コロナ禍は、もううんざりだ。げんなりといってよい。
私は84歳になる。7月にワクチン接種を2回受けた。最初の接種の時に
40代にみえる男性の医師による2、3分の問診があった。私が「専門は何で
すか?」と質問した
「泌尿器科です」と答が戻ってきたので、「安心しました。歯科医かと心
配しました」と茶々を入れた。そのうえで「副作用はありますか」とたず
ねたら、高齢者にはないが「若い人はでますね」といって、私たちの会話
が終わった。
2回とも副作用がなかったので、やはり老人なのだと思って、何日かひ
どく落ち込んだ。思いがけない副作用だった。
12世紀の南宋の儒学者だった朱子の「少年老イ易ク、学成リ難シ」と
いう、有名な箴言がある。幕末の志士たちが朱子学の虜(とりこ)になって
いた。
私は物心がついた時から、学校嫌いだった。学が堅苦しい厄介なもので
しかなく、いまでも少年が歳を重ねただけだと思っているから、老いの実
感がない。まだ毎日働いて
いる。目先が変わるので、幼いころの好奇心をいっぱいに充たしてくれる。
アメリカで80代は「ニュー・シクスティーズNew sixties」(新しい
60代)と呼ばれている。今日の80代は半世紀前の60代だという。
先日、私に「お元気そうですね」という人がいた。「元気なフリをして
います」と答えたら、「元気なフリができるのも、お元気だからでしよ
う」といなされた。
といって、格別な健康法はない。きっと、よい妻がいるのと、遺伝子に
よるものだろう。母の胎内に宿るまえに、よい両親をよく選んで生まれて
きたからだ。
稼業が噺家(はなしか)だったら修業を終えて、下から「前座(ぜんざ)、
二(ふた)ツ目(め)、真打(しんうち)、御臨終」という階級があるが、私は
好きな人生をひたすら歩んできたから、出世の階段を昇る経験がないのが
淋しい。
一貫して自由業だった。出世魚はワカシ、イナダ、ワラサ、ブリ(関
東)、ツバス、ハマチ、メジロ、ブリ(関西)というように呼び名がか
わってゆくが、係長、課長、部長、平(ひら)取り、常務と梯子(だんはし
ご)をあがってゆく醍醐味(だいごみ)をあじわうことができない。終生、
名が変わらない雑魚のようだ。
齢(よわい)を重ねるにつれて、反比例して酒量が減るが、酒神をもう一
人のよき伴侶として生きてきた。
旧約、新約聖書を愛読書の一つとしてきたが、イエスの「わたしが与え
る水は、あなたのなかで泉となり、永遠の生命(いのち)をえる」(『ヨハ
ネの福音書』)という言葉
がある。美しい言葉だ。私は“天が与える酒は、わたしのなかで泉とな
り、永遠の生命をえる”と読み替えてきた。
コロナに見舞われてから、飲食店でアルコールを提供することを禁じて
いる。梯子酒もできなくなった。梯子を外された思いだ。
浄瑠璃に「水なき井戸は梯子の入れ物」(『博多小女郎波枕』)という
謡(うたい)があるが、まるで水が枯れた井戸のようだ。
梯子は目標に達する道具だが、梯子飲みするのに、飲み友達と一体にな
る神事というほかに、目的があるわけがない。
家では妻と生活を分かち合っているから、一言一句に全責任をこめなけ
ればならない。
酒肆(しゅし)では酒杯を抱いて、相手がどう思おうとかまわず、へらず
口をたたくことができる。
銀座などの女性(ホステス)との会話は責任をともなわないから、人が
眠っている時に頭脳が日中の合理的な思考から解放されて、脳の疲れを癒
す夢をみるようなものだ。
妻帯者だったら家では和を重んじて妻に負けるから、言いたいことを言
えず不満が溜まる。
妻がいうことに一言一句従ったら、家庭が崩壊するにちがいない。
男が論理的であるのに対して、女性は感情(こころ)によって生きてい
る。窮屈な理よりも広い心のほうが大切なのは分かるが、男は理によって
支配されているから、酒場でしか奔放に口を開けない。
女性は日中も心を300%使って過しているから、疲れない。
職人の世界で梯子を持つ丁稚(でっち)を、はしごもちと呼んだが、ネオ
