2021年06月06日

◆4年ぶりにカンボジア訪問

宮崎 正弘

 
令和三年(2021)6月2日(水曜日)
通巻第6933号   

 米国務次官、4年ぶりにカンボジア訪問
  米国が建てたビルは取り壊され、中国軍の存在が目立った

 6月1日、四年ぶりに米国高官がカンボジアを訪問し、フンセン首相と
会談した。
 ウェンディ・シェルマン国務次官(女性)は、レルム湾に米国が建てた
ビルが取り壊されている現実に驚き、また至る所に中国軍の存在が目立つ
ことを認識した。 
 
 フンセンは35年にわたりカンボジアを統治する専制政治のボス、近年
はシアヌークビル港の中国化が言われ、またタイランド湾に面したカンボ
ジアのレルム海軍基地が、中国の軍港化する怖れを述べた。
 カンボジア政府はそのことを否定している。米国高官のカンボジア訪問
は2017年以来、四年ぶりだった。

 ▲中国空軍機、マレーシア領空を侵犯

 同日、マレーシアのサラワク上空に中国軍機二機が侵入し、マレーシア
空軍がスクランブルをかけた。フセイン外務大臣はただしに記者会見し
「中国大使を召還する」と述べた

 九段線を主張する中国は、マレーシアのサラワク上空にシンガポールの
防空識別圏を経由して侵入した。イリューシン76とY20(西安飛行製
作)で、ともに重量物を運ぶ輸送機である。

 中国は侵犯を認めず「通常のルーティンワークだ」と反論している。
 東南アジア諸国にも、直截な軍事行動を展開する中国。この侵略性はま
すます露骨になっており、悪名を轟かせている。
     
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜書評 しょひょ
う BOOKREVIEW 書評  BOOKREVIEW 
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 サムライが消えかけた武士道の国で、何をわれわれはなすべきなのか?
  大和魂とは「大きな和」であり、それを守る「武」である。

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葛城奈海『戦うことは「悪」ですか』(扶桑社)
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 行動する女性ジャーナリスト、そして合気道、剣道で鍛える予備自衛
官。自衛隊ブルーリボンの会、やおよろずの会代表、防人と歩む会会長、
そして尖閣視察に赴くこと十五回、サイパン、パラオ、アンガウルへ戦士
英霊の慰霊の旅にもでかける著者の葛城奈海さんは、まさに戦っている。
敵は悪だ。
 大胆に言いはなった。戦争は悪でしょうか? 戦わないと、却って敵を
誤断させるのではありませんか?
 葛城さんは「反・捕鯨」の陰謀有りと聞けば日本文化を破壊する愚行だ
と怒り、現場に駆けつける。
 自然環境保護の活動があると聞けば田植えの手伝いに、麻の栽培が危機
に陥っていると聞けば、栽培農家へ足を運ぶ。そのフットワークの良さ、
テンポの速い文章で全体像をさっと抉り、問題点を読者に提示する技量。
しかも本書は全身をふるわせるほどに感動的なのである。
 日本は世界の流れに逆らって大麻栽培に制限をかけている。愚策といっ
て良い。大麻から繊維が編まれ、衣料品、食品、化粧品、飼料、CBDオ
イルなどに商業化されている。日本はマリファナと混同され、規制がつよ
まって、欧米の解禁風潮とは逆コースを歩むのも、原発反対を単純に叫ぶ
「モノを考えない人々」が夥しいように、勉強不足のメディアと或る特定
の団体が煽動しているからだろう。
 日本で麻栽培は全国で僅か30軒となり栽培農地は10ヘクタール程
度、しかし麻は医薬、医療用の麻酔ばかりか、精神安定剤の材料でもあ
り、2020年12月、WHOの勧告に基づいて国連でも規制が緩和された。

 世界の邪悪な左翼反日団体がしかけた反捕鯨に対して、捕鯨の伝統文化
を訴えた映画(「ビハインド・ザ・コーブ ーー捕鯨問題の謎に迫る」)
は、国際的に評価され、ロンドン國際映画制作者祭で最優秀監督賞となった。
その謳い文句に「神武天皇は古事記の中で『鯨を皆で分け合いましょう』
と唄っている」(209p)とある。
 ──そんな箇所あったかな?
手元の『古事記』をさがすと「久米歌」のところに歌詞として述べられて
いる。

「宇陀の 高城に 鴫縄張る 我が待つや 鴫は障らず いすくはし 鯨障る
  前妻が 菜乞はさば 立瓜枝の 実の無けくを こきしひいね
   後妻が 菜乞はさば いちさかき 実の多けくを こいだひいね」
 (鴫の漁にでかけ罠を張れば、なんと鯨が捕れた! これを少しずつ皆
にわけあたえ共に食そう)

 本書読了後に連想した逸話がある。文豪のアンドレ・マルロォを思い出
したのだ。彼もまた行動の人であった。

 ドゴール政権の文化大臣として来日したマルロォは皇居で天皇陛下(昭
和天皇)に拝謁した。
「あなたは日本の武士道に興味があるそうですが、なぜ?」とするご下問
にマルロォは「騎士道をおこした民族が武士道を興した民族に興味を抱か
ぬことありましょうや」。
 その後、竹本忠雄氏の案内でマルロォは京都、奈良を訪れ、伊勢神宮で
は五十鈴川で禊ぎをうけ、「このバイブレーションはなんだ」と感動に身
を震わせた。
 帰国前に、いま一度陛下に拝謁の機会があった。
 昭和天皇がおっしゃられた。「あなたは日本の古い都などをまわってわ
が国の歴史のあとをご覧になったそうですが、そこに武士道に類するもの
がありましたか? たった一つでも?」。
 マルロォは沈黙し、静寂が皇居の会見場を支配した。

 さて葛城さんは「皇統(父系男系)を守る国民連合の会」の会長でもある。
 GHQに洗脳された教育を受けた国民の多くが男女同権、フェミニズム
の延長で「女性宮家」「愛子天皇」に賛成を表明している。左派系メディ
アの情報操作の悪影響も大きい。
 この問題に関して、葛城さんは次のように言う。
 「歴史を振り返れば皇位継承をめぐる危機は何度もあった。しかし、先
人たちは、何代にも溯り、男系の血を受け継ぐ傍系から適任者を探し出し
て皇統を
維持した。もっとも顕著は例では、第二五代武烈天皇から第二六代継体天
皇までは十親等も離れている。系図を応神天皇まで五代溯り、そこから五
世の孫を捜し出し、大伴金村が越前まで迎えに行った。その後も、第四八
代称徳天皇から第四九代光仁天皇まで八親等、第一〇一代称光天皇から第
一〇二代後花園天皇までも八親等、最後に、第一一八代後桃園天皇から第
一一九代光格天皇までは七親等離れている。困ったときは先人に学べばよ
いのだ」(144−145p)。

 第十四代仲哀天皇と神功皇后との皇子、応神天皇が息長真若中比売(オ
キナガマワカナカツヒメ)を娶って生ませた皇子、若沼毛二俣王(ワカヌ
ケフタマタノミコト=神社本庁の系譜では「雅野毛二派」)。その第5代
末裔とされるのが継体天皇である(『上宮記逸文』)。 
応神は、神功皇后が筑紫の宇美で出産し、帰路に待ち受けた賊臣を平ら
げ、武内宿弥に命じて若狭の国へ派遣し、禊ぎを受けた。爾来、高志と地
縁が深い
 北畠親房の『神皇正統記』は継体天皇を第二十七代と記している(神功
皇后を第十五代としているからだ)。北畠親房は継体天皇を誉めあげている。
 岩波文庫、岩佐正校注本から抜粋する。
「継体天皇は応神五世の御孫也。応神第八御子隼総別の皇子、其子オホト
の王、其子私翡の王、其子彦主人の王、其子オホトの王と申は此天皇にま
します。
御母振姫、垂仁天皇七世の御孫なり。越前国にましける。武烈(天皇)か
くれ給て皇胤たえにしかば、群臣うれへあげきて国々にめぐり、近き皇胤
を求め奉けるに、此天皇王者の態度まして、潜龍の勢い、世に聞こえ給け
るにや。群臣相議て迎え奉る。三度まで謙譲し給けれど、ついに位に即給
ふ。(中略)即位し給しより誠に賢王にましましき。応神御子をほく聞こ
給しに、仁?賢王にてましましし」(71−72p)

 悠久の歴史の裏面にも触れていて、エッセイ風の本書、奥行きが深い。
 読後感は爽やかさ、大和心、そしてその優しさ、だった。
         
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◎未来ネット「いわんかな」は6月3日午後4時半 ゲストは竹内久美 子さん
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未来ネット「いわんかな」は明日6月3日午後4時半─6時「生番組」です。
ゲストは竹内久美子さんです。
常連メンバーは高山正之(司会)、馬渕睦夫、宮崎正弘、福島香織、塩見
和子の各氏。
後日、ユーチューブでも公開予定
https://www.youtube.com/watch?v=Mh82Yj1bWto
       (未来ネット、旧「林原チャンネル」)
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読
者之声
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(読者の声1) 武漢コロナ出現が故意、過失、また何処が犯人かに 関わら
ず 中共は武漢-湖北省の激甚な災禍、損害を被るだけで済ませたくなかった
且、米日欧を生物兵器による正規戦争と看做されないですむ武漢ウィの
感染者が大量に存在する。これを 使えば今までの戦争と違い、自方の損
失、費用 対 効果が大きく、相手方は甚だしい消耗、損失をこうむる  
この際、周囲国をウィグル化するのをはばもうとする米日欧印ほかを
是で特殊攻撃する好機と見、実行した結果が 現状と思います 台湾は既
に常態
 日本も殆ど同じ                         
       
 それぞれ別目的での B・ゲイツとの共同研究 湖北省での蔓延は多分、
研究所と外部との遮断の不手際でしょうが、蝙蝠の所為に見せかけようと
宣伝した                             
       
  ワクチンで巨額の利益あげる目的のゲイツやスカウトされた W H O
の事務局長 製薬会社等は ゲイツが他の病気のワクチンの実験場にして
いるアフリカで、ばら撒いて自然発生を装い、伝染する様子をながめつ
つ、ワクチンつくる心づもりだったのが 慌てて、急ごしらえとなった。
感染蔓延中に供給するのが収益多い                 
             
