2021年09月01日

◆尖閣諸島で「日米共同訓練」を開始せよ


櫻井よしこ

東京五輪もあと数日、卓球、体操、水泳、陸上と、応援する側も、本当に
忙しい。池江璃花子さんが女子競泳400メートルメドレーリレーを泳ぎ
きって、一緒に泳いだ選手たちと抱き合って号泣していた姿、その後は晴
れやかな笑顔になって「幸せ!」と語った姿。きっとずっと記憶に残ると
思う。

日本中が五輪で盛り上がっている間、世界と中国との対立は深まり続けて
いる。57年前、東京五輪に合わせて核実験をしたように、中国はいつも相
手国の不意を突く。「言論テレビ」は五輪の最中の7月30日、陸海空自衛
隊の元幹部を迎えて危機に陥っている尖閣と台湾を取り上げた。

元陸上幕僚長の岩田清文、元空将の織田邦男、元海将の堂下哲郎の三氏
は、いずれも軍事の専門家として台湾も尖閣も、日台両国は完全に中国の
戦略にはまっていると危惧すること頻りだった。

たとえば尖閣諸島周辺海域にはほぼ毎日、中国人民解放軍(PLA)傘下
の海警の船が侵入し続けている。海上保安庁の巡視船は口頭で退去を求め
るが、中国側は気にもしない。日本政府は、領海侵犯される度に「遺憾で
ある」と言い、尖閣諸島の施政権はわが方にあると繰り返す。

しかし国際社会の目には、日中双方の船が毎日せめぎ合っている尖閣の海
は、両国の共同管理下にあるように見えるのではないか。「尖閣問題に関
して日中間に領土問題は存在しない」と日本政府は主張するが、中国側が
尖閣海域への侵入を開始して10年以上が経ったいま、残念ながら「領土問
題は存在する」状況になっている。中国の戦略は功を奏しているのだ。

台湾情勢は日本よりはるかに厳しく、「単独では風前の灯」だ。岩田氏が
指摘した。

「台湾の窮状は空において最も顕著です。2020年10月に、台湾空軍の参謀
長がその年の1月から10月までの緊急発進の回数を発表しました。4596回
という、異常な回数でした。台湾は極度な緊張下に置かれています」

「台湾はギブアップ」

10か月で4596回は1日平均で15回以上になる。わが国にも中国機やロシア
機は接近を繰り返している。回数は年々増えており、過去5年間の平均で
見ると、中国機への緊急発進は625回に上る。航空自衛隊は毎日、1〜2回
緊急発進しているのである。たとえ1回であろうと2回であろうと、日々緊
急発進を迫られるのは戦闘機乗りにとっても航空自衛隊全体にとっても大
きな負担である。ところが台湾空軍は毎日15回だ。PLAは悪魔のような
力と執拗さで戦闘機を飛ばして、台湾を圧迫する。そこで何が起きている
か。岩田氏が続けた。

「台湾空軍が音を上げたのです。パイロットは緊張の毎日で心身共にもち
ません。空軍としては機体の整備も十分にできない。燃料代もバカになら
ない。そこでやむなく緊急発進はかけないというところに落ちついたのです」

中国軍機の接近に対して台湾空軍が緊急発進をかけなくなったということ
は、軍事上どういう意味があるのか。織田氏が説明した。

「台湾は平時の対領空侵犯措置をギブアップしたということです。これで
は台湾空軍は訓練もできません。事故もあり得るし、機体整備の必要性も
あるということで、台湾軍機を(空へ)上げていないのですが、はっきり
言って敗北です」

平時の領空主権は国際法上絶対的であり排他的である。たとえばトルコ政
府は15年11月、ロシア軍機を撃墜した。トルコ、ロシア両国は戦争状態に
あるわけではなく、両国関係は平時のものであった。ところが、ロシア軍
機はシリアに対する空爆を開始、トルコ領空を侵犯し始めた。トルコ側は
領空侵犯機に5分間で10回の警告を発した。それでもロシア機が従わな
かったためにトルコ側は国際法に基づいて撃墜した。

プーチン大統領は激怒し、7か月後、トルコ側が「深い哀悼の意」を表明
して、事件は決着した。要は、トルコには国際社会からもロシアからも報
復はなかったということだ。

「領空主権という絶対的主権を持っているのが国家なのです。それを守ら
なければ国家ではないのです。台湾が自分たちは国家だと考えるのであれ
ば、ここは苦しくても続けなければならないと思います」