ン街の女性たちは「駕籠(かご)に乗る人、担ぐ人」といわれたように、駕
籠担ぎだから、その苦労を
十分に労(ねぎら)わなければならない。遊(あそ)び女(め)たちに優しくす
れば善因善果を積むことができる。
ネオン街では、天国に短期滞留する。仏法で極楽と呼ぶが、きっと高齢
者ばかりなのだろう。キリスト教の天国のほうが、いきいきとした若者が
多いように感じる。
私も妻も幸いコロナに感染していないが、海外へ通うことも、めったに
地方へ出かけることもなく、退屈を託(かこ)っている。忙しいより退屈に
よって病んで、気が晴れない。
コロナについて楽観論が多い。昨年のいまごろは、多くの人々がこの夏
までに収束するという見通しを語ってた
私は専門家ではないが、来年のいまごろも退散しないのではないか。
パンデミックは都市化がもたらしてきた。日本ではそのたびに遷都が繰
り返された。
平清盛が南宋と交易して金(かね)櫃(びつ)を満たそうとしたが、宋船が
疫病をもたらして、都をいまの神戸に移したものの、清盛も感染して没し
た。『平家物語』を繙(ひ
もと)くと、清盛が高熱に浮かされて苦しむさまが克明に描かれている。
グローバリゼーションを聖訓のように唱える大企業の経営者や、国際化
に憑(つ)かれた学者たちは『平家物語』を読むべきだ。
グローバリゼーションは呪いだ。だが、私はコロナ禍が地方の時代を本
格化することに、期待している。
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◆衆院選争点 東京18区に縮図
阿比留瑠比の極言御免
現実的な危機管理・外交・安保で鮮烈対比
立憲民主党の枝野幸男代表が党最高顧問で東京18区候補菅直人元首相の
応援演説を行った23日夕、東京都武蔵野市のJR吉祥寺前を訪ねた。菅氏
は10年前の平成23年3月の首相在任時に起きた東電福島第1原発事故の際
に枝野氏が官房長官だったことを振り返り、武勇伝を語り始めた。
「15日、ある種の判断をせざるを得ないときが来た。東電の(当時の清
水正孝)社長が首相官邸にやってきて、『(原子炉が)危ないから、東電
メンバーを現場から撤退させたい』と言ってきた。私は心を鬼にして
『残って下さい』と・・・」
菅氏が繰り返し、手柄として訴えてきた東電が求める全面撤退を止めた
というエピソードである。聴衆からまばらに拍手が湧くたびに、ため息を
ついた。
変遷した証言
国会議事録などで過去の言葉をたどると、菅氏の演説はいいかげんなも
のとしか思えない。そもそも社長を呼んだのは菅氏で、菅氏自身が清水氏
との面会からしばらくはこう述べていた。
「社長は『いやいや別に撤退という意味ではないんだ』ということを
言った」(23年4月18日の参院予算委員会)
「『引き揚げられてもらっては困るんじゃないか』と言ったら『いやい
や、そういうことではありません』と言って」(4月25日の同委)
「『どうなんだ』と言ったら『いやいや、そういうつもりはないんだけれ
ども』という話だった」(5月2日の同委)
それが、1年後の24年4月の政府の原発事故調査・検証委員会による聴
取では、内容が変わってくる。
「清水社長は私が(全面撤退はダメだと)言ったときに『そんなことは
言ってませんよ』なんて反論は一切なかった。やはり思っていたんだなと
思う」
国会答弁と食い違い、菅氏が「思っていたと思う」と証言したことから
も、東電側が全面撤退を申し入れてきた事実はなかったことは明らかだろ
う。そして現在では菅氏はさらに一歩踏み込み、東電が明確に撤退を申し
出てきたと演説しているのである。
この点をめぐっては、当時の原子力安全委員長で、その場に立ち会った
班目(まだらめ)春樹氏も著書などで清水氏が「撤退なんて考えていませ
ん」と答えたことを明かしている。福島第1原発で現場対応に当たった吉
田昌郎所長も「吉田調書」で、東電本店から撤退話など全くなかったと証
言し、菅氏に怒りをあらわにしている。