他国では如何、認識か知らないが、日本は単なる伝染病の世界規模での
蔓延とし、報じられているが、特殊攻撃 受けた結果であります、普通の
武力侵犯も受け続けている。外国ヨリ武力ノ行使アリタルトキ です 是
こそ非常事態です   
感染者の内、その他してある者ほぼ全てシナ人、重傷者用、中、軽 病
室、待機ホテル 医療者 器具逼迫のかなりの理由 代々でない新規者は全
て出国命令だすのが当たり前 これを監視下に置き支配の中共公安警軍検
挙し処罰も当然 刑法犯です 
    ( SH生 北海道 )
                                 
                 
(宮崎正弘のコメント)「中国の代理人」=WHOのテドロスは、中国製
ワクチンを認可しました。一方でWHOへの台湾のオブザーバー加盟要請
には知らん顔をしていますね。

2021年06月05日

◆五輪中止で日本が負う傷

【阿比留瑠比の極言御免】
 令和3年6月3日

 国会やマスコミの論調を見ていると、左派・リベラル勢力を中心に夏の
東京五輪・パラリンピック開催中止論が幅を利かせている。1日の参院厚
生労働委員会でも立憲民主党の打越さく良氏が、菅義偉(スガヨシヒデ)首相に
こう迫っていた。

 「もはやオリンピック中止が、国民の当たり前だ。中止を決断すべきで
はないか」


 感染拡大、試算では

 立憲民主党では、5月28日の衆院厚労委で山井和則氏も「歴史的な大惨
事になるリスクをはらんでいる」と強調したほか、枝野幸男代表は5月9日
のインターネット番組で言い放った。

 「世界の変異株の展示会みたいになり・・・」

 首相になる準備ができたと公言する野党第一党のトップが、外国人はみ
んな変異株を持っていると言わんばかりの差別的ともいえる発言をするの
はどうか。国民の不安を、いくら何でもあおり過ぎではないか。

 加藤勝信官房長官も5月29日の日本テレビ番組で言及していたが、東大
大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授と藤井大輔特任講師の試算のよう
に、選手や関係者の入国による東京都内の感染拡大はごく限定的だとの見
方もある。

試算では、入国者数が10万5千人でワクチン接種率が50%だった場合、都
内における1週間平均の新規感染者数は約15人、重症患者数で約1人増え
る程度にとどまるという。

 ワクチン接種も進み始めた中での野党や一部マスコミの五輪中止の大合
唱はなぜか。開催中止に追い込むことで菅政権に大ダメージを与えたい
政治的な思惑がうかがえはしないか。

 国民の大きな楽しみとアスリートの夢を奪い、国家に莫大(ばくだい)な
経済的損失を与えてまで衆院選を有利に運びたいというのだろうか。

 いや、五輪中止で日本が失うものは、経済分野以外にもたくさんある。
一度手放せば、なかなか取り戻せない日本と日本人に対する信頼感もその
一つである。

 5月31日だったか、五輪事前合宿に出発する前のソフトボール豪州代表
選手の一人が、テレビのインタビューに緊張した面持ちでこう答えるのを
見た。

 「日本の皆さんに温かく迎えてもらうことを願う」


 責任を軽々に放棄

 日本は自ら手を挙げて五輪を招致し、「おもてない」を約束して東京開
催を勝ち取った。その責任を軽々に放棄するようでは、二度と日本の都市
に五輪がくることはあるまい。日本は外国人に対して偏見を持ち避ける排
外主義の国だとみられても、仕方あるまい。

 「東京五輪開催を、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証としたい」

 菅首相はかねてこう訴えている。人類がコロナに敗北した歴史を東京の
地に刻んでどうするのか。先進7カ国(G7)をはじめ主要国中で際立っ
て感染(陽性反応)者数が少ない日本が開催できないと言えば、国際的評
価は地に落ちよう。

 政府は東京五輪を東日本大震災からの復興を内外に示す復興五輪と位置
付けてきたが、そのアピールの機会も失う。五輪も開催できずに、本当の
復興などできるものかといわれよう。

「東京五輪の失敗は中国政府にとってプロパガンダの大勝利となるだろう」

 米紙ウォールストリート・ジャーナルは5月28日の社説でこう説いた。
東京五輪が中止され、来年の北京五輪が開かれれば、権威主義諸国が民主
主義諸国に対する優越を誇示する結果を生むとの主張である。

 日本の振る舞いが、民主主義が専制主義の後塵(こうじん)を拝してゆく
きっかけになってはならない。

 

 (産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

松本市 久保田 康文 採録

◆IOCと東京都の“不平等”

中島 聡


契約が炙り出す、五輪ゴリ押し開催の意外な真相


菅首相はもはや裸の王様。自民党内から出始めた「五輪中止」を求める
声、ワクチン接種遅れに“ショック”と呆れた言い分国民の命と経済が犠牲
に。菅総理「五輪絶対開催」は最悪の判断ミスだ

コロナ禍のため、国民の8割が「中止」または「延期」すべきとしている
にも関わらず、開催に向けて着実に準備が進められている東京オリンピッ
ク・パラリンピック。
なぜ、IOC(国際オリンピック委員会)も東京都も、ここまで「五輪開
催」を強行しようとしているのでしょうか? 今回のメルマガ『週刊 Life
is beautiful』では、「Windows95を設計した日本人」として知られる米
シアトル在住の世界的エンジニア・中島聡さんが、IOCと東京都の間で交
わされた契約書の内容を翻訳して紹介。そこから炙り出されたのは、五輪
開催をゴリ押しするIOCと都それぞれの「ウラ事情」でした。


プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大
学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人
/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.
を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発



最終的に都が全責任を負うよう書かれた、IOCと東京都の間の契約書最
近、米国のメディアでも「日本人の多くが東京オリンピックは中止すべき
だと考えている」という報道が出るようになりました。


菅総理は「やるかやらないかは、IOCが決めること」と逃げているし、当
事者である小池百合子都知事は「再延期をすれば基本的には大会は全く異
なるものになると思う。
アスリートそのものもモチベーションや体力が変わってくると思うので、
別物と考えたほうがいいのではないか」という、まるでIOC側が書いた原
稿を読んでいるような発言しかしません(小池都知事“東京五輪・パラ 再
延期は難しい”)。

そこで、IOCが公開している、IOCと東京都の間の契約書を読んでみました
(Host City Contract, Games of the XXXII Olympiad in 2020)。契約
書そのものは、日本オリンピック委員会(JOC、一般名称はNOC)と東京オ
リンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(TOCOG、一般名称は
OCOG)を含めたものになっていますが、最終的には東京都が全ての責任を
負うように書かれています。

この契約書の一番特徴的な部分は、第66項の “Termination of Contract”
という部分です。ここには、IOC側が契約を破棄してゲームを中止する権
利について書かれていますが、東京都側の権利には一切触れていません。
つまり、東京都側からは、どんな事情があってもゲームの中止をすること
は出来ず、それでも無理矢理中止をした場合は、契約違反になる、という
一方的な契約になっているのです。

6a00d8341c4f9853ef0278802c8021200d

契約違反があった場合の責任に関しては、第4項に書いてありますが、こ
れも一方的です。IOC側が被った経済的被害を東京都側が全て補填すると
明記されています。逆に、IOC側が契約違反をした場合の責任に関して
は、一切触れていません。

6a00d8341c4f9853ef0282e104e1f5200b

この二つを見ただけで、この契約がIOCに有利な契約であることが分かり
ます。オリンピックを誘致したがっている都市の足元を見た不平等な契約
書なのです。

この契約書に基づけば、オリンピック(およびパラリンピック、以下省
略)を開催するかしないかを決める権利はIOCのみにあり、東京都側から
無理矢理中止をした場合には、契約違反となり、莫大な罰金を支払うこと
になるのです。IOCには既に、放映権とスポンサー料として1兆円を超える
お金が前払い金として支払われています。オリンピックが中止になれば、
これらのお金の返済が必要になりますが、その責任が東京都に降りかかっ
てくることになります。

小池百合子都知事の発言が、まるでIOCが書いた原稿のようである理由
は、第59項のプレスリリースに関する項目を見ると説明がつきます。東京
都や組織委員会がIOC(もしくはIOCの関係者)に関して、なんらかのプレ
スリリースをする場合には、あらかじめIOCの承認を得なければならない
と明記されているのです。


at 08:46 | Comment(0) | 番外編

◆もうひとつの「葬られた王朝」

宮崎 正弘

 
令和三年(2021)5月31日(月曜日)
通巻第6930号   

  ♪
歴史エッセイ
  『もうひとつの「葬られた王朝」』

 蓮田善明は「故郷の駅に降り立ち眺めたるかの薄紅葉 忘られなくに」
と故郷への郷愁を詠んだ。
 筆者も高齢者となり、猛然と故郷のこと、北陸の古き歴史を調べたく
なった。折しもコロナ禍で巣ごもり、海外へは行けないが国内旅行は可能だ。
 「葬られた王朝」として出雲は存分に書かれた。「葛城王朝」にしても
議論は進んだ。
 邪馬台国の卑弥呼も奇想天外なほど議論されたが、もう一つ、忘れられ
た王朝がある。
 古事記は出雲とオオクニヌシノミコトの活躍を特筆しているが、高志国
に関しては殆ど叙述がない。

