2019年01月08日

◆ディスチャージナースってご存知?

              寺内孝子  看護師


皆さんは「ディスチャージナース」、あるいは「ディスチャージコーディネータ」という名前を聞いた事があるでしょうか?「ディスチャージナース」は、日本語では「退院調整看護師」と言われています。


「退院調整」とは、入院初期から患者様が生活する最適な場所を見当し、退院後に起こりうるであろう問題を予測しながら、それをおこさないように予防的にアセスメントし、専門家とタイアップしながら協働して問題を解決することです。その仕事を担っているのが「退院調整看護師」です。
 

では、何故そのような役目を担う看護師が必要なのでしょうか?
日本の医療環境はここ数年のうちに急激に変化しています。2000年から病院は急性期医療・長期療養・回復期リハビリテーションというように機能分化されています。

今までは、よくなるまで同じ病院でみていくという姿勢でしたが、機能分化されてからは、一般病院で治療が終わり、自宅での療養ができないなら療養病院へ、リハビリが必要なら回復期病院へ転院するという形に機能分化しています。本年4月から介護保険もさらに改定され在宅療養に重点をおくようになりました。
 

しかし、少子高齢化や核家族化が進み、高齢者が高齢者を介護する老老介護や1人暮らしの方も増えています。また、生活保護の人も増加しているのが現状です。このように在宅で療養するにも継続医療や継続看護が必要など多くの問題が残されています。
 

そこで、そのような問題を抱えてらっしゃる患者様やご家族の方の問題を解決し、療養の場が変わっても良質なケアを患者様に継続して提供でき、退院後に必要な社会資源が受けられるようにその調整をするのが、「退院調整看護師」の役割という訳です。

 昨年、その仕事を担う看護師の研修会に参加しましたが、私が従事する病院のように、「退院調整看護師」が専任で仕事をしている病院は少ないようです。退院調整看護師がおらず、その調整を病棟の看護師長や事務の方が行っていたり、居ても他の仕事と兼任しているところが多いようでした。
 

私の病院には退院調整看護師が2名おり、同じ部署にソーシャルワーカー2名と精神保健福祉士1名と相互に相談しながらより安心して患者様・ご家族の方に退院後の生活が送れるよう支援しています。

前述のように、療養の場が変わっても良質なケアを患者様に継続して提供できることを中心に調整をするのが、「退院調整看護師」の役割です。医療の現場は今、大きく変ろうとしています。
           (大阪厚生年金病院 )

2019年01月07日

◆中国が人口減少に直面

宮崎 正弘


平成31年(2019年)1月5日(土曜日)弐 通巻第5941号  

過去70年間で初めて、中国が人口減少に直面
 「一人っ子政策」をやめたはずなのに新生児は増えず

少子高齢化では「最先進国」だった筈の日本より凄い。
 
2015年人口統計速報で、中国の人口が250万人も減っていたことが分かった。
 
同年に死亡した人が1158万人で、新生児より127万人多く、事前予測では
79万人が増える筈だったが、実際には250万人も減少していた。

とくに減少が著しいのは山東省青島市で、集団疎開でもあったかのように
人口減は、じつに21%だった。山東省は歴史的にみてもDNAから見て
も、人口の流動性が高く、また軍人が多いので、移動を躊躇しない。日本
が建国した満州時代には山東省か1千万人が入植したほどだった。

それはともかく1979年に一人っ子政策が導入されて以来、それでも中国の
人口は増え続けた。ところが経済発展とともに、中国人の人生観、価値観
が一変した。

農村では依然として女性の新生児誕生が喜ばれず、男性人口が増え続けた
ことも手伝ったが、一人っ子は甘やかされ、大学へなんとしても入学させ
ようと両親、祖父母らが躍起となる。その結果、2018年の大学新卒が860
万人!

新世代の価値観は結婚しない。しても子供を作らない。日本と変わらない
意識だが、拝金主義で、輪廻転生を信じない中国人は一代限りで人生を愉
しめば良いというテツガクが流行する。生涯独身は3700万人!

一般的にも分娩費ばかりか幼稚園、小学、中学と教育費が嵩む一方であ
り、くわえて住宅ローンに追われる人々が多い。かくして中国は過去70年
間で初めて、中国人口減少という先進国並みの難題に直面した。
        
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者
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(読者の声1)新年1月4日の「マット安川のずばり勝負」。番組冒頭の
ゲスト紹介で、最近は宮崎正弘氏のスケジュールを押さえるのもたいへ
ん、先物ではないけれど早めにスケジュールを押さえるようにしていると
いうあたり、時代がやっと宮崎氏に追いついてきた感があります。

年始相場、中国が風邪をひくと日本も影響を受けるという指摘。中国関連
銘柄は要注意です。

パキスタンは破綻寸前、サウジとUAEがなんとか支えている。北京語で
統一された中国では広東語を復活させようとする地域ナショナリズムが台
頭している。アメリカは中国におけるキリスト教弾圧とウイグルのイスラ
ム教徒弾圧をペンス副大統領が問題視、ハリー・ハリス駐韓アメリカ大使
の「米韓同盟を当然視するな」という発言に無反応な韓国。ハリス大使は
P3C哨戒機のパイロットだった人だけにP1哨戒機へのレーダー照射問
題で韓国側の主張に理解を示すことは100%無いでしょう。

中国で拘束されたカナダ人や日本人は親中派、中帰連(中国帰還者連絡
会:中国で捕虜になり洗脳された元日本軍人の団体。日本軍が中国で残虐
行為を行ったと主張する共産党の宣伝部隊)のように完全に洗脳されて帰
されるかもしれない。

