2019年11月09日

◆健康百話・薬の期限?

大阪厚生年金病院 薬剤部
 

Q).残った処方薬を使おうと思うのですが、薬の期限について教えてください。

A).一般的に薬の有効期限は、製薬会社で作られてから2〜3年です。もちろん、薬そのものによってそれぞれ違いますし、みなさんの手元に届くまでに、随分と時間の経ている薬もあるかもしれません。

また、保管方法によっても大きく変わってきます。
薬にはそれぞれ適切な保管方法があるのです。例えば、冷蔵庫に保管しておかなければならないお薬を、暖かい部屋の中に長期間置いておいたり、光に不安定な薬を直射日光に当たるところで保管していたりすると、すぐに駄目になってしまいます。

ですから、一言にどれだけもつのかというのは答えられないんです。
そもそも、病院や診療所で処方される薬というものは、受診されたときの症状に合わせて出されるものです。自分では同じ症状だと思っても、実は違っていて、前回処方されたときとは異なるお薬が必要な場合もあるのです。

わかりやすく言うと、「病院で出される薬は、その人のそのときの症状に合わせた、オーダーメイドの薬だ」ということです。

病院で処方された薬をとっておいて、同じ症状の時に飲むというのはあまりいいことではありません。出されたときに正しく飲むようにして下さい。もったいないからと、次回に取っておかずに、必要がなくなれば捨てることをおすすめします

2019年11月08日

◆世界では大きなイベントがあった

宮崎 正弘


令和元年(2019)10月28日(月曜日)通巻第6253号  

日本では報道されなかったが、世界では大きなイベントがあった
ロシアはアフリカ会議、北京は軍人スポーツ國際大会、インドネシアでは

シリア北部でISの指導者バグダディが自爆した。カリフォルニアでは未
曽有の山火事が続き、カタロニアでは独立運動の抗議活動が暴力化している。
 
10月23日からソチにおいて、プーチン大統領は「ロシア・アフリカ会
議」を開催し、シシ(エジプト大統領)ら元首クラス43名(加えて副大
統領クラスが11名)が参加、熾烈な巻き返しぶりを示した。

アフリカに猛烈に食い込んだ中国を脅威視している欧米は、梃子入れに懸
命だが、投資額が追いついていない。その上、とくに欧州各国(英国、ド
イツ、仏蘭西、ベルギー、スペイン、伊太利亜)は、かつてこの地を植民
地支配したため、反西欧の思想に直面する。コンゴ、ルアンダなどでは新
人の中国が内政干渉せず、人権も言わないので、すごく相性が合うからだ。

米国はアフリカの梃子入れを図るが、それほどの熱意もなく遅れており、
そこで日本が米国に押されたかのように、アフリカへの大々的な梃子入れ
を行ってきた。日本主導のアフリカ開発会議(TICAD)は七回目の
大会を2019年8月に横浜で開催し、53ヶ国参加のうち、42ヶ国の
元首クラスが来日した。

こうした動きを横目に中東での影響力を回復し、シリア、トルコを梃子に
米国へ挑戦したプーチンは、ここでアフリカへの再接近を試みる。外交の
転換である。

同じ頃、習近平が久々の笑顔で式典にあらわれた。世界軍人スポーツ大会
が北京で開催されたのだが、軍人チームを派遣したのがロシア、北朝鮮。
そして韓国。西側からはアメリカ、インドが主力だった。スポーツを通じ
ての軍事大国との交流を始めた中国の狙いは奈辺にあるのか

ついでジャカルタである。

ジョコ大統領の再選、大統領就任式は10月20日だった。後ろ盾のメガ
ワティがでんとひかえる中、式典にはシンガポール首相、ブルネイ国王、
カンボジアの独裁者にくわえて、ここに来日直前の王岐山の姿があったの
だ。王岐山は天皇陛下との会見時と晩餐会に人民服であらわれた。ジャカ
ルターバンドン間の新幹線を日本から横取りしておきながら、完成とされ
た2019年にまだ殆ど進んでいない。インドネシアは中国に大きく失望
しているが、それにもめげずに、中国はインドネシアへ熱烈接近を続行し
ていることは注目を置いておく必要がある。