 越前、越中、越後が百貨店で有名な「三越」のいわれではない。越後は
さらに上越、中越、下越と行政区分で分かれ、現在の新潟県の三つの越を
以て「三越」、昔の越後屋である。
 古事記にでてくる高志は別名「古志」、もしくは「越」である。ちなみ
に新潟地震で全国区となったのは「山古志村」。名酒は「越乃寒梅」。福
井県には「古志中学・高校」がある。富山の名物は「紅高志蟹」、文学館
は「高志国の文学館」。金澤には「丸越」デパートがある。
 高志はもっと広範な地域を意味し、若狭、越前、加賀、能登、越中、越
後、それに庄内の南部を加えた。縄文時代の高度な文明地域で、翡翠など
の交易で栄え、海流の関係で出雲文化圏との交流が活発だった。信濃の黒
曜石も一部は高志国まで運び、全国にもたらされた。翡翠は糸魚川が産地
だが出雲に運ばれ、玉造でも加工されていた

 近年、議論されてきたのは銅鐸が集中的に出土し、出雲大社があり、神
話の題材も豊富な出雲である。
古事記に加えて出雲国風土記の解析が進み、古代に地域的な王朝があった
事実は決定的となった。
ところが古事記には「高志の八俣の大蛇」と書かれ、出雲国風土記にも二
ケ所、古志の地名が出雲に残るが、それだけである。高志国は歴史から消
えた。

 第一に高志国風土記がないからである。考古学的には新潟の馬高遺蹟。
石川県にチカモリ遺蹟。富山の北代縄文遺跡などが夥しいが、歴史学者は
関連性を位置づけない。「日本海文明圏」への理解が薄いのだ。
 
第二に高志国が出雲と連合したためである。
オオクニヌシノミコトは高志の女帝ヌナカワヒメを娶った。これは出雲が
高志国を組み込んだという意味である。古事記などが示唆するのは大和朝
廷との国譲りでオオクニヌシノミコトがタケミカツジノミコトと最終的な
話し合いで決着したため出雲と連合を組んでいた高志国もそのまま編入さ
れた。崇神天皇が将軍を派遣して征圧した経緯が記紀で語られたのち消息
が途絶えた。
 
第三に、その後、高志国が歴史に登場するのは大伴家持の越中国府(高
岡)赴任であり、空白期が長すぎるのである。
 北陸生まれの筆者は高志国の謎解きにこれから挑もうと思う。

(この文章は『北国新聞』コラム『北風抄』、4月19日付の再 録です)
      
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  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 
読者之声
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(読者の声1) 宮崎さんの新著『WORLD REEST』(ビジネス
社)を読了しました。相変わらず世界各国への目配りの広さに驚嘆です。

バイデン政権のでたらめぶりとバラマキぶりには困ったものです。不法
移民問題はメディアが全く報じていませんが悲惨な状況で、トランプ政策
を中断した国境の「壁」の建設を再開するかもしれません。

この問題の責任者カマラ・ハリス副大統領は現場に足を運ぶ気配さえあり
ません。バイデン政権以降、ガソリン価格も上昇で大変です。株価は上
がっていますが、ばらまきのインフレに対するヘッジになっているだけです。

不正選挙の監査も続いていて民主党はなんとか投票用紙そのものに触れさ
せない検査に持っていったようです。本物の用紙を検査されたら偽投票用
紙が大量にあることがバレるので必死です。アリゾナ、ジョージアでの今
後の結果が楽しみです。(SW生)

 ♪
(読者の声2)来る6月4日の日本文化チャンネル桜の番組[FRONT
 JAPAN]はキャスター浅野久美、宮崎正弘両氏に、ゲスト芥川賞作
家の楊逸さんをお迎えします。

テーマは「あの6・4天安門事件から32年」です。
6月4日午前1100−1200の生番組です。
   (日本文化チャンネル桜)

  ♪
(読者の声3)中国の話題から。雲南省のタイ族自治州のミャンマー国境
近くの自然保護区にいた象の群れが昨年春から北進を始め、いまや昆明ま
で100キロほどに迫っている。
https://www.asahi.com/amp/articles/ASP5Y44MYP5YUHBI00N.html

4年前の動画では雲南省の村や高速道路に象が出現。
https://www.youtube.com/watch?v=aPUVxwfZRQ0
 雲南省での象については昭和32年(1957年)、宮崎市定が「象の後退」
という文章を書いている。

『最近新聞紙の報道によると、中國雲南省の南部、ビルマ國境に近い瀾滄
江周辺の大森林中に二十頭乃至三十頭の野生の象群が棲息していることが
翌見されたと言う(大阪朝日、昭和三十二年三月五日)。

中國では南北朝時代までは揚子江の線まで時々野象が出没した。(中略)
それが五代宋頃になるとずっと南の五嶺の線まで下ってきた。南漢の時
代、東莞縣に群象が出て稼を害したので官が之を殺し、禹餘宮使の邵某が
その骨を集めて資福寺の前に石塔を建てたという(南漢春秋巻十二鎮象
塔)。・・以下略』
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/145898/1/jor015_4_396.pdf

紀元前11世紀迄、北京市付近まで生息域拡大。温暖化と寒冷化で生息域
も北上と南下を繰り返す。

https://indow.hatenadiary.org/entry/20071201/p1

小学校のころ読んだ児童文学「ハンニバルの象使い」はカルタゴ軍によ
るアルプス越えでしたが、当時はアルプスの氷河が現在よりはるかに後退
していたローマの温暖期であり、地球温暖化と二酸化炭素濃度など関係な
いのがよくわかる。

最後にもう一つ象にかかわる話。サウジアラビアの日本好きで知られる
サルマン皇太子が設立したミスク財団の子会社マンガプロダクションズと
東映アニメーションが共同制作した劇場版アニメ『The Journey』。

ムハンマドが生まれる以前、エチオピアのキリスト教国であるアクスム王
国軍がイエメンからメッカを攻略しようとした象軍との戦いを描く。伝統
的にムハンマド生誕の年に神の奇跡でエチオピア軍を退けたことになって
いるらしい。

サルマン皇太子肝いりの映画なら原理主義者のイチャモンもないでしょう。

http://sow.blog.jp/archives/1078378979.html

明治維新以降、欧米中心の歴史観を学び、あるいは植え付けられてきた
日本人ですが、中東でもオマーンやイエメンなどインド洋貿易で栄えた国
についてはほとんど知らない。

オマーンはかつてはペルシャ湾からザンジ バル(タンザニア)までの帝
国であり、イエメンは植民地時代から中東戦 争・イエメン内戦までエジ
プトがずっと関わっているのが不思議でしたが いまだによくわからない

アメリカの歴史ですら宗教(宗派)と民族・人種が複雑でわかりにくい
のに、部族社会と宗教・宗派が入り組んだ中東・アフリカはもっとわから
ない。わからないなりに現在勉強中といったところですね。(PB生、千葉)

  ♪
(読者の声4)樋口季一郎中将顕彰会設立記念シンポジウムのお知らせで
す。ユダヤ人に「命のヴィザ」を出した杉原千畝さんが有名ですが、舞台
裏で人道主義にもとづきユダヤ人を救った英雄は樋口中将でした。

このほど顕彰会設立にあたり、シンポジウムを開催します。多彩なゲス
トを迎えます。
           記
とき    7月9日(金曜)午後五時半〜七時45分
ところ   憲政記念館講堂
参加費   2000円
式次第   開会挨拶 樋口隆一(顕彰会会長)
      来賓挨拶 加瀬英明、山田宏ほか
記念シンポジウム パネリスト
      葛城奈海(司会)
      江崎道郎、小名木善行、樋口隆一
      閉会挨拶 佐藤和夫
主催    樋口季一郎中将顕彰会(090)6709−9380
共催    日本を守る会、英霊の名誉を守り顕彰する会、二宮報告会ほか。

 ♪
(読者の声5)貴誌前号にあったエチオピアの5G問題ですが、エチオピ
アと言えば、WHOテドロスが【武漢共産支那テドロス・ウィルス】を支那
忖度して【パンデミック】を引き起こした罪で、世界的に後ろ指を刺され
不名誉極まりない【共産支那の犬を産んだ賄賂に弱い国】の汚名を着た情
け無い【古い国】ですね。(TM生)

2021年06月04日

◆英空母打撃群が日本にやってくる

加瀬 英明

 
 英国のフィリップ殿下が薨去された。エリザベス女王の夫君で、九十九
歳だった。エ
ジンバラ公としても知られた。

 フィリップ殿下の葬儀は、殿下の遺言によって、コロナのために王家の
居城である
ウィンザー城内の教会において30人の王族のみに限って催され、ロンド
ン市内を儀仗
兵が棺を載せた砲車の前後を行進する華麗な盛儀(ページェント)も行われ
なかった。

 私は英国営放送のBBCによって葬儀の一部始終の中継を観たが、黒熊
の帽子に赤い
上着の近衛兵をはじめ、さまざまな異なった軍装の一千名以上の陸海空軍
の部隊が城内
の広大な庭を行進して、海軍将校だった殿下に別れを告げた。

 軍は一国の魂なのだと、私は思った。軍を軽んじる国は外国の属国にな
るほか、生き
残れない。なぜ、皇族に軍服をお召しいただけないのか。

 エリザベス女王は95歳になられるが、1952年に即位されてから、
ご在位69年
目になる。国民から半世紀以上も敬愛されているから、昭和天皇を思わせる。

 フィリップ殿下はギリシア王族の出身だが、ギリシアでは1973年に
王制が廃止さ
れて、共和国となった。

 20世紀は王制の墓場となった。第一次大戦によって、ロシア、ドイ
ツ、オースト
リー・ハンガリー、トルコの帝政、スペインなどの王制が姿を消した。第
二次大戦に
よって、イタリア、ルーマニア、ブルガリア、アルバニアなどの王制が倒
れた。(もっ
とも、スペインは1975年に王制を復活させた。)

 ウィンザー城の弔鐘

 それでも、英国では王家と国民が一体となっており、立憲君主制が定着
して揺るがな
いようにみえる。新聞や雑誌に“HM”とでてくると、「ヒズ・マジェス
ティ」、現在
は女王だから、「ハー・マジェスティ」の頭(かしら)文字であって、国王
陛下を意味し
ている。

