2008年08月19日

◆東京、ドクターヘリ導入せず


石岡 荘十

東京都にはドクターヘリを導入する考えのないことが、明らかになった。

8/5(火)、本メルマガで「5千フライトの検証」と題して、2007年度ドクターヘリの運用実績を分析したリポートをお届けした。
http://www.melma.com/backnumber_108241_4184663/

これについて、8/9(土)、「頂門の一針」の常連執筆者、毛馬一三氏から「石岡の原稿は、実績検証にかこつけて、東京都のケツを叩く狙いがあるのでは?」とその意図を見通した的確なご指摘を頂いた。
http://www.melma.com/backnumber_108241_4188847/

じつはその通りで、都民の1人として海外先進国並のヘリ運用を期待していたのだが、その後、関係方面に確認したところ、都はその考えを事実上、まったく持っていないことが分かった。

その根拠は---。

まず、都・福祉保険局・救急災害課の室井豊課長。「・東京には救急車の数も多く、病院も多いので都心部でドクターヘリの必要はない。

島嶼部(離れ島など)や三多摩地域については、江東区・新木場にある消防庁へリポートから医師を乗せて飛ぶので問題ない」と素っ気無い。

これに対して、元警察庁長官で、ドクターヘリの普及に努めているNPO「Hem-Net」(救急ヘリ病院ネットワーク)の国松孝次理事長は、筆者へのメールでこう答えている。

「東京消防庁はドクターヘリを導入する気は、持っていません。東京は、たしかに、救急施設も救急車も、他の道府県と比べれば、圧倒的に多く、交通網もよく整備されていますから、へり救急の必要度は、比較的低いとは言えます。

ただ、三多摩地域など、島嶼部以外でも、ヘリを使った方がよいところは、無いないわけではありません。東京消防庁は、7機も消防ヘリを持っていますから、需要はまかなっていると言っています。

ただ、問題は、消防庁のヘリは、すべてへリポート常駐で、病院に置かれているわけではありませんし、常に救急仕様でスタンバイしているわけでもありませんから、ドクターリと比べて、医師を搭乗した迅速な現場出動には難点があります。

この点を改善し、手持ちの消防へりをもっとドクターヘリ的に運用するのが、課題だと思います」。

前にも書いたが、ヘリの利点は「過疎」だけでなく「過密」をも軽々と飛び越える機能を持っていることだ。したがって、ロンドンやベルリンの状況にみられるように、欧米の先進国では「都市部だからヘリが不必要で、田園部だからヘリが必要といった議論はあまり聞かれず、必要なら、どこでもヘリを使う、その用意をしておく」という考えだ。

ドイツには、「15分ルール」というのがあり、都市部(過密地域)、田園部(過疎地域)にかかわらず、全国どこでも15分でドクターヘリが患者の元に着き、直ちに治療を開始する体制になっている。

東京ではどう見たって、江東区新木場のヘリポートに医師が駆けつけるだけで15分はかかるだろう。それから現場に飛ぶわけだから、先進国のドクターヘリに較べ、間違いなく治療着手の時間は遅くなる。その分、救命率は下がる。

なるほど、人や車が過密な都市部にヘリを降ろすためには、安全に、地上にスペースを確保しにくいという困難な問題はある。しかし、ロンドンではピカデリーサーカスにだってふわりとドクターヘリは降りる。

銀座4丁目の交差点に降ろせないはずは無い。が、こんな芸当を実現するためには、警察や消防など地上の防災・救急関係機関との緊急の際のコミュニケーションが欠かせない。

東京都の担当者は、「そんな海外のケースなど研究したことも無い」と恬として自らの無知を恥ずる気配もない。「都市部でも効果があるか、大阪の実績を見守りたい」と他人事だ。

となると、「私どもは、いまのところ、置き去りにされている『地方』を重点に、そこに見られる救急医療の『格差』を解消するための有効な手段にドクターヘリがあるではないかということを専ら主張しており、その意味では、東京は、あまり眼中にありません。

決して、東京が完璧というわけではありませんが、それより先に地方だよね、というところです」という。国松理事長にも見捨てられたようなのだ。

霞ヶ関に巣食うで日本最高の頭脳集団(?)が、鉛筆なめなめ省益を描き、政治を振り回すのも困ったものだが、消防ヘリとドクターヘリの違いも分からない地方官僚に救命救急を託している都民も、気の毒だ。

大地震の懸念も指摘されている。数十万人と予想される被災者の搬送を、地上をのろのろ走る“お猿の駕籠屋”に、東京都はお任せするつもりらしい。                     (ジャーナリスト)
        20080813


この記事へのコメント
通りすがりで失礼します。

ドイツの15分ルール、法で定めているところが素晴らしいですね。
東京は大病院がいくつもあるし、救急医療では恵まれた環境で安心かと思っていたのですが、実際には病院収容時間では全国平均32分(この数字も既に由々しき事態ですが)のところ、ダントツでワースト1の45分です。神奈川か千葉に引っ越そうかな、と最近真剣に考えております。

http://www2g.biglobe.ne.jp/~aviation/teokure.html
Posted by 通りすがり at 2008年09月28日 01:41
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