2019年02月20日

◆「キーウィ・ツーリズム」を犠牲に

宮崎 正弘


平成31年(2019年)2月18日(月曜日)弐 通巻第5995号   

「キーウィ経済」「キーウィ・ツーリズム」を犠牲にしてもファーウェイ排斥
ニュージーランド政府、ファーウェイ製品の禁止を正式決定

ニュージーランド政府も、ファーウェイ製品の前面禁止を正式決定した。
 
これで「ファイブ・アイズ」(英・米、豪、カナダ、NZ)加盟国はすべ
て中国のファーウェイを禁止したことになる。

中国はニュージーランド(以下「NZ」)への憤懣やるかたなく、カナダ
人13人を拘束し、豪の作家を拘束したように、何かの報復手段に出るだろ
う。すでにニュージーランド学界では、中国旅行には行かない雰囲気が支
配しているという。

1月にはオークランドを飛び立ったNZ航空機が、上海で着陸許可が出ず
に引き返すという事件が起きた。両国関係に殺伐とした空気が流れた。

NZへの観光客は年間380万人、このうちの15%の57」万人が中国人であ
り、どこへ行ってもチャイナチャイナとなっていた。今年は「中国人観光
イヤー」とも命名され多彩な行事が予定されていた。

中国人観光客は金使いがあらく観光業界のインバウンド収入は160億ド
ルにも登るという統計がある。「キーウィ経済」とからかわれるNZから
中国への輸出は150億ドル。さらに中国人投資家による不動産投資が
15億ドルの巨額に達している。首都のウエリントンばかりか、古都オー
クランドもクライストチャーチも。。。

NZにとって中国は「大事なお客様」であり、ジェンシンタ・アーデン首
相(女性)は春節にわざわざオークランドで開催された祝賀行事には出席
して両国の友好を謳ったばかりである。

ところが英国のフィリップ・ハマンド外相が北京訪問を延期したように、
アーデン首相は昨年末に予定していた中国訪問を延期した。

英もNZも、北京訪問予定を未定とし、「国家安全保障が優先する」と抽
象的なコメントでお茶を濁した。

背後にあるのは諜報機関の連携、情報を共有する「ファイブ・アイズ」の
誓いが機能しているという国際政治の舞台裏を思いおこしておく必要があ
る。NZは大英連邦の主要構成国であり、ガリポリの戦役では英国の要請
に基づき、豪軍とともにトルコへ軍隊を送った。

中国は「ファーウェイ製品にスパイ装置を施してはいない」としらけるよ
うな反論を繰り出したばかりか、NZの主要新聞すべてに全面広告を打っ
て反撃キャンペーンに乗り出した。

そのファーウェイの反論宣伝コピィ曰く

「ファーウェイなくして5Gを実現するなんて、NZなしくてラグビー大
会をするようなもの」 
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1860回】             
 ――「劣等な民族が自滅して行くのは是非もないこつたよ」東京高商(1)
東京高等商業學校東亞倶樂部『中華三千哩』(大阪屋號書店 大正9年)

                   △
東京高等商業学校(一橋大学の前身)で「日頃東亞の研究に志す者が相集
つて互に意見を交換したり先輩の講演を聞いたりしてゐる我東亞倶樂部々
員」の長年の悲願がかなったのが大正8(1919)年の夏。

「一行30人が4」旬に渉つて支那を南から北へ旅行した」。「本書は即ち
その紀行文であつて支那が我々日本青年の目に如何に映じたかを語」つた
ものだ。

東亜倶楽部による旅行は、時期的は河東碧梧桐(1843回~53回)のほぼ1年
後であり、大町桂月(1854回〜59回)と同じ時期。であればこそ、東亜倶
楽部の若者と河東や大町ら大人との隣国事情に対する考えの違いを知るこ
とができるだろう。

大人と若者という世代間の考えの違い。同じく隣国に向き合いながら、若
者の考えに時代環境の違いがどのように反映されているのか。興味深い点
から読み進んでみたいと思う。

これまで若者の紀行文としては『滿韓修學旅行記念録』(1599回〜1608
回)と『大陸修學旅行記』(1712回〜17回)を読んでいるから、この2冊
と『中華三千哩』を読み較べれば、明治末年と大正初年、それに大正8年
――清朝最末期、辛亥革命直後、さらなる混乱期――において、日本の若者が
隣国をどう捉え、どう対処しようとしていたのか。

冒頭に寄せられた東亜倶楽部に関係する東京高等商業学校の教授や先輩か
らの「序」を読むことで、当時の大人の隣国に対する考え方と、若者に寄
せる彼らの『熱い期待感』が想像できるように思うので、そこら辺りから
当たってみたい。

「之(『中華三千哩』の草稿)を一讀するに、支那の民情を探り、風物を
描き、史蹟を訪ね、大陸的氣分を稱する處、その觀察にその行文に、概觀
的なるにもせよ、支那の實情を髣髴たらしめ、且學生的氣分の?溢して」
いる。「刻下、列強の耳目再び東亞の天地に集注せられ、支那問題の朝野
に喧しき時に當つて、此書が一般人士殊に青年に稗?する處蓋し鮮少では
あるまい」(法學博士 佐野善作)

「今回の戰爭で養はれた我實業上の勢力が漸次其根を張つて來たことで第
一が貿易次が海運金融紡績等の順序で發展して居る」。「地方別にすると
何と云ふても滿洲方面が第一で殆ど内地の感があり次で青島上海天津漢口
などの順で列強を壓して來て居る」。「歐米方面からも將來豫想した程の
資本が入つて來る模樣もないので今後我が實業界の充實と共に支那内地に
於ける産業の調査及事業の計畫が?盛んに我が實業家を中心して企てられ
る」。

「次に拝日問題で注意すべき一事は」、「歐米の商品を扱つて居るものが
故意にやる外は支那で相當名のある實業家や多數商人は一般に日貨排斥の
意志を眞から持つては居ないので唯學生の危害を惧れるのと民衆への氣兼
から形式的にやつて居る仕事である云ふ點である」。

だが内陸部はともかく「上海其他開港地の隆々たる發展」は凄まじく、
「その發展は大部分粗界(租界の誤りだろう)に於ける外國人の力に因る
のであるが支那人の覺醒も決して見遁かすことは出來ない」(引率者の奈
佐忠行教授)

日本は混乱の隣国に「殆ど献身的に過去の半世を消過」し、やっと「天産
物の潤澤と交通の至便とを覺知し得」た時点で、「漸く歐米列強の鷹?虎
視常に中國を離去せざるの理由を闡明し、?ち豁然會得する所あり」。
「由來東亞は東亞の天地」であり、「之を拓殖するは東洋人の天職」だか
ら、「列強の脅威干渉を許さず」。「同文同種の天縁あ」る両国は「具に
和衷共濟通工易事の本能を發揮し憂國愛民的理想に依り斷乎勇往邁進せば
列強の覬覦睥睨も毫も怖るゝに足らざるなり」。

だが、「今や中日兩國は歐米某國の惡辣煽動教唆に基く種々の猜疑に由
て、深大なる誤解を胚胎し或は又其使嗾に依る謡言蜚語の影響を受けて」
いるそうな。《QED》

◆柔軟路線へ移行する米国の対北朝鮮政策

櫻井よしこ


柔軟路線へ移行する米国の対北朝鮮政策 日本にとっても朝鮮半島外交は
正念場だ 」

トランプ米政権の北朝鮮担当特別代表、ステファン・ビーガン氏が、その
職に就いて5カ月、初めて公式の場で講演した。

1月31日、スタンフォード大学での講演で明確になったのは、トランプ政
権の対北朝鮮政策の進め方が変わるということだ。一口にいえば、北朝鮮
が核廃棄を明確な形で成し遂げない限り見返りは与えないという、日本が
繰り返し主張してきた原則論から、より柔軟な路線への移行をトランプ政
権は考えているとみられる。

ビーガン氏は開口一番、「トランプ大統領は戦争(朝鮮戦争)を終了させ
る準備を整えている。終わったのだ。我々の北朝鮮侵略はない。我々は北
朝鮮の政権転覆を目指してはいない」「私、そしてもっと大事なのは合衆
国大統領が、過去70年間の朝鮮半島における戦いと憎しみを終わらせる時
だと確信していることだ」と、述べた。

北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長への妥協で在韓米軍の撤退もあり得る
かとの懸念に関して、「そのような交渉はまったく行われていない。過去
にもない」と強調したが、こうも述べた。

「金正恩は、米国が相応の対策をとる場合、すべてのプルトニウム及びウ
ラニウム濃縮設備を解体し破棄することにコミットした」「我々の側は
(それに対応する)多くの具体策を議論する準備を整えている」

ビーガン氏は北朝鮮の非核化に非常に楽観的だが、これより前の1月20
日、政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)が北朝鮮の東倉里ミ
サイル施設の解体作業が進んでいないことや、未公表の複数の核・ミサイ
ル関連施設が存在することを示す画像を公開した。29日には国家情報長官
のダン・コーツ氏が、「北朝鮮が核兵器を完全に放棄する可能性は低い」
と上院情報特別委員会で証言した。

ビーガン氏はこうした情報について、「情報の正確性ではなく、公開の仕
方が不満だ」とし、「もし、私なら同じ情報をこのように公開するでしょ
う──米国への深刻な脅威がここに存在している。我々の外交路線を変える
ことで北朝鮮を変えることができるかを見極めるために、北朝鮮と外交関
係をより深めることが重要だ、と」。

米国はなぜこんな希望的観測に基づく柔軟路線に転換したのか、その背景
はビーガン氏の講演から読みとれる。

「トランプ大統領と金委員長の方式はトップダウンです。成功すれば二国
間関係は根本的に生まれ変わる」

過去5カ月間、北朝鮮との交渉の時期と場所を決定するのにも大いに苦労
したビーガン氏は、北朝鮮は真意を測り難い国だと言う。だが、トランプ
氏は北朝鮮非核化をいつも「希望に燃えた星のような目」で語るそうだ。
トップダウンで北朝鮮の非核化を達成できる、トランプ氏はそう確信して
いるということであろう。そのような型破りの二人の首脳を信頼すれば、
年来の常識的外交路線から離れて、両首脳の「手腕」に期待することにな
るだろう。

米国の北朝鮮外交は日本のそれに直接的かつ大きく影響する。横田めぐみ
さんら多くの日本人が今もとらわれている。北朝鮮への姿勢を緩めて大丈
夫か、とトランプ氏の前のめりの姿勢に懸念を抱くのは当然である。

別の理由からトランプ氏の北朝鮮政策に気を揉んでいるのが中国国家主席
の習近平氏だ。安易に論ずることはできない中朝関係だが、中国が北朝鮮
の動向掌握に努め、北朝鮮と米国が、中国の頭越しに関係を深めていくの
を恐れているのは確かだ。何としてでも北朝鮮をコントロールし、朝鮮半
島を影響下に置いておきたいのである。

