頂門の一針 6275号
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2022(令和4年)年 9月30日(金)
国家儀礼としての「国葬」粛々と:百地章
女王なき英国、安倍なき日本:“シーチン”修一 2.0
安倍氏暗殺は「日本有事」の狼煙:小川栄太郎
「キリングフィールド」の国が経済成長:宮崎正弘
重 要 情 報
身 辺 雑 記
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頂門の一針(まぐまぐ)
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国家儀礼としての「国葬」粛々と
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【正論】国士舘大学客員教授 日本大学名誉教授・百地章
凶弾に倒れた安倍晋三元首相の国葬が9月27日、日本武道館で行われるこ
とが正式に決定した。
[国内向けでなく国際的視点で]
わが国では戦後、国葬令が廃止されたため、昭和42年の吉田茂首相の国葬
は、閣議決定により行われた。憲法上、内閣は行政権の担い手であり、
行政権の中には立法権、司法権以外の全ての国家作用が含まれる。だから
具体的な法令上の根拠はないが、憲法に基づき閣議決定によって「行政措
置」が執られた。
因(ちな)みに、昭和27年以来行われてきた「全国戦没者追悼式」など
も法令上の根拠はなく、閣議決定による。この点、今回の「国葬儀」は内
閣府設置法に定める「国の儀式」と位置付けられ(第4条)、法的根拠は
より具体的で明確になった。
慎重派の中には、佐藤栄作首相の「国民葬」や大平正芳首相らと同様の
「内閣・自民党合同葬」をといった意見もあったようだ。しかしこれらは
国費支出の割合などを考慮した妥協の産物であり、国内向けの理屈でしか
ない。
これに対して、わが国の国際的地位と存在感をかつてない程高め国際的評
価も群を抜いた安倍氏の葬儀には、これまでにない多数の国々から首脳や
弔問使節の参列が予想される。それ故、曖昧な「国民葬」や「合同葬」で
はなく、国際社会において確立した国家儀礼としての「国葬」を粛々と行
い、心から哀悼の意を表するのが、最も望ましいと思われる。[過去の
「国葬」と比較し妥当]
旧国葬令では、天皇の大喪儀や皇太子などの喪儀を「国葬」とし、それ以
外にも「国家ニ偉勲アル者」を国葬の対象としていた。戦後、国葬令が失
効した後も、天皇が崩御された際に「大喪の礼」を行うことは皇室典範で
規定されたが、一般国民に関する法律は制定されなかった。それ故、現状
では旧国葬令に準拠して考えるのも一つの方法だろう。戦前、総理大臣と
して国葬に付せられたのは伊藤博文、山県有朋、松方正義、西園寺公望の
4人である。
安倍氏については、客観的に見ても国内外から高く評価されており、「国
家に偉勲ある者」に当たると見るのが自然であろう。
国際的には、ローマ教皇や英国のエリザベス女王から皇室宛に弔意が伝え
られ、バイデン米大統領は安倍氏の逝去後、在米日本大使館を訪問、マク
ロン仏大統領も岸田首相に弔意を表明している。その他259の国・地域 な
どから1700件もの弔意が寄せられた。また米国ではホワイトハウス に半
旗を掲げ、インド、ブラジル、ブータンは国として喪に服した。
皇室を除けば、わが国で海外からこれだけ高く評価された政治家は、安倍
氏の他になかろう。
台頭する中国に対抗すべく組織された米国、インド、豪州それに日本を構
成国とする「クアッド」は、2007年にインド議会で行われた同氏の演説を
起源とし「自由で開かれたインド太平洋構想」も安倍氏の提唱によるもの
である。それ故世界のリーダーとして当時のトランプ米大統領やメルケル
独首相ら世界の首脳も安倍氏の意見には耳を傾けた。
国内的には「モリカケ」「サクラ」を持ち出して執拗(しつよう)に批判
を続ける政治家やマスメディアの影響を受けた国民もいる。しかし、わが
国憲政史上、首相として最長期間、重責を担った安倍氏の功績について
は、毎日新聞の世論調査(7月18日)では国民の70%、退陣当時の朝日新
聞の調査でも国民の71%が評価している。
また政治的評価は分かれうるが、「戦後レジームから脱却」し「日本を取
