2008年06月28日

◆狭心症で入院の松山千春


           石岡 荘十

歌手の松山千春(52)が25日未明、全国ツアーの滞在先で倒れ、緊急入院した。救急搬送された病院で「不安定狭心症」と診断され、急きょ、心臓の緊急治療術である「経皮的冠動脈形成術」が行われた。

一命を取りとめたが、診断した医師によると絶対安静が必要だという。松山さんは先月スタートしたコンサートツアー中で福岡市から三重県への移動日、滞在先で体調不良を訴えたという。(産経新聞電子版6月26日14時48分)

この記事の中に、いくつか医学的専門用語が出てくる。

まず、「不安定狭心症」とはなにか。何も特別なことをしていないのに、(彼の場合は、未明と言うから休んでいた可能性が高い)、1日何回も発作を繰り返す場合、また、(対症法的に使う)ニトログリセリンが効きにくくなった場合の狭心症のことをこう呼んでいる。

狭心症は、心臓に血液を送る冠動脈にコレステロールなどがたまって狭くなり、心臓の筋肉に十分な栄養が送れなくなる病気だ。この状態をほっておくと冠動脈が完全に詰まり、その川下の筋肉に血液が行きわたらなくなり、心臓の筋肉組織が死んでしまう。これが心筋梗塞(こうそく)だ。

つぎに「経皮的冠動脈形成術」とは?

治療は、要は、詰まった血管の血の流れが戻ればいいわけだが、流れが悪いからと言って即、外科医が心臓を開くというような乱暴な外科手術をするわけではない。

こんなとき広く行われているのが、内科医によるカテーテル(ビニールで出来た細い管)を使った治療法だ。足の付け根の静脈などからカテーテルを入れ、血管が狭くなった”現場“を押し広げ、そこにステントを使って冠動脈を広げる方法だ。

「経皮的」というのは皮膚を経由して(穴を開けて)、という意味だ。

「ステント」は網目状の金属製チューブのことだ。護岸に使う蛇籠をすぼめたみたいなヤツだ。その中に風船を仕込んで冠動脈が狭くなった部分に挿し入れる。

現場で風船をふくらませるとステントの直径も大きくなり、狭くなったところを内側から押し広げて補強する恰好になる。カテーテルを引き抜いてステントを置き去りにする。

つまり皮膚を経由してカテーテルをいれ、狭くなった血管の形を整える治療法、これが「経皮的冠動脈形成術」である。

ところが、置き去りにされた金属製のステントは血管を傷つけるなどして炎症を起こし、血管の内膜細胞が増殖して血管がまた狭くなる(再狭窄)。この治療法の欠点だ。

患者の2〜3割が半年以内に再狭窄を起こすだけでなく、心筋梗塞を繰り返すこともある。そこへ登場したのが、「薬剤溶出性ステント」だ。

米国で03年4月に実用化され、日本でも04年8月、実際に患者に使えるようになった。

この新型ステントには炎症を抑える働きのある免疫抑制剤「シロリムス」が塗ってあり、これが約3か月にわたってじわじわと血管の壁に溶け出し、血管内側の細胞の増殖を抑える。

ちなみに、シロリムスは約30年前にイースター島の土壌から発見された抗生物質だそうだ。臨床試験の結果、半年後の再狭窄率は、従来のステントに比べ4分の1以下の5%と激減した。

新型ステントが登場した丁度その時期、私は不整脈治療で入院していたが、爆発的需要で輸入が追いつかず、3ヶ月待ちだと言われていた。

そしてこれを機に、狭心症だけでなく、外科手術が常識だった心筋梗塞治療法も大きく変わった。この間の、経緯については、本メルマガ(下記)ttp://www.melma.com/backnumber_108241_3535670/

松山さんも、おそらくこの治療法を受けることになるだろう。心臓に十分な血液が行きわたらなくなる虚血性心疾患のなかで松山さんのケースは、まず”軽症“と言えるだろう。

だが冠動脈疾患に対する治療法は近年急速に普及してきているとはいえ、これらを合わせて虚血性心疾患といい、患者の数は国内でも推定100万人、年に7万人以上が亡くなっている。

狭心症の痛みは、胸とはかぎらない。へそより上、下顎より下、胃や歯、背中が痛いという人もいる。痛みは、抑えつけられる、締め付けられる、つまる感じ、むねやけなどの表現で訴える場合が多い。

が、痛む時間は2〜3分から20分程度までで、ここで大概の人は「ああよかった」と安心しアラームを見過ごす。20分以上痛みが続く場合は心筋梗塞を考えるというのが”常識”である。

さて、あなた、そんな経験は? 
20080626 

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