 英国的といったら、トワイニングの紅茶でも、ローストビーフでもな
い。やはり王家
だ。

 日本でも、刺身、天麩羅、おでんよりも、皇室が日本を日本たらしめて
いる。それを
知っているから、国民は皇室を大切にしている。

 私は東京で生まれたが、生後6ヶ月で外務省に勤務していた父がロンド
ンの日本大使
館に転勤したためにロンドンへ渡った。4歳になる前に、ヨーロッパで第
二次大戦が始
まって邦人家族の引き揚げが行われ、母に連れられて日本へ戻った。ロン
ドン時代の記
憶は断片的で、ジグソーパズルのように組み立てようと思っても、いまで
も一つになら
ない。

 母は外交官夫人として、毎日社交を楽しんでいたから、私はベティとい
う英国人の若
い住み込みの保母によって育てられた。東京に帰った時には、日本語がで
きなかったの
で親戚たちを困らせた。

 私はアメリカの大学に留学したが、帰り道にロンドンを訪れた。

 古い仕来たりを守る

 ベティは40代になっていたが、ホテルのロビーで再会した。私を抱き
しめること
も、叫び声をあげることもなく、昼食後に市内を案内して別れる時まで冷
静さを失わな
かった。やはり英国人なのだ。アメリカ人や、ヨーロッパ大陸の者だった
ら、取り乱し
たように喜んで、大声を発して私を抱擁したことだろう。

 Stiff(スティフ)・ upperlip(アパーリップ)(上唇を噛み締める)とい
うが、英国人
は人前で取り乱さない。その10年後に仕事でロンドンへ戻った時に、ベ
ティが郊外の
質素な自宅に招いてくれた。夫がいた。居間に通されるとベティは私を強
く抱き締め
て、泣きじゃくった。人前で取り乱さないところが、日本人と変わらない。

 アメリカの留学帰りに、ベティがロンドンを案内してくれた時に、私は
バッキンガム
宮殿の黒熊の制帽をかぶった近衛兵や、銀の甲冑の胸当てをつけた龍騎
兵、中世の装束
をまとったビーフィーターと呼ばれるロンドン塔の番人を見て、「観光資
源として素晴
らしい」といった。すると、ベティが「イギリスの民主主義が機能するの
は、右だ左だ
と諍(いさか)っても、国民のあいだに古い仕来(しきた)りを大事にする合
意があるから
です。観光など関係ありません」と戒めた。

 英国と日本は島国だ。英国人はイギリスがヨーロッパの一部だと考えな
い。対岸のフ
ランスから帰ってくると、「ヨーロッパへ行ってきたよ」という。私たち
が日本が中国
大陸の一部だとみなさないのと同じことだ。

 大陸の人々とは違う

 大陸の人々は正義と悪といって白黒に分けて判断するが、英国人は物事
を「フェア」
(公平)か、「アンフェア」(不当)かによって計る。中国、朝鮮半島で
正義と悪に二
分するのに対して、日本も快い、美しい、快くない、穢いかを基準とする
のと共通して
いる。大陸が理を重んじるのに対して、日本とイギリスは感性の国だ。私
たちは理屈を
好まない。

 大陸で厳格なメートル法が使われてきたのに対して、英国の計量は
フィート(足)、
ヤード、体重はストーン(石)など、日本の尺貫法と同じように、大雑
(おおざっ)把
(ぱ)だ。

 大陸の人々は、自己主張が激しい。口角沫(あわ)を飛ばして議論する
が、英国人は控
え目だ。フランス人、ドイツ人、イタリア人や、中国人、韓国人は、クレ
マンソー、ヒ
トラー、ムソリーニのように演説すると絶叫するが、日本語と英語だと絶
叫したら、大
道商人の香具師(やし)のように安っぽくなってしまう。

 ユーモアはゆとりだ

 英国人はユーモアと、ウィットを好む。

 エリザベス女王の妹君のマーガレット王女が1969(昭和44)年に
来日された時
に、ホテル・オークラの『平安の間』で300人以上が招かれて、レセプ
ションが行わ
れた。私は事前にピルチャー駐日大使から、王女が十数人の前で立ち停
まってご下問さ
れるので、その1人になってほしいと依頼された。

 私は32歳だった。東京放送(TBS)が『ブリタニカ大百科事典』
(大英百科事
典)の最初の外国版になる、全21巻の日本語版を出版したが、その初代
編集長をつと
めていたので、選ばれたのだった。

 待っていると、マーガレット王女が私の前で停まって、大使が私を紹介
した。王女が
「大英百科事典の日本語版を編集するのに、どのような苦労があります
か」と、たずね
られた。

 私は数日前から、答を用意していた。「ブリタニカ大百科事典は、アン
グロサクソ
ン・バイアス(偏向)がひどいので、たとえば天一坊や、因幡(いなば)の
白兎がのって
いないので、大量の日本とアジアの新しい項目をつくっています」といっ
た。王女が
「それは何ですか?」と質問されたので、「日本のロビン・フッドと、
ピーター・ラ
ビットで御座居ます」と応じた。すると王女が「アイ・アンダスタンド」
(分かりまし
た)と、微笑まれた。

 私は儀礼(プロトコル)から外れたことだったが、咄嗟(とっさ)に「ユ
ア・ロイヤル・
ハイネス(殿下)、私から1つ質問してよいでしようか」とたずねた。

 王女が頷かれたので、「昨年、イギリスはメートル法を採用しました
が、いつ、ス
コットランドヤードがスコットランドミータ―に変わるのでしようか?」
とたずねた。
王女は大喜びされた。

 ローストビーフとわさびは合う

 王女が帰国されてから、ピルチャー大使から王女が私と会ったのが、日
本滞在中に
もっとも面白かったといわれたと聞かされた。英国人はゆとりを欠いた、
杓子定規なこ
とを嫌う。王女は私からからかわれたのを楽しまれたのだった。

 7月に、英海軍の最新鋭の航空母艦『クイーン・エリザベス』を中核と
する空母打撃
群が、南シナ海を抜けて佐世保港に入る。英国の空母打撃群が戦闘体系を
とって極東の
海に姿を現すのは、1953年に休戦となった朝鮮戦争以来のことだ。
68年ぶりだ。

 英国政府が4月に「統合安全保障指針」を発表して、世界戦略の中心が
日本に至るイ
ンド太平洋へ移ったと述べている。

 次号も、英国について書こう。

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◆竹中平蔵氏が推進「自由競争」

鈴木 傾城


日本は滅ぶ。農業も製造業もインフラも外国企業が独占

菅政権のブレーン・竹中平蔵氏が推進する「自由競争」が日本を破壊す
る。自由な競争が生み出すのは、圧倒的な強者が弱者を踏みつぶす残酷
ショーである。銀行や農業や医療や水道や電気と言ったインフラを外国企
業に独占されると、「それが資本主義だ」と鷹揚に構えていられなくなっ
ていく。外国企業が国民の生命に関わるインフラ部分を掌握し、値段を吊
り上げることによって国民の生活を危機に陥れることが可能になるから
だ。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を
取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブ
ラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フ
ルインベスト」を運営している。

何でもかんでも自由にするのは正しいのだろうか?
今、菅政権は「成長戦略会議」で竹中平蔵氏を経済のブレーンとして重用
している。


この竹中平蔵は2000年代の小泉政権でグローバル化を前提とした経済政
策、規制緩和による競争促進、労働者保護廃止などの経済政策を次々と
行っていた。

グローバル化を意識して、「企業には自由に競争させよ」と言って、自由
競争を阻むあらゆる障壁を撤廃し、郵政も民営化して競争にさらした。あ
らゆる組織体を競争原理にさらしていったのである。

こうした手法は新自由主義と呼ばれた。「資本主義なんだから、企業の自
由に競争させればいいではないか」というわけだ。

「自由」という言葉は、とても美しい言葉だ。「不自由であるのがいいの
か、自由であるのがいいのか?」と問われて「不自由の方がいい」と答え
る人は、ほとんどいない。誰もが自由を愛する。

しかし、何でもかんでも自由にするのは正しいのだろうか

多くの国では、実は自国の産業を守るためにいくつかの保護政策を取って
いる。守りたい産業を保護するために外国製品には高い関税をかける。

あるいは守りたい産業を国営化して、その重要な産業がつぶれないように
している。インフラや農業は、多くの国で保護対象になる。

なぜか。ここが潰れれば、一気に国民生活に影響が出るからだ。

根幹部分を持っていかれると、場合によっては国が回らなくなってしまう
のだ。

圧倒的な競争力でその分野を乗っ取ることが可能になる
実は、この政府が保護する分野というのは、そこが乗っ取られたら国民生
活が急激に困窮していく部分なのである。

たとえば、電気・ガス・水道を考えてほしい。この部分を外国企業に乗っ
取られて、外国企業が儲かるためにどんどん値段を釣り上げたらどうなる
のか。電気・ガス・水道が2倍、3倍になっていったら生活できなくなる層
もいるはずだ。

だから政府はこの部分を保護して、国民が困窮しないようにしている。


そうであれば、外国企業がある国を乗っ取るには、この部分を掌握すれば
いいということになる。

まず政治家を買収して、保護貿易を止めさせる法律を策定させて、重要な
インフラをすべて民営化して、それを乗っ取ればいいのだ。

Next: 「自由」が自国の産業を潰していく。消費者はそれに気が付かない

        
at 08:04 | Comment(0) | 鈴木傾城

◆「ニーチェについて」

宮崎 正弘

 
令和三年(2021)5月29日(土曜日)弐
通巻第6928号   

<< 土曜随想 >>
  「ニーチェについて」

 ニーチェはキリスト教そのものがニヒリズムだという意味のことを言
い、また同時にニヒリズムとはアリストレス以来の、思想が重視されな
い、人間が思惟しなくなった状況を批判し「神は死んだ」と書いた。
 その意味するところを、神仏集合の特異な宗教観を抱く日本人には理解
しがたい。
 ニーチェのいう「神」はユダヤ、キリスト教の神であり、その信仰が救
済になるとした教会の形骸化を意味した。キルケゴール以来、知識人、哲
学者は神への反乱ではなく、教会の形骸化に怒りをぶつけたのである。
現実に宗教改革を訴えたルターより遙か以前にチェコのフスは教会を鋭く
批判して火あぶりの刑に処せられている。

