角野實
米バイデン政権がウクライナに在留するアメリカ人に退去勧告を出しまし
た。日本もそれに続き、日本人の退去勧告を出しています。正直な話、何
を根拠に言っているのかさっぱり理解できません。ウクライナ問題を整理
してみましょう。(『角野實のファンダメンタルズのススメ』
プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企
業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。
この際にパパブッシュや当時の国務長官はソ連が譲歩したことにより、
NATOをこれ以上東側に拡大をしない、と言明をしているのです。
この解釈の問題が、現在のロシアとアメリカの争いになっているのです。
ご存知のように米国は都合のよい解釈をして、そんなことを約束した覚え
はない、と文書でロシアに回答をしているのです。
その後のトラブルはさまざまありますが、経済的に苦しい時期にあったウ
クライナは、ウクライナを通過するパイプライン、ノルドストリームから
ガスを抜き取ったり、ガス代金を未払いにする、などとロシアに迷惑をか
け続けます
怒ったロシアは突然、真冬の最中にガスの送管を停止します。ドイツはロ
シア産のガスに供給を頼っていましたので、慌てました。
そこで、解決策として供給と送管の別管理、ということがドイツで決定さ
れ、送管の会社と供給の会社を別会社にすることによって、この問題を解
決したのです。
この供給と送管を一手に担っていたのがロシアのガスプロムになります。
当然、ロシアはこの決定には不服がありましたが、その後に起こるロシア
のデフォルトなどを考えれば、ロシアはこの決定をのまなければいけない
状態でした。
その間に、ウクライナも政情が混乱していましたが、自分たちに都合のよ
い決定を下してくれる西欧圏に政権が流れていくのは必然となるのは誰の
目にも明らかなことです。
一方でロシアに依存をする人々もいますので、当然、対立は激化します。
民主主義の決定が自分たちに利益をもたらしてくれる方に流れるのは自然
なことです。これに対してロシアが激怒している、ということでしょう。
エネルギー資源を狡猾に利用するロシアの戦略
ロシアは、GDPの20%がエネルギー関連からの収入です。そして輸出は
60%程度がエネルギー・資源からの収入です
ロシアは「エネルギー国家」とみなされていますが、今の電気自動車や風
力発電に使う磁石などに使うレアアース、貴金属も豊富な資源があります。
プーチンはそのエネルギーに着目し、そのエネルギー関連の資産を国営化
することに大統領に就任してから腐心をしています。
その結果、新興財閥、ソ連から国営企業を買い叩いた連中を、なんだかん
だと理由をつけて放逐しているのです。
この言い方ですとプーチンが悪いような印象をもつかもしれませんが、新
興企業の方もロクなことをやっていません(笑)。
その結果、毒殺や亡命などのニュースが流れ、プーチンのイメージはます
ます悪化するというスパイラルになっています。
ともかくプーチンは、エネルギー戦略で、ロシアを昔の超一流の国家に仕
立て上げようとしているのです。
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◆人物探訪: 石原慎太郎 〜 優しさが生んだ強さ
伊勢雅臣
すでに人気作家の地位を築いていた石原氏が、なぜ政治の道に足を踏み
入れたのか。
■1.強さと優しさと、どちらが本当の石原慎太郎氏なのか?