  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
10 年に亘った研究と取材の結晶。中国の大プロパガンダ作戦の実態と挫折
パンダ・ハガーの退場の切っ掛けは「ブーバー報告」。その原典が本書だ。

  ♪
何清漣、福島香織訳『中国の大プロパガンダ ――おそるべき大外宣の実
態』(扶桑社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

オバマ時代まで米国の対中政策を操った「パンダ・ハガー」(愛中派)ら
が敗れ去った。替わって「ドラゴン・スレーター」(龍処刑人)が、米国
の対中国交の主導役となった。

このトランプの対中外交転換に強い影響力を持ったのは「フーバー・レ
ポート」(詳細は本書参照)だった。

その原典とも言えるのが、本書の前身レポートである。

何清漣女史は在米のジャーナリストとして数多い作品を書かれている。し
かも主要な作品の殆どは日本語訳されている。
チャイナ・ウォッチャーのみならず、一般読者の興味をぐいと掴んで放さ
ない魅力とは、彼女の情報分析の冷徹で慧眼な視点が、所謂「ジャーナリ
スト」的でありながらも、独自の研究に裏打ちされているからだろう。

予言的性質を帯び、読み出したら最後まで一気に読んでしまわなければ納
まらないほどのダイナミックな筆力がある。

福島さんの翻訳もそれに輪をかけてダイナミックだ。

中国は2009年から、450億人民元(8000億円強)もの天文学的
巨費を投じて、対外宣伝作戦をはじめた。

なにしろ「中国にとって報道とはプロパガンダのことだ」。

世界各地で展開した政治宣伝作戦の詳細は、米国を例にしてみると、
NY42丁目のタイムズスクエアの電子広告板(液晶ビジョン)を借り上
げ、米国の新聞に『チャイナ・ディー』(英語版の人民日報のような宣伝
紙)の折り込みを入れ、あるいは紙面に挿入させるという大胆な手法で、
米国にチャイナロビィを形成し、多彩で幅広い領域へと、プロパガンダ作
戦を拡大した。この侵略的な宣伝戦争をペンス副大統領は演説で指摘した
(18年10月4日)。 

新聞記者、学者、政治家の籠絡も派手に展開された。有力な大学には北京
語を教えるとした孔子学院をつくった。

議会人にはあご足つき、ときに美女付きの招待旅行を次々と繰り返し、他
方、シリコンバレーなどでは高給で釣って優秀な人材をスカウトし、中国
のハイテク向上に役立てた。

何も対応策を採らず、指をくわえて見ていたのは歴代政権だったが、クリ
ントンとオバマ政権幹部もまた中国マネーで薄汚く籠絡されていた。

ロスアンジェルスタイムズは怪しげな華僑の資力によって買収された。こ
の手法は香港と台湾でも、あらかたの新聞、ラジオ、テレビ、出版社が中
国の資力によって陥落した。

香港の出版界の実情と言えば4分の3の出版社が中国資本となり、中国共産
党批判の書籍は書店には並んでいない。辻々の屋台で売っているという有
様なのである。評者(宮崎)、今月初頭にも、銅鑼湾書店はどうなった
か?見に行ったのだが、シャッターが降りて鍵がかかったままだった。

かつては良心的と言われた『星島日報』や『明報』もじわりと真綿で首を
絞められるように代理人を通じて中国資本が入り、論調が変わってしまった。

しかし「これら新聞(『大公報』を含めて)の香港に於ける信用度はきわ
めて低く」(160p)、香港の人々からまったく信用されていない。
「親共メディアは読む人などいない」(188p)。