 ニーチェは自らを「無神論」と規定し、アンチ・キリストを叫び、同時
にインモラリストを標榜したが、自らの思想の体系を最後の著作となった
『この人を見よ』で次のように予告していた。
 「真の世界と呼ばれてきたものが虚構された世界なのであり、『仮象の
世界』と言われてきたものが、現実の世界なのだ。・・・理想という嘘が
これまで現実の世界の上に蔽い被さっていた呪いであった。この嘘によっ
て人類自体がいつしか本能の一番奧底の隅々に至るまですっかり出鱈目に
なり、まやかしになってしまった」(『この人を見よ』、西尾幹二訳、新
潮文庫)。

 「ニーチェは二千五百年に及ぶプラトン以来の形而上学の歴史が意味を
失ったことともってニヒリズムとしている」(西尾『ニーチェの対話』、
講談社新書)。
 
ニーチェに関心を抱いたのは、じつは三島由紀夫に触発されたからであ
る。三島が『豊饒の海』に取り組む前までに、もっとも影響を受けた思想
家はニーチェだった。
 断定的に聞こえるかもしれないが、三島の『宴のあと』『絹と明察』は
まことにニーチェ的であり、『美しい星』の主人公達はディモーニッシュ
であり、三島がニーチェをよく読みこなしていたことは研究者のあいだで
は普遍的解釈である。そして三島が好んだ音楽はワグナーだった。

 ▲『悲劇の誕生』

 ニーチェは大学で何を講じていたか。古典を読み解くギリシア文献学で
ある。
 かれは古代ギリシアの哲学、思想に一種崇高を見出し、対照的に欧州を
途中から蔽いつくしたキリスト教に否定的となった。

 ニーチェは夢と現実を以下のようにまとめている。

 「生は醒めている半分と夢見ている半分とから成っているが、醒めてい
るほうがわれわれには比較にならぬくらい優れた、重要な、値打ちのあ
る、生きがいのある半分と思われている。否、生きるとは、この醒めた半
分だけを生きることだと思われている」(秋山英夫訳、岩波文庫版『悲劇
の誕生』、59p)。

 そしてニーチェは次のように言うのだ。

 「科学の精神という言葉で理解しているのは、ソクラテスという人物に
おいてはじめて世にあらわれた信念、自然が究明できるものであり、知識
が万能薬的な力を持っているというあの信念にほかならないのである。こ
の前進して休むことを知らない科学の精神が、さしずめどういう結果をも
たらしたかと考えてみるひとは、神話がそのために滅ばされたというこ
と、この破滅によって文学もまたその自然の理想的地盤から追い出され、
故郷を失うようになった」(同秋山訳)。

 ▲『善悪の彼岸』

 ニーチェの『善悪の彼岸』は、たっぷりと塗り込まれた知的な毒素、そ
れも既存の哲学や道徳に対しての、凄まじいほどの闊達な批判の刃である。
 「カントはかたくるしく鹿爪らしい偽善をもってわれらを弁証の邪路に
誘い」、はたまたスピノザは「数学的形式によるかのスピノザの奇術」
(竹山道雄訳、新潮文庫版。19p。以下同じ)
 「キリスト教はかつてありし自惚れの中の最悪のものである。高くもな
くきびしくもない人間が芸術家として人間を形成したとする。強くもなく
視界の狭い人間が、崇高なる自己克服をもって、千熊万様の不具と破滅の
一目瞭然たる法則を認めまいとする」(109p)

 ショーペンハウアーとて、ニーチェの毒舌的総括ではこうなる。
 「ショーペンハウアーすらがほとんど尊敬に値する無邪気さをもって彼
の問題を提出している」(145p)

 かくも哲学が表層的には豊饒にみえて、じつは不毛だとして次の文言が
続く。
 「ヨーロッパには久しきにわたる精神の不自由の時代があった。思想の
伝達には不信な拘束が加えられた。思想家は教会や宮廷の基準の内に、あ
るいはアリ
ストテレース的前提の下に、考える訓練を自らに課していた。また、ヨー
ロッパ精神の意志は、一切の現象をキリスト教の方式に従って説明し、い
かなる偶然の中にもキリスト教の神を再発見し、是認しようと執拗に試み
ていたーーこれらすべては暴力的な、ほしいままな、きびしい、慄然た
る、不条理なものであったが、これが鍛錬の具となって、ヨーロッパ精神
はその力とその顧慮することなき好奇心とその動性とを育てえたのであっ
た。もちろん、その際に力と精神の回復すべからざる多くのものが圧迫さ
れ、窒息せしめられ、腐敗せしめられた」(149p)

 道徳には二つの根本的類型があるとするニーチェは、「支配者道徳と奴
隷道徳」があり、「すべての高度のまた複合的な文化には、この両道徳を
調停しようとする試みも見出されている』(中略)「両者がーー同一人物
のなかに、同じ魂の中にすらーー頑固に併存していることすらある」
 しかるに善と悪の対照は高貴と軽蔑にあり、「臆病な人間、戦々恐々ま
た小心翼々たる者、ただ目先の利得のみに普請する者は軽蔑される。さら
に、限界の狭い猜疑者、卑下者、虐待に甘んずる犬に似た人物・物欲しげ
な追随者・そして何よりも虚言者は軽蔑される。下郎は詐る者、というの
がすべて貴族的な人間の根本信念である。『われら廉直な者』ーー、古代
ギリシアでは、貴族たちはみずからかく呼えた」(298p)
 かくも激しく近代ヨーロッパの哲学と精神を批判したニーチェは自らを
「神ディオニソスの最後の使徒・秘儀へと許されし者・われは、その口授
を受けた」とするのである(340p)
 ニーチェは古代ギリシアの英知に回帰したと解釈できるだろう。
 ディオニソスはいうまでもなくギリシア神話にでてくる豊饒と酩酊の神
であり、ローマ時代の世界の支配地区のあちこちにはディオニソス劇場が
造られ、ギリシアにあこがれて旅した三島由紀夫は、アテネの劇場跡に
立って感慨にふけった。

 突如、連想したのはフスの火あぶりのことであった。
 チェコの最高学府カレン大学の総長を務めたフスがキリスト教会を批判
し、対立し、異端裁判にかけられた。
 フスが火あぶりに処せられ、殉教者となったのは1415年である。コ
ロンブスの大陸発見より早い時期で、欧州は暗い宗教の霧に包まれ、迷妄
が支配していた。フスを異端と決めつけたのはローマ教皇庁であり、「異
端を認めれば命乞いを許す」としたが、峻拒した。火あぶりの藁を燃やす
信徒に「おお、神聖なる単純」、つまり愚か者め、と叫んだ。
 フスは「真実は勝つ」と言い残し、以後、チェコ人の胸に深く刻まれ
た。東西冷戦終了直後のビロード革命の主役となったヴァーツラフ・ハベ
ルは詩人だった。民主化ののち、初代大統領となったハベルが、この言葉
を用い、いまもチェコの大統領府の紋章はフスの言葉である。

▲『ツアラトストラはかく語りき』

 ニーチェが自ら代表作といった『ツアラトストラはかく語りき』は明確
に「神」を否定した書物である。
 ツアラトストラはゾロアスターのドイツ語読みである。ニーチェは古代
のペルシア人が信仰したこの神に仮託して、それ以後の宗教の怪しさを鋭
利な刃物で切るように次々と否定してゆく。かといってニーチェは、この
本のなかでゾロアスターの教義、教典、教祖について何も触れていない。
 紀元前六世紀、ペルシア「アケメネス朝」の時代からアーリア系の人々
にひろく信仰をあつめ、ゾロアスター教が「拝火教」とも言われるよう
に、偶像の代わりに光りをあらわす火を崇め、火が闇と戦うのだから絶対
に火を消してはならない。善悪の二元論に基づき、天国と地獄があり、最
後は善が悪に勝つが、そこには「最後の審判」があるとする基本の教典
『アヴェスター』が成立した。
 西からヘレニズムが入ってくると、寺院建立の必要性に迫られ、拝火教
神殿を建て始める。イランからジョージア(グルジア)にかけて、その寺
院跡が残るのだが、筆者が目撃したイラン南部の拝火教神殿の刻印は明ら
かにナチスのハーケン・クロイスの原型だった。アーリア民族の象徴でも
あるとされる。
 サザン朝ペルシアでは国王の権威を高めるためにもゾロアスター教が国
教になり、インド洋を行き来するペルシア商人らがインド、パキスタンへ
布教した。
 この二十一世紀にも、パキスタンのカラチ、インドはグジャラート州と
ムンバイに依然として多くの信者がいるのは、布教ルートと関係が深い。
グジャラート州は現在ヒンズー原理主義が盛んで、モディ首相の出身地で
もあり、ムンバイはインド最大の商都にしてタタ財閥の本拠地でもある。
 ゾロアスター教が火を絶やさないとすることは、今日の「聖火」がオリ
ンピックでも伝統として残っているように古代ギリシアにまで影響が広
がっていたと考えられている。
 つまりゾロアスターの教典は、最後の審判があるユダヤ教「旧約聖書」
の原理であり、さらにキリストの誕生以後、預言者の「復活」があるとし
たのが「新約聖書」、つまりキリスト教となった。紀元六世紀頃にアラビ
ア半島に生まれたイスラム教は、このゾロアスター、ユダヤ、キリストの
教典を基礎に、新しい教えを成立させたわけで、こうした文脈から言って
もゾロアスター教こそは世界三大宗教の原点である。
 ゾロアスター教の異端とされるのがマニ教で、やはり強烈な二元論、光
りと闇、善と悪。しかしヘレニズムの影響も強く、キリスト教の影響も
あったため中東からイベリア半島まで西進し、東に目を転ずれば、中央ア
ジアを経て中国に入ってマニ教は即天武功によって保護され荘厳な寺院も
造られた。ギリシアではアウグスチヌスが一時期信者だったともいわれる。
 しかし宗教はカルト性をもつために分派に対しては激しい憎しみを抱
く。ユダヤ教の分派とみられたイエス・キリストが磔刑に処せられたよう
にマニ教はゾロアスター教から憎まれ、教祖のマニは処刑された。以後、
急速に下火となって教典も宗教画も焼かれ、完全に消滅した。現在は教典
も確認されず、寺院の残骸が1箇所残る場所は福建省泉州である。