石原慎太郎氏が逝去されました。石原氏の足跡で、強く心に残っている
ことが二つあります。
一つは、2012年に尖閣列島を東京都が購入すると発表して、寄付金を募
り、賛同する国民から10万件以上、15億円近い寄付を集めたこと。
その2年前に中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりしたのを国民か
らひた隠しにし、なおかつその船長を釈放してしまう、という民主党政権
の法も国際常識も、そして一国の体面も無視したやり方[JOG(701)]に比べ
て、石原氏の強いリーダーシップを感じました。同じように感じた人が多
かったので、これだけの寄付が集まったのでしょう
もう一つは、東日本大震災で福島第1原発冷却のための放水作業を行っ
て無事帰還した東京消防庁ハイパーレスキュー隊員139名の面前で深々と
頭を下げ、涙声で「本当にありがとうございました。この国の運命を決め
てくださった」と語った姿です。[TOKYO MX]
当時、隊員らに出動を命じた消防総監はこう証言しています。「知事は
決して『やれ』とは命令しなかった。『本当に大丈夫か、できるならやっ
てくれ。頼む』と。隊員への気遣いを感じた」[産経、R040201]
この時には、菅直人氏にまつわる舞台裏も語られています
__________
だが、実は石原氏は首相官邸からの隊派遣要請をいったん断っている。菅
氏に隊員を預けると、どんな危険で無謀な任務を強いられるか分からない
と判断していたのだった。
このときは結局、菅政権では物事を動かせないとの事務方の相談を受けた
安倍晋三元首相が、石原氏の長男である自民党の石原伸晃幹事長(当時)
を介して説得し、石原氏も最終的に派遣要請を受け入れた。[産経、R040203]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
こういう点にも、石原氏の消防隊員たちを思う優しさを感じます。しか
し、尖閣諸島を寄付金を募って東京都で買ってしまおうという強さと、隊
員たちを心配する優しさとが、同じ人間のなかでどのように同居している
のか、が、もう一つ、ピンと来ませんでした。どちらが本当の石原氏なの
か、と。
■2.「殺された若い警官に世間の同情が向かぬという風潮は狂っている」
『国家なる幻影 わが政治への反幻想』には、もう一つ、石原氏の優しさ
がよくわかるエピソードが語られていました。昭和44(1969)年の学園紛
争の頃です。
__________
日大での騒動で殉職した西条という若い巡査部長は建物と建物の間のわず
か五十センチの通路を走り抜ける時、五階の屋上から落とされた、花壇を
壊して作った煉瓦のついたままの重さ十キロのコンクリートブロックを、
躓(つまづ)いて倒れた部下を助け起こそうと盾を外してかがんだ頭に受け
て亡くなった。
その近くの教室の黒板には、石の礫(つぶて)を警官に命中させた者には
煙草一本、怪我させた者には五本、殺した者には一箱と書いてあったそうな。
ある記事でそれを読んだ私には、新婚間もなく幼い乳飲み子を残して殺
された若い警官に世間の同情が向かぬという風潮は狂っているとしか思え
なかった。そこで当時警視庁にいた友人の佐々淳行氏に諮って、仲間の志
も集め私が代表して西条巡査部長のお宅を見舞い、残された未亡人と幼い
遺児の写真を添えて週刊誌の『女性自身』のグラビアとして掲載しても
らった。
当然世間の耳目は遺族たちに集まり同情の声も高まり、それが他の機動
隊員の励みにもなった。そしてそれが引き金にもなって民間企業の有志た
ちが醵金(きょきん)し合っての『機動隊を励ます会』が発足し今日まで続
いている。[石原H13、1497]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
10キロのコンクリートブロックを警官の頭上に落とす過激派学生の冷酷
さは、「どんな危険で無謀な任務を強いられるか分からない」菅直人元首
相の非情さと、根は一緒です。左翼思想が人間に対する思いやりを失わせ
る、というのは、世界の共産主義国で例外なく起こっている人民虐殺から
も明らかです。
「新婚間もなく幼い乳飲み子を残して殺された若い警官に世間の同情が向
かぬという風潮」も、それだけ世の中が左翼思想に染まっていたからで
しょう。
■3.「働いている人間たちの努力を、国家のためなのだから使い捨てに
してもいい」!?
