2008年07月09日

◆道頓堀「くいだおれ」閉店の教訓

    毛馬 一三 (電子雑誌「頂門の一針」7月10日号に掲載)

大阪道頓堀の老舗大衆食堂「くいだおれ」が8日夜閉店し、59年の歴史に幕を閉じた。同時に4月から巻き起こっていた、看板人形「くいだおれ太郎」とのお別れフイバーも、ひとまず終焉した。

「くいだおれ太郎」の現役最後の雄姿を一目見ておこうと、筆者も8日昼過ぎ 、持病の腰痛を押して近くまで出向いてみたが、運悪く梅雨明け直前の豪雨に見舞われて、店先まで近づけず止む無く断念、引き返してきた。

「くいだおれ」では夜9時すぎ顧客を招いた最後の宴会を終えると、店頭に女将の柿木道子会長が現れ、居残っていた黒山の人だかりの見物客に向かって、「大阪名物くいだおれは、日本一幸せな店でございました。おおきに」と言って深々と頭を下げたという。

このあと店の奥に運び込まれた「くいだおれ太郎」も、静かに下りるシャッターと共に、店の奥に姿を消したそうだ。

看板人形「くいだおれ太郎」のこれからの生き方は、まだ決まっていない。当面は近く、顧客との3泊4日の別府温泉旅行に出掛ける予定だという。

本当のところ、大阪道頓堀の老舗大衆食堂「くいだおれお別れフイバー」は、異常だった。店に来たこともない人も、俄に脚光を浴び出した看板人形「くいだおれ太郎」を一目見ようと連れだって押しかけた。

しかしこの騒ぎも、珍しさ・面白さに飛びつく大阪人の気まぐれな、一過性傾向の血のぼり気質が、たまたまこの騒ぎを後押したに過ぎない。

そんな人たちが普段から店にワンさと出向いて食事していたら、「くいだおれ」の経営は傾くこともなかったろうし、「廃業」に追い込まれることにもならなかった筈だ。

道頓堀界隈は、言葉の響きから老舗ばかりが店を連ねる旧態全体の町並みのような印象を受けるが、今や若者達の集客能力を誇るまちに変貌した。若者好みのファーストフード店、お洒落な喫茶店やケーキ屋、最先端IT機器遊技場、自在にテークアウト出来る各種店など、まち全体が魅力溢れる大規模商業区域になっている。

だから昔ながらの老舗品にこだわり、消費者志向のニーズに機敏に応えられない体質の店が取り残される運命にあるのは、時代の流れだ。老舗の「看板」だけにこだわっている店は、どこも苦闘していると聞く。

「くいだおれ」の閉店は、こうした「老舗看板」だけに依存する商売が、もはや通用しにくい教訓を残したといえる。付け加えれば、客寄せパンダに頼る時代でもなく、「味と見栄え」で真剣勝負しなければ、老舗自体も正業として成り立たないことを、この時代を生き抜くビジネスの厳しさと合わせて教えてくれているようだ。時代はここでも急変している。(了)   2008.07.09

■本稿は、全国版電子雑誌「頂門の一針」
7月10日(木)1244号に掲載されました。

<同号の目次>
・米も偽装食品なのか:内田一ノ輔
・原油の高値止まりは好機到来:寺田嘉信
・己を抑えた振舞いが美しい:加瀬英明
・「くいだおれ」閉店:毛馬一三
・ 再就職に年齢の壁:平井修一

・話 の 福 袋
・反     響
・身 辺 雑 記

◆購読申し込みは、下記のホームページで手続きして下さい。(無料)
    http://www.max.hi-ho.ne.jp/azur/ryojiro/chomon.htm



この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック