2019年04月23日

◆ドゥテルテ比大統領が示す中国への怒り

櫻井よしこ


「ドゥテルテ比大統領が示す中国への怒り 国際社会で共に対処する発想
こそ重要だ」

フィリピンのドゥテルテ大統領が4月4日、自国が領有する南シナ海の島周
辺に数百隻の中国船が押し寄せているとして、中国に強い不快感を表した。

「パグアサ島に手を出すな。手を引かない場合、自爆任務を担う部隊を送
り込むことも辞さない」と、当然のことだが、領土に関しては一歩も引か
ない構えを示した。

パグアサ島は南シナ海のスプラトリー諸島の一部で、フィリピンが領有す
る9つの島の内、最大の島だ。住民はおよそ100人である。

今年2月4日、国防大臣のロレンザーナ氏は、同島の港湾施設の改良工事が
進行中だと発表した。空港の滑走路などが老朽化しており、早急に修理が
必要で、資材搬入に港の整備が必要だという。同計画は前年末には完成予
定だったが、中国の不当介入で進行は遅れ、現在も未完成だ。

中国はどのように介入してきたのか、ロレンザーナ氏が昨年11月に語って
いる。

「フィリピン駐在中国大使がパグアサ島の港の整備計画中止を要求
(urged)してきました」

フィリピン政府が自国領の島を整備するのに、中国が口を挟むべき理由な
どない。だが、中国は以前から露骨に介入し続けている。2017年8月、
フィリピン漁民が同島の砂州に休憩用の小屋を建てたとき、中国側は小艦
隊を派遣して島を取り囲んだ。100隻近い漁船も押し寄せた。フィリピン
政府は米沿岸警備隊から譲り受けたハミルトン級の艦船を派遣した。

シンクタンク「アジア海洋透明化構想(AMTI)」によると、パグアサ
島に押し寄せた中国漁船はすべて中国海洋軍への所属を示す旗を立ててい
た。さらに注目点は、漁船の大半がGPS(全地球測位システム、中国の
GPSは「北斗」)を搭載していなかったことだ。約100隻の漁船の内、
「北斗」搭載は一隻だけだった。残りの小型漁船は何を期待されているのか。

シンクタンク「国家基本問題研究所」研究員で東海大学教授の山田吉彦氏
は語る。

「中国政府は彼らを、パグアサ島に置き去りにするということでしょう。
漁民たちにはその島の住人となって、中国政府の次の指令を待つことが求
められていると思います」

漁民の中には軍人も当然交じっている。彼らはいざという時には立ち上
がって中国軍と一緒に島を奪う。彼らの常套手段だ。

中国は南シナ海を派手に埋めたてて国際社会の反発を招いたが、派手な立
ち回りの陰で、パグアサ島のように、国際社会が余り注目しない、目立た
ない島々でも確実に侵略の手を広げている。まさにその点で憂慮すべき事
態が起きていると、AMTIが警告する。

南シナ海の北部にあるパラセル諸島のボンベイ礁に中国が新たなプラット
ホームを建てた。灯台しかなかった島に、27メートル×12メートルのプ
ラットホームが海面から一定の高さの所に造られ、124平方メートルの太
陽光パネルが設置された。隣に航空機用のレーダーアンテナを保護する屋
根も見てとれる。建造物の下部構造は、衛星情報では判断できない。

AMTIの専門家はこれを次のように分析した。ボンベイ礁はパラセル諸
島とスプラトリー諸島間の航行路の要衝に当たるため、ここにレーダーを
設置して行き交う船の情報すべてを得ることが目的と思われる。比較的小
型の設備で十分に機能するため、インテリジェンスの視点では非常に重要
な役割を果たし得る。目立たない形で、中国は情報戦における対米優位を
確立できる。国際社会の非難の的になる派手な大規模工事から隠密行動へ
と、中国は戦術転換をしたとの分析だ。

ドゥテルテ大統領の怒りを共有して、共に対処する発想こそ重要だ。

『週刊ダイヤモンド』 2019年4月20日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1276

◆アサンジ逮捕の顛末は漫画的だ

宮崎 正弘


平成31年(2019)4月19日(金曜日)通巻第6049号  <前日発行>

 一連のドタバタ、アサンジ逮捕の顛末は漫画的でさえある
 裏切り者の末路なのに、アサンジ支持の左翼は抗議集会、ウィルス攻撃

ウィキリークスの創業者、少年時代からの天才的ハッカー、世界の情報漏
洩のセンター、婦女暴行常習犯、奇行愛好家、そして自由世界の機密を漏
らした裏切り行為の数々。世界にその悪名を轟かせたジュリアン・ポー
ル・アサンジが4月11日にロンドンで逮捕され、起訴された。

米国は国防総省、国家安全保障局などから機密情報を盗み出しウィキリー
クスに掲載したことを反逆罪と見なしており、いずれ身柄の引き渡しを英
国に要求すると見られる。

アサンジは2016b年の大統領選挙のおりも民主党本部のコンピュータに忍
び込んで機密を盗んだとされ、げんにヒラリー・クリントンは「わたしが
トランプに負けたのはアサンジの所為よ」と批判しているくらいだ。

また国防機密は米国内における協力者マニングという共犯者がすでに逮捕
され、服役しているため米司法省は主犯格のアサンジを法廷で裁くのは当
然としている。

アサンジがロンドンのエクアドル大使館に逃げ込んで亡命を求めたのが
2012年6月だった。

爾来7年、寛大なエクアドルは彼を大使館内に住まわせ、その大使館とい
う治外法権を活用したアサンジのスパイ行為を黙認した。アサンジ警護の
ためにエクアドル政府はおよそ6億5千万円、くわえて食費など大使館七
年間滞在中にアサンジに使われた金額はおよそ7億円に達する。エクアド
ルは貧困な国であり、この出費は納税者の税金でまかなわれる。

エクアドルは赤道直下という意味だが、政治的にも不思議のくに、でもあ
る。太平洋上はるか沖1000キロにはガラパゴスをかかえ、他方でバナナ、
カカオ、珈琲など輸出国としても知られるが、法定通貨は米ドルなのである。

首都はグアイキル。人口は1400万人。1人あたりのGDPは6000ドル弱。
最大都市はキトだ。

これらの輸出に携わる商社、明治時代からの移民があって、ささやかな日
系社会もあるが、国民の主力は原住民とスペインの混血である。

アサンジは英国のエクアドル大使館をスパイ活動のセンター化し、施設内
では寄行を繰り返し、さんざんな悪態のうえ、エクアドル政府の機密を
ウィキリークスに漏らしていた。とくにモレノ大統領の私的会話やら、家
族の機密を漏らしたため、大統領側も激怒していた。