織田氏が台湾の現状を厳しく指摘するのは、領空主権を守ることの重要性
を骨身にしみて知っているからであろう。氏は35年間、戦闘機のパイロッ
トとしてスクランブル発進も含め、日本の空を守ってきた。日本上空に向
かってくる中国軍機は全てミサイルという実弾を搭載している。当然自衛
隊機も同様に武装している。制空権を奪われれば、海でも陸でも勝目はな
くなる。国の運命を担って日々領空を守るために、国際法に厳密に従いつ
つ、決して相手につけ入る隙を与えないように実弾装備で構え続けた織田
氏の指摘を心に刻みたい。

日米両軍の結束を強調

空自機は、中国軍機が「上がった」という情報を掴んだら、即時緊急発進
して中国軍機よりも先に尖閣上空に到着する。

「我々がそこに先にいれば、中国軍機は入って来れませんから」と織田氏。

日米両国は台湾(台湾海峡)の安定と平和を守ると国際社会に向けて公約
した。中国が台湾を押さえれば、台湾海峡は日本の瀬戸内海のような形で
中国の内海となる。日本のタンカーや貨物船が自由に通ることもかなわな
くなるだろう。南シナ海への展開も難しくなり、日本はまさに危機に陥
る。台湾と尖閣・沖縄さらに日本は、すべて一体と考えなければならない
のだ。

クリミア半島や南シナ海の島々の例からも、領土は奪ってしまった方が勝
ちなのだ。領土が奪われた時は被害国も国際社会も声を上げるが、暫く時
間が過ぎると、やがて皆、黙ってしまう。奪った側は実効支配の実績を積
み重ねていけばよいだけだ。だから、領土は決して奪われてはならない。

いま、尖閣で中国が手を出さないのは、米軍と事を構えたくないからだ。
しかし一旦、有事となれば、必ずこちらが守り通せるともいえない状況が
ある。どうするのか。日米の結束と力を中国に見せつけなければならな
い。ひとつの方法として、8つの尖閣の島のひとつ、久場島を日米両軍が
共同訓練の場として活用する手がある。

久場島には高い山はなく、平地が広がっている。米軍はずっと同島で軍事
訓練をしていた。が、1978年に米国務省が久場島での軍事訓練を凍結し
た。理由は79年1月に米国が中国と国交を正常化すると決定したからだ。

いま、その凍結を解くよう、米国を説得するのがよい。台湾海峡の平和と
安全にコミットした菅義偉首相は、尖閣を守り通すためにも、日米両軍の
結束を強調してみせることで、自らの約束を果たせるはずだ。

『週刊新潮』 2021年8月12・19日合併号
日本ルネッサンス 第962回


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◆「常在戦場/76金欠習近平の金持ち叩きが始まった」

          “シーチン”修一 2.0

【Anne G. of Red Gables/360(2021/8/30/月】習近平式の“文革2.0”が始
まったが、彼はトウ小平の「改革開放経済」の全面否定、毛沢東の「共産
主義統制=節約閉塞経済」への復帰を目指しているかのようだ。



毛沢東は1957年の反右派闘争(経済自由化を求める反体制派狩り)発動の
直前に、経済建設が思うように進まないのは汚職や浪費のせいだとして、
こう懸念を示している。



「現在、我々の多くの要員の間に、大衆と苦楽を共にすることを望まず、
個人的な名誉や利益をとやかく言いたがる危険な傾向が芽生えている。こ
れは非常に良くない。我々は増産・節約運動の中で、機関を簡素化し、幹
部を下部に降ろし、かなり多くの幹部を生産面に戻すことを要求している
が、これはこうした危険な傾向を克服する方法の一つである」



<1957年6月8日、毛沢東は人民日報で「少数の右派分子が共産党の整風を
助ける名目で、共産党と労働者階級の指導権に挑戦し、はなはだしきに
至っては、公然と共産党に“下野しろ”とわめいている」と批判。10月15
日、党中央は「右派分子を決める基準」通知を出し、1958年には55万人の
右派が辺境への労働改造や失職などの憂き目に遭い、あるいは死亡した>
(WIKI)