このエピドードには、続きがあります。
__________
・・・ある時佐藤総理にそれら(伊勢注: 上記の警官へのお見舞い)の報告
も兼ねて、見れば総理の代沢の私邸から官邸までの途中の淡島通り脇に、
殉職した西条巡査部長の所属とは違うが第三機動隊の本部があるのだか
ら、一度是非立ち寄って簡単でいいから国を代表して彼等を激励されては
どうかと献言してみた。
前にも記したが総理は立ちどころにうなずいて、ついでに、「そんなこ
とをなんで今まで誰もいってこなかったのだ」、むしろ急に不興そうだった。
翌日すぐに佐藤総理は往路第三機動隊に立ち寄って隊員たちを激励感謝
してくれた。すぐ後に佐々氏から電話が入り、
「あれはあなたからの献言と聞いたが、お陰で他の機動隊をももの凄く勇
気づけました。心から感謝します」
ということだった。[石原H13、1508]
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優しい心を持っているからこそ、こういう事も気がつくのでしょう。こ
のエピソードを、石原氏は次の言葉で締めくくっています。
__________
機動隊員に限らず働いている人間たちの努力を、国家のためなのだから
使い捨てにしてもいいというような認識がもしあるとするなら、それに
のっとったいかなる手段方法も人間として生きている国民のどんな共感を
得ることもありはしまい。[石原H13、1518]
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「働いている人間たちの努力を、国家のためなのだから使い捨てにしても
いい」どころか、反革命分子は殺してもよいとするのが、左翼思想の非人
間性です。人情に厚い石原氏は、そういう思想、風潮を「狂っているとし
か思えなかった」のです。
■4.「自分の国家と民族の未来についての無関心さにショックを受けた」
石原氏の政治家としての自伝とも言うべき『国家なる幻影』は、昭和
41(1966)年当時、すでに「日本で一番高い原稿料を貰って流行作家」
だった氏が、なぜ政治家の道に足を踏み入れたのたかを語るところから始
まっています。
__________
その年の暮れに、読売新聞からの依頼で、クリスマス休戦時のベトナム
に取材に行くことになりました。「いずれにせよあの時あのベトナム行き
の申し出を引き受けたことこそが、私にとってのことの始まりだった」石
原H13、68]
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石原氏は、クリスマス休戦に入る前に、米軍のヘリで前線に出ました。
まだ戦闘中で、石原氏の乗ったヘリも地上からの銃撃を受けましたが、無
事でした。ヘリが目的地の町に近づくと、そこで思いがけない光景が見え
てきました
__________
鉄条網の張り巡らされた陣地のすぐ隣の小学校の庭で、女の先生の指揮で
子供たちがバスケットボールに興じていた。ヘリの爆音に加えてすぐ脇か
らは殷々(いんいん)たる銃声が響いているのに、その一つ隣の校庭には一
見平和で楽しい学園風景があるのだった。
ヘリは子供たちの頭上をかすめるようにして舞い降りていったが、子供
たちの誰も振り仰きもしなかった。・・・
ひとことにしていえばそれは、南ベトナムの大方の大衆国民のあの戦争に
対する無関心さだった。[石原H13、125]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
この無関心さは大衆国民だけでなく、迫り来る共産主義の非人間性を察
知している知識人たちも共有していました
__________
しかしそんな彼等の、何より大切なはずの自分の国家と民族の未来につい
ての、もはや慨嘆を超えて強く装われた無関心さに私はショックを受け
た。そしてこの国は近く間違いなく北側との戦いに敗れて共産化され、ベ
トナムとしては滅びるだろうと確信していた。[石原H13、266]
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この確信は7年後の1973年、米軍の撤退により、現実のものとなりまし
た。その結果、共産軍の支配を逃れようと、30万人とも言われるベトナム
人がボートピープルとなって南シナ海に逃げ出し、その多くが海の藻屑と
なってしまいました。
■5.「自分の国家と民族の未来についての無関心さ」は他人事ではなかった
