2009年09月08日
◆アメリカで感じたこと(三)
杉原 行幸
アメリカの「旅」の続きです。今度は、美術館や博物館廻りに多くの時間を費やしました。現在の経済実態もさることながら、この国の文化的インフラや考え方、またどんな人々がどんなふうに鑑賞しているか、その様子に興味があったからです。
印象的だったのは、中規模都市でも科学博物館、歴史博物館が非常に充実していて、展示も興味を引くように工夫が凝らされており、子供たちが手にとって実感できるようになっていたことです。
フィラデルフィアの中規模科学博物館「プリーズタッチ・ミュージアム」は、子供たちが競って触り、楽しんでいました。科学的なものだけでなく、スーパーでの買い物体験や、賞味期限の見方など、日常生活体験のコーナーがあるのも新しい試みだと思いました。
日本と違うのは医学というか、体の仕組みについての展示が多く見られたことです。
ミネソタ州ミネアポリス市の住宅地にある小規模な科学博物館では、リラックスするとエネルギーが強くなるという、面白く、わかり易い実験が大人気でした。2人が向かい合って座り、真中に金属のボールが置いてあって、リラックスした人の方からエネルギーが発生してボールが相手の方へ転がり落ちるというものです。
しばらく行きつ戻りつのあと、一気に決着がつく人、はじめから一方的な人など様々で、不思議に思いながらも、頷き合っていました。小規模なスペ−スでも、こうしたやり方で子供たちが楽しんで、知識を得る方法があるのだと感心しました。
規模の大きさ、展示物の巨大さと豊富さは驚くばかりです。以前シカゴの科学博物館を見てその凄さに驚きましたが、今回はワシントンDCのスミソニアン博物館群はもちろんのこと、中規模の都市でも素晴らしい内容と幅の広い展示がされているのにはあらためて感心しました。
ワシントンのスミソニアンは19の博物館がすべて無料です。それがアメリカに一度も行ったことのないイギリス人篤志家の寄付を基金として、連邦政府の保証する年4,5%の利子によって運営されています。民間でも、マスメデイアに特化したNuseumというMuseumなど新しいものが加わっています。
中でも宇宙開発はアメリカが最も誇るべきものであるとともに、夢を与えるものとして力を入れています。
2003年に、ダレス空港の近くに航空宇宙博物館の新館が出き、今まで展示できなかった巨大な展示物が開陳されました。ライト兄弟からリンドバークの大陸横断飛行を一幕目として、2回の世界大戦で名を覇せた「零戦」など各国の飛行機、3幕目の月着陸をはじめとする宇宙開発は人類の夢の歴史と未来を見せる展示としてさらに充実すると思います。
異文化に対する理解も大きな特色です。アフリカの芸術、アメリカインデアンの文化、ポートランドの大規模な日本庭園やチャイニーズガーデン、フィラデルフィアの小規模ながら日本人でも感銘を受ける日本家屋と庭園などは異文化に対する理解と敬意を感じさせます。
大戦でアメリカに貢献した日系人兵士の祈念公園やアイルランドなど各国移民の戦士の追悼碑なども、多様なルーツを持つ人々への敬意のあらわれだと思います.
アメリカは新しい国ですが、それだからこそ歴史的なものを大切にしています。また、マーチン・ルサー・キング、ケネデイやオバマなど最近の人物も登場しますが、歴史は毎日作られるという考え方に立っているということです。長い歴史の検証を経ないと歴史上の人物にはならないという日本と少し違います。
大きな特色は、アメリカ人は自由を獲ち得るためにどれだけの血をながしたかということで一貫していることです。イギリスに対する独立戦争、南北戦争、ナチス、日本帝国主義との戦い、ベトナム戦争。
流石にイラク戦争はありませんでしたが、アメリカは自由を得るために闘ってきたということが、いやがうえにも強調されています。そして、それに身を捧げた英雄たちであるジョージワシントンをはじめとする建国の勇士、アブラハム・リンカーン、マーチン・ルーサー・キングなどがクローズアップされ,国民共通の尊敬する対象となっているのです。
子供のころからこういう話を聞き、展示を見て育ったアメリカ人の歴史観、愛国心がイラク戦争の初期、ブッシュに対する圧倒的な支持となって現れたのもわかるような気がします。
それに対し、長い歴史の中で、専制君主の圧政や外国の侵略に合うこともなく建国の起源にさえ議論がある日本で、子供たちの正しい愛国心を植え付けるのは難しい点があるかもしれません。
これだけ民族に対する歴史の試練を受けていない国は世界でも稀だからです。唯一の被爆国として、また美しい自然と四季に恵まれた国として、平和と地球を守ることを中心に据え、国を愛する心を育てることだと思います。
スミソニアンには、世界の展示場で日本についても真珠湾攻撃、南京大虐殺、広島、長崎の悲惨な被爆写真、ヒトラーと並んで東條英機の写真も展示されています。世界中の人々がこれを見に来ているのに、日本ではアメリカと戦争したことさえ知らない子供たちがいるというのは、世界の常識からは不思議に思えるでしょう。
アメリカでは、たとえばホテルのフロント、コンビニのレジなどで全員が同じ肌の色というのは稀なことです。
多様な民族と格差を抱えながら人口を増やし続ける先進国、複雑な国際情勢の中で反米の非難も浴びながら黒人系の大統領を生み出し、大国としての責任を果たさなければならないアメリカは、問題山積ながらも偉大な国と言わざるを得ないと感じました。(続く)
<1級ファイナンシャルプランニング技能士>
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