2008年06月15日

◆「よど号」犯引渡し


石岡 荘十

北朝鮮との公式実務者協議が6月11、12の両日、北京で開かれ、日本が拉致問題の解決や日航機「よど号」の乗っ取り犯の引渡しを求めたのに対し、北朝鮮側が新たな提案をしたと伝えられている。

横田めぐみさんら、日本国内から拉致されたと見られる人々については、この10年の間にしばしば報道されているのでここでは改めて触れないが、よど号乗っ取り事件については、事件から40年近い時間が経過しているので、この際、事実関係を整理しておく。

1970年3月31日、当時、70年安保闘争終盤、学生運動を日本各地で展開していた各派の中でももっとも過激な運動を展開していた共産主義者同盟赤軍派のメンバー9人が、羽田空港発午前7:33分、板付空港行きの日本航空351(ボーイング727機、愛称「よど号」)をハイジャック。

犯人グループは北朝鮮に亡命すると言って、福岡、韓国を経緯、韓国・金浦空港で乗員は7人と乗客は131全員を解放して、北朝鮮に到着した。

田宮高麿(当時27)をリーダーとするハイジャック犯9人は亡命後、当時の金日成首相の配慮でなに不自由ない生活を保障され、政治思想(主体=チュチュ思想)を学習しながら、1977年5月までにほとんど全員が日本人女性と結婚。

結婚相手の女性は日本国内のチュチュ思想研究会の会員で北朝鮮に渡った人が多かった。その後、共同で貿易会社を作り、平常市内に外貨ショップを開いたりしていたと伝えられるが、この間、4人が死亡、1人が逮捕され有罪判決を受けたがすでに出所。

死亡したのは、
・田宮高麿(27)---95年、52歳で病死。

・岡本武(24)---88年、42歳で妻とともに事故死とされているが、状況は未確認。

・田中義三(21)---96年、タイで偽ドルを使ったタイ人と外国人に協力したとしてカンボジアで拘束され、00年、日本へ30年ぶりに移送・帰国。国外移送略取、強盗致傷容疑で逮捕され、06年、最高裁で懲役12年が確
定。07年元日、服役中、58歳で癌で死亡。

・吉田金太郎(20)---85年、35歳で死亡とされているが、結婚したかどうか、死亡の状況など詳細は不明。

・柴田泰弘(16)---88年5月、密かに帰国したところを逮捕され、懲役
5年の実刑。94年満期で出所。


したがって、いまなお北朝鮮に生存が確認されているのは4人(年齢は当時)。

・小西隆裕(25)
・若林盛亮(23)
・安部公博(22)
・赤木志郎(22)

今回の日朝協議ではこの4人が引渡しの対象となっているのだが、横田めぐみさん拉致の関連で捜査が進む中、よど号事件のグループが別の拉致事件に関連しているのではないかと疑われる事実がつぎつぎと明らかになっている。

その端緒は、ハイジャック当時16歳だった柴田と結婚(87年)していた八尾恵が密かに帰国して横須賀市内でスナックを経営してるいという密告だった。

88年5月、八尾(当時32)は住民票への登録が偽名だったという容疑で逮捕、略式起訴されるが証拠不十分のまま釈放となった。ところが、八尾は02年3月、東京地裁で開かれた赤木恵美子(赤木志郎の妻)の公判
に検察側証人として出廷、

ハイジャック犯のリーダー田宮の指示で「83年、ロンドンに留学中だった有本恵子さん(当時23)を騙して北朝鮮に連れ出した」と証言。

またそれ以前80年に田宮の妻、森順子ら「よど号の妻」がスペインなどヨーロッパ留学中の日本人学生石岡亨さん(当時22)と松木薫さん(当時26)を拉致したという報道が93〜94年相次いだ。有本さんと石岡さんは、85年結婚したとされている。

北朝鮮側は、02年10月、日本の調査団に対して、「有本さんと石岡さんは亡くなった。松本さんについては調査中」としているが、これを裏付けるものは何もない。そんな中、いま北朝鮮にいま居る小西ら4人はどうしているのか。

映画「実録・連合赤軍」の若松孝二監督が今月始め平壌のホテルの一室で、焼酎を呑みながら、安部を除く3人にDVDを見せた。メンバーの一人は「同志の行為に責任を感じる」と語り、若松監督が「あなたたちが日本にいれば、あさま山荘事件は起きなかったのでは」と問うと、苦笑するだけで返事はなかった、とウェブで報告している。

赤軍派のいわば創始者であり、議長だった塩見孝也さん(66)は、実行犯9人とともに北朝鮮に渡り、世界同時革命を実現する計画だったがハイジャック実行直前の70年7月15日、尾行していた警視庁捜査員に逮捕されてしまう。

懲役18年の刑期を終わって出所したのは89年の暮れだった。それ以降、40回以上北朝鮮に渡り、彼らと会っているが、拉致の事実について、彼らははっきりとは認めていないという。

日朝実務者協議の結果について、6/13夕刻、電話でこういっている。

「今の段階で、彼らの身柄だけを引き渡すというのか、ヨーロッパで拉致したといわれる3人を含め、すべての拉致被害者を帰すというのかはっきりしないが、少なくとも(ハイジャック犯)4人の帰国がはっきり決まった段階で、自分の考えを明らかにしたい」

拉致をテロ国家の理由に挙げている米国に対するサインに過ぎないという見方を拭えないが、38年前ハイジャックを取材した者としては、別の視点から成り行きを見守りたい。       20080613


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