2020年11月01日

◆学術会議 民営化で自由に

阿比留 瑠比


ドイツの社会学者、マックス・ウェーバーといえば、政治家が、著書『職業としての政治』を引いてその心構えを語る場面が目立つ。だが、彼には『職業としての学問』という著書もあり、学者らが教室で、政治的集会で語るような党派的な言葉を使うことを強く戒めてもいる。

 「もし教師たるものがこうした事情、つまり学生たちが定められた過程を修了するためにはかれの講義に出席しなければならないことや、また教室には批判者の目をもってかれにたいするなんぴともいないことなどを利用して、(中略)自分の政治的見解をかれらに押し付けようとしたならば、それは教師として無責任きわまることだ」

  非現実的な主張

 長々と引用したのは、26日のBSフジプライムニュースで、政府機関、日本学術会議の新会員の選に漏れた岡田正則・早大大学院法務研究所教授が述べた言葉から、岡田氏はどんな講義をしてきたのだろうかと想像したからである。

 岡田氏は、学術会議が学問の自由を侵して大学研究者による軍事研究を事実上禁じてきたことに関連し、こう語っていた。

 「相手が軍備を持っているから、こちらもそれに向かって武器を持たなければいけない、こういう技術を動員しようというのはもはや時代遅れだと思う」

 「中国でも北朝鮮でも、国際社会で変な武器を持たないようにしましょう、使わないようにしましょうとするのが自衛の在り方だ」

 控えめに言って現実的ではないし、論理性もなく何ら説得力を感じない、筆者が教員だったら、こんな答案は「現状認識が根本的に間違っている」として不可を与えたいが、学術会議ではごく普通なのだろいうか。

 筆者は、はるか昔の大学時代、あまりに空想的平和主義に傾いた国際政治関連の講義に、あきれた思い出がある。今も案外、変わらないのかもしれない。

 岡田氏の考え方は、「対北朝鮮の問題は外交的解決しかありえない」(小池晃書記局長)との共産党の積年の主張と、通底するようにも思える。ともあれ、任命権者の菅義偉首相が、特別職国家公務員に任命するにふさわしいだろうか。 

  繰り返し偏向指摘

 学術会議の在り方はたびたび問題視され、改革も試みられてきた。昭和46年9月3日の朝日新聞記事によると、自民党の政調内閣部会(鯨岡兵輔部会長)は、日本学術会議についてこんな報告をまとめている。

 「このまま放置すれば、学術会議は一部特殊イデオロギーを持つ者の集会所となり、それが法律により権威づけられているだけに、国家の存立にかかわる重大な要因になるといってもいいすぎではない」

 税金が投入される学術会議に対する特定政党の浸透と、それに左派偏向は半世紀以上前から繰り返し指摘されてきたのである。

 また平成15年には、政府の総合科学技術会議(議長・小泉純一郎首相)は学術会議の在り方について「国の機関として存続を」と望む学術会議側の主張を退け、10年以内に国から独立した法人にすべきだとする改革案を決定したが、うやむやになっている。

 学術会議元副会長の唐木英明・東大名誉教授は民間のシンクタンク、国家基本問題研究所のホームページでこう提言している。

 「欧米の科学アカデミーに倣って民間組織に生まれ変わり、真に社会の役に立つ政策提言機関として活動する道を選ぶしかない」

 民間組織ならばどんな人事も偏向も自由なのだから、民営化すればいい。今が絶好のチャンスである。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)
産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】 令和2年10月29日

松本市 久保田 康文さん採録 

◆五全中会は何を決めるのか

宮崎 正弘

 
令和2年(2020)10月29日(木曜日)通巻第6683号 

五全中会は何を決めるのか。習近平の終身独裁皇帝を追認するだけ?「マスク外交」から「戦狼外交」、そして次は「ワクチン外交」を展開

 必死の形相で王毅外相は欧州を駆け回ったが、対中感情の悪化を修正できず、慌てて楊潔ち国務委員もスペインなど南欧を巡回した。さっぱり効果なしと分かったのが八月下旬だった。根底にあるのは中国が派手に転回したマスク外交への不信である。

 とくにスウェーデンやノルウェイ、チェコ、ポーランドなどがはっきりと反中国を示すようになり、いまでは親中路線の欧州の国といえば、ハンガリーくらい?