しかし今、トランプ氏の進める外交はまさに中国の頭越しになりかねな
い。韓国が北朝鮮につき従い、米朝が結び、中国が反発するという展開も
含めて、日本にとっても、朝鮮半島外交は正念場。緩和策の危険を米国に
説く時だ。

『週刊ダイヤモンド』 2019年2月16日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1267 

◆切らずに治せるがん治療

田中 正博


がん治療の3本柱といえば、手術、化学療法(抗がん剤)と放射線療法です。副作用なく完治する治療法が理想ですが、現実にはどの治療法も多かれ少なかれ副作用があります。

がんの発生した部位と広がりにより手術が得意(第一選択)であったり、化学療法がよかったりします。
 
また病気が小さければ、負担の少ない内視鏡手術で治ることもあります。 放射線療法は手術と化学療法の中間の治療法と考えられています。 手術よりも広い範囲を治療できますし、化学療法よりも強力です。

昔から放射線療法は耳鼻咽喉科のがん(手術すると声が出なくなったり、食事が飲み込みにくくなる、など後遺症が強い。)や子宮頚がん(手術と同じ程度の治療成績)は得意でした。 最近は抗がん剤と放射線療法を同時に併用することで、副作用は少し強くなりますが、治療成績が随分と向上しています。

食道がんでは手術と同程度の生存率といわれるようになってきました。手術不可能な進行したがんでも治癒する症例がでてきました。

また、手術と放射線療法を組み合わせることもしばしば行われています。 最新鋭の高精度放射線療法装置や粒子線治療装置を用いれば、副作用が少なく、T期の肺がん、肝臓がん、前立腺がんなどは本当に切らずに治るようになってきました。

また、残念ながら病気が進行していたり、手術後の再発や転移のため、今の医学では完治が難しいがんでも、放射線療法を受けることで、延命効果が期待できたり、痛みや呼吸困難などの症状が楽になることが知られています。

放射線療法以外の治療が一番いいがんも沢山ありますので、この短い文章だけで放射線療法がよいと判断することは危険ですが、がん治療=手術と決めつけずに、主治医の先生とよく相談されて、必要に応じてセカンドオピニオン(他病院での専門医の意見)を受けられて、納得できる治療を受けられることをお勧めします。(完)      
        大阪市立総合医療センター 中央放射線部 医師

◆木津川だより 高麗寺跡 B

白井繁夫


飛鳥時代に創建されたと云われている古代寺院の「高麗寺跡こまでら跡」について、@では寺名が「高麗寺:こまでら」となった由来や時代の背景について、高麗寺跡Aでは発掘調査の出土品の中で、出土遺物の数量などが多くて年代を文様などから比較的に区分しやすい瓦(軒丸瓦.軒平瓦)から高麗寺について記述しました。

今回Bでは、昭和13年の第T期発掘調査の結果、国の史跡と認定された高麗寺跡の伽藍配置や瓦以外の出土品を精査して、V期調査まで(平成22年の第10次発掘調査まで)の間に確認された概要を下述します。

★高麗寺の創建は7世紀初頭、伽藍整備は7世紀後半、伽藍配置は法起寺式
  
 主要堂塔が東に仏舎利を祀る塔、西に本尊仏を祀る金堂を並置して、それを囲む回廊
が北の講堂、南で中門に接続している様式(南北回廊200尺:59.4m、東西201尺:
59.7mのほぼ正方形)
 高麗寺の伽藍配置は川原寺式から変化して法起寺式へと移行の初例と思われます。

★南門.中門.金堂が南面して一直線に並び、講堂の基壇が荘厳で特異な伽藍配置

川原寺式伽藍配置から法起寺式への変化の途上か?(添付の「各寺院の伽藍配置」参照)
高麗寺は西金堂の正面が南面し中門.南門と直線状に並びます。川原寺は北講堂.中金堂.中門.南大門は一直線状ですが西金堂は正面が東塔に対面しています。

(仏舎利を納めた塔より仏像を祀る金堂を重視する考え方か?
飛鳥時代から天平時代へと伽藍配置が変化する過程の先駆けではと思われます。)

高麗寺の講堂の基壇は三層構造の豪華さで、丁度川原寺の中金堂と同じ位置にあります。
高麗寺の初期設計時には講堂の場所に中金堂を予定していたのか?と思われるほど
基壇は荘厳な造りでした。
  
飛鳥時代、高麗寺が創建された時期には七堂伽藍を完備した寺院は飛鳥寺が国内では
唯一の寺院でした。その他の寺は一.二堂程度の草堂段階?(捨宅寺院?)であったと考えられています。

★高麗寺の南門の屋根には鴟尾があり、最古の築地塀が原形の状態で検出されました。

  南門跡は桁行20尺(5.94m)x 梁間12尺(3.56m)、屋根は切妻造りで鴟尾を
置いた八脚門、南門に接続する築地塀が南辺築地跡から原形を留めた、極めて良好な
状態で検出されました。

7世紀に築地塀が構築された例はいまだ検出されていません。8世紀の奈良時代になって  寺院の外画施設とする築地塀が一般的に用いられるようになったのです。

高麗寺の築地塀は7世紀後半のものであり、検出遺物は国内最古の出土物の例です。
白鳳時代の築地塀が残っていた事だけでも極めて珍しいのに、ラッキーにも壊れ方が建物の内側で原形を留めていたことです。