我らが習近平はそれを真似ている。石平氏の論稿「高所得層は不合理故に
収奪せよ――習近平政権の危うい『劫富済貧革命』」現代ビジネス2021/8
/27から。



<経済成長に伴う貧富の格差の拡大を是正し、「共同富裕社会」の実現を
目指すのは良いことであって社会全体の安定にもつながる「善政」であろう。



問題はむしろ、どのようにして「共同富裕」を達成するのかである。人民
日報の公式発表から見れば、習政権の考える「共同富裕」の達成手法は実
は、共産党政権ならではの危ういものである。



例えば、貧富の格差是正の手段として「第一次分配」「第二次分配」と並
んで、「第三次分配」が言及された。



普通の市場経済においては、投資者・生産者がその投資と生産活動の代償
として利益を上げて所得を得るのは「第一次分配」であって、政府が企業
や個人から税金を徴収して社会全体の福祉に当てるは「第二次分配」である。



しかし習政権の提唱する「第三次分配」となると、それは当然、通常の税
収・社会福祉事業以外の政治的手段を使って富の再分配を図ることとなろ
う。その具体的なやり方として会議の発表記事は次のような重要なことを
述べている。



「不法収入を断固として取り締まり、不合理収入を整理・規制することに
よって、収入分配の秩序を立て直す」「高収入層に対する規制と調節を強
化させ、高収入を合理的に調節し、高収入層個人と企業が社会により多く
報うように誘導しそれを促す」と。



ここに出てくるのは「収入」というキーワードであって、ポイントとなっ
ているのは「高収入層」、たくさん儲かっている人々のことである。彼ら
こそは、習近平流の「共同富裕社会達成」のための政府手段の標的となろう。



注目すべきなのは、こうした高収入層に対しては、その「不法収入を断固
として取り締まり、不合理収入を整理・規制する」という表現である。
「不法収入」ならその意味するところは明確であろう。不法な手段で得た
収入や、脱税によって増やした収入などがそれである。問題は「不合理収
入」とは何かだ。



「不合理収入」はここでは「不法収入」と別々にされているから、中央会
議のいう「不合理収入」は当然「不法収入」に当たらない。つまり、合法
的な収入であってもそれが「不合理収入」であれば、政府による「整理・
規制」の対象となるのである。



しかし一体どういう収入が「不合理収入」なのか。それに対する厳密な法
的規定は当然ない。結局のところ政府が「不合理」だと認定すればそれは
すなわち「不合理収入」となるのである。ここまで来たら、習近平政権の
やろうとしていることはもはや明々白々である。



国中の高収入層を標的にし、彼らの得た不法収入を取締りによって没収す
るのと同時に、高収入層が合法的な手段で得た正当的な収入に対しても、
政権はそれを「不合理収入」だと勝手に認定した上で、政治的手段を用い
てそれを収奪するのである。



中国では昔から「劫富済貧」という思想があって、金持ちを脅かしてその
財産を奪い、貧民に分配して救済する、という意味合いである。



近代以前、歴代の王朝時代の農民一揆や政治的反乱は往々にしてこれをス
ローガンに掲げて民衆の支持を取り付けようとしていた。実は当の中国共
産党も、党設立の当時からこの思想を旗印にして「革命」を起こして政権
奪取に成功したという歴史がある。



政権樹立後の毛沢東時代、中国共産党はやはり「劫富済貧」をモードとし
た社会主義経済体制を作り上げて、効率の悪い経済運営を行っていたが、
やがてトウ小平の時代になると、政権が「先富論」を持ち出して瀕死の中
国経済に活力をもたらし、それが今までの高度成長につながったわけである。



しかし今、政治運営とイデオロギーの面で毛沢東時代への逆戻りを進めて
いる習近平政権の下では、高収入層を標的にした現代版の「劫富済貧革
命」は再び起こされようとしている。



今後、いわば「不合理高収入の整理・調節」という大義名分の下では、中
国の中央政府とその各級の地方政府があらゆる名目・口実を用いて、高収
入層に対する「上納金」や「寄附金」の強要、罰金の乱発などの手段で、
高収入層・富裕層に対する劫奪が常態化していくのであろう。



そうするとことによって習政権は、中央政府と各級地方政府の悪化してい
る財政状況を改善するのと同時に、裾の広い貧困層・一般平民からの支持
を取り付けるという「一石二鳥」の政策効果を得ることができる。



そういえば今年に入ってから、アリババなどの大企業に対して巨額な罰金
を課することは中国政府の慣用手段の一つとさえなっているが、どうやら
今後において、収奪の標的は企業にとどまらず、幅広い富裕層全体に拡大
していく勢いである。



