2009年07月04日
◆なぜ高い日本の医療機器
石岡 荘十
薬事法上、医療機器はそのリスクに応じて3つに分類されている。まず、高度管理医療機器。 副作用や機能に障害が起きたとき、まかり間違えば人の命や健康に重大な影響を与える恐れがあるもの。
例えば、透析器、人工骨、人工呼吸器、PTCAカテーテル、ペースメーカなど(PTCAカテーテルは、狭心症や心筋梗塞を治療するための管)。
次に管理療養機器。前項以外の機器で、やはり副作用や機能に障害が起きたとき、それほどではないが患者の命や健康に重大な影響を与える恐れがあるもの。
たとえば、MRI、腹腔鏡、電子式血圧計など。MRIは、日本語では「磁気共鳴画像診断装置」といわれ、強力な磁場や電波で脳や体を輪切りにした画像を撮影する大型の検査機器。
よく似た機能を持つものにCTがあるが、MRIはCTに比べタテ・ヨコ・ナナメなど断面を自由に設定できるなどの利点がある)。
さらに、一般医療機器。副作用や障害が起きても直ちに人命や健康に影響を与える恐れのないもの(聴診器など体外診断用機器、X線フィルムなど)。
これらの機器のうち、ペースメーカ、PTCAカテーテル、MRI、腹腔鏡の4つについて、公正取引委員会が05年12月、詳細な実態調査を行なっている。
それによると、まずペースメーカは100パーセント輸入。メーカーは欧米の10社程度で、04年の日本国内での販売個数は47,460個。その市場規模は465億円だった。
ペースメーカは機能的には8つに区分され、国内価格は、116万円から185.2万円となっている。
ところが、たとえば国内で133万円のものがアメリカでは83万円余と、日本の価格はアメリカの1.6倍である。日本で148万円のものはアメリカで95万円、これまた1.6倍という価格差となっている。
実態調査報告書の翌年06年、保険適用が承認された最新型InSync3マーキー(419万円)の価格差は多少圧縮されて1.27といわれている。それでもこの比率で換算すると、アメリカでは330万円で売られている計算になる。その価格差は90万円である。
ことほど左様にPTCAカテーテルの場合の内外価格差はさらに大きく、2倍以上。
ペースメーカとカテーテルの価格差が大きいのは、国内の多すぎる医療機関の数に関係があるといわれている。
ペースメーカの植込み治療を行なっている病院は、人口比でいうと日本はアメリカの4倍。アメリカは大型集約型、日本は中小分散型で、日本では膨大な流通経費がかかる。
その差は5600億円(05年)と試算されている。これが機器の価格、ひいては医療費に上乗せされている。
ところが、である。
MRIの平均販売価格の対アメリカ比は0.75と、日本のほうが安いのだ。これはどうしたわけか。理由は2つ。
・国産のMRIのシェアが大きいこと
・販売台数の6割はメーカーが直接、医療機関に納品するため流通経費がかからないこと
普及率は60パーセントで世界一。海外でも売れている。メーカーによる売り込み競争は熾烈で、値崩れが起きている。業界では「半値の8掛け」といわれている。
そんなに優れた技術力があるのなら、技術的には遥かに簡単なペースメーカやカテーテルくらい国産で賄ったらよさそうなものだと思うかもしれないが、ほとんどが輸入品である。なぜか。
長年、医療機器の営業に携わっているセールスマン(ME:MedicalEngineerという)はこう言う。
「国民性ですかねぇ。医療機器の中でも、副作用や故障が起きたとき直接患者の命にかかわる高度管理医療機器については、いざというときには膨大な賠償や製品のリコールを覚悟しなくてはならない。
MRIやCTは検査機器ですから、まず命に関わるようなことは考えられないので、複数のメーカーが作っています。ペースメーカやカテーテルは1歩間違うと、訴えられて会社がつぶれてしまいます。
欧米のメーカーはそのリスクを乗り越えて、開発にしのぎを削っています。医療機器の内外価格差は、リスク回避の代償といえます」
「危ないことはごめん」
自分では作らないが危ないところは他所さんにお願いする。技術力があっても自分では作らないのは核と航空機と医療機器だ。
アメリカの核の傘で守られ、カネだけは出すという構図にどこか似てないか。
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国内メーカーが開発できない背景には、厚生労働省の認可という(FDAに比べても)異常に高いハードルと、それによる開発費用の負担も一因です。
また、体内埋め込み医療機器とMRIとでは全く違う技術(と承認基準)が要求されるので、片方の技術があるからといってもう一方を作ることは簡単にできません。