▲シンクタンクも学者もカネに弱かった

ワシントンの「Kストリート」というのは、ロンドンにあった「軍艦街」
とは異なって、政治ロビィストとシンクタンクの集中地区である。(ロン
ドンの「軍艦街」は政府批判を吠えるような論調の新聞社が並んでいた時
代に、そう愛称された)。

このKストリートの保守系シンクタンクにも中国資金がぶち込まれた。
中国は、「委託研究」とかの名目で、あらかたのシンクタンクに法外な研
究費を資金提供し、事実上、研究員を間接買収し、中国贔屓の提言を作成
させたのだ。

Kストリートがワシントンの政策決定を動かし、ウォールストリートが米
国経済を動かし、メインストリートが、米国の支配層を領導する図式があ
るからだ。Kストリートの保守的なシンクタンクですら一時期の中国批判
色は希釈される始末だった。

2015年までの米国は、取り憑かれたようにチャイナ礼賛が続いてい
た。いったい何事が起きているのか、訝った人も多かっただろう。
何清漣女史はこう指摘期する。

「ワシントンのシンクタンクが外国政府から大量の資金提供を受け、ロビ
イ機構に成り下がっており、米国官僚にその国に有利な政策を推進させて
いた」(264p)。

 中国の米国メディアへの浸透、ロビイストたちの籠絡、そのうえアカデ
ミズムの世界への乱入があった。

こうした「紅色浸透」によって、オバマ政権下では「G2」が叫ばれた。
ズビグニュー・ブレジンスキー(学者、カーター政権で大統領安全保障担
当補佐官)やロバート・ゼーリック(元世銀総裁)が声高に提唱し、「世
界を米中で分かち合う」などと中国高官らは高らかに言い放っていた。
中国の「紅色浸透」は映画界にもおよび、嘗てさかんだった反中映画は鳴
りを潜めた。かわりに南京大虐殺があったとする反日映画。出版界でも
「レイプオブナンキン」というフェイク文書が老舗ペンギンブックスから
出されたばかりか、いまも売れているのは、組織買いである。

日本ではどうかと言えば、中国は別にカネを使わなくても、日本人の政治
家も新聞記者も、尻尾をふってやってきた。このチャイナの傲慢はいつま
で続くのか、懸念が拡がった。

直近にも評者(宮崎)が香港へ行ってたいそう驚いたことがある。

黎智英の『リンゴ日報』以外、自由主義に立脚する新聞は香港にないが、
中国礼賛の『文わい報』など、新聞スタンドで、まったく売れていないの
だ! 

『リンゴ日報』は飛ぶような売れ行きと比較して、これはどういうことか
と思っていると、早朝七時。辻々におばさん達がたって『文ワイ報』を無
料で配りだしたではないか!

つまり大量の買い上げによって成り立っているのだ。

これは台湾でもほぼ同じである。

嘗て国民党の宣伝ビラとまで言われた『連合法』も『中国時報』もダミー
を経由して中国から資本が入っている。台湾のテレビ、ラジオもそうである。

かくなると、香港と台湾ではどうやって真実を知っているのかと言えば近
年猛烈な勢いで発達したSNSであり、とくに若者たちは新聞をまったく
読まず、SNSで正確な、客観的情報を入手している。

米国の状況に戻ると、トランプの登場によって、こうした紅色浸透の作戦
は、転覆した。百八十度、その効果がひっくり返し、メディアは反中国、
アカデミズムでもキッシンジャーもエズラ・ボーゲルも孤立し、パンダ・
ハガーから転向したピルスベリーが代表するドラゴン・スレーターが世論
をリードするようになった。

本書は、この10年の中国の作戦の軌跡を振りかえりながらも、克明に大胆
に中国の赤い野望を暴露している。本書、日本の外務省のみならず官庁、
商社マン、マスコミ関係者には必読である。
                 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
読者の声 どくしゃのこえ   読者之声
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
(読者の声1)通巻第6252号の巻頭記事にある有名ハンドバッグメー
カー名の原語に近い表記は「ルイビュトン」ではなく「ルイヴュイトン」
です。