り戻す」ため様々な法整備を行い、独立国家に相応(ふさわ)しい国づく
りの基礎を作り上げたのは安倍氏であった。具体的には戦後体制の象徴と
もいうべき教育基本法の全面改正や憲法改正のため不可欠な国民投票法の
制定、謝罪の歴史に終止符を打とうとした戦後70年談話などがそれである。
さらに国家安全保障会議の設置や集団的自衛権の限定的行使容認と平和安
全法制の整備により、日米同盟をかつてない強固なものとしわが国の防
衛・安全保障の基礎を整えたのも安倍氏であった。[「国葬」の正しさ、
歴史が証明]
「国葬」の決定には、岸田首相の強い思いも働いたという。また、産経新
聞・FNNの世論調査によれば、国民の50・1%が国葬を支持し、30代以
下の若い世代では6割を超えた(7月25日)。
ところが事件後、日を追うに連れ山上徹也容疑者の口から出たという旧統
一教会への批判と、旧統一教会と関わりのあったという政治家の名前が
大々的に報道されるようになった。その中には安倍氏の名前もある。その
ため、統一教会批判の矛先が安倍氏にも向かい、国葬に水を差しかねない
異様なムードさえ漂い始めている。
しかし、熟考の上「国葬」と決定したはずであり、政府はこの種の報道に
動揺することなく、国民への説明に努め、自信をもって国葬の準備を進め
てほしい。国葬の選択が正しかったことは将来、必ず歴史が証明するだろう。
(ももち あきら)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
松本市 久保田 康文
産経新聞令和4年8月3日採録
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添付ファイル:
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女王なき英国、安倍なき日本
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“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」95/通算527 2022/9/28/水】台風の連続(14、15
号?)で22日早朝の我が家は3カ所が雨漏りという悲惨な状況だった。3F
屋上の排水溝2カ所がゴミで塞がれて雨が滞留し、小さなヒビから2F室内
に漏れたためだ。屋上の怪しい個所を掃除しペンキを塗り直したりして27
日にはとりあえず完了した。
26日は1F排水パイプの定期点検掃除の日だったので、ペンキ屋と水道屋
の2つを演じるという貴重な体験もしたが、いずれも中腰の作業のため腰
痛ベルトや膝サポーターで重武装していてもかなりの苦痛だ。7時から11
時までの4時間が限界で、ヘロヘロになってベッドに倒れ込む。それでも
多動爺だから寝転んで新聞や本を読むのが日課だ。こういう生活は黄昏ヂ
ヂイのボケ防止にも効くのではないか? 逆に老人性妄想が進行したりし
て・・・
1980年頃に読んだ木村治美著「黄昏のロンドンから」を何気なく再読し
たらエリザベス女王をトップとする英国貴族の話などがあってとても興味
深かった。
英国についてはコナン・ドイルの代表作「シャーロック・ホームズ」シ
リーズに出て来るホームズの友人、ワトスン医師と小生は同じパイプ党
(タバコ)の縁でトモダチになり、パイプタバコ葉の節約の仕方なども教
えてもらったものだ。
タバコ葉は今でもそうだが値が張る。新大陸発見でキューバ産などのタ
バコは世界に広まって江戸時代には日本でも煙管(キセル)による喫煙が
普及したが、高価なために少量で2、3服するのが普通だった。「主(ヌ
シ)様、一服しやしゃんせ」、廓(くるわ)でのおもてなしにもなった。
同じ小さな島国だけれど山国の日本と比べて7倍も平地の多い英国は広
いなあなどと知ったのもワトスン医師のお陰である。
小生は1985年あたりに在日英国大使館の仕事もしたが、当時の英国は懐
事情がかなり悪く、見積もりを値切るなどケチ臭かったので深入りしな
かった。その代わりに英国統治下の香港は世界中から観光客を誘致するた
め潤沢な資金を投入していた。香港観光協会による視察旅行から帰ってき
た女子社員曰く「料理のあまりにもの美味しさに涙が出ました、そんなこ