 『ツアラトストラはかく語りき』には何が書かれているのか。
 日本で最初に『ツアラトストラはかく語りき』が完訳されたのは明治
44年で、生田長江がなした。その十年後の登張竹風訳はじつに名調子、
次のような書き出しである。

 「光炎菩薩、御年三十にして、その故郷を去り、故郷の湖辺を去りて、
遠く山へ入りたまヘリ。山に住して禅定に入り、孤独寂寛を楽しみたまふ
こと、ここに十年なるに、未だ嘗て倦みたまふことなかりき。十年の後、
心機遂に一転、その明、曙光をあおいで立ち、登る大日輪を仰いで語って
曰く。。。。。」
 
 光の神ツアラトストラは「光炎菩薩」と表現され、思考は「禅定」、太
陽は「大日輪」と仏教用語に翻案し、映画のトーキー風、いや講談風だっ
たから日本人には分かりやすかったのである。
 ともかく或る日、山から下りてきたツアラトストラは森の中で聖者とで
あう。論争を挑まれるが、嗤いつつ別離する。

 「かの老いたる聖者は森の中にあって、いまだついに耳にしたことがな
いのである、──神は死んだ!と」(竹山道雄訳、新潮文庫版、上巻、
17p。以下訳文の引用は同じ)。
 
 ニーチェは「精神の三熊の変化を説く。精神が駱駝となり、駱駝が獅子
となり、かくて最後に獅子が小児となる」、これを竹山道雄は「精神」が
「超人──創造的天才」、「駱駝」は「誠実な忍従」、「獅子」を「力強き
積極的自主性」、そして「小児」を「善悪の彼岸にある自由な想像精神」
と解釈した(同上巻、55p)
 ツアラトストラとて、「あらゆる背世界物らのごとくに、人間の彼岸に
妄想を馳せた。そのとき、われはこの世界を、苦悩し呵責せらるる神の業
と思考した」のだが、「苦悩と無力とがすべての背世界を造ったのであ
る。さらに、苦悩の底に沈めん(さんずいに面)する者が経験するところ
の、かのしゅつこつの間の幸福の妄想、之を与って背世界を造ったのであ
る」、即ちこれらが「すべての神々を造り、背世界を造った」(65p)
 だが、真理に目覚めた者は戦闘を開始する。ニーチェは虚無的敗北的で
はなく、戦闘的である。
 「一切の神々は死んだ。いまやわれらは、超人が生きんことをねがう」
(185p)
 神に仮託しなくとも自立して生きる人こそ、ニーシェは超人と名付けた。

 「万物は永遠の泉によって洗礼され、善悪の彼岸において洗礼さる。し
かるに、善と悪とは、ただ中韓に射す影であり、湿りある悲哀であり、行
く雲に過ぎない」。
 「永遠のなかに生滅する万有は、倫理的目的に従って動いているのでは
ない。宇宙は合理的道徳的な計画にしたがって秩序づけられている、とい
うごときは迷走である。宇宙の法則に従うと称する道徳的判断は架空のも
のである。しかもツアラトストラに従えばーーこれは人間の自発的倫理意
思を妨げ弱めるものである」(下巻、45p)
 
 かくして「古き神々は、すでに昔に最後を遂げた」「古き神々は、死に
まで『黄昏』することがなかった。したというは虚構である」
(83p)。ここでニーチェのいう「古き神々」とは古代ギリシャの神々
である。
 この著は「語録」というより、ニーチェの『ツアラトストラはかく語り
き』は全編が長編の散文詩のごとくである。研ぎ澄まされた語彙を選びな
がらも、それは哲学的であり、幾重もの解釈が成立するように仕組まれて
いる。
「永劫回帰」というニーチェの思想的根幹が、描かれているからに他なら
ず、結末でツアラトストラは「高人」に巡り会って曰く。

 「いざ! 獅子はきた。我が子たちは近い。ツアラトストラは熟した。
我が時はきた。これぞ我が朝である(中略)。ツアラトストラはかく語っ
て、その洞窟を去った。そのさま、あたかも、暗き山より昇り来たる暁の
太陽に似て、強くかつ炎えていた」(竹山訳。下巻430p)。

▲最後の作品は『この人を見よ』

 ニーチェの最後の著作は『この人を見よ』である。
 自伝とも取れるように自己の人生を振り返りつつ、過去の作品がいかに
卓越したレベルにあって自己の偉大さを自らが語り、従来の哲学の不毛な
どと罵倒しつつ、きわめて高いところから傲慢に強引に居丈高に語る。
 全体のトーンがあまりにも高飛車ゆえに、ニーチェ・ファンでも不快な
気持を抱くかも知れない。だが、これこそはニーチェ一流のアフォリズム
であり自己韜晦のスタイルであるかもしれず、加えてこの晩年にあって
ニーチェは狂気を明らかに帯びていた。
 ニーチェはこの本を1888年に仕上げていた。校正刷りが手間取る内
にあらたなメモが加筆されたりして、関係者との間で大いに揉め、けっ
きょく『この人を見よ』の刊行はニーチェの死後八年を経た1908年
だった。

 『この人を見よ』では出自から履歴を語り、「私は一個のデカダンなの
であるが、それとはまた別に、私はデカダンの正反対の者でもある」と
謂ったかと思えば、「内攻的復讐感情(ルビ ルサンチマン)に私が左右
されない」と自己規定する。
 ルサンチマンか、なるほど。ニーチェはキリスト教を強大なルサンチマ
ンの体系と見立てたのである。 
 ニーチェはソクラテス、プラトン時代を評価した。紀元前五世紀のギリ
シアは、むろんキリスト教成立以前。原始的宗教、アニミズム、そして道
徳的神話の世界だった。ソクラテスは「哲学者は賢明であり、戦士は勇気
に満ち、市民には節度があり、国家は正義が優先するという意味のことを
解いた。プラトンは、このソクラテスを演繹したかたちで「知恵、勇気、
節制」そして「正義」を力説する。
 そしてブッダを語った。

 「仏陀の『宗教』は、むしろ一種の衛生学と呼んだ方が、キリスト教の
ようなあんな哀れむべきものとの混同を避けるためにもかえって良いのだ
が、この『宗教』はルサンチマンに打ち勝つことをもってその功徳として
いた。つまり、魂がルサンチマンによって左右されないようにするこ
とーーこれが病気からの回復への第一歩なのである。『敵意によって敵意
は終結しない。友愛によって敵意は終結する』。これは仏陀の教えの劈頭
を飾る言葉だ」(西尾訳、新潮文庫版。32p)

 ニーチェは無神論だと主張して次のように宣言している。

 「無神論は私の場合に、本能的に自明のことなのである。私は余りにも
好奇心が盛んで、余りに疑問好きで、おまけに余りに据傲であるがゆえ
に、一つの大づかみな答えに甘んじてしまうわけにはいかないのだ。つま
り神とはわれわれ思索者にとっては一つの大づかみな答えであり、何とも
不味い料理なのである。ーーそれどころか、神はとどのつまり、『貴方が
たは考えてはならない」とわれわれに向け発せられた一つの大づかみな禁
止令に過ぎない」(西尾訳、44p)
 
 すなわち「キリスト教はアポロン的でもなければ、ディオニソス的でも
ない。キリスト教はあらゆる美的価値ーー『悲劇の誕生』が承認している
唯一の価値ーーを否認している。言い換えればキリスト教は最も深い意味
においてニヒリズム的なのである」

 (なお詳しくは拙著『青空の下で読むニーチェ』(勉誠出版)を参照。 
     
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜読者の声 どく
しゃのこえ READERS‘ OPINIONS  読者之声
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
(読者の声1)貴誌前号「AI戦争」ですが、もっと詳しく知りたいのです
が、適当な参考文献を紹介して貰えませんか?
  (DJ生、茨城)


(宮崎正弘のコメント)英文の研究書は沢山でていますので、近く翻訳が
どっと出ると思います。そのときに、まとめて。。

2021年06月03日

◆中国の“嫌がらせ”が逆効果に

黄 文雄


台湾への「ワクチン妨害」で深まった日本との絆


アジア各国で感染が拡大しつつある新型コロナウイルス感染症ですが、こ
んな状況をも「政治利用」するのがお隣の国・中国政府です。感染拡大が
急速に進み始めた台湾が、世界各国からのワクチン購入をヤクザまがいの
嫌がらせで妨害する中国に、日本国内からも批判の声が出ています。今回
のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真
実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、中国による台湾への「ワク
チン購入妨害」を見た日本政府が台湾へワクチンを提供すると表明したこ
とを取り上げ、かえって日本と台湾の絆がさらに深まった「逆効果」の現
状を紹介しています。


プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学
院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、
評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国
人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。


【台湾】中国からのワクチン購入妨害でさらに深まる日台の絆
● モデルナワクチン第1陣 28日に到着へ 15万回分/台湾

アジア地地域でのコロナ感染拡大がとまりません。台湾は報道にある通
り、5月27日の感染者数は、国内感染者と輸入症例を合わせ405人。死者数
は13人。また、26日までの統計に含まれていなかった追加分として、266
人の感染も発表され、これで台湾内の感染者は計6761人、死者は計59人と
のことです。

マレーシアでも感染が急拡大し、人口あたりの新規感染者がインドを超え
たとの報道がありました。

● マレーシア、感染急拡大 人口比でインド上回る

台湾同様、コロナ優等生と言われていたシンガポールも、新規感染者が急
増しています。中には、ファイザーまたはモデルナのワクチン接種を受け
ていた人の感染、いわゆる「ブレイクスルー感染」が確認されました。

