2009年11月07日

◆ブーメラン総辞職

渡部亮次郎

段論法で行けば、鳩山首相は、自分の述べた文句に縛られて、自分の首を絞めなければ、理屈が合わなくなってしまった。場合に依っては辞任が避けられないと、各社の社会部が潜行取材しているようだ。

2009年11月4日に開かれた衆院予算委員会で鳩山首相の献金問題が取り上げられた。テレビを見ていた家人によれば、追及したのは、自民党若手の柴山昌彦議員だった。北関東ブロック比例代表選出ながら、東大卒で弁護士資格をもつ柴山氏は、いいところに目をつけた。

03年7月に鳩山首相が配信したメールマガジンを探し出し、その一節を引用して責めたてた。

「総理は平成15年7月23日のメールマガジンで『秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきなのです』と述べておられます。あなたはどう責任をとられるのですか?」

このメルマガが配信されたのは、社民党の辻元清美議員らが秘書給与流用事件で逮捕された直後。逮捕者の中には土井たか子党首の元秘書も含まれていた。

そのことについて、鳩山首相は「政治家と秘書は同罪」としながら、次のように書いているのだ。

「政治家は金銭に絡む疑惑事件が発生すると、しばしば『あれは秘書のやったこと』と嘯(うそぶ)いて、自らの責任を逃れようとしますが、とんでもないことです。

政治家は基本的に金銭に関わる部分は秘書に任せており(そうでない政治家もいるようですが)、秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきな
のです」

こう厳しい言葉を投げつけたうえで、「土井党首は身を退かれるべきではないでしょうか」と辞任を促している。この言葉が6年後、ブーメランのように鳩山首相のもとに戻ってくることになったのだ。動かぬ証拠とはこのことだ。

鳩山首相は東京大学工学部応用物理・計数工学科を卒業。その後スタンフォード大学の博士課程でオペレーションズ・リサーチを専攻しPh.D.を取得(1970〜1976年)。東京工業大学助手(1976-1981年)を経て、専修大学経営学部助教授(1981-1986年)。論理には強い。それが裏面に出た。

「秘書が犯したことだから議員は関係ないんだというような弁明をすることは潔く思っていなかった。それは言うまでもありません。このことは私自身に適用できる話だと思っています」

と答えざるを得なくなった。とはいえ、そこは政治家、具体的な事実関係についての質問には、捜査中であることを理由に明言を避けた。秘書の刑事責任が確定した場合の責任の取り方についても「仮定の話に答えるのは控えさせていただきたい」とかわした。

<鳩山首相のイメージダウンを狙い「自分の資金も管理できない金持ちのボンボンが政治をしていることを印象づける」作戦はまんまとあたったのである>。

だから、このような鳩山首相の態度に対して、マスコミの論調は総じて厳しい。

明らかに鳩山政権に肩入れしてきた朝日新聞さえ11月5日付社説で、「資金はどこから提供されたのか。首相本人はどのようにかかわっていたのか。答弁を聞いても、疑惑は晴れない」と断じ、「首相には疑惑に答える責任がある」と迫った。

日経新聞の社説も「首相は『捜査で全容が解明される』と繰り返しているが、説明責任から逃げていては疑惑は深まるばかりだ」と非難している。

産経新聞も坂井広志記者の署名入りで、「肝腎の具体的な事実関係については東京地検特捜部が捜査中であることを理由に説明を避け続け、真相解明にはほど遠いやりとりとなった」と批判的な記事を掲載した。

野党やマスコミの責任追及に鳩山首相は耐えられるのか。テレビ朝日コメンテイターの三反園訓さんは5日放送の情報番組「スーパーモーニング」のなかで、「秘書が逮捕されるかどうかがカギ」との見方を示した。

「このあと秘書が仮に逮捕されるようなことがあったら、鳩山さんのこれまでの政治活動を見てきましたけど、たぶん責任を取られるんじゃないかなと、私は思っているんですけどね」とも述べた。

こうしたことから、鳩山首相の資金管理担当の元秘書が逮捕さたり多額の資金を援助していたとされる母親に対する東京地検の事情聴取が行われれば、辞任が避けられないと気の早いマスコミ各社の社会部が潜行取材している、というわけだ。

就任して、まだ50日あまり。「まさか」とは思うが、マスコミ界の長老は<1993年に自民党政権を倒して連立政権のトップの座についた「殿」こと細川護煕首相は佐川急便からの献金問題が引き金となって、退陣に追い込まれた。細川氏と同じく名家の出で「お坊ちゃん宰相」とも揶揄される鳩山首相も、「献金」にまつわる問題で同じような末路をたどるのだろうか>と案じている。

ブーメラン総辞職となるになるかどうか、断定はできないが、当に「天に唾した」罪といえるだろう。

肝腎、ねて「せめて年内は保(も)たせたい、ともらしているとされる小澤一郎幹事長の、これに対する論評は聞えてこない。しかし、検察からすれば、カネへのまみれ方は小澤氏のほうが汚いのだから、おののいて沈黙するしかあるまい。2009・11・6

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