とは生まれて初めてです!」と感動していたっけ。
その香港をぶっ潰したのは暗愚の習近平である。「カネ、女、名誉、何
でもくれてやれ、旨いものを食いたい奴には旨いものを食わせろ」、ニク
ソンも篭絡するほどタラシコミの上手かった毛沢東のオツムを学ばずに大
人風だけを真似ているのが習近平である。習はコロナと心中するつもり
か、経済は昇竜から降竜、鈍竜、やがて土竜(モグラ)へ・・・習が最後
の皇帝になる可能性は結構高そうだ。
コナン・ドイルはWIKIによると努力家、愛国者だった。
<ドイルの父は測量士補だが出世せず、のちにアルコール依存症になり
精神病院に送られた(吾輩と同じダメンズ!)。ドイルはエジンバラ大学
医学部に進学し、1881年に学位を得て卒業後、医師として診察所を開業した。
(人気がなかったようで)患者を待つ暇な時間を利用し、副業で小説を
執筆して雑誌社に投稿するようになり、1884年にはシャーロック・ホーム
ズシリーズの第一作である長編小説「緋色の研究」を発表している。
1900年にボーア戦争(英と蘭による南ア争奪戦)が勃発すると医療奉仕
団の医師として戦地に赴いた。同年10月に行われた解散総選挙に与党自由
統一党の候補として出馬し、戦争支持を訴えたが落選した。
ボーア戦争がゲリラ戦争と化して焦土作戦や強制収容所などイギリス軍
の残虐行為への国内外の批判が高まっていく中、1902年には『南アフリカ
戦争 原因と行い』を発表して、イギリス軍の汚名を雪ぐことに尽力し、
その功績で国王エドワード7世よりナイトに叙され、「サー」の称号を得
た>(以上)
エドワード7世はビクトリア女王の息子で、彼の治世下に「日英同盟」
が結ばれ、明治日本の富国強兵に寄与している。
日本は大東亜戦争では英国と戦ったが、小生は英国人アーネスト・サト
ウの「一外交官の見た明治維新」を座右の書にしているし、大学の英語の
先生は英国人だったし、ビートルズも好きだし、チャーチルからも「絶対
負けない、勝つまで戦う」という根性を学んだし、雀を友とする上で英国
夫人クレア・キップスの「ある小さなスズメの記録」の愛読者でもある。
英文学も結構読んだ。シェイクスピア、デフォー、ディケンズ、キャロ
ル、ローレンス 、オーウェル 、モームも良かったが、ジョイスの「ユリ
シーズ」だけは歯が立たなかった。英国をルーツとするカナダ女性L.M.モ
ンゴメリは「赤毛のアン」で有名だが、日本で出回っている彼女の作品の
8割ほどは読んでいると思う。「誇り高く頭脳明晰、毅然としながらも母
性的な情のある婦人」という感じで、モロ、小生の好み。
で「黄昏のロンドンから」(1976年初版)の木村治美氏。小生の好みだ
なあ。「知性を表に出さずに母性で優しく読者を引き付ける」感じ。大し
たものだ。
木村氏は多くの著作があるが、「黄昏―」は処女作のようだ。氏は
「1974年8月〜1975年3月までのたった8か月足らずのロンドン暮らしで、
ロンドンを語るには短すぎたかもしれない。しかし短かったからこそ、あ
らゆるものが鮮明な印象を残したかもしれない」とあとがきで回顧している。
確かにそうで、小生のように海外旅行を煽るための海外取材では「こん
なのアリか?」とカルチャーショックを与えるようなネタこそ価値がある
ので、1カ所に長く滞在することはなかった。滞在が長くなるとショック
が薄まり、最初に感動したこともいつの間にか「古いネタ、売り物になら
ん」となってしまう。駆け足取材だからこそ見える“商品価値”というのが
あるのだろう。ちょんの間の逢瀬だから感激し、想い出に残るとか・・・
すれ違い恋愛の名作「君の名は」の連載ラヂオ放送では湯屋の女風呂が
空っぽになったそうだ。
「黄昏―」には50歳の頃のエリザベス女王(1926年生)についてもこう
触れている。
<(1975年)2月に、王室の歳費を、72年に決められた7億円から10億円
(当時の日本の初任給は5万円ほどだから今なら45億円ほど?)に値上げ
して欲しいという女王様の要求が国会に提出されました。アメリカの週刊
誌「タイム」は、「イギリスで間違いなく一番の金持ちであるクイーン・
エリザベス2世は、宝石で飾られた物乞い鉢を手に下院の戸口に姿を現し
こそしなかったが、先週、値上げを要求された」と、ちょっとばかり意地
悪な書き方をしていました。(嫉妬じゃないか?)