● コロナ感染「抑制に成功」のシンガポール、相次ぎクラスター発生

タイとベトナムでも、新規感染者数は増加しています。タイでは、刑務所
のクラスターで6800人以上もの感染が確認されたこともありました。

● 東南アで変異型猛威…「優等生」タイ、刑務所で6800人以上感染確認

こうしたアジア地域での拡大のきっかけとなったのは、インド株といわれ
る新型のウイルスです。ワクチンを二回接種していれば、インド株感染に
対してもかなり効果があるという報道もありますが、欧米でもアジアでも
インド株が急速に猛威をふるっています。

いくら消毒しても検温しても、感染拡大抑制への大きな効果は期待できま
せん。やはり我々がやるべきことは、やはりワクチン接種を急ぐことで
しょう。

中国は、ベトナム、ラオス、ミャンマー、タイ、カンボジア、フィリピン
などのASEAN諸国に優先的に無条件で中国産ワクチンを流通させるとし
て、実際にそれら各国ではすでに中国製ワクチンが接種されています。

しかし、中国の押し売り的なワクチン外交に反発している国もあります。
ベトナムです。ベトナムは自国でワクチンを製造し、中国のワクチンは受
け入れないという姿勢を貫いています。理由としては、中国製のワクチン
には信用がおけないというのと、南シナ海での領有権問題や国境紛争な
ど、中国とは犬猿の仲となっているからでしょう。

● 「中国製ワクチンはいらない」ベトナムが見せる意地とプライド

一方、フィリピンのドゥテルテ大統領は、中国製ワクチン接種の様子を
Facebookで公開しました。

● フィリピン大統領、中国製ワクチン接種

他方、以前のメルマガでも述べたように、中国が最大の貿易相手国である
ブラジルでは、5月5日、ボルソナロ大統領が大統領府での演説で、新型コ
ロナウイルスのパンデミックは、中国によって仕掛けられた「新たな戦
争」だと語りました。

● 新型コロナは「新たな戦争」 ブラジル大統領、暗に中国非難

今やワクチンは外交に最も有用なアイテムとなりました。それを最大限に
利用しているのが中国です。コロナが急速に拡大している台湾に対して、
「中国はいつでもワクチンを融通する準備がある」などと甘言を弄してい
ます。

これに対して、台湾はもちろんノーを突き付けています。毎日コロナ情勢
を報告するために記者会見を開いている台湾の中央感染症指揮センターの
陳時中指揮官は、中国製ワクチンなど「怖くて使えない」と言いました。

● 中国が台湾にワクチン寄贈意向 陳指揮官「怖くて使えない」

陳時中指揮官は、コロナ禍のなか母親を亡くしましたが、葬儀などは後回
しにして、不眠不休で責務を優先してきました。その仕事ぶりは、「鉄人
大臣」と呼ばれるほどです。台湾でも、彼の仕事ぶりはみな評価してお
り、尊敬されています。そんな「鉄人大臣」が、記者会見上で二度も涙を
流しました。二回とも台湾でのコロナ拡大を憂いて、台湾のために流した
涙でした。

そして、このような台湾のコロナ対策を妨害しているのが中国です。
         
at 08:05 | Comment(0) | 黄 文雄

◆雀庵の「常在戦場/25 戦争は平和をもたらす」

“シーチン”修一 2.0


【Anne G. of Red Gables/311(2021/5/31/月】「戦争は二度と繰り返して
はいけない」、という言葉をしばしば目にするが、人類史は戦争の歴史で
ある。戦争が新たな秩序=平和を産み、やがてその効力が薄れてきて対立
を生み、戦争になり、新たな秩序が生まれるこの繰り返しではないか


新秩序は勝者が創るから、敗者は当然不満である。敗者は当初は大人しく
しているが、悔しい思いを何十年、何百年も持ち続けるから、「いつか
チャンスが来たら今度は俺たちが戦勝国になってやる」というのが自然で
あり、実際にそういうケースは少なくない。「雪辱を晴らす」「臥薪嘗
胆」「汚名をそそぐ」「名誉挽回」なんてスポーツ記事では常套句。ホ
モ・ルーデンス? 映画や漫画は戦争モノが結構人気だ。ユーミンのミリ
タリールックなんて可愛かったなあ。


どんなに勝者が強くても「栄枯盛衰」「盛者必滅」は世の習い。数千年も
の間、戦乱に次ぐ戦乱を体験してきた支那の民は「備えあれば患いなし」
「上に政策あれば下に対策あり」「信用できるのはカネと宗族だけ」「い
つでも逃げ出せるように子弟と資金は第3国に移しておく」といった自己
防衛策に長けている。2000年も国家を奪われてきたユダヤ民族も同様だろ
う。駐日イスラエル大使館のサイトにはこうある。


<ユダヤ民族は、イスラエルの地(エレツ・イスラエル)に誕生し、この
地でユダヤの文化的、宗教的、民族的なアイデンティティは形成されまし
た。長きにわたる離散の時代にも、ユダヤの民がイスラエルの地との絆を
絶つこと、この地を忘れることはありませんでした。そして遂に1948年の
イスラエル建国によって、ユダヤ民族は2000年ぶりに独立を取り戻しました>


戦争=武力によって奪われたものは戦争=武力によって取り戻す、戦争=
武力を忌避する者は亡国、奴隷、家畜となりやがて消滅する、良いか悪い
かではなく、これが歴史であり、現実だ。リアルを見ない、備えなのない
国に未来はない。米戦略問題研究所のエドワード・ルトワックは著書「戦
争にチャンスを与えよ」でこう語る。


<戦争の目的は平和をもたらすことにある。人々に疲弊をもたらすために
行われる。戦争に赴くとき、人々は力に溢れ、夢や希望に満ち、野望に心
躍らせている。しかし、いったん戦争が始まると、今度は様々な資源や資
産を消耗させるプロセスが始まる。この過程で、人々の夢や希望は次々と
幻滅に代わっていく。そして戦争が終わるのは、資源や資産が付き、人材
が枯渇し、国庫が空になった時である。そして初めて平和が訪れる。人々
は家や工場を建て直し、仕事を再開し、再び畑を耕す。


ふたつの国の一方が勝って、一方が負ければ、双方とも戦争を止めて、普
通の生活に戻る。敗者は領土の一部を失うかもしれないが、それでも国民
は普通の生活に戻り、仕事を再開し、家族を養うのである。「戦争が平和
をもたらす」のだ。


今日ではあまりにも多くの戦争が、終わることのない「紛争」となってし
まった。その理由は(国連や非政府組織のNGOなど)外部からの介入に
よって、「決定的な勝利」と「戦争による疲弊」という二つの「終戦要
因」が阻止されるからだ。


NGOは自らの組織の永続を目指している。彼らの最優先事項は、目立つよ
うな状況下での活躍を誇示することで、善意の寄付を募ることにある。比
較的アクセスのよい難民キャンプに活動を集中させれば、メディアはいつ
までも報じてくれる。先進国同士の戦争は極めて稀となっているため、
NGOにとってはメディアで取り上げてもらうチャンスが減少している。だ
からこそ彼らは世界で最も貧しく厳しい地区の難民の支援に力を注ぐのだ。


難民は基本的に戦闘で負けた側の人々によって構成されている。その中の
戦闘員は「撤退戦」を行っているに等しい。ここでNGOが介入することで
(撤退戦中の戦闘員を追い詰めている)敵側が決定的な勝利を収めて戦争
を終わらせるというプロセスを妨害してしまうのである。(結果的に)互
いが戦争で疲弊することから生まれるはずの「講和」への動きを阻止して
しまうのだ。


(自衛隊も派遣されている泥沼的内戦の)ソマリアのようなケースでは、
NGOは自分たちの安全を確保するために現地の軍閥などにカネを払い、そ
れが彼らの武器購入資金になったりする。このようなNGOは、かえって戦
争を長期化させてしまっているだけだ。


(国連やNGOによる真の解決に)無関心で安易な介入は害毒であり、そう
した欲求を各国の政策担当者は排除すべきなのだ。介入拒否は、平和が生
み出される条件を整えるために必要なのだ。米国は、他国による国際介入
をリードするのではなく、逆に、不介入を説いて思いとどまらせるべきで
ある。介入主義的なNGOを少なくとも公式には支持したり財政的に支援す
べきではない。


このような主張は一見すると極めて非常識なようだが、戦争のパラドキシ
カル・ロジック(逆説的論理)の把握や、戦争の唯一有益な「平和をもた
らす」機能を邪魔せずに機能させる必要がある、という確かな認識に基づ
いているのだ>


天下分け目の関ケ原がなければ幕府による250年の安定はなかった。戊辰
戦争がなければ日本は米英仏に三分割されて属国になっていたかもしれな
い。日清・日露で勝たなければ今の日本はないし、大東亜戦争がなければ
列強による世界の植民地支配は今も続いていたろう。


戦狼妄想の中共を抑え込まなければ世界、特にアジアは中共帝国に併呑さ
れ、我々はウイグル、チベット、モンゴルのように残虐な圧政に苦しむこ
とになる。勝ち負けは兵家の常とは言うが、戦わずして屈服すれば民族は
再起不能、消滅するだけだ。対中戦争は逃げたら日本の終わり、どの面下
げてご先祖様に会えようか。果敢に、狡猾に、死にもの狂いで戦うべし。
(二十歳の小生に友曰く「極左は極右になりやすい」・・・気を付けた方
が良さそうだな)

目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
https://blog.goo.ne.jp/annegoftotopapa4646
メルマガID 0001690154「必殺クロスカウンター」


◆ガザ地区の過激派との11日間戦争は

宮崎 正弘

 
令和三年(2021)5月29日(土曜日)
通巻第6927号   <前日発行>

 ガザ地区の過激派との11日間戦争は「初のAI戦争」とイスラエル軍
   暗号名「錬金術」「ゴスペル」「賢明の深さ」という作戦の全容

 5月10日、ロケット弾が、ガザから1000発以上打ち込まれ、イス
ラエル側の市民に犠牲者がでた。イスラエルはただちに「自衛権の行使」
として軍事的反撃に出た。
ハマス軍司令官やジハードの幹部らが集中して犠牲となり、やおら米国が
仲介に乗り出して停戦に到った。