巷間では「ルイビトン」「ルイヴィトン」などと呼称されていますが…。
些末なこととは思いますが、気になりましたので投稿します。
(元仏語教師)

  ♪
(読者の声2)英国で39人の中国人の凍死遺体。貴誌で続報を知りまし
たが、これって、中国の経済大国というイメージを根底から破壊した悲惨
な出来事ではありませんか。日本のメディアはなぜ詳しく報じないのです
か?(JJセブン)


(宮崎正弘のコメント)中国の官製メディアの反応たるや、「西側は偽善
である。ヒューマニズムを理解していない。管理のずさんな英国は責任を
取れ」などと、凄いですね。この責任転嫁、いつものように中国共産党は
得意な論理のすり替え!

英国のメディアの主眼は人身売買の犯罪シンジケートの解明に置かれてい
ます。米国のメディアは関心がない点で日本と同じでしょうか。

熱心に伝えているのは台湾、香港、シンガポールの華僑系メディアという
図式です。

経済大国の実態とは凄まじい所得格差であり、貧困層が数億人!

◆「風立ちぬ」の命日

渡部 亮次郎

5月28日。名作「風立ちぬ」の作者。20世紀の業病(号病)肺結核をモ
チーフにし、肺結核に倒れた堀辰雄の命日である。今から61年前、
1953(昭和28)年のことだった。

「風立ちぬ」という松田聖子のアルバムもあるが「立ちぬ」という感傷的
な語感を借りただけで、堀の作品とは無関係である。

堀 辰雄(ほり たつお)のことを知ったのは中学生の頃で、兄が読んでい
たのを勝手に読んだのかも知れない。死去した時は既に高校2年生。関心
は別のところに変わり、その死は知らなかった。

堀 辰雄は 明治37(1904)年12月28日、東京市麹町区平河町(現在は東京
都千代田区)で生まれた。 最終学歴は東京帝国大学国文科。

東京府立三中から第一高等学校へ入学。入学とともに神西清と知り合い、
終生の友人となる。

高校在学中に室生犀星や芥川龍之介とも知る。一方で、関東大震災の際に
母を失うという経験もあり、その後の彼の文学を形作ったのがこの期間で
あったといえる。

東京帝国大学文学部国文科入学後、中野重治や窪川鶴次郎たちと知り合う
かたわら、小林秀雄や永井龍男らの同人誌にも関係し、プロレタリア文学
派と芸術派という、昭和文学を代表する流れの両方とのつながりをもった。

1930(昭和5)年に『聖家族』で文壇デビュー。 このころから肺結核を
病み、軽井沢に療養することも多く、そこを舞台にした作品を多くのこし
たことにもつながっていく。

1934年、矢野綾子と婚約するが、彼女も肺を病んでいたために、翌年、
八ヶ岳山麓の富士見高原療養所にふたりで入院する。しかし、綾子はその
冬に死去。この体験が、堀の代表作として知られる『風立ちぬ』の題材と
なった。

この『風立ちぬ』では、ポール・ヴァレリーの『海辺の墓地』を引用して
いる。このころから折口信夫から日本の古典文学の手ほどきを受ける。

王朝文学に題材を得た『かげろふの日記』のような作品や、『大和路・信
濃路』(1943年)のような随想的文章を書き始める。また、現代の女性の
姿を描くことにも挑戦し、『菜穂子』(1941年)のような、既婚女性の家
庭の中での自立を描く作品にも才能を発揮した。

戦時下の不安な時代に、時流に安易に迎合しない堀の作風は、後進の世代
の中にも多くの支持を得た。また、堀自身も後進の面倒をよく見ており、
立原道造、中村真一郎、福永武彦などが弟子のような存在として知られて
いる。