国会では、王室にこれだけの国費を使うだけの価値があるのかどうか、何
週間もかけて侃々諤々でした。サッチャー女史は「君主制は我々の最も貴
重な資産である」と弁護しましたが、労働党の議員は、労働者も賃金の上
昇を抑えているのだから、王室ももっと節約して欲しい、と言いました。
歳費の他にも「ブリタニア号」という王室のヨットを維持するのに1日に
つき570万円かかる、国はいつまでヨットを浮かべておけるのだろうか
と、下院で話題になりました。年間でざっと20億円を超す金額で、私には
なんとも想像のつきかねる金高です。ちょうどその頃、エリザベス女王は
フィリップ殿下に付き添われてブリタニア号でメキシコをご訪問中でした。
王室の歳費値上げの件は、労働党の89人が反対票を投じ、残りの50人は
所用をかこつけて対決を避けました。保守党は予想通り女王の支持派に回
り、この法案はやっと議会を通過したということです。
イギリスの王室には莫大な土地や株の私有財産があって、昔からのしき
たりで土地税も相続税も、その他の義務すべても免除されています。もし
王室が相続税を払ったら一代ごとに破産してしまうでしょう。いったい王
室の財産はどのくらいあるのかと、国会議員は次第にそのプライバシーに
も目を向けてきました。国全体が貧乏になってきたせいでしょうか。
日本の宮内庁のような公的代理機関もないまま、王室運営のための必要
経費の値上げを女王自ら要求なさるのはなんと勇気のいることでしょう
か。なんと王者にふさわしい行為でしょうか。
意地悪な「タイム」の記事を借りるなら「年額1400万ドル(42億円)か
かるが、英国人一人につき25セント(75円)なら、国家統一のシンボルと
しては以前世界で一番の格安品である」ということになります。
王室の歳費値上げが国会で喧々ごうごうだったとき、新聞の投書欄もこ
の問題でにぎわいました。その中で「ザ・タイムズ」(英国で1785年に創
刊した世界最古の日刊新聞)にのったある興行師の次のような投書は、な
るほどそういうこともあるのかと思わせるものでした。
「1973年に私は不幸な子供のための慈善金を200万ポンド(14億円)集
めることができました。そのうちの25万ポンド(1億7500万円)は、たっ
た一晩の2時間のうちに集められたのですが、エディンバラ公(女王の
夫、フィリップ殿下)がこの企画に加わっていられたことが大きな力と
なっています。こういう風に、王室の人々は年々、何百万ポンドの慈善金
を集めます。王室は大きなアトラクション(人をひきつける力)なので
す。これらのお金は、本来は政府が出資すべきものです。あの方々が働い
ていないなんて言わないでください。スターと違ってあの方々は出演料を
差し引くことなく、全額を国に差し出します。これらの金額は、我々が王
室に支払うものよりも、はるかに多額です」>(以上)
うーん、いい論稿だなあ、木村氏はタダモノじゃないなあ、とWIKIで検
索したらナント愛国の同志だった。
<木村治美(きむらはるみ、1932年11月1日 - )は、日本の英文学者、
随筆家。保守派の論客。共立女子大学名誉教授。新しい歴史教科書をつく
る会の賛同者。つくる会の内紛後は、その分派である「再生機構」に賛同
している。夫は心理学者で群馬大学名誉教授の木村駿>(WIKI)
英デイリー・テレグラフ紙東京支局長なども務めた英国人ジャーナリス
ト、コリン・ジョイス氏の「エリザベス女王に学ぶリーダーの資質」も実
に興味深かった(ニューズウィーク日本版2022/9/22)。以下、転載する。
<エリザベス女王には、世界のリーダーたち、そして彼女と私的、ある
いは公的に親交のあった人々から感情のこもった賛辞が贈られている。そ
れ以上のことを言えるとも思えないので、僕はあえて合理的に、彼女の
リーダーとしての資質について分析してみようと思う。彼女はその極めて
長い統治期間を通じて見事な成功を収めており、彼女のリーダーシップの
スタイルは研究、理解する価値がある。
まず、早い段階で自らの使命を表明し、それを貫くこと。エリザベス女
