていたのです」

それでも日本の企業には、どれだけの賃金を朝鮮の誰々に支払った、朝鮮
の誰々はどの募集に応じて、どのような待遇を受けたといった資料が豊富
に残っている。事実こそ最も強い説得力を持つはずだ。こうした資料を早
く、全面的に公開すべきだ。

これから短期間に、反日学者を除く、少数ではあってもまともな学者や研
究者が、企業及び政府とも協力し、日本統治下の朝鮮人の扱いについての
実態を最速で明らかにし、韓国司法の不条理を訴えていかなければならない。

『週刊新潮』 2018年12月20日号 日本ルネッサンス 第832回