日米同盟で矛盾
菅氏はその後、自民党政権を批判して「今は本物の危機管理が必要だ」
と主張していたが、何のつもりなのか。一方、菅氏に続いて演説に立った
枝野氏は、原発事故に関してこう述べた。
「福島の皆さんには、至らない点があったかもしれない」
「かもしれない」どころか枚挙にいとまがないが、それはさておく。枝
野氏は安倍晋三内閣で成立した集団的自衛権の行使を限定容認する安全保
障関連法について、こう強く批判した。
「自民党政権は集団的自衛権は憲法上、できないと言ってきた。それを
一瞬にして変えてしまう。ルールもへったくれもない」
安倍元首相による憲法解釈変更は一瞬ではなく、第1次政権から10年か
けて実行したものだが、ともあれ立憲民主党の安全保障政策はどうか。自
分は「日米同盟を基軸」と唱えつつ、綱領に日米安保条約廃棄、在日米軍
撤退と記し、自衛隊は違憲だと主張する共産党との「閣外協力」に矛盾は
感じないのか。
ちなみに菅、枝野両氏の演説では共産党の「き」の字も言及がなかっ
た。枝野氏は、「共産党と共闘する党の方針は受け入れ難い」と民進党を
離党した後、自民党に移り、今回18区から出馬した長島昭久元防衛副大臣
のことを「あんな人」と呼んでいたのが印象深い。
回答はぐらかし
一方、武蔵野青年会議所が18日に実施した菅氏と長島氏の討論会では、
長島氏が立憲民主党と共産党との共闘についてただした。
「自衛隊も日米安保条約も認めない政党と組んで選挙は一緒にやるが、
米国との関係はもつか。政権には入れないから勝手にやってくれとは、な
かなかいかない。私が民進党にいたころも、共産党からいろんな圧力があ
り、まともに安保の議論もできなかった」
これに対し、菅氏は「私が理解している範囲では(共産党と)内閣を共
にする約束はしていない」とはぐらかした
現実的な危機管理、外交・安全保障政策はできるのか。共産党をめぐる
長島氏と菅氏の姿勢の対比は鮮烈で、これこそ衆院選の縮図で争点だと得
心した。
(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
松本市 久保田 康文 採録
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◆中国、固定資産税導入に見えない反発
「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和三年(2021)10月28日(木曜日)弐
通巻第7096号
中国、固定資産税導入に見えない反発、不満
eコマースの成長率は、向こう五年、過去五年の三分の一に落ち込む
中国の経済計画に拠れば、過去五年間のeコマース(オンライン販売な
ど)の売り上げは7・2兆ドルで、成長率は70・6%だった。ところ
が、今後の五年間の成長率は20・6%となり、三分の一に急減すること
が予想されるとした。
他方、不動産暴落が始まった中国では、新たな財源確保のために固定資
産税の導入が論議されている。土地は国家のもので、マンションは借地権
(75年)だから、マンション売買というのは借地権取引であり、土地が
所有できない以上、固定資産税という概念は生じない。
富裕層はそれでなくとも、戦々恐々の心理状態であり、恒大集団の事実
上の倒産、連鎖現象が顕著になった。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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東トルキスタンという独立国家はなぜ消されたのか
民族浄化、核実験、挙げ句の果てに強制収容所。まさにジェノサイドだ
♪
干田ケリム、楊海英『ジェノサイド国家 中国の真実』(文春新書)
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北京五輪ボイコットの声が弱まった。日本では在日留学生らのデモが散