王の場合、即位5年前の1947年、21歳の誕生日での宣言「長くとも短くと
も私の全生涯を国民への務めにささげる」がこれに当たる。そして彼女
は、死去する2日前でさえトラス新首相に新政府樹立を依頼するなど、絶
え間ない職務をこなし、この誓いを明確に果たした。
簡潔さと明瞭さ故にこの誓いは人々の記憶に刻まれ、彼女がそれを守り
抜いたという事実は、長い治世における(不可抗力ながらも)困難な時期
であっても彼女の助けとなった。チャールズ皇太子(当時)の離婚やダイ
アナ元妃の死などで王室人気が一時的に急落したときであっても、王室批
判派でさえ女王が誓いを守り続けていることは認めざるを得なかった。
2つ目に、あらゆるリーダーが急進的である必要はないということ。女
王が長期にわたり強力な地位に就きながら、イギリスに多くの変化をもた
らさなかった、と言うことは決して無礼を意味しない。それどころか、彼
女が自らの役割を心得て、境界を踏み越えないよう抑制的だったことを意
味する。もっと介入主義の君主だったらどうしても政治的とみられるだろ
うし、その中立性に疑問符がつく場合は「中立な国家元首」の存在意義に
議論が起こっただろう。
3つ目に、少ないほうがより効果的な場合もあるということ。エリザベ
ス女王は実のところ、国家の一大事に対してごくまれな(そして慎重な)
介入を行ったことが何度かあるが、あまりにその機会が少なかったために
特権階級の「気まぐれ」な口出しのようにみられることはなかった。むし
ろ、自らの努力で発言権を勝ち取った者による「考え抜かれた」見解と見
なされた。
近年の例では、英連邦の首長職(自動的に委譲される世襲制ではない)を
チャールズが継承することを加盟国にお願いしたこと、チャールズ即位時
にカミラが王妃になることを望むと表明したこと(今やそのとおりになっ
た)、そして2011年の歴史的なアイルランド公式訪問だ。これは因縁の歴
史を持つ隣国との新たな関係を築く上で、重要な役割を果たした。イギリ
ス生まれながらアイルランドにルーツを持つ数多くのイギリス人の1人と
して僕は、個人的にこの和解と友好の瞬間に心を揺さぶられた。
4つ目に、自ら主張することなく、人となりを他人に判断させること。
繰り返すがこれは「無礼」などではないが、女王は手を振る姿と笑顔(と
色鮮やかな衣装)で広く知られていた。70年の在位を通して彼女は予定外
のことはあまり言わず、まして議論を呼ぶ発言などほとんどなかった。
これは確実に意図的だった――「不平を言わず、言い訳をせず」は、現代
王室の非公式なモットーだ。これによって人々は自分の感情を女王に「投
影」することができ、ほぼ例外なくそれは好意的だった。
これは特異な戦略というわけではない。「多くを語るな、されば思慮深
い者と思われるだろう」という手法は多くの人に使われてきたが、おそら
く女王は最高の実践者だろう。
5つ目に、不必要に時代の波に乗らないこと。エリザベス女王は特に、
変化の時代にあって継続性を体現したことで称賛された。イギリスには
もっと時流に乗ったリーダー(例えばブレア元首相)がいたこともある
が、情勢が変わればそのスタイルはすぐにダサく見えるものだ。
女王は70年にわたり際立って一貫性を保ち続けたが、「動きを止めた」
わけでもなかった。彼女は昔なら考えられなかったような行動に乗り気な
姿勢も見せた。2012年ロンドンオリンピックでのジェームズ・ボンドとの
忘れ難い共演や、今年見せたクマのパディントンとのほのぼのとした
ティータイムなどだ。
最後に、偉大なリーダーでも衰退局面を率いることはあり得る。1952
年、イギリスはまだ帝国を支配していたが、既に解体の途上にあった。イ
ギリスは数々の経済的問題に直面した。偉大なるイギリスの産業は衰退
し、収入に対して住宅コストは上がる一方。今や国民には分断も広がって
いる(特にブレグジットをめぐって)。
それでも女王が立派に務めを果たしたからこそ、人々はエリザベス2世の
治世を振り返るとき、大いに素晴らしかった、と評価するだろう>(以上)