 (飛鳥寺南辺、川原寺南辺、東辺にも築地塀の存在説がありますが、現在も出土例は有りません。)

★高麗寺の終焉時期の推測

  文献上では廃絶が不明の寺院ですが、出土遺物の中から、平安時代の土器である灰釉陶器が見つかりました。この陶器から平安時代の末期頃(12世紀末から13世紀初)まで存続していたのではないかと云われています。

天武天皇は壬申の乱で功績のあった狛氏一族の氏寺の創建を認め、白鳳時代から奈良時代にかけて全盛期を迎えた高麗寺の状況ですが、聖武天皇が高麗寺の東方約3kmの瓶原(みかのはら)に恭仁宮を造営して、恭仁京(木津川市)へ遷都した頃(天平12年)、木津川の船上から見える高麗寺は南門の屋根には鴟尾が在り、当時は珍しい築地塀越に東塔が聳え西の輝く金堂など、当時の人々はこの大寺院を畏敬の念で仰ぎ見たことと思われます。

参考資料: 山城町史  本文篇  山城町
   南山城の寺院.都城 第106回 埋蔵文化財セミナー資料 京都府教育委員会
   木津川市埋蔵文化財調査報告書 第3.第4.第8集   木津川市教育委員会

2019年02月19日

◆中国人の銀行口座を凍結

宮崎 正弘


平成31年(2019年)2月16日(土曜日)通巻第5992号   

スペイン、中国人の銀行口座を凍結。「資金洗浄の疑い」
突然、数千の在西中国人がビルバオ銀行(BBVA)本社に押しかけた

2月14日はバレンタイン・ディだ。

マドリッドに住む中国人はBBVA銀行へ行ってATMからお金を引き出
せないことに驚く。「金が出ないゾ、機械の故障だ」と窓口へ行くと「あ
なたの口座は資金洗浄の疑いがあるので凍結されました」。
「?」。
寝耳に水の言葉、「ならば、どうすれば引き出せるか?」「資金の出所、
あなたの個人的財政的バックグランドを証明する書類が必要です」などと
言われて怒り心頭。

 ほぼ全ての在西中国人の銀行口座が凍結されていた。

「これは人種差別だ」と騒ぎだし、翌日(2月15日)マドリッドのビルバ
オ銀行本社前に、え? 数百・数千の中国人がプラカードばかりか五星紅
旗をもってあらわれたのだ。ビルバオ銀行はスペイン第2の大手銀行で
NY市場にも上場しており、東京にも支店がある。

スペイン国内全域に支店網があり、中国人およそ4−5000人が口座を開設
している。

警備のスペイン当局が驚く。

「いつの間に、中国の国旗をこれほどたくさん用意できたのだ?」。

「マドリッドにはICBC(中国工商銀行)の支点もあるのに、なぜ中国
人はスペインの銀行を好むのか?」
 
降って湧いたような蝗の大群。それにしても大がかりな中国人組織がマド
リッドにあって、一晩で組織的な行動を取れることにスペイン当局は驚い
ているという。 
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1859回】                       
――「社稷既に亡んで、帝陵空しく存す」――大町(5)
大町桂月『遊支雜筆』(大阪屋號書店 大正8年)

                 △

満洲の名勝古跡を歩いて異なことに気づく。「日本人の多く行く處は、日
本人を優待するかと思ひしに、事實は反對にて、日本人の多く行く處は、
日本人を虐待し、日本人の稀に行く處は、日本人を優待する也。多くの日
本人の中には、名所を荒らすものもありと見えたり」。

乃木大将の「金州城外立斜陽」で知られる金州の西門外で「清國軍人戰亡
碑」を弔う。「日清の役、我軍にて支那の戰死者をこゝに葬りて、この石
碑を建てける也」。裏面に「大日本大山大將茨木少將建明治28年五月穀
旦」と刻まれていたはずが、「『大日本』、『大山』、『茨木』の文字
は、石にて打潰されて、幾んど辨ずべからざるようになれ居れり」。戦勝
の後、この石碑を建てると共に、「支那の戰死者の爲めに法會を営みけ
る」にもかかわらず、である。

「石にて打潰」すとは腐れ切ったひねくれ根性なのか。はて復仇への執念
なのか。

大町は時に朝鮮服、時に支那服を着た。満鉄の列車に朝鮮服やら支那服
で乗り込むと、ボーイが乗車を妨害する。「豫期せしことゝて、驚きもせ
ず、又腹も立たず。唯眞の朝鮮人や支那人が氣毒千萬と思ふ也。(自分の
経験からしても)我同胞は朝鮮人を輕蔑し、支那人をも輕蔑す。輕蔑する
のみならず、虐待す。慨かはしきこと也」。

帰路に耳にした朝鮮婦人の囁きを、通訳は「君を支那人と見て、胡人と
云へり。朝鮮人は支那人を目にして、表面上は大國人と云ふも、蔭にては
胡人といふなり」と伝える。これを面従腹背というのだろう。

1950年から3年ほど続いた朝鮮半島で共にアメリカ帝国主義を敵に戦っ た
2つの独裁国家は、いまになっても「中朝両国の血の友誼」の金看板を 下
ろそうとはしない。だが民衆は正直である。

かつて大連で、極秘訪中していた金正日将軍サマのゴ巡行に出くわした
ことがある。街は厳戒態勢で、夕暮れのラッシュ時にもかかわらず幹線道
路は1時間以上前から完全ブロック。秘密裡のはずが歩道は黒山の人だか
り。暫くすると、前方からパトカーに先導された60台を超える車列が猛ス
ピードで通過する。車列半ばを走った10台ほどの大型黒塗りベンツの1台
に将軍サマが鎮座ましましていたようだ。

