2008年12月05日

◆巴里だより 生牡蠣を食す

               岩本宏紀(在仏) 

Rの月はOK, Rのつかない月はだめと言われる食べ物、それは生牡蠣。つまりMay, June, July, Augustは避けよという意味だ。本当かどうか、10年前にレストランで尋ねたことがある。

「それは昔のはなしですよ。冷蔵技術とトラック輸送が発達した今では、一年中大丈夫。うちは15年以上やっていますが、問題を起こしたことは一度もありませんから、ご心配なく」との答えだった。

とは言うものの、やはりコートの襟を無意識に立てる頃にこそ、生牡蠣は食べたくなる。

急に気温が下がった11月なかば、1年前に行った店を思い出し、無性に生牡蠣が恋しくなった。

その店は巴里のど真ん中、マルシェ・サントノレのすぐそば。右半分が牡蠣や魚の売り場、左半分にテーブルがある小さなレストランだ。

ここにはエムロード(émeraude)という種類がある。身の一部がエメラルドグリーンをしている、他の店では見たことの無い逸品だ。これは後回しにしなければいけない。はじめに食べると他の牡蠣を食べても感激がなくなるからだ。

今年も迷わずこれを注文した。違う種類の牡蠣、殻に入ったうにも追加して飲み物はサンセールの白。満ち足りた冬の昼食だった。

巴里の冬は朝8時半まで暗く、夕方4時半には薄暗くなり、気分も沈みがち。反面、海の幸や鹿、兎、猪、雉といった野生動物が旨い季節でもある。うまくバランスがとれているなあとつくづく感心する。

◆添付画像 : エムロードを出す生牡蠣レストラン。 巴里売り場とテーブルが隣り合わせなので、指差して注文することもできる。

2008.11.22KakiAR.jpg 
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