石原氏がベトナム人に見た「自分の国家と民族の未来についての無関心
さ」は他人事ではありませんでした「私はそこに私の故国日本との強い類
似を見た気がした」のです
__________
日本の現況に明らかに存在はしている瑕瑾(かきん)を声高に咎(とが)めて
止まない手合いの数がますます増えて行った時、さらに下手をすればこの
国が案外にもろくも躓いてしまう可能性は決してないとはいえないかも知
れない、という気がしてならなかった。[石原H13、266]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
そう思って過去を振り返ると、石原氏には思い当たることが多々ありま
した。たとえば、1960年の安保改訂のおりです。
__________
日本の代表的な作家たちが構成している文芸家協会の総会だか理事会で、
当時の理事長の丹羽文雄丹羽文雄氏がその日の協議案件がすべて終わって
しまったので、
「世間もあのことでいろいろ騒がしいようですから、我々もついでにここ
で安保反対の決議をしておきますか」
ともちかけ、出席していた尾崎士郎氏と林房雄氏に反論され提案の論拠
も説明出来ずに恥をさらして引っこめたなどという滑稽譚が他にいくつも
あった。[石原H13、345]
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こういう経験を振り返ると、ベトナムのように日本が「案外にもろくも
躓いてしまう可能性」が胸を占めていきました。そして石原氏はこう思っ
たのです。
__________
そんな心配をするのならばそれを防ぐ手だてを自ら何も尽くさずにいられ
るものなのか、と自分を問いつめるように私は思うようになっていったの
だ。[石原H13、420]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
これが、政治の世界に足を踏み入れたきっかけでした。
■6.子孫の運命への切実な情があるからこそ、卓越した戦略性も生み出
されてくる
日本人の「自分の国家と民族の未来についての無関心さ」の典型が、占
領軍によって制定された日本国憲法をいつまでもそのまま抱いていた事
だったでしょう。
__________
なぜこの国、そして日本人はここまでおかしくなってしまったか。それは
根本的なこと、もっとも肝心な問題から目を逸らし続けてきたからです。
その最たるものが、占領軍によって押し付けられた、醜い日本語で綴ら
れた日本国憲法にほかならない。[石原H30、1362]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「醜い日本語で綴られた日本国憲法」とは、こういうことです。
__________
例えば多くの問題を含む九条を導き出すための前文『平和を愛する諸国民
の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』
という文言の「公正と信義に信頼して」の一行の助詞の『に』だがこれは
日本語としての慣用からすればあくまで『を』でなくてはならず誰かに高
額の金を貸す時に君に信頼して貸そうとは言わず君を信頼してのはずだろう。
さらに後段の『全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ』云々の
『から』なる助詞は『から』ではなしに慣用としては「恐怖『を』免か
れ」のはずだが英語の原文の前置詞がfromとなっているために『から』と
されたに違いない。[石原H30、2186]
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憲法と言えば、一国を運営していくための国民が取り決めた政治の根基
です。そして、その精神を述べたのが前文です。その前文が外国人に書か
れた外国語の訳文として、おかしな文章になっている。これをほとんどの
人が気がつかない、気づいても問題にしない。ということは、誰も憲法な
ど、真剣に読んでおらず、信じてもいない、ということでしょう。
■7.日本の弱さは子孫に対する切実な優しさがないから
これこそ「自分の国家と民族の未来についての無関心さ」の現れです。
こういう状態では、自国の戦争をアメリカ人任せにしてしまって滅びた南
ベトナムと同様「この国が案外にもろくも躓いてしまう可能性」も否定で
きません
自分たちの子孫に亡国の憂き目を見せてよいものか、という石原氏の優