車列が視界から消えると、歩道の人だかりは崩れる。隣り合わせた20歳前
後の娘が「厄介な国の厄介なヤツ」と吐き捨てた。

中国人嫌いを正直に吐露する朝鮮人もいた。筋金入りの革命家であるキ
ム・サン(金山)こと張志楽(1905年〜38年)である。毛沢東が党内固め
から反転攻勢に転じた頃に延安入りし、抗日軍政大学で物理・数学・日本
語・朝鮮語などを教えていた。

彼は自らの人生を語った『アリランの歌』(ニム・ウェールズ、キム・
サン 岩波文庫1995年)で「中国では澄んだ川や運河を見たことがないの
です。私たち朝鮮人は朝鮮の川で自殺するなら満足だというのですが、中
国の川はきたなくて、そんな気になりません」と呟き、「自分たちがもう
かるというのでなければ面倒を避けたがる中国人の性格を承知していた」
と語り、「中国は無法律だ」と断じている。

逮捕に来た官憲に対し無抵抗の中国人同志を前に「なぜあほうみたいに
つっ立ってる? 卑怯者め! なぜ逃げないんだ?」「朝鮮人ならこんな
時絶対にあきらめない」と怒声を挙げたと、苦々しく語っている。

彼を援助し続けた兄は、「われわれ朝鮮人はすべて理想主義者であり、
理想主義は歴史を創り出す。中国人はあまりにも拝金主義者であるためキ
リスト教民族とはなれず、やがてその物質主義のため亡びるであろう」と
諭し、彼を中国に送り出した。

大町に戻るが、彼は朝鮮婦人の態度を論うこともなく「匹婦なほ恕すべ
し」と。一転して「内地の紳士にして、蔭にて朝鮮人をヨボといふ者はあ
らずや」と問うのだ。《QED》
 

◆柔軟路線へ移行する

櫻井よしこ


「柔軟路線へ移行する米国の対北朝鮮政策 日本にとっても朝鮮半島外交
は正念場だ 」


トランプ米政権の北朝鮮担当特別代表、ステファン・ビーガン氏が、その
職に就いて5カ月、初めて公式の場で講演した。

1月31日、スタンフォード大学での講演で明確になったのは、トランプ政
権の対北朝鮮政策の進め方が変わるということだ。一口にいえば、北朝鮮
が核廃棄を明確な形で成し遂げない限り見返りは与えないという、日本が
繰り返し主張してきた原則論から、より柔軟な路線への移行をトランプ政
権は考えているとみられる。

ビーガン氏は開口一番、「トランプ大統領は戦争(朝鮮戦争)を終了させ
る準備を整えている。終わったのだ。我々の北朝鮮侵略はない。我々は北
朝鮮の政権転覆を目指してはいない」「私、そしてもっと大事なのは合衆
国大統領が、過去70年間の朝鮮半島における戦いと憎しみを終わらせる時
だと確信していることだ」と、述べた。

北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長への妥協で在韓米軍の撤退もあり得る
かとの懸念に関して、「そのような交渉はまったく行われていない。過去
にもない」と強調したが、こうも述べた。

「金正恩は、米国が相応の対策をとる場合、すべてのプルトニウム及びウ
ラニウム濃縮設備を解体し破棄することにコミットした」「我々の側は
(それに対応する)多くの具体策を議論する準備を整えている」

ビーガン氏は北朝鮮の非核化に非常に楽観的だが、これより前の1月20
日、政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)が北朝鮮の東倉里ミ
サイル施設の解体作業が進んでいないことや、未公表の複数の核・ミサイ
ル関連施設が存在することを示す画像を公開した。29日には国家情報長官
のダン・コーツ氏が、「北朝鮮が核兵器を完全に放棄する可能性は低い」
と上院情報特別委員会で証言した。

ビーガン氏はこうした情報について、「情報の正確性ではなく、公開の仕
方が不満だ」とし、「もし、私なら同じ情報をこのように公開するでしょ
う──米国への深刻な脅威がここに存在している。我々の外交路線を変える
ことで北朝鮮を変えることができるかを見極めるために、北朝鮮と外交関
係をより深めることが重要だ、と」。

米国はなぜこんな希望的観測に基づく柔軟路線に転換したのか、その背景
はビーガン氏の講演から読みとれる。

「トランプ大統領と金委員長の方式はトップダウンです。成功すれば二国
間関係は根本的に生まれ変わる」

過去5カ月間、北朝鮮との交渉の時期と場所を決定するのにも大いに苦労
したビーガン氏は、北朝鮮は真意を測り難い国だと言う。だが、トランプ
氏は北朝鮮非核化をいつも「希望に燃えた星のような目」で語るそうだ。
トップダウンで北朝鮮の非核化を達成できる、トランプ氏はそう確信して
いるということであろう。そのような型破りの二人の首脳を信頼すれば、
年来の常識的外交路線から離れて、両首脳の「手腕」に期待することにな
るだろう。

米国の北朝鮮外交は日本のそれに直接的かつ大きく影響する。横田めぐみ
さんら多くの日本人が今もとらわれている。北朝鮮への姿勢を緩めて大丈
夫か、とトランプ氏の前のめりの姿勢に懸念を抱くのは当然である。