戦争末期からは症状も重くなり、戦後はほとんど作品の発表もできずに、
信濃追分で闘病生活を送った。

代表作「風立ちぬ」は1936(昭和11)年から執筆、『改造』などに分載さ
れたのち38年4月野田(のだ)書房より刊行。

「風立ちぬ、いざ生きめやも」とバレリーの詩句の引用をもって始め、リ
ルケの『鎮魂歌(レクイエム)』をエピローグに置く。

高原療養所とそこから山一つ隔てた「K村」とを舞台に、婚約者節子の病
床に寄り添い、やがて彼女に先だたれていく「私」が、死にさらされた自
分たちの生の意味と幸福の証(あかし)とを模索し、ついにそれらについ
ての確信を得ていく過程を描く。

婚約者矢野綾子の死という自らの痛切な体験を、詩情あふれることばのな
かで昇華し永遠の生の思想を訴えかけてくる点において、堀文学の代表的
名作となっている。
昭和28( 195年5月28日信濃追分(現・長野県北佐久郡軽井沢町)で死去
(満48歳没)2010・5・26
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

◆文在寅打倒なるか、保守のデモが街を埋めた

櫻井よしこ


10月3日、平穏な年なら韓国は国民こぞって「開天節」を祝っていただろ
う。開天節は朝鮮の神話に出てくる檀君即位の日、韓国の建国記念日だ。
だが、今年のこの日、首都ソウルは文在寅政権に反対する保守派の怒りで
埋まった。

インターネット配信の「言論テレビ」でデモの映像を紹介しながら、朝鮮
問題専門家の西岡力氏がデモの参加人数を面積を基に計算すれば約50万人
になると説明した。

デモに関しては往々にして過大な数字が発表されるが、誇張ではなく、正
味50万人がデモに参加したことの意味は大きい。

「2017年3月1日、保守派勢力が当時の大統領、朴槿恵氏に対する弾劾に反
対してデモをしました。光化門からソウル市庁前、南大門まで人が一杯に
なり、その時はやはり面積比で30万人とされました。今回は南大門からさ
らにソウル駅までの大通りが人で埋まっています。50万人説には信頼性が
あると思います」

と西岡氏。

朴前大統領擁護の保守派デモより、はるかに多い人々が街に繰り出したの
だ。他方、産経新聞ソウル支局の黒田勝弘氏は、朴氏を辞任に追いやった
左翼勢力主導の「ロウソクデモ」よりも今回の人数が多かったと報じている。

2年前の左右のデモを超える人々が、いま、反文在寅の旗を立ててデモを
しているのである。「言論テレビ」で「統一日報」論説主幹の洪熒氏が説
明した。

「主催、参加団体は多様でした。キリスト教の牧師、YouTubeなどのメ
ディアや言論機関、大学の教授たち、これまで文政権と連携してきた弁護
士、会計士などまでが゙国法相の辞任を求めて、文批判を強めました」

今回のデモは、或いは、韓国世論が大きく変化する予兆ではないのか。普
通の人の姿も目立った。キリスト教会の動員力のせいか、若い男女や主婦
も少なくなかった。

多くの脱北者も座り込んだ

彼らを突き動かしている要因のひとつが香港だという。750万の香港人
が、14億人を擁する中国共産党と戦っている。その気迫に韓国人は目を醒
まされたと洪氏は指摘する。

香港以前に、全世界は、中国共産党が中国本土で国民からあらゆる自由を
奪い取るのを見詰めている。宗教弾圧はとりわけ厳しく、キリスト教徒も
無慈悲な迫害の対象だ。

だが、文氏も゙氏も韓国民の中国共産党支配に対する危機感には鈍感であ
る。むしろ中国共産党に近づくかのように、社会主義革命路線をひた走
る。一般の国民が、そのような彼らに国政を委ねることへの危機感を抱き
始めた。それが、10月3日の大規模デモだ。