習近平解任はありうる。フルシチョフ解任と同様か。

ブルネイはイギリスの利権、中国に引き寄せられるのは防ぎたい、という
あたり中国包囲網に絡んでいないと米中覇権争奪後の利権に与れない英国
の思惑が見え隠れ。

米中貿易戦争は損得勘定よりも安全保障が大事、というのは日米戦争前に
似ています。

昭和15年(1940年)当時、多くの人が日米の貿易額は米中の貿易額をはるか
に凌ぎ、経済関係を強化すれば戦争などありえないといっていました。
ところが政治は経済に優先します。1930年代のアメリカ、ドイツや日本に
投資し自動車工場まで建設していました。大戦直前にフォードは横浜に工
場用地を確保し工場建設寸前。その用地はのちにマツダの研究所になりま
す。支那事変当時の日本軍はフォードやGMのトラックで大陸を快進撃、
そんな時に陸軍は国産車の開発を推進したのが現在の日本の自動車工業の
元になっています。

年末に読んだ本に「朝鮮人徴用工の手記」があります。著者は昭和19年
(1944年)12月に徴用され広島へ。東洋工業(マツダ)で小銃の生産に従事。
工場はうら若き女性ばかりで食事も十分。朝鮮に妻子がありながら日本女
性にモテモテの著者、ソウルのセメント工場勤務時代も日本女性にモテて
いたという自慢話がやたら出てきます。

昭和20年の3月に徴用工の指導者養成の名目で奈良の研修所へ派遣され
る。食事は乏しく、ゲートルを捲いては整列し駆け足など実務とは関係の
ない精神鍛錬ばかりの毎日。1ヶ月の研修の最後に日本人所長は全員を集
めて訓示。内容は日本は戦争に負けることとその負ける理由を言う。
 日本の工業は工作機械がみなアメリカからの輸入品。国産品よりも安く
て高性能だから誰も国産品を使おうとしない。

いざ戦争が始まると部品の輸入も途絶え修理もできず稼働率はどんどん落
ちていく。まともに機械を動かせずにまともな武器を生産できるはずがな
い。また日本人の舶来信仰の一例として精工舎(セイコー)の時計がでてき
ます。

セイコーの時計は10円以下の安物ばかり。100円の高級時計を作り百貨店
に置いてもらっても全く売れない。

ところが名前をスイス風にして値段を200円にしたらたちまち売れたとい
う。資源だけではなく国産技術軽視のツケが敗戦につながるという話です。

陸軍の戦闘機でドイツ製の液冷エンジンをライセンス生産した三式戦闘機
「飛燕」も、最後はエンジンのクランクシャフトすら満足に作れず、結局
は空冷星型エンジンに換装した五式戦闘機になりました。

川西航空機(新明和工業)が製造した海軍の戦闘機「紫電改」など、アメリ
カの技術者が戦後に川西を訪れ、これほどの素晴らしい戦闘機を作りなが
らなぜ日本は戦争であれほどひどい負け方をしたのか疑問に思った、とい
う話もあります。

資源不足に加え、基本的な工業技術を軽視していた戦前の日本に対する反
省が戦後の高度経済成長を実現しました。

次世代戦闘機 F-35 の大量導入はアメリカからの輸入で決着。その次の世
代の F-3 は国産でほぼ決まり。ロシアはGDPでは韓国並みまで落ちぶ
れましたが軍事力は侮れません。資源はあるし軍事技術は長年の蓄積で中
国など足元にも及ばない。小銃のカラシニコフなどおばちゃんが組み立て
ているけど高性能。国防にかかわる技術は自主開発こそがあるべき姿です
ね。(PB生、千葉)


(宮崎正弘のコメント)4日のラジオ番組で小生が話した要点を、これほ
ど要領よく適格にまとめていただいて感謝に堪えません。ラジオの番組担
当者の話では、あの番組を音のユーチューブのようなところに掲げてくれ
る人がいて、再生回数が40万回とか。

世界中で聴けるようですね。ラジオ日本は関東以遠の地方で聴かれない人
が多いのですが、この問題が現代のネットの発達で解決されたというとこ
ろでしょうか。ところで次回出演は2月1日です。


◆横暴中国に抗議し、日本人を取り戻せ

櫻井よしこ


中国共産党機関紙「人民日報」系で、国際版もある「環球時報」のもの凄
い社説から、中国の正体が見える。

12月1日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の副会長、孟
晩舟(もうばんしゅう)氏が米国の要請によってカナダで身柄を拘束され
た。11日に保釈されたが、現在も24時間監視態勢下に置かれ、カナダから
出国もできない。米国への引き渡し手続きはこれからだろうが、中国は政
府を挙げて引き渡し阻止に動いている。

「環球時報」は孟氏逮捕当初から非常に強い関心をもって何本もの社説を
掲げているが、直近の12月15日のそれは中国得意の政治的恫喝の典型だった。

一連の主張から読みとれる中国の特性こそ、彼らが世界で力を確立すれば
するほど国際社会に浸透させようとする価値観であろう。私たちはいま、
その正体をじっくりと見つめる好機を与えられている。その第一の点が、
中国の司法は米国やカナダの司法とは異なるという主張だ。

たとえば環球時報はこう書いた。

「中国がカナダ人二人を拘束したことを、米加両国はどういう理由で違法
だと言えるのか。結局我々の司法は全く異なる。米国やカナダで違法だか
らといって中国でもそうだとは言えないだろう」