しさからくる切実な思いが、尖閣購入という捨て身のアイデアを生んだの
でしょう。こう考えると、国民を切実に思う優しさがあるからこそ、行動
面の強さも生み出されてくるのです。
これをひっくり返すと、現在の対中外交などでの弱さは、我々自身の子
孫への切実な優しさがないから、ということになります。我々の子孫に、
ウイグルやチベットの人々の悲劇を味あわてはならない、という切実な思
いこそ、現在の日本人に必要なものではないでしょうか。
(文責 伊勢雅臣)
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★日曜版 読書特集
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)2月13日(日曜日)
通巻7217号
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★日曜版 読書特集
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門田隆将 vs 高山正之『世界を震撼させた日本人』(SB新書)
樋口敬祐、上田篤盛ほか『インテリジェンス用語事典』(並木書房)
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評
BOOKREVIEW
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「日本人が素晴らしい」のは自明の理だが
どこが、なにゆえに素晴らしいのかを歴史を溯って解明
♪
門田隆将 vs 高山正之『世界を震撼させた日本人』(SB新書)
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篤い議論がとまらない。本書に挑む人はまずハンカチを用意すべし。
全編が感動の渦、いまの日本人は、過去の日本人の慰霊を前に恥を知る
べきだろう。
「日本人が素晴らしい」ことは言い尽くされた、自明の理。しかし「どこ
が」、「なにゆえに」素晴らしいのかを二人の対談は歴史を溯って解明し
ていく。
乃木大将、柴五郎、明治天皇、栗林忠道、酒井三郎、日系人442部
隊。。。。夥しいほどの英傑に恵まれた。
毅然として、凛として、使命を全うし、祖国のために活躍した人々をふ
たりは淡々と語りながらも、その言葉自体に霊魂が籠められている。
評者、多くを語るまい。読んで涙し、現代日本を憂うるだけではなく、
何かをしなければ死にきれないという決然たる思いを抱くだろう。
さて評者があらためて知った意外な側面をひとつだけ。
キリスト教の狭量についてである。
ローマ帝国は多神教だった。ギリシア神話の神々を崇め、ミトラ教、イ
シス神を信仰していた。キリストを禁止したのは、狭量、その異教徒を認
めない傲岸さにあり、ネロはキリスト教徒を迫害した。ローマを扼する危
険思想と判断したからだ。三百年、禁教とされたキリスト教はしぶとく、
しつこく浸透し、392年にローマの国教となる。
高山正之氏の解説が始まる。
「途端にキリスト教徒が何をやったかというと、イシスやミトラなど、全
ての他の神々の神殿をぶち壊し、その信仰を禁じた。ローマの礎だったギ
リシアの神々もすべて追放しただけではなく」、多くの聖地を壊滅させ、
それでも反対する学者等を片っ端から殺した。
門田氏が承けていう。
「不寛容というか、ものすごい攻撃性ですよね。十一世紀に始まるエルサ
レムをめぐるイスラムとの戦いなんて、キリスト教徒のほうがはるかに残
虐です」。
そのキリスト教が十六世紀に日本にやってきた。
高山 「礼儀をわきまえない連中だった。宣教師どもは、九州の大名に
取り入って、まずは近隣諸国と戦争をさせた。それで日本人に初めて敵を
捕虜に取ることを教えた。捕虜は売れることも教えた。売買は宣教師ども
がやった」
秀吉は怒り、やがて家康は禁教令を出し、高山右近等を追放した。右近
は高槻城下の神社仏閣を破壊し、坊主を殺し、旧聖地におぞましいキリス
ト教会を建てたからだ
門田「日本がキリスト教化しなかったのは、当時世界ナンバーワンの強
さを誇った日本の武士たちのおかげです」
武士道精神、いまだ行方不明の現代日本。
(蛇足)評者(宮崎)と高山正之氏との対談本は、『世界を震撼させた歴
史の国 日本』(徳間書店)です。題名がちょっと違いますのでご注意の
ほどを
