2009年03月06日

◆襲来!糖尿病との闘い

渡部 亮次郎

世界保健機関(WHO)によると、2006年の時点で世界には少なくとも1億7100万人の糖尿病患者がいたという。患者数は急増し続けており、2030年までにこの数は倍増すると推定されている(「ウィキペディア」)。

患者は先進国ほど(2型=中年発症型)の)患者数が多い。もっとも増加率の高い地域はアジアとアフリカになるとみられており、2030年までに患者数が最多になると考えられている。

発展途上国の糖尿病は、都市化とライフスタイルの変化にともなって増加する傾向があり、食生活の「西欧化」と関連している可能性がある。

このことから糖尿病には(食事など)環境の変化が大きくかかわってくると考えられているが、詳しいメカニズムはまだわかっていない。

先進国において、糖尿病は 十大(あるいは五大)疾病となっており、他の国でもその影響は増加しつつある。2005年には、米国だけでおよそ2080万人の糖尿病患者がいた。全米糖尿病協会(American DiabetesAssociation)によると、その上に620万人の人々がまだ診断を受けておらず、糖尿病予備軍は4100万人に達する。

日本国内の患者数は、この40年間で約3万人から700万人程度にまで膨れ上がってきており、境界型糖尿病(糖尿病予備軍)を含めると2000万人に及ぶとも言われる。

クルマ社会になって歩かなくなった。せめて1日1万歩というが、成人男性平均7575歩、女性6821歩である。食べ物はいつでもどこの国からでも手に入るような「飽食の時代」になって、男性の24・3%、女性の25・2%が「肥満」だ。戦中、戦後の生活苦の時代には患者「0」だった。名前すら聞いたことが無かった。

健康診断で糖尿病の「け」があるといわれて、それではと本格的に対策に取り組む人は男性で74・2%,女性75・0%。残りはある日突然、発症して「後の祭り」となる。

知り合いの50代の主婦は、「恥かしい」と隠したまま、何の手も打たなかったため、腎臓がすっかり駄目になり、突然、1日置きの人工透析通いになって間もなく死んでしまった。早くに医者に診せ、インスリン注射をしていれば、普通の人と全く同じにすごせるのに。

田中角栄は扇子を冬でもバタバタやる暑がりだった。「これはバセドーでね、心身機能亢進症でね」といい、世間もそう思っていたが、実は退陣後、脳梗塞になってみればそれは糖尿病が主たる原因だった、とばれた。

大平正芳は首相在任中、福田赳夫の仕掛けた造反で強烈なストレスに見舞われ、結果、心筋梗塞で急死した。大変な甘党で糖尿病だった。御巫(みかなぎ)という主治医の兄弟が外交官で「大平さんは患者としては最低だとこぼしている」と聞いていた。

診療に来ない、食事制限を守らない。糖尿病を放置すると、クルマのガソリンに砂糖を混ぜたのと同じ現象が体内に起こり、血管という血管が内部から腐るように弱くなる。

内部で崩れたゴミ(血栓)が頭に行けば脳梗塞、心臓に行けば心筋梗塞となる。先ほどの女性の腎臓は死んだようになり、機能しなくなったのだ。尿を造れないから血液を人工的に濾過するしかないわけだ。半日がかりを1日置き。

昔、日本経済新聞の政治部長から代議士になり幹事長にもなった傑物に田中六助という人が居た。ある日、衆議院本会議場での代表質問に登壇したのはいいが、原稿の文字が10センチ角の大きさだったので、満場静まりかえった。

彼は糖尿病を放置したために目の奥の眼底に出血を起こし、視力を失いかけていたのである。出血すれば、カメラで言えばフィルムに相当する網膜が血に遮られるから良く見えなくなる。外見上は他人には分からない。田中六助は間もなくして死んだ。

伊東正義。大平内閣の官房長官だった。大平が急死したとき総理大臣臨時代理を務めた。当然後継総理に指名されると思ったろうが、政局の主導権を握る角栄が指名したのは鈴木善幸。外人記者たちが「ゼンコウ Who?」といった話は有名だ。

鈴木は同じ大平派ながらいけ好かない宮沢喜一を官房長官、伊東を外務大臣にしてスタートしたが、翌年5月の訪米でミソをつけた。共同声明に朝日新聞が「軍事同盟を約束して来た」と噛み付いた。

ところが総理は「レーガン大統領とはそんな話はしていない」と外務省事務方を非難。「ゼンコウ如きに総理が勤まってたまるかい」とかねて鈴木をバカにしていた伊東はさっさと辞職。

それから何年かして竹下登総理がリクルート事件への関与が明らかになって辞任したとき、伊東に今度こそお鉢が回った。ところが「健康に自信がない」と断わった。何を隠そう、伊東は若いときから大糖尿病であり、心臓に合併症を患っていたのを隠しとおしてきたのだった。

伊東が外相を辞めたとき、後任に指名されたのは厚生大臣をしていた園田直(すなお)で、秘書官が私だった。実は園田も糖尿病を30代から患っておりながら秘匿していた。既にインスリン注射をし続けなければならないのに注射が大の苦手だったのだ。

わが国最古の糖尿病患者で記録に残っている人物は平安時代の貴族藤原道長(966〜1028である。「この世をばわが世とぞ思う 望月の欠けたることの無しと思へば」と詠んだあの人で、喉の渇きが酷く多量の水を飲んだと記録されていることから記録上第1号にされた。それでも当時としては驚異的長命、62歳まで生きた。食事を制限したのかも知れない。