続いて、環球時報は次のように警告する。

「司法権は一国の主権の重要な構成要素だ。中国にいるすべての外国籍の
者は、その母国の法律によって守ってもらえるなどという幻想を抱くかわ
りに、中国の法律に従わなければならない」

中国の体制は外の世界とは異なるのだ、米国流もカナダ流も欧州流も日本
流も、中国には一切通じない。そのことを外国人は認識せよ、というこの
強い自我意識は、昨年10月の共産党大会で、中国が世界最強の国になる
2049年には、中華民族が世界の諸民族の中にそびえ立ち、中国共産党の教
えで世界を指導するとしたあの宣言に通ずる考えだ。それを彼らは「人類
運命共同体」と表現したが、その本心は中国主導の世界の確立ということだ。

21世紀の大中華思想の恐さ

12月13日の社説は、孟氏が拘束されたあと、まるで報復のような形でカナ
ダ人二人が拘束された件について、こんな主張も展開する。

「中国で拘束されたカナダ市民二人に関しては保釈請求の審理を開催して
やるなど、開かれた透明な司法手続きが行われるべきだと米加両国は考え
ている。中国では法体系も情報発信の在り方も異なる。そのようなことは
できないと、彼らはよく知っているはずだ。従って(米加両国と同件につ
いて)意思の疎通をはかるのは困難だ」

なるほど、だから彼らは、南シナ海の島々の領有権問題でハーグの常設仲
裁裁判所が下した、フィリピンの訴えを全面的に支持し中国の領有権を全
否定した判決を「紙クズ」だと言って無視したのであろう。

そもそも司法制度が異なるのだから、米国ともカナダとも、さらに国際社
会とも解り合うことは不可能だと言っているのである。そのうえで彼らは
要求する。

「カナダ及び米国の外相は中国のこうした原則を十分に弁(わきま)えてお
くべきだ」(15日社説)

彼らの中・長期的目標である21世紀の大中華思想の恐さを肝に銘じておこ
う。威嚇したかと思えば、「環球時報」は同じ社説で恥ずかし気もなく、
こうも言う。

「異なる国々の間の意思の疎通は相互尊重に基づくべし」

全く同感だ。そうしてほしいが、中国には相互尊重の考えが欠落していて
自国尊重しかない。だから結局最後は予想どおり恫喝で終わる。

「カナダは米国の支持があるからといって何かが変わると思ってはならな
い。台湾問題での火遊びは北京には何の圧力にもならない。オタワよ、中
国の手には何枚ものカードがあることを覚えておけ。北京の意向に逆らえ
ばいいことはないぞ。米中問題には距離を置くのが一番だと弁えろ」

人口約3600万人、GDP1兆6530億ドル(約187兆円)と、中国と比べれば
小振りとはいえ、カナダはG7の一員だ。立派な民主主義の国をこんなふ
うに脅すのである。裏を返せば、中国は死に物狂いだということだ。

なんと言ってもファーウェイは中国を代表するハイテク企業だ。「産経新
聞」の報道によると、世界170か国・地域で事業を展開中だが、現在も非
上場を貫いている。創業者は人民解放軍出身の元軍人で、74歳の任正非
(にんせいひ)氏だ。人民解放軍、さらには共産党と一体化している人物
だ。その娘が孟氏で現在46歳、事実上、任氏の後継者と見られている。

世界一の国にはなれない

ファーウェイをはじめ、中国の通信大手企業が世界に張り巡らせつつある
のが、第5世代の移動通信システム(5G)だ。中国はすでに5Gの基地局
を世界各地に張り巡らし、その数は米国のそれの10倍にもなるとの数字も
ある。米国は必死に巻き返しており、欧州諸国も日本も、米国と共に
ファーウェイ及びもうひとつの中国のハイテク通信企業、中興通訊
(ZTE)の排除に乗り出した。国や社会の在り方、自由や民主主義の擁
護を考えれば、当然だろう。

10月4日に米国のペンス副大統領が凄まじい演説をした。その直後に共和
党上院議員のマルコ・ルビオ氏らが民主・共和両党の合意の下で対中非難
の声明を出した。その中で中国の不公正、非人道的な体質を非難し、中国
社会はジョージ・オーウェルの小説「1984」のようだと論難した。米中の
戦いは単なる貿易戦争ではなく、次の時代の世界の在り方をめぐる戦い
だ。米国は行政府も立法府も、「1984」のような国になり果てようとする
中国の意図を挫きたいのである。

5Gのハイテク通信で世界を制覇すべく、中国共産党はファーウェイや
ZTEを国ぐるみで後押しするが、ハイテク通信で世界の最前線を走った
としても、世界一の国にはなれないだろう。彼らはハイテク通信を何のた
めに利用するのか。自国民を支配するのと同様に世界を支配する道具にす
るのではないか。ハイテク通信で自由な情報の流れを実現するわけでもな
い。自由な発想も創造も許さない。その反対に、21世紀の今日、いわば終
身皇帝を誕生させるなどバカバカしい所業を許している。

人間を抑圧する中国は、米国や日本、欧州諸国のように人間を羽ばたかせ
る陣営には金輪際、勝てない。米中のせめぎ合いは日中の戦いでもある。
そのことを念頭に、安倍晋三首相も菅義偉官房長官ももっと発言してよい
のである。中国にスパイ容疑で拘束され、情報開示もないまま、有罪判決
を下されていく日本人8人の即時釈放を要求すべきだ。中国の蛮行を許し
てはならない。大きな声で抗議すべきなのだ。