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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古代よりスパイは人類最初の職業だったかも知れない
インテリジェンスを理解しないと世界は分からなくなる ♪
樋口敬祐、上田篤盛ほか。川上高司監修『インテリジェンス用語事典』
(並木書房)
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わが国で初めてインテリジェンス用語事典が誕生した。なにしろ英国が
ファイブアイズに日本の加盟を呼びかけ、米国が追認する。米国は日本を
基軸のクアッドを形成する時代だから、本書の登場は国際情勢の激変ぶり
を反映している。
そのうえ高校で「情報科」が必修科目となる。そればかりか2025年の大学
入学共通テストから「情報」が出題教科に追加されることになった。
にもかかわらず日本における「情報」に関する認識は国際的に非常識なほ
ど低い。
古代よりスパイは人類最初の職業だったかも知れないし、じつは古代から
日本人は情報戦争に明るかった。秀吉、家康が戦争の強かったのは情報工
作、諜報、謀略に通暁していたからで、その伝統があったから日清・日露
戦争に勝てたのだ。
戦後、わが国に他国の軍隊が駐屯しているのに、主権を侵害されていると
は認識できないほどに日本人は情報の重要性を忘れた。インテリジェンス
を理解しないと世界は分からなくなる
インフォメーションとインテリジェンスは明確に区別されている。中国で
『情報』とは『諜報』を意味し、日本流の情報は「消息」である(ちなみ
に「情報」という訳語を最初に日本に紹介したのは森鴎外といわれる)。
本書は自衛隊情報分析官を長く務めた専門家らが中心となり、インテリ
ジェンスの業界用語・隠語、情報分析の手法、各国の情報機関、主なスパ
イおよび事件、サイバーセキュリティ関連用語など、インテリジェンスを
理解するための基礎知識を多数の図版をまじえて1040項目を収録している。
例をみっつばかり引こう。
「ファイブ・アイズ(FIVE EYES)=アメリカ、イギリス、
オーストラリア、ニュージーランドの五ヶ国によるインテリジェンス同
盟。アメリカおよびイギリス連邦構成国で結成され、世界中に展開する施
設を利用することで広範囲のシギント活動を行っている」(後略)
「諜報=相手の情勢などを密に探って知らせること。またその知らせ。
目的を相手に隠して、間諜のみならず、新聞などの情報媒体、捕虜の尋問
など間接的な手段で情報を探ったり、探った情報を知らせる行為(後略)」
ならば、基本になる『情報』とはいかなる定義なのか?
本書はこう言う。
「ある事柄についての知らせ、判断を下したり行動を起こしたりするた
めに必要な、種々の媒体を介しての知識」(後略)。
しからば『孫子』はどうか。
「紀元前500年頃の中国春秋時代の軍事思想家の孫武の作とされる兵 法
書。(中略)。
計篇、作戦篇、諸攻篇、形篇、勢篇、虚実篇、軍争篇、九変篇、行軍
篇、地形篇、九地篇、火攻篇、用間篇の計13篇からなる。全編にわたり
情報の重要性を強調しており、第13篇の用間篇は「間」すなわち間諜
(スパイ)の運用法を述べたものである」
情報の語彙が千以上もならんで解説されている。
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS
読者之声
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(読者の声1) 長崎県・端島の炭鉱や島民の暮らしを記録したドキュメン
タリー作品「緑なき島」で、NHKは炭坑内で作業員が褌一丁で、キャップ
ランプのないヘルメット姿で、這いつくばるような低い坑道で作業するな
ど、事実とまったく異なる映像を使い、信じがたい事実の改ざんを行った。
明々白々な嘘であったことを突きつけられても、「取材に基づき制作・放
映されたものと考えております」と主張。つまり「端島でない証拠がない
ので端島だ」と開き直っている。こうして、NHKの虚偽映像が韓国の「強
制労働」の反日宣伝として世界中で活用され続けている。
日本を貶めるだけの目的で「武装した兵隊と憲兵に護衛され、徴発隊の
一員として、島を縦横に駆け巡り、泣き叫ぶ若い朝鮮人女性を狩り立て、
片っ端からトラックに積み込んだ。役得として、トラック上で強姦する兵
もいた」との大嘘をさも事実であるかのように世界に広めたのも、NHK、