しかし、世紀の蛮行ともいうべきこのような「劫富済貧革命」は短期的に
習政権に莫大な利益をもたらすことがあっても、長期的に見れば、それは
むしろ多くの投資者や経営者からやる気を奪うことによって中国経済の活
力を削ぐこととなろう。



現に「劫富済貧」的な社会主義政策を実施した毛沢東時代、中国経済はど
ん底に陥っていて、中国は当時の世界の最貧国家の一つに成り下がっている。



内政・外交を問わずにして、習近平政権のやっている政策の大半は実は、
中国自身の首をしめているのである>



劫富済貧の「劫/ごう」は「おびやかす。おどす。かすめる」の意、劫掠
(ごうりゃく)は脅して奪い取ること。「中国近代の反体制的秘密結社
“青幇”“紅幇”。その最も特色あるスローガンは劫富済貧(富者を劫掠して
貧者を救済する)である」(世界大百科事典)。



中共は元々がゴロツキを駆り集めた山賊みたいなものだから「劫奪」「劫
盗」「劫掠」はDNA。貧すれば鈍する、「貧乏になると愚かで馬鹿な行動
をする人になり得る」(weblio)は世の倣い、ユスリタカリも芸のうち、
習近平は先祖返りしたわけだ。毛沢東原理主義!



思い出すなあ、「贅沢は敵だ、欲しがりません勝つまでは」・・・真綿で
首を締める包囲網は効き目がある。歴史は繰り返す、一度目は悲劇とし
て、二度目は喜劇として。



悲劇か喜劇かは分からないが、習近平一派を駆逐しないと14億の民は地獄
行きの「苦難の行軍」を強いられることになる。プーチン・ロシアだって
自国の十倍の支那人が国境を突破して逃げてきたら、1900年の「アムール
河の虐殺」を再演せざるを得なくなるだろう。



中国専門家で元英国外交官のガーサイド (Roger Garside)氏は今春『
中国クーデター :自由への大飛躍(China Coup: The Great Leap to
Freedom)』を上梓したという。中共軍も銭ゲバ拝金教の利権集団だから
クーデターはあり得ない話だろうし、林彪も毛沢東に睨まれ、暗殺・クー
デターに失敗し、空路でソ連逃亡の途次、墜落事故死した(らしい)か
ら、西側諸国が中共軍に期待するのは無理筋。

やはり対中包囲戦で干上がらせて自滅を待つしかないのだろうか。小生
が先に昇天しそうだ。

         
━━━━━━━━━━━━━━━


◆CIA長官、極秘にカブール入り

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)8月25日(水曜日)弐
通巻第7027号  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 CIA長官、極秘にカブール入り。タリバン最高幹部と会談か『ワシン
トン・ポスト』が速報。CIAは沈黙
****************************
 8月23日に、CIAのウィリアム・バーンズ長官が極秘にカブールへ
入り、タリバン最高幹部のバラダルと面談したと『ワシントン・ポスト』
((8月24日)が伝えた
 CIAは否定も肯定もしておらず、確認は取れていないが、世界のメ
ディアは大騒ぎをしている。

 ☆▽□☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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  ♪
樋泉克夫のコラム 
@@@@@@@@

【知道中国 2266回】      
 ─英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港148)

     △
 周囲は普段は見たこともない老若男女が大騒ぎ。しかも、それがワンサ
カといるわけだから、2人が緊張しないわけはない。その緊張ぶりが繋い
だ手から伝わってくるようだった。人混みをかき分けながら第六劇場へ。

 劇場とは言うものの、芝居小屋と呼ぶに相応しい侘しげな佇まい。入
り口にドアがあるわけではなく、外から中は丸見え。だから立ち見を我慢
しさえすれば、無料で芝居を見ることが出来る。スルッと中に入って最後
列の椅子に座ってしまえば、タダで舞台が楽しめる。誰といって咎め立て
する者はいない。なんとも鷹揚で長閑な時代だった
もっとも、入場客の大部分が京劇なんぞに興味があろうはずもないから、
入り口に立ち止まってもヒヤカシ程度で立ち去る。カネまで払って第六劇
場に入れあげるような「戯迷(しばいくるい)」は、当時の香港でも、や
はり余ほどのモノズキであったに違いない。

 程なく、晴れて戯迷の仲間入り、いや見習い扱いを受け、観劇三昧の
日々を送ることなったわけだ。事実、京劇にはまり、夜の?園通いが日常
化するようになると、第一日文の学生などを含め、周囲の誰からも奇異の
目を向けら、誰の顔からも「モノズキにも程がある」といった雰囲気が伝
わってくるようだった。だが、この道だけは止められない。

  第六劇場に戻る。
入り口の右手に置かれた縦横1.5mで高さが2mほどの小屋が切符売り場
だった。その中にオッサンが座席表を客の方に向けて座っている。客が望
みの座席を指さすと、手にしたチビた赤鉛筆で座席表に印をした後、切符
に座席番号を書き込み渡してくれる。ここで忘れてならないのは、演目の
予定と役者名が記された「戯単」を受け取ること。それというのも戯単は
芝居を楽しむ上での最良の手引きだからだ。いずれ細かく論じてみたい。

かくて切符と戯単を手に入場するが、場内案内などいるわけがないから
自分で座席を探す。 
 もっとも足繁く通うようになると、最前列の舞台に向かった右から3番
目(2番目?)の席が定席となった。そこでオッサンはこちらの顔を認め
ると即座に座席表に印し、黙って切符を渡してくれるようになった。1年
ほど通う頃には「自己人(なかま)」と認められたのか、晴れて顔パス待
遇に昇格していた。

 第六劇場の構造を簡単に記すと、土間はコンクリートの打ちっぱなし
で、客席は舞台に向かって緩い下り勾配だった。中央の通路を挟んで両側
に、坐る部分が折りたためる木製の安っぽい椅子が片側6、7席ほど。小
屋全体では満席で300人ほどになろうか。

 じつは京劇を含む中国の伝統芝居は、基本的には大道具は使わない。
椅子に机に小道具、それに役者の五体の動きと場面(おはやし)の音だけ
で、ありとあらゆる情景を舞台の上に描き出してしまう。
取り立てて大きな舞台は必要ない。だから第六劇場のような小ぶりの舞台
であっても、無限の空間を描き出せる。第六劇場では役者の息づかいが客
席最前列の客には皮膚感覚で堪能出来た。芝居をライブで楽しむには手ご
ろな規模の小屋だった。

 とはいうものの、板を打ち付けただけの壁で、なんの装飾もない。夏は
暖房で冬は冷房だから、とてもじゃないが快適とは程遠い。天井に大型扇
風機が設置されているが、これが役に立たない。そんな時は戯迷仲間の誰
かが冷えたビールを持ち込んで、銘々に紙コップを渡し、幕間にグビーツ
と喉を潤す。

冬は寒い。建て付けの悪い老朽化した木造建築だけに、方々の隙間から
冷たい風が吹き込、み、うちっ放しのコンクリートの床からの冷気が靴底
に伝わり、やがて体全体を冷やしてしまう。
だが舞台に集中するから首から上は熱い。すると頃合いを見計らって、戯
迷仲間の誰かが第六劇場隣の客家料理レストランに行って、熱燗の紹興酒
を持ち帰って仲間に振る舞ってくれる。
最前列で京劇を楽しみながらの紹興酒。至福中の至福の時だ。
     ○△□◇ヒ◎○△□イ○△□◇ズ◎○△□ミ△□◇◎   
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 
読者之声
 
 +++++++++++++++++++++++++++++++++++
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   ♪
(読者の声1)随分前でしたが、貴誌がフィリピンの次期大統領選挙をめ
ぐって、パッキオ(ボクシング世界チャンピオン)も出馬するし、ドゥテ
ルテ大統領は長女(ダバオ市長)を立候補させ、自分は副大統領で、事実
上の院政をひく可能性が高いと予測されていました。
昨日(24日)、ドゥテルテ大統領は、正式に「次は『副大統領』に立候
補する」と表明しています。プーチンが大統領から首相となり、また大統
領となり、憲法改正で先の先まで居座るように、ドゥテルテ大統領も同じ
手口でのぞむというわけですね。
   (DS生、さいたま市)


(宮崎正弘のコメント)ただし、フィリピンの選挙制度では大統領、副大
統領のチケットで臨むというアメリカ式ではなく、大統領と副大統領は
別々の選挙(投票日は同じ)です。
 政治の世界は一寸先が闇、長女は健康問題を抱えており、大統領はパッ
キオ、副がドゥテルテという、アンバランス政権となる可能性も0・5%
ほどあります。

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