2008年06月17日

◆漢字制限の緩和

        渡部亮次郎

戦争に敗けたのは学ぶべき漢字が多すぎた、難しい漢字も多すぎたと一時、文部省(現在は文部科学省)は漢字を眼の仇のようにして制限してきた。

ところが、このところのパソコンや携帯電話の発達で事情が大きく様変わりしてきた。手では書けない字でもITでは簡単に表現できるようになったからである。

たとえば憂鬱。手では書けないが、パソコンでゆううつと打って変換させると簡単に憂鬱となる。これでは制限漢字にする必要が無いではないか、という論が専門家の間で実際に論議されている。

敗戦翌年の1946年11月16日に内閣から告示されたのが当用漢字(とうようかんじ)「当用漢字表」に掲載された漢字で、1850字だった。当用の意味は「当面用いる」の意味だった。

その結果起きたのが「まぜ書き」の滑稽である。それまで熟語として用いられて来た語の中には、「空挺部隊」のように、熟語を構成する漢字に当用漢字に含まれる漢字と含まれない漢字が混在するものが多数存在した。

これらの熟語では、含まれている部分だけを漢字にし、残りをひらがななどで書く(「空てい部隊」)といういわゆる「まぜ書き(交ぜ書き)」が行われることになったのである。

しかしこの表記法は占領政策である伝統文化の破壊方針に従ったものであり、国民を愚民とする表現制限である等と厳しく批判された。

しかも当用漢字は日本独自の新字体を採用しているため、当用漢字だけの知識では古典を原典のままでは読むことができなくなった。

(他の漢字国も、中華人民共和国等それぞれ独自で=主に草書を基にした新漢字を定めたこともあり、これ以降は、漢字が共通語として通用することが殆どむずかしくなった)。

なお、現在まで漢字の字体を変更しないで継承しているのは、台湾、香港、マカオである。

以上のような反省から出てきたのが現行の「常用漢字」。1981年10月1日に内閣告示第1号「常用漢字表」により発表された。

「法令・公用文書・新聞・雑誌・放送等、一般の社会生活で用いる場合の、効率的で共通性の高い漢字を収め、分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安」(同告示)を示す。1945字からなる。それでも新聞社は紙面製作の能率の点から漢字を増やす事には消極的だといわれている。

当用漢字との違い
字数の上では以下の95字が増加した。削除された文字はない。
猿 凹 渦 靴 稼 拐 涯 垣 殻 潟 喝 褐 缶 頑 挟 矯 襟 隅 渓 蛍 嫌 洪 溝 昆 崎 皿 桟 傘 肢 遮 蛇 酌 汁 塾 尚 宵 縄 壌 唇 甚 据 杉 斉 逝 仙 栓 挿 曹 槽 藻 駄 濯 棚 挑 眺 釣 塚 漬 亭 偵 泥 搭 棟 洞 凸 屯 把 覇 漠 肌 鉢 披 扉 猫 頻 瓶 雰 塀 泡 俸 褒 朴 僕 堀 磨 抹 岬 妄 厄 癒 悠 羅 竜 戻 枠

字体を改めた字。
当用漢字の「燈」が「灯」に改められた。


音訓が加わった字。
栄 はえる
憩 いこう
香 かおる
愁 うれえる
謡 うたう
露 ロウ
和 オ

音訓が削られた字。
膚 はだ
盲 めくら

言葉は生きた人間が使うものであるから、それ相応に時代に即して変化するものである。常用漢字は、あくまでも小学校・中学校の教育において学ぶことが必須とされる漢字の最低限の基準に過ぎない。

一般の社会においてはこれ以上の漢字の知識が必須であるが、常用漢字に固執すると、問題が出てくるのは当然である。

例えば、「経」という漢字の訓読みは、常用漢字表では「経る(へ-る)」しかない。しかし、一般の社会ではその外の読み方である「経つ(た-つ)」も広汎に用いられている。

そこで2005年2月に国語分科会が「情報化時代に対応するために常用漢字のあり方を検討すべき」であるとした報告書を文化審議会に提出した。

これを受けて、同年3月、中山文部科学相は常用漢字表の見直しの検討などを文化審議会に諮問した。同年9月から文化審議会・国語分科会の漢字小委員会が常用漢字見直しの審議に入った。

いまのところ文化審議会は2010年の新常用漢字表制定を目指し、また総字数が多くなった場合、「読めるだけでいい漢字」を集めた「準常用漢字表」の制定も検討するという。IT時代を反映したものだ。

府県名に使われている漢字で常用漢字に現在含まれていない「阪」「鹿」「奈」「岡」「熊」「梨」「阜」「埼」「茨」「栃」「媛」の11字を常用漢字に含めることを決めた。

常用漢字として今後、新たに追加されることがほぼ確実とされる漢字は「藤」「誰」「俺」「岡」「阪」「奈」「鹿」「熊」「頃」「韓」「弥」「斬」「虎」「狙」「脇」「尻」「叩」「闇」「籠」「呂」「亀」「頬」「膝」「鶴」「匂」「嘘」「須」「噂」「濡」「笠」「嬉」「股」「眉」「朋」「覗」
「鎌」「凄」「撫」「溜」「謎」「稽」「曾」の42字(保留:1字)。

なお、「銑」「錘」「勺」「斤」「匁」「脹」の現・常用漢字6字については今日の日常生活に使われることがほとんどないとして今後、削除対象となる模様。出典:ウィキペディア  2008・06・15






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