『週刊新潮』 2018年12月27日号 日本ルネッサンス 第833回

◆何でも民間に疑問

眞邊 峰松


私のマスコミに対する不信感・大衆迎合体質への嫌悪感が一層増大してきた。 

果たして、国家の将来を考えるべき時期に、本筋の議論と離れ、質的には枝葉末節の問題に国民を巻き込んで彼らの主張が、“社会の木鐸”、“オピニオンリーダー”の役割というのは、どこに存在するのだろうか。

私も、必ずしもマスコミ人の全てが、課題を単にワイドショー的に取り上げてばかりいるとまでは言わないが、もう少し冷静・客観的に問題を整理し報道するべきだと考える。


ところで、「行為する者にとって、行為せざる者は最も苛酷な批判者である」とは、ある書物の言葉。 同書でこんな話が続く。


「ナポレオンの脱出記」を扱った当時の新聞記事である。幽閉されていたナポレオンがエルバ島を脱出した。兵を集めて、パリへ進撃する。


パリの新聞がこれを報道する。その記事の中で、ナポレオンに対する形容詞が、時々刻々に変化していく。 最初は“皇位簒奪者”。 次いで“反乱軍”〜“叛将”〜“ナポレオン”、 やがて“祖国の英雄”。 

そして、ナポレオンがパリに入城した時には、一斉に“皇帝万歳”の記事で埋められた。オポチュ二ズムとセンセーショナリズムのマスコミの実態が浮き彫りにされている」。 まさに、その通りだという感がする。


少々議論が飛躍するが、私は基本的に今の“何でも民間”の風潮に反対だ。
私自身の体験から言っても、国の役人の省益あって国益なし、自分たちの徹底的な権益擁護には、実は本当に癖々した。 まさに国を誤る輩だ、何とかならんのか、という気分にもなった。


しかし、国家公務員というに相応しい立派な人士をも身近に知る私としては、少々誤弊のある言い方かも知れないが、敢えて言えば、こと“志”という点においては、真に心ある役人に比し得る民間人は、そう多くなかろうとも思う。
 

これも個人資質・能力というよりは、やはり、退職までの30年を超える永年の職務経験、職責の持つ私自身に染み込んだ体質的なもの、職業の匂いのようなものかも知れない。
  

私には、特にかっての余裕ある民間経営の時代ならともかく、現下の利潤一点張り、効率一点張りの時代に、現役の企業人で、常日頃から“公益とはなんぞや”の視点から物事を考察したことがある人物が、そう数多いとはとても思えない。


とりわけ、最近の風潮となっている企業利益の増加のみに邁進し、その過程で中高年の自殺者の激増など、社会不安を増幅してきたリストラを闇雲に推進してきた企業経営者を見るにつけ、その観を否めない。 


このような中で、果たして、現在のマスコミの論調のように“何でも民間人登用”“何でも民間感覚“ということが果たして正しいのだろうか。                                      (了)

2019年01月06日

◆中国中央銀行、低迷経済立て直しに

宮崎 正弘


平成31年(2019年)1月5日(土曜日)通巻第5940号  

(速報)
  中国中央銀行、低迷経済立て直しに22兆円を市場へ

1月4日、中国人民銀行(中央銀行)は市場流動性を高めるために22兆円
を融資目的でぶち込むと発表した。

銀行の預金準備率を1%引き下げ、市場に流動性をもたらす。

1月15日にまず0・5%切り下げ、ついで1月25日にさらに0・5%を追
加、合計1%の準備率引き下げは、現在の為替レートで2100億ドル(邦貨
換算22兆円強)となる。

おもに中小企業の資金繰りを円滑化し、停滞する経済状況の改善を志向す
るとして李克強首相が中央銀行に要請、その一時間後に決定がなされた。
 
他方、流動性の拡大は人民元の為替レートを否応なく切り下げることになる。

       
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
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 激戦地を命がけの航行、ときにのんびりとビール
  戦地の現場で兵士等はいかなる戦闘をしていたかを活写

  ♪
平間源之助著、平間洋一編『軍艦「鳥海」航海記』(イカロス出版)
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平間源之助・兵曹長の航海日誌ならびに戦闘記録で、昭和16年から同17年
分を収録している。貴重な歴史証言でもある。

軍艦「鳥海」はガダルカナル、ラバウルなどソロモン海域の激戦区に派遣
され、その任務を果たした。日本側には夥しい戦死者が南太平洋戦域でで
た。毎日のように葬儀が行われた。

「鳥島」がラバウルへ寄港すること十数回に及ぶ。

♪「さらばラバウルよ、またくるまでは、暫し別れの涙がにじむ」と軍歌
に唱われた。後に漫画家として世を席巻した水木しげる氏も、ラバウルで
片手を失った。

鳥海は巡洋艦、第8艦隊の旗艦としてガダルカナル、ニューギニア争奪戦
でも戦った。

編者の平間洋一氏の父が原作者であり、父親が生まれ、育ったのは宮城県
の片田舎。庄屋だった。

大正デモクラシーの退廃文化が去ると、日本には大不況が訪れ、女性の身
売りばかりか、男も奉公人として売られた時代、そのうえ反軍思想が蔓延
していたという。

さて編者の平間洋一氏は名作『イズムから見た日本の戦争』『日露戦争が
変えた世界史』『日英同盟』などを著し、斯界では有名な存在だが、海将
補を経て防衛大学教授を務めた。

本書はその平間氏の父親の従軍航海記である。

たとえば昭和17年8月7日の項目を読む。こう書かれている。

「昨日敵の偵察を受け、本日空爆の算大なるにつき、16:00出港を04:15出
港す。04:30頃、敵機動部隊二十余隻、空母1,巡5,駆15,ソロモン群
島に現るとの報ありて、アドミラルティ進出を取りやめラバウルに急航す」