もともとエクアドル政府が、アサンジ亡命を受け入れたのは、反米という
政治イデオロギーからである。

コレア前大統領は反米政治家で、騒ぎを大きくしようと受け入れ指示を出
したとされる。その証拠に、現在、事実上ベルギーに亡命しているコレア
は「モレノ政権のアサンジ逮捕は自由言論への野蛮な挑戦だ」と反米意識
丸出しの非難声明を出している。

世界をかき荒らしたアサンジの直接の犯罪容疑は、2010年にスウェーデン
で4件の婦女暴行で訴えられ、裁判となり、保釈が認められたが、2012年
に保釈中の身でありながらスイスに亡命を申請し却下されたりした。

そこでロンドンのエクアドル大使館に逃げ込んだが、エクアドルはアサン
ジに市民権をあたえたばかりか、2017年には国籍も与えた。それほど厚遇
だった。今回の逮捕により、市民権剥奪、国籍取り消しも予定している。
なおスエーデンは告訴を取り下げている。


 ▲反米国家なのに通貨は米ドル、急速に親米外交に修正していた

温厚で福祉政策を推進するレーニン・モレノ(エクアドル大統領)を激怒
させたのは、限界を超えた悪行で、壁に汚物を塗りたくったり、警備員を
殴ったりのやりたい放題を、これ以上放置できなくなったからだとされる。

しかし実際は反米路線から大規模な軌道修正で、エクアドル外交を親米路
線に切り替えたことが基本の流れにある。
その前段階にエクアドルは、南米諸国家のALBA(ボリバル同盟)から
脱退し、ついでUNASUR(南米諸国連合)からも脱退。米国と急速に
関係修復に動き、ペンス副大統領が訪問したあたりから、米国は武器供与
を再開した。

そもそもモレアは、コレア政権10年の時代、副大統領であった。また1990
代に銃撃を受けて半身不随となり、車いす生活。世界でも珍しい車いす元
首として福祉予算を50倍にするなどノーベル平和賞推薦の動きがあったほ
どだった。


 ▲南米で親米路線は難しい選択なのだ

モレアはタイミングを選んだ。

南米諸国の中でエクアドルは孤立を避けたい。なにしろアサンジ保護は反
米諸国からは歓迎され、称賛されていたのだから。

しかし、南米諸国の団結は脆かった。

転機はベネズエラだった。原油価格暴落によって経済が立ちゆかなくなっ
たベネズエラは中国に救いを求めたが、ひややかにあしらわれた。インフ
レ率はついに280万倍、通貨は紙くず化し、国民の350万人がブラジルとコ
ロンビアに避難した。

資金枯渇のベネズエラはニカラグア支援が困難となり、このタイミングを
選ぶかのようにトランプ政権はニカラグア、ベネズエラ、キューバの三カ
国に対して規制強化と経済制裁を加えるとした。

このタイミングを見逃してはならない。モレアはアサンジ追放を決定した。

他方、アサンジ逮捕に抗議し、言論の自由の弾圧だなどと豪、スペインな
どでは極左グループが集会を開催したほか、ハッカーにとってアサンジは
英雄。逮捕直後からエクアドル政府にかけられたサイバー攻撃は4000万回
を超えた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  ♪
(読者の声)「大阪都構想」について、前稿で「組織論などは、それほ
ど新奇なものが出てくるわけもなく、歴史的に見ると『逆行』のような場
合も多いのです。」と述べました。

たとえば衆議院小選挙区制などもそうです。

戦前を含めた歴史を見ると、我が国も、大選挙区制、中選挙区制、小選挙
区制をすべて「体験」しています。小選挙区制については、戦後だけで
も、鳩山一郎内閣、田中角栄内閣で提言されています。

したがって小選挙区制の実行も、「変革」ではあったとしても、新規性は
なく、革新性もない、いわば回帰というにすぎません。予期された以上の
弊害が顕在化しているのが現状のように私には思えます。

しかし、これを実施しようとした際は、多くの人が、「政治改革」の切り
札かのごとき口調で、熱気をもって唱導したのではなかったか。

組織論で言えば、たとえば、多くの金融グループが、純粋持株会社の合法
化(これも、GHQの占領政策以来、長く禁止されていたものが、規制緩
和で「復活」したもの)にともなって、純粋持株会社を設立しました。

しかし、「二層構造」とする以上は、そこでは当然に、持株会社と個別企
業との間で相克、二重統治の問題が生じることは必然でしょう。

グループ経営を所掌する持株会社と傘下企業との間で、グループ経営施策
と個別企業施策を調整できない弊害が大きく、これを一元化したいという
のならば、組織的に、持株会社と主要企業を合併して、事業持株会社にす
るほかないでしょう。

しかしそうすると、事業持株会社と子会社企業群との間で、明白な支配・
被支配関係、上下関係が生じますから、グループ経営という面では問題と
なります。

また、これでは、元々の問題局面に回帰するということに過ぎず、組織的
に、以前から取られてきたグループ体制、資本政策に「復帰」するという
ことです。

今回の、大阪府と大阪市を、実体的に合体するという案は、従来は、広域
行政を行う府と基礎行政を行う市の間で、その権限(財源)配分が円滑に
行われていなかったことから、これを一体化するということでしょうか
ら、少し粗っぽい比喩をすれば、純粋持株会社体制で二重統治の弊害が大
きくなりすぎてきたので、持株会社と最大子会社が合併して、事業持株会
社体制に変えるということでしょうか。

もちろん、それが望ましいのならば、そうすればよいのでしょうが、提案
者とそのお為ごかし連中が言うほどの「改革性」はない。

要するに私が言いたいことは、組織体制など、しょせんは完全ではありえ
ず、メリット・デメリットは夫々に想定され、不可避なのであって、安易
な組織いじりに頼るのは愚策だということです。

まずは、作用的に、運用的に問題解決を図っていくべきです。

私の知る限り、大阪府と大阪市の水道事業の一体化を図ろうとしたもの
の、成功せず、個別事業の統合ではなく、組織全体の統合に「転換」した
というのが、今回の提案経緯ではないでしょうか。

それも当初の構想のように、政令指定都市である堺市はもちろんのこと、
大阪市周辺都市の相当部分をも包含した、構造的一体化というような「建
設的」「未来展望的」な構想ならともかく、現在の案は、単なる大阪市解
体論に矮小化されてしまっています。

橋下元知事・市長というか「維新」と称する怪しげな組織体は、水道事業
の統合さえ実行できなかった自らの統治能力、調整能力の不足を隠したま
ま、「大阪市解体論」に逃げているのでしょう。

