2009年05月26日

◆生まれながらの死刑囚


                    渡部亮次郎

フランスの哲学者パスカルが「人間は考える葦である」と言ったとは知っていたが、(だから)「人間は生まれながらの死刑囚である」とも言っているとは知らなかった。『週刊新潮』5月28日号P 67に東大病院放射線科準教授中川恵一氏が「がんの練習帳」で書いている。

人間で死なない人間は居ない。生まれれば必ず死ぬのだから、「生まれながらの死刑囚」といわれても否定はできない。畏友小野善邦君も、言い方は悪いが癌により24日「処刑」されてしまった。

私がメルマガ『頂門の一針』で取り上げた「島ゲジ評伝」の著者小野善邦君である。以下< >内は島ゲジの秘書だった山下頼充さん(昔、NHKでは「五つ子のパパ」として有名だった)からのFAXによる。

<小野さんは数年前から肝臓癌を発症し、東京女子医大病院で癌が見つかる度に患部を焼切るという治療を続け、入退院を繰り返していました>

そうした苦しい中で、縁の全く無かった大来佐武郎氏(外務大臣)の評伝を日経新聞社から上梓した。当然、出版記念会に加わったが、その時初めて「発症」を当人から打ち明けられたのだった。

その後も入退院を繰り返していたが、

<島桂次氏とNHK同期入社の玉木存氏から「島の実像をあるがままに描いて欲しい」と依頼を受けて「評伝」の取材を始めた>。

島氏は自伝は残したが、NHK会長の辞任が異常な形だった事もあって、彼の実績やNHK改革の理想を記録した「評伝」は皆無である。玉木氏はそれを残念がり、島氏の周辺に長くいた小野君が適役と見て執筆を依頼したものらしい。

<入退院の合間を縫って100人近い政治家・マスコミ関係者などにインタビューしたり資料収集したり、当に命を削りながらの取材、執筆活動を続けました>

私はNHKで島氏と同じコースを歩いた。初任地仙台、下り線に乗っての万歳見送りで岩手県盛岡へ。放送部は瓦葺きの平屋だった。

島氏は暴れ者。局長も部長も持て余して東京に引き取ってもらったと言う。政経部で政治記者を始め、池田勇人攻略の伝説を遺した。

私は盛岡に4年いて、東京政経部(後にすぐ政治部、経済部に分割、私は政治部所属となる。島氏は外務省(霞クラブ)キャップ、私は総理官邸クラブの初年兵で小さくなっていたが、間もなく自民党実力者河野一郎担当となった。

当時、河野は東京オリムピックと日韓国交正常化の担当の無任所大臣。日韓交渉で外務省キャップの島氏との接点ができた。その事は別に書いたから省略。小野君は拙宅へ取材に来た。

<小野さんは島さんの13回忌には間に合わせたいと言う計画だったが入退院のため完成は2年遅れました。しかし政治に翻弄され続けるNHKの自立のため、島さんが目指したもの、そのビジョンや想い、足跡を元社会部記者らしい鋭い視点と丁寧な取材で纏めあげました。

2年2ヶ月、会長秘書として私が身近で感じていたことや知らなかったことなど島さんの人物像まで見事に浮き彫りにした力作になりました>

『本気で巨大メディアを変えよう賭した男 異色NHK会長「シマゲジ」・改革なくして生存無し』(現代書館 2300円+税で発売中。
ISBN978―4―7684―5607−1)

<評伝が完成し、取材先や知人など著者献本先の手配を終えて大型連休明けの5月11日に確か14回目の入院。「今回はパンパンになった腹の腹水を抜くので、3〜4週間はかかりそうだ」と電話で話して入院されました。

入院後は、メールや電話で「評伝」の反響を気にしながら「今日は2リットル腹水を抜いたが、横になっていないと辛い」と珍しく弱音を吐いたので心配していたのですが、こんなにも早く最悪の事態を迎え、呆然としております。

小野さんは島さんの功罪共に触れながらも、この十数年、低迷と混乱を続けるNHKへの厳しい指摘も多いだけに、特にNHK関係者の反響を気にしていましたが、「渡部さんが、きちんと取材し、島の姿を実によく描いていると高く評価しておられますよ」と伝えたところ「渡部さんは島さんのことを分かってくれていたんだ」と喜んでおられました>2009・05・26

◆ 訃報

小野 善邦 さん ご逝去

元NHK広報室長 小野善邦さんは病気療養中でありましたが、平成21年5月24日(日)午前2時23分逝去されました。謹んで心からお悔やみ申し上げます。小野さんが近著「本気で巨大メディアを代えようとした男」を贈呈された方々に取り急ぎご連絡させて頂きます。

ご葬儀は下記の通り執り行われます。

通 夜 5月27日(水)午後6時から
葬 儀 5月28日(木)午前11時から
喪 主 小谷 瑞枝 様 (長女)  03-3444-4371
葬儀場 練馬区練馬3―22―6
千代田豊島園会館(03-3991―2234)



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