8月8日 ツラギ奇襲す

「04:00索敵機発進。全員死出の服装を為す。真新しい軍服に着替う。敵
を見ざればツラギ泊地に殺到せむとする長官の決意なり。早めに朝食に就
く。覚悟を定む」

8月9日。「ソロモン海戦。英米大巡5隻撃沈。3隻大破。駆逐艦四隻撃
沈。計12隻。04:00 飛行機発進の敵を撃滅すべく、快速力にてツラギ泊
地に向かう。22:30総員戦闘配置に就く。(中略)左舷6000に米大巡を認
む。右に戦艦在り。これに魚雷攻撃撃沈。左舷に大巡4隻、片端より砲
撃、撃沈して進む。一発の抵抗すらなし」

しかしガダルカナル奪回は敵の制空権が確保されていたため輸送が困窮を
極め、戦局は著しく不利となった。

「8月28日、給油艦の運航おもうようにならず味方海上部隊ほとんど燃料
不足にて続々入泊し来る。(中略)この時赤城等ミッドウェイにて失いし
空母あらば甚大なる戦果を得しことと思う。重々残念なり。なんとしても
空軍絶対的勝利なり。制空権なくして制海権なし」

翌日からラバウル空襲、戦死夥しく葬送に追われる。

「8月31日。ラビ陸戦隊苦戦 敵大型空母一撃沈。イ26号 06:45。(日
本では)日一日と秋めいて山の草木も万色に染なし。果物穀物すべてが豊
作を告ぐるの秋。ここラボール(ラバウル)は日一日と暑さを増し、一日
中汗だくとなる。(中略)モレスビー攻略も今年中かかるのじゃないかと
懸念さる」

ガダルカナルの玉砕、ソロモン沖海戦、そしてラバウスの攻防、あの勇猛
果敢な戦いの日々を日記は淡々と綴っていて、戦局の推移、心理的変化、
大本営の失策などが、行間言に埋め込まれている。

「南の島に雪が降る」という映画を遠き昔、評者(宮崎)も見たことがあ
るが、これは加東大介自身がニューギニアのマノクワリでの戦争経験談を
書いた実録で、多くの人を泣かせた。

1945年には水島総監督で新作もつくられた。戦士達の日々、瞼に浮かべな
がら、戦地の苦労を思った。
  

◆韓国との情報戦に立ち遅れている日本

櫻井よしこ


「韓国との情報戦に立ち遅れている日本 手強い存在と心して戦うことが
必要だ」

12月4日、東京の日本外国特派員協会、通称外国人記者クラブで、「朝鮮
人戦時労働者」の裁判について、韓国側弁護団が会見した。

朝鮮人戦時労働者はこれまで「徴用工」と呼ばれてきた。しかし、戦時
中、日本に働きにきた朝鮮半島の人々の多くは民間企業の募集に応じた
人々で、必ずしも徴用された人々だけではない。安倍晋三首相も国会で述
べたように、新日鐵住金を訴え、判決が10月30日に下された裁判の原告4
人は全員、徴用工ではなかった。そのような事情から徴用工の代わりに
「朝鮮人戦時労働者」と呼ぶ。

会見した韓国人弁護士達は、韓国で新日鐵住金を訴えた裁判で原告の代理
人を務めた大弁護団の一部だ。会見に現れたのは金世恩(キム・セユ
ン)、林宰成(イム・ジェソン)両氏らである。両氏共に若く、韓国の法
務法人「ヘマル」に所属、或いは関係が近いと見られている。

彼らは会見当日、新日鐵住金本社に二度目の訪問を強行し、面会を断られ
ている。要請書を置いてきたそうだ。内容は韓国大法院(最高裁判所)の
判決に従って、朝鮮人戦時労働者に慰謝料を支払い、謝罪することが必要
で、いつ、どのような形で実施するか、12月24日午後5時までに回答せよ
というものだそうだ。

彼らは、さらなる訴訟を準備中で、新日鐵住金側が韓国側との協議に応じ
ない場合、差し押さえ手続きに入る予定だと明言した。

彼らはさらに、新日鐵住金が韓国で保有する資産、PNRという企業の株
式234万株は約110億ウォン(約11億円)に相当し、差し押さえの対象だと
語った。新日鐵住金保有の韓国における知的財産権は3000件余りで、こち
らも差し押さえの対象だという。

新日鐵住金側には一切妥協する気配はない。それで正しいのである。

韓国側の主張には、おかしな点が多い。そのひとつが朝鮮人を労働させた
のは国際労働機関(ILO)29号条約に反するという主張であるが、この
指摘は間違いだと言ってよいだろう。

29号条約は「処罰の脅威の下に強要される」労働を強制労働としており、
強制労働は時効のない犯罪である。ただ、「緊急の場合、即ち戦争、火
災、洪水、飢饉、地震……」などに対処する強制労働は例外として許容され
ている。

ILO専門委員会は朝鮮人戦時労働者問題に関して、救済策を講じよとい
う意見を日本に出してはいるが、その一方で、補償問題は日韓請求権協定
で全て解決済みだとする日本政府の主張は正しいと認めてもいる。

ILOの見解には微妙な矛盾が見てとれるが、これは近年の「個人を救済
する」思想を反映するものだ。

そこで重要になるのが、朝鮮人労働者への実際の待遇や労働条件は当時の
状況の中で受け入れられるものだったかどうかである。日本企業の資料や
当時の労働者の証言は、日本企業の待遇がきわめてまともだったことを示
している。だが、不足しているのが、そうした情報の発信と周知徹底である。

長崎県端島、通称「軍艦島」をテーマに韓国が作った映画は大嘘の満載
で、日本での労働はまるで地獄だったなどという酷い情報が世界に拡散さ
れている。この種の情報戦に日本は立ち遅れている。加えて懸念されるの
は相手の弁護団である。彼らは長年日本を標的にしてきた手強い存在である。

冒頭で触れた韓国の法務法人「ヘマル」の中心人物が、張完翼(チャン・
ワンイク)弁護士だ。氏は、慰安婦問題で日韓両政府を激しく攻撃するこ
とで知られる韓国挺身隊問題対策協議会の活動に1994年から参加、2000年
には、松井やより氏やVAWW−NETジャパンなどが主催した女性国際
戦犯法廷で韓国側検事役を務めた。同法廷は日本国天皇を裁き有罪を宣告
した。こういう人々が相手だ。心して戦うことが必要だ。

『週刊ダイヤモンド』 2018年12月22日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1261 

◆心筋梗塞は予知できる

石岡 荘十


まず、死因について。

私の父親も死因は「心不全」とされていたが、長い間、この死亡診断書に何の疑問も感じなかった。しかし、よく考えてみれば「心不全」というのは単に「心臓が動かなくなった」という意味であるから、病気の「結果」そのものであり、死のトリガー、「原因」ではない。

<最初は背中が痛いと言われたと報じられていた。亡くなった後では容易に心筋梗塞だったとは解らないのではないか。誰でも経験して学習し教訓に出来る病ではないので、発症した場合の対処は困難だろう>、これこそが「死因」となった心筋梗塞を疑わせる症状だ。

私も大動脈弁がうまく開閉しなくなり、10数年前人工の弁に置き換える手術を受けているが、そこに至る症状として<背中が痛い>を何年にもわたって、何度も経験している。

心臓の血流が途絶えると、背中が重苦しくなる。痛いと感じる人もいる。この苦しさは、血流が滞った程度(狭心症)の場合は、15分程度で回復する。不整脈のひとつ心房細動の時もそうだ。

私が何度も経験したが、それ以上自覚症状が長く、30分とか続くのは血管(冠動脈)が完全に詰まっている(心筋梗塞)だと考えた方がいい。ほっておけば死に至る。

胸が痛くなるという症状だと、「心臓がおかしいのではないか」と分かりやすいが、心筋梗塞になると左の奥歯がうずいたり痛くなったり、肩が凝ったりすることもある。歯医者や整形外科に駆け込む人もいるが、これは心筋梗塞の症状のひとつなのである。

歯医者で鎮痛剤をもらって「一丁上がり」となるが、じつは心筋梗塞の症状だ。こういうのを「放散痛」という。

不幸にして、こんな知識がなく死んでしまった後、患者を解剖すると死因が心筋梗塞であったことは明らかになる。

<発症した場合の対処は困難だろう>といっておられるが、心臓疾患の9割は、対処の仕方を誤らなければ、決して「死に至る病」ではないのである。

本誌常連の前田正晶さんが書いておられる記事が見事にそのポイントを突いている。
その要点をまとめると、

<失神するほどの、激痛と胸部に圧迫感があった。自分で119番に電話して症状を説明していた>

<放っておけば治るとかとは思ったが、何故かこれは「一過性の痛みではない」と判断した>

<救急患者を受付けてくれる大病院が多いこと、救急車が搬送してくれた先が国立国際医療センターだったこと、最も偉い先生が日曜日の当直だった>

<心筋梗塞に対応する準備が整っていたのだった。処置も素早かった>

<その判断が正しかったと後で解るのだが、私の場合は幸運の連続だった>

つまり、前田さまのケースは<幸運が重なった>結果であり、誰でもがこううまくいくわけではない。

年間の死者5千人を切る交通事故死にあの大騒ぎで安全運動を展開している。なのに、心臓疾患で年間15万人以上が死ぬ。なぜか。前田さんのような幸運の女神の恩寵に浴する人はそんなに多くない、それだけ啓蒙が行きわたっていないということだ。

<時間との争いであるなどとは知る由もないだろう。知識は皆無だった>とおっしゃるが、そんな人に幸運が訪れることは滅多にない。

この歳になったら、天下国家の危機を憂うる高邁な論議をする前に、わが身の危機管理に少しのエネルギーを注ぐべきだというのが私からのアドバイスだ。心臓病は<誰でも経験して学習し教訓に出来る病>なのである。


2019年01月05日

◆パット・シャナハン国防長官代行

宮崎 正弘


平成31年(2019年)1月3日(木曜日)弐 通巻第5938号  

パット・シャナハン国防長官代行、「米国の戦略はチャイナチャイナチャ
イナだ」
  マティスと交代した国防長官代行は軍歴なし、ボーイングに30年

ジェフリー・サックス(コロンビア大学教授)が、ツィッターなどで集中
攻撃を受けた。理由は「ファーウェイCFOの孟晩舟逮捕の狙いはファー
ウェイだけが目的ではなく、テクノロジーの覇権競争で、米国が無謀な戦
いを挑んでしまったからだ。米中は戦略的に協力しあわなければならない
のだ」と『サウスチャイナ・モーニングポスト』のインタビューに答えた
ためだった。

このファーウェイ擁護論は米国の世論を刺戟する。たちまちツィッター世
界は嵐となって、反論がSNSを通じて集中し、サックス教授は「ツィッ
ターをやめた。時間の無駄だ」とした。

この椿事でも分かるように、米国で中国を擁護するなど容共的な言論は成
立しにくい表現環境にある。

さてマティス国防長官辞任にともない「代行」職についたパトリック・
シャナハンは登庁後のスタッフへの挨拶で「米国はグレートゲームの主役
を露西亜、中国と競合している。米国の国防戦略の基本はチャイナチャイ
ナチャイナだ」と発言した。

シャナハン新長官代行は軍歴を持たず、しかも宇宙航空の専門家とはい
え、ペンタゴンの副長官としては予算面を担当した。たしかにボーイング
に30年以上奉職したため軍事知識は豊富とされる。

 シャナハンが「代行」なのは上院の指名が不要だからで、当面の予算審
議を乗り切れば、トランプは新しい国防長官の指名を行うと観測される。
       

◆横暴中国に抗議し、日本人を取り戻せ

櫻井よしこ


中国共産党機関紙「人民日報」系で、国際版もある「環球時報」のもの凄
い社説から、中国の正体が見える。

12月1日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の副会長、孟
晩舟(もうばんしゅう)氏が米国の要請によってカナダで身柄を拘束され
た。11日に保釈されたが、現在も24時間監視態勢下に置かれ、カナダから
出国もできない。米国への引き渡し手続きはこれからだろうが、中国は政
府を挙げて引き渡し阻止に動いている。

「環球時報」は孟氏逮捕当初から非常に強い関心をもって何本もの社説を
掲げているが、直近の12月15日のそれは中国得意の政治的恫喝の典型だった。

一連の主張から読みとれる中国の特性こそ、彼らが世界で力を確立すれば
するほど国際社会に浸透させようとする価値観であろう。私たちはいま、
その正体をじっくりと見つめる好機を与えられている。その第一の点が、
中国の司法は米国やカナダの司法とは異なるという主張だ。

たとえば環球時報はこう書いた。

「中国がカナダ人二人を拘束したことを、米加両国はどういう理由で違法
だと言えるのか。結局我々の司法は全く異なる。米国やカナダで違法だか
らといって中国でもそうだとは言えないだろう」

続いて、環球時報は次のように警告する。

「司法権は一国の主権の重要な構成要素だ。中国にいるすべての外国籍の
者は、その母国の法律によって守ってもらえるなどという幻想を抱くかわ
りに、中国の法律に従わなければならない」

中国の体制は外の世界とは異なるのだ、米国流もカナダ流も欧州流も日本
流も、中国には一切通じない。そのことを外国人は認識せよ、というこの
強い自我意識は、昨年10月の共産党大会で、中国が世界最強の国になる
2049年には、中華民族が世界の諸民族の中にそびえ立ち、中国共産党の教
えで世界を指導するとしたあの宣言に通ずる考えだ。それを彼らは「人類
運命共同体」と表現したが、その本心は中国主導の世界の確立ということだ。

21世紀の大中華思想の恐さ

12月13日の社説は、孟氏が拘束されたあと、まるで報復のような形でカナ
ダ人二人が拘束された件について、こんな主張も展開する。

「中国で拘束されたカナダ市民二人に関しては保釈請求の審理を開催して
やるなど、開かれた透明な司法手続きが行われるべきだと米加両国は考え
ている。中国では法体系も情報発信の在り方も異なる。そのようなことは
できないと、彼らはよく知っているはずだ。従って(米加両国と同件につ
いて)意思の疎通をはかるのは困難だ」

なるほど、だから彼らは、南シナ海の島々の領有権問題でハーグの常設仲
裁裁判所が下した、フィリピンの訴えを全面的に支持し中国の領有権を全
否定した判決を「紙クズ」だと言って無視したのであろう。

そもそも司法制度が異なるのだから、米国ともカナダとも、さらに国際社
会とも解り合うことは不可能だと言っているのである。そのうえで彼らは
要求する。

「カナダ及び米国の外相は中国のこうした原則を十分に弁(わきま)えてお
くべきだ」(15日社説)

彼らの中・長期的目標である21世紀の大中華思想の恐さを肝に銘じておこ
う。威嚇したかと思えば、「環球時報」は同じ社説で恥ずかし気もなく、
こうも言う。

「異なる国々の間の意思の疎通は相互尊重に基づくべし」

全く同感だ。そうしてほしいが、中国には相互尊重の考えが欠落していて
自国尊重しかない。だから結局最後は予想どおり恫喝で終わる。

「カナダは米国の支持があるからといって何かが変わると思ってはならな
い。台湾問題での火遊びは北京には何の圧力にもならない。オタワよ、中
国の手には何枚ものカードがあることを覚えておけ。北京の意向に逆らえ
ばいいことはないぞ。米中問題には距離を置くのが一番だと弁えろ」

人口約3600万人、GDP1兆6530億ドル(約187兆円)と、中国と比べれば
小振りとはいえ、カナダはG7の一員だ。立派な民主主義の国をこんなふ
うに脅すのである。裏を返せば、中国は死に物狂いだということだ。

なんと言ってもファーウェイは中国を代表するハイテク企業だ。「産経新
聞」の報道によると、世界170か国・地域で事業を展開中だが、現在も非
上場を貫いている。創業者は人民解放軍出身の元軍人で、74歳の任正非
(にんせいひ)氏だ。人民解放軍、さらには共産党と一体化している人物
だ。その娘が孟氏で現在46歳、事実上、任氏の後継者と見られている。

