2008年09月03日

◆大阪の「教育非常事態宣言」

毛馬 一三

<本稿は、全国版メルマガ「頂門の一針」3日号に掲載されました。「頂門 の一針」のご購読手続きは、本稿末尾に掲載しています>

大阪府の橋下徹知事が1日、「教育非常事態宣言」の発令を検討するという異例の意向を示した。全国に例のないことだけに大きな波紋を投げ掛けている。

小学6年と中学3年を対象にした今回の全国学力テストで、大阪府の小中学校が都道府県別で小学校41番目、中学校45番目になるなど、前回テストに連続2回目の全国下位の低迷が、知事の決断を後押ししたものだ。

「子供が笑う」を柱とする「大阪維新プログラム」構想をブチ上げたばかりの知事にとり、学力テスト低迷の最悪現実は、予想もしなかった事柄であり、それよりも何よりも「子供が笑う」構想が、真っ先に教育分野から崩れだし、橋下府政の挫折に繋がり兼ねない危機感も加味している。

橋下知事はすぐさま動き出した。この緊急事態を改善するためには、所管する大阪府教育委員会の果たす役割が欠かせないと判断し、数次にわたって意見の調整に臨んだ。

ところが当の府教育委員会は、

i)8月26日の会合で、改善の具体案を提示しなかった。知事は「何もビジョンが感じられない。教育委員会が機能を果たしていないのではないか」と不満をあらわにした。

i)さらに9月1日会合でも、市町村ごとの成績を公表するよう求める知事要請を拒否した。その際も知事は「府教委は都合が悪くなったら逃げる」と痛烈に批判している。

この事態が、知事に「教育非常事態宣言の発令」も辞さない意向を決断させたもので、今後成績の公表について、マスコミなどを通じて府民にも訴えていく方針を示すことに繋がっている。<産経新聞>

知事の切なる提案と要請をどうして頑なに府教委は拒否したのか。府教委の腹の内には、下記のような建前を拠りどころにしていると、関係者は指摘する。

それは、<!)地方自治法第138条4、第180条5に基づき、地方公共団体に設置される行政委員会(教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員)は、 政治的中立性を確保する観点から、長の指揮監督を受けない。また、委員は、議会の同意等を経た上で選任される。

!)行政委員会は、その権限に属する事務の一部を、長と協議して、長の補助機関等に委任又は補助執行させることができる>ことになっているからである。<出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』>

しかも上記!)に明記された「長の指揮監督を受けない」という条項を駆使して、「縄張り」を最大限確保するとともに、知事の発案によって条例改正などで職務分野への侵蝕を阻む根拠を、この事例によって知らしたいとするしたたかな計算が働いているのが真意だろうと、別の関係者も指摘する。

だとすれば早い話、国の法律で担保された行政委員会の教育委員会に、知事を補助的に使うことはあっても、何をやり出すか分からない知事に教育行政を介入させないようにしたかったのが本音に近いようだ。

さらには、府下市町村や労組との関係に軋轢を作らず、従来通りの親密関係を維持したいのも、腹の内に秘められた事実だという。

しかし、この知事排除の「縄張り根性」は、早くも府民の批判を受け始めた。

知事が「教育委員会には最悪だと言いたい。これまで『大阪の教育は…』とさんざん言っておきながら、このザマは何なんだ」と府教委を厳しく批判したことに共感を寄せる府民からのメールが府庁に集中し出した。

且つ「現場の教職員と教育委員会には、今までのやり方を抜本的に改めてもらわないと困る」と注文をつけた知事への府民の賛意は多い。

こうした状況を受けてか、早速2日に府教委の対応に変化が生じた。同日府教委は知事と協議に出向き、府教委が一旦拒否していた「市町村に対してそれぞれの自治体の学力テストの結果を公表させないという方針」を変更、一転して要請する方針に切り替えたというのだ。勿論知事は理解を示している。

子供の教育に関する府民の関心は高い。政治・経済で第二の都市の座を失ったと実感している府民は、せめて小中学校の学力が伝国最低レベルから脱却させ、子供たちの学力を向上させれば、大阪の将来は期待できるというのだ。

「教育非常事態宣言」の発令があれば、府民は挙って喝采を送るだろ。そうなれば府教委の「縄張り根性」と「閉鎖性」も自然と解消され、子供たちの学力向上に繋げる知事とのタグマッチもいい方向に向かっていくのではないだろうか。(了)2008.09.02

◆メイル・マガジン「頂門の一針」1303号  平成20年9月3日(水)

<1303号・目次>
・清和会は静観の構え:古澤 襄
・特派員電が偏るわけ:渡部亮次郎
・大阪の「教育非常事態宣言」:毛馬一三
・「日暮硯」松代藩の財政再建(1): 翻訳:平井修一
・息子をドイツの徴兵に送って(11):永冶ベックマン啓子

・話 の 福 袋
・反     響
・身 辺 雑 記
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  http://www.max.hi-ho.ne.jp/azur/ryojiro/chomon.htm
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