インスリンが発見されるまで洋の東西を問わず糖尿病で死ぬ人は絶えなかった。喉が渇き、痩せて死んだ。それを阻んだのがインスリンだが、カナダで発見されてまだ85年しか経っていない。

29歳の田舎外科医バンティングと22歳の優秀な学生ベストによって発見された。これで人類は救われた。しかも純度は高くなり、今では即効性に優れたもの、長く効き目が長く持続するものなど開発された。

問題は糖尿病は痛くも痒くも無いものだから、気付かない。気付いても治療を怠り、結果、急に死を招く人が多いということだ。

我々が食べて有用なものは全てが糖になる。それに膵臓のランゲルハンス島という部位から分泌するインスリンという酵素が加わって血となり肉となる。だが遺伝や不摂生で、インスリンが十分に出なくなる人が居る。すると消費されない糖分は尿に混じって排出される。糖尿病といわれる所以だ。

子供の時からなるのは1型でインスリンが全く分泌しないから、インスリンを子供の時から注射する以外にない。中年になってかかるのは2型。遺伝、肥満、運動不足、暴飲暴食から発症する。

発症してしまうと今の医学では絶対治らない。初めのうちは薬を飲んで膵臓を激励する。やがて膵臓もギブアップして注射と言うことになる。

前後するが、インスリンは胃酸で無効になるから服用(丸薬など)では駄目で、今のところは注射が一番。アメリカで最近、鼻から吸入する研究が完成したとのニュースがあったが、まだ日本には普及してない。

インスリンが発見されてからと言うもの、人類は糖尿病そのものでは殆ど死ななくなった。しかし甘すぎる血のまま(治療を怠る)でいると腎臓が機能を失ったり(腎不全)、心臓の筋肉が腐ったり(心筋梗塞)、脳への血管を塞がれたり(脳梗塞)、失明したりという「合併症」で死ぬことが猛烈増えてきているわけだ。

足の先へ血が通わなくなれば壊疽を起こし足を切断しなければならなくなる。歌手の村田英雄だそうだった。あらゆる癌にも普通の人の何倍もかかりやすい。

ただ、何度も言うように糖尿病そのものは痛くも痒くも無いために、分かったときは既に手遅れと言う例が増えているわけだ。なんとも厄介な病気なのだ。知らないで居ると平均寿命よりは10年早く死ぬ、とされている。

私が秘書官として仕えた園田直外務大臣は、そのあと2度目の厚生大臣をやったとき、患者団体の永年の念願だったインスリンの「自己注射」をたちどころに許可して患者たちを喜ばせた。

役人や医者たちは「器具が無いから危険」として許可して来なかったのだ。だけど園田大臣は「許可すればメーカーはすぐ便利な器具を作るよ」と許可した。1985年ごろから、予想通りペン型注入器がすぐ出来、使い捨ての針は今や0・20mmが登場した。殆ど痛くなくなった。日本が世界一を造った。

しかし園田直はどうしても注射が嫌いと医者から逃げ回り、3度目の外務大臣を辞めてすぐ人工透析。それも厭がったものだから失明の上、腎不全で、「わずか」70で死んでしまった。4月2日が命日である。1984年のことだった。
(文中敬称略)


参考:普通の人がインスリン注射をすると、量が多ければ死ぬ。途中で救助されても植物人間になる。それを実証する事件が千葉県で起きた。夕刊フジ2006年3月14日付から

<鬼嫁 夫「殺されるかも」「妻が家の金を使う」とも インスリン事件1カ月前に周囲に漏らす

千葉県光町の農業、鈴木茂さん(54)が鬼嫁に糖尿病治療用のインスリンを大量に投与されて意識不明に陥った事件で、鈴木さんが「殺されるかも」「もし自分が死ぬようなことがあれば解剖してほしい」などと周囲に話していたことが13日、分かった。

千葉県警捜査1課では、鈴木さんが殺人未遂容疑で再逮捕された中国出身の妻、詩織容疑者(33)の計画的な犯行を裏付ける証言とみている。

これまでの調べによると、詩織容疑者は平成16年4月、共犯として再逮捕された女(41)=別の詐欺罪で起訴=からもらったインスリンを、糖尿病ではない鈴木さんに自宅で大量に注射し、殺害しようとした疑い。

鈴木さんは低血糖による脳障害で現在も意識不明の重体が続いている。 鈴木さんは15年10月、自宅で鍋に入れた熱湯を背中などにかけられ、一時重体に陥った。

関係者によると、鈴木さんはこのころから何者かに狙われていると知人に訴えており、インスリン事件の約1カ月前の16年3月ごろに開かれた地元の会合では、「殺されるかも」と周囲に話していたという。また、「妻が家の金を使ってしまう」などとも漏らしていた。

鈴木さんには詩織容疑者を受取人とする千数百万円の生命保険がかけられているが、不審な点が多いことから保険金は支払われていない。> ZAKZAK 2006/03/13  2009・02・27

この記事へのコメント
最近ではマゴット(医療用無菌ウジ)セラピーとはいう糖尿病壊疽をはじめとする難治性創傷にハエの幼虫(ウジ)を使う新たな治療法があるようですね。
Posted by 吉田 at 2009年03月06日 09:58
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