単に大阪市を解体するだけでは、現在の大阪市水道事業は、特別区から成
る一部事務組合が管理主体とならざるを得ず、「改革」どころか、まった
くの「改悪」でしかない。

何よりも水道事業の統合さえ実行できなかったような者が、さらに大きな
統合政策を建設的、未来指向的に実行できるわけがないではないか。

こんな簡単なごまかしに騙されようとしている大阪市民には哀しくなりま
す。(椿本祐弘)


◆インフルエンザの常識・非常識

石岡荘十


正直言って、「インフルエンザとは何か」、関心を持って集中的に学習し始めたが、まず気がついたのは、今までインフルエンザに関して持っていた知識・感覚、“常識”がいかにいい加減で、非常識なものだったかということである。

と同時に、専門家の話をきいたり本を読んだりすると、ことによると国家を滅亡させる引き金ともなりかねないほどの猛威を振るう“身近な”病についていかに無知であるかを思い知らされる。

まず、
・病名について、である。
「インフルエンザ」はなんとなく英語のinfluenceから来たものと思っていたが、その語源はイタリア語の「天体の影響」を意味する「インフルエンツァ」であった。中世イタリアでは、インフルエンザの原因は天体の運動によると考えられていたからだそうだ。

・「スペイン風邪」は濡れ衣
歴史のなかでインフルエンザを疑わせる記録が初めて現れるのは、もっとずっと前の紀元前412年、ギリシャ時代のことだったという。その後もそれと疑わせるインフルエンザは何度となく起こっているが、苛烈を極めたのは1580年アジアから始まったインフルエンザで、全ヨーロッパからアフリカ大陸へ、最終的には全世界を席巻し、スペインではある都市そのものが消滅したと記録されている。

より詳細な記録は1700年代に入ってからで、人類は以降、何度もパンデミック(世界的大流行)を経験している。なかでも、史上最悪のインフルエンザは「スペイン風邪」である。
というとスペインが“震源地”、あるいはスペインで流行ったインフルエンザだと誤解されがちだが、発祥は、じつは中国南部という説とアメリカのどこかで始まったという説がある。

が、確かなことは1918年3月、アメリカ・デトロイト、サウスカロライナ州、そして西海岸で姿を現したということだ。

その頃世界は第1次世界大戦の真っ只中にあり、アメリカからヨーロッパ戦線に送られた兵士を宿主としたウイルスがヨーロッパ席巻の端緒を開いた。大戦の当事国は兵士が病気でバタバタ倒れている事態を隠蔽し続けたといわれる。
ところが参戦していなかったスペインでは情報統制を行わなかったため、大流行がことさらフレームアップされ伝わったのではないか、と推測されている。「スペイン風邪」はとんだ濡れ衣なのである。

・第二波の毒性をなめるな
スペイン風邪の猛威は、その後2年間、第2波、第3波---と毒性を強めながら津波のように襲い掛かり、猖獗を極めた。第2波の初期、アメリカ東海岸から公衆衛生担当者が国内担当者に送ったアドバイス。

「まず木工職人をかき集めて棺を作らせよ。街にたむろする労働者をかき集め墓穴を掘らせよ。そうしておけば、少なくとも埋葬が間に合わず死体がどんどんたまっていくことは裂けられずはずだ」(『アメリカ公衆衛生学会誌』1918)積み上げられた死体の山を「ラザニアのようだ」と表現するほどだった。

毒性が弱い新型インフルエンザの場合はこんなことにはならないと言うのが今の見方だが、少なくとも秋口と予想される第二波がこの春よりはるかに強烈なものとなる可能性は否定できない。これが常識である。なめてはいけない。

・「寒い地域の病気」はウソ
つい先まで、インフルエンザは寒いところで流行るもの、と思い込んでいた。ただ、それにしては夏になってもじりじりと患者が増え続けるのはどうしたことか。

インフルエンザは、熱帯地域でさえ年間を通して穏やかに流行っている。だが熱帯ではマラリアやデング熱など、臨床症状がインフルエンザに似ているので、インフルエンザと診断されなかった可能性が否定できないという。人口当たりの死亡率は温帯・寒帯地域より高いという報告さえある。

日本では、新型インフルエンザは冬であるオーストラリアなど南半球に移っていったという一服感が支配的だ。世界中で笑いものになった日本のあの“マスクマン”も見かけなくなった。マスコミもあの騒ぎをお忘れになってしまったようだ。

しかし、ウイルスは日本だけでなく北半球のイギリス、ドイツでも決して衰えてはいとWHO(世界保健機関)に報告している。いまや新型インフルエンザは「地域の寒暖に関係なく1年を通して穏やかに流行している」というのが常識である。

やはり、この際の世界の常識は、WHOのホームページで確認するしかないと私は考えている。   

2019年04月22日

◆「安倍晋三首相への忖度」

田中一世


塚田一郎元国土交通副大臣の「忖度(そんたく)」発言を足がかりに、野
党や一部マスコミは関門新ルート(下関北九州道路)整備構想について、
「安倍晋三首相への忖度」「利益誘導」と批判している。実際は地元が災
害時などを想定して長年熱望してきたのであり、国の直轄調査への引き上
げを忖度や利益誘導の結果と見なすのは無理がある。構想が政局に巻き込
まれて頓挫しないか懸念される。

「安倍麻生道路」とレッテル貼り

道路は、首相の地元・山口県下関市と麻生太郎副総理兼財務相の地元に近
い北九州市を結ぶ構想だ。塚田氏は4月1日、北九州市で開かれた福岡県
知事選候補の集会で「私はすごくものわかりがいい。すぐ忖度する。首相
や副総理がそんなことは言えない。でも私は忖度する」と発言した。

道路整備で首相や麻生氏の地元に便宜を図ったと受け取られかねない問題
発言である。野党側は「安倍麻生忖度道路」(立憲民主党の辻元清美国対
委員長)と政権批判を展開した。

安倍総理の行くところ忖度腐敗あり。行くところ行くところ、何か起き
る。歩くmiyako 都度腐敗というか、行くところに何かがある」(辻元氏)

「公共事業の地元への利益誘導の可能性がある。やはり政権が長期化し
て、ある種の緩み、おごり、権力の私物化が目立ってきている証左ではな
いか」(国民民主党の玉木雄一郎代表)

「忖度によって国の直轄事業に引き上げられた事実は変わらない」(共産
党の志位和夫委員長)

