2009年07月12日

◆舛添厚労相の2年(下)





                   石岡 荘十

6/26、舛添厚労相は、閣議後記者会見で、何の前触れもなく、幹部人事の異動方針を発表した。事務次官と社会保険庁長官の2人が退任するほか、医系技官の指定ポストだった医政局長に事務官である阿曽沼慎司・社会・援護局長が就くなど大規模なものになる。

舛添氏は「技官の聖域をなくして風通しをよくする」と短く述べたが、この異動にはバックグラウンドの説明が必要だ。

厚労省には大きく分けて、医師免許を持った医系技官と事務系の文官が在籍する。このうち医系技官は250人が在籍している。彼らが医師の定員を決め、診療単価を提案し、制度設計をし、33兆円にのぼる医療費をどう配分するか、新型インフルエンザのガイドライン(行動計画)をどう
作文するかなど、国民の健康と生命を左右する重要な政策を担っている。

http://www.melma.com/backnumber_108241_4480390/

医系技官のトップはツインピークス。医政局長と健康局長で、医系技官はこの2つの頂、指定ポストを目指す。大雑把に言うと、医政局は医療制度全般の設計、健康局は医療現場のコントロール。因みに、今回の新型インフルエンザ対策は、健康局結核感染症課の所管である。

異動の狙いは、この医系技官指定ポストだったその医政局長をはずして保険局長(旧労働省所管)に横滑りさせ、空いた医政局長に畑違いの事務屋で、医療については素人の社会・援護局長(旧労働省所管)を持ってきたことだ。

医官と事務系文官の入れ替え、人材交流といえば聞こえはいいが、時期的に見て、一連の新型インフルエンザ騒動が一服したところで、自分の任期も勘案しながら、かねてから胸に秘めていた人事発表に踏み切ったのだろう。新型インフルエンザ騒動は異動のトリガーに過ぎない。

医政局の守備範囲は幅広く、救急医療や産科医療の問題をはじめとする医療提供体制から、医療計画、医療安全。また、医師、歯科医師、看護師などの各種免許の付与・取消、臨床研修などの制度設計、行政処分なども担う。

医政局長のさじ加減一つで、日本の医療体制をどうにでも出来る。その局長の異動は、要するに、従来の医療体制全体に「NO」を突きつけたということだ。

このあたりの事情や狙いに切り込んだマスコミはほとんどないが、唯一、医療問題のフリーペーパー「ロハス・メディカル 」のインタビュー(6・26)に対し舛添氏はこう抱負を答えている。

「従来、事務系と医系の局長ポストは固定されていて、“聖域”になっていた。これを厚労省始まって以来、初めてぶち破る。大臣就任以来、2年間、この聖域があることで苦労してきた。国民の代表である大臣が役人をコントロールし、適材適所で人を配置することが必要。これにより、さらに厚労省改革を進めたい」

衣を脱ぎ捨てて、鎧兜で身を固め、居直った発言である。

<舛添大臣に近い筋によれば、決断したのは前晩。内閣改造や自民党役員人事が行われるとの観測が強まり、舛添氏自身にもポスト変更の可能性があることから、人事に着手しておく必要を感じたという。

省内にも全省庁の局長人事を所管する人事検討会議にも諮ることなく、その朝、麻生総理と河村官房長官の了解を得て電撃的に発表した。今後、他の局長や課長クラスの人事にも着手する。(ロハス・メディア 6.26)
> 

診療報酬で首を絞めておいて、「補助金を付ける」と言っていうことを聞かせるパターン。この補助金を動かすのが、上り詰めた医系技官が務める医政局と健康局の局長ポストだ。

舛添氏に異動の発想を促したのは、個人的なアドバイザーの存在である。かねてから政策に批判的な人材を集め、問題点を浮き彫りにしていった。アドバイザーの中には、新型インフルエンザ対策の国会審議の際、野党側の参考人を務めた感染症専門家の顔も見える。医療現場の病院長からも意見を聞いている。

今回の異動が舛添氏の思いつきではないことを示す発言がある。昨年2月に大臣就任から半年後の職員への訓辞。

「審議会についても、自分の役所に好意的な委員を中心に集めることがあってはならない。審議会委員の人選を抜本的に見直し、新しい血を入れつつあります。大臣の目指す方向と背反する政策を進めんがために、たとえば族議員に働きかけをし、その圧力でもって大臣に政策変更を迫
るなどは、断じて許されないことです」

舛添氏は安倍、福田、麻生の3代を通して厚労相を勤め、医療崩壊の原因が医療現場を知らない医系技官の存在にあることを突き止めた。

今回の人事は、厚労省内の文官、医官という縦割りに楔を打ち込んだ。しかし、これで官僚支配の体質が根絶したわけではない。

舛添氏は他省庁のスタッフを大量に登用した親衛隊、「大臣政策室」を立ち上げ、既得権をもつ抵抗勢力に対し、自ら任命した有識者をメディアの前で議論させる手法を継続して、改革を押し進めようとしている。

しかし医政局、健康局以外にも中医協の事務局を務める保健局医療課長や、医学部、看護学部、薬学部教育を主管する文科省医学教育課長など、他省や他局の重要なポジションも医系技官が占めている。

このようなポジションを通じて、医系技官は医療を支配してきた。打倒官僚支配の最終兵器は人事である。本当は省外にまで所管大臣の人事権を及ぼしたいところだ。が、もう時間がない。

官僚をなめたらあかんぜよ!

自民、民主のいずれが政権を牛耳ることになろうと、舛添氏の衣鉢を継いで、予想される官僚の反撃に立ち向かう大臣の顔は、この時点では思い浮かばない。20090708
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