 チェコは国会議長らが集団で台湾へ赴いた。中国は歯ぎしりして、制裁を口にした。

 オランダもスペインも、その他の欧州各国で中国が供与したマスク、とくに医療用マスクならびに人工呼吸器が不良品、大量に突き返し、「中国はまるで火事場泥棒」という評価が欧州ばかりか世界中で固まった。

 それでも欧米並びに主要な工業国家で、自国製マスクを製造していないことが分かり、米国では自製への試行錯誤がつづいた。日本ではシャープなどかなり成功したものの、ドラッグストアやスーパーで売られているマスクは殆どが中国製、「道の駅」へいくと地元の主婦らが編んだマスクも並んでいる程度で、依然として中国依存である。

 鳴り物入りの米国進出だったホンハイ(鴻海精密工業)のウィスコンシン州工場は、半導体ではなくマスクを生産することに切り替えて対応したが、それはともかく「マスク外交」は中国の評判を落とした。

 そこで中国は飴と鞭の「戦狼外交」に切り替えた。脅しと金のばらまきで票を買うという中国の強権発動に、民主主義国家は反発した。

欧米では逆に人権、民主の声を高めたのだが、中東やアフリカ諸国では、中国と似た専制政治が多いため、一定の効果を挙げた。

日本では嫌中論が拡大しているにも拘わらず、政官界、財界並びにメディアにはパンダハガーがうようよと遊弋し、世論を誘導している。日本政府は決定的な対中態度を示せないでもたついている。


 ▼もし米国政治に空白期間が生まれたら、台湾侵攻もありうるだろう

 11月3日、アメリカの大統領選挙投票日。おそらく開票に手間取り、ひょっとして一月の新大統領就任式まで、トランプのレイムダック化があるとすれば、習近平は国内をまとめるために台湾侵攻に打って出る可能性がある。

台湾本島ではなく、台湾軍の常駐している東沙への侵攻というシナリオが、もっとも蓋然性が高いと軍事専門家の間では囁かれている。

両天秤をかけながらも中国は、「戦狼」路線を「修正」し、こんどは「ワクチン外交」に転ずる気配である。
 中国製ワクチンなど、聞いただけでも眉唾と思いきや、なにしろ米国の薬剤、とくに抗生物質は90%を中国に依存している。したがって中国がワクチンを欧米や日本に先駈けて売り出す可能性が高いのだ。

まして外交武器として廉価で供給するとなると、中国に飛びつく国々が山のようにある。一帯一路で借金の山を前にして呻吟するスリランカやパキスタンなどでも、またもや中国のワクチンほしさに外交の基本を切り替えることを躊躇わないだろう。

中国は、北京依存から脱却を試みる国々をつなぎ止めるためにもワクチン外交を有効活用しかねない。

トランプ外交は中国を孤立化させることにあるものの、欧州では英仏くらいが同調しているのみ。それも英国は旧植民地の利権、フランスはいまもニューカレドニア、タヒチなど植民地をかかえているので、日米豪印のインド太平洋戦略に関与せざるを得ない。ドイツは曖昧な態度を示してきたが、フランスと並んで、ふたたび都市封鎖に踏み切り、中国への不信感が急拡大している。
 西側のアキレス腱は医療現場の困惑、中国はスペイン、伊太利亜などに目標を定め、着々とワクチン外交を準備中というわけだ。
  
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)遅くなりましたが、貴著『明智光秀 五百年の孤独』(徳間書店)を拝読した感想です。明智光秀論は凄い。連句会での発見は凄い。こんなところに真実があって、其れを発見されるまで明智光秀が浮かばれませんでしたね。俳句に託して光秀は武と文、その心が分かっていたのでしょう。

戦後、物資主義などで解釈すると、信長信奉になって、まさにGHQに洗脳されたしまった。しかし東京裁判で日本の武を裁いても、日本人の心は裁けなかったのです。

日本学術会議的に解釈すれば明智は悪人になる。戦後の事大主義の学者、進歩的文化人が日本を悪に仕立て上げ、GHQはさぞ満足していたのでしょう。そんな感想を抱きつつ、貴著を拝読し終えました。
  (TS生、横浜市戸塚区)

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(読者の声2)『ガラガラヘビ』というミニコミ誌に、山本光久氏が、次のように書いています。

浜某女史が菅野ミクスを評して「スカノミクス」や「アホノミクス」と比喩したことを称賛する一方で、「三浦瑠璃とかいうクソが、ベネディクト・アンダーソンの「想像の共同体」すらまともに読めないクソ莫迦の自称「国際政治学」云々と罵詈雑言。

凄まじい侮蔑語満載、こういう評価もあるのかと呆れかえった次第ですが、いかに。(YH生、大宮)