「首相への忖度という最大の禁句」(政権幹部)が飛び出せば野党は当然
食いつく。与党内でも批判が相次ぎ、塚田氏は辞任した。

発言は問題だが、実際に忖度と利益誘導があったとは考えにくい。

野党幹部もさすがに、副大臣が気を回したくらいでこれほどの大事業を進
める権限を持つと信じているわけではあるまい。常識的に考えれば、集会
を盛り上げようと焦り、過剰なリップサービスをしたということだろう。
塚田氏は「大きな会合で雰囲気に飲まれた」と説明している。

自民・吉田氏も否定

野党は、関門新ルート構想を推進する「参院議員の会」会長を務める吉田
博美自民党参院幹事長が、昨年12月に塚田氏に国土交通省で面会した際に
「首相や麻生氏への忖度」を要求し、塚田氏が直轄調査に引き上げた−と
の筋書きを描くが、これも無理がある。国交省が衆院に提出した両氏の面
会記録では、吉田氏の発言がこう記されてる。

「総理、副総理と言うと国交省もやりにくいだろう。与党、公明党、野党
で協力して進めていく」「総理、副総理の地元とは関係なく、中国・九州
の経済や後世のため、オールジャパンで必要な道路」

道路構想は以前から反対派に「安倍麻生道路」と揶揄(やゆ)されてき
た。吉田氏は「必要な道路であるからそうした誤解を受けないように与野
党で協力していきたい」との考えを述べているに過ぎない。塚田氏発言の
4か月前の講演でも、首相官邸を訪ねた際のこんなエピソードを披露して
いた。

「総理は『吉田さん、あれは僕の選挙区(に関係する事業)だからやりに
くいんだよね』と。総理(の仕事)は全国をどうするかだから。やっぱり
地元への利益誘導の仕事はされないんだなと思った」

関係者にとっては、首相と麻生氏の地元に絡む事業であることが逆に悩み
の種になっていたのでる。

そもそも、長年にわたる構想の経緯を見れば、忖度や利益誘導批判は的外
れだとわかる関門新ルートは本州と九州を結ぶ大動脈で、地元自治体や経
済界は平成3年に早期建設を訴える組織を設立。

28年にわたり実現を訴えてきた。本州と九州を結ぶ既存のルートは、トン
ネル(昭和33年開通)と橋(昭和48年開通)の2本だけで、ともに老朽化
している。特にトンネルは大規模補修工事のたびに年間60〜100日程度の
全面通行止めになる。事故や落下物による通行止めも2日に1回以上の
ペースで発生し、渋滞が慢性化している。

トンネルと橋の通行止めが重なれば本州と九州の車両通行が遮断され、防
災、物流、市民生活に大きな影響が生じる。昨年の西日本豪雨では両方が
通行止めになった。国の直轄調査が決まった背景にはこうした経緯もあ
る。立憲民主党や国民民主党の地元議員も推進運動に加わっており、事情
をよく知っているはずだ。

野党は引き続き国会で問題を追及していく方針だが、事業の必要性が脇へ
追いやられる事態は避けなければならない.(産経新聞政治部)

at 09:00 | Comment(0) | 田中一世

◆「大紀元」を知ってますか

渡部 亮次郎


大紀元(だいきげん、英: The Epoch Times)は、新聞とインターネット
を報道媒体とする華僑系報道機関である。

2000年5月、ニューヨークで“中国共産党言論統制を突破する”華人たちに
よって設立された。2011年1月現在、新聞では9ヶ国語、ウェブサイトでは
17ヶ国語でそれぞれ各国支局により運営されている。

日本では東京都台東区に事務所を置き、中国語版を2001年、日本語版を
2005年から発行している。

数年前、私は東京での社員集会に招かれて講演したことがある。社員の多
くは来日後「反共」になった女性が大部分だった。

アメリカ国内に11の支社を持ち、日本やカナダ、イギリス、ドイツなど、
世界30カ国にグループ社がある。

ワシントンD.C.やニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ボス
トン、カナダ、オーストリア、香港、台湾では日刊で、他の国・地域では
週刊で発行している。 全世界での中国語版の発行は週120万部。他に英語
版、ドイツ語版、フランス語版、ロシア語版、韓国語版、日本語版を発行。

紙面およびウェブサイトで、「中国共産党の圧力に屈せずいかなる検閲も
受けていない」ことを売りにしており、「中国国内では発信されない自由
民主に基づく視点」で、中国時事や文化記事を中心に報道している。

中国大陸以外で生活する中国人向けに記事は書かれており、中国共産党の
内政や外交問題を報道し続けている。特に中国共産党に対する報道姿勢は
非常に批判的である。

特に中国大陸における法輪功迫害問題(例:大量虐殺罪と拷問罪で中国前
江沢民国家主席がスペインおよびアルゼンチン裁判所で民事告訴されるな
どについては、他メディアが取り上げない事実を報道している。

他にもチベット民族、ウイグル民族やモンゴル等の少数民族に対する虐殺
や人権蹂躙に関する問題、中国共産党員の国外スパイ活動、中国大陸の環
境問題、中国の民主化運動などについて盛んに報じている。

『九評共産党(共産党についての九つの論評)』という社説を発表し、こ
の中で大紀元は中国共産党の暴政を糾弾し、同党の解体要因を指摘した。

九評共産党について中華民国元総統・李登輝は、「人も山河もみな、本源
へ帰る。奥の細道にたたずむ平安のみなもとを希求するすべての人々に、
この本を薦める」と評価し、「道徳的覚醒を促す」と出版社博大書店へ
メッセージを送った。

中国臓器狩り問題 の追究に熱心だ。2006年3月、中国人ジャーナリストR
氏は大紀元の単独取材の中で、東北部の瀋陽市近郊にある大型刑務所に数
千人の法輪功学習者が監禁され、当局が彼らを殺害した後、販売目的で臓
器を摘出している事を暴露した。

同問題が世界に明るみになった後、カナダの著名人権弁護士デービッド・
マタスと、カナダ政府元内閣大臣デービッド・キルガーは中国の臓器狩り
問題について調査依頼を受け、2007年7月、法輪功学習者が生きたまま臓
器を摘出されるというショッキングな内容を含んだ報告書「血塗られた臓
器狩り」を発表した。

この問題は世界のメディアや人権団体が注視している。この件でアルゼ
ンチンやオランダ、スペインなどで江沢民らを「人道に対する罪」で起
訴する動きがある。

受賞  2005年8月、アジア系アメリカ人ジャーナリスト協会の全国報道
賞、アジア・アメリカ問題ネット報道部門で優秀賞を受賞。 2005年9月、
カナダ全国マイノリティーメディア協会の2005年メディア賞を受賞。