朝日、岩波などの反日集団である。
そのたびに日本は貶められ、「平和のための少女像」とされた売春婦の銅
像に「1931年から1945年まで日本帝国軍によって奴隷化を強いら れた」
「数十万人に及ぶと推定」とか「20世紀の人身売買で知られる 最大の
ケースの一つ」と碑文が付けられた慰安婦像が世界中に建てられた
こうした反日捏造報道は1つや2つではなく、様々な番組や記事の行間
にも散りばめられている。
NHKは2021年12月10日に放送された「歴史探偵 写真で迫る真珠湾のリア
ル」では、気高く尊い海軍航空隊がさも民間人の住宅を平然と爆撃・殺戮
したという嘘をばら撒いた
日本軍の攻撃は敵軍事施設や軍艦への犠牲攻撃であり、無垢の民間人を無
差別に殺傷した事実はない。良民を苦しめず、非戦闘員を殺さずというの
が皇軍の建軍以来の精神であり、伝統である。
放送された映像は(「緑なき島」のようにまったく別の映像を使ってない
とすれば、)真珠湾の軍事基地内の戦闘員居住区であり、民間人の住宅を
爆撃したものではない
秘書の給与をピンはねして税金を盗んだ辻元は「平和を愛好する北朝鮮
が拉致するわけない」と断言し、北朝鮮が拉致疑惑を認めると、これを擁
護するため、「日本は、かつて朝鮮半島を植民地にして、そのこととセッ
トにせずに、「9人、10人返せ!」ばかり言ってもフェアじゃないと思い
ます」といってのけた。
拉致被害者がいまでも帰国できない原因の一端は辻元某、NHK、朝日、岩
波などの反日集団にあるといえるだろう。
NHKが大東亜戦争の劈頭、日本軍が民間人の住宅を平然と爆撃・殺戮した
という嘘をばら撒けば、米軍による東京大空襲や原爆攻撃も正当化されて
しまう。
こうした非人道的攻撃で殺害された人々に対して恥ずべき反日集団の態度
は改めさせるべきである。
放送法では報道は事実をまげないですることが定められている。真実を
歪め悪意ある編集を行い、放送法を踏みにじる番組を放送したNHKは完全
に違反しているというほかはない。
NHKはみなさまの受信料をこのような反日プロパガンダになぜ使うのかも
説明すべきである。NHKが反日宣伝を続ける限り、私は反日を支援するの
に使われることになる受信料の支払いを拒否する。
狂った公共放送は不要。善良で常識ある国民なら、私に続いて受信料支払
いをやめるべきである。資金源を断つ以外にもはやNHKに違法行為を止め
させる手段はないだろう。反社組織に資金提供してはならないのと同じで
ある(匿名希望)
♪
(読者の声2)「「NATO拡大の20年凍結」等ではダメか? 妥協策を各国
は探れ」
米政府が在ウクライナ米大使館の全ての米国人職員に国外退避させる見
通しが報じられる等、ロシアによるウクライナ侵攻の懸念が高まり事態は
風雲急を告げている。
ロシア軍は10万人規模の部隊を西部国境に集結させる中、ウクライナ北
方のベラルーシでも3万人規模を投入して合同軍事演習を開始した。
ロシアのペスコフ大統領報道官は11日、緊迫するウクライナ情勢に絡
み、プーチン大統領とバイデン米大統領の電話会談が12日に行われると明
らかにした。
バイデンは11日、北大西洋条約機構(NATO)加盟国首脳とテレビ電話で
連携を確認しており、プーチンとの直接対話で制裁を警告するとともに、
緊張回避を図りたい考えと伝えられる。
だがプーチンにとって制裁は織り込み済みであり、それで侵攻を留まる
事はないだろう。
筆者には、やはり米国、英国に紛争の勃発を煽っている勢力が居る疑念
を拭えない。
ロシアと敵対すれば、欧州への天然ガスの供給を阻止し、EUを衰退化させ
る事が出来る。また地域紛争に留まれば軍事産業は輸出で利益を得るだろう。
だが、中国と正面から敵対すれば第一に巨大なマーケットを失う事にな
るので、損得勘定からそれは行わない。また米中が直接戦えば第三次世界
大戦に繋がりかねずそれは避ける。だからこそのロシア敵視であり、それ
は真に巨大な敵から目を逸らさせる効果もあるだろう。
<参考拙稿>「日本はロシア-NATO間を仲介し、ウクライナ台湾同時侵
攻を防げ」
http://blog.livedoor.jp/ksato123/archives/55052977.html
民族問題が絡むものの、領土紛争、勢力圏争いは大変乱暴に言えば日本
の江戸時代以前の土地争い水争いと本質は同じだ。即ちそこに妥協の余地
は有るだろうという事だ
例えば「NATO拡大の20年凍結」等で、NATOとロシアは妥協出来ぬものか?