キリスト教徒に加えて、デモに参加した海兵隊予備役官らも注目を集めた
という。

「彼らは皆、文政権への抗議の意味を込めて剃髪したのです。坊主頭の屈
強な男たちの一群ですから、目立つでしょう」

と洪氏。

大学の教授たちも1万人以上が「正義と真実」を求めて抗議声明に署名
し、デモに合流した。

YouTuberの若者たちはデモの現場で大手メディアに抗議した。西岡氏の説
明だ。

「10.3デモの取材に大手テレビ局のKBSが来ていたのです。大手テレビ
は本当に左傾化しています。保守の言動どころか存在さえ報じません。で
すから若者たちは大型放送車の窓に『本当のことを報道しろ』と書いたプ
ラカードを貼り付けたのです。暴力も破壊もありませんでしたが、KBS
の記者たちには痛烈なメッセージになったでしょう」

10.3デモは、史上最大規模のデモでありながら、香港のような激しい暴力
沙汰は起きなかった。事前に各団体が注意事項を呼びかけたからだ。武器
と誤解されるようなものは一切身につけないこと、台風の影響で雨が懸念
されるため、雨合羽を持参すること、但し、傘は武器と見做されかねない
として禁止した。

「体力のある者は徹夜でデモをして、そのまま青瓦台の前に座り込む。
従って、寝袋と腹ごしらえの食糧を持参するようにという通達も出ました」

と洪氏。

6月から青瓦台前で一人で座り込みをしてきた全光T牧師が指導して、3日
夜、1000人単位の人々が青瓦台前で夜をすごした。週末になっても人数は
減らず、座り込みが続いている。多くの脱北者も一緒に座り込んだ。彼ら
は人間を人間として扱わない北朝鮮から命がけで脱北した。それなのに、
韓国はいま、北朝鮮に同調しようとしている。彼らはそれだけは決して許
せないのである。

政治運動と関わったことのない多様な人々が街に繰り出したのは、文政権
の所業が「臨界値を超えた」からだと洪氏は強調する。

反日が支柱

社会の中間層に属する「大人しい人たち」までもが行動を起こしたことを
どう解釈すべきか。明らかに暫く前とは様子が違う。それを向こう側から
息を詰めるようにして、逆転劇を恐れつつ見詰めているのが文氏ど氏で
はないか。娘の不正入学、不正論文、妻の金銭疑惑、その背後の黒幕であ
る゙氏本人は暴力革命を信奉するレーニン主義者である。゙氏を罷免すれ
ば、文氏への評価は好転するかもしれないが、文氏はそうはしない。ここ
で退けば彼の革命の夢は潰れてしまうことを知っているのだ。

この段階でも文氏にはまだ4割弱の支持がある。理由は主として二つ、第
一の理由を洪氏が説明した。

「共産主義への盲信から目が覚めることは、自分の頭で考える力がどれだ
けあるかということに直結します。文氏支持の左翼たちは盲信が深いため
に、自分の目で見て自分の頭で考えることがなかなかできないのです」

第二の理由を西岡氏が熱を込めて語った。金日成の主体思想を奉ずる人々
が今日まで存在し続けているのは、マルクス・レーニン主義に依拠するか
らではなく、反日民族主義に依拠しているからだという。

金日成の「偉大さ」は「日本と戦った」ことによるが、韓国の主流派は残
虐な日本と手を組んだ。その汚れた親日派が親米派になり、反共派になっ
て韓国を支配した。世界で社会主義が衰退しても関係ない、親日派を倒せ
ば韓国は再生する。そのように信ずる人々は、日本が悪いと言っている間
は大丈夫なのだ。反日が支柱である限り、社会主義や共産主義がすたれて
も、彼らは倒れない。

であれば、韓国再生のためには反日の間違いを正さなければならない。そ
のことを韓国の保守派はようやく悟った。それがベストセラー、『反日種
族主義』を書いた李栄薫教授であり、弟子の李宇衍教授らだというのだ。
ストンと納得のいく分析である。彼らと連帯していくのが日本の正しい道
である。
『週刊新潮』 2019年10月17日号 日本ルネッサンス 第872回