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毛馬 一三
大阪府の橋下徹知事に対する評価が大きく変わってきた。2月就任直後は、「見栄っ張りのタレント知事、目立ちたがり屋、政策ど素人、強権主義者」などとの冷ややかな見方が大勢を占めていた。ところが今や府議会関係者・府職員によると、「したたかな戦術家、バランス感覚に富んだ人材、信念の人」などと、180度位異なる「評価」へ変わってきている。
まず大阪府の歴代知事経験者を振り返ってみても、知る限りこれ程就任直後に「評価」が激変した知事は、記憶にない。なぜそんなに評価がかわったのか。
まず、知事は就任から4ヶ月目に「大阪維新プログラム」を発表すると、一気に府内43市町村や府立施設、出資法人、学校、福祉施設をくまなく視察して現場の実情を把握する精力的な行動が、府民の眼に留まったことだ。こんなボリュームとスピードをこなした知事は、過去には見当たらないからだ。
また破綻寸前の財政再建を果たすため、事業費と職員人件費削減に挑んだことだ。府職員労働組合との徹夜交渉では、自ら出席して組合人件費削減要求に一歩も譲らず、交渉は決裂という異例の事態で幕を閉じた。組合の主張に歩み寄らなかった知事は過去に例がなかった。
この強硬な軌跡が、結果的には府議会にも波及し、議論百出したとはいえ、議員報酬・政務調査費15%削減に繋がったことは否定できない。要は府議会が、知事の要請に応じた恰好だが、実際は府民に高まる知事の評価の芽生えを無視できない状況に迫られたからだ。
その府議会に対し知事は、水面下で幹部議員と接触しながら、削減策の修正に柔軟に対応する姿勢を匂わせている。その上で最終段階の議会総務委員会で、徹夜気味の33時間に亘って44議員の質疑に応じ、締めくくりに「修正させて頂きます」と議会の顔を立てた形を取って、幕引きをおこなっている。
「政策も駆け引きも“ど素人”と思っていたが、中々議会の思惑を斟酌出来る、したたかなやり手だ」と党幹部は云う。
しかも敢えて修正に応じた予算案が、与野党の反発が最も強かった私立幼稚園の運営経費への助成と、人件費の削減幅の計20億7000万円の圧縮だったことも評価を集めた。
「議会意向の強弱を巧みに感じ取るバランス感覚も兼ね備えて、先手を打ってくる戦術も心得ている」と評する幹部議員もいる。
こうした「評価」の下で、橋下知事が提出した初予算は可決した。大阪府の臨時府議会は会期末の23日午後3時からの本会議で、自民・公明の与党両党だけでなく、野党の民主党までも賛意を示し、賛成多数で可決したのだ。
修正案について与党の自民党は、「予算編成の過程を公開したことや、議会の意見を踏まえ修正した姿勢を高く評価する」とし、野党の民主党ですら「中央と地方の関係に改革の必要性を訴える知事の姿勢は我々と同じだ」と賛意を述べている。
修正案は、一般職基本給の削減当初案の4〜12%を3.5〜11.5%に緩和、また私立幼稚園の振興助成削減率を当初の5%から2.5%に引き上げた。この修正に伴い、08年度の一般会計予算規模は、削減幅を18億圧縮し、2兆9246億円となった。
とは言うのの、知事の「評価」が変わったとは云え、問題が解決したわけではない。歳出削減には一定の成果を上げたことは間違いないが、歳入を図るための具体的な経済再建策は何ら示されていない。また削減策によって低減する「府民サービス」の補完を、如何ように進めるかの道筋が見えない。
敢えて言えば、浪速文化の行く末の配慮が示されていないのにも不安が募る。筆者の拙著「ワッハ上方を作った男たち」の舞台となった上方演芸資料館が、知事が企図する通り府庁建物の片隅に移転された場合、上方演芸の貴重な資料を修学旅行生や外国からの賓客が、進んで訪れるとは思えない。浪速文化保存の衰退に繋がる恐れは十分にある。
こうした府民の不安を解消するため9月19日から開会の9月府議会では、知事が「大阪維新プログラム」の内容の検証審議を徹底的に進めたいと議会筋は言っている。その時にこそ、企業誘致や中小企業育成による歳入を軸とした府経済再生策は始め、浪速文化育成など奥の手を、知事も議会も最大限知恵を絞って欲しいのだが。(了)
2008.07.23
2008年07月24日
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