発的に行われただけである。
保守派活動家が北京五輪ボイコットを呼びかけ、署名を集めているが、
大手メディアはまったく黙殺している。中国を刺激する行為を日本政府が
控えているからである。
しかし北京五輪を容認すると言うことは、ひいては少数民族を虐殺してい
る中国の横暴、残酷、非人道的政治を容認すると同義語である。
中国共産党がいわゆる「新彊ウィグル自治区」で何を行っているか。
身の毛もよだつ拷問、処刑、中国語教育の強要と中国的歴史観による洗
脳ばかりではない。ウイグル女性の強制避妊、あるいは漢族との結婚の強
要、スマホ、GPS、監視カメラ。。。。。
「ジェノサイド」の定義のなかに「集団内の出生を妨げることを目的と
する措置」という項目があり、なんと「2018年に中国で実施された子
宮内避妊器具(IUD)装着手術の80%が『新彊ウイグル自治区』で行
われ、さらに過酷な措置である不妊手術の件数も、中国平均の七倍」であ
るという。
著者らは『新彊ウイグル自治区』と自ら呼ぶことはない。あくまでも『東
トルキスタン』である。デモ隊が掲げる国旗は青天青日旗である。
この東トルキスタンには前史がある。
漢人軍閥は清朝崩壊後も居残り、とくに金樹仁なる軍人は1928年に新彊政
治の実権を握った。
その次に登場するのは狡知に長けた盛世才で、早稲田留学後、奉天軍閥
の支援で陸軍士官学校。つまり日本の教育を受けた男だった。その盛は新
彊に流れ込んで、あろうことか、ソ連共産党に入党し、新彊のボスになる
ことと引き換えにソ連の支援を受ける。ところが独ソ戦争でソ連劣勢と見
るや国民党に寝返り、最後は台湾へ亡命した。その残党が1949年に毛沢東
に服従する。
1912年の中華民国成立時、南京政府の下に新彊政府が置かれた。
これも事実上は軍閥が支配していた。1931年にクルムで暴動が発生し、
全土に飛び火、軍閥のボスだった金樹仁が失脚し、盛世才が総司令、軍事
委員長となるも、ホータンではウイグル人が蜂起し、ホータン政権が樹立
したのだ。
アクスでの蜂起組もホータン政府に同調し1934年11月12日東トルキスタン
共和国独立宣言がなされた。
当時の日本はこの動きに強い関心をもった。国外逃亡組や活動家たちと
積極的に接触した。なかには日本亡命組みもあった。
当時の日本は五族協和、大東亜共栄圏の戦争目的があって蒙古、ウイグ
ル、チベットの独立を支援したが、戦争末期に劣勢となった。
せっかく成立した東トルキスタンも、国民党の弾圧、ソ連の干渉、そし
て軍閥の馬仲英が侵略を始め、1933年から34年にかけて存在した
「東トルキスタン・イスラーム共和国」は終焉する。
このような悲しい歴史をもつウイグルの民は民族的にはチュルクであ
り、いつしかカザフスタン、ウズベキスタンなどのように必ず独立を達成
できると信じている。
本書は、こうした問題が提議されており、国際政治に関心のなる向きは
大いなる刺戟を受けるだろう。
著者の楊海英氏はオルダス生まれ。文化人類学者で静岡大学教授。正論
新風賞に輝くほか、多くの著作が人口に膾炙し、メディアへの登場ぶりで
ご存じだろう。
一方の共著者である干田ケリム氏は、ウルムチ生まれ、日本ウイグル協
会会長。2008年に来日し、東工大博士課程を修めた。ふたりとも日本
に帰化している。
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★読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読
者之声★
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♪
(読者の声1)前号「読者の声」で総選挙の期日前投票の混雑ぶりが指摘
されていました。ネットの書き込みでは本人確認書類も必要ないので替え
玉投票が増えるだろうとの予測も。
