2009年03月09日

◆大阪府「新都心移転構想」は頓挫?

毛馬一三

大阪府の橋下徹知事が、就任2年目を迎えて初の苦境に直面している。

橋下知事が、政治生命を賭けて取り組むとまで宣言して2月定例大阪府議会に提案した「府庁舎移転条例改正案」が、議会各会派の強い反発を受け議決される見通しが立たなくなってきたからだ。

府庁舎移転条例改正案とは、大阪南港にある大阪市の第3セクター・WTC(大阪ワールドトレードセンタービルディング・高さ256.0m、階数55階・地下3階、延べ面積150.000uの日本第3位の超高層ビル)を、大阪市から買取り、そこに大阪府庁舎を移転するというもの。

この超高層ビルへの移転により、周辺のベイエリアを行政機能と絡ませて「人、モノ、情報が行き交う関西のビジネス交流戦略拠点」とすると共に、ベイエリアをアジアの一大物流拠点とする国の事業とも連動させながら、「新都心」創造を目指していくというのが主軸だ。

この移転構想に関連し、大阪府はこの移転が実現すると、経済波及効果は7,802億円になるという、府関連研究所の試算を既に明らかにしている。

橋下知事は、この条例改正案とともに、WTCの購入費として約103億円を盛り込んだ補正予算案も提出した。これについて橋下知事は、冒頭の府政方針演説で、「この移転構想こそが大阪から時代を動かすことの象徴」と強調、併せて「この一点(WTC移転)が崩れると、すべてが崩れる」と訴えた。

ところが府議会各会派は、同移転案は「ことごとく破綻し、大阪市が撤回したはずの臨海部開発計画の“焼き直し“に過ぎない」と一斉に反発。更にはベイエリアに新都市機能を創生し、大阪経済を活性化させる肝腎なビジョンが欠落、安全性・経済波及効果もズサンだとして、移転には同意できないとの空気が急速に高まっている。

一方、まちづくり、防災などの専門家からも、疑問の意見が相次いでいる。
<問題なのは、府市が共同で発表した都市構想案が非常に時代遅れなことだ。この構想案を読むと、関西空港の時とほとんど同じように、移転すれば周りにコンベンション施設ができるとか、情報発信できるとなどとしているが、そんなこと全く関係ない。

都市構想は本来、時間をかけて、今の大阪に何が欠けていて、大阪を何で再生させていくのかを分析して、そのために何が必要かを考えないといけない。そこから物事を考えないと、時代遅れそのものだ>。(まちづくりプランナー・高田昇さん)

また防災についても、<WTCのある人工島が大規模災害時には陸の孤島になる」とした上で、防災上は長所より欠点の方が多いので移転は止めるべきだと指摘する>。(京都大防災研究所河田恵昭教授)

時期は前後するが、過去犬猿の間柄だった府知事と市長が、民間出身同士で親密になったことから、両者間で異例の共同鑑定を行い、売買価格の調整をしたことが明らかになったことで、常識では考えられない「出来レース」だと批判があったことも、議会開会と共に改めて批判の俎上に上った。

更に、ここに来て新たな火種が芽生えた。平松大阪市長が5日の記者会見で、「府議会が今議会で結論を出さなければ、3月末を超えて府との協議が続くことはない。WTC売却は白紙にする」と発言したのだ。

これには府議会各会派は面白くない。本来大阪ベイエリアの整備と、周辺の都市整備は政令都市の大阪市に課せられた責務であって、大阪府議会にその帰趨と責任を委ねるのは筋違いも甚だしいという反発だ。知事与党会派の幹部は、こう反論する。

<WTCへの移転構想は、本来、大阪市が都市構想などを明確にし、その上で大阪府に庁舎移転を持ちかけてくるのが筋だ。市長は何か勘違いしているのではないか。橋下知事自身が大阪市に、早く結論を出さなければ打ち切るというのなら話は通るが、話が逆転している>
と、府議会に責任を負わせる市長発言を痛烈に批判する。

<大阪市がやらないなら大阪府がやろう、大阪府が大阪市に取って代わるとかいうことではなく、大阪市が主導的役割を果たしながら、大阪府が後押しをする。これが出来てこそ、知事の言う「歴史上かつてない新たな関係」が生まれるのではないか>
と、同与党幹部は、在るべき大阪府の立場を強調する。

いずれにしても、WTC移転による「新都心構想」に対する府議会各会派の反対の姿勢が収まる気配は無い。この条例改正案を議決するには112の定数の3分の2の賛成が必要だが、議会関係者によると、賛成は多く見ても50人前後。3分の2には満たない情勢だ。

となると橋下知事の悲願は、余程の変化が無い限り、頓挫するという公算が強まっている。

つまり移転案が議決されないと、府がWTCビルを買い取ることができなくなる。そうなれば、大阪市のシミュレーションでは、WTCはこの9月に2次破綻を迎えることは変わらない。(了)2009.03.09


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