2006年4月20日、アメリカのホワイトハウスで行われた中国の胡錦濤国家
主席の歓迎式典で、大紀元の女性記者・王文怡(ワン・ウェンイ)が式
典中、ジョージ・ブッシュ大統領の目前で胡錦濤を批判する発言(中国
共産党による臓器狩り問題に対して抗議する内容)を叫んだとして、国
際問題になった。その後、大紀元はアメリカ政府に謝罪し、王記者は解
雇された。2012・4・9

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://www.epochtimes.jp/

◆ドゥテルテ比大統領が示す中国への怒り

櫻井よしこ


「ドゥテルテ比大統領が示す中国への怒り 国際社会で共に対処する発想
こそ重要だ」

フィリピンのドゥテルテ大統領が4月4日、自国が領有する南シナ海の島周
辺に数百隻の中国船が押し寄せているとして、中国に強い不快感を表した。

「パグアサ島に手を出すな。手を引かない場合、自爆任務を担う部隊を送
り込むことも辞さない」と、当然のことだが、領土に関しては一歩も引か
ない構えを示した。

パグアサ島は南シナ海のスプラトリー諸島の一部で、フィリピンが領有す
る9つの島の内、最大の島だ。住民はおよそ100人である。

今年2月4日、国防大臣のロレンザーナ氏は、同島の港湾施設の改良工事が
進行中だと発表した。空港の滑走路などが老朽化しており、早急に修理が
必要で、資材搬入に港の整備が必要だという。同計画は前年末には完成予
定だったが、中国の不当介入で進行は遅れ、現在も未完成だ。

中国はどのように介入してきたのか、ロレンザーナ氏が昨年11月に語って
いる。

「フィリピン駐在中国大使がパグアサ島の港の整備計画中止を要求
(urged)してきました」

フィリピン政府が自国領の島を整備するのに、中国が口を挟むべき理由な
どない。だが、中国は以前から露骨に介入し続けている。2017年8月、
フィリピン漁民が同島の砂州に休憩用の小屋を建てたとき、中国側は小艦
隊を派遣して島を取り囲んだ。100隻近い漁船も押し寄せた。フィリピン
政府は米沿岸警備隊から譲り受けたハミルトン級の艦船を派遣した。

シンクタンク「アジア海洋透明化構想(AMTI)」によると、パグアサ
島に押し寄せた中国漁船はすべて中国海洋軍への所属を示す旗を立ててい
た。さらに注目点は、漁船の大半がGPS(全地球測位システム、中国の
GPSは「北斗」)を搭載していなかったことだ。約100隻の漁船の内、
「北斗」搭載は一隻だけだった。残りの小型漁船は何を期待されているのか。

シンクタンク「国家基本問題研究所」研究員で東海大学教授の山田吉彦氏
は語る。

「中国政府は彼らを、パグアサ島に置き去りにするということでしょう。
漁民たちにはその島の住人となって、中国政府の次の指令を待つことが求
められていると思います」

漁民の中には軍人も当然交じっている。彼らはいざという時には立ち上
がって中国軍と一緒に島を奪う。彼らの常套手段だ。

中国は南シナ海を派手に埋めたてて国際社会の反発を招いたが、派手な立
ち回りの陰で、パグアサ島のように、国際社会が余り注目しない、目立た
ない島々でも確実に侵略の手を広げている。まさにその点で憂慮すべき事
態が起きていると、AMTIが警告する。

南シナ海の北部にあるパラセル諸島のボンベイ礁に中国が新たなプラット
ホームを建てた。灯台しかなかった島に、27メートル×12メートルのプ
ラットホームが海面から一定の高さの所に造られ、124平方メートルの太
陽光パネルが設置された。隣に航空機用のレーダーアンテナを保護する屋
根も見てとれる。建造物の下部構造は、衛星情報では判断できない。

AMTIの専門家はこれを次のように分析した。ボンベイ礁はパラセル諸
島とスプラトリー諸島間の航行路の要衝に当たるため、ここにレーダーを
設置して行き交う船の情報すべてを得ることが目的と思われる。比較的小
型の設備で十分に機能するため、インテリジェンスの視点では非常に重要
な役割を果たし得る。目立たない形で、中国は情報戦における対米優位を
確立できる。国際社会の非難の的になる派手な大規模工事から隠密行動へ
と、中国は戦術転換をしたとの分析だ。

ドゥテルテ大統領の怒りを共有して、共に対処する発想こそ重要だ。

『週刊ダイヤモンド』 2019年4月20日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1276

◆「三叉神経痛」に有効な治療法!

〜ガンマナイフか?手術か?〜

中村一仁
(脳神経外科医師)

「三叉神経痛」に対する治療方法は、内服、神経ブロック、ガンマナイフ、MVD(microvascular decompression: 微小血管減圧術)と、多岐にわたる。
 
患者は痛い治療は好まないので、近年の治療手段としては低侵襲性と有効性からガンマナイフ治療を選択することも多くなってきた。

本論のガンマナイフ治療とは、コバルト線を用いた放射線治療で非常に高い精度で目的とする病変に照射することが可能な装置である。

さて本題。「三叉神経痛」というと聞きなれないかも知れないが、簡単に言うと、顔面が痛くなる病気である。一般には「顔面神経痛」という単語が誤用されていることがある。顔が痛くなるので「顔面神経痛」という表現はわかりやすい。

ところが、顔面の感覚は三叉神経と呼ばれる第5脳神経に支配されていることもあり、正しくは「三叉神経痛」というわけである。因みに顔面神経は、第7脳神経で顔面の筋肉を動かす運動神経の働きを担っている。

三叉神経痛の原因の多くは、頭蓋骨の中の三叉神経に脳血管が接触・圧迫し刺激となることで痛みが発生するとされている。
 
<対象・方法>
さて、1999年11月から2003年10月の4年間に、当センターで治療を行った三叉神経痛31例のうち、経過を追跡した29例についての検討を行った。ガンマナイフ施行1年後の有効率は69%(20/29例)であり、31%(9/29例)が無効であった。

そこで、このガンマナイフ治療により、治癒しなかった「三叉神経痛9例」の特徴について検討した。

<結果>
ガンマナイフ治療が無効であった「三叉神経痛9例」のうち4例で、MVD(微小血管減圧術)による手術治療が施行された。4例全例で三叉神経痛は消失軽快した。

ガンマナイフ治療無効例の術中所見は、クモ膜の肥厚や周囲組織の癒着などは認めず、通常通りMVDが施行可能であった。

ガンマナイフ治療が無効であった9例について、平均年齢65.7歳(46-79歳)、男性5例、女性4例。平均罹病期間8.7年(1.5-20年)、患側は右側5例、左側4例だった。

全例MRI画像にて圧迫血管を確認した。上小脳動脈(superior cerebellar artery:SCA)による圧迫病変は通常の割合より少なく、静脈や椎骨動脈による圧迫が4例と多かった。