住所移動とともに昔からある手口ですが郵便物が溜まっている郵便受け
から投票券を盗み出す、高齢者施設の寝たきり老人の代わりに投票する、
いくらでもできるでしょう
まずは投票することが大事ですね。(PB生、千葉)
♪
(読者の声4)戦前の歴史や世相を知るには当時の新聞記事が役に立つ。
神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 で支那and共産党で検索すると
1151件がヒットする。ただし出版年がバラバラなので発行地を東京とする
と313件、関西では665件、外地166件となり出版年による記事データの
ソートもできる。
ユダヤor猶太、東京or関西で検索すると1011件。共産主義の脅威とともに
ユダヤの金融支配力に関する記事も多く、現在の新聞よりよほど世界情勢
を見ている。
記事はテキストと新聞の画像が3:7ほどの割合で表示。フレームという
技術を使っているのでブラウザは Firefox が便利。テキスト:画像の割
合を自由に変えられるほか、右クリックメニューからフレームのみ表示、
フレームを新しいタブ・ウインドウで表示もできる。
日本経済新聞の前身である中外商業新報 1930年(昭和5年)の年頭記事は
1929年9月にはじまるアメリカの株暴落の影響もまだ出ておらず楽観的と
もいえる論調。筆者の小松緑は1865年生(慶応元年)会津出身の外交官。米
国で8年間政治学を学ぶ。記事ではマルクス主義は過去のもの、ムソリー
ニの政策を礼賛、ドイツの合理性や耐忍と努力と愛国的精神、英国の労働
者の横暴、英国産業の不甲斐なさ、新興アメリカの進取の気性、物価が安
く賃金が高い理想郷を指摘。政治面ではアングロサクソンを高く評価。フ
ランスが出てこないのは日本にとって参考になるところがなかったためか。
歴史は繰り返し現在の政治・社会状況にも当てはまる指摘が多々ある。全
文はリンクを参照。
【神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 政治(41-029) 中外商業新報
1930.1.1-1930.1.4 (昭和5) 欧米に於ける立国方針の変遷】
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=10099124&TYPE=IMAGE_FILE&POS=1&LANG=JA
・進歩と変化とは同じな場合もあり、異る場合もある。進歩は必ず向上を
意味するが、変化はそうも限らない、向上する場合もあり、堕落する場合
もある。
・(第一次)世界大戦以前には、政治的対抗時代があり、宗教的紛争時代が
あった。共和と立君と立君の順逆に就いて、また新旧両教の正邪に就い
て、激烈な騒乱さえ起って、無益に金を棄て、無駄に血を流すのを不思議
とも不自然とも感ずる者がなかった。
・一言以て現代の世相を掩えば、産業万能時代といえるであろう。産業だ
に発達すれば、国富み人安く、世界中に平和の春がみなぎり渡るに相違な
い。尤も政治や宗教はどうでもよいというのではない。ただ産業が中心と
なり、政治と宗教とは、ただそれを補助する道具にのみ利用されるように
なったのである。
・今春ロンドンに開かるべき軍縮会議の如きも、その動機は、不生産的軍
備に投ずる資金の幾分を割いて生産事業に振り向け、国民の負担を減じ
て、その生活の安定に資せんとするに外ならぬ。現に我が政府が金輸出の
解禁に腐心し、緊縮節約を政策の一枚看板にしているのも、すべての生産
事業を堅実な基礎の上に建直そうとする趣旨に相違ない。
・産業発達の方策として、資本万能主義を試みた国々もあったそれに反抗
して、ブロレタリアット独裁制度を強行した国々もあった。しかしいずれ
も永久の成功を見ることができなかった。
・産業立国は、現代世界に共通する大勢であるが、そのこれを遂行すべき
手段方法に至っては、国々の特殊事情によって同じからざることはいうま
