〜 巴里のレストランのマダム〜
岩本宏紀(在仏)
床屋ではなにかと話題が飛ぶ。
シラク大統領、親日家、相撲と発展したのか、貴乃花の話題になった。
10年近くぼくの髪を切ってもらっているE子さんは、巴里で彼の髷(まげ)を結ったことがあるという。相撲取りとしは小柄な貴乃花も、近くで見ると堂々たる体躯。ところが、椅子から立ち上がる動作が実に軽やかで、まったく体重を感じさせなかったそうだ。
2004年の6月、巴里でサルサの世界大会があった。数年来このダンスにのめりこんでいる長女は、わざわざそれだけのために東京からやって来た。有名な先生の公開レッスンに参加したり、先生だけが踊るステージを見たりの4泊5日だった。
巴里最後の日、空港へ送って行く前に、ぼくがときどき昼ごはんを食べるレストランへ連れて行った。
注文を取りに来た店のマダムに、サルサ娘を紹介したあと、以前から気になっていたことを思い切ってきいてみた。
「あなたのスタイルと身体の柔らかさ、なによりも軽い動きを見て、きっとバレリーナに違いないと思っているのですが、、、」
ちょっと驚いたふうのマダムは、こう答えた。
「実はモダンバレエを踊っていました。でも店と子どものことが忙しくて、今は全然時間がとれなくて。」
当たらずと雖も遠からず。鍛えた体は美しい。
娘とふたり、「ふーん。」と納得したのだった。(完)
2009年03月14日
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