別の理由からトランプ氏の北朝鮮政策に気を揉んでいるのが中国国家主席
の習近平氏だ。安易に論ずることはできない中朝関係だが、中国が北朝鮮
の動向掌握に努め、北朝鮮と米国が、中国の頭越しに関係を深めていくの
を恐れているのは確かだ。何としてでも北朝鮮をコントロールし、朝鮮半
島を影響下に置いておきたいのである。

しかし今、トランプ氏の進める外交はまさに中国の頭越しになりかねな
い。韓国が北朝鮮につき従い、米朝が結び、中国が反発するという展開も
含めて、日本にとっても、朝鮮半島外交は正念場。緩和策の危険を米国に
説く時だ。

『週刊ダイヤモンド』 2019年2月16日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1267 

◆奈良木津川だより 高麗寺跡 A

白井繁夫


「史跡 高麗寺(こまでら)跡」は木津川の右岸の棚田の中(山城町上狛)で、建物がないためか、観光客も少なく、飛鳥時代に創建された国内最古の仏教寺院「飛鳥寺」と同笵の瓦が出土した国の史跡の古代寺院跡と思われずに千年の時が経って来たのです。

この高麗寺跡の第T期発掘調査(昭和13年)から第V期(平成22年度の第10次発掘調査)までの調査で出土した遺物や伽藍跡から皆様と高麗寺の建立の様子や歴史を観て行こうと思います。

高麗寺は渡来氏族の狛氏の氏寺として7世紀初(610年頃)には存在していただろうが、出土遺物などから、12世紀末から13世紀初期ごろに消滅したと推察されています。

高麗寺跡の出土遺物には金銅製の破風(はふ)拝み金具、円盤等の建造物の装飾金具、南
門の屋根の鴟尾や最古の築地塀などがあり、更に各時代を現す文様の瓦や三層基壇の講堂など高麗寺の伽藍は驚嘆するような荘厳さで、文明の先端を行く寺院と推察されます。

最初に年代を調べるために、高麗寺の出土遺物で数量が多くて比較的に年代を決めやすい文様瓦(軒丸瓦.軒平瓦)を中心に4期に分けた瓦から始めます。

T期の瓦 飛鳥時代の瓦(軒丸瓦:十葉素弁蓮華文じゅうようそべんれんげもん)
   
  日本最古の寺院「飛鳥寺」の創建時の瓦と同じ型で作られている。京都府下では当然
  最古の瓦ですが、高麗寺から4点しか出土していません。(飛鳥時代に瓦葺の建物が確実に存在していたのか?堂宇は萱葺だったのか?)

U期の瓦 白鳳時代の瓦(軒丸瓦:八葉複弁ふくべん蓮華文、軒平瓦:重弧じゅうこ文)
     川原寺式の瓦と同笵でもあり出土量が圧倒的に多種大量です。

  川原寺式の瓦:古代瓦では最も文様が華麗で日本各地に普及した。地域文化の指標にもなった瓦ですが、高麗寺の瓦は原初的な川原寺創建時と同じ型の瓦から始まり、さらに発展した瓦など多種類が出土しています。(高麗寺は660年頃本格的に造営された伽藍建築の寺院となったのです。)

(川原寺は天智天皇が母(斉明天皇)の冥福を祈るため建立した寺で、飛鳥4大寺の一つ、
 壬申の乱で勝利した天武天皇が崇敬していた寺院であり、天武天皇に味方した各地の豪
族に恩賜として瓦の使用許可が与えられました。山城国では南山城に集中しており、地方では尾張、美濃、伊勢などが特に多い。)

南山城:木津川市の古代寺院では高麗寺と蟹満寺が有名です。
(前代の古墳時代:各豪族は氏族の権威の象徴として大古墳を築きましたが、飛鳥時代以降は氏族の権威となるモニュメントが大寺院の建立に変化しました。)

壬申の乱では渡来氏族の狛氏一族が大海人皇子に味方して大変貢献したため、高麗寺が
最初に川原寺の創建時の瓦(同笵瓦)の使用許可を得たのです。その後、川原寺式瓦は
高麗寺を核として南山城の3郡にも広がりました。

「蟹満寺:国宝の白鳳仏が有名」から川原寺式瓦の破片が出土したことから、白鳳時代
末期(7世紀末から8世紀初)に創建されたと云われているのです。
蟹満寺は前代に平尾城山古墳.稲荷山古墳を築いた豪族の後裔氏族が建立したのでは?と云われています。

V期の瓦 奈良時代の瓦(軒丸瓦:蓮華文、軒平瓦:均整唐草文)平城宮式瓦や「中臣」
   と文字がある平瓦、恭仁宮式軒瓦など恭仁京造営時に製造した瓦も出土しました
が多種少量のため、高麗寺の修理用として八世紀に使用した瓦と思われます。

W期の瓦 平安時代前期の瓦(軒丸瓦:蓮華文、軒平瓦:唐草文)修理用に高麗寺独特の瓦が少量作られた。(この時代以降の瓦は出土していないので、高麗寺の大伽藍は平安時代以降修理など出来ずに荒廃にまかされたか? 法蓮寺の棟札では金堂などが室町時代まで存在していたようですが?)