(宮崎正弘のコメント)両女史の名前だけは存じておりますが、著作を読んだことがないので、コメントのしようがありません。あしからず。

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(読者の声3)最後に貴誌「読者の声」欄に愚文を掲載して頂いたのが2ヶ月前。ふと気が付けば、自由陣営の中軸である良好な日米同盟の担い手である安倍首相が持病悪化の為に突如まさかの退陣。さらには米側カウンターパートのトランプ大統領も再選が困難と連日の報道。

「トランプ=安倍の蜜月関係」は「バイデン=菅の通常関係」に置き換えられるのか。政権末期には貴誌読者諸兄からも批判が多く出たが、それでもなお安倍晋三という人物は五十年に一度の稀有の逸材であり真のステーツマンであったと思う。

難病の持病を抱えながらの七年八ヶ月の首相在任に感謝したい。と同時に、病状回復の折には未だやり遂げてない宿題を推進する原動力として身を粉にしてもらいたい。

さて、最近の貴誌記事中で愉快なのは、【知道中国】での樋泉克夫教授の青春の躍動感溢れる香港留学時代シリーズである。

若い人など現代の感覚では、シナ語を身に着けるのに「北京や上海では無くて何故(広東語の)香港なのか」と思ってしまう。物を知らぬおらなども漠然とそう感じたが、樋泉教授が香港留学を始めた1970年頃と言えば、シナ大陸では文化大革命の嵐が吹き荒れる最中である。

日中平和友好条約(1978年)も、日中共同声明(1972年)すらまだだ。当時宗主国英国の情報機関などは大陸から香港への脱出者から共産中国の内部情報を相当収集取しただろう。当然米国も情報共有した筈だが、樋泉教授は戦前から大陸につながりの有る日本人もかなりの情報を取っただろうと暗示する。

だが果たしてそれが当時の防衛庁や公安警察や外務省、さらには内閣官房にキチンと上がったのか。

日中共同声明調印交渉の為に北京のホテルに滞在していた田中角栄首相が朝食に「毎朝食べる指定のアンパン」を出され呑気に驚いたが、首相に同行した公安幹部は当時の中国の調査力にショックを受けたという。

日中間に国交の無かった当時に、中国当局が如何にして首相の嗜好など身内しか知りえない機微な個人情報を持ち、さらには日本から物品を入手し得たのか。国交の無い時点でそうなら、現在では日本の要人の弱みなど個人情報は丸裸同然であろう。(確か中国の女スパイに携帯番号を教えた首相が居た、苦笑)。
  (道楽Q)

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(読者の声4)「大阪市廃止・特別区設置案」では、二重行政解消どころか、府・一部事務組合・特別区の「三重行政」になり、事務の進展が現状よりも阻害される恐れが強いことを述べましたが、府知事・府議、4区長・区議も別個に選挙される以上は、それらが同一会派によって占められることは必然ではなく、府と4特別区間の利害抵触も懸念されます。

区長、区議会の自治性、独自性、競争性が発揮されればされるほど、4特別区間の差異、不公平は顕在化することになるでしょうし、逆に、そうでなければ個々に分立させる意義が少なくなります。 自治性と公平性は相反的でしょう。

この点に関しては、片山善博氏が、旧自治官僚で、総務大臣、知事の経験もあることから、当然ながら、実務も踏まえた上で、説得的な主張をしています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/24bb84752b3318d42b9331b217a9a6199679aa68

10月27日付「毎日新聞」「朝日新聞」は、「大阪市を分割した4つの自治体の行政コスト『基準財政需要額』について、現状と分割後を比較した市財政局の試算では、新たに218億円の行政コストが表面化し、大阪市廃止で設置される4特別区の財政運営に懸念を生じさせる結果となった」と報じています。
 https://news.yahoo.co.jp/articles/820958a934d53fb470797c18ed30ae5f7b712e4a
  
総務省は「行政事務は一般的にスケールメリットが働き、規模が大きくなるほど経費が割安になる傾向がある」という考えのようですが、当たり前の話であって、「統合」するならともかく、「分割」して運営効率化が図られることなど通例ではあり得ず、費用が増加することは必然でしょう。

10月27日の読売新聞によると、反対派の数が増加してきたことについて、維新の幹事長が「特に若い世代に理解が浸透していない」などと妄言を吐いているようですが、狂っている。通常の判断力さえ具えていれば、若い世代が、維新の唱えるような妄説、妄論、愚論に従えるわけがないでしょう。