世界一の国にはなれない

ファーウェイをはじめ、中国の通信大手企業が世界に張り巡らせつつある
のが、第5世代の移動通信システム(5G)だ。中国はすでに5Gの基地局
を世界各地に張り巡らし、その数は米国のそれの10倍にもなるとの数字も
ある。米国は必死に巻き返しており、欧州諸国も日本も、米国と共に
ファーウェイ及びもうひとつの中国のハイテク通信企業、中興通訊
(ZTE)の排除に乗り出した。国や社会の在り方、自由や民主主義の擁
護を考えれば、当然だろう。

10月4日に米国のペンス副大統領が凄まじい演説をした。その直後に共和
党上院議員のマルコ・ルビオ氏らが民主・共和両党の合意の下で対中非難
の声明を出した。その中で中国の不公正、非人道的な体質を非難し、中国
社会はジョージ・オーウェルの小説「1984」のようだと論難した。米中の
戦いは単なる貿易戦争ではなく、次の時代の世界の在り方をめぐる戦い
だ。米国は行政府も立法府も、「1984」のような国になり果てようとする
中国の意図を挫きたいのである。

5Gのハイテク通信で世界を制覇すべく、中国共産党はファーウェイや
ZTEを国ぐるみで後押しするが、ハイテク通信で世界の最前線を走った
としても、世界一の国にはなれないだろう。彼らはハイテク通信を何のた
めに利用するのか。自国民を支配するのと同様に世界を支配する道具にす
るのではないか。ハイテク通信で自由な情報の流れを実現するわけでもな
い。自由な発想も創造も許さない。その反対に、21世紀の今日、いわば終
身皇帝を誕生させるなどバカバカしい所業を許している。

人間を抑圧する中国は、米国や日本、欧州諸国のように人間を羽ばたかせ
る陣営には金輪際、勝てない。米中のせめぎ合いは日中の戦いでもある。
そのことを念頭に、安倍晋三首相も菅義偉官房長官ももっと発言してよい
のである。中国にスパイ容疑で拘束され、情報開示もないまま、有罪判決
を下されていく日本人8人の即時釈放を要求すべきだ。中国の蛮行を許し
てはならない。大きな声で抗議すべきなのだ。

『週刊新潮』 2018年12月27日号 日本ルネッサンス 第833回

◆リハビリって何?

向市 眞知


「リハビリ」という用語は訳さなくてもよいくらい、日本語になってしまいました。しかし、この用語がとても曲者なのです。皆がこの用語の前向きなところにごまかされ、便利にしかも安易に使ってしまいます。

医師は最後の医療としてリハビリに望みをつなげる言い方をします。家族は家にもどるためにはリハビリを頑張ってほしいと期待をかけます。患者もリハビリを頑張れば元どおりになれると思います。

リハビリとは「再び生きる」という用語と聞きました。この概念で考えるととても幅広い概念です。

病院にはリハビリテーション科があり、そのスタッフには理学療法士、作業療法士、言語聴覚訓練士という、国家資格をもった専門技師がそろっています。身体機能回復訓練に携わるスタッフです。

医師が「リハビリ」という用語を使う場合にはこのようなリハビリテーション科のスタッフによる訓練を指すだけではなく、「再び生きる」心構えをもちましょう、という意味を含んでいる場合が多いのです。

しかし、患者、家族の方はリハビリは療法士がするものと思い込んでいるケースが多いように思います。よく言われるのに「リハビリが少ない」、「リハビリをしてもらえない」というクレームがあります。療法士がするものだけがリハビリなら、診療報酬上点数がとれるのは一日20分から180分です。

「リハビリを受けさせたいから入院させてほしい」とよく言われますが、一日の何分の1かの時間のリハビリだけで「再び生きる」道のりを前に進むことはむずかしいものです。あとの時間をベッドに寝ているだけでは、何の意味もありません。「リハビリのために入院している」というだけの安心感の意味しかありません。

いくら日本一の理学療法士の訓練をうけたからといって、患者本人が「リハビリをする(再び生きる)」心構えになっていなければ、空振りに終わってしまいます。

マヒした身体に対して、拘縮してしまわないように理学療法士が外から力を加え訓練をすることはできます。でも、訓練が終わって身体を動かさなければもとの木阿弥です。

しかし、言語訓練はそうはいきません。本人が声を出そう、話そうとしなければ訓練になりません。「絶対話すものか!」と口をつぐんでいる患者に訓練は意味を為しません。まずは声を出してみよう、話してみようという気持ちになるように、心理的にリラックスしてもらうことから訓練を始められると聞きました。

このことからわかるように、リハビリは本人次第なのです。そしてやはりリハビリも療法士と患者の協同作業なのです。

療法士さんの訓練の20分が終われば、患者自らがもう一度リハビリのメニューをくりかえしてやってみることや、家族が面会時間に療法士に家族ができるリハビリを教えてもらい、リハビリの協力をしてみるなど、何倍にもふくらませていくことがリハビリの道のりなのです。

療法士さん任せにしないこと、繰り返しやっていくこと、退院しても療法士さんがいなくてもリハビリ、再び生きる道のりは続いていること、それを実行するのは自分であることを忘れないでいてほしいと願っています。

診療報酬改定で更にこの認識が重要になってきています。療法士による機能回復訓練が継続してうけられる回数の上限が、疾病により90日〜180日と定められました。これ以上の日数の訓練を続けても保険点数がつかないことになりました。医療機関は保険がきかなくなれば、リハビリを打ち切らざるをえません。

患者も10割自費で料金を支払ってまでリハビリを続けることはできないでしょう。リハビリは入院の中でしかできないものではなく、退院してからも自宅でリハビリを続けていく意気込みが大切です。
                                  (ソーシャルワーカー)