高麗寺を軒瓦から観た場合、飛鳥時代(610年頃)萱葺の堂?が創建され、白鳳時代、
川原寺式に準じた七堂伽藍の本格的寺院の造営(7世紀後半)が施工され、法起寺式伽
藍建築へ繋がって行きました。

奈良時代(8世紀)に聖武天皇が恭仁京(木津川市)へ遷都(740年)して都城の造営
時には高麗寺も独特の瓦を作り、他寺院にも供給しました。

しかし、平安時代初期の修理用の瓦の出土が最後でそれ以降の瓦の出土は有りません。
瓦から調べた高麗寺の創建時期の推測や隆盛時代は分りますが、歴史(終焉)は何世紀
か判断は困難です。

瓦以外の出土遺物や伽藍跡の発掘調査、昭和13年の第T期からV期(平成22年の10
次調査)まで、から高麗寺の概要を視ようと思います。(つづく)

参考資料:山城町史 本文篇 山城町、
南山城の寺院.都城 京理セミナー資料No.0106−327
史跡 高麗寺跡 第10次発掘調査概報 木津川市教育委員会
   

2019年02月18日

◆柔軟路線へ移行する米国の対北朝鮮政策

櫻井よしこ


「柔軟路線へ移行する米国の対北朝鮮政策 日本にとっても朝鮮半島外交
は正念場だ」

トランプ米政権の北朝鮮担当特別代表、ステファン・ビーガン氏が、その
職に就いて5カ月、初めて公式の場で講演した。

1月31日、スタンフォード大学での講演で明確になったのは、トランプ政
権の対北朝鮮政策の進め方が変わるということだ。一口にいえば、北朝鮮
が核廃棄を明確な形で成し遂げない限り見返りは与えないという、日本が
繰り返し主張してきた原則論から、より柔軟な路線への移行をトランプ政
権は考えているとみられる。

ビーガン氏は開口一番、「トランプ大統領は戦争(朝鮮戦争)を終了させ
る準備を整えている。終わったのだ。我々の北朝鮮侵略はない。我々は北
朝鮮の政権転覆を目指してはいない」「私、そしてもっと大事なのは合衆
国大統領が、過去70年間の朝鮮半島における戦いと憎しみを終わらせる時
だと確信していることだ」と、述べた。

北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長への妥協で在韓米軍の撤退もあり得る
かとの懸念に関して、「そのような交渉はまったく行われていない。過去
にもない」と強調したが、こうも述べた。

「金正恩は、米国が相応の対策をとる場合、すべてのプルトニウム及びウ
ラニウム濃縮設備を解体し破棄することにコミットした」「我々の側は
(それに対応する)多くの具体策を議論する準備を整えている」

ビーガン氏は北朝鮮の非核化に非常に楽観的だが、これより前の1月20
日、政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)が北朝鮮の東倉里ミ
サイル施設の解体作業が進んでいないことや、未公表の複数の核・ミサイ
ル関連施設が存在することを示す画像を公開した。29日には国家情報長官
のダン・コーツ氏が、「北朝鮮が核兵器を完全に放棄する可能性は低い」
と上院情報特別委員会で証言した。

ビーガン氏はこうした情報について、「情報の正確性ではなく、公開の仕
方が不満だ」とし、「もし、私なら同じ情報をこのように公開するでしょ
う──米国への深刻な脅威がここに存在している。我々の外交路線を変える
ことで北朝鮮を変えることができるかを見極めるために、北朝鮮と外交関
係をより深めることが重要だ、と」。

米国はなぜこんな希望的観測に基づく柔軟路線に転換したのか、その背景
はビーガン氏の講演から読みとれる。

「トランプ大統領と金委員長の方式はトップダウンです。成功すれば二国
間関係は根本的に生まれ変わる」

過去5カ月間、北朝鮮との交渉の時期と場所を決定するのにも大いに苦労
したビーガン氏は、北朝鮮は真意を測り難い国だと言う。だが、トランプ
氏は北朝鮮非核化をいつも「希望に燃えた星のような目」で語るそうだ。
トップダウンで北朝鮮の非核化を達成できる、トランプ氏はそう確信して
いるということであろう。そのような型破りの二人の首脳を信頼すれば、
年来の常識的外交路線から離れて、両首脳の「手腕」に期待することにな
るだろう。

米国の北朝鮮外交は日本のそれに直接的かつ大きく影響する。横田めぐみ
さんら多くの日本人が今もとらわれている。北朝鮮への姿勢を緩めて大丈
夫か、とトランプ氏の前のめりの姿勢に懸念を抱くのは当然である。

別の理由からトランプ氏の北朝鮮政策に気を揉んでいるのが中国国家主席
の習近平氏だ。安易に論ずることはできない中朝関係だが、中国が北朝鮮
の動向掌握に努め、北朝鮮と米国が、中国の頭越しに関係を深めていくの
を恐れているのは確かだ。何としてでも北朝鮮をコントロールし、朝鮮半
島を影響下に置いておきたいのである。

しかし今、トランプ氏の進める外交はまさに中国の頭越しになりかねな
い。韓国が北朝鮮につき従い、米朝が結び、中国が反発するという展開も
含めて、日本にとっても、朝鮮半島外交は正念場。緩和策の危険を米国に
説く時だ。

『週刊ダイヤモンド』 2019年2月16日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1267

◆「お前の女房は元から俺のもの」

渡部 亮次郎


わが国の尖閣諸島に対して突如として中国が領有権を主張し始めたのは
1969(昭和44)年のことだった。佐藤栄作内閣の頃だったが、わが国メディ
アは無視した。

後日、外相秘書官になった時、この間の事情を外務当局に質したところ
「自分の女房をオレのもんだ、と連日叫ぶ事は恥ずかしいじゃない」と諭
された。世界の常識ではそうだろう。