昨日、安倍晋三氏の国葬が行われた。良き人々が氏の喪失を改めて惜し
んだろう。安倍氏が中露を懸命に懐柔していた頃、小生は「氏の考えは甘
すぎる、共産主義を分かっていない」とがっかりしたものだ。
共産主義者は悔い改めるとか、平和を求めるとか、自由民主や資本主義
経済を導入するとかは絶対にない。共産党員による・共産党員のための・
共産党員の国は、彼らの天国である。天国を捨てる人はいない。
共産主義の弱点は、資本主義経済のような激しいテクノロジー競争(イ
ノベーション)がないことや、平等主義により現場の労働意欲(モラル、
モチベーション)がないために、革新的な先端技術分野でどうしても資本
主義経済に負けてしまうことである。
だからこそ共産主義者は淘汰、自滅を防ぐために、本来は資本主義経済を
導入すべきなのに、自分の私利私欲を守りたいから「世界中を赤化する世
界革命をしなければならない」と焦るのだ。
マルクス曰く「革命で政権を握ったらブルジョワ階級からカネと生産用具
を奪え、そして生産能力を高めよ」(「共産党宣言」)。強盗で旋盤を
かっぱらうことはできるし、3交代制で生産能力を高めて製品を輸出をす
ることはできる。しかし、常に最新式の旋盤でなければ国際市場で勝ち抜
くハイテク製品を作ることはできない。
低学歴の工員は旋盤を操作できるが最新式の旋盤を創ることはできな
い。改革開放以前の中共では、世界に輸出できる工業製品は玩具と爪切り
など日用品くらいしかなかった。3交代制だが、仕事は3時間分しかなかっ
たのでおしゃべりして過ごしていた。結局、共産主義では経済競争力が伸
びずに相対的に国家は弱体化し、ソ連は自壊した。
中露は自壊を避けるために世界中を「競争のない」共産主義化するしか
ない。安倍氏は2019年頃まで「誠意をもってアプローチし相互信頼関係を
深めれば中露との問題は解決できるはずだ」という信念を持っていた。
「人がいいから結果的に欺かれたのだ、甘過ぎたのだ」と小生はがっかり
したが、一番がっかりしたのは安倍氏だったろう。「俺は誠意をもってあ
たってきた、結局は無駄な独りよがりの努力だったのか」と臍を嚙んだろう。
「誠意をもって話せば分かる」式の中露&北への幻想は、今の日本では
岸田総理など宏池会系の時代錯誤的お花畑の政治家や、ナンミョー池田
“財務”教徒のイカレポンチなど“自称リベラルのパープリン”だけではないか。
我々は安倍氏の無念の想い、悔しさをも引き継ぎ、インド太平洋の平穏
を取り戻すために中露北との戦争に勝たなければならない。「今一度世界
を洗濯致し候」、アカとの最終戦争、令和版大東亜戦争が始まっている。
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☆安倍氏暗殺は「日本有事」の狼煙
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盟友・小川榮太郎氏が特別寄稿
「安倍たたき」に狂奔する一部マスコミ、旧統一教会に耳目を集中させる
露骨な情報操作
安倍晋三元首相を、第1次政権直後から支え、2012年12月の政権奪
還による復活につなげ、第2次政権中も叱咤(しった)激励を続けた文芸
評論家の小川榮太郎氏が、安倍氏の「国葬(国葬儀)」に合わせて特別寄
稿した。激動する世界情勢のなか、安倍氏は世界の民主主義の危機や、日
本の安全保障環境の過酷さを訴え続けていた。そして、民主主義の根幹た
る選挙中にテロリストによって暗殺された。その事件の究明や危機の警鐘
よりも、「安倍たたき」に狂奔する異常な一部マスコミ。小川氏は、安倍
氏の暗殺は「日本有事の狼煙(のろし)だ」と喝破した。
ついに国葬儀の日を迎えたが、まだ安倍さんの死を実感できてはいない。
突然の逝去、劇的過ぎる終焉(しゅうえん)、そして日本再生の同志とし
ての身近さが相まって、まだ声を掛ければそこにいるとしか思えない。ふ
と、電話を掛けてももうあのお声が聞けないのかと思えば、改めて茫然
(ぼうぜん)とするのである。
が、理由はそれだけではない。
