2009年07月23日

◆団塊が知らない2・1ゼネスト



           渡部亮次郎

1947(昭和22)年2月1日予定の「ゼネラル・ストライキ」がマッカーサーの命令で中止されるという事態になった。今では全く論ぜられない「占領史」の一端である。あれが実施されていたら、その後の自民党長期政権は無かった。

私はまだ秋田で12歳だったが、毎日お昼ごろ届く「毎日新聞」を詳しく読んで「事態」を知っていた。それまでの「東京日日新聞」が戦時中の昭和18年から「毎日新聞」に変わった。

私が生まれた年、1936(昭和11)年に42万人いた労働組合員は、大東亞戦争の勃発で労働運動が禁止、解体されていた。これに対し戦後に進駐したマッカーサーGHQは、日本に米国式の民主主義を植えつけるために、労働運動を確立することを必要と考え、意図的に労組勢力の拡大を容認していた。

大東亜戦争(太平洋戦争)後の激しいインフレの中で、日本共産党と戦前の日本労働総同盟の指導で労働運動が高揚し、1946(昭和21)年には国鉄労組が50万名、全逓信労組が40万名、民間の労組は合計70万名に達した。

日本共産党書記長の徳田球一は、「デモだけでは内閣はつぶれない。労働者はストライキをもって、農民や市民は大衆闘争をもって、断固、吉田亡国内閣を打倒しなければならない」と労働闘争による吉田内閣打倒を公言し、日本の共産化を図った。

冷戦の兆しを感じていた米国は、日本をアジアにおける共産化の防波堤にしようと考え始めていたため、全官公労や産別会議等の過半数の労働組合を指導している共産党を脅威と考えるようになった。

吉田もまた共産党との対決を意識し、内部分裂した日本社会党右派に連立を持ちかけるなど、革新勢力の切り崩しを図った。

1947年(昭和22)1月1日、総理大臣吉田茂は年頭の辞で挨拶した。

「政争の目的の為にいたずらに経済危機を絶叫し、ただに社会不安を増進せしめ、生産を阻害せんとするのみならず、経済再建のために挙国一致を破らんとするがごときものあるにおいては、私はわが国民の愛国心に訴えて、彼等の行動を排撃せざるを得ない。」

「しかれども、かかる不逞の輩がわが国民中に多数ありとは信じない。」いわゆる「労働組合不逞の輩」発言である。

非難されたと受け取った労組はいっせいに反発し、1月9日に全官公庁労組拡大共同闘争委員会(全官公庁共闘)がゼネラル・ストライキ実施を決定、1月11日に4万人が皇居前広場で大会を開き、国鉄の伊井弥四郎共闘委員長が全官公庁のゼネスト実施を宣言した。

公然と叫ばれるスト実施と政情不安によって、社会不安が蔓延した。1月21日には天変地異を予言していた神道系の宗教団体璽宇教(横綱双葉山が入信し話題となった)が、GHQの指令によって摘発された。

1月31日午前8時、ゼネストが強行された場合に備え、第8軍は警戒態勢に入った。午後4時、マッカーサーは「衰弱した現在の日本では、ゼネストは公共の福祉に反するものだから、これを許さない」として、ゼネストの中止を指令した。

伊井委員長はGHQによって強制的に連行された。NHKラジオのマイクへ向かってスト中止の放送を要求された伊井は、午後9時15分に叫んだ。

「敗戦後の日本は連合国から多くの物的援助を受けていますことは、日本の労働者として感謝しています。命令では遺憾ながらやむを得ませぬ。…一歩後退、二歩前進」と、マッカーサー指令によってゼネストを中止することを涙ながらに発表した。テレビがまだ無かったから、この涙を私は見ていない。

伊井は占領政策に違反したとして逮捕され、懲役2年を宣告された。

2・1ゼネストの中止は、日本の民主化を進めてきたGHQの方針転換を示す事件であった。意図的に労働者の権利意識を向上させつつも、占領政策に抵触する場合、あるいは共産党の影響力を感じた場合、連合軍は労働者の味方はしないことを内外に誇示した。

その後も労働運動はなお盛んであったため、マッカーサーは吉田内閣に書簡を送り、公務員のストライキを禁止するよう指示した。

これに基づき、1948年(昭和23)7月31日に公布された政令201号によって、国家・地方公務員のストライキが禁止された。

後に国家公務員法・地方公務員法で正式に公務員のストライキ禁止が明文化された。この公務員のスト禁止は、1970年代の国鉄による「遵法闘争」の要因となる。

1932年テーゼの中で占領軍を解放軍と規定していた日本共産党は、しばらくの間、この事実を受け入れられずに迷走した後、暴力革命路線へ転換することとなる。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2009・07・22
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