だが中国にかかると全く違う。「あんたの女房は美人で金持ち。だから昔
から俺のものだったのだ」というのである。餓鬼の論理、ならず者の理屈
だ。だから外交課題には適さない。

理不尽を力で通そうとするのは布告なき宣戦とでも呼ぶしかない。菅首
相、仙谷官房長官、前原外相ら(いずれも当時)は、ここが判っていない。

しかも中国は昔は尖閣の海底に眠る石油とガスが欲しくて悪たれたが今や
違う。尖閣の辺りを自由に航行できなければ、目指す太平洋支配が可能に
ならないので、一段と態度が強硬になってきているのである。

それなのに、日本のいう「冷静な話し合い」などに応じるわけが無い。応
じていたら野望が挫かれかねない。

菅首相や仙谷官房長官らは、すべて「事は大きくしたくない」から「穏
便」ばかりを口にし、すべて下手に出れば大きくならないと決めているよ
うだ。

しかし、日中平和友好条約の締結交渉に従った少ない経験からするとこ
ろ、日本人と根本的に違っていて、当方が1歩譲歩すれば2歩踏み込んでくる。

事はロシアをして北方領土問題にも関連するから、政府は命がけで踏ん張
らなくてはいけない。

ところでジャーナリスト水間政憲氏が明らかにしたところに依れば、中国
は7〜8年前から東京・神田の古書店で中国の古地図を買いあさって、今
では出回らなくなった。(「週刊ポスト」2010年10月15日号」。

それは「工作」に当って「証拠」となる北京市地図出版社1960年発行の
「世界地図集」第1版を地上から消す為であった。この地図では尖閣諸島
は日本の領土として、確り日本名の「魚釣島」「尖閣群島」と表記されて
いるからである。

「この地図はたった1冊、日本外務省中国課が所蔵している」と水間氏。
「政府はただ東シナ海に領土問題は存在しない、と言うだけでなく、この
地図を中国に証拠として突きつけるべきだ」とも。
それを受け入れる中国では無いだろうが、おまえの女房はいい女房だから
昔からオレのもんだったというごろつきの一時的な口ふさぎには役立つか
もしれない。2010・10・5執筆 

◆重慶で「大量失業」の悲鳴

宮崎 正弘


平成31年(2019年)2月15日(金曜日)弐 通巻第5991号   

 中国内陸部、モデル都市の重慶で「大量失業」の悲鳴。
  「求人ファア」を開催、出展企業ゼロの異常事態が発生

中国国家統計局の失業率は4・9%と公表されている。誰が信じるのだろ
うか、この数字を。地域的に失業率は20%を確実に超えている。

習近平の子飼い、陳敏爾が党書記を務めるのが重慶市。かつては蒋介石の
首都でもあり、内陸の要衝。重工業が栄えた。

長江(揚子江)に面し、運送の利便性が経済成長をもたらした。

そこで胡錦涛時代にライジングスターと言われた薄煕来が重慶市の党書記
に就任し「革命歌を謳おう」「黒(マフィア)を追放しよう」と呼びか
け、ギャング退治で勇名を馳せた王立軍を遼寧省から呼び寄せ、副市長兼
務公安部長としてマフィアを次々と逮捕した。これで薄は全国的に注目さ
れて、習近平最大のライバルともなった。

薄夫人の谷開来が息子の家庭教師だった英国人を殺害した事件がばれ、薄
夫妻は失脚、王立軍は直前に成都の米国領事館に駆け込んで亡命を希望し
たのだが、オバマ大統領は北京の顔色を伺うばかりで、王立軍を見殺しに
した。

薄失脚の後を襲ったのは共青団のホープの一人だった孫政才だった。しか
し汚職の嫌疑をかけられて失脚し、その後釜となったのが習の家来である
陳敏爾だった。

陳は、その前の赴任地貴州省で辣腕を発揮したとされるが、舞台裏では、
習近平の手厚い支援策があり、中国のシリコンバレーとも言われるほどに
成長させたと称賛された。

その陳が重慶の党書記として乗り込んだからには、重慶は十分な政策支援
がなされ、全国のモデルとして発展する筈だったのだ。

ところが、重慶市は夥しい失業にあふれ出し、求人は36%ものダウン、そ
れでも市当局は失業率が4・9%と言って開き直る。
 重慶の合弁自動車工場をもつフォードは従業員1・8万のうち、レイオ
フばかりか、多くの社員をパートタイム(臨時雇い)に切り替えた。
 
重慶は泥縄式に「求人ファア」を開催したが、出展企業ゼロの異常事態が
発生した。


 ▼「灰色のサイ」問題が表面化した

「灰色のサイ」と言われるのは過剰債務問題である。

習近平は「黒の白鳥も、灰色のサイ」にも気をつけようと演説したため
に、メディアが大きく報じる。

中国の過剰債務。かねてから著作や小誌を通じて、筆者はウォール街の債
権専門家などの数字をもとに、おそらく「中国の債務は3700兆円前後だろ
う」と見積もってきたが、2018年8月のBIS統計で、中国の過剰債務は
220兆元(邦貨換算で3740兆円)。奇しくも同じ数字をBISが用いてい
ることが分かった。 
 
この状況下にまだ中国が発展すると踏んで投資を増やす日本企業がある。
狂気の沙汰ではないのか。

しかも、もっとも親中派の企業とされる伊藤忠の社員がスパイ容疑だとイ
チャモンをつけられ1」年以上も中国の公安当局から拘束されていること
が判明した。