ガンマナイフ治療が有効であった症例との比較では性別、年齢、罹病期間、病変の左右、圧迫部位に統計学的な有意差は認めなかったが、圧迫血管についてはガンマナイフ治療無効例で有意に上小脳動脈によるものが少なかった(χ2検定,P<0.05)。

<考察>
一般に三叉神経痛は脳血管が三叉神経に接触・圧迫することで生じるとされている。その圧迫血管として最も頻度が高いとされているのであるが、今回の検討ではSCAによる圧迫が少なく、ガンマナイフ治療無効例に特徴的な所見であると考えられた。

わが国で三叉神経痛に対する治療としては、抗てんかん薬であるカルバマゼピンの内服、ガンマナイフ、MVDといった選択枝を選ぶことが多い。MVDによる三叉神経痛治療は脳神経外科医Janettaの手術手技の確立により、安全に行なわれるようになった。

しかし、高齢化および低侵襲手術への期待から、近年ではガンマナイフ治療の有効性が多く報告されるようになってきている。

当センターでの経験では、三叉神経痛に対するガンマナイフ治療の1年後の有効率は69%であり、過去の報告と大差はなかった。ガンマナイフ治療後の再発例に対して検討した報告は散見されるものの、その再発・無効の機序は明らかではなく、ガンマナイフ治療後の再発例についての検討が必要である。

三叉神経痛の発症機序は、血管による圧迫と三叉神経根の部分的な脱髄により起こると考えられており、MVDにて減圧することでその症状は軽快する。

一方、ガンマナイフによる治療では、放射線照射に伴い三叉神経全体の機能低下が起こり疼痛制御されると推察されている。

このようにMVDとガンマナイフではその治療機序が異なるため、それぞれの利点を生かすべく、再発・無効例の検討を行い、治療適応を確立していく必要がある。

過去の報告ではガンマナイフ治療後の三叉神経痛に対してMVDを施行した6症例についてクモ膜肥厚や明らかな三叉神経の変化を認めず、ガンマナイフ治療後のMVDは安全に問題なく施行できるとしており、当センターでMVDを施行した2症例も同様の所見であった。

一方で、ガンマナイフ治療施行による血管傷害の例も報告されているが、再発との関連はないように思われる。

ガンマナイフ治療施行後の再発についての検討では、年齢、性別、罹病期間、以前の治療、三叉神経感覚障害の有無、照射線量、照射部位は再発と相関しなかったとの報告がある。

今回の検討では再発に関与する因子として、解剖学的な特徴に着目した。ガンマナイフ治療無効例では上小脳動脈による圧迫病変は通常の分布より有意に少なく、一般に頻度が低いとされている椎骨動脈やMVD後に再発し易いとされる静脈による圧迫が多かった。

このことはガンマナイフ治療無効例における何らかの解剖学的な特徴を示唆する。ガンマナイフ治療では画像上、三叉神経の同定の困難な症例や神経軸の歪みの大きい症例において正確にターゲットに照射することが困難な場合もあり、より広範囲に放射線照射を行うことも考慮されている。

前述の条件が揃うものにガンマナイフ治療の無効例は多いのかもしれないが、推論の域を出ない.この仮説が成り立つならば、MVDは直接的に血管を神経より減圧し、周囲のクモ膜を切開することで神経軸の歪みを修正することができるため、このような症例に対して有効な治療であるといえよう。

しかし、圧迫部位と再発に関連性なしとする報告や、MVD後再発再手術例の約50%で責任血管などの所見なしという報告、MVD無効後のガンマナイフ治療有効例が存在することも事実であり、解剖学的因子のみが治療方法の優劣を決定する要素とはならないのかもしれない。

また、初回のガンマナイフ治療で治癒しなかった三叉神経痛に対して、再度ガンマナイフによる治療を行なうことで症状が改善するとの報告もあるが、長期的な結果はなく、今後の検討課題のひとつである。

今回の研究ではガンマナイフ治療無効例にSCA(上小脳動脈)による圧迫が少なかったという解剖学的な点に着目したが、現時点では臨床的に三叉神経痛に対する治療としてのガンマナイフ治療とMVDは相補的な関係であるべきであり、今後さらに有効例、無効例を詳細に検討することで、各治療の術前評価においてその有効性が証明されることを期待したい。

<まとめ>
ガンマナイフ治療無効例に対して施行したMVDにて、4例中4例で三叉神経痛は消失軽快した。

ガンマナイフ治療無効例9例では静脈や椎骨動脈による圧迫を多く認め、ガンマナイフ治療有効例と比較して有意にSCAによる圧迫が少なかった。今後、ガンマナイフ治療無効例の特徴およびMVDの有用性について検討する必要があると考えられた。(完  再掲)

2019年04月21日

◆パキスタンで未曾有の「軍人」テロ

宮崎 正弘


平成31年(2019)4月19日(金曜日)弐 通巻第6050号 

パキスタンで未曾有の「軍人」テロ、海軍と沿岸警備隊員を狙い
 落下傘部隊の制服は偽装か。14名を殺害。軍内の抗争、それとも?

 パキスタンのパロチスタン地方。この地ではパキスタンからの独立を主
張し、これまでも頻発したテロはグアダール港開発の中国人を標的として
きた。

州都クエッタでは誘拐殺人。中国人のいる工事現場へのテロ攻撃など、こ
のため中国主導のCPEC(中国パキスタン経済回廊)プロジェクトは遅
延箇所がいくつか出ている。

4月12日にはクエッタの野菜市場で爆弾テロが発生し、20人が爆死、ほか
に50人が重軽傷を負った。同地区はハザラ人が多い地区として知られる。

4月18日午前0時過ぎ、カラチからグアダールへ向かうバスが、オルマラ
地区へさしかかったところ、落下傘部隊の制服を着込んだ男たち15名、な
いし20名があらわれ、6台のバスに停止を命じた。

乗客のパスポート、IDカードのチェックがあって乗客は選別され、14
名が殺害された。東社の殆どは頭部を撃たれた。2名が負傷しながらも逃
げ出しが、国境警備隊員も銃撃戦で死亡した。

パキスタンの有力紙『ドーン』紙や『アルジャジーラ』英語版によれば、
落下傘部隊の制服を偽装したテロリストは、乗客のなかから、パキスタン
海軍兵士ならびに沿岸警備隊を選別していたという。

現場はカラチからグアダール港へいたる653キロの国道で、アラビア湾に
面した沿岸の幹線道路である。

標的が中国人から軍人に変化した。その理由は何か?

パキスタンの軍のなかで抗争が起きているのか、それともバロチスタン警
備と独立運動活動かの間に恨みが深まっていたのか? 