死後も連日連夜繰り広げられ続けるマスコミによる「安倍たたき」。イン
ターネットを立ち上げれば、元気な頃の安倍氏の肖像写真が真先に目に飛
び込み、生前さながらの非礼かつ乱暴な表現で安倍氏がたたかれている。
毎日このありさまでは、安倍氏が亡くなった実感を持つこと自体が不可能
ではないか。
天に帰られた安倍氏は、あの寛大な苦笑を浮かべておられるかもしれない。
しかし、われわれは笑い過ごすわけにはゆかない。
暗殺の被害者に対する哀悼や、真相の究明でも、安倍政治の功罪でもな
く、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題に国民の耳目を集中させる
露骨な情報操作の一連の流れは、それ自体がもはや「有事の一環」に他な
らないと思われるからである。
今年の大きな文脈に置き換えてみよう。
2月24日 ロシアによるウクライナ侵攻の勃発。
7月8日 安倍元首相暗殺事件。
9月8日 世界最長在位であられたエリザベス英女王の崩御。
10月16日〜 中国共産党大会で習近平国家主席の「異例の3選」が決
まると目されている。
11月8日 米国の中間選挙では、ジョー・バイデン大統領率いる民主党
がおそらく惨敗し、バイデン政権は弱体化すると目されている。
これらの点を大きくつないだとき、何が見えてくるか。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻は、第二次
世界大戦後の不文律を犯した。イデオロギー対立に基づく、朝鮮、ベトナ
ム戦争、中東などでの米ソの代理戦争を除き、大国による領土変更の戦争
は過去の遺物だという不文律である。しかも、プーチン氏は戦術核の使用
を「脅し」でないと明言している。
習氏の3選、バイデン政権の弱体化が現実のものとなれば、中国が台湾に
軍事侵攻を決断する可能性は否定できない。
もし、ロシアに続き、中国が本格的な軍事侵攻を行い、日米安保条約が機
能しなかったなら…。その時、本当の意味で「戦後」が終わり、むき出し
の暴力が世界を支配し始めるであろう。
プーチン氏がウクライナ戦争を終結させる際、ほぼ世界でも唯一の仲介者
は安倍氏だった。中国の台湾侵攻を最も抑止し得る政治家
mobilkubota@po.mcci.or.jp;、安倍氏にほかならなかった。
その安倍氏が、危機の進行する最中に暗殺されたのである。
そして、時あたかもヨーロッパのグランドマザーたるエリザベス女王が崩
御された。ビクトリア女王の崩御は第一次世界大戦とロシア革命という巨
大な地殻変動の端緒だった。安倍氏の暗殺、女王崩御に、私は世界の関節
が外れる骨の軋みを聞く。
昨年末以来、安倍氏は「今、日本は世界で最も厳しい安全保障環境に置か
れている」との認識を示し続けていた。その「最も厳しい安保環境」の中
で、安倍氏自身が実際に暗殺され、没後にはその暗殺が国民の記憶から隠
され続けているのである。
安倍氏の暗殺は、「日本有事の狼煙」と理解すべきだ。私たちは抑止に向
け、最速で準備に入らねばならない。安倍氏への手向けは、それ以外には
ない。
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松本市 久保田 康文
夕刊フジ令和4年9月28日号採録
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「キリングフィールド」の国が経済成長
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)9月23日(金曜日)
通巻第7473号
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(休刊のお知らせ)小誌、週末(24日、25日)は休刊です
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あの「キリングフィールド」の国が経済成長
復興を支える主役は、日本から中国に交代していた