米英を除けば、NATO側は飲める案と思われる。プーチンもメンツが立て
ば、「一時停戦」に乗る余地はあるだろう
ロシアのウクライナ侵攻、それに続く中国の台湾侵攻が起これば、中露
疑似同盟に背後の憂いを除いた中国が世界覇権を握るシナリオが現実のも
のとなって来よう。世界は今、歴史の岐路に立つ。各国リーダーには、地
球規模の大局観と500年単位の歴史観とが求められよう。
(佐藤鴻全)
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(読者の声3)ウクライナ情勢を見ているとアメリカの戦争させたい勢力
がしきりにロシアを挑発しているように見える。アフガンの不可解な撤退
騒ぎもウクライナへの武器横流しだったのかもしれない。英国のインテリ
ジェンスに対しアメリカの粗雑さはグレアム・グリーンが小説にしている
ほど。
ベトナム戦争でもトンキン湾事件とかあからさまな挑発事件があった。
なのでペルシャ湾でタンカーが襲撃されアメリカのメディアがイランによ
る攻撃だと報道してもまたアメリカとイスラエルが悪さをしているとしか
思えなくなる。英米プロパガンダもそろそろ賞味期限切れなのだろう。
資源戦争の中東・中央アジアは日本の歴史でいえば室町時代以前の状
況。国王なり大統領なり独裁者を装ってはいるが実態は有力部族の談合か
武力でのし上がった勢力にすぎない。有力諸侯から多くの妻を娶り、見返
りに金銀その他利権を施し、国王・大統領の体裁を維持する。
今はやりの異世界小説・漫画の世界そのもの。異世界小説の作者など歴
史オタクが多いから力がぶつかり合う状況での生き残りをかけての戦いな
ど格好の材料。ウクライナのような農業国は長らくロシア、ポーランド・
リトアニア、オスマン帝国と支配されるばかり。
中国の歴史を見ても北方の遊牧民族が農耕民族を支配するのが当たり
前。動画の裏サイトでは中東・中央アジアの現実が見られるが、シリアで
は自動車の行き交う市内で道路脇のフェンスに生首が並び、子供は生首を
蹴飛ばして遊ぶ。アフガンでは捕虜の手足をナイフ一つで簡単に切断して
いく。動物の解体に慣れているから人間の膝や肘の関節で切断するのは簡
単そのもの。大陸で四肢切断の刑とか去勢と宦官があたりまえだった理由
がよくわかる。
(PB生、千葉)
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重 要 情 報
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◎
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身 辺 雑 記
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16日の東京湾岸は
渡部亮次郎わたなべりょうじろう86歳。
元NHK政治部記者。当時「文芸春秋」に「赤坂太郎」で
政治評論を書いた。1字10円だった。
仙台、盛岡局勤務の後、東京の政治部へ。河野一郎を
担当。河野先生は酒 を一滴も飲めなかった。毎夜、赤坂の料亭に立ち
寄っていたが、お膳を前にお茶を飲んでいたとは。呑み助の私には想像も
できない。
外務大臣秘書官。その後、社団法人の理事長を18年間。
現在は年金生活者。メルマガ「頂門の一針」主宰者。
秋田県生まれ1936年1月13日。どこといって故障個所は無いから100位まで
は生きるだろう。このメルマガの届かなくなった日が私の死亡日です。
兄は81で、姉は91で死んだ。遺伝の話をすれば、 父親は60台に死んだが
母親は98まで生きた。
渡部 亮次郎