 ¥バロチスタンは英国がかつてにパキスタンに編入した経緯があり、住
民は独立を叫んでおり、英国に亡命している国王が居る。治安は悪く、タ
リバンの秘密基地は、国際的テロリスト集団の根拠地にもなっていると言
われ、中国のプロジェクト現場はパキスタン軍が警備をしている。

インド、パキスタンのメディアはトップニュースにしているが、日本のメ
ディアはまだ一行も報道もない。

     
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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1万年にわたる縄文時代、草創期から前期、中期、後期にかけての変化
土偶のデザインの変化が意味する創造力の深さ、工芸の巧緻さ

   ♪
江坂輝彌『日本の土偶』(講談社学術文庫)
@@@@@@@@@@@@@@@@

30年前の名書が学術文庫に入った。本書は縄文土偶を、じつに300点を超
える図版を用いて、1万年以上前の日本人の生活や祈り、食事、その文化
を考察している。学者だけに推理も想像もなく、淡々と客観的事実だけを
列記し、それとなく推理小説のような解釈をした梅原猛らを言外に批判し
ている。

夥しい縄文遺跡の発見と、出土した土偶、こうした縄文土偶は草創期から
製作されていたことが近年の縄文考古学で広く認定され、しかも縄文土偶
は世界的な考古学者、美術史家の関心を集めている。

「土偶を作ったのは私たち同様近代的な人間だった」。そして「縄文人が
抽象的思考や表現、そして言語能力を私たちと共有し、また私たちと同じ
ように精巧な職人技や奇抜さを評価していた」(セインズベリーの序文)

評者(宮崎)は中学時代の歴史教科書で、静岡の登呂遺跡が日本で最古の
遺跡と教わった。

それが固定観念のように脳裏にこびりついて離れず、高校時代に無銭旅行
であちこち旅をしたときにわざわざ登呂へ見学に行った。近くの小・中学
は遠足のコース、遠くからも観光バスを仕立てて、もの凄い人出があっ
た。連日、登呂遺跡は超満員で周囲にはお土産や、レストラン、駐車場が
足りないと悲鳴を挙げていた。

過日、新幹線を静岡で降りて、登呂遺跡を再訪してみた。

じつに半世紀以上前に来てから歳月は流れてしまった。驚いたのはレスト
ランも土産店も閉鎖され、そもそも見学者がほとんど居ない。駐車場はが
ら空き、寂れ果てているではないか。

地元のタクシーの運転手が言う。

「あれから縄文遺跡があちこちに発見されて、登呂遺跡は弥生式時代でも
あって、『新しい』遺跡。いまじゃ、駐車場はいつもあいている」

本書は、縄文遺跡を全国に訪ねた専門家が、出土した土偶を中心に、装身
具や祭器などを分析し、その用途に思いを馳せながら、考察を深める。

一覧できる羅列形式なので、ロマンを期待する向きには、文章に綾もな
く、ひたすら淡々と事実が並び、土偶やアクセサリーの出土場所、発見日
時、発見者、出土したときに状態と形状、寸法などを克明に紹介している。

1万年にわたった縄文時代は草創期から前期、中期、後期に別れるが、そ
の期間の移行に伴っての変化が土偶のデザインにあらわれた。その変化が
意味することは縄文人の創造力の深さ、工芸の巧緻さである。

さて評者にとって本書を読んでの大発見は、次の箇所だ。評者は歴史学者
でも考古学者でもないから、素人の発想から注目したのである。
 江坂氏はこう書いている。

「1940年頃、奈良県橿原神宮外苑、現在の橿原公苑地区の遺跡の発掘調査
に(亀岡遺跡の遮光土偶の影響を受けた)多数の土偶が出土した」(191p)

多くは破損していたが、出土品のなかには「耳の位置に小円孔のある土
偶」が含まれており、縄文後期のものと認定される(211p)。

装飾品はペンダント、腕輪、イヤリング。つまり縄文女性はピアスをして
いたのである。

このさりげない文章には重要な意味がある。

橿原神宮と言えば、神武天皇が即位した神社であり、畝傍山麓にあって同
敷地内には神武天皇陵、綏靖天皇陵がある。

すなわち『古事記』によると、神武天皇の即位は紀元前660年であり、世
界史的にいえば同時代にはバビロニア帝国が築かれたネブカドネザル大帝
の時代に重なる。日本史では縄文後期から弥生時代の重複期にあたる。

林房雄が『天皇の起源』のなかで述べたように、天皇の原型が縄文中期に
成立したという仮説は、神武以前の統治者たち、集落の長、そして地方の
豪族の長を統一していった王、大王、スメラミコトと変貌した統治者が神
武以前にも何代も続いていたことを傍証することにも繋がっている。

◆ドゥテルテ比大統領が示す中国への怒り

櫻井よしこ


「ドゥテルテ比大統領が示す中国への怒り 国際社会で共に対処する発想
こそ重要だ」

フィリピンのドゥテルテ大統領が4月4日、自国が領有する南シナ海の島周
辺に数百隻の中国船が押し寄せているとして、中国に強い不快感を表した。

「パグアサ島に手を出すな。手を引かない場合、自爆任務を担う部隊を送
り込むことも辞さない」と、当然のことだが、領土に関しては一歩も引か
ない構えを示した。

パグアサ島は南シナ海のスプラトリー諸島の一部で、フィリピンが領有す
る9つの島の内、最大の島だ。住民はおよそ100人である。

今年2月4日、国防大臣のロレンザーナ氏は、同島の港湾施設の改良工事が
進行中だと発表した。空港の滑走路などが老朽化しており、早急に修理が
必要で、資材搬入に港の整備が必要だという。同計画は前年末には完成予
定だったが、中国の不当介入で進行は遅れ、現在も未完成だ。

中国はどのように介入してきたのか、ロレンザーナ氏が昨年11月に語って
いる。

「フィリピン駐在中国大使がパグアサ島の港の整備計画中止を要求
(urged)してきました」

フィリピン政府が自国領の島を整備するのに、中国が口を挟むべき理由な
どない。だが、中国は以前から露骨に介入し続けている。2017年8月、
フィリピン漁民が同島の砂州に休憩用の小屋を建てたとき、中国側は小艦
隊を派遣して島を取り囲んだ。100隻近い漁船も押し寄せた。フィリピン
政府は米沿岸警備隊から譲り受けたハミルトン級の艦船を派遣した。

