2009年03月07日

◆整形外科治療の光と影 (その2)

                    小池達也

前回、無作為化あるいは二重盲験試験が重要だという話をしましたが、その実例を二つ示します。

みなさん、緑黄色野菜が健康に良いというのはよくご存じでしょう。

これは、緑黄色野菜をたくさん食べている人に癌が少ないという横断分析(ある時期にいっせいに集団を調べる研究方法)やコホート研究(ある集団を癌が発生するまで観察するやり方)により証明されています。

そして、緑黄色野菜にはべータカロチンが多く含まれており、癌患者さんの血液中のベータカロチン量は少ないことも報告されています。

すると、ベータカロチンを摂れば、癌にならないのではないかと誰でも考えます。誰でもは考えないかもしれませんが、医者は考えます。

そして、大規模無作為化試験が行われました。結果は驚くべきもので、ベータカロチンを服用した人の方に癌の発生が多かったのです。対象者の選定や投与方法に問題があったかもしれませんが、少なくともベータカロチンだけを服用しても癌を抑制することは出来なかったわけです。
 
もう一つの例は、小さな出来事から始まりました。1996年に、パーカーという自閉症の子供が居たのですが、彼は慢性の下痢を患っていました。お母さんが病院へ連れて行ったところ、セクレチン(消化に関係するホルモン)テストという検査をされました。

自宅に帰ると、いつもよりパーカーの調子がよい。つまり、自閉症の症状が軽くなっていることに気づきました。今日したことはセクレチンテストしかなかったので、これが効いたのではないかと母親は考えました。そして、口コミで広まり、多くの自閉症の子供がセクレチン注射を受け、さらに噂は広まりました。

効果が証明されてない薬(本来検査薬)が治療に使われているのは良くないので、臨床試験が組まれました。そしてようやく、1999年に無作為化試験の結果が有名な雑誌に発表されました。自閉症の子供を2群に分け、一方にはセクレチンを注射し、もう一方には生理食塩水(つまり水)を静注します。

その後、4週間にわたり自閉症の症状がどう変化するかを記録しました。セクレチン投与を受けた子供たちは、当日から調子が良くなり4週間目でもまだ症状の軽減が認められました。

ところが、生理食塩水を投与された子供たちは、なんと症状がもっと良くなりました。結論はセクレチンは自閉症に効果無しでした。このように、きちんとした臨床試験で効果が証明されていないものは、安易に使わない方が良いでしょうね。

さらに、この話には後日談があります。この研究を実施した研究者が、参加してくれた子供たちの親に結果を説明したにもかかわらず、半分以上の親は自分の子供にセクレチンを投与することを望んだとのことです。
 
その後、2004年までに12の同様の無作為化試験が行われましたが、結果はすべて同じでした。

(大阪市立大学大学院医学研究科リウマチ外科学 助教授)<おおさかシニアネットから転載>





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