でもない。尤も今日の文明国中には、資本万能主義とか、ブロレタリアッ
ト独裁制度とかを固守するものはない。取わけ、世界革命や階級闘争など
は過去の迷想として葬られてしまった。よしやマルクス、エンゲルス再生
するとも、こんな理論にも実際にも適応しない理不尽でしかも不自然な主
張を繰返す気遣いがない。現にロシアでさえも、既に純粋な共産主義の失
敗に懲りて、国家資本主義に変化しているではないか。
・極端な社会主義から極端な国粋主義に変化した時勢の傾向を徴象する標
本はイタリーで、そのイタリーを代表するものは、既に七年間政権を握
り、なお今後十年位はその地位を保つ可能性を持っているムソリーニその
人である。
・ムソリーニは、産業における労資関係を、家庭における夫妻関係にたと
え、その間に紛争あるは一時の変態で、協力して家庭の幸福を図るのが常
態である、
夫婦の不和から家庭が乱れるように、労資の闘争から産業が衰えるもので
あるという見地からして、労資間の争議を根絶するために、労働者側と企
業者側との
組合法を制定し、工業商業は勿論農業に至るまで、総べて組合制度とし、
賃銀、時間、待遇等の主要条件は悉く団体協約によることとし、而してそ
の協約は、
組合省において厳正な調査をなし、単に労資両者のみならず、第三者たる
一般公衆の利害関係をも考慮し、いずれにも支障のないことが確められた
上で、宛かも一種の法規の如くに公表され、それより生ずる紛争またはそ
の違反者に対しては、組合裁判所において厳重な制裁を加えることになっ
ている。その結果、今日のイタリーには、閉場(ロックアウト)とか怠業と
か罷業とか、産業の発達に障害を及ぼすような忌わしい現象が悉く消滅し
てしまった。
・ムソリーニの威力の下に産業が制度化されているイタリーよりも一歩を
進めて、国民性に基き、あらゆる産業が学理と実験とで合理化されている
のは、ドイツである。
・ドイツでは、労働組合も企業者組合も全然同じように、職業別又は地方
別に、連合的に又は全国的に、残る隈なく団体組織となって、理想的に整
頓している。
・一時破産を免れまいと危ぶまれたドイツが、戦後僅か十年足らずに、旭
日昇天の勢いを以て、国力を回復し来り、ドーズ案で二十五億マーク、ヤ
ング案で二十億マークという莫大な年額の支払に耐え、なお二十億マーク
の正貨準備を維持して、遠くの昔から金輸出の解禁を実行している現状を
見て、しかして戦勝国の一なる我が日本の不甲斐なき醜態に想い到る時、
吾人は実に無量の感慨に打たれざるを得ない。
・ドイツ人やイタリー人と正反対に、制度の威力を仮らず、規律の拘束を
受けずして、飽くまで国民の自由意思と人格の陶冶とを以てあらゆる事物
の進歩発達を図ろうとするのが、アングロ・サクソン族の特性である。わ
けても、成文法よりも習慣法で押し通そうとするのがイギリスで、アメリ
カは、特殊の急進的気象を持っているが、人格を制度の上に置く点におい
てイギリスと似通っている。
・イギリスでも、昔はビーコンスフィルドとグラッドストンとが、外交問
題について、強硬と穏健の態度を異にし、政略問題に就いて、保守と進取
の意見を異にし、互に火花を散らして相争って内閣を取遣りした時代が
あった。
・若しイギリス以外の国で、労働党が政権を握ったとしたらば如何。久し
ぶりで内閣を乗取ったという勢いに乗じて、どんなに資本家を圧迫するか
知れない、あわよくばブロレタリアット独裁制度まで行くかも知れない。
さすがはイギリス人だけに、節制もあり訓練もあるので、余り突飛な行動
を執らない。
・併しイギリスが労働者の横暴に苦しんでいることは、争うべからざる事
態である。内閣の死命を制する失業問題の如きも、ただ失業者が多いとい
うではなく、実は職業があっても働くことを厭がり、失業手当をうけてた
だ遊んでいる者が百五十万もあるので、その救済費の支出に困るというの
である。
・イギリスの一植民地から独立して僅かに百五十年、藍より出でて藍より