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APECの問題児で、つねに『中国の代理人』として振る舞ってきたカ
ンボジアが不思議なことに中国の「債務の罠」のリストには入っていな
い。あの「キリングフィールド」の国が経済成長を成し遂げ、気がつけば
復 興を支える主役は、日本から中国に交代していた世界銀行とIMFの「債
務持続可能性分析」では、カンボジアの債務務危機 のリスクが低いと報
告されていて、首をかしげる。
カンボジアの債務の対GDP比較は 2019年の28.2% から 2021年末に35%
に上昇した。中国からそそのかされて新幹線をビエンチャンまで繋いだラ
オスの債務は2019 年から2021年の間にGDPの68% から88% に上昇した。ラ
オスはスリランカ、パキスタンにつづいて「債務の罠」に落ちた。
カンボジアにおける中国の存在はすさまじい。
プノンペンの空港から市内へ至るまでに高層マンションが建ち並び、看板
をみるといずれも中国語。ショッピングモールもホテルも中国資本が目立
ち、日本資本のイオンや高層ホテル「東横イン」なんて目立たない。この
新街区は付近に中国大使館もあって、林立する摩天楼は90%が中国である。
中国はカンボジアで道路、橋梁、水力発電などを請け負うが、民間投資は
マンション、ホテル、カジノに向いている。王宮周辺のツーリストロッジ
などは西洋人のバックパッカーが屯したが、コロナ禍以後、めっきり観光
客が減って、目立つのは中国人ばかりだ。かくして、カンボジアの中国に
対する債務は 40 億 5000 万米ドルに達している。カンボジアの『独裁
者』フンセン首相(24年間、首相の座にある) は、「債務のわな」を
否定し、「中国だけの債務者にはならない。また中 国はカンボジアを債
務者として罠にかけるつもりはない」と明言している が、かれの発言は
つねに二枚舌、まったく信用がない。
そのうえフンセン政権は経済活性化のために新しく500億ドルのイン フラ
投資を今後十年間になすと計画しており、IMFが慌てた。
▲中国の軍功に化けかねないリアム基地
カンボジアにおいて中国の軍事基地の疑いが濃厚なのは、シアヌークビ
ル近郊のリアム海軍基地だ。このリアム海軍基地は、シアヌークビル空港
から車で15分、国立公園に囲まれた一角にあって以前から米軍が問題視
してきた。公園は海沿いの広大な敷地で、マングローブ、白砂ビーチ、沖
合にサンゴ礁。
リゾート開発を名目に中国企業が「国際観光リゾート開発区」プロジェ
クトを開始している。中国国有「中信集団(CITIC)」系の金融会社が融
資するスキームだ。
「金銀湾開発区」は、会議施設、健康保養センター、スマートホテル、人
民元のオフショア清算拠点など「スマートシティ」として機能させるトカ。
この手口もスリランカを「南アジアのドバイ」にするとコロンボ沖合に人
口島を造成し、一大金融都市という触れ込みで中国企業が受注し、中国の
銀行がドル建てで融資し、建機、建材ばかりか労働者も中国から連れてき
た、まるで現地にカネを落とさず、それどころか借金を押しつけた遣り方
そっくりである
疑惑はまだある。
リアムの北西にあるダラサコル空港も中国が建設した。このダラサコル空
港の滑走路は3200メートルあって、表玄関プノンペン国際空港 (3000メー
トル)よりも長い。軍用機の離発着が可能で、米軍が以前から注目監視し
ている。
内戦の廃墟から立ち上がり、カンボジア復興を手助けしたのは日本だっ
た。平和復興の国際会議は日本が費用を拠金し、東京で開催された。
日本の援助実績は(1)有償資金協力が約1,823億円(2019年度までの累
計)。(2)無償資金協力が約2,188億円(2019年度までの累計)。(3)
技術協力が約932億円(2019年度までの累計)と飛び抜けて無償援助が多
いのである。
□☆み□☆☆□や☆□☆□ざ☆□☆□
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