 この戦争は「初のAI戦争だった。基盤はAIによるデータをスパコン
が処理したことが大きい」とイスラエル軍が評価していることが分かった
(『エルサレム・ポスト』、2020年5月27日)。

「戦法の革新はテクノロジーの改良による」と評価され、ハマスやジハー
ド幹部の特定、拠点移動の情報がGPSによりリアルタイムで把握され、
イスラエル軍の出撃を効果的なものとした。

 暗号名「錬金術」『ゴスペル』「賢明の深さ」という作戦はいかなるも
のであったかと言えば、イスラエル軍は下記四つの情報を統合して、敵を
割り出し攻撃する処理が可能となっていたとする。

すなわち
 デジタル処理インテリジェンスが[SIGINT]。
ビジュアル処理は「VISINT」。
従来の人間による情報収集と評価を「HUMINT」。
地理的データ情報が「GEOINT」としてスパコンで瞬間的に処理された。

 暗号名『ゴスペル』は、具体的にはテロリスト拠点の割り出し、幹部の
特定、そして移動情報のリアルタイムでの伝達、軍へ攻撃目標と、使用す
る兵器の選別も示唆が可能なAIが機能した。
 
ガザ沿岸部から洞窟陣地へ武器がイランなどから密輸、陸揚げされ、トン
ネルを運搬される兵站ルートなどは、何年も前から情報が集められてい
た。トンネルも空爆でイスラエルは破壊した。

とりわけハマス幹部の拠点は学校近くが多く、戦闘時間の短縮のためには
30キロ爆弾が使用されたという。ガザ市民の犠牲を回避するために、テ
ロリスト選別が重要だが、これをAIが処理したことになる。

 テロリストの移動もリアルタイムに掌握されていたので、日頃からの情
報重視がイザ鎌倉で大いに役に立ったことを証明する戦争となった。
 わが自衛隊、この戦争を如何に総括したのだろう?

     
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評  BOOKREVIEW 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜反中言辞を吐く
とつるし上げ、糾弾集会、抗議デモ。反動教員だと喚かれる。
日本人教授が辞職に追い込まれた。早稲田大学に2500人の中国人留学
生がいる。

  ♪
桜井よしこ 楊逸 楊海英『中国の暴虐』(ワック)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
楊逸さんは外国人ではじめて日本語で書いた小説で芥川賞受賞の作家で
ある。
楊海英・静岡教授は中国を告発し続ける夥しい著作活動で知られる。モン
ゴルの悲劇を描いた『墓標なき草原』(岩波現代文胡)などの翻訳でも知
られる。

まずはこの二人の日本留学までの過程と葛藤。精神の来歴と、それまで
に如何に中国国内で虐待されたかを赤裸々に語る。司会進行は桜井よしこ
さんで、話の進め方、切り口は鮮やかである。

楊逸女史は家族が迫害され、しかも下放された。死ぬ寸前にまで追い込
まれた文革時代の迫害の原体験者ゆえに、その凄まじさを聞くと身の毛が
よだつ。友人で行方不明になった者もいるという。

中国共産党の弾圧のおぞましさ、人間とは思えない残酷さが、ひしひし
と語られる。

ウィグル問題が国際世論で集中砲火を浴びているが、嘗ては南モンゴ
ル、チベット、そして昨今の香港における自由の弾圧と植民地化。根は同
じである。

その侵略の牙の脅威がつぎは台湾と尖閣諸島に迫る。

未曽有の危機が目の前にあるというのに、日本はのほほんとして、まるで
他人事である。バイデンが尖閣は日米安保条約第五条が適用されると発言
したら、それだけで安心しているほどに、戦後の日本人から武士道精神ど
ころか、肝要な自律性も失われた。

そればかりではない。楊逸女史も楊海英氏も、おふたりとも日本の大学
で教鞭を執るが、大学キャンパスで中国人留学生がどれほど謀略的である
か。大使館命令に従って、講義中の教授が、反中言辞でもちょっと吐こう
なら、集団でつるし上げ、糾弾集会、抗議デモまで展開される。反動教員
だと喚かれる。

現実に何人かの日本人教授が辞職に追い込まれた。

日本の大学なのに、まるで中国のキャンパスではないか。立命館もすご
いが、早稲田大学には2500人もの中国人留学生がいる。

その組織力。 その暴走が日本国内でおきているにもかかわらず、日本に
は対抗できる手 段もなければ、日本の若者はまるで無関心で、全体主義
と闘おうとしない お花畑にいる。

「若者の怯懦は国を滅ぼす」と言ったチャーチルの箴言を思い出すのだ。 

さて、言葉の統一の問題で、楊海英教授は次の発言をしている。

「北京語は本来、漢民族の言葉ではありません。あれは『ピジン語』な
んです。ピジン語というのは、現地を話す現地人と、現地語を話せない外
国人などとの間で意思の疎通をはかるために互換性のある単語で構成され
た言葉で す。

共通言語を持たない集団同士がコミュニケーションをするための便利 な
手段です。つまり北京語は、満州人が三百年間、中国を支配している間
に、満州人が、被支配者の漢民族と話すために造った言葉。

漢民族にもい ろんな地域の人がいて、北京人だけでなく、広東人、上海
人たちともしゃ べるときには、共通語が必要です。これが北京語で、い
わゆる『官話』な んです」(61p)

ということはマンダリンは「満大人」(マンターレン)の意味だ。当時
は満州人が偉く、清王朝の三百年でゆるりと合成されて「官話」になった
のである。

中国語のなかに民主、議会、自由など日本からの輸入語彙も多い が、日
本語になり語彙で豊富なのは罵倒語である。乱暴な言葉は「相手を 打倒
してさらに踏みつけろ」「相手を臭くなるまで批判しろ」(名誉が地 に
落ちることを臭くなると中国語は言う)などが『毛沢東語録』にもある
という。
 楊逸さんは「中国語には他言語になり毒々しさ」が多数にあって「世界
一多い。中国人のおばさんたちが、町のど真ん中で口げんかを始めると、
永遠に停まりません。速射砲のように汚い言葉が出てきた、怖いぐらいで
す」(147p)

 「中華民族」なる新造語がまったくのフィクションであることに言を俟
たないが、楊逸女史はこう言う。
 「中華民族」だの「中華帝国」だのと言うが、「外国から入ってきた共
産主義と伝統的な中国の王民思想がひとつに混ざって、『怪物化』してし
まっています。(中略)誰が銃を手にするかなんですね。技術開発にしろ
ワクチンにしろ、悪人が手にすると、人類全体が脅かされる。いまはその
分岐点に差し掛かっている。それほどの危機感を覚えたのは、わたしの人
生で初めての体験です」(76p)
 かつて中国の自由、民主、法治、人権を主張して立ち上がった「中国の
春」の王丙章博士は、ベトナムから広西チワン自治区へ潜入したところで
逮捕され、無期懲役。現在も獄中にあって欧米では釈放運動が起きている
が、日本は関心さえない。
 自らを吊すロープを敵に売っている日本の実態はこうだ。
 室蘭工業大学副学長は福建省出身の中国人で顔認証の専門家、ここに漢
族の博士課程が複数、全員が監視カメラ製造企業に就職した。
 静岡大学工学部は80%以上が中国人で、毎月20万円前後が日本政府
の奨学金。スパイ養成を日本政府が金を出している。日本人の苦学生には
この特権はない。中国人留学生には要注意である。
 それにしてもスパイ天国ニッポン、中国工作員の暗躍をいつまで放置す
るのか
          
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜読者の声 どく
しゃのこえ READERS‘ OPINIONS  読者之声
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
(読者の声1)貴誌に先週あたりでしたか、モンテネグロの高速道路を中国
が一帯一路絡みで建設し、汚職が堪えず、そのうえ借金で首が回らなく
なって、EUに救済を申し入れたら、EUは「援助はする
が。。。。。。。。。。」と言葉を濁した由。EUに、こういう破産状態
の国を加盟させて、どうするつもりなのか、 他人事とはいえ心配です。
(DJ生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント)中欧諸国の中で、いまも中国べったりは少なく
なって、リトアニアは明確に「17+1」から脱退しました。同時に
「17+1」の首脳会議を「欠席」したのはラトビア、スロベニア、ルー
マニア、ブルガリアです。

ポーランドは中国のスパイを摘発し、チェコは 国会議員団が台湾を訪
問。いまも中国よりはセルビア、スロバキア、ハン ガリーくらいですか。

イタリアは中国のカネにまだ期待しているようですが、チャイナタウン
だったプラトから半分、中国人が消えて、帰国したというニュースもあり
ます。



  ♪
(読者の声2)ビットコインはテスラが購入代金に充ててきたことを取りや
めたため、大暴落しましたが、この暗号通貨は、先生の新刊『WORLD
 RESET』ではどのような予測なのでしょうか?(UI生、千葉)


(宮崎正弘のコメント)予測については拙著をご覧下さい(苦笑)。

ビットコインは、いまや主要国の中央銀行が完全否定という状態になっ
たとみて良いでしょう。

ラガルドECB総裁は「投機的な資産でしかなく、世界的規模で規制し
なければならない」とし、またECB幹部は「決済に多くは使われていな
い。ユーロ圏の金融機関も殆どは暗号通貨を保有していない」

 つまりECBは介入するほどのものではないのであり、暗号通貨投資者
は『自分で始末しろ』という。
 ゲンスラー米SEC委員長は「投資家保護が市場健全化に必要」として
はいるが、FRBには通貨発行権が脅かされるという杞憂がのこる。パウ
エルFRB議長は「リクを抱えているので監視を強める」。連銀幹部のひ
とりは「経済に浸透するほどには普及していない」と現状に楽観的である。
 中国中銀、人民銀行は「ビットコインの決済取引を認めない」
 ベイリー英国中銀総裁は「暗号通貨には本質的な価値がない。投資する
と資金を失う可能性を認識せよ」 
 どうやらビットコインの未来はみえたのではありませんか。
               

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