2009年01月21日

◆「山科」に住んで36年

渡邊好造

私が、京都市山科に定住してからこれまでに36年になる。

京都市山科区は、昭和51年に東山区から分区し、今では人口13万人、東山区の約2倍。南は伏見区の住宅地、北には左京区大文字山の山並みがあり、西は東山連峰に囲まれている。

ところが、東には滋賀県大津市の市街地が複雑に入り組んでおり、これがややこしい問題を醸し出している。

県庁所在都市同士が接しているのは、この京都市と大津市の他、山形県山形市と宮城県仙台市の例があるだけだ。山形市と仙台市は、仙台市が2つの町村を昭和62〜63年に編入し、ピッタリ接することになった。その境界には蔵王国定公園の山脈がそびえている。

その点、京都市は、大津市との間に山科区、左京区、伏見区の3区が当初から接しており、左京区と伏見区の間には山がある。

ところが山科区だけは、百人一首にも登場する「逢坂の関」の峠を西に越えれば、大津市の住宅が迫っている。混在している、といった方がいいかもしれない。

私が冒頭に「京都山科区」に住んで、とはせず「山科」としたのは、京都の経済圏ではあっても、実は私の住所表示は大津市だったからである。

だから私自身は、ややこしいトラブルは巻き込まれていないが、境界線上付近にある住居はややこしい。道路を挟んだ向かい隣が京都山科区のところもあれば、一軒家の真ん中に県境の境界線があったり(もちろん線が表示して在る訳はないが)しないため、同家では自宅電話を京都と大津の2通りの市外番号を備えている。

ところでこうした大津市の「飛び込み地」に、大津市役所の出張所、消防分団、警察派出所、それに立派な小学校までがある。大津市の都市ガスは、ガス供給公社がおこなっているが、飛び地の大津市は京都市に委託し、大阪ガスが配給とメンテナンスを請け負っている。上水道も京都市の水道局が肩代わりし、相互の協力関係は完全にできていた。

余談だが 山科区が東山区から分区した頃、先の境界線辺りのカワラ工場で火災が発生した。真っ先に駆けつけたのは山科の消防署の消防車だったが、出火元が大津市地区だったため、「ここは、大津や!」と叫ぶや否や、消火活動をせずに帰ってしまった。

境界は川も山もなんの目印もなく、当時として引き上げたのは仕方がなかった。怪我人もなく大事にいたらなかったものの、大津市で大問題になり、その後は規則が改正された。

また境界線の入り組んだ所の山科区に、「小金塚」という地域がある。JRの山科駅から大津駅に向かうトンネルの入り口の北側に位置し、ここは山科区と大津市がもっとも輻輳した住宅地で、山科区が大津市へデベソをたれ下げたようになっている。

住所が山科区であっても、大津市の道路をいったん通らないとバスも乗れない、電車にも乗れない地区である。ここから大津市立小学校だと約10分で行けるが、山科区の京都市立小学校へ行こうものなら40分位かかる。見かねた大津市は、近くの小学校に通えるよう山科区「小金塚」を大津市に編入し、子供たちの便宜を図ろうとした。

ところが、この編入問題は「小金塚」地域父兄の大反対運動に発展し、立ち消えになってしまった。大津市に編入されると、地価が半分以下になるというのが、「小金塚」地域の本音だったのである。

大阪生まれ、大阪育ちの私が昭和46年にここに土地を購入した時の坪単価は、山科エリアの大津市で7万円、「小金塚」の山科区ではより不便でありながら15万円もした。今もこの単価差は変わらないらしい。

子供の通学の便利さなどよりも、大切なのは資産価値、イメージ、プライドだという、利害に絡んだ思惑が今も生きているからである。とは云え、高等学校は京都府立よりも滋賀県立の方が進学校として優秀ということで、同地域の父兄の中には歯軋りした人もいたらしい。勝手なものだ。

私は、平成5年に山科区御陵駅(地下鉄東西線)の北側に移転し、今日に至っている。

この山科区と大津市とのややこしい「行政上の歪み」について意識し出したのは、移転後のことである。日本にはこの種の地域は山ほどあるだろうが、その歪みや不合理に気付くのは、何故かそこから離れてみないと分からないものだ。

歴史的な名所旧跡が散在する山科にも、案外新鮮で、面白い話題が山積する。(完)


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