青い国はアメリカだ。労資協調が理想的に出来ているのも、アメリカにお
いて始めて見ることができる。アメリカ人は、あらゆる産業に、新式の経
営法と精巧な機械とを応用しているのと、労資を通じて等しく理解と努力
と情誼が行き渡っているのとで最小の資本と努力とで最大の生産を挙げる
という経済学の原則を実現している。
その生産品が安くて良くて多いというのであるから、利益も自然に増加し
て来る。労働者の能率が、他国のそれに二倍も三倍も増しているから、そ
の給料もそれだけ高くなる訳。アメリカが物価が安くて賃銀が高いという
理想郷となっているのも、決して怪しむに足らない。
・今日のアメリカで、流行言葉となっているのは「従来の収益思想
(Service Principle)に就け」というのである。けだし生産者たるもの
は、労資いずれを問
わず、すべて人類の欠乏を充たすために、必需品を供給するという重い任
務に従事するのであるから、宜しく社会奉仕の精神を以て、自己の収益に
のみ汲々せず、一般公衆の福利を増進することに心掛けねばならぬという
趣旨である
・昨年の後半期にニュウヨークの株式界に大混乱が起って、一時随分世間
を騒がしたことがあった併しそれは投機者個人間の浮沈を語るだけで、耕
地にも鉱山にも工場にも何の影響もなく、各事業とも順調の経営を進め、
鉄鋼、石炭石油、鉄道、電信電話等の大会社より、演劇、活動等の娯楽場
に至る収入統計(昨年十一月までの月報)を見るに、いずれも前年の同期に
比し、平均一割四分方も増加している。株式の暴落が、一般事業に格別関
係のないことが瞭かである。
・日本の海外貿易上、世界最大の顧客であるアメリカが繁栄を永く続けて
行くことは、我国に取って結構なことではないか。
英国病といわれていた英国の労働者の横暴を抑えるのは1979年のサッ
チャー政権誕生からで失業率の下げ止まりは1986年。英国病を治すには50
年以上もかかっている。アメリカはベトナム戦争以降の疲弊と強くなりす
ぎた労働組合、四半期ごとに利益を求める株主のユダヤ的強欲資本主義で
製造業の多くは海外へ逃げ出した。日本も1990年代以降アメリカの要求に
屈し半導体生産は海外企業へ、小泉改革以降は経産省も財務省もアメリカ
の下請けに見える。
民主党政権の3年半におよぶ円高政策で日本の製造業もかなりの部分が
海外へ。自動車の半導体不足もワイヤハーネス不足も生産を海外に移した
あとではどうにもならない
しかし自動車向け半導体不足の要因のひとつに自動車メーカーの理不尽と
もいえる買い叩きがあるとされる。中国から製造業を呼び戻そうにもデフ
レマインドが続き電力価格も高くなる一方の日本に戻ってくるだろうか。
せいぜい東南アジアにシフトするくらいだろう。
バブル崩壊後の中国がどうなるのか、第二の文革・鎖国ならまだまし、
戦争に打って出るかもしれない。
政治家は国防、食料、エネルギーといった安全保障と国民の雇用を守るの
が第一。LGBTなどにかまけている場合ではない。(PB生、千葉)
♪
(読者の声5)アジアの民主化を促進する東京集会のお知らせです。
中国の横暴を阻止し、ウイグル族虐殺の無謀を止めるには何をしなけれ
ばいけないのか。いかにしてアジアの民主活動家と連帯するか。
記
とき 11月13日(土曜)午後一時半開場。二時開演
ところ ワイム会議室 赤坂スターゲートプラザA
(東京メトロ南北線 「山王溜池」駅8番出口向い)
https://www.bing.com/maps?q=%e8%b5%a4%e5%9d%82%e3%82%b9%e3%82%bf%e3%83%bc%e3%82%b2%e3%83%bc%e3%83%88%e3%83%97%e3%83%a9%e3%82%b6+%e3%82%a2%e3%82%af%e3%82%bb%e3%82%b9&FORM=R5FD5
登壇 加瀬英明、酒井信彦、ペマギャルポ他
参加費 お一人千円。
主催 アジア自由民主連帯協議会
問い合わせFAX 0426−83−0566