シンクタンク「アジア海洋透明化構想(AMTI)」によると、パグアサ
島に押し寄せた中国漁船はすべて中国海洋軍への所属を示す旗を立ててい
た。さらに注目点は、漁船の大半がGPS(全地球測位システム、中国の
GPSは「北斗」)を搭載していなかったことだ。約100隻の漁船の内、
「北斗」搭載は一隻だけだった。残りの小型漁船は何を期待されているのか。

シンクタンク「国家基本問題研究所」研究員で東海大学教授の山田吉彦氏
は語る。

「中国政府は彼らを、パグアサ島に置き去りにするということでしょう。
漁民たちにはその島の住人となって、中国政府の次の指令を待つことが求
められていると思います」

漁民の中には軍人も当然交じっている。彼らはいざという時には立ち上
がって中国軍と一緒に島を奪う。彼らの常套手段だ。

中国は南シナ海を派手に埋めたてて国際社会の反発を招いたが、派手な立
ち回りの陰で、パグアサ島のように、国際社会が余り注目しない、目立た
ない島々でも確実に侵略の手を広げている。まさにその点で憂慮すべき事
態が起きていると、AMTIが警告する。

南シナ海の北部にあるパラセル諸島のボンベイ礁に中国が新たなプラット
ホームを建てた。灯台しかなかった島に、27メートル×12メートルのプ
ラットホームが海面から一定の高さの所に造られ、124平方メートルの太
陽光パネルが設置された。隣に航空機用のレーダーアンテナを保護する屋
根も見てとれる。建造物の下部構造は、衛星情報では判断できない。

AMTIの専門家はこれを次のように分析した。ボンベイ礁はパラセル諸
島とスプラトリー諸島間の航行路の要衝に当たるため、ここにレーダーを
設置して行き交う船の情報すべてを得ることが目的と思われる。比較的小
型の設備で十分に機能するため、インテリジェンスの視点では非常に重要
な役割を果たし得る。目立たない形で、中国は情報戦における対米優位を
確立できる。国際社会の非難の的になる派手な大規模工事から隠密行動へ
と、中国は戦術転換をしたとの分析だ。

ドゥテルテ大統領の怒りを共有して、共に対処する発想こそ重要だ。

『週刊ダイヤモンド』 2019年4月20日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1276

◆「あきたこまち」の誕生

渡部亮次郎


郷里の秋田県産の米「あきたこまち」が届けられ、コメの美味しさを堪能
した。新米が早く食べたいと、南国の早稲を買っていたが、比べるのもお
かしいぐらい秋田産が美味い。

「あきたこまち」の食味について公的食味試験機関「日本穀物検定協会」
1984年11月の総合評価は「0・944」。これは新潟県産「コシヒカリ」「0・
7〜0・8」、同「ササニシキ」は「0・5〜0・6」を大きく上回るものだった。

穀物検査官は「『あきたこまち』の高い数値はこれまで出たことがなかっ
た」と評した。これを契機にマスコミや流通業界の関心が高まり、とくに
県外における知名度向上に弾みがつき29年の歴史が流れた。

29年前の1984年9月7日に秋田県品種対策協議会を開催し、県農業試験場
が作り出した「秋田31号」を奨励品種に採用することを決定した。

同日、知事が県農協中央会長、県農業試験場長同席のもと記者会見を行
い、品種名を「あきたこまち」と命名し奨励品種に採用したことを発表した。

命名の由来は、秋田県雄勝町に生まれとされる美人の誉れ高い平安時代の
歌人「小野小町」にちなみ、秋田で育成した美味しい米として、末永く愛
されるように願いを込めた。

「あきたこまち」は、母親の「コシヒカリ」から良食味性を、父親の「奥
羽292号」から早熟性を受け継いでいる。このことから、寒冷地北部でも
新潟の「コシヒカリ」並の良食味米栽培が可能となり、倒伏や「いもち」
病に対する抵抗性も「コシヒカリ」以上の特性を持っている。

さらに、炊飯すると米粒に美しい光沢と粘りがあり、食味に関する特性は
申し分がなかった。

米どころ秋田県とは言いながら10a(1反歩=300坪)当たり平均収量は、
戦前(1945年以前)の200s台から1950年頃には350s台に急増。

その後、1955(昭和30)年は450s、1965(昭和40)年には550sと大幅な伸び
を示した。この要因は、戦後の食糧難時代に、農地解放に伴う生産者の増
産意欲の高揚とともに、保温折衷苗代、三早栽培(早播き、早植え、早刈
り)などの普及及び県の増産運動「健康な稲作り運動」と相まって、全県
民的な普及によって助長された。

こうした技術開発と多収品種の導入により1976年、1977年、1980年には
「単収日本一」となり全国で最も安定多収県として位置づけられた。ま
た、全国の多収穫競作会では秋田県から「米作日本一」が続出するなど、
多収技術が開花した時代であった。

しかし1970年代に入ると、全国的に米の生産過剰となり生産調整が始まっ
た。秋田県も政府米の在庫を抱えながら、多収栽培から脱却できない産地
であった。つまり、多収栽培を行うのではなく量より質、消費者に喜ばれ
る、売れる米づくりへと転換せざるを得なかった。

このような背景から、1974年に秋田県農協中央会が水稲育種事業の実施を
県に要請し、翌年に県が水稲育種事業の開始(再開)を決定した。

つまり秋田県では1913年から1941年までの25年間、交雑育種を手掛けて育
成したが、その後中断していたのだ。1977年の福井県農業試験場へ調査・
享受の折、同場で75年に交配した「コシヒカリ」(母)×奥羽292号(父)の
「福交60−6」のF2種子1株を譲り受けた。

譲受けた「福交60−6」は、1981年に系統選抜4年目(F6)を迎え、系統
名(地方番号)を「秋田31号」と命名した。1983年には系統選抜6年目
(F8)を迎え、1群8系統の栽植し2系統20株を選抜し育成段階を終了した。

当時「コシヒカリ」は育成して約30年になっていたが、それまで「コシヒ
カリ」を親に交配した品種を奨励品種に採用した事例がなく、「秋田31
号」が最初の品種であった。

しかも、「コシヒカリ」の欠点である耐病性、耐倒伏性、収量性を改善し
た早生品種で、食味は「コシヒカリ」を上回った。

県農協中央会と農協経済連が「美人を育てる秋田米」のキャッチフレーズ
を発表し、秋田県初の水稲新品種誕生に花を添えた。

県外出荷が開始された「あきたこまち」は、新品種V類の中で破格の仮渡
し金60Kg20,133円の高値で取引された。また、キャンペンガール「こまち
娘」が誕生し、市女傘を身につけた平安朝の姿と、秋田で育成した美味し
い米「あきたこまち」として大いに印象づけた。

出典:秋田県農林水産技術センター農業試験場次長 児玉 徹 氏作成の資料。