 大の初期経費をかけて「自己破壊」を行い、行政運営上、財政上、マイナスが出る可能性が大きい政策など、あまりにも愚かで、「暴挙」としか言いようがありません。
  (椿本祐弘)

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(読者の声5)「維新の会」のお里が知れた。前の市長だったか知事だったかの橋本某の講演料が216万円だそうです。テレビ出現が百万円という噂を耳にしたこともあります。

大阪市民って、いったい何を考えているのでしょうか?
 こういう価値観がまったく分かりません。しかも自治体とか公的機関に準ずるところが講演先とか、税金の無駄遣いではないのでしょうか?(ナガスネヒコ)

◆環境省は米軍基地を調査せよ 

内田 誠


東京の水道水汚染 健康不安の根本原因は?環境省は米軍基地を調査せよ

心配事・不安の96%は起こらないことが判明―アメリカの調査

今年初め、東京多摩地区の水道水から有機フッ素化合物が検出されたことが明らかになり、NPO法人が府中市と国分寺市で住民の血液検査を実施。この度、その影響が懸念される数値を公開しました。

メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ
DELUXE』著者で、ジャーナリストの内田誠さんは、東京新聞のスクープを紹介し、有害物質「PFOS」関連の記事を検索。東京同様に汚染されているのが沖縄で、米軍基地が有害物質をたれ流している実態を暴き、地位協定を改定して調査に乗り出すべきと訴えています。

飲料水に有毒な化合物混入問題を新聞はどう報じたか?

きょうは《東京》の番になります。社会面に、飲料水に有毒な化合物が入っていた問題について記事があります。これを取り上げましょう。問題の有害物質の名前を示す「PFOS」を、《東京》の過去記事検索に掛けると13件ヒットしました。

《東京》25面の記事。まずは見出しと【セブンNEWS】第7項目の再掲から。

府中2倍、国分寺1.5倍有害物質の血中濃度 全国より高く
NPOが市民調査 浄水所2カ所、昨年まで指針値超

水道水の汚染が指摘された東京都府中市と国分寺市の住民を対象に、NPO法人が行った血液検査で、発がん性などが懸念される有害な有機フッ素化合物「PFOS」の血中濃度の平均値が、府中市で全国平均の2倍超、国分寺市で1.5倍だった。

「PFOS(ピーフォス)」とは有機フッ素化合物の1つで、「「PFOA(ピーフォア)」とともに1950年代から消火剤やフライパンのフッ素樹脂加工に使われ、現在は条約で製造、販売、使用が禁止されている。環境中で分解されにくく、地下水などを通じて体内に蓄積されやすい性質があるという。

調査を行ったのはNPO法人「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」で、19年の都による調査で有機フッ素化合物の値が指針値を超えた2カ所の浄水場からの配水区域内に5年以上居住する住民22人の血液を調べ、府中で2倍など、全国平均を上回る数値が明らかになったという。

「PFOS」は発がん性だけでなく、免疫や内分泌のかく乱など、様々な問題が指摘され、日本では既に2010年に似た構造の「PFOA」とともに全廃されている。今回の汚染源については、米軍横田基地の可能性が高いそうで、2010年から17年にかけて、PFOSを含む泡消火剤3千リットル以上が土壌に漏出したとされている。

●uttiiの眼

このNPO理事で環境科学が専門の中地重晴教授(熊本学園大)は、「今すぐに健康に影響が出るレベルではない。原因は米軍基地か工場か分からない」と言っている。ということは、米軍基地内の泡消火剤に「製造・販売・使用」が日本国内で禁止されている物質が含まれている可能性、あるいは近隣の工場が不法にPFOSを使用していた可能性があることになる。


横田基地のケースは英国人ジャーナリスト(過去の記事にも登場するジョン・ミッチェル氏)が内部資料をもとに報じたものだそうで、漏出があったのは、日本国内での使用が禁止された後、ということになりそうだ。持ち込ませてならないのは核兵器だけではない、ということか。
at 08:13 | Comment(0) | 内田 誠

◆蕪村公園横の「毛馬の閘門」

石田 岳彦 弁護士


阪急千里線の柴島駅(本筋から思い切り離れますが「柴島」を初見で「くにじま」と読める人がどれだけいるでしょうか。)から天神橋筋六丁目駅へ向かい、淀川にかかる鉄橋を渡る際、左側奥、淀川大堰の向こう側に大きな「水門」が見えますが、その水門には「毛馬こうもん」と白抜きで大きく書かれています。

「こうもん」を漢字で書くと「閘門」です(ちなみに「毛馬」は地名で「けま」と呼びます)。

最近は警察署にも建物の壁に「けいさつ」と平仮名で大きく書いているところがありますが、「閘門」と書いても読めない人が多いので、「こうもん」と平仮名で書いているのでしょうか。

もっとも、警察署と違い、読みだけ知ったところで何をやっている施設かは分からないと思いますが。

それはさておき、阪急千里線を通勤経路にしている私にとって、毛馬の閘門は見慣れた存在でしたが、近くにまで行く機会はありませんでした。

平成20年春、毛馬の閘門が国の重要文化財に指定されることになったというニュースを聞いた私は、これをよい機会と毛馬の閘門に行ってみました。我ながらミーハーです。

毛馬の閘門に行くには、天神橋筋六丁目駅(阪急千里線、地下鉄堺筋線・谷町線)から北上し、淀川にかかる長柄橋の南詰めから河川敷に出て、更に5分ほど東へ歩きます。

河川敷は公園になっていて、堤防上には歩道も整備されていて、歩いていて楽しい道ですが、天神橋筋六丁目駅からは20分以上の歩きになり、大阪市内ということを考えると交通の便の悪い場所といえるでしょう(私がなかなか行く気になれなかった理由もこれです。)。
 
現地に設けられていた説明板によると、閘門というのは、水位の異なる川、運河等の間で船を行き来させるため、両側に水門を設けた水路で、毛馬の閘門の場合、大川(低)と淀川(高)との間の高低差を調整して船を通すために建造されたものです。

淀川から大川に入る場合、まず、水路内の水位を淀川に合わせたうえ、淀川側の水門のみを開けて船を水路に入れたうえで閉じ、水路内の水を抜いて、水面の高さを大川と同水位に下げた後、大川側の水門を開けて船を通過させるという仕組みになっています。

逆に大川から淀川に行く場合には、大川側から水路に船を入れたうえ、水を補充して水路面を淀川と同水位にまで上げてから、淀川側の水門を開放することになります。

なお、そもそも隣り合っている2つの川の水面に何故、極端な高低差があるかといえば、本来の淀川の流れは大川の方で、現在の淀川のうち毛馬よりも河口側の部分(新淀川)は明治時代に治水上の必要で人工的に作られたためだそうです。

ちなみに現在の毛馬の閘門は3代目で、私が毎朝見かけている「毛馬こうもん」もこの3代目にあたります。今回、重要文化財に指定されたのは、初代と2代目(今は船溜になっているそうです)で、このうち初代の閘門は、3代目のすぐ近くに見学用として整備されていました。

初代閘門の水門は2つの扉が観音開きになる方式で(なお、現役の3代目の閘門は門扉が上下して開閉するシャッター方式だそうです。)、現在は半開きの状態で固定されています。最近になって塗りなおされているようで、水色の大きな扉が鮮やかです。

北側の淀川側の水門は、近くにある堤防から一段低いところにあり、階段で下まで降りることもできますが、降りたところに柵が設けられていて、その先の水門をくぐることはできません。

もっとも、南側にある大川側の水門(淀川側に比べてかなり小型です)は開放されていて、そちら側から(旧)水路(当然のことながら現在では水路に水は流されていません。)の中に入ることができ、更に進んで淀川側の水門をくぐることもできます。北側の柵はいったい何のためでしょうか。

水路の中央に見学用の通路が設けられていて、その両側は何故か芝生になっていました。先ほどの柵といい、「こうもん」のペイントといい、この芝生といい、大阪市はよく分からないことに、金と手間を使います。

水路といっても船が通り抜けることができるだけのスペースですから、幅もそれなりにあり、スペース自体はちょっとした広場並みです。両側の側壁はレンガ造りになっていて、ところどころに鎖が取り付けられています。係船環と呼ばれる船を繋ぐためのものだそうです。水路に水を注入または排出するときに船が動かないようにするためでしょうか。

近くには初代閘門の付属施設として建設された洗堰(水が堰の上を越えて流れるタイプの堰)も残っています。淀川(新淀川)から大川に流れ込む水の量を調節するためのものだそうです。なかなかシックなデザインですね。

大阪市やその近郊にお住まいの方であれば、天気のよい休日にでも、広々とした淀川の河川敷や与謝蕪村公園の横を歩きつつ、ちょっと「毛馬の閘門」